ネワール法界マンダラ図像資料
著者 立川 武蔵
雑誌名 国立民族学博物館研究報告
巻 23
号 4
ページ 699‑808
発行年 1999‑03‑31
URL http://doi.org/10.15021/00004110
立 川 ネ ワー ル法 界マンダラ 図像 資 料
ネ ワール法 界マンダラ 図像 資料
立 川 武 蔵*
Materials for Iconographic Studies of Newar Dharmadhatu Mandalas
Musashi Tachikawa
ネ パ ー ル の カ トマ ン ドゥ盆 地Y'は 今 日,ネ ワ ー ル人 の 間 に 密 教 の 要 素 を多 分 に 含 む 大乗 仏 教 が見 られ る。 ネ ワ ール仏 教 には 数 多 くの マ ン ダ ラの 作 例 が残 る一 方 で,今 も伝 統 に従 ってマンダラ が描 か れ て い る。 ネ ワ ール 仏教 の寺 院境 内 な どに は 銅 な どの金 属 や 石 の 円盤 の 上 に 線 刻 さ れ た マ ン ダ ラ図 が 見 ら れ る が,こ の 様 式 は ネ ワー ル特 有 の もの と思 わ れ る。 ネ ワー ル仏 教マンダラ の 内,
ほっかい こ し ざい
も っ と も よ く知 られ た もの の一 つ に,法 界 語 自在 文 殊 の マ ン ダ ラが あ る。 本 稿 は,カトマンドゥ 盆 地 内 に お い て 有 名 な法 界 マ ン ダ ラ の作 例 と して バ ク ・バ ハ ー ル寺 院,ノ ・バ ハ ー ル寺 院,ブ ・バ ハ ール寺 院 の マ ンダ ラ を取 りあ げ,そ の線 刻 され た 図 像 を 大乗 仏 教 図像 学 の 基礎 資 料 と して提 供 しよ うとす る もの で あ る。
The present paper is intended to furnish materials for iconographic studies of the Newar Buddhist mandalas found in the Kathmandu Valley. A large number of mandalas depicted on copper or stone plates are installed at various places, such as the court yard of a Newar Bud- dhist temple,or at a crossroads in a town.
The Newar people inherited Mahayana Buddhism together with its iconographic tradition from India, before Indian Mahayana Buddhism disappeared in the thirteenth century A.D.. The varieties of Newar Buddhist mandalas found in the Kathmandu Valley are almost identical to those of the Indian Buddhist mandalas explained in texts, such as the Nispannayogava1 or the Vajravali. Even today Newar painters con-
*国 立民族学博物館民族社会研究部
Key Words : Newar Buddhism, Kathmandu, mandala, Dharmadhatu Mandala, Man-
j
ushri
国立民族学博物館研究報告 23巻4号
tinue drawing mandalas according to their tradition, which is very similar to the Indian one.
The Dharmadhatuvagisvara Manjusri Mandala is one of the most well-known manadalas in the Kathmandu Valley. In this paper we will consider the Dharmadhatuvagisvara (or Dharmadhatu) mandalas of three Newar Buddhist temples in Patan City, namely, the Haka Bahal, the Na Bahal, and the Bu Bahal. The images of the deities depicted on these three mandalas are iconographically in accordance with the descrip- tion given in the Dharmadhatu Chapter of the Nispannayogava1i, with some exceptions.
1.カトマンドゥ 盆 地 に お け る法界 マ ソ ダ ラ資 料
2.法 界 マ ン ダ ラの構 造
3.バ ク ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ 4.ノ ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ 5.ブ ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ
1.カトマンドゥ 盆 地 に お け る法 界マンダラ 資料
ネ パ ー ル のカトマンドゥ 盆 地 に は イ ン ドか ら伝 え られ た大 乗 仏教 が残 ってお り}こ の 大乗 仏 教 は密 教(タ ソ ト リズ ム)の 要 素 を 多 分 に 含 ん で い る。 この仏 教 密 教 は カ ト マ ン ドゥ盆 地 に紀 元4,5世 紀 か ら住 ん でい るネ ワー ル人 の間 に流 布 して い る もの で あ るが,ネ ワール 仏 教 徒 た ち は 自分 た ち の仏 教 を 「金 剛 乗 」(ヴ ァジ ュ ラ ・ヤ ーナ)
と呼 ん で い る。 この 場 合 の 「金 剛 乗」 とは仏 教 密 教 とい うほ ど の意 味 で あ って,ラ ダ ック地方,中 央 チ ベ ッ ト,ブ ータ ンに伝 え られ た 仏 教 密教 と本 質 的 に 異 な る もの では な い 。 チ ベ ッ ト仏 教 で は 「金 剛 乗 」(ド ル ジ ェ ・テ クパ)と は 仏 教 密 教 一 般 を 意 味 す
る。
カ トマ ン ドゥ盆 地 に は,仏 教 密 教 の儀 礼 や 瞑 想 の 補 助手 段 と して のマンダラ が 数 多 く残 る と と もに今 もな お制 作 され て い る。マンダラ は,原 初 の形態 は別 に して,今 日 で は平 面 に描 かれ る もの と立 体 に作 られ る もの との 二種 あ るが,カ トマ フ ドゥ盆 地 で は 銅 や真 鍮 あ る いは 石 の 盤 にマンダラ 図 を線 刻 し,そ の盤 を 円筒,六 角筒,八 角 筒 等 の上 に乗 せ た か た ちの マ ン ダ ラが数 多 く制 作 され て きた。 この 円筒,六 角筒,入 角 筒 等 は 須 弥 山(ス メール 山)を か た ち ど った須 弥 山台 で あ り,北 京 の 紫禁 城 な どに見 る
立 川 ネ ワ ール 法界 マ ン ダ ラ図 像 資料
カ トマ ン ドゥ盆 地 以外 の地 域 に あ る との報 告 は な く,盆 地 に特 有 の もの と思 わ れ る。
カ トマ ン ドゥ盆地 の須 弥 山台 上 の マ ン ダ ラは 寺 院 の 境 内や 街 角 に 置 かれ て お り,そ の数 は数 百 に のぼ る と推 定 され る。ほ とん どが 直径 数 十 セ ソチ メー トルの もの で あ り, その程 度 の大 き さの マ ン ダ ラでは 個 々の尊 格 のす が た は刻 まれ てお らず,諸 尊 が ○ 印 等 で 表現 され た り,各 尊 格 の 「部 屋 」 の み が描 か れ てい る。 しか し,1メ ー トル に近 い,あ るい は それ 以 上 の 大 きさ のマンダラ 図 を刻 んだ 銅盤 あ る いは 石 盤 が盆 地 に はい くつ か 残 され てお り,そ れ らに は,マンダラ の諸 尊 す べ て で は な い に して も数 多 くの 尊 格 の 図 像 が描 か れ て お り,ネ ワー ル仏 教 パ ソテ オ ンの図 像学 的 資 料 とな る。
イ ン ド,ネ パ ール,チ ベ ッ ト等 に おけ る仏教 密 教 に おい て は,パ ソテオ ンの 図像 学 的 シ ス テ ムが確 立 され て お り,密 教 の儀 礼 ・実践 に際 して 僧 あ るい は実 践 者 た ち は パ ンテ オ ソの 各 メ ソパ ーす な わ ち 各hの 尊 格 の 図 像学 的特 徴 を憶xて い る必 要 が あ る。
例 えば,各 々の尊 格 が どの よ うな シ ソボル を 持 って い るか が 密教 の儀 礼 ・実 践 で は重 要 で あ るか らだ。 ㌧
カトマンドゥ 盆 地 の寺 院 の境 内 な どに置 か れ て い る 「マンダラ台 」(須 弥 山 台 の上
ほっかい こ じざい
に 置 か れ たマンダラ 盤)は,圧 倒 的 に 法 界 語 自 在 文 殊マンダラ(法 界マンダラ)が 多 い 。 そ の 中 で は 特 に 五 つ の 法 界マンダラ が 図 像 学 的 お よ び 歴 史 的 に 重 要 と思 わ れ る。
第 一 に は ス ヴ ァヤ ン ブ ー ナ ー ト仏 塔 の 東 側 に あ る プ ラ タ ー パ マ ッ ラ 王 の 命 に よ っ て 製 作 され た も の(立 川1989:16),第 二 に は パ タ ソ市 の バ ク ・バ ハ ー ル(バ カ ー ・バ ・・一 ル)寺 院1)境 内 の も の(立 川1989:14),第 三 に ノ ・バ バ ー ル 寺 院2)境 内 の も の,第 四 に ブ ・バ ハ ー ル 寺 院3)境 内 の も の(立 川1989:18),第 五 に ス ヴ ァ ヤ ソ ブ ー ナ ー ト 寺 院 境 内 の 石 製マンダラ4)(立 川1989:16)で あ る。 第 一 の も の が も っ と も 古 く,図 像 学 的 価 値 も 高 い と 思 わ れ るが,銅 版 の 上 に 描 か れ た 図 像 の 磨 滅 した 部 分 も少 な くな
く,こ の マ ン ダ ラ の 図 像 学 的 考 察 は 次 回 に 侯 ち た い 。 第 五 のマンダラ で は 尊 格 は 人 形 の 図 像 で は な く,樹 や 花 な ど の シ ソ ボ ル に よ っ て 描 か れ て い る。 こ の マ ン ダ ラ に 関 す る研 究 も 次 の 発 表 の 機 会 を 侯 ち,今 回 は 第 二,第 三 お よび 第 四 の マ ン ダ ラ の 考 察 に 限 定 す る こ とに し た い 。
第 二,三,四 の マ ン ダ ラ は 諸 尊 の 配 置 や 図 像 等 に 関 し て 多 くの 共 通 点 が あ る 。 そ れ ぞ れ の 尊 格 の 図 像 が4セ ソ チ メ ー トル に 満 た な い ほ ど 小 さ い 場 合 も あ る が,む しろ そ れ だ か ら こそ 図 像 学 的 に は も っ と も重 要 な 特 徴 の み が 彫 り刻 ま れ て い る と考 え る こ と が で き る。 現 在,わ れ わ れ に は ネ ワ ー ル 密 教 の パ ン テ オ ン に 関 す る 満 足 す べ き つ ま り使 用 に 耐 え る 図 像 集 が 残 さ れ て い な い 。 本 研 究 の 目指 す と こ ろ は,ネ ワ ー ル
国立民族学博物館研究報告 23巻4号 ラで あ る と とも に,約220尊 とい う数 多 くの構 成 員 を有 す るマンダラ で あ り,図 像集 作成 のた め の 基礎 資 料 と して 最適 で あ る。
また か の三 つ のマンダラ の レプ リカが 国 立 民 族学 博 物 館 の 南 ア ジ ア常 設 展示 場 で 展 示 され て い る5)0こ れ らは,カトマンドゥ 盆 地 でそ れ ぞ れ のマンダラ 図 を拓 本 に取 り, パ タ ン市 の工 人 た ち に依 頼 して約 一 年 間 か け て1996年 完 成 した もの で あ る。実 際 に 線 刻 す るに あ た って 「そ れ ぞ れ の寺 院 でマンダラ を 見 て も は っ き りしなか った部 分 は, ネ ワ ール の画 家 ガ ウ タ ム ・R・ バ ジ ュ ラ ー チ ャー ル ヤに 依 頼 して 絵 を 描 い て も ら っ た」 と完 成 後 に 聞 いた 。 本研 究 に は,カ トマ ン ドゥ盆 地 の マ ン ダ ラ図 と国 立民 族 学 博 物 館 の レプ リカ の 図 と の比較 は含 まれ て い ない 。 レプ リカ とい え,現 在 の ネ ワール の 工 人 が 拓 本 と実 物 のマンダラ 図 を どの よ うに 読 み こんだ か は それ 自体 図 像学 の対 象 と な り得 る と思 われ るが,こ の レプ リカ の考 察 も別 の機 会 に侯 ち た い。
2.法 界 マ ン ダ ラ の 構 造
12世 紀 頃 の 編 纂 と 推 定 さ れ る サ ン ス ク リ ッ トで 書 か れ たマンダラ 集 成 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 は,ネ ワ ー ル 仏 教 僧 た ち の マ ン ダ ラ に 関 す る 基 礎 文 献 の 一 つ で あ る 。 こ の 第21章 が 法 界 語 自 在 文 殊 マ ン ダ ラ(法 界マンダラ)の 構 造 や パ ソ テ オ ン の メ ソバ ー を 説 明 して い る 。 この 章 の テ キ ス ト,和 訳,パ ソテ オ ソ の そ れ ぞ れ の メ ソバ ー の イ メ ー
ジ等 に 関 して は,す で に(長 野 ・立 川1989)に 発 表 し た 。
こ こ で 扱 う法 界マンダラ の 諸 尊 の 名 称 と 位 置 は 基 本 的 に はr完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 第21章 と一 致 す る 。 した が って,本 論 文 で は(長 野 ・立 川1989:48‑61)に 記 した 尊 名 と位 置 に 基 づ い て 議 論 を 進 め た い 。 以 下 に,法 界 マ ン ダ ラ の 構i成 メ ンバ ー の 日本 名
とサ ソス ク リ ッ ト名 の み を 挙 げ て お き た い 。
表1 法 界 マ ン ダ ラの諸 尊
番 号 サ ソ ス ク リ ッ ト 漢訳/仮 名表記
1. Manjughosa
(Dharmadhatuvagiisvara) 2. Mahosnisa
3. Sitatapatrosnisa 4. Tejorasyusnisa 5. Vijayosnisa 6. Vikiranosnisa
[法 界語 自在]文 殊 (マ ン ジ ュゴ ー シ ヤ) 大仏 頂(だ いぶ っち ょ う)
白傘 蓋 仏 頂(び ゃ くさ んが い ぶ っち ょ う) 光聚 仏 頂
最勝 仏 頂 捨 除 仏頂
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Mahodgatosnisa Jayosnisa Aksobhya Vajrasattva Vajraraja Vajraraga Vajrasadhu Ratnasambhava Vajraratna Vajrateja
Vajraketu Vajrahasa Amitabha
Vajradharma Vajratiksna Vajrahetu Vajrabhasa Amoghasiddhi Vajrakarma Vajraraksa Vajrayaksa Vajrasandhi Locana Mamaki Pandara Tara Vajrainku§a Vajrapaga Vajrasphota Vajravesa Adhimukticarya Pramudita Vimala Prabhäkari Arcismati
Sudurjaya Abhimukhi Durangama Acala Sadhumati Dharmamegha Samantaprabha Ratnapadmaparamita Danaparamita
高 大 仏 頂 勝 仏 頂
阿 閥(あ しゅ く)
金 剛薩 遜(こ ん こ うさ った) 金 剛 王(こ ん こ うお う) 金 剛 愛(こ ん こ うあ い) 金 剛 喜(こ ん こ うき) 宝 生(ほ う し ょ う) 金 剛 宝(こ ん こ うほ う) 金 剛 光(こ ん こ うこ う) 金 剛 憧(こ ん こ うど う) 金 剛 笑(こ ん こ う し ょ う)
阿弥 陀(あ み だ) 金 剛 法(こ ん こ うほ う) 金 剛 利(こ ん こ う り)
金 剛 因(こ ん こ うい ん) 金 剛 語(こ ん こ うこ) 不 空 成就(ふ く うじ ょう じゅ) 金 剛 業(こ ん ご うご う) 金 剛 護(こ ん こ うこ) 金 剛 牙(こ ん こ うが) 金 剛 拳(こ ん こ うけ ん)
ロー チ ャナ ー(仏 眼) マ̲マ キ ー(韓 表) パ ー ン ダ ラ ー(白 衣) た ら
タ ー ラー(多 羅) 金 剛鉤(こ ん こ う こ う) 金 剛索(こ ん こ うさ く) 金 剛 錬(こ ん こ う さ) 金 剛 鈴(こ ん こ うれ い) 信 解 行 地(し ん げ ぎ ょう じ) 歓 喜 地(か ん ぎ じ) 離 垢 地(り く じ) 発 光 地(ほ っこ う じ) 焔 慧 地(え んね じ) 難 勝 地(な ん し ょ う じ) 現 前 地(げ んぜ ん じ) 遠 行 地(お ん ぎ ょう じ) 不 動 地(ふ ど う じ) 善 慧 地(‑Lん え じ) 法 雲 地(ほ う うん じ) 善 光 地(ぜ ん こ うじ)
宝 蓮 華 波羅 蜜(ほ うれ ん げ は らみ つ) 布 施 波 羅 蜜
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Silaparamita Ksantiparamita
Viryaparamita Dhyanaparamita Prajnaparamita Upayaparamita Pranidhanaparamita Balaparamita Jnanaparamita Vajrakarmaparamita Ayurvaaita Cittavaaita Pariskaravaaita Karmavaaita Upapattivaaita Rddhivaita Adhimuktivaaita Pranidhanavaaita Jnanavaaita Dharmavaaita Tathata Buddhabodhi Vasumati Ratnolka Usnisavijaya Marici Parnaaabari Janguli Anantamukha Cunda Prajnavardhant
Sarvakarmavaranaviaodhani Aksayajfianakaranda Sarvabuddhadharmakoaavati Dharmapratisamvit Arthapratisamvit Niruktipratisamvit Pratibhanapratisamvit
Lasya Maid Gitä Nrtya Samantabhadra Aksayamati
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持 戒 波 羅 蜜
忍 辱 波 羅 蜜(に んに くは らみ つ) 精 進 波 羅 蜜
禅 定 波 羅 蜜 般 若 波 羅 蜜 方 便 波 羅 蜜 願 波羅 蜜
力波 羅 蜜 智 波羅 蜜 金 剛業 波 羅 蜜
命 自在(み ょ うは らみ つ) 心 自在
財 自在 業 自在 生 自在 神 通 自在 勝 解 自在 願 自在 智 自在 法 自在
如 是 女(に ょぜ に ょ) 仏 菩 提 女(ぶ つ ぼ だ い に ょ)
ヴ ァス マテ ィー ラ トノ ール カ ー
仏頂 尊勝(ぶ っち ょうそ ん し ょ う) 摩利 支(ま りして ん)
葉衣(よ うえ)
ジ ャー ング リー(常 蓼利) 無 量 門
e'1(じ ゅん て い) 智 慧 増長(ち えぞ うち ょう) 除 一 切 業障
無 尽 智 筐
持 一 切 仏 庫(じ い っさい ぶ っ こ) 法 無 磯(ほ うむ げ)
義 無 磯(ぎ む げ) 詞 無F(し む げ) 弁 無 磯(べ ん む げ) 喜 女(き に ょ) 覧 女(ま ん に ょ) 歌 女(か に ょ) 舞 女(ぶ に よ) 普賢(ふ げ ん) 無 尽慧(む じん え)
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Ksitigarbha Aka§agarbha Gaganaganja Ratnapani Sagaramati Vajragarbha Avalokite§vara Mahasthamaprapta Candraprabha Jaliniprabha Amitaprabha Pratibhanakuta
Sarva§okatamonirghatamani Sarvanivaranaviskambhin Yamantaka
Prajiiantaka Padmantaka Vighnantaka Trailokyavijaya Vaj raj valanalarka Herukavajra Parama§va Usnisacakravartin
Sumbharaj a Puspa Dhupa Dipa Gandha Vajrarupa Vajra§abda Vajrarasa Vajraspar§a Indra Yama Varuna Kubera I§ana Agni Nairrti Vayu Brahman Visnu
Mahe§vara (= Siva) Karttikeya (= Kumara)
ノ 地 蔵
虚 空 蔵(こ く うぞ う) 虚 空 庫(こ く う こ) 宝 手
海 慧 金 剛 蔵 観 自 在 勢 至(せ い し) 月 光(が っ こ う) 網 明
無 量 光 弁 積
除 憂 闇(じ ょ ゆ う あ ん) 除 蓋 障(じ ょが い し ょ う) ヤ マ ー ソ タ カ(閻 曼 徳 迦)
プ ラ ジ ュ ニ ャ ー ン タ カ バ ドマ ー ン タ カ
ヴ ィ グ ナ ー ソ タ カ
ト ラ イ ロ ー キ ヤ ヴ ィ ジ ャ ヤ(降 三 世) ヴ ァ ジ ュ ラ ジ ュ ヴ ァ ー ラ ー ナ ラ ー ル カ ヘ ー ル カ ヴ ァ ジ ュ ラ ・ パ ラ マ ー シ ュ ヴ ァ
ウ シ ュ ニ ー シ ャチ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ン ス ソノミラ ー ジ ャ
華 女(け に ょ) 香 女(こ う に ょ) 燈 女(と う に ょ)
塗 香 女(ず こ う に ょ) 金 剛 色 女(こ ん こ う し き に ょ) 金 剛 声 女(こ ん こ う し ょ うに ょ) 金 剛 味 女(こ ん こ う み に ょ) 金 剛 触 女(こ ん こ う そ くに ょ) 帝 釈 天(た い し ゃ く て ん) 焔 摩(え ん ま)
水 天
多 聞 天(た も ん て ん) 伊 舎 那 天(い し ゃ な て ん) 火 天
羅 刹 天(ら せ つ て ん) 風 天
梵 天(ぼ ん て ん) 毘 紐(び ち ゅ う)
マ ヘ ー シ ュ ヴ ァ ラ(=シ ヴ ァ) カ ー ル テ ィ ケ ー ヤ(=ク マ ー ラ)
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Brahmani Rudrani Vaisnavi Kaumari Indrani Varahi Camunda Bhrngi Ganapati Mahakala
Nandikesvara Aditya Candra Mangala Budha Brhaspati gukra Sanai§cara Rahu Ketu Balabhadra Jayakara Madhukara Vasanta Ananta Vasuki Taksaka Karkotaka
Padma Mahapadma gankhapala Kulika Vemacitrin Balin Plahlada Vairocana Garudendra
Drumakinnararaj endra Pancasikha
Sarvarthasiddha Purnabhadra Manibhadra Dhanada Vaisravana
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フフ フ マ ー ニ ー ノレ ド ラ ー ニ ー
ヴ ァ イ シ ュ ナ ヴ ィ ー カ ウ マ ー リ ー イ ン ド ラ ー ニ ー
ヴ ァ ー ラ ー ヒ ー チ ャ ー ム ソ ダ ー ブ リ ソギ ー ガ ナ パ テ ィ マ ハ ー カ ー ラ
ナ ン デ ィ ケ ー シ ュ ヴ ァ ラ 日 天
月 天 火 星 水 星 木 星 金 星 土 星
ラ ー フ ケ ー ト ゥ バ ラ バ ドラ
ジ ャ ヤ カ ラ マ ド ゥ カ ラ ヴ ァサ ン タ ア ナ ソ タ ヴ ァ ー ス キ タ ク シ ャ カ カ ル コ ー タ カ バ ドマ マ ハ ー ノ0ド マ シ ャ ソ カ パ ー ラ ク リ カ
,
ヴ ェ ー マ チ ト リ ン バ リ ソ
プ ラ フ ラ ー ダ ヴ ァ イR一 チ ャ ナ ガ ル デ ー ソ ド ラ
ド ゥ ル マ キ ソ ナ ラ ラ ー ジ ェ ー ソ ドラ パ ン チ ャ シ カ 、 サ ル ヴ ァ ー ル タ シ ヅ ダ
プ ー ル ナ バ ドラ マ ー ニ バ ドラ ダ ナ ダ
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Civikundalin Kelimalin Sukhendra Calendra Hariti Asvini Bharani Krttika Rohini Mrga§ira Ardra Punarvasu Pusya
Aslesa (A§lesa) Magha Purvaphalguni Uttaraphalguni Hasta Citra Svati Visakha Anuradha Jyestha Mula Purvasadha Uttarasadha Sravana Dhanistha Satabhisa Purvabhadrapada Uttarabhadrapada Revati
Abhijit Vajrankusa Vajrapasa Vajrasphota Vajravesa
チ ヴ ィク ソ ダ リ ン ケ ー リマ ー リン ス ケ ー γ ドラ チ ャ レー ソ ドラ
ハ ー リーテ ィー(鬼 子 母神) 婁 宿(ろ う し ゅ く) 胃宿(い し ゅ く) 易 宿(ぽ うし ゅ く) 畢 宿(ひ つ し ゅ く) 砦 宿(し し ゅ く) 参 宿(し ん し ゅ く) 井 宿(せ い し ゅ く) 鬼宿(き しゅ く) 柳 宿(り ゅ うし ゅ く) 星 宿(せ い し ゅ く) 張 宿
翼 宿
珍 宿(し ん しゅ く) 角 宿
充 宿(こ うし ゅ く) 氏 宿(て い しゅ く) 房 宿
心 宿 尾 宿
箕 宿(き しゅ く) 斗 宿
女 宿(じ ょ しゅ く) 虚 宿(き ょ しゅ く) 危 宿
室 宿 壁 宿
奎 宿(け い しゅ く) 牛 宿(ぎ ゅ う しゅ く) 金 剛 鉤(こ ん こ うこつ) 金 剛 索(こ ん こ うさ く) 金 剛 錬(こ ん こ うさ) 金 剛 鈴(こ ん こ うれ い)
3.バ ク ・バ ハ ー ル の 法 界マンダラ
バ ク ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ は,直 径100cm,金 メ ッキ,銅 製 で あ る 。 ネ ワ ー
国立民族学博物館研究報告 23巻4号 て い る 。
バ ク ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ の 第 一 重 に は,中 尊 で あ る 法 界 語 自在 文 殊(1)の 四 方 に 四 仏(阿 閾10,宝 生15,阿 弥 陀20,不 空25)と 四 妃(阿 閥 の 妃 ロ ー チ ャ ナ ー30, 宝 生 の 妃 マ ー マ キ ー31,阿 弥 陀 の 妃 パ ー ソ ダ ラ ー‑32,不 空 の 妃 タ ー ラ ー33)が い る。
阿 閥 か ら タ ー ラ ー ま で の8尊 は そ れ ぞ れ 中 尊 の 文 殊 に 向 か っ て い る 。 中 尊 の 文 殊 お よ び そ の 周 囲 に い る 四 仏 の 図 像 学 的 特 徴 が 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 「法 界マンダラ の 章 」の 文 殊 お よび 四 仏 の 説 明 に お お よ そ 一 致 す る こ と は 他 の と こ ろ で す で に 述 べ た(立 川1989:16‑17)。 第 一 重 に は こ れ ら の9尊 が 描 か れ て い る の み で あ る が,r完 成 せ る ぶっ
ヨ ー ガ の 環 』 に 述 べ ら れ る 法 界マンダラ(図1)に あ っ て は 文 殊(1)の 周 囲 の 八 仏 ちょう
頂(2〜9),四 仏 そ れ ぞ れ の 周 囲 に 四 人 ず つ い る 十 六 菩 薩(11〜14,16〜19,21〜
24,26〜29)お よび 四 門 衛 と し て の 四 摂 菩 薩(34〜37)が い る 。 後 に 考 察 す る よ うに, ノ ・バ ハ ー ル の 法 界マンダラ で は 第 一 重 の 四 門 は 描 か れ て い る が,こ の バ ク ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ の 第 一 重 で は 四 門 は 描 か れ て い な い 。
バ ク ・バ ハ ー ル の こ のマンダラ で はr完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 法 界マンダラ(図1) の 第 二 重 ま で を 第 一 重 と し て 描 い て い る と考 え る こ と も で き る か も しれ な い 。 後 に ブ ・バ ハ ー ル の 考 察 に よ っ て こ の よ うな 想 定 は ほ とん ど 意 味 を 持 た な い こ とが 明 ら か と な る 。 しか し,バ ク ・バ ハ ー ル のマンダラ を 三 重 構 造 の も の と考 え な い 場 合 に は, ど の よ うな 問 題 が 生 ず る か を 見 て お く こ と は 有 益 で あ ろ う。
も し も バ ク ・バ ハ ー ル が 三 重 構 造 で は な く四 重 構 造 で あ れ ぽ,バ ク ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ(図2‑3)のHE2(Hは バ ク ・パ ・・一 ル を, Eは 東 を 意 味 す る 。 以 下Sは 南 を,Wは 西 を, Nは 北 を 意 味 す る), HS2, HW2, HN2の 比 定 が 困 難 とな る。 一 方, 三 重 構 造 で あ る と 考 え る な ら ば,HE1, HSI, HW1, HN1を 四 摂 菩 薩(34〜37)と 考 え る こ と もで き る 。 しか し,こ の 場 合 に は 十 二 地,十 二 波 羅 蜜 等 の い る 回 廊 の 外 側 の 四 門 に 四 摂 菩 薩 が 配 置 さ れ る こ と に な る 。 これ はr完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の マ ン ダ ラ の 諸 尊 の 配 置 と大 き く異 な る こ と に な る 。
と も あ れ,r完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 のマンダラ の 第 二 重 に 対 応 す る 部 分 を 見 て み よ う 。 こ の 部 分 で は,十 二 地,十 二 波 羅 蜜,十 二 自 在,十 二 陀 羅 尼,四 門 の 四 無 磯 (86〜89)お よび 四 隅 の 四 供 養 女 が 描 か れ て い る 筈 で あ る。 しか し,各 尊 の 入 る べ き 部 屋 の 数 は 四 つ 不 足 して い る 。 十 二 地,十 二 波 羅 蜜 等 の 入 るべ き部 屋 が 十 二 あ り,四 隅 そ れ ぞ れY'は 供 養 女 が 入 る 部 屋 が 二 つ 必 要 な の で そ れ ぞ れ の 回 廊 に は 十 四 の 部 屋 が あ るべ き で あ る。 しか し,実 際 に は 部 屋 の 数 は 一 辺 に 十 三 で あ る。 した が っ て,一 辺
立 川 ネ ワー ル法 界マンダラ 図 像 資 料
す る と,四 供 養 女 は 略 さ れ て い る こ と に な る 。
十 二 地,十 二 波 羅 蜜 の 部 屋 の 並 び の 外 側 に あ る 四 門 は,バ ク ・バ バ ー ル の ーマ ン ダ ラ で は 第 一 重 の 四 門(HE1, HS1, HWI, HN1)で あ る か の よ う に 描 か れ て い る(図3 参 照)。 こ の 四 門 の 中 の 尊 像 はr完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 に 従 う な ら ぽ 四 無 礒(86〜89) な の で あ る が,バ ク ・バ ・・一 ル のHE1,HS1,HWIお よ びHN1を 四 磯 と 比 定 す る な
ら ぽ,も う一 重 外 側 の 四 門 の 尊 像(HE2, HS2, HW2, HN2)の 比 定 が 不 可 能 に な る 。
『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 に 述 べ ら れ た 以 外 の 尊 格 がHE2等 と し て 描 か れ て い る と考 え る こ と は で き な い 。 またHE2等 の 四 尊 の も う一 重 外 側(『 完 成 せ る ヨ ー ガ の環 』 の マ ン ダ ラ で は 第 三 重,図1)に は,パ ドマ ー ン タ カ等 の 四 人 の 念 怒 尊 が 人 形 で描 か れ て い る 。 図3に 見 る よ うに,HE 1, HE2お よ びHE3は 一 列 に 並 ん で お り, HE2と HE3の 間 に 他 の 尊 格 が 入 る 空 間 的 余 裕 は な い 。 同 様 にHS2とHS3, HW2とHW3お
よ びHN2とHN3の 間 に も他 の 尊 格 が 入 っ て く る 可 能 性 は な い 。 した が っ て, HEI, HE2お よびHE3が 人 形 で 表 現 さ れ て お り,し か も一 列 に 並 ん で い る か ぎ り, HE2は
四 無 磯 の 一 人 と し て の 法 無 磯(86)で あ る と い うべ き で あ ろ う。 そ れ ゆ え,四 無 礫 は r完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 法 界マンダラ で は 第 二 重 に 存 す る が,バ ク ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ で は 忽 怒 尊 と 同 じ重 す な わ ち 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 のマンダラ の 第 三 重 に 存 す る こ と に な る 。 も っ と も 前 に 述 べ た よ うに,バ ク ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラで はr完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 のマンダラ の 第 一 重 と第 二 重 を 合 わ せ て 「第 一 重 」,第 三 重 を 「第 二 重 」 そ し て 第 四 重 を 「第 三 重 」 と し て 描 い た 可 能 性 も な くは な い 。 そ の 場 合 に は,
・・ク ・パ ハ ー ル の 四 無 磯(HE2, HS2, HW2, HN2)は 「第 二 重 」 に 存 す る こ と に な る 。 しか し,実 は こ の 想 定 に も 無 理 が 存 す る の で あ る 。
r完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の マ ン ダ ラ の 第 四 重 に 相 当 す る最 外 輪 の 部 分 に は,護 方 神 く よう
(八 方 神)(128〜135),ヒ ン ド ゥ ー 教 の 神 々 ・九 星(九 曜)・ 八 竜 王 ・八 夜 叉 ・二 十 八 摺 な ど の 神 々(136〜216)お よ び 四 門 衛 と し て の 四 摂 菩 薩(217〜220)が い る。r完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 法 界マンダラ で は,第 四 重 の 最 外 輪 に 並 ぶ 神 々 の あ る 者 た ち
(132〜146,151〜153,157,160〜163)は,牛 や 孔 雀 な ど の 乗 物 に 乗 っ て い る が,バ ク ・バ ハ ー ル のマンダラ で は 乗 物 に 乗 る 者 は お ら ず,ガ ナ パ テ ィ(148)以 外 は す べ て 坐 っ て い る。r完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 お よ び バ ク ・バ ハ ー ル に お い て 最 外 輪 の 神 々 は す べ て 蓮 華 の 上 に 坐 っ て い る 。 因 み に,バ ク ・パ ハ ー ル のマンダラ で は,最 外 輪 の 外 に は 四 妃 の み が 蓮 華 の 上 に 坐 っ て い る 。
バ ク ・バ ハ ー ル の 境 内 に あ る こ の 法 界マンダラ は,ノ ・バ ハ ー ル や ブ ・バ ハ ー ル の
国立民族学博物館研究報告 23巻4号
四仏,四 妃,十 六 菩 薩,八 供養 女,八 愈 怒尊,護 方 神 お よび ヒ ソ ドゥー教 の神hな ど の 図像 は 図 像 学 的 資料 と して使 用価 値 の 高 い もの で あ る。
4.ノ ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ
ノ ・バ ハ ー ル の 法 界マンダラ は,直 径97cm,真 鍮 製 で あ る 。ネ ワ ー ル 暦1047年(西 暦1926年)に 製 作 さ れ た と い う銘 が あ る 。 こ のマンダラ の 中 で 人 形 の 図 像 で 描 か れ て い る 尊 像 の 数 や 位 置 は バ ク ・バ ハ ー ル の も の と 似 て い る 。 ノ ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ は バ ク ・バ ハ ー ル の そ れ よ り約30年 後 に 製 作 さ れ て お り,ま た こ の 二 つ の 寺 院 は100m ほ ど し か 離 れ て い な い の で,ノ ・バ ハ ー ル のマンダラ が バ ク ・バ ハ ー ル の そ れ を モ デ ル に した 可 能 性 も あ る 。
ノ ・パ ハ ー ル のマンダラ は,図4〜5に 見 る よ うに,四 重 構 造 を 有 し て い る 。 バ ク ・パ ハ ー ル のマンダラ で は 見 られ な か っ た 第 一 重 の 門 も こ の マ ン ダ ラ に は 存 す る。
ノ ・パ ハ ー ル のマンダラ の 第 一 重 に は 中 央 に 法 界 語 自在 文 殊(1)が お り,そ の 四 方 に 四 仏(10,15,20,25)が,そ の 四 維(中 間 位)に 四 仏 そ れ ぞ れ の 妃(30〜33)が い る 。 第 一 重 の 四 門 を 守 る 四 摂 菩 薩(34〜37)は,小 さ な 門 の み に よ っ て 示 さ れ,各 菩 薩 の 図 像 は 省 略 され て い る 。
第 二 重 に は,十 二 地(38〜49),十 二 波 羅 蜜(50〜61),十 二 自 在(62〜73),十 二 陀 羅 尼(74〜85),四 無s(86〜89)お よ び 四 供 養 女(90〜93)が い る 筈 で あ る 。 し
か し,ノ ・バ ハ ー ル の 場 合 は 第 一 重 の 門(NE1, NS I, NW1, NN1)(イ ニ シ ャル のN は ノ ・パ ・・一 ル を 意 味 す る)が 描 か れ て い る ゆ え に そ れ らに は 四 摂 菩 薩(34〜37)が い る こ と は 確 実 で あ る。な らぽ,ノ ・バ ハ ー ル の 第 二 重 の 門(NE2, NS2, NW2, NN2) に は 四 無 磯(86〜89)が い る こ と に な る 。 四 無sは 門 衛 と して の 職 能 を 有 し,そ れ ら の 図 像 的 表 現 も 門 衛 と して の 四 摂 菩 薩(34〜37)と よ く似 て い る 。 も っ と もNE2等 の 四 尊 と 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 法 界 マ ン ダ ラ の 四 無 擬 とは 図 像 学 的 に よ く一 致 す る わ け で は な い 。 と も あ れ,ノ ・バ ハ ー ル の 法 界 マ ン ダ ラ が 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 法 界マンダラ と構 成 員 が 同 じ と い う前 提 に 立 て ぽ,NE2等 の 四 尊 は 四 無 磯 と考 え ざ る を 得 な い 。 し か し,こ の よ う に 考 え る な ら ぽ,第 三 重 の 構 成 員 の 比 定 の 際 に さ ら に 大 き な 困 難 に 出 会 う こ と に な る 。
ノ ・パ ・・一 ル のマンダラ の 第 二 重 の 比 定 に は 別 の 困 難 も存 す る 。 十 二 地,十 二 波 羅 蜜 等 の 図 像 は な く て,部 屋 の み が 示 さ れ て い る が,一 列 十 八 の 部 屋 が 描 か れ て い る 。
立 川 ネ ワー ル法 界 マ ン ダラ図 像 資 料
は 理 に 合 わ な い 。 各 回 廊 に 四 尊 ず つ を 加 え た の か と も 思 わ れ る し,そ れ ほ ど厳 密 に 部 屋 数 を 数 え な か っ た の か も しれ な い 。
第 三 重 で は,十 六 菩 薩(94〜109),十 急 怒 尊(ダ シ ャ ・ク ロ ー ダ)の 内 の 入 人 の 念 怒 尊(llO〜117)お よ び 八 供 養 女(120〜127)が 人 形 の 図 像 で 表 現 さ れ て い る。 一 般 的 に 法 界 マ ン ダ ラ に 登 場 す る 尊 格 の 図 像 が 詳 細 か つ 鮮 明 に 描 か れ る の は 第 三 重 に お い て で あ る が,ス ヴ ァ ヤ ン ブ ー ナ ー ト仏 塔 の 東 の 法 界マンダラ を 始 め と して こ こ に 扱 う 三 つ の 法 界マンダラ の 場 合 も こ の 第 三 重 の 諸 尊 の 図 像 が 同 一 の マ ン ダ ラ の 他 の 重 に 較 べ て よ り詳 細 か つ 鮮 明 で あ る 。
ノ ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ は バ ク ・パ ハ ー ル の 場 合 と 同 様 に,二 人 の 愈 怒 尊 す な わ ち ウ シzニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ソ(118)と ス ソバ ラ ー ジ ャ(119)は 描 か れ て い な い 。 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の マ ン ダ ラ で は,急 怒 尊110の 外 側 に マ ン ダ ラ全 体 の 上 方 に 位 置 す る ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ソ(118)が,急 怒 尊112の 外 側 に
マンダラ 全 体 の 下 方 に 位 置 す る ス ンバ ラ ー ジ ャ(119)が い る。 しか し,バ ク ・バ ハ ー ル,ノ ・バ ハ ー ル,ブ ・バ ハ ー ル の 三 つ のマンダラ で は 上 方 の 愈 怒 尊(118)と 下 方 の 念 怒 尊(119)は 描 か れ て い な い 。 こ の こ とは ネ ワ ー ル の 他 の マ ン ダ ラ に つ い て も い い 得 る こ と で あ っ て,十 念 怒 尊 す べ て が 描 か れ る こ と は ネ ワ ー ル の マ ン ダ ラで は ほ
と ん ど な い 。
問 題 は 第 三 重 の 四 方 の 四 門(NE4, NS4, NW4, NN4)に は 部 屋 の み が 示 さ れ て お り, そ の 中 に 急 怒 尊 の す が た が 描 か れ て い な い こ と だ 。 四 維 に は 急 怒 尊 の す が た が 人 形 の 図 像 に よ っ て 表 現 さ れ て い る 。
さ ら に 困 難 な 問 題 は.今 述 べ た 第 三 重 の 四 門 の そ れ ぞ れ の 内 側 の 四 尊(NE3, NS3, NW3, NN3)の 比 定 が ほ と ん ど 不 可 能 な こ とだ 。 バ ク ・バ ・・一 ル のマンダラ の場 合 に は,い さ さ か 強 引 にNE3等 に 相 応 す るHE2等 を 四 無 磯 と考 え る 可 能 性 も な か っ た わ け で は な い 。 しか し,NE2は 明 らか に 四 摂 菩 薩 の 一 人 で あ り, NE3を 四 無 磯 の 一 人 とす る わ け に は い か な い 。マンダラ の 配 置 図 か ら考 え る な ら ぽ,NE3等 を 葱 怒 尊 の 柔 和 な す が た と 想 定 す る こ と も 可 能 か も しれ な い 。 と い う の は,NE3等 の す ぐ外 側 のNE4等 は 部 屋 の み が 示 さ れ て い る か ら だ 。 NE4等 に は 部 屋 の み が 示 さ れ て お り, そ の 住 人 は そ の 内 側 のNE3等 に 示 さ れ て い る と考 え る の で あ る 。 しか し, NE3等 の 図 像 は 明 ら か に 念 怒 尊 の そ れ で は な い 。 さ ら に,次 の 節 の ブ ・バ ハ ー ル のマンダラ の 考 察 の 際 に 見 る よ う に,NE4等 に あ た る位 置(BE4等, Bは ブ ・バ ハ ー ル を 意 味 す る)に は 人 形 の 図 像 が 描 か れ て い る の で あ る 。 こ の よ う に 考 え て く る と,HE2, NE3,
国立民族学博物館研究報告 23巻4号 く よう 第 四 重 に は,護 方 神(八 方 神)(128〜135),ヒ ソ ドゥ ー 教 の 神h・ 九 星(九 曜)・
八 竜 王 ・八 凌 亙 ・二 十 八摺 な ど の神 々(136〜216)お よび 四 門衛 と して の四 摂 菩 薩 (217〜220)が い る 。 こ の マ ン ダ ラ に お け る 護 方 神 八 尊 の 内,四 維 に お け る 四 尊 (132〜135)の 表 現 方 法 と 四 方 に お け る 四 尊(128〜131)の そ れ と は 異 な っ て い る 。 前 者 の 四 尊 は 左 右 の 尊 格 と は 際 立 っ て 異 な る す が た を し て い る が,後 者 の 四 尊 は 左 右 の 尊 格 と ほ と ん ど 同 じ描 き方 で あ る が,こ の 形 式 は バ ク ・バ ハ ー ル のマンダラ と 同 様 で あ る 。 こ の よ うに,ノ ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ は バ ク ・バ ハ ー ル そ の も の あ る い は バ
ク ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ の 伝 統 に 従 っ て い る と い え よ う。
5.ブ ・バ ハ ー ル の 法 界マンダラ
バ ク ・バ ハ ー ル の あ る 通 りを 挟 ん で は す 向 か い に ブ ・バ ハ ー ル が あ る 。 ブ ・バ ハ ー ル 本 堂 か ら 数 メ ー トル の 位 置 に 大 き な 銅 製 の 法 界マンダラ(図6〜7)が あ る 。 こ の マ ン ダ ラ の 諸 尊 の 図 像 や 位 置 は 特 に ノ ・バ ハ ー ル の も の と似 て い る よ うに 思 わ れ る 。 こ の 寺 院 の 境 内 に 住 む 人 々 に よ れ ば,現 在 のマンダラ は 二 十 数 年 前 に 新 し く作 ら れ た も の で あ り,そ れ ま で の 古 いマンダラ は 新 しい マ ン ダ ラ の 下 に 残 っ て い る と の こ と で あ った 。 古 いマンダラ の 製 作 年 に 関 し て は1945年 の 銘 が 残 っ て い る が,新 しい も の の 製 作 年 は は っ き り しな い 。
ブ ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ の 古 い も の が ど の よ うな 図 像 を 有 して い た か を 知 る こ と は で き な い が,新 しいマンダラ の 製 作 に あ た っ て は 古 い マ ン ダ ラ お よ び ハ 〜 ・パ ハ ー ル や ノ ・パ ハ ー ル のマンダラ も 参 考 に し た と 思 わ れ る 。 ブ ・バ ハ ー ル の 古 い も の も バ
ク ・バ ハ ー ル や ノ ・パ ハ ー ル のマンダラ よ り新 し い の で あ る 。
プ ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ は 四 重 構 造 で あ り,第 一 重 の 構 成 は ノ ・バ ハ ー ル の マ ン ダ ラ に よ く 似 て い る 。 中 尊 の 文 殊(1)の 周 囲 に 四 仏(10,15,20,25)と 四 妃 (30〜33)が お り,第 一 重 の 四 門(BE1,BS1,BW1,BN1,図90〜92参 照)は 小 さ く部 屋 の み で 示 され て い る 。 第 二 重 は 一 辺 十 三 の 部 屋 の あ る 四 角 い 回 廊 が 描 か れ て い る 。 こ れ は バ ク ・バ ハ ー ル の 場 合 と 同 様 で あ る。 お そ ら く,十 二 地,十 二 波 羅 蜜 等 の た め の 部 屋 を 描 い た の で あ り,四 供 養 女(90〜93)は 省 略 さ れ た の で あ る 。 第 二 重 の 門
(BE2, BS2, BW2, BN2)そ れ ぞ れ に 人 形 の 図 像 が あ る 。 そ れ らは 四 無 蕨(86〜89)と 思 わ れ る。 そ れ ら の 図 像 学 的 特 徴 はr完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 規 定 と 部 分 的 に は 一 致
ほう む げ ぎ
す る。 法 無 硬(86)は 鈎 を持 つ が,そ れ に 対 応 す る と思わ れ るBE2も 鈎 を持 つ。 義
し む げむ げ
立 川 ネ ワ ール 法 界マンダラ 図 像 資 料 ぺん む げ
つ か 否 か は 定 か で は な い 。 弁 無 磯(89)は 鈴 を 持 つ がBN2は 三 叉 戟 を 持 っ て い る。
位 置 か ら 判 断 し て,BE2, BS2, BW2, BN2の 四 尊 は 四 無 擬 と 思 わ れ る が,『 完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 規 定 と 一 致 す る と は い い 難 い 。 お そ ら く こ の ブ ・バ ハ ー ル のマンダラ の 製 作 の 段 階 で はr完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 に 代 表 され る イ ン ド的 規 定 か ら さ ま ざ ま な 側 面 に お い て 離 れ る よ うに な っ て お り,こ の 四 無 硬 の 表 現 もそ の 一 例 と思 わ れ る 。 第 三 重 で は,十 六 菩 薩,八 供 養 女,十 念 怒 尊 か ら二 人 を 除 い た 八 人 の 念 怒 尊 が 描 か れ て い る 。 第 三 重 の 門 そ れ ぞ れ に 八 人 の 念 怒 尊 が す べ て 人 形 の 図 像 で 描 か れ て い る こ と は,バ ク ・バ ハ ー ル と 同 様 で あ る 。 バ ク ・バ ハ ー ル のマンダラ で は 第 一 重 の 四 摂 菩 薩 が 省 略 さ れ て い た が,ブ ・バ ハ ー ル の 場 合 は 第 一 重 の 四 摂 菩 薩 の 部 屋 は 示 さ れ て い
る 。 そ し て,ブ ・バ ハ ー ル のマンダラ で は 第 二 重 の 門(B2)お よ び 第 三 重 の 門(B4) に も 人 形 の 図 像 が あ る 。 で は,第 二 重 の 門 と第 三 重 の 門 の 間 の 人 形 の 図 像(B3)は 一 体 誰 を 表 現 して い る の で あ ろ うか。 ネ ワ ー ル 仏 教 徒 は 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 に 述 べ られ た 規 定 あ る い は そ れ と 同 じ シ ス テ ム を 法 界 マ ン ダ ラ の 規 定 と して 守 っ て き た 。
しか し,r完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 規 定 か ら は, B3の 四 尊(BE3, BS3, BW3, BN3) を 比 定 す る こ とは で き な い 。
第 三 重 の 門 の 内 側 の 四 尊(H2の 四 尊N3の 四 尊, B3の 四 尊)を 四 無 磯 とす る こ とは で き な い 。 一 方,そ れ ら の 四 尊 の す ぐ外 側 に は 愈 怒 尊 あ る い は そ の 部 屋 が 描 か れ て い た 。 で はH2等 の 四 尊 は 誰 か と い う問 が,バ ク,ノ お よび ブ の 三 寺 院 のマンダラ に 関 して 問 題 と な っ た の で あ る。
こ の 問 題 の 解 決 の ヒ ソ トは,ス ヴ ァヤ ソ ブ ー ナ ー ト仏 塔 の 東 の 法 界マンダラ に あ る と 思 わ れ る 。こ のマンダラ で は,第 三 重 の 門 に 忽 怒 尊 が 描 か れ る の は 東 門 の ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァル テ ィ ン(118)と 西 門 の ス ンバ ラ ー ジ ャ(119)の 二 人 の み で あ り, 他 の 八 人 は 回 廊 に 描 か れ て い る。 例 え ぽ,(立 川1989:36)の 写 真19に 見 ら れ る よ う に,ウ シ ュ ニ ー シ ャ ク チ ャ ク ラ ヴ ァル テ ィ ソ は 第 三 重 の 東 門 の 中(写 真19上)に,葱 怒 尊 ヤ マ ー ン タ カ(110)が そ の 内 側(写 真19下)に い る 。 つ ま り,葱 怒 尊 が 十 六 菩 薩 や 八 供 養 女 と 同 じ列 に 並 ん で い る の で あ る 。 で あ る な ら ぽ,HE2等 の 四 尊, NE3 等 の 四 尊,BE3等 の 四 尊 は 元 来,念 怒 尊 で あ っ た 可 能 性 が あ る 。 ス ヴ ァ ヤ ソ ブ ー ナ ー
トのマンダラ に あ っ て は 第 三 重 の 南 門 と北 門 の 中 に は 念 怒 尊 の す が た は 描 か れ て お ら ず,南 方 を 守 る パ ドマ ー ン タ カ(111)と 北 方 を 守 る ヴ ィ グ ナ ー ソ タ カ(113)と が 回 廊 の 中 に 十 六 菩 薩 と並 ん で 描 か れ て い る 。 愈 怒 尊 は 護 方 神 つ ま り方 角 を 護 る 尊 格 な の で あ り,門 衛 で は な い 。
国立民族学博物館研究報告 23巻4号
お そ の 上 に 四 方 の 門 の 中 に 急 怒 尊 を 描 い て し ま っ た の だ と推 測 され る 。 ノ ・バ ハ ー ル のマンダラ で は,第 三 重 の 門(N4)に は 何 も 描 か れ て い な い 。 し た が っ て,ノ ・バ ハ ー ル のマンダラ の 製 作 者 た ち は わ れ わ れ が 扱 っ て き た 問 題 に 気 づ い た た め に ,門 の 中 に 図 像 を 刻 ま な か っ た の か も しれ な い 。
た だ 第 三 重 の 東 門(HE3, NE4, BE4)と 西 門(HW3, NW4, BN4)に 描 か れ て い る 葱 怒 尊 が,ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァル テ ィ ン と ス ソバ ラ ー ジ ャ で な い と は 正 し い の か と い う疑 問 が 残 る。 しか し,現 在 残 っ て い る 図 像 か ら 推 察 す る か ぎ りで は,そ の 二 尊 で は な い だ ろ う と 思 わ れ る 。 一 方,こ こ で 扱 っ た 三 つ のマンダラ に お け る 八 葱 怒 尊 の 図 像 が 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 の 規 定 と す べ て 一 致 して い る わ け で も な い 。 第 三 重 の 門 の 内 側 に 並 ぶ 問 題 の 四 尊(H2の 四 尊, N3の 四 尊, B3の 四 尊)は 菩 薩 形 を 採 っ て お り,三 つ のマンダラ で は 互 い に 類 似 し た す が た で 描 か れ て い る 。 し た が っ て,こ の 四 尊 に 関 す る 何 ら か の 共 通 の 理 解 が あ っ た と思 わ れ る。 しか し,そ の 菩 薩 形 の 四 尊 が は た し て 真 に 忽 怒 尊 の 図 像 で あ る か 否 か は 改 め て 吟 味 され る 必 要 が あ る。
と も あ れ こ れ ら の 三 つ のマンダラ に 残 さ れ た 図 像 を 尊 格 別 に 整 理 し て い く こ とが 現 時 点 で は 重 要 で あ ろ う。
付 記
本 稿 で 用 い た 写 真 の 内,図56〜96は 写 真 家 横 田憲 治 氏 の撮 影 した もの で あ る。 こ こに 使 用 す る許 可 を いた だ い た こ と に厚 く御 礼 申 し上 げ た い 。 な お 図1〜55の 写 真 は 立 川 の撮 影 した も の で あ る。 また 図2,4,6は 高 岡秀 鴨 氏(仏 教 資 料 文 庫,名 古 屋)作 製 の拓 本 を使 用 させ て い た だ い た。 ここに 記 して謝 意 を表 した い 。カトマンドゥ 在 住 のGauntam Ratna Bajracharyya氏 に は ネ ワー ル語 の銘 文 読解 な どで助 力 を 得 た 。 厚 く御 礼 申 し上 げ る次第 で あ る。
本 稿 は 平 成8〜io年 度 に 行 な わ れ た 国 立 民 族 学 博 物 館 の共 同研 究 「聖性 と世 界 との 関 係 に 関 す る研 究」(代 表 者,立 川)の 成 果 の一 部 で あ る。
注 i
1) カ トマ ン ド ゥ盆 地 の 寺 院 総 覧(Pruscha l975)で はA/P‑39と 番 号 づ け ら れ て い る 。 こ の 寺 院 の 名 称 はHaka Bahalあ る い はHakha Bahalと 綴 ら れ る が,そ の 発 音 は 「バ ク ・バ ・・一 ル 」 が 近 い 。 パ タ ン 市 に お け る 代 表 的 仏 教 寺 院 の ひ とつ で あ る 。(Pruscha 1975:139)参 照 。 2) (Pruscha 1975)で はC/P‑52と 番 号 づ け られ て い る 。 こ の 寺 院 の 名 称 はNa Baha豆 あ る い はNah Baha1と 綴 ら れ る が,そ の 発 音 は 「ノ ・バ ハ ー ル 」 が 近 い 。(Pruscha 1975:140)参 照 。
立 川 ネ ワー ル法 界 マ ン ダ ラ図像 資 料
4) (立 川1989:16)で は こ の マ ン ダ ラが 「チ ベ ッ ト人 の 手 に な る 」 と 書 い た 。 た しか に こ の マンダラ に は チ ベ ッ ト文 字 の 真 言 が 彫 り こ ま れ て い る が,ネ ワ ー ル 人 の 手 に な る も の で あ る 。 ス ヴ ァヤ ン ブ ー ナ ー ト寺 院 で 会 った ネ ワ ー ル 人 よ り 「こ のマンダラ は も と も と カ トマ ン ド ゥ 旧 王 宮 の 南 に あ る ビ ー ル 病 院 の 敷 地 に あ っ た も の が ス ヴ ァ ヤ ン ブ ー ナ ー ト寺 院 の 箋 内 に 移 さ れ た 」 と 聞 い た(1992年2月)。 こ の 石 製マンダラ が 乗 る 台 は(立 川1989:23)に 見 られ る よ うに レ ソ ガ 作 りの 粗 末 な も の で あ り,台 は 最 近 作 られ た も の で あ る こ とが わ か る 。
5) バ ク,ノ,ブ の 三 寺 院 のマンダラ の レ プ リカ 標 本 番 号 は そ れ ぞ れMI l756,MIl754,MI l755で あ る 。
文 献
長 野 泰 彦 ・立 川武 蔵 編
1989 『法界 語 自在 マ ン ダ ラの神 々』(国 立 民 族 学 博 物 館研 究 報 告 別 冊7号)。
Pruscha, Carl
1975 Kathmandu Valley, the preservation of physical environment and cultural heritage, a protective inventry, Vol. 2. Vienna: Anton Schroll & Co. Publisher.
立 川武 蔵
1989 「カ トマ ン ド ゥに お け る法 界 マ ン ダ ラ」 『国 立 民 族 学 博 物 館 研 究 報 告 別 冊7号 』pp.
S‑44Q
図3 バ ク ・バ ハ ー ルHaka Bahalの 法 界 マ ン ダ ラDharmadhatu Mandla諸 尊 配 置
a)137の 尊 像 は 円 盤(チ ャ ク ラ)を 持 つ の で ヴ ィ シ ュ ヌ,138は 三 叉 戟 を 持 つ の で シ ヴ ァ,139は 三 叉 の 宝 を 持 つ の で,ク マ ー ラ と 思 わ れ る 。136の 尊 像 は ブ ラ フ マ ン で あ ろ う。
b)140〜146は 七 母 神 で あ る 。142は 円 盤 を 持 つ の で ヴ ィ シ ュ ヌ の 妃 ヴ ァ イ シ ュ ナ ヴ ィ ー,141は 三 叉 戟 を 持 つ の で シ ヴ ァ(ル ド ラ)の 妃 ル ド ラ ー ニ ー,14?
は 三 叉 の 宝 を 持 つ の で ク マ ー ラ の パ ー トナ ー で あ る カ ウ マ ー リ ー で あ る 。140の 尊 像 は ブ ラ フ マ ソ の 妃 ブ ラ フ マ ー ニ ー で あ ろ う。
c)172〜175の4尊 は 『完 成 せ る ヨ ー ガ の 環 』 に よ れ ぽ 同 じ す が た で あ る が,こ こ で は 同 じ す が た の も の は3尊 しか な い 。176は ガ ル ダ 鳥 で あ り,172〜175 と 図 像 的 に 同 じで は あ り得 な い 。 し た が っ て,172〜175の 内 の1尊 が 省 略 され て い る と 思 わ れ る 。
d)177と178は ヴ ィ ー ナ ー 楽 器 を 持 つ 。178の 位 置 は 図1の 場 合 と 異 な っ て179の 次 と な っ て い る 。
図5 ノ ・パ ハ ー ルNa Bahalの 法 界 マ ン ダ ラDharmadhatu Mandala諸 尊 配 置 a)136〜139の ヒ ン ド ゥ ー 主 要 神 お よ び140〜146の 七 母 神 の 順 序 は 図1よ り も 図3に 近 い 。
立 川 ネ ワー ル 法 界 マ ンダ ラ図 像 資 料
図8 バ ク ・バ ハ ー ルHaka Bahal境 内 の 法 界 マ ン ダ ラ
国立民 族学博物館研究報告 23巻4号
図9 バ ク ・バ ハ ー ル ・マ ン ダ ラHaka Bahal Mandala (写 真 下 部 が 東)
ネ ワー ル法 界 マ ン ダ ラ図 像 資 料
図10 バ ク ・ バ ハ ー ル ・ マ ン ダ ラHaka Bahal Mandala