2019
年度前期 有機化学演習 第5回 脂肪族求核置換反応(S
N1, S
N2)
1. 以下の化合物を、ハロゲン化アルキルを使った S
N1, S
N2
反応で合成する方法をそれぞれ提案しなさい。
2. 次の2つの反応では、下の方が速い。理由を説明しなさい。
この反応は SN
1
で、カルボカチオン中間体を経由する。メトキシ基がついてい る方は、下の共鳴によってカルボカチオンが安定化されるため、反応が加速さ れる。3. 次の (1)(2) の機構を説明しなさい。(1) (S)-1-Phenylethanol を希硫酸中で放
置するとラセミ化した。(2) (S)-1-bromo-1-phenylethane
をDMSO
溶媒中で少量の
NaBr
と放置するとラセミ化した。CH
3OCH
3CH
3Cl
CH
3OH CH
3OCH
3CH
3ONa
CH
3Br CH
3OCH
3S
N1
S
N2
Cl
CH
3CH
3OH
OCH
3CH
3Cl
CH
3CH
3OH
OCH
3CH
3H
3CO H
3CO
CH
3H
3CO
CH
3H
3CO
CH
3H
3CO
H OH (1)
H Br
(2)
(1) S
N1
で、平面型のカルボカチオン中間体を通る。求核剤の H2O がカルボ
カチオンと反応するとき、カルボカチオン平面のどちら側から反応するかに よって (S), (R)が決定されるが、これらは同じ確率で起きるため、ラセミ化が 進行する。(2) S
N2
で、背面攻撃により立体反転したものとの平衡になる。4.
ジアゾメタンCH
2N
2はカルボン酸と反応して、メチルエステルと窒素を生成 する。(1)
この反応は、プロトン化されたジアゾメタンCH
3N
2+が中間に生成してい ると考えられている。CH
3N
2+のケクレ式を書きなさい(注:C, N, N
はこの 順に結合しており、H
は3つともC
に結合)。(2) CH
3N
2+ とCH
3COO
–(酢 酸の共役塩基)がS
N2
反応を起こしてCH
3COOCH
3が生成する。反応機構を 巻き矢印で図示しなさい。(3) (2)
の反応は極めて速い。理由を推測しなさい。(1) (2)
(3) N
2が極めて塩基性が弱く、非常によい脱離基であるため。5. 下のハロゲン化アルキルは、 S
N1
反応もS
N2
反応も起こしにくい。なぜか。三級でかつ
Br
の背面がブロックされているためS
N2
反応は起きにくい。また、Br
が脱離してカルボカチオンが生成すると角ひずみが非常に大きくなるため、カルボカチオンが生成しにくく、従って