製造業内の収益性格差
その他のタイトル Profitability Differencials between Manufacturings
著者 佐藤 真人
雑誌名 關西大學經済論集
巻 48
号 3
ページ 241‑250
発行年 1998‑12‑15
URL http://hdl.handle.net/10112/13638
論 文
製造業内の収益性格差
1 )
佐 藤 真
キーワード:収益性の部門間格差;利潤率の部門間格差;均等利潤率;資本の部門間移動 経済学文献季報分類番号: 0 2 ‑ 4 3 ; 0 8 ‑ 1 1
1. 序
2 4 1
人
本稿の目的は,資本の部門間移動を考慮すると収益性の産業部門間格差が,短期的にはともかく 持続的に拡大することはないだろうという推測の実証である。佐藤[ 1 ] は,脱工業化 ( d e i n d u s ‑ t r i a l i s a t i o n ) に伴う資本の部門間移動との関係で,製造業と第三次産業の収益性格差を分析した丸
これに対し本稿では,より一般的な観点から,製造業内での収益性の部門間格差を分析する。
本稿の構成は,次のとおりである。まず第
2節で,いくつかの収益性を定義する。第
3節では,
収益性の部門間格差の要約的統計量として,部門間の標準偏差の動向を分析する。ここまでのデー タソースは,『法人企業統計』(年報)である。さらに異なるデータ(「国民経済計算」と「民間企業 資本ストック」)を利用して,同じ問題を分析する。すなわち第
4節で利潤率を定義し,第
5節で利 潤率の部門間標準偏差の動向を分析する。最後に第 6 節で,結果を要約する。
結論を先取りすれば,当初の推測は実証される。
2 . 収益性の定義
分析対象とする収益性を定義しよう。
a. 総資本経常利益率
総資本経常利益率は,財務営業比率の一つで,
( 1 ) 総資本経常利益率=経常利益/総資本
と定義される 3 ) 。経常利益,総資本は,それぞれ損益計算書,貸借対照表の項目である。いくつかの
1)本稿作成に平成1 0 年度関西大学学部共同研究費を利用した。
2 ) [ 1 ] 佐藤真人『構造変化と利潤率』(関西大学出版部, 1 9 9 8 年 3 月),特に第 2 , 3 , 4 章 。
3) 実際には,さらに1 0 0 を掛けた。
2 4 2 関西大学『経済論集』第 4 8 巻第 3 号 ( 1 9 9 8 年 1 2 月 ) 利益率のうち,代表的なものとして注目する 4 ) 。
b, 利潤率
利潤率を,これも財務営業比率の一つである設備投資効率(=付加価値額/有形固定資産(建設 仮勘定を除く))を考慮し,次のように定義する丸
( 2 ) 利潤率=(付加価値額ー従業員給料手当ー福利費)/有形固定資産(建設仮勘定を除く)
なお分母の有形固定資産(建設仮勘定を除く)から,さらに土地を除いた場合も参照し,両者の 異同に注意する。以後, ( 2 )において有形固定資産(建設仮勘定を除く)から土地を除いた場合を利 潤率 2 と略称する。
3 . 収 益 性 の 部 門 間 分 散 度
収益性の部門間格差の要約的指標として,部門間の標準偏差に注目する。収益性の部門間格差は,
規模別クラス毎に
( 3 ) ある部門の収益性格差=ある部門の収益性ー製造業総計の収益性 で定義する。
貨幣賃金率の部門間格差についても見ておこう。収益性の場合と並行的に,労働の部門間移動を 考慮すると貨幣賃金率の部門間格差は持続して拡大しているかどうか。貨幣賃金率を,
( 4 ) 貨幣賃金率=(従業員給料手当+福利費)/従業員数 で,その部門間格差を規模別クラス毎に
( 5 ) ある部門の貨幣賃金率格差=(ある部門の貨幣賃金率ー製造業総計の貨幣賃金率) XlOO/ 製造 表 1 収益性,貨幣賃金率の部門間分散度(標準偏差)の傾向
( 1 ) 総資本経常利益率 ( 2 ) 利潤率
で
クラス 1 9 6 0 ‑ 9 6 年 1 9 7 5 ‑ 9 6 年
でクラス 1 9 6 0 ‑ 9 6 年 1 9 7 5 ‑ 9 6 年
総計 低下 ( 1%) 低下 (1%) 総計 低下 (1%) 低下 (1%)
1 低下 上昇 1 上昇 (5%) 低下
2 低下 低下 2 上昇 上昇
3 低下 低下 3 上昇 (5%) 上昇 4 低下 ( 1%) 低下 ( 1%) 上昇 ( 1%) 低下 5 低下 ( 1%) 低下 (1%) 4 低下 ( 1%) 低下 ( 1%) 6 低下 低下 ( 1%) 5 低下 (1%) 低下 (1%) 7 低下 低下 ( 1%) 6 低下 低下 (1%) 注)( )内は,有意確率である。以下同様。 7 低下 (1%) 低下 ( 1%)
注)クラス 3 の下欄は, 1 9 9 6 年の繊維工業を除いた場合。
4) 総資本は,貸借対照表の項目「資産」である。また財務営業比率,その他の利益率については,[ 2 J 大 蔵省財政金融研究所編「財政金融統計月報一法人企業統計年報特集』(大蔵省印刷局,各号)を参照。以後,
大蔵省財政金融研究所 [2] と略称。
5) 実際には,さらに 1 0 0 を掛けた。
製造業内の収益性格差(佐藤)
( 3 )
利潤率2
(土地を除いた場合)( 4 ) 貨幣賃金率
でクラス
1 9 6 0 ‑ 9 6
年1 9 7 5 ‑ 9 6
年 でクラス総 計
低下(5%) 低下( 1%) 1
上昇(1%)
上昇2
上昇 上昇 3 上昇(5%)
上昇 上昇(1%)
低下4
低下 低下(1%) 5
低下(1%)
低下(1%) 6
上昇 低下(1%) 7
低下( 1%)
低下(1%)
注)クラス
3
の下欄は,1 9 9 6
年の繊維工業を除いた場合。なおクラス
1 で, 1 9 9 6
年の化学工業を除いた場合.有 意確率への影響は小さい。業総計の貨幣賃金率 で定義しよう。
a.
傾 向総計 1 2
34 5 6 7
1 9 6 0 ‑ 9 6
年上昇 上昇 低下 低下 低下 低下
(1%)
上昇( 1%)
低下( 1%)
2 4 3
1 9 7 5 ‑ 9 6
年 上昇( 1%)
上昇(5%)
上昇( 1%)
上昇 上昇 低下 低下 低下まず時経的傾向を本項で扱い,水準と変動の激しさについては次項で扱う。傾向を問題にする期 間については,データソースと戦後日本経済史を考慮し,
1 9 6 0 ‑ ‑ ‑ ‑ 9 6
年と1 9 7 5 ‑ ‑ ‑ ‑ 9 6
年 を 選 ぶ6)0
さて各部門の総計の部門間標準偏差については,図
1
より印象を得ることができる。資本金規模 別クラス毎に,それぞれの期間について傾向の有意性を見ると,表1
のとおりである 。表1
におい て低下(あるいは上昇)は,時間(西暦年下二桁)への回帰直線の係数の符号による。回帰係数が 正(負)なら上昇(低下)である。また( )内は,有意確率である8 )
。6)
データソースについて,1960 74
年は[3]
大蔵省証券局資本市場課編『法人企業統計年報集覧』(大蔵 省印刷局,1 9 7 6
年),1 9 7 5
年以降は大蔵省財政金融研究所[2 ] (197697
年の各号)によるが,それぞれ の部門分類は異なる(前者は1 3
部門,後者は1 8
部門)。具体的な異同については,末尾の付表1
を参照。以 後,前者を大蔵省証券局[3]
と略称。また戦後日本経済に関し,
1 9 7 0
年代前半に構造変化があったことについて,ほとんど異議はないだろう。7)
クラスは資本金規模により,次表のように略称する。クラス 資本金規模(単位:百万円)
1 2 未満 2 2 5 未満
35 10 未満 4 1050 未満 5 50100 未満 6 1 0 01 , 0 0 0 未満 7 1 , 0 0 0
以上8)有意確率は,傾向がない(係数=0) という帰無仮説を棄却する危険率であり,
5 %
以下の場合に表示 した。以下同様。2 4 4
関西大学『経済論集』第4 8
巻第3
号( 1 9 9 8
年1 2
月)( 1 )
総資本経常利益率 (2) 利潤率2 5
2 0 2 0
1 5 1 5
1 0 1 0
4,,,,,,,,,.,,
』 ↓ ' " ' " ' ' ' ' ' ' ' ' ' ' ' ' ' ' ' " " " ' " " " ' " ' ' ' ' ' ' ' ' ' ' '
1 9 6 0 6 5 7 0 7 5 8 0 8 5 9 0 9 5 1 9 6 0 6 5 7 0 7 5 8 0 8 5 9 0 9 5
( 3 )
利潤率2 (土地を除いた場合) ( 4 )
貨幣賃金率4 0 2 5
2 0 3 0
1 5 2 0
1 9 6 0 6 5 7 0 7 5 8 0 8 5 9 0 9 5 1 9 6 0 6 5 7 0 7 5 8 0 8 5 9 0 9 5
図1
収益性,貨幣賃金率の部門間分散度(標準偏差)全体としては,収益性の部門間格差に上昇傾向はないと結論できよう。これは,当初の推測にと って自然な結果である。より具体的には,次の点に注目したい。
1 . ほとんどの場合,有意性はともかく低下傾向が見られる。特に総計については期間を問わず,
例外なく有意な低下傾向が見られる。また期間 1 9 7 5 ‑ 9 6 年では有意な上昇傾向は見られない。逆に,
上昇傾向が有意な場合は 4 例(利潤率,利潤率 2 ' クラス 1, 3 , 1 9 6 0 ‑ 9 6 年)である。
2 . 大規模クラスでは低下傾向がより鮮明である。例えばクラス 4 7 では,ほとんどの場合,有 意な低下傾向が見られる。特に期間 1 9 7 5 ‑ 9 6 年では例外がない。他方,有意性を問わないとしても,
当該クラスで上昇傾向が見られるのは 1 例(利潤率 2 ' クラス 6 , 1 9 6 0 ‑ 9 6 年)である。
貨幣賃金率の場合,収益性の場合程一様な結果は得られず,有意な上昇傾向を示す例が小規模ク
ラスに比較的多く検出される。総計については, 1 9 7 5 ‑ 9 6 年に有意な上昇傾向が見られる。後者は,
表
2 ( 1 )
総資本経常利益率製造業内の収益性格差(佐藤)
収益性,貨幣賃金率格差の部門間標準偏差:平均と標準偏差
( 2 )
利潤率\
クラス 平均1 9 6 0 ‑ 9
標準偏差6
年 平均1 9 7 5 ‑ 9
標準偏差6
年1 4 . 7 3 5 2 2 . 0 8 9 2 4 . 4 9 6 6 1 . 3 8 9 2 2 3 . 6 0 0 3 2 . 3 8 2 7 3 . 2 6 1 6 0 . 8 6 0 0 3 2 . 9 3 7 0 1 . 0 7 2 7 2 . 9 2 6 7 1 . 1 5 3 0 4 2 . 2 0 3 1 0 . 8 3 4 8 1 . 9 7 5 8 0 . 5 4 8 8 5 2 . 2 5 0 9 0 . 6 5 7 5 2 . 1 7 1 1 0 . 6 7 7 6 6 2 . 0 8 7 7 0 . 5 1 3 1 2 . 0 8 8 8 0 . 5 2 4 8 7 1 . 8 3 2 4 0 . 4 4 9 3 1 . 9 1 4 1 0 . 5 4 2 4
総計1 . 6 8 8 2 0 . 4 0 6 0 1 . 5 9 3 6 0 . 3 7 6 0
注)クラス1
の標本数は,期間19 6 0 ‑ 9 6
年の場合,1 9 6 0
年が欠損のため他のクラスより
1
少なく3 6
である。以下同様。( 3 )
利潤率2
(土地を除いた場合)\
クラス 平均1 9 6 0 ‑ 9
標準偏差6
年 平均1 9 7 5 ‑ 9
標準偏差6
年1 5 6 . 4 4 8 1 5 4 . 3 5 8 0 6 9 . 9 6 6 6 6 4 . 8 9 4 8 ( 4 8 . 8 6 0 5 2 4 . 1 6 7 4 ) ( 5 7 . 5 5 0 5 2 3 . 4 3 0 5 ) 2 3 6 . 9 0 9 9 1 8 . 7 3 1 9 4 1 . 0 8 4 1 1 3 . 7 0 7 0 3 3 7 . 3 7 4 5 6 5 . 0 9 6 8 4 8 . 7 6 8 2 8 3 . 1 6 7 6 ( 2 6 . 8 9 8 5 8 . 0 0 9 2 ) ( 3 1 . 1 4 9 4 7 . 1 5 1 4 ) 4 1 9 . 0 1 0 4 5 . 2 3 6 9 1 9 . 4 9 3 9 4 . 8 2 5 8 5 2 0 . 7 4 3 0 5 . 8 0 4 1 2 0 . 2 5 1 6 6 . 5 6 3 3 6 1 7 . 9 2 4 7 6 . 8 4 6 6 2 0 . 5 2 1 4 7 . 5 2 1 6 7 2 1 . 8 5 2 0 6 . 4 0 2 3 1 9 . 1 8 6 8 5 . 0 6 4 3
総計2 0 . 4 9 9 3 4 . 0 8 7 4 2 0 . 8 2 5 8 4 . 6 9 7 7
注)クラス1
の異常の原因は19 9 6
年の化学工業,クラス3
の異 常の原因は19 9 6
年の繊維工業である。( )内は,当該標本 を除いた場合である。収 益 性 の 場 合 と 対 照 的 で あ る (図 1も参照)。
b.
平 均 と 標 準 偏 差収 益 性 格 差 の 部 門 間 分 散 の 程 度 ( 標 準 偏 差 )
の
水 準 と 変 動 の 激 し さ を 見 よ う 。 要 約 的 統 計 量 と し て,部門間標準偏差の平均と標準偏差に注目する。
ク ラ ス 毎 に 整 理 す る と , 表
2
の と お り で あ る 。 ま た 図2
よ り , 一 般 的 印 象 を 得 る こ と が で き る 。 図2
において,各線分は, 一 方 の 端 か ら 順 に 各 ク ラ ス を 表 す 。 煩 雑 さ を 避 け る た め ク ラ ス1
だ け に 記 号 を 添 え た が , 他 方 の 端 は ク ラ ス7
で あ る 。 実 線 は 期 間1975‑96年 の 場 合 , 破 線 は 期 間1960‑96年 の2 4 5
\
クラス 平均1 9 6 0 ‑ 9
標準偏差6
年 平均1 9 7 5 ‑ 9
標準偏差6
年1 3 8 . 6 3 4 7 1 7 . 0 6 5 9 4 4 . 7 8 2 3 1 4 . 7 7 1 4 2 2 9 . 3 0 1 1 1 5 . 7 9 2 7 3 2 . 0 5 3 8 9 . 4 2 0 7 3 2 9 . 5 9 7 1 5 4 . 4 7 6 1 3 8 . 4 0 5 9 6 9 . 8 3 4 5 ( 2 0 . 9 0 5 0 6 . 1 3 9 6 ) ( 2 3 . 7 8 7 5 5 . 7 5 6 7 ) 4 1 2 . 8 9 9 7 4 . 1 0 8 6 1 2 . 1 9 2 8 3 . 4 1 9 2 5 1 4 . 8 5 9 7 5 . 0 6 4 8 1 3 . 1 3 3 5 4 . 6 3 1 1 6 1 2 . 4 9 2 0 4 . 2 4 1 3 1 3 . 0 7 1 4 5 . 0 2 5 1 7 1 6 . 6 0 8 6 6 . 9 2 0 4 1 2 . 8 2 9 2 4 . 1 2 8 4
総計1 4 . 8 5 5 0 4 . 0 1 6 0 1 3 . 7 2 7 3 4 . 0 6 1 0
注)クラス3
の異常の原因は1 9 9 6
年の繊維工業である。なお( )内は,当該標本を除いた場合である。
( 4 )
貨幣賃金率,~ 1 2 5平均. 5 1 0 9 7 6 5 0 9 ‑ 9
標準偏差6
年. 6 8 0 2 2 5
平均. 6 1 6 9 6 7 6 5 1 ‑ 9
標準偏差6 0
年. 1 0 2 4
2 2 2 . 7 0 9 4 1 0 . 2 9 1 3 2 0 . 7 3 1 9 3 . 3 4 5 4 3 1 9 . 8 7 1 3 6 . 6 4 6 5 1 9 . 2 2 1 5 3 . 4 7 3 2 4 1 7 . 4 6 8 0 2 . 9 0 5 3 1 7 . 2 8 5 0 1 . 8 4 9 9 5 1 8 . 8 0 7 9 5 . 0 1 9 6 1 7 . 2 8 5 0 2 . 1 9 9 4 6 1 9 . 2 8 6 0 2 . 7 6 7 4 1 8 . 7 9 6 9 1 . 4 6 6 6 7 1 6 . 4 4 9 3 3 . 2 9 1 4 1 5 . 5 2 6 3 1 . 9 3 1 0
総計2 7 . 1 9 0 2 3 . 5 2 8 0 2 8 . 0 3 6 2 1 . 4 2 3 1
標準偏差
2 . 0
1 . 5
1 . 0
0 . 5
( 1 )
総資本経常利益率1 k
` `
` `
` `
ヽ
` ` `
'
りヽ
ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ
9 ,
'
ヽ '
ヽ
︑ , ^
'
'
ン
3 . 0 平
ー
4 . 0 5 . 0 均
注)実線は期間1
9 7 5 ‑ 9 6
年,破線は19 6 0 ‑ 9 6
年の場合。以下同様。
246
関西大学『経済論集』第48
巻第3
号(1998
年12
月)a ( 2 ) 利潤率
b標準備差 標準偏差
7 0
6 0
I
ゾII 1 5
5 0
4 0
3 0 I I 、 / I 1 0
2 0
1 0 ] ・ t ~ I 5
0'.... . .
I •'
...'.........、
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 1 0 2 0 3 0 4 0 50
平 均 平 均
注)繊維工業(クラス 3 , 1 9 9 6 年)を除いた場合 ( 3 ) 利潤率 2 (土地を除いた場合)
標準偏差 a
標準偏差
b901 2 5
8 0 ,
1ol ,~I I 1 / 2 0
6 0
5 0 ~ ・ I ' ; ・ I // 1 5
4 0 3 0
l / / : / / / 1 0
2 0 1 0
。
] 、"#• 5
'
' '
,
'
' '
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0
平 均 平 均
注)化学工業(クラス 1 , 1 9 9 6 年),繊維工業(クラス 3 , 1 9 9 6 年)を除いた場合
図
2 収益性,貨幣賃金率格差の部門間標準偏差:平均と標準偏差
場合である。
表 2 あるいは図 2 を,次のようにまとめることができよう。小規模クラスでは,部門間の分散度 が一般的により大きく,時経的な変動もより激しい傾向が見られる。
図 2( Z ) aにおいて,クラス 3の標準偏差の大きさは異常である。そこで各製造業の当該クラスの
利潤率に遡ると, 1996 年の繊維工業の利澗率が非常に大きく,原因であると推測できる。実際,こ
( 4 ) 貨幣賃金率
製造業内の収益性格差(佐藤)
れを除いた場合の結果を見ると
2 4 7
( 図 2( 2 ) bを参
標準偏差
照),当該標本の影響は非常に大きいことが確かめ
1 0
5
1
﹃ ‑
` `
{
` ー
ヽヽ ー
︑ . ︑ .
ー
ヽヽ
I ヽ"ー ー ー ー
ヽ
贔 '
'
ヽ'
'
ノ
.
'ヽ `
.︐
1 5 2 0 平 均
2 5
られる (縦軸の目盛の違いに注意)。
同様に図
2(3)aにおいて,
偏差の大きさは異常である。そこで各製造業の利 潤率 2 に遡ると,
学工業,
クラス 1 ,
クラス 1 については 1 9 9 6 年の化 クラス 3 については利潤率の場合と同じ 1 9 9 6 年の繊維工業の利潤率 2 が非常に大きく,原 因であると推測できる。 これらを除いた場合の結 果も示したが(図 2( 3 ) bを参照),当該標本の影響 の大きさを確かめることができる
違いに注意)。
4 . 利潤率の定義
3 の標準
(縦軸の目盛の
同じ問題を異なるデータで分析する。利潤率を,国民経済計算の「経済活動別国内総生産および 要素所得」と「民間企業資本ストック」を利用して,次のように定義する丸
( 5 ) 利潤率 営業余剰(各年価格)/(国内総生産(各年価格)/国内総生産 ( 1 9 9 0 年価格))
民間企業資本ストック ( 1 9 9 0 年価格)
ここで,国内総生産(各年価格)/国内総生産 ( 1 9 9 0 年価格)が介在するのは,営業余剰(各年価 格)を国内総生産(各年価格)/国内総生産 ( 1 9 9 0 年価格)で 1 9 9 0 年価格に評価するためである 10)0
( 5 ) を次のように書き換え,利潤分配率と資本係数によって決まると解釈することができる。すなわ
ち,( 6 ) 利潤率 営業余剰(各年価格)/国内総生産(各年価格)
民間企業資本ストック
=利潤分配率/資本係数
( 1 9 9 0 年価格)/国内総生産 ( 1 9 9 0 年価格)
'
~ ~‑ ' ‑ で ,
( 7 ) 利潤分配率=営業余剰(各年価格)/国内総生産(各年価格)
資本係数=民間企業資本ストック ( 1 9 9 0 年価格)/国内総生産 ( 1 9 9 0 年価格)
9) 実際には,さらに 1 0 0 を掛けた。また利潤率の分母には,「民間企業資本ストック」(四半期データ)の 4 期の平均を使った。「経済活動別国内総生産および要素所得」と「民間企業資本ストック」のソースは,何 れも「日経総合経済ファイル」である。
1 0 ) これに対し,佐藤[ 1 ]
(第2 章)では民間企業資本ストック ( 1 9 8 0 年価格)を民間企業設備デフレータ
ーで各年価格に評価した。何れも営業余剰(各年価格)と民間企業資本ストック ( 1 9 9 0 年価格)を同時に
利用するための対応である。
2 4 8
4
関西大学『経済論集』第4 8 巻第 3
号( 1 9 9 8 年1 2 月 ) である。
3
利潤率の部門間標準偏差の動向は,図 3 のようである。ただし,データの欠損 について,次の点を注記しておこう。
1970~74年について,出版•
印刷,石 油・石炭,窯業・土石,精密機械の 4 部 門で民間企業資本ストックのデータ値が 欠損している。したがって,この期間は,
石油・石炭,窯業・土石,精密機械の利 潤率は欠損,したがって当該期間の利潤 率の部門間標準偏差は,これらの部門以外についてのものである。
また「経済活動別国内総生産および要素所得」と「民間企業資本ストック」の部門調整で,後者
2
゜ 1 9 7 0 7 5 8 0 8 5 9 0
図 3 利潤率の部門間分敦度(標準偏差)
5 . 利潤率の部門間分散度
9 5
の出版•
印刷はその他の製造業に加算したが,もちろん 1970 74 年についてはデータ値欠損のため 加算されていない 11)0
さて図 3 より容易に予想できるが,実際, 1 9 7 0 年以降についてはもちろん,データ値欠損がない 1 9 7 5 年以降についてみても,危険率 1 % 以下で,回帰係数=O の仮説を棄却できる。
6 .
結論製造業内の収益性の部門間格差を異なるデータを利用して分析した。注目した統計量は部門間標 準偏差,利用したデータは『法人企業統計』(年報)と主に「国民経済計算」である。収益性の部門 間格差が,短期的にはともかく持続して拡大することはないだろうという推測は,どちらのデータ によっても実証される。この傾向は,特に資本金大規模クラスで鮮明である。また収益性の部門間 分散度(標準偏差)は,小規模クラスではより大きく,変動もより激しいことが分かる。
1 1 ) 他に部門調整は,「民間企業資本ストック」の鉄鋼業と非鉄金属を統合し,「経済活動別国内総生産およ
び要素所得」の一次金属に対応させたのみである。「経済活動別国内総生産および要素所得」と「民間企業
資本ストック」の産業分類については,末尾の付表 2 を参照。
製造業内の収益性格差(佐藤) 249 付 表
1業 種 の 分 類
( 1 ) 業種分類表 (196074 年 )
業種名 構成業種
1 食料品製造業 食料品・たばこ製造業
2 繊維工業 繊維工業
3 パルプ・紙・紙加工品製造業 パルプ・紙・紙加工品製造業
4 化学工業 化学工業
5 窯業・土石製品製造業 窯業・土石製品製造業
6 鉄鋼業 鉄鋼業
7 非鉄金属製造業 非鉄金属製造業 8 金属製品製造業 金属製品製造業 9 機械製造業 一般機械器具製造業
10電気機械器具製造業 電気機械器具製造業 1 1輸送用機械器具製造業
(船舶製造業を除く) 輸送用機械器具製造業 1 2 船舶製造業
1 3 その他の製造業
衣服•その他の繊維製品製造業,木材・木製品製造業,家具・装備
品製造業,出版•印刷・ 同関連産業,石油製品・石炭製品製造業,
ゴム製品製造業,なめしかわ・同製品・毛皮製造業,精密機械器具 製造業,武器製造業,その他の製造業
注)構成業種は日本産業分類の中分類による。
注)大蔵省証券局資本市場課編
r法人企業統計年報集覧」(大蔵省印刷局, 1 9 7 6 年)上巻, 3 ページを参照。これが,
196074 年の分類である。
( 2 ) 業種分類表 (197596 年 )
業種名 構成業種
1 食料品製造業 食料品製造業,飲料・飼料,たばこ製造業
2 繊維工業 繊維工業
3 衣服•その他の繊維製品製造業
衣服•その他の繊維製品製造業4 木材・木製品製造業 木材・木製品製造業(家具を除く)
5 パルプ・紙・紙加工品製造業 パルプ・紙・紙加工品製造業 6 出版•印刷・同関連産業
出版•印刷・同関連産業7 化学工業 化学工業
8 石油製品・石炭製品製造業 石油製品・石炭製品製造業 9 窯業・土石製品製造業 窯業・土石製品製造業
10
鉄鋼業 鉄鋼業
1 1非鉄金属製造業 非鉄金属製造業 1 2 金属製品製造業 金属製品製造業 1 3 一般機械器具製造業 一般機械器具製造業 1 4 電気機械器具製造業 電気機械器具製造業 1 5 輸送用機械器具製造業 輸送用機械器具製造業 1 6 精密機械器具製造業 精密機械器具製造業 1 7 船舶製造・修理業 船舶製造・修理業
1 8 その他の製造業 家具・装備品製造業,ゴム製品製造業,なめしかわ・同製品・毛皮 製造業,武器製造業,プラスチック製品製造業,その他の製造業 注)大蔵省財政金融研究所編「財政金融統計月報一法人企業統計年報特集 j (大蔵省印刷局, 197697 年の各号)を参
照。これが, 197596 年の分類である。
250 関西大学『経済論集』第