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感染症学雑誌 第89巻 第 6 号
墨田区における学校欠席者情報収集システムによるインフルエンザ 流行状況について(2014〜2015 シーズン)
1)墨田区保健所,2)国立感染症研究所感染症疫学センター
松本 加代
1)菅原 民枝
2)大日 康史
2)(平成 27 年 4 月 13 日受付)
(平成 27 年 8 月 18 日受理)
Key words : seasonal influenza, school, surveillance
序 文
墨田区では感染症流行状況のリアルタイムでの把握 と早期公衆衛生対応を可能にする「学校欠席者情報収 集システム(保育園サーベイランスを含む)」(以下シ ステムとする)1)2)を,2013 年 8 月より保育園で,2014 年 9 月より幼稚園,小,中学校で導入した.本報告で は,システム導入によってリアルタイムかつ正確な把 握が可能となったクラス単位での季節性インフルエン ザの罹患状況と,それらの情報の保健所での活用状況 について報告する.
対象と方法
対 象 期 間 は,2014 年 9 月 1 日 か ら 2015 年 3 月 31 日までとし,対象施設は墨田区内のシステムを導入し ている施設(全ての保育園,学校(幼稚園含む,以下 同じ))とした.対象施設数は保育園 62 園,幼稚園 15 園,小学校 25 校,中学校 10 校であった.データは,
システムで登録されるインフルエンザによる欠席者数
(学校の場合には出席停止者数)を患者数とした.解 析は,インフルエンザ欠席者数・出席停止者数に加え て,学年毎の在籍者数を分母とした累積罹患率を求め た.
成 績
図1に累積罹患率を示した.累積罹患率は,中学生 においては 12 月第 1 週頃,小学生では 12 月第 4 週頃,
未就学児では 1 月第 2 週頃に,それまでに比べ明らか に急増した.2015 年 3 月 31 日時点での累積罹患率は 未就学児 14.1%,小学生 10.1%,中学生 9.1% であっ た.
また,これらの罹患状況はリアルタイムに把握され,
それに応じて保健所から施設,学校に対して,流行に
向けたワクチン未接種者へのワクチンの案内や保護者 への注意喚起といった情報提供がされた.システム内 の「お知らせ」を通じたインフルエンザに関する注意 喚起や臨時休業の情報等の提供は,対象期間中計 53 回だった.また,園長会や校長会等でも報告が行われ た.
考 察
2014!2015 シーズンは,システムが墨田区の全保育 園,学校に導入されたことによりリアルタイムかつ正 確なインフルエンザの発生状況が把握できた.本報告 は,単年度であるが,本システムによって罹患状況に ついて明らかにされた初めての報告となる.本研究を 通じて,2014!2015 シーズンは季節性インフルエンザ の流行は,中学生,小学生,未就学児の順に拡大して いることが明らかとなった.このことから,インフル エンザ流行のパターンとして,成人や高校生のような 行動範囲が広い年代で流行が始まり,その流行が中学 生,小学生,未就学児へと移って地域流行へと拡大し ている可能性が示唆された.これは 2009 年の新型イ ンフルエンザの国内での最初の患者が高校生であり,
徐々にきょうだい関係を通じて年齢が下の集団での集 団発生につながる,という流行拡大のパターンと同じ であり,それが季節性でも示された.また,このよう な流行状況の傾向が把握されたことで,公衆衛生行政 は,中学校での流行を把握した時点で,小学校,幼稚 園,保育園における流行の予想が出来るため,インフ ルエンザ流行に向けたワクチン未接種者へのワクチン の案内や保護者への注意喚起といった情報提供が可能 となる.本研究は単年での検討となるため,この傾向 の蓋然性があるかどうかについては,今後も検討する 必要があり,システムによる今後のデータの蓄積によ り,さらに詳細な検討ができると考えられる.
短 報
別刷請求先:(〒162―8640)新宿区戸山 1―23―1
国立感染症研究所 菅原 民枝
学校欠席者によるインフルエンザ流行状況 749
平成27年11月20日
Fig 1. The Cumulative Incidence Rate of Influenza by type of (Nursery) Schools Recorded in the (N) school absenteeism surveillance system (SASSy).
Note: The bold, gray and thin lines show the cumulative incidence rate in nursery schools, elementary schools, and junior high schools, respectively.
文 献
1)大日康史,菅原民枝,三谷真利,杉浦弘明,岡 部信彦:学校欠席者情報収集システムの構築と
評価.学校保健研究 2011;53(4):312―9.
2)大日康史,菅原民枝:症候群サーベイランス.臨 床と微生物 2011;38(4):335―40.
The Influenza Outbreak in 2014!2015 Season, in Sumida Ward, through the (Nursery) School Absenteeism Surveillance System Kayo MATSUMOTO1), Tamie SUGAWARA2)& Yasushi OHKUSA2)
1)Public Health Center, Sumida Ward, Tokyo,2)Infectious Disease Surveillance Center, National Institute of Infectious Diseases
〔J.J.A. Inf. D. 89:748〜749, 2015〕