奈良教育大学学術リポジトリNEAR
過疎地の家計に関する一研究 −奈良県吉野郡大塔 村の実態−
著者 清水 キワ
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 24
号 1
ページ 99‑121
発行年 1975‑11‑15
その他のタイトル THE LIVELIHOOD IN OUTSTANDING UNDERPOPULATED REGIONS ‑From The Data Obtained In Oto Village In Yoshino, Nara
URL http://hdl.handle.net/10105/2583
過疎地の家計に関する一研究
j:j・'.互十I一・・'臣ふ・. I と.:
清 水 キ ワ (家政学教室) (昭和50年4 jJ30日受理) I ま え が き
かつて高度成長を誇った日本経済は、昭和35年頃より全国的に勤労者の大量移動をひきおこし、
人口の過密・過疎というアンバランスをもたらした。重大なこの経済現象に対して地域整備法や 過疎地域対策緊急措置法などが施行されたことは周知のとおりであるO ここで調査の対象地とし て選んだ奈良県吉野郡大塔村も、昭和46年4月過疎地域に指定されている。
ひのき
この地では『およそ300有余年以来、この急峻地に杉、槍の植栽が行なわれてきた』1㌦ 大塔 村の中心職業は山林労務で日本有数の吉野大山林地帯を維持する村落群の一つとして今日に至っ たo Lかし現在は人口減少率が年々高く地域論的過疎2)の様相をも示しているO このような急激 で高率な人口減少を引きおこす原因のうち、大きな比重を占めると思われる家計面について、こ れら家計が直面している問題を捉えるべく実態調査をすすめたO
現時点におけるこれら家計の収入・支出面の成果をえたので報告し過疎地家計論考の一助とし たい。
Ⅱ 調 査
大塔村の特徴 この村は吉野山地の中央部に位置するO 地相、地味とも林業地として最適で 且つ雨量にも恵まれ、標高は300 to以上、村面積の99%余が山林である。従って生業は杉・槍の 育苗から素材業に至る林業であるO 日本有数の林業地帯に位置して吉野特産の本末同大の杉・櫓 の良材を生産するO 人口は十余年来年平均8%余の減少率を示し、昭和48年4月現在、世帯数 549、人口1423、1O人/haである。医師は隣村十津川と掛け持ちで在村過3日、保健所は‑‑市四村 の‑管轄区域に入っている。このほか村の生活を支え
‑)じと一ノ
る最少限度の公共的施設と店舗があり、村の中心辻堂 表1大塔村の面積及び種別面積,比率 に大塔村小学校、数集落に小学校分校、そして寮設備
のある中学校が一校ある。
調査時期 昭和48年2月から同11月未までである。
調査方法 当地の婦人会長、小学校長、元小学校 長、前教育長の協力をいただき、役場産業課、山林労 働組合(労働者側組合) 、森林組合(所有者側組合)
に出向いてききとりをしたり、調査統計等の資料を集 めると同時に各集落にわたってアンケートを実施し回 答をえた。一方山林労働者家庭10戸の泊りこみ調査を
99
種 別 lill 帖 hu 比 率
総 面 積 1 10 97 100
山 林 109 55 99
田 り 0
畑 4 8 .2 0 .3
そ の 他 9 3 .8 0 .7
昭和48年8月大塔村役場資料
100 iff 水 キ r7
図1 奈良県過疎地域図.大塔村の位置
西
し、また山林労働者家庭を主とした主婦24名と懇談をした。即ちまず昭和45年国勢調査統計第3 巻第14表「産業従業上の地位、男女別就業数一都道府県市町村」をもとにして役場産業課、山林 労働組合、森林組合、家庭主婦、山林労働者に当って産業の実情を聴取し、或いは登記面上地目 は畑で実際は山林であるところをみとどけたりして、大塔村を代表する生業が山林労務であるこ
とを確めたO家計面については各集落にわたるアンケートを実施(50部配布、完全有効回収37) したO 更に詳細に調査するために家庭主婦3‑7名ずっ計24名の主婦との懇談による聴きとり調 査を15回、家庭訪問(泊りこみ)による聴きとり及び実態調査を10回行なった。これらを通計す れば有効対象は71で、うち山林労働者の主婦は48である。このうち大塔を代表する山林労働者の 家計を調査するのであるが、比較上その他の家計をも含めて調査をした。調査内容は家族員、年
表2 大塔村過疎化の状況
蝣T ‑ fj 世 帯 数 人 口 減 少 率 %
1 3 6 .4 9 2 1 4 0 9 2
蝣i 3 7 .4 9 1 7 3 9 8 1 2 .7
3 3 8 .4 6 6 4 3 0 3 1 2 3 、8
4 3 9 .4 v lS 2 8 4 0 6 .3
5 4 0 .4 6 3 2 2 6 9 3 5 .2
6 4 1 .4 6 18 2 5 5 4 5 .2
7 4 2 .4 6 0 9 2 3 9 9 6 .1
8 4 3 .4 5 7 9 2 1 7 9 9 .1
9 4 4 .4 5 5 0 2 0 0 3 8 .1
1 0 4 5 .4 5 2 2 18 1 7 I) 蝣'
l l 4 6 .4 4 8 8 16 9 6 6 .5
u 4 7 .4 蝣Ii S 16 1 6 4 .7
1 3 4 8 .4 4 6 5 1 4 4 7 10 .5
1 4 4 8 .8 4 5 9 14 2 3
令、学歴、職業、収入方法、収入額、支出の状態及び慣習などとのかかわりあい等全面にわたっ たo 家計の収入面では収入に対する願望、期待、心配ごと、という項を設け、一方生活費支出の 面では負担に感ずる度合及びその理由などを吐露してもらった。これは過疎地家計、特に山林労 働者家庭の問題点を鮮明にしたいためである。
Ⅲ 本 論 1 大塔村民の職業
大塔村民の職業に関する統計資料は昭和45年の国勢調査統計第3巻第14表である。これによる と第一次産業(農業・林業)従業者、第二次産業(土木建設・鉱業)従業者、第三次産業(製造 販売・サービス・公務)従業者と画然と分類してある。
しかし本調査の結果、大塔村民の職業実情は第三次産業を除く農業、林業、土木建設業及び鉱 業等の従業者は同一職業のもので極めて少数の「役員」 、 「雇人のある業主」を除くはかは本質 的に山林労働者で専業又は兼業の山林労働者であるQ即ちこれら第一次、第二次産業従業者の実 情は次の通りである。
(1)農業従業者の実情
大塔村は十余の過疎村が隣り合っている山間のその中央部に位置し,急傾斜の山地で、田はな く畑も少ないO 登記面の地目が畑であっても畑、山を問わず村全体が急峻な山であるから実際は 杉・槍の林になっているものもある。畑になっている土地では僅かな自家用歳菜を栽培するほか
102
は杉・槍の苗木栽培、薬草等の栽培が 専ら行なわれている。
本調査によれば、地積4反歩(40ア ール)を所有し専業農業で生活できる のは村に2戸だけで、そのほかは所有 面積が少なく、零細なものは5畝歩
(5アール)程にすぎない。また仕事 の畳からみても県業のほかに兼業の仕 事をもつことが可能である。即ち杉・
槍の苗木栽群は、播挿してから3年目 の春に苗木として販売される。薬草も 春に播種し. 1年後に移植され、 2年 目の7月'11/1に収穫される。こんに ゃく半は春に種芋をうえ晩秋に収穫さ
油 木 ‑¥ '7
写真1大塔村畑の状態
大塔村の畑はどこも急傾斜である 手前は薬草,細かに見えるのは杉
・槍の苗であるO
れるD このような状態であるから、都巾近郊農家のよ:)な年中の畑仕事は存在しないo そのため 農業従業者の多くは雇われてFlI林労働に従事することを主な職業とする兼業者となっているU
以上のような実態であるから農業従業者の実情は『農業従業者の95%以上は兼業の山林労働者 で家計の85%以上を山林労働収入に依っている』 13) 、『山林労働組合に籍のある者も多い』 (山林 労働組合森Ji氏及び調査対象の山林労働者などの談話)C以上の理由で国勢調布統計の分類上、農 業従業者となっている者は、農業兼業のIll林労働者である者が多いU 凶2‑1は凶212と理解
するのが実情に即する.
図2‑ 1 大塔村農業従事者数 S45国勢調査Vol.3 T.14
図2‑2 本調査に上る蹟業従事者の実情 斜線部分は山林労働者 以下同じ
t良美専業者1/o
者
(2)林業従業者の実情
現在の役場資料(上記国勢調査統計)によれば、全林業従業者314名のうら山林労働者は255 名(81%)である.同じく統計上『雇人のある業主5名(2%弱)は素材業者で常に裾人を使っ ているC』同じく同統計上、残りの雇人のない業主44名と家族従業者10名については、次の談話に よって大塔村林業の特殊性及び山林管理の実情をまず理解するとともに,この人達も隻た山林労 働者であることを理解することができる。即ち『当地方は多雨地で樹木の繁殖率が高く、また人
造林規模も全国一のため単位面積当たり石数が他府県の倍である0 20‑クタ‑の山林を所有すれ ば採算がとれる。 20‑ククーは自家の山仕事としてやや過重な程度であるo 』 『この人達は20‑
クタ‑、もしくは20‑クタ‑以上山林を所有し、山林家といわれるものである。』 『20‑20‑クタ ー以上の山林所有者であっても,または20‑クタ‑以下の山
林所有者であっても、仕事の種類によっては山林労働者を雇 い、また仕事の別の種類によっては自分も山林労働者として 働きに出るのが普通である。大山林所有者はみな村外者で、
役場帳簿に雇人のない業主と記されている これら山林家は 小規模の山林家である』。また次の事情も常にみられる。即
ち山林所有者は良材を生産するために4月から8月までに下 刈り(又は下払い)を、 11月から3月までくらいの半年は枝 打をするのが原則である。零細な山林所有者は幾人かが互い の山に・出向き助け合って仕事をすすめてゆくのが普通である。
これは危険をさけるためと能率を上げる必要からである。そ
表3 大塔村山林所有状況
所 有 面 積 ha 所 有 者 数 人
20 未 満 5 49
20 以 上 27 50 以 上 13
1(カ 以 上 6 48
5(カ 以 上 2
計 597
昭和48年8月 大塔村森林組合資料 の間の仕事の報酬は互いに労働日数で相殺し、それをこえる労働日数については時価に従って貸 金が支払われる。これらの仕事がない時は、彼等は雇われて山林労働をするO 『20‑クタ‑以上 又は以下の山林所有者もやはり雇われて働く兼業の山林労働者であるO 組合に籍を置くものもあ
る』 (森尾氏談)。このような状況から昭和45年国勢調査統計による村内林業従業者中、専業及 び兼業の山林労働者は98%に達するといいうる。従って図3‑1は図3‑2と理解するのが実情 に即するo
図3‑1 従業上の地位別15才以上就業者数 図3‑2 本調査による大塔村の実情 大塔村林業.国勢調査統計Vol.3 T. 14
(3)土木建設業・鉱業の実情
当地の土木建設業務は現在では、 「過疎地域対策緊急措置法」 4)に基づく「過疎地域振興方針」5) によるもので、国道・林道・村道等の整備が主要部分をしめる。鉱業は製材業及び砂利採取業で 土建業、鉱業とも民間企業が行なっている。製材業は村民の建築の必要に応じて一時的に行なわ れるにすぎない。砂利採取業は昭和44年から始められたが砂利採取があまりに烈しいため、保安 上危険な状態にまで至ったので、中止の時期に近づいているという。これらの労働者はすべて、
もともと山林労働者であった(本調査) 。これらの業務は長期的、専業的なものでなく、短期的
104 .、,',水 蝣V‑ ''
散発的でこのような仕事のない場合,これら労働者は雇われて山林労務につくO 上記国勢調査統 計上、土木建設業、鉱業従業者として分類されているものも、本質的には山林労働者で『この人 達も組合に籍をおいている者が多い』 (森尾氏談)o図4‑1は従って図4‑2と理解するのが実 情に即するといえよう。
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15才以上就業者数
以上これを要するに大塔村の農業、林業、土木建設及び鉱業等に従事している者は、少数の
「役員」及び「雇人のある業主」を除けば、他はすべて山林労働者であるというのが実情であるo 昭和45年の国勢調査統計の数字を用いてのべるとこれら従業者総数568 (このうちに役員と雇人 のある業主19を含む)の96%が山林労働者である。即ち第一次、第二次産業従業者を合計した地 位別数は次のようになる。
L.て日i‑‑ 1 Ll,u,‑il∴'/:・蝣‑:‑蝣Y;蝣;i∴ tf 蝣蝣;*.:・'(蝣.x; く f.T小1,トAI†亡:】u'i'捉
従業Lの地位別15才以L就業者数 国勢調査統計Vol.3 T.14
なお第一次、第二次、第三次産業全体の大塔村全就業者(915)のうち、山林労働者(本調査 に依る549 、図6斜線部分)は60%である。換言すれば、大塔村は山林労働者の集落から成る山 村であって、大塔村民の職業は山林労働者によって代表されるといってもよい。この意味におい て山林労働者の消長は大塔村の消長と同一であるといっても云い過ぎではない。
図6 大塔村全就業者中の山林労働音数(本調査による比率) (国中の数字はS45国勢調査統計Vol.3 T.14 のもの)
2 大塔村民の家計(1)収入面
転じて大塔村民の生活状況を分析しよう。大塔村は山林労働者の村であることは前述のとおり であるo従って大塔村の過疎化につながる村民の生活上の問題は、山林労働者の家計を調査するこ とによって見出しえられるであろう。調査対象71人に対して行なった(家庭の収入面での願望、
期待、心配ごと)を自由に一位、二位にわけて記入させた結果、一位は次の通りである0 (2位は副収入でのべる) 暴、
○ 主人の健康安全が日々たえず心配である。
○ 年令、性別に関係なく誰でも働ける安全な職場があるとよい。 ‑18
○ 毎日ほぼ定まった額の収入があるとよい。
○ 退職金制度があるとよい。
これらの願望は特に山林労働者家庭の直面している家計上の問題のうち、主要なものを浮彫り にしているように私には思われる。即ち一位の願望は2つの問題に大別することができる0 1‑〕
は山林労働者の健康上の問題、 2は同じく収入上の問題である。今回の調査に基づいて、これら の間埴点をもう少し掘り下げてみようo
(A)山林労働者の健康上の問題
山林労働は、それが行なわれる場所からも、また仕事量からも危険の多い重労働である。
1)山林労働者の年令
山林労働組合の資料によると30才, 40才、 50才代のものが多く、 20才代は激減している。最年 長者は72才であったo 烈しい労働の割に高年令者が多いことは注目に値するo
衷4 年令別組合員構成 昭和48年3月31日現在
年 代
性 別 2 0 代 3 0 代 4 0 代 5 0 代 6 0 代 7 0 代 合 計 平 均 年 Tl
男 6 2 3 5 1 2 1 1 8 2 1 J l 4 6 .7
女 ‑ 3 2 0 1 4 6 4 3 4 9 . 1
計 6 2 6
‑ 7 1 3 5 2 4 '} 1 6 4 4 8 .2
奈良県大塔梓山林労働組合資料
106 清 水 キ ワ
2)山林労務の種類、職業病、労働災害
ほつきい
山林労務の種類は伐採(自動鋸を使用) 、搬出(架線による集材、クレーンによる積荷、トラ ックによる搬出) 、や毘鼠い(伐採後、植林前の整地) 、植林、下刈、枝打(木に登。体を幹にくくしたかりえだうら りつけ不要の枝をおとす) 、木おこし(風雪で倒れた木をおこし、木と木、或いは山に打ちこん
しぽ
だ支柱と木を紐で結び、木を垂直に保つ) 、絞り(床柱にするため槍等樹木にたて凸凹をっける 作業) 、憲蔓転どで、これらは急峻湿地における作業で仕事量は多く、危険度も高いo殆んどの 山林労働者が慢性の腰痛を訴えている。また伐採用自動鋸は手鋸の20倍以上の能率を上げるがそ れの使用時の振動は毛細血管の血行障害をおこし、手指がしびれ、激痛を伴ない、白蝋状となる ので白蝋病とよばれている。進行すれば筋萎縮、心臓障害をおこし廃人となる。昭和45年5月に 新しく職業病に指定された。
弓和47年死亡災害業種別数 図7‑2 昭和47年休業8日以上死傷者 (奈良県)奈良労働基準局 事業所別数 奈良労働基準局
「労働災害のあらまし」より 「労働災害のあらまし」より
(B)山林労働者の収入上の問題
山林労働者は日雇である。大塔村は多雨地で冬季の積雪も多く、また村落共同体維持のため稼 働目数は少ない。また雇用が慣行的・非近代的であるための雇用及び給与上の問題も多い。未組 織労働者は特に割がわるいO また村道・林道の開設・整備・近代化は仕事を合理化に直結するた
め、労働者の賃金決定の基礎となる時間を短縮し、収入減を来たしている。
1)山林労働者の就労ルート
村外の大山林所有者は、特定の村内山林所有者に山林管理の全権限を委ねる。この委ねられた
しゆ‑'と:)
者が主頭である。主頭は更に他の特定の村内山林所有者に管理の実務を担当させる。この実務を 担当させられたものを古詩りというO山守りは更に特定の山林労働者に必要数の山林労働者を集
めさせる。主頭は村の大権力者で山守りがこれに次ぎ、山守りに目をかけられる特定の山林労働 者もまたこれに次ぐ。これら権力者と山林労働者との関係は『親方に施しをうけているから、親 方のいうことは有難くきく』という主婦達の声に象徴されるように支配従属の関係にある。中程 度の山林所有者は主頭をおかず、山守りと特定の山林労働者をおくo 山守りもおかず、特定の山 林労働者だけをおくもの、生涯雇用関係の山林労働者をもつもの等もある。この生涯雇用の関係
は慣行的に山持ちも労働者も代々親から子に引きつがれ、今日に至っているものである。また山林 所有者が組合に雇用を申し入れ、組合が組合員によびかける方式もある。
図8 大塔村に於ける山林労働者の就労ルート
しゆっとう
1大山林所有者1‑1‑ 主頭 ‑‑ 山守 一特定の山林労働者 ‑必要数山林労働者 (村外大山林所有者) (村内山林所有者) (村内山林所有者)仙守の信用する労働者)
2 中山林所有者‑ 一山守 一特定の山林労働者一一一1‑必要数山林労働者 (村内外山林所有者)
3 中小山林所有者‑二二二 1)特定の山林労働者 必要数山林労働者 2)生涯の雇用関係をもっ山林労働者
4 中小山林所有者‑一・一一‑山林労働組合 各集落山林労働組合員即労働者 2)山林労働者の雇用契約
雇用契約にもいろいろ種類があり、問題が多い。雇用期間は3日〜7日のものから、長ければ 半年位のものもある(本調査による)o
ア) 日給を基礎にした出来高払い契約7)
仕事の最終日の決算で仕事の出来高が多ければ、給与は出来高に従って稼働日数以上支払われ るし、出来高が少なければ、その日数分だけ労働基準法第27条81により保障される。決算結果の 出来高を多くするため、仕事面で危険を冒すことが多いo また決算時の手取金を多くしたいため
、内金9)は少な目に労働者の側で見積る傾向がある。つまり利子のつかない貯蓄である。内金 支給日は翌月の5日〜15日の間で、これは古くからの長い慣行であり、主婦たちは余裕があると
いう気分で満足し、別に不合理とは思っていないようである。
イ) 日給支払契約
日給額と目数で給与額が決まる。給与の支払いが翌月になる点はア)と同じである。
ウ) 請負契約
労働者側であらかじめ,所有者側から注文された山林労務の、完成に必要な受取金額をきめる0 日数、労働時間は労働者側の自由にまかされる。給与支給日、内金額決定は前と同様である。こ の場合、少ない目数で給与をうるようにつとめるので、無理をしやすい。婦人会長0氏の経験談 によると、夏は朝4時から夕方の7時まで仕事をするのが常だったという。
エ) 生涯雇用関係
この主婦は年収60万円という。内金、内金給与日などは上述の場合と同じで盆と幕に清算する。
この主婦達もこの慣行に不満を示すものはない0 3)村道・林道の整備近代化
村道・林道の\整備近代化は仕事の合理化に直結し、却って貸金計算の基礎である労働日時を短 縮する結果となっている。
4)村落共同体維持の日数
村道・林道の簡単な整備、葬式(1人死亡で夫婦共で3日費える) 、病気見舞(1日) 、村落 維持の役(学校・社寺維持、婦人会その他公共的な用役)等の日数は稼働日数にくいこむが、村
民は当然の義務と考えている。むしろ維持人数の不足が村落の解体をおこした事例もあるので、
さ,Lたに /ノり1
(猿谷は昭和42年、中峯は昭和45年維持不能のため村落の解体を招いた)力を入れている現状で ある。
108 清 水 キ ワ
図9‑1 山林労働者の雇用契約、給与の方法
1 、日給基礎の出来高払い契約の場合 2、日給支払い契約の場合 契約関係 給与の実態
山守
又は中小山林家 山林労働
・、・トii I h
契 約
○ 仕事の内容
○ 出来高払い
○ 内 金 額
○ 内金支給日
○ 就労期間
T
特定の山林労働者A
lh柿蝣蝣'J働
山林労働
・ : ; i
分支朋鶴
L' 'J
算酒
z lS i 終終以
最最﹁十
契約関係 給与の実態
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∴
容欄間0 0 0
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又はA及び)''皿.‑′′U :∵':.I..I'J.‑M:蝣j.>
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と出来高を比べ出来高不足の 時は労基法27条にて保障
1."'>I 、 ・・! i
○ 給与額は日給×稼働日数
○ 清算までの給与金は内金
○ 内金は給与額の70‑80%
3、請負契約の場合 契約関係 給与の実態
A∴
∴ 二
∴
‑
‑ 一
容額日間額∴
〇
〇
〇
〇
〇
臓 掛 抑 鵬
Ill fr、引軸
目
︻ h U ‖
山林労働
HEsa玩蝣
1カ月目 50
15B前月分給与
後与以給
= =‑ ‑
* ‑!
終終月日 r
i jV 鈷
丁十
‑‑
‑
特記しないところは 1と同じ
4、生涯雇用関係 雇用関係 給与の実態
‑ ー
清算の結果労働日数及び 仕事量にくらべ清算金額
では損の場合と利益の場 特定の山林労働者 合とある。 1人又は1人以上
1月
I.1・iI二
2月 〝
JJ
Il
//
〃
11
8月清算
芸呂)内金
〝
〝
12月清算
表5 大塔村民の村落維持に費やす日教
年 内 に
費 や す 目数 10 12 ‑ 13 15 17 20 25 30 40
回 答 数人 1 1 3 5 4 6 6 4 4 計
34 lltt紬・l軒I 8 )) 1こ.渦た
5)山林労働者の稼働日数
稼働日数は天候や村落維持のため不同であるがおおむね極めて少ない0 表6 大塔村山林労働者月別平均稼働日数
月
9 10 11 12
J稼働日数 回答日数 月平均
計 人 % 稼働 日数
月労り 稼働 f日 t辛 均
13 20 20 11 20 17 17 18 18 18 185 7 20 .5 ]│ = 15 ‑ 5 15 21 21 13 20 18 18 19 19 19 197 24 70 .5 豊 = 16…5 8 18 22 22 14 21 18 20 20 19 18 208 9 .0 讐 = 17 ‑‑4
昭和48年8月 本調査 備考1カ月の稼働日数
6)山林労働者の賃金 貸金水準は表7の通りである。
最低・一....5日 最高・=‑・22日
表7 県山労支部別賃金状況 (単位 円)
支部別 西 吉 野 天 川 黒 滝 下 市 大 塔 十 津 川 東 舌 野 ! 川 上
撫 育 餌) 3500 4000 3500 4000 40 00 50 00
400 0 500 0
35 00 55 00 4500 伐 出 囲) 4000
4500 5000 5000
6000 5000 50 00
60 00 600 0 60 00 800 0 6000 下 刈 ㈲ 20α) 2500 2000 1800 2500
30 00 2000 300 0
2000
3000 2500
備 考 日 給 日 給 日 給 日 給 日 給 11 ・n 日 給 ll fc i
昭和48年奈良県山林労働組合資料 7)退職金
退職金準備のため昭和40年から中小企業退職事業団に掛金をかけ、 30年かけて300万円をうる 予定という。これに加入する前は30年働いて5万円の慰労金であったという。
表8 退職金準備掛金の状態
中小企業退職事業団への掛金月額 3 0 0 0 円
掛 金 内 訳
大 塔 村 1 0 0 0 使 用 者 1 0 0 0
本 人 8 0 0
奈 良 県 2 α)
昭和48年8月 大塔村山林労働組合資料
110 清 水 キ ワ
8)山林労働者の収入の状態、その他大塔村民の収入状態
仕事が天候に左右され、稼働日数が月によって不同で且つ少いから、収入も定まらないしまた 少い。日給額は高いとしても月額は少ない。大塔村民一般の収入状態がむしろ安定している。
図10 大塔村に於ける山林労働者家庭及び一般家庭の収入状態(昭和48年5月)
・: i iu;捕.硬.‑'illも蝣Hitl、)那:) .(.iitVW △M i. ^ないL川蝣蝣I <&熊も多い日収 LJ, 、I'‑K‑j^l川1
‑ II給とI.:Jl:'ri I ̀t‑:;'t輔用 (凱tはI)if,J ⑳内金L
※※ 内金総額と給JJ・総額の差額は+及び一の時あり
(C)山林労働兼業の農業従業者及び山林労働者家庭の烏業、内職による副収入
収入に対する願望、期待、心配ごとの第1位は山林労働に関するものであった。第2位は次の ように、これら家庭の副収入に関するものである。
○ 苗木の値段がもっと高いとよい。
○ こんにゃく、薬草の値段がもっと高いことが望ましい。 ‑‑23 0 村に安全な誰でも働ける職場がほしい。 ‑ 14
〇 割のよい内職があるとよい。
○ 退職金制度があるとよいO
前に述べたように、本調査によると、農業を専業とするものは2戸であったから、農業従業者 となっているものの98%までが、山林労働に主として従事し、農業の収益は副収入となっている。
従って・第二位の願望は、これら家庭の主婦による副収入についてのものである。農業のみで生 計のたっ人は、年間100万円の収入であるという(本調査による) 。兼業農業の副収入は多い人
で60万円、少い人では3万円程度である(本調査) 。次にそれを概観しようo 1)杉・槍の苗木による粗収入
杉・槍の良木より採種する。または森林組合より種子を購入する‑ 4月半ばに播種‑翌年3月 移植‑翌々年3月さらに移植し‑これを翌々々年3月苗木として収穫、定植す。つまり3年後に 商品となる勘定であるo この間移植.播種とも連作は不能で、一年間土地をあけなければならぬ 30アールから13,000本収穫した(0氏の場合) 。 1本16円(昭和48年4月) 。播種から3年目 に収入をあげたことになるO これらの苗木は森林組合が一括購入し、村内外の需要にあてる。昭 和48年5月当地で茄子、トマト苗はいずれも1本35円である。
2)薬草、こんにゃく芋の栽培による粗収入
はいも
ア)只母 7月播種‑翌年6月収穫。 7年間連作不能。 5アールより80キログラム収獲(F氏 の場合) 0 4キログラム当たり3,800円。ほぼ2年がかりで76, 000円の粗収入である.
とうき
イ)当帰 3月播種‑翌年4月移植し、 11月末収穫、太陽乾燥し3月未うる。 4アールから40 キログラム収穫、 4キログラム当たり3, 000円。粗収入は30, 000円(M氏の場合)である。
ウ)こんにゃく芋 4‑5月植付‑10月末収穫、連作不能、 1年間あけるC 5ア‑ルより400 キログラム収穫、 4キログラム当たり1,450円、粗収入145.000円(O氏) O これは腐敗菌の為 収穫零の時が往々ある。
3)手内職による収入状態
手内職は殆んどないO 次の2種類がみられただけであるo
ア)洋便器カバーのまつり縫 1枚3円50銭、月700枚、月収25,000円o Lかしこの仕事は年 中はない。
イ)ニットブラウスの前立、衿あみ、立って機械であむ。ナイロンもの1枚18円。テトロン・
麻混1枚30円。 1日11時間仕事をし、月26,000円。
以上の状態であるから内職がよいとも云えないO
表9 大塔村農業従業者家庭の収入状態
作 付 作 物 作 付 面 積 収 穫 数 量 単 価 佃 租 収 人 用
苗 木 0 .1 ha 430 0 本 16/ 本 688 00
貝 母 (薬 草) 0 .1 160 kg 950 / yts 1520 00 当 帰 回 0 .1 100 kg 750 / kg 750 00
※こんにゃく芋 0 .1 1200 kg 360 / kg 432 000 昭和48年8月 本調査
※ こんにゃく芋は収穫が0になることがある。
備考 農業の耕作面積 多い人・・‑‑0.4 ha 少い人L・‑・‑7 a 年間粗収入 多い人 ・30二桁Tl
少い人・‑‑・3万円 3 大塔村民の家計(2)支出面
つぎに大塔村民の家計の支出面をみよう。生活費支出上の問題点を鮮明にするために「生活費 支出上、特に重い負担と感ずる費目を第1位から第3位まであげさせた。その結果はどれもみな 第1位から第3位まで食物費、交際費、教育費、交通費、医療費のくりかえしであって、第3位
llL> 清 水 キ T7
の4番目に僅かに被服費が上っているo これら第1位から第3位までくりかえし挙げられる費目 はいずれも生活必需的な費目ばかりである。交際費は大塔村においTは村落維持費用ともいうべ きもので、収入面で述べたように生活必需費といわなければならないO 大塔村民は生活必需的な 費目の支出に負担を感じているのだから、文化的な、支出の弾力性をもつ費目である教養娯楽費 や、木材の豊富なこの土地における住居費、光熱費などはまだ魚担と感ずる費目の中には入って
二蝣cい̲.
必需的な費目である食物費、交際費、教育費;交通費、医療費等が頻繁に負担と感ずる費目と して挙げられているということは、収入額の少ないことがまず第‑‑の原因で、さらに大塔の地理 的な悪条件や、古来からの慣行等のために負担となっている費目が因となり呆となって悪循環を 重ね、互いにit迫し合っているという状態によるものに外ならない。ある特定の費目の支出が負 担であるのではなく、ここに挙げられているどの費目の支出にも、殆んど同様の重い負担を感ず るということである。負担と感ずる生活費の第1位の費目群、第2位の費目群、第3位の費目群 をあげれば次の図のJようになる。上記の回答に従って、生計を庄迫している大塔村の生活事情を 調査によって分析してみようo
図11生活費支川上負担となる費目の順位 (本調査)
図11‑2 重荷と思う生活費の第2位
(1)大塔村の物価状態
昭和48年8月現在、戸数454 、人口1505 (大塔村役場統計) O 本稿、 Ⅱ調査の表1にみるよう に、大塔村には水田がなく、村外から米を買わねばならぬことをはじめ、都市と同様すべての生 活物資を買わなければならない。村に人口が少なく、この地方の中心都市五条まで36キロあるば かりでなく、交通の便がわるいので交通費もかさみ、ために諸物価が独占的な高水準を保ってい るO 食料品(野菜.果物・魚肉類)は鮮度もわるく、また食料品に限らず一般に商品の種類、品 質、数量が限られているため、選択の余地は殆んど存在しない。
生活に関連する店舗は、諸種の食料品・米穀及びプロパン・家庭電気器具・履物・雑貨・たば
つじどう さかもと
こ・豆腐製造小売・そば・うどん飲食店・理髪美容等が辻堂に12、幸嵐こ10、阪本に15あるOほ かに銀行出張所、郵便局、診療所が夫々1ヵ所づっある。このほか食料品の行商3人が不定期に
まわってくる。比較可能の商品をとって奈良市のものと比べると次の通りである。
表10 大塔における食料品価格及び奈良市(スーパー)との比較
品 目 比 較 量 奈 良 市 の 価 格 大 塔 の 価 格 奈良市 との比較その倍率
米 lO fc o 1 5 9 0 2 5 0 0 1 .5 7
マ ヨ 不 一 ズ
5 0 0 a 1 9 0 2 4 0 1 .2 6
3 (泊 9 1 18 1 6 0 1 .3 1
鮭 缶 2 2 0 9
1 10 l l.‑.
1 8 0
1 .2 9 1 .2 4
鯛 味 噌 2 0 0 G 8 0 1 2 0 1 .5 0
鯛 で ん ぶ i o o a
8 8 1 0 0
12 5
1 .4 2 1 .2 5
う ず ら 豆 パ ッ ク 2 α) a 8 0 1 0 0 1 .4 3
鰯 み り ん 干 パ ッ ク 5 0 g 8 0 1 2 0 1 .5 0
鱈 す き み 8 0 g 5 8 9 0 1 .5 5
豆 腐 1 コ 6 0 7 0 1 .1 7
イ ン ス タ ン ト
ラ ー メ ン外 碓 1 袋 2 8 4 0 1 、4 3
金ちゃんラ】 メン 1 袋 2 0 4 0 2 .0 0
卵 1 個 1 8 2 4 1 .3 3
昭和48年8月 本調査 備考 昭和48年8月 消費者物価指数 全国平均 125.0
同 奈良市 127.1 (昭和45年を100 とする)
総理府統計局 家計調査報告 昭和48年8月分による
114 f, ill人‑〜
表11人塔における衣料品等価格 及び奈良市(スーパー)との比較
品 目 奈 良 市 大 塔 奈良iiとの比
の価 格 の 価 格 較そのW fヰi
※運動着上衣 長袖 45 750 1 .67
(5 .相 川 ) 短軸
420 720 1 .7 1
※.轟、、. 良
M 士 ズ ボ ン 如
450 800 1 .78
420 770 1 .8 3
フ < 'I ム フジカ ラ】 420 450 1 .0 7
昭和48年8jj 本調査
※ ビニロン 55'>ム 綿45% 混紡 テトロン 50% 綿50% 混紡
※※ ポリエステル 30% 綿70% 混紡 ポリエステル 55% 綿45% 混紡
野迫川村 ′.
図12 大塔村の集落位置
ai村 滝
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備考昭和48年8Jj消費者物価指数 全国平均125.0
同奈良市127.1 (昭和45年を100とする) 総理府統計局家計調査報‑'1‑1 (=1昭和48年8月分による
(2)大塔村の食生活事情
アンケート及び調査懇談による主婦達は全 員悉く山菜(わらび・蕗・符・せんまい・茸
・ぎぼうし・雪の卜・木の芽などIt‑数種)を 用いることがわかった。僅かな自家の武菜及 び山菜のほか歳薬類は全く買わないという主 婦が大部分であった。山菜だけを用いるとい う主婦も2人あった。『子供を高校に入れて いる間は山菜だけを用い、他の食品は買わな かった』という主婦もあった。動物性食品の 摂取も少ない。米の消費量は割合に多い。労 働が烈しいせいであろう。
(3)交際費
大塔の村民は村落共同体意識が強い。村は 村民の時間・労力・費用の結集によらなけれ ば維持されていかない。村道・林道の修理維 持をはじめ、村落のうちや親戚間の冠婚葬祭
ff/
/ I・津川村
0 5km 卜 ‑I‑‑1
表12 米の消費量とその代価
家 族 叡 1 カ月に消費する重量由 同 じ く そ の 代 価 円
2 ノ\′3 14 2 4 3 5 0 0 6 0 0 0
4 2 8 3 0 7 0 0 0 ‑ 7 5 0 0
5 2 7 .2 ′、′7 6 6 8 0 0 1 9 0 0 0
6 6 0 7 2 1 5 0 0 0 1 8 0 0 0
7 6 0 6 8 1 5 0 0 0 ‑ 1 7 0 0 0
昭和48年8月 本調査 備考1 奈良市 配給米IOfca‑1590円
自由米IOfca‑‑2214円 大塔 村で一般に販売されている米
IOfc0 ‑25α3R
備考2 「総理府統計局 家計調査報告(昭和48 年8月)第3表年間収入5分位階級別1世帯 世帯当たり1カ月の収入と支出」の第5
分位階級
4人家族(4.17人)によれば
主食米 3715 Wkg‑;蝣15墨蒜)
パン 840 めん類681
計 5236 である。
すべての場合を通じ、村落全体、親戚全部で
処理してゆくO このためには仕事も休んで専念するO出産・入学・卒業・結婚・年祝は出かけて ゆき金品や物資を贈るo 死亡の場合は夫婦で3日、病気の場合は1日出向き品物やお金を贈与す る。これについて宇井のFさんは『しんどくてもこれは頼母子H'Jですから当然です』といった。
相互扶助の慣行が遠い昔からあったことと、またそれがなければ村の生活が維持できないことを 物語っている。村落中峯は人口流出で昭和45年ついに解体したO 村落の何人かが離村すると、雪 崩現象的に相っいで多数が離村し、中峯のように解体にまで至ったと村人はいうが、幾世帯かが 欠けると村落を維持する連帯責任が金銭の面からも、労力の面からも保てなくなったものである
と思われる。 『結婚祝として贈るものは、洗濯機・掃除機・炊飯器・扇風機などで最低でも電気 アイロン位』で、 『入学祝としては大学17津1以上、高校で5000円、幼稚園でも 500円が最低 で、葬式には村のものは時間・労力のほかに3000円、親戚になると15000円が最低です』 (婦人 会長桶谷さん談)という。家計の上からは交際費は負担であるが、村落維持のためには貨幣、物 とも十分に出すのが当然と考られている。どちらの面も責尖なのである(村落維持日数は表5参 輿)0
(4)教育費
大塔村の高校進学率は卵%である(大塔村教育委員会、昭和48年8月現在)。 36キロ離れた五 条市に県立高校と私立高校の2校がある。大塔からは通学できないので寮にはいる。 46才の主婦 は『高校を3人卒業させた。 2人も高校に在学した間は禄な副食物も食べず、着物、道具などは 勿論、交通費などがかかるから相の外へも一度も出なかった』という。小学校校長を定年退職し
表13 教育費(高等学校)の現状
県 立 f.1.
2 0 0 0 入 学 金 5 0 0 0 0
0 受 験 料 4 0 0 0
12 0 0 × 1 2 ノ】 × 3 年 = 4 3 2 0 0 授 業 料 6 1 00 × 1 2 )ー × 3 1ト = 2 1 9 6 0 0
0 トと 蝣ォ・ 14 0 0 × 1 2 × 3 = 5 0 4 0 0
1 7 O × 1 2 ×3 = 6 1 2 0 生 徒 会 費 2 0 0 × 1 2 × 3 = 7 2 0 0 2 5 0 × 1 2 × 3 = 9 0 0 0 育 友 会 費 1 0 0 × 1 2 × 3 = ニ56 0 0
0 嘘 h ) 普 15 0 0 × 3 = 4 5 0 0
0 誕 生 会 費 12 0 0 × 3 = 3 6 0 0
4 9 6 0 × 3 = 1 4 8 8 0 検 使 料 積 3/.等 0
10 0 0 × 1 2 = 1 2 0 0 0 旅 行 積 立 10 0 0 × 1 2 = 1 2 0 0 0 8 月
5 0 0 0 × 1 1 + 2 5 0 0 × 3 = 1 7 2 5 0 0 小 遣 (5 0 0 0 ×11 + 2 5 0 0 )8 II × 3 = 1 7 2 5 0 0 40 0 0 × 3 = 1 2 0 0 0 灘 H I;, 40 0 0 × 3 = 1 2 0 0 0
3 0 0 卒 業 寄 付 3 0 0 0
2 7 2 0 0 0 ※ 小 計 5 4 2 4 0 0
8 ノJ
10 0 0 0 × 1 1 + 1 5 0 0 ) × 3 = 3 3 4 5 0 0 寮 費 (9 5 0 0 × 1 1 + 3 ! × 3 = 3 2 4 0 0 0 0 寮 費 後 援 会 費 1 0 0 0 × 1 2 × 3 = 3 6 0 0 0
6 0 6 5 0 0 ※ ※ 合 計 9 0 2 4 湘)
昭和48年4月 本調査
※ 通学可能地域に於ける塔柱子弟の高等卒業までに要する最低学資
※※ 大塔村居住者子弟の高校卒業までに要する最低学資
116 清 水 キ ワ
た(46年春) N氏は二人の息子を私立四年制大学に就学させ、長男は卒業、次男は今二回生、
(昭和48年8月)二人の娘は私立短大を卒業させた。この期間に、 50ヵ所、 24‑クダーの山林が 13カ所、 8‑クタ一 に減ったという。村民は教育費に頭を痛めている。こと子弟の教育の問題 になると、どのような条件でも山を出なければならないと思うようである。調査世帯の戸主の学 歴は次の通りである。
(5)交通費・医療費・被服費
交通費が高いために五条・奈良・大阪・京都へは出ないという。五条又は大阪に出ると生活物 資が安いことはわかっていても、交通費のために出られないという。一主婦の家計簿によると、
大阪往復運賃 3,645円である(1人分)。 また 京都往復運賃 2,600円、 同じく下市820円 であるo 月収 75,000‑95,000円 の家庭の主婦は、年間を通じて大阪・京都へは一度も出てい an
医療費については、医療費そのものと共に、それに伴う看護人の費用、交通費が負担でたえら れないという。
被服費は収入に応じて支出しているが、一般に非常に質素であるO 主婦達は夏用・冬用の婦人 会集会用のトッパーを持ち、公私にかかわらず外出用として着用しているO 結婚のとき、実家か ら持参した着物を生涯、よそ行き用として着用するという。山林労働者の家庭では仕事の段落に 当って決算されたお金が入ると、貯蓄或いは念願の着物を買ったりするという。
1、平均生活費
金 額
図14 大塔村に於ける生活費支出の状態 (調査及び懇談による大塔相の生活費)
75
4 5 6 7 10 1 1 5 (万円)
牡帯数(71) 18 17 5 15
iff<‖}¥1
家族数 i: L\、 "'.‑,"!‑、トli ci、二 rt‑' こi ,i 7、 :・ 5 ‑ 1 5 、 1 3‑2 4‑7 4‑3 6・=8 3‑3 4‑3 6・‑ 4‑・1
5‑5 4‑1 5‑6
6‑・3
2、支出の最も多い月の生活費 金 額
世帯数(71)
3、支出の最も少ない月の生活費 金 額 3 4
7 757.8 8 0 11
ヽ′ "
12 12 10 8 17
( 一蝣 * r '=一一
2 1
145 万円)
壮者数(71) 6 18 18 18 3
昭和48年6月 本調査
(6)全国勤労者平均家計、奈良市勤労者(ブ′レー)平均家計と大塔村民の家計との比較 表14 攣国勤労者平均家計 ※※奈良市勤労者平均家計※※※大塔村勤労者平均とその他家計
全 国 黍 良 市 大 塔 村 大 塔 村 大 塔 村
昭 和 昭 和 昭 和 昭 和 昭 和
(4 8 年 平 均 ) (4 8 年 9 月 ) (4 8 年 9 月 ) (4 8 年 9 月 ) (調査 家 計 中最 小支 出)
(4 8 年 9 月 ) (私 立 高校 生 を もつ家 計
世 帯 人 .員 人 3 .8 5 4 .0 5 4 .2 8 6 .0 0 5 .00
世 帯 主 年 令 才 40 .9 4 0 .6 4 3 .6 3 4 .0 4 5 .0
世 帯 主 収 入 1 0 26 C対 (定 期 ) 10 6 0 8 5 定 期 ) 8 3 1 7 0 ( 賢 台篇 び
7 5伏 X ) H 給 ) 9 5 0 00 日 給 )
賞 与 1 カ 月 当 り 3 6 7(氾 i
な し "V L
妻 の 収 入 9 40 0 7 5 1 3 1 6 90 1 1 8 0(刀 ( 不 定 ) 2 0 0 0 0 (器 豊
計 1 48 7 ∝ ー (税 込 ) 1 13 5 98 手 取 ) 10 00 7 1 手 取 ) 9 30 0 0 手 取 ) 1 15 0 (カ (手 取 )
消 費 支 出 1 16 9 9 2 90 58 9 7 9 2 9 8 4 9 30 5 8 7 5 8 8
食 物 費 3 52 15 " ‑30 % 4 1 95 0 一日4 6 % 3 1 7 0 1 … 4 0 % 20 20 0 " ‑4 1 7 0 2 4 3 4 0 ‥ 2 8 % ( 主 食 ) (4 8 4 4 … 13 % ) (38 5 7 ‑‥ 9 % ) (8 50 0 … 2 6 % ( 10 2 (X ト 5 0 % (9 0 00 ‑ ‑3 7 % ) 住 居 費 1 26 4 1 ‥ 1 1 % 7 28 4 ー‥ 8 % 2 3 9 4 … 3 % 78 0 ‥ー1 .5 % 3 2 2 … 0 .3 % 光 熱 費 39 9 3 ‥ .3 % 4 49 4 ‥. 5 % 3 8 9 3 … 5 % 3 5 7 0 ー‥ 7 % 3 6 (泊 … 4 % 被 服 費 1 30 8 0 ‥ 1 1 % 6 24 9 … 7 % 4 3 5 6 … 5 % 2 30 5 日. 5 % 7 0 8 3 … 8 % 衛 生 費 6 13 2 ‥ .5 % 2 18 2 ‥ー2 % 2 7 8 2 ‥. 4 % 7 80 … 1 .5 % 19 3 0 … 2 % 教 育 費 25 2 7 ‑‥ 2 % 50 2 5 … 5 % 6 4 8 9 ー‥ 8 % 3 37 0 … 7 % 2 6 3 17 … 30 % 教 養 娯 楽 費 99 3 7 ‥ .9 % 45 8 3 ‑‥ 5 % 3 9 0 3 ‥. 5 % 2 2 6 0 … 5 % 15 2 0 … 2 % 交 際 費 9 12 1 ‑‥ 8 % 4 14 2 … 5 % 11 5 3 0 ー‥15 % 36 0 0 ‑蝣・7 % 12 2 9 0 ‑‥14 %
交 通 通 信 費
1
7 7 9 3 日. 7 % 14 19 ‑‥ 2 % 8 22 0 ‑‥ 10 % 8 2 4 0 ー‥1 7 % 4 2 2 5 ‥. 5 %
118 ifi 水 キ T‑
そ .の 他 16652 ‥14 % 1326 1日ー15% 4030 … 5 % 4200‑‥8 % 5961‑‥7 %
貯 蓄
45 186 10825 天引) 4894 5000 1(XM O
国民年金 国民年金 国民年金
1000 1900 3α)
生命保険 生命保険 生命保険
2000 4700 10430
本u'ijft
※ 総理府統計局 昭和49年3月30日発行 家計調査通信 第87号による。
※※ 奈良市在住勤労者(ブルー) 20世帯の平均O
※※※ 大塔村山林労働者商店給料生活者70位帯の平均。
備考 各支出費目の%はエンゲル係数及び各費目の消費支出中に占める比率である。
大塔村の家計はどれも、世帯主収入が全国勤労者平均家計及び奈良市勤労者(ブルー)平均家 計よりもはるかに少ない。妻の収入は大塔の家計の方が多いが、これは不確定な収入であるから。
そのま,計算に入れることは出来ない。矢張り大塔の家計収入の方が少ないO
大塔村民の食物費は全国勤労者平均家計及び奈良市勤労者平均家計よりも少いが、エンゲル係 数は大塔村民の方が小さい。これは山菜を用いたり、粗食であることを示すものであるo
住居費は大塔村が木材の産地であるためか少ない。
被服費は大塔村民の方が格段に少ない。教養娯楽費も同様である。
交際費は大塔村民の方が多い。
教育費、大塔の私立高校生をもつ家計は、家計総収入が全国勤労者平均家計よりも低く、奈良 勤労者平均家計とほぼ同じであるのに、教育費がこれら二者の家計よりもとび抜けて多く、食物 費が一段と低いのは注目に値することである。
Ⅳ む す び
以上において、私は大塔村民の生計を収入・支出の両面にわたって分析し、その顕著な特徴を 明らかにしたつもりであるが、最後になお若干の補足を加えて全編のむすびにしたいと思う0
1. 大塔村の職業は林業だけで、第一次、第二次産業従業者とも、すべて本質的には山林労 働者である。従って山林労働者の消長は、とりもなおさず大塔村の消長と同じであるといいうる。
2. 山林労働者には労組に組織されているものと、未組織のものとがあり、前者は就労ルー ト、保健上、収入上からも後者に比べてまさっている。
3. 山林労働者は組織されていると否とにかかわらず、ともに日雇である。当地方の天候上、
稼働目数が極めて少なく、従って収入状態もまた極めてわるい。就労に対する給与は生活をささ えるものでなければならないが、こうした原則ともいうべきものが、ここでは通用していないO これら労働者は、稼働不能の日には、それが長びいたとしても稼働のための準備の日日であり、
稼働可能の日には、それがたとえば請負であるからにもせよ、朝は4時から夕方の7時事でも。
精魂をかたむけて働き、稼働不能日の労働分を取りかえすのであるo 時間的にも、仕事量の上か