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購入時価会計の論理

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(1)

購入時価会計の論理

上野清貴

Abstract

Edwards and Bell proposed the current cost accounting. It plays a roll of the performance evaluation of management by making comparisons between periods and between firms possible.

It can measure events as they occur; that is, the actual events of a period can be recorded to the ex- clusion of events which occurred in earlier periods or which may occur in future periods-all the e- vents of a period and only the events of that period. The current cost accounting also plays a roll of the decision making of management by dividing business income into the current operating profit and the realizable cost saving. But after examining these rolls in detail, I concluded that they are restricted to the asset purchase actions and the current cost accounting is not a formal accounting system but a temporary one because current cost is not a suitable asset valuation basis in the for- mal financial statements. The sale value accounting also measure all the events of a period and only the events of that period, therefore it is a common feature of current value accounting. We have to study the logic of the sale value accounting again.

Keywords: current cost accounting, sale value accounting, current value accounting

I まえがき

近年,会計理論および会計実務は歴史的な 変革期にあり,その最たるものは資産および 負債を時価で評価する時価会計の一般的普及 である。これはわが国のみならず,全世界的 な傾向であり,アメリカ財務会計基準審議会

(FASB)や国際会計基準審議会(IASB)

をはじめとして,各国の会計基準設定機関は続々 と時価会計に関する意見書を公表している。

そして,それらの意見書は金融商品会計お よび外貨換算会計に端を発し,年金会計(退 職給付会計)および貸付金や固定資産の減損 会計にまで及んでいる。さらに,時価概念に 目を向けてみると,時価の範疇に従来の購入 時価や売却時価のみならず,将来予測される キャッシュ・フローをある割引率で割引く現

在価値が含まれ,これが会計において大きな 地位を占めつつあるのが現状である。

しかしながら,私見では,これらの意見書 はある統一的な会計概念ないし利益概念のも とに構築されたものではなく,理論的に考え ると,各意見書間において利益概念が異なっ ているといわざるをえない。各意見書が依然

としてピースミール的ないしアドホック的性 格を有しているのである。最近では,これに 包括的利益概念が加わって,さらに混沌とし た様相を呈している。

これらの現状を会計の全体的な視点から見

てみると,問題はさらに重大であるように思

われる。現在各国において公表されている時

価会計の意見書は特定の資産項目および負債

項目に関するものであり,会計の全項目に関

するものではない。したがって,これらの意

(2)

見書を現実に適用すると,ある項目は時価で 評価されるが,ある項目は依然、として取得原 価で評価されるので,そのようにして作成さ れた貸借対照表は全体として何を表そうとし ているのかが,筆者には不明である。そして,そ こにおける損益計算書がどのような利益を表 示しようとしているのかも明らかではない。

このような状況が続く限り,会計実務はと もかく,会計理論の進展は望めず,ひいては 会計実務を誤導しかねない。時価会計に関す る議論が盛んないま,そして時価会計が少な くとも理論的に混乱していると思われるい ま,会計理論の発展のために,時価会計を改 めて基本的かっ本質的に考察してみる必要が ある。そもそも時価会計とは何であったので あり,それが何を目指したものであり,それ によって論理的に何が表されるのかを改めて 考察する必要があるのである。

本稿はかかる視座に立って,時価会計の論 理を基本的に考察するための出発点をなすも のである。これまで提唱されてきた時価会計 論を検討してみると,一般に時価会計は種類 的に 2 つに大別される。それは購入時価会計 と売却時価会計である。購入時価会計は資産 および負債を購入時価で評価し,利益を計算 する会計であり,カレント・コスト会計とも 呼ばれており,その代表的な理論的提唱者は エドワーズ=ベル (Edwardsand Be 1l)であ る。他方,売却時価会計は資産および負債を 売却時価で評価し,利益を計算する会計であ り,この代表的な理論的提唱者はチェンパー ス (Chambers) およびスターリング ( S t e r ‑ l i n g ) である。

時価会計の論理的考察の出発点として,こ れらのうち,本稿ではまず購入時価会計を取

り上げ,その寄って立つ論理を探求すること を目的とする。具体的には,エドワーズ=ベ ルの所論を参考にしながら,購入時価会計の 概要をまず説明し,次に購入時価会計の具体

的な計算過程を示し,さらに購入時価会計の 論拠を明らかにする。その場合,それらを一 般物価水準が変動しない場合と変動する場合 とに分けて行うことにする。そして,最後に,

かかる購入時価会計の問題点を指摘し,同時 に購入時価会計の会計における真の役割を明 らかにするとともに,売却時価会計をも含め た時価会計一般の論拠の一端を解明していき たい。

E  購入時価会計の概要

エドワーズ=ベルによれば,企業の目的は 経済活動を通じて利益を最大にすることであ り,企業の経営者はこの企業目的を達成する ためにその資源をいかに配分すべきかを意思 決定しなければならない1)。そして,経営者 の行った,かかる意思決定の結果を評価する ことに会計の任務があるとする。

すなわち, I 会計資料が必要とされるのは,

経営意思決定の善し悪しを評価するためであ る。というのは,経営能力および経営者の意 思決定の進め方を改善するためには,過去の 意思決定について検討を加えることが必要で あり,その過去の意思決定の結果は会計資料 の中に示されるからである。 J [Edwards and  B e l l   (以下 E&B とする), 1 9 6 , 1 p . 3 ; 訳書, 3 頁]

このように,経営者の職能に役立つという 意味で, I ……会計資料は経営意思決定を評 価する手段として役立てられ,それによって,

( 1  )当期の生産過程を統制し, ( 2 ) 未来の意思決 定をより良いものにし,また( 3 ) 意思決定の過 程それ自体を改善する,ということに貢献す る 。 J [E&B , 1 9 6 , 1 p . 4 ; 訳 書 , 3 頁]

そして,そのために会計記録の中に組入れ

られるべきもので,会計が対象とすべきもの

は,個別的な価格の変動額,つまり,ある種

の市場価値の変動額でなければならない。と

いうのは,意思決定の正しさもしくは誤りは,

(3)

結局は市場において検証されるからである。

ここに,資産および負債の評価基準として,

購入時価ないしカレント・コストを提唱する 論拠が見出される。

ところで,エドワーズ=ベルによれば,利 益獲得を目指す企業活動は,便宜上次の 2 つ に分けることができる [E&B , 1 9 6 1 , p . 3 6 ; 訳 書 , 2 8 ‑ 2 9 頁 ] 。

( 1 )   生産諸要素を結合させたり移動させた りして,要素価値を超える販売価値の生 産物にすることによって,利益を生むと いう活動

( 2 )   資産や負債を,その資産の価格が上昇 する間,あるいは負債の価格が下落する 間保有することによって,利益を生むと いう活動

前者の場合,利益は生産要素を使用するこ とによって発現し,後者の場合,利益は生産 要素あるいは生産物を保有する保有活動によ って生じる。確かに,多くの企業にとって,

営業活動を通じて生じる利益の方が重要であ ろうし,また明らかに社会的により望ましい 目標である。

しかし, I それにもかかわらず,保有活動 ないし投機活動も重要である。なぜならば,

この種の利益もまた,企業が最大化しようと する努力の目標たりうるからである白ただ,

これら両者の活動の性格とそれぞれに対する 意思決定は,関連はあるものの非常に違うも のであるから,意思決定の評価のためには両 者を分離することが是非とも必要である」

[E&B , 1 9 6 1 , p . 3 6 ; 訳書, 2 9 頁]

このように,エドワーズ=ベルは営業活動 のみならず,保有活動の重要性をも強調し,

さらに意思決定の評価に際してそれらを分離 して行うことを強調する。会計はかかる意思 決定の評価に役立たなければならないから,

やはり営業活動から生じた意思決定の結果と

保有活動から生じた意思決定の結果とを別々 に表示しなければならない。そして,前者を 表すものが「当期営業利益 J( c u r r e n t  o p e r ‑ a t i n g  p r o f i t ) であり,後者を表したものが

「実現可能原価節約 J ( r e a l i z a b l e  c o s t  s a v i n g )   である。

これらはそれぞれ次のように定義される [E&B ,  1 9 6 1 ,  p . 1 1 5 ; 訳書, 9 5 頁 ] 。

( 1 )   当 期 営 業 利 益 期 間 に わ た っ て 販 売 されるアウトプットのカレント価値の,

関連するインプットのカレント・コスト (購入時価一筆者)に対する超過分 ( 2 )   実現可能原価節約:企業によって保有

されている資産のカレント・コストの期 中上昇分

すなわち,当期営業利益はある期間の売上 収益から当該期間の購入時価営業費を控除す ることによって算定され,実現可能原価節約 は資産の保有期間中の購入時価と取得原価と の差額として生じる。そして,かかる当期営 業利益と実現可能原価節約とを合計したもの を,彼らは経営利益 ( b u s i n e s sp r o f i t ) と命 名する。

さて,これで購入時価会計の概要が明らか になったことと思われるが,これまでの説明 では暗黙のうちに,一般物価水準が一定であ ることが仮定されていた。つまり,個別価格 のみが変化し,一般物価水準は一定であるこ とが仮定されていた。しかし,現実における ように一般物価水準が変動する場合,上述し た経営利益は,会計の測定と解釈に次のよう な 2 つの支障をもたらす [E&B , 1 9 6 1 , p p . 1 2 2 ‑ 1 2 3 ; 訳書, 1 0 3 頁 J 2 ) 。

( 1 )   経営利益は,ある期間において,企業

の支配する貨幣価値(貨幣額で示した価

値)の増加を測定するわけであるが,こ

の増加額は,一般物価水準がその期間中

に一定である場合を除けば,企業の当期

(4)

の実質投下資本(購買力)について,そ れだけの変化があったことを意味しな い。一般物価水準が上昇しつつある時に 企業資産の貨幣価値を不変とする(経営 利益がゼロ)ということは,その企業が 支配する購買力が減少する(実質利益が マイナス)ということを意味する。一般 物価水準の変動によって引き起こされる 問題は,貨幣利益がどれだけあれば,企 業の当期の購買力増加になるかというこ

とを確定するごとである。

( 2 )   異なる時点聞の比較に関して,経営利 益は支障をきたす。物価が高い時期に 1 0 0 ドルの購買力が増加することは,物 価が安い時期に 1 0 0 ドルの購買力が増加 することと同じではない。後者の増加の 方が実質的に大きいのである。これらを 比較するためには,各々の増加額を同ー の購買力をもっ貨幣の尺度として示さな ければならない

上記(1)の問題は購買力資本維持の問題と解 するごとができ, ( 2 ) は期間比較の問題と解す ることができる。一般物価水準が変動する場 合,これらの問題が発生するために,経営利 益は当該期末の一般物価指数で修正されなけ ればならない。

その場合,上述したように経営利益は当期 営業利益と実現可能原価節約から成るので,

それぞれが当該期末の一般物価指数で修正さ れることになり,そのようにして修正された 各々が実質当期営業利益および実質実現可能 原価節約となる。そして,これらを合計した 全体の利益が,実質経営利益 C r e a lb u s i n e s s  

1  一般物価水準が変動しない場合

p r o f i t ) と命名される。

したがって,以上のことから,一般物価水 準が変動する場合,経営利益は実質経営利益 へと移行し,その構成要素は, (1)実質当期営 業利益および( 2 ) 実質実現可能原価節約という

ことになる 3 ) 。

皿 購入時価会計の計算

これによって,購入時価会計の概要が明ら かになったと思われるので,本節では,かか る会計をより良く理解するために,エドワー ズ=ベルの数値例を参考にして,購入時価会 計の具体的な計算過程を述べてみよう o

前節において,資産および負債の評価基準 として購入時価を適用する際に,一般物価水 準が変動しない場合に経営利益が導き出さ れ,一般物価水準が変動する場合に実質経営 利益が導き出された。本稿では,これらの会 計を区別する必要がある場合に,前者を単に 購入時価会計と呼ぶことにし,後者を実質購 入時価会計と呼ぶことにしよう。そして,こ れとの関係で,伝統的会計で一般物価水準が 変動しない場合の会計を取得原価会計と呼 び,一般物価水準が変動する場合の会計を実 質取得原価会計と呼ぶことにする。これは従 来修正原価会計と呼ばれていたものである。

これらのことを念頭において,以下ではま ず,一般物価水準が変動しない場合の購入時価 会計の計算から説明する。しかし,購入時価会 計の計算を説明しようとする場合,その基礎は 取得原価会計にあるので,遠回りではあるが,取 得原価会計の説明から始めることにしよう口

いま,取得原価による期首貸借対照表が次のようであったとする [E&B , 1 9 6 1 , p . 2 0 8 ; 訳書,

1 7 5 頁 ] 。

(5)

期首貸借対照表(取得原価) 現金‑受取勘定 6 0 0   流 動 負 債 有 価 証 券 2 0 0   固 定 負 債 棚 卸 資 産 5 0 0   株 式 資 本 金 固 定 資 産 1 , 1 0 0   実 現 剰 余 金

2 , 4 0 0  

期中取引は次のとおりである。

( 1 )   当期中に $ 4 , 0 0 0 の売上があった。

( 2 )   当期中の棚卸資産(材料)の購入は次のようであった。

2 月 1 5 日 @$5.25X  6 0 単位=$ 3 1 5   5 月 1 日 @$5.40x 1 4 0 単位=$ 7 5 6   9 月 1 日 @$5.60x  1 1 0 単位=$ 6 1 6   1 1 月 2 0 日 @$5. 7 0  x 9 0 単位=$ 5 1 3  

$ 2 , 2 0 0   ( 3 )   当期中に賃金と雑費$1, 5 3 6 を支払った。

( 4 )   原価 $ 1 8 の有価証券を期央に $ 3 0 で売却した。

( 5 )   固定負債(社債)の利息 $ 2 4 を支払った。

( 6 )   流動負債 $ 5 0 を返済した。

( 7 )   連邦所得税制 7 0 ,配当金 $ 7 4 を支払った。

決算整理事項は次のとおりである。

5 0 0   6 0 0   6 0 0   7 0 0   2 , 4 0 0  

( a )   棚卸資産(材料)の期首有高は 1 0 0 単位であり,期末有高は 1 2 0 単位である。

棚卸資産は先入先出法で計算している。

( b )   固定資産(機械)は 9 年前の期首に $ 2 , 0 0 0 で購入したものである。この耐用年数は 2 0 年 であり,定額法で減価償却している。

以上の資料より,まず期中取引仕訳を示すと,次のようになる。

( 1 )   (借)現金・受取勘定 4 , 0 0 0   (貸)売 上 4 , 0 0 0 ( 2 )   (借)消費材料原価 2 , 2 0 0 (貸)現金・受取勘定 2 , 2 0 0 ( 3 )   ( 借 ) 賃 金 ・ 雑 費 1 , 5 3 6   (貸)現金・受取勘定 1 , 5 3 6 ( 4 )   (借)現金・受取勘定 3 0   (貸)有 価 証 券 1 8   資 本 リ 手 得 1 2   ( 5 )   ( 借 ) 支 払 利 息 2 4   (貸)現金・受取勘定 2 4   ( 6 )   ( 借 ) 流 動 負 債 5 0   (貸)現金・受取勘定 5 0   ( 7 )   ( 借 ) 連 邦 所 得 税 1 7 0   (貸)現金・受取勘定 2 4 4  

己 当 金 7 4   次に,決算整理仕訳は次のようになる。

( a )   (借)消費材料原価 5 0 0   (貸)棚 卸 資 産 5 0 0  

( 借 ) 棚 卸 資 産 6 8 1   ( 貸 ) 消 費 材 料 原 価 6 8 1  

(6)

9 0 個 X@$5.70+30 個 X@$5.60=$681 

( b )   ( 借 ) 減 価 償 却 費 1 0 0 貸 ) 固 定 資 産 1 0 0  

$ 2 , 0 0 0  X  1/20 =  $ 1 0 0  

そして,これらの仕訳に基づいて,取得原価会計の損益計算書と期末貸借対照表を作成する と,次のようになる [E&B , 1 9 6 1 , p p . 2 1 9 ,  2 2 1 ; 訳書, 1 8 6 , 1 8 7 頁 ] 。

損 益 計 算 書

τ 7 = t E r    上 品 4 , 0 0 0   費消材料原価 2 , 0 1 9  

賃 金 ・ 雑 費 1 , 5 3 6   減 価 償 却 費 1 0 0  

支 払 利 息 2 4   3 , 6 7 9   営 業 利 益 3 2 1   資 本 利 得 1 2   実 現 利 益 3 3 3   利 益 の 処 分

連 邦 所 得 税 1 7 0   自

己 当 金 7 4  

実 現 剰 余 金 8 9   3 3 3  

期首貸借対照表(取得原価)

現金・受取勘定 5 7 6   流 動 負 債 4 5 0   有 価 証 券 1 8 2   固 定 負 債 6 0 0   棚 卸 資 産 6 8 1   株 式 資 本 金 6 0 0   固 定 資 産 1 , 0 0 0   実 現 剰 余 金 7 8 9   2 , 4 3 9   2 , 4 3 9  

以上の取得原価会計の計算を基礎にして,それでは次に本節の主題である購入時価会計の計 算を説明してみよう。いま,これまでと同じ企業の購入時価による期首貸借対照表が次のよう であったとする [E&B , 1 9 6 1 , p . 2 0 8 ; 訳書, 1 7 5 頁 ] 。

期首貸借対照表(購入時価)

現金・受取勘定 6 0 0  I 流 動 負 債 5 0 0   有 価 証 券 2 7 2  I 固 定 負 債 6 0 0   棚 卸 資 産 5 1 5   I 株 式 資 本 金 6 0 0   固 定 資 産   , 1 6 5 0  I 実 現 剰 余 金 7 0 0  

一 一 一

f

一 一 │ 未 現 実 剰 余 金 6 3 7  

3 , 0 3 7   3 , 0 3 7  

(7)

期中取引および決算整理事項は取得原価会計の場合と同じであり,購入時価情報は次のとお りである。

( a )   棚卸資産(材料)の期末購入時価は@$5.7 5 である。

( b )   固定資産(機械)の類似の機械個別物価指数は次のようであった。

購入日 1 2 0   期 首 1 8 0   期 末 2 0 4  

( c )   有価証券は,期央に価格が$274 に上昇した。売却後の残りの有価証券(期央の時価は 8

244 である)の価値が,期末までに $248~こ増加した。

( d )   固定負債(社債)は,期首から起算して 3 年半前に額面$600 ,年利 4 % , 5 年契約で 発行したものである。この社債の市価は 3 年半は額面のままであったが,市場利子率 が期末までに次第に上昇して 5 % になるにしたがって下落し,期末の利子支払い後には 8

5 9 7 になった。

以上の資料に基づいて購入時価会計の計算を行う場合,期中取引仕訳は有価証券の売却取引 を除いて上記の取得原価会計の場合と同じであり,有価証券の売却取引仕訳は次のようになる。

( 4 )   (借)現金・受取勘定 3 0 貸 ) 有 価 証 券 3 0  

ここでは,有価証券の取得原価$18 との差額は過年度の実現可能原価節約とみなされ,すで に会計処理されているので,資本利得は計上されない。

そして,決算整理仕訳は次のようになる。

( a )   (借)消費材料原価 5 1 5 貸 ) 棚 卸 資 産 5 1 5   (借)消費材料原価 6 5 貸)実現可能原価節約 6 5  

①  平均購入単価

(@$5.25 x 6 0 個 + @$5  .  4 0   x  1 4 0 個 +@$5.60 x  1 1 0 個 +@$5.7 0   x  9 0 個)/400 個 =@$5.50

②  実現可能原価節約

期首から期央までの価格上昇分 期央から期末までの価格上昇分 (@$5.50 ‑@$5.15)  x  1 0 0 個 +  (@$5.75‑@$5.50)  x  1 2 0 個 =$65 ( 借 ) 棚 卸 資 産 6 9 0   ( 貸 ) 消 費 材 料 原 価 6 9 0  

@$5. 7 5   x  1 2 0 個 =$690

( b )   ( 借 ) 減 価 償 却 費 1 6 0 貸 ) 固 定 資 産 1 6 0  

①  機械の購入時価

期 首 位 , 0 0 0+  { ( 1 8 0 ー 1 2 0 )/120}  x  $ 2 , 0 0 0  =  $ 3 , 0 0 0   期末 $2 , 0 0 0  +  { ( 2 0 4  ‑1 2 0 )  /120}  x  $ 2 , 0 0 0  =  $ 3 , 4 0 0   減価償却費: ( $ 3 , 0 0 0  +  $ 3 , 4 0 0 )  /2  x  1/20 =  $160 

( 借 ) 固 定 資 産 2 1 0 貸)実現可能原価節約 2 1 0   期首から期央までの価格上昇分 期央から期末までの価格上昇分

( $ 3 , 2 0 0  ‑$3 , 0 0 0 )   x  11/20  +  ( $ 3 , 400‑$3 , 2 0 0 )   x  10/20=$210  ( c )   ( 借 ) 有 価 証 券 6  (貸)実現可能原価節約 6 

期首有高についての価格上昇分 未売却分についての価格上昇分

(8)

( $ 2 7 4  ‑$ 2 7 2 )   ( d )   ( 借 ) 固 定 負 債

+  ( $ 2 4 8  ‑$ 2 4 4 )   =  $ 6   3 貸)実現可能原価節約 3  ( 借 ) 支 払 利 息 3 貸)実現可能原価節約 3 

(4.5%‑4%) x$600=$3 

そして,これらの仕訳に基づいて,購入時価会計の損益計算書と期末貸借対照表を作成する と,次のようになる [E&B , 1 9 6 1 , p p . 2 1 8 ,  2 2 1 ; 訳書, 1 8 5 , 1 8 7 頁 J 4 ) 。

損 益 計 算 書 売 上 高

費消材料原価 2 , 0 9 0   賃 金 ・ 雑 費 1 , 5 3 6   減 価 償 却 費 1 6 0  

4 , 0 0 0  

支 払 利 息 当期営業利益

2 7   3 , 8 1 3  

実現可能原価節約 棚 卸 資 産

固 定 資 産 有 価 証 券 固 定 負 債 経 営 利 益 利 益 の 処 分

連 邦 所 得 税 配 当 金 実 現 剰 余 金 未実現剰余金

6 5   2 1 0   6  6 

1 7 0   7 4   8 9   1 4 1   期末貸借対照表(購入時価)

1 8 7  

2 8 7   4 7 4  

4 7 4  

現金・受取勘定 5 7 6  

I

流 動 負 債 4 5 0   有 価 証 券 2 4 8  I 固 定 負 債 5 9 7   棚 卸 資 産 6 9 0  I 株 式 資 本 金 6 0 0   固 定 資 産 J ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑   , 1 7 0 0  I I 実 現 剰 余 金 未 現 実 剰 余 金 旦 7 8 9   2  一般物価水準が変動する場合

次に,一般物価水準が変動する場合の実質取得原価会計および実質購入時価会計を説明する

ことにしよう。これを行うためには,上記の諸前提のほかに次のような追加的な諸仮定が必要

である。

(9)

( 1 )   物価指数(消費者物価指数) 期 首 9 8

期中平均 1 0 0   期 末 1 0 2

( 2 )   資産の増加は 1年中同ーの調子で生じてきた。

( 3 )   有価証券と固定資産の購入時点での物価指数はそれぞれ 9 0 と 8 0 で、あった。

( 4 )   期首棚卸資産と期末棚卸資産を購入した時の物価指数は,それぞれ 9 7 と 1 0 1 で、あった。

前述した一般物価水準が変動しない場合の資料とこれらの追加的仮定に基づいて,まず実質 取得原価会計における期首貸借対照表を作成すると,次のようになる [E&B , 1 9 6 1 , p . 2 6 3 ; 訳書,

2 2 3 頁 J 5 ) 。

期首貸借対照表(実質取得時価)

現金‑受取勘定 6 0 0 . 0 0   流 動 負 債 5 0 0 . 0 0   有 価 証 券 2 1 7 . 7 8   固 定 負 債 6 5 0 . 0 0   棚 卸 資 産 5 0 5 . 1 5   株 式 資 本 金 7 6 0 . 0 0   固 定 資 産   , 1 3 4 7 . 5 0   実質実現剰余金 7 6 0 . 4 3   2 , 6 7 0 . 4 3   2 , 6 7 0 . 4 3  

期中取引仕訳は有価証券の売却取引を除いて取得原価会計の場合と同じであり,有価証券の 売却取引仕訳は次のようになる。

( 4 )   (借)現金・受取勘定 3 0 貸 ) 有 価 証 券 2 0   実 質 資 本 利 得 1 0  

ここでは,有価証券の実質取得原価は $ 2 0(= $ 1 8  x  1 0 0 / 9 0 ) となり,したがって,実質資 本利得は $ 1 0 となる。

次に決算整理仕訳をしなければならないが,この場合,期中取引の修正仕訳と本来の決算整 理仕訳に分けて行うと,理解しやすいように思われる。そこでまず,期中取引の修正仕訳から 示すと,次のようになる。なお, ( 6 ) の流動負債取引は「正味貨幣債権保有損益」としてまとめ て計算されるので,ここでは計上されない。

( 1 )   ( 借 ) 株 式 資 本 金 8 0 . 0 0 貸)売 上 8 0 . 0 0

$ 4 , 0 0 0   x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 4 , 0 0 0  =  $ 8 0 . 0 0  

( 2 )   (借)消費材料原価 4 4 . 0 0 貸 ) 株 式 資 本 金 4 4 . 0 0

$ 2 , 2 0 0  x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 2 , 2 0 0  =  $ 4 4 . 0 0  

( 3 )   ( 借 ) 賃 金 ‑ 雑 費 3 0 . 7 2 貸 ) 株 式 資 本 金 3 0 . 7 2

$ 1 , 5 3 6   x  102/100‑$1 , 5 3 6 = $ 3 0 . 7 2  

( 4 )   ( 借 ) 株 式 資 本 金 0 . 2 0 貸 ) 実 質 資 本 利 得 0 . 2 0

$ 1 0   x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 1 0  =  $ 0 . 2 0  

( 5 )   ( 借 ) 支 払 利 息 0 . 4 8 貸 ) 株 式 資 本 金 0 . 4 8

$ 2 4  x  1 0 2 / 1 0 ト $ 2 4= $ 0 . 4 8  

(10)

( 7 )   ( 借 ) 連 邦 所 得 税 3 . 4 0 ( 貸 ) 株 式 資 本 金 3 . 4 0

$ 1 7 0   x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 1 7 0  =  $ 3 . 4 0  

(借)配 当 金 1 . 4 8 ( 貸 ) 株 式 資 本 金 1 . 4 8

$ 7 4   x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 7 4  =  $ 1 .   4 8  

次に,本来の決算整理仕訳は次のようになる。

( a )   (借)消費材料原価 5 2 5 . 7 7 (貸)棚 卸 資 産 5 0 5 . 1 5 株 式 資 本 金 2 0 . 6 2

$ 5 0 5 . 1 5  x  1 0 2 / 9 8  =  $ 5 2 5 . 7 7  

( 借 ) 棚 卸 資 産 6 8 7 . 7 4 貸 ) 消 費 材 料 原 価 6 8 7 . 7 4

$ 6 8 1   x  1 0 2 / 1 0 1  =  $ 6 8 7 . 7 4  

( b )   ( 借 ) 減 価 償 却 費 1 2 7 . 5 0 貸 ) 固 定 資 産 1 2 7 . 5 0 ( $ 1 , 3 4 7 . 5 0 1 0 2 / 9 8 )   x  1/11=$127.50 

実質取得原価会計の場合,さらに期首の資産,負債および資本を期末の一般物価水準に修正 する必要がある。これを行うと,次のようになる。なお,期首棚卸資産に関しては上記の ( a ) で すでに処理されているので,ここでは計上されない。

( c )   (借)正味貨幣債権保有損失 4 . 6 0 貸 ) 株 式 資 本 金 4 . 6 0 ( $ 1 0 0   x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 1 0 0 )   +  ( $ 2 6   x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 2 0 )  =  $ 4 . 6 0  

( 借 ) 有 価 証 券 8 . 4 9 貸 ) 株 式 資 本 金 8 . 4 9 ( $ 2 1 7 . 7 8   x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 2 1 7 . 7 8 )  ‑( $ 2 0   x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 2 0 )  =  $ 8 . 4 9   ( 借 ) 固 定 資 産 5 5 . 0 0 貸 ) 株 式 資 本 金 5 5 . 0 0

$ 1 , 3 4 7 . 5 0  x  1 0 2 / 9 8  ‑$1  , 3 4 7 . 5 0  =  $ 5 5 . 0 0  

( 借 ) 株 式 資 本 金 2 6 . 5 3 貸 ) 固 定 負 債 2 6 . 5 3

$ 6 5 0  x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 6 5 0  =  $ 2 6 . 5 3  

( 借 ) 株 式 資 本 金 3 1 . 0 4 貸 ) 実 質 実 現 剰 余 金 3 1 . 0 4

$ 7 6 0 . 4 3  x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 7 6 0 . 4 3  =  $ 3 1 .  0 4  

そして,これらの仕訳に基づいて,実質取得原価会計の損益計算書と期末貸借対照表を作成 すると,次のようになる [E&B , 1 9 6 1 , p p . 2 6 3 ; 訳書, 2 2 3 頁 ] 。

損 益 計 算 書

7

で圭

E

二f

I

E

4 , 0 8 0 . 0 0   費消材料原価 2 , 0 8 2 . 0 3  

賃 金 ‑ 雑 費 1 , 5 6 6 . 7 2   減 価 償 却 費 1 2 7 . 5 0  

支 払 利 息 2 4 . 4 8   3 , 8 0 0 . 7 3   実質営業利益 2 7 9 . 2 7   正味貨幣債権保有損失 4 . 6 0  

実質資本利得 1 0 . 2 0   5 . 6 0  

実質実現利益 2 8 4 . 8 7  

(11)

1 7 3 . 4 0   7 5 . 4 8   利 益 の 処 分

連 邦 所 得 税 配 当 金

実質実現剰余金 2 8 4 . 8 7  

4 5 0 . 0 0  

7 9 1 .   0 2   8 2 7 . 4 6   2 , 7 4 5 . 0 1   6 7 6 . 5 3   3 5 . 9 9  

期末貸借対照表(実質取得原価) 現金・受取勘定 5 7 6 . 0 0  1 流 動 負 債 有 価 証 券 2 0 6 . 2 7  1 固 定 負 債 棚 卸 資 産 6 8 7 . 7 4 1 株 式 資 本 金 固 定 資 産 l , 2 7 5 . 0 0 1 実質実現剰余金

2 , 7 4 5 . 0 1  

以上の実質取得原価会計および前項の購入時価会計の計算を基礎にして,それでは次に実質 購入時価会計の計算を説明してみよう。いま,これまでと同じ企業の実質購入時価による期首 貸借対照表が次のようであったとする [E&B, 1 9 6 1 , p . 2 4 8 ; 訳書, 2 1 0 頁 ] 。

5 0 0 . 0 0   6 0 0 . 0 0   7 6 0 . 0 0   期首貸借対照表(実質購入時価)

現金・受取勘定 6 0 0 . 0 0  1 流 動 負 債 有 価 証 券 2 7 2 . 0 0  1 固 定 負 債 棚 卸 資 産 5 1 5 . 0 0  1 株 式 資 本 金 固 定 資 産 , 1 6 5 0 . 0 0  1 実質実現剰余金 実質未実現剰余金

7 6 0 . 4 3   4 1 6 . 5 7   3 , 0 3 7 . 0 。

3 , 0 3 7 . 0 0  

期中取引仕訳は前項の購入時価会計の場合と全く同じであり,期中取引の修正仕訳も上記の 実質取得原価会計の場合とほとんど同じである。いま,念のためにこの修正仕訳を示すと,次 のようになる。

( 1 )   ( 借 ) 株 式 資 本 金 8 0 . 0 0 貸)売 ( 2 )   ( 借 ) 消 費 材 料 原 価 4 4 . 0 0 貸)株 ( 3 )   ( 借 ) 賃 金 ・ 雑 費 3 0 . 7 2 貸)株 ( 5 )   ( 借 ) 支 払 利 息 0 . 4 8 貸)株 ( 7 )   ( 借 ) 連 邦 所 得 税 3 . 4 0 貸)株 ( 借 ) 配 当 金 1 . 4 8 貸)株 次に,本来の決算整理仕訳は次のようになる。

( a )   (借)消費材料原価 5 3 6 . 0 2 貸 ) 棚 卸 資 産 5 1 5 . 0 0 株 式 資 本 金 2 1 . 0 2 上 8 0 . 0 0 金 4 4 . 0 0 金 3 0 . 7 2 金 0 . 4 8 金 3 . 4 0 金 1 . 4 8 本

本 本 本 本 資 資 資 資 資

・ 式 式 式 式 式

(貸)実質実現可能原価節約 4 1 . 7 8  

$ 5 1 5   x  102/98  =  $ 5 3 6 . 0 2  

( 借 ) 消 費 材 料 原 価 4 1 . 7 8  

(12)

期首から期央までの価格上昇分 期央から期末までの価格上昇分 ( @ $ 5 . 5 0 ー @$5. 1 5  x  1 0 0 / 9 8 )  x  1 0 0 個 x1 0 2 / 1 0 0   +  ( @ $ 5 .  7 5  ‑@$5.50 x  1 0 2 / 1 0 0 )  x  1 2 0 個

=$4 1 .   7 8  

( 借 ) 棚 卸 資 産 6 9 0 . 0 0

@$5. 7 5  x  1 2 0 個 = $ 6 9 0 . 0 0   ( b )   ( 借 ) 減 価 償 却 費 1 6 3 . 2 0

$ 1 6 0  x  1 0 2 / 1 0 0  =  $ 1 6 3 . 2 0   ( 借 ) 固 定 資 産 1 4 5 . 8 5 期首から期央までの価格上昇分

( 貸 ) 消 費 材 料 原 価 6 9 0 . 0 0

( 貸 ) 固 定 資 産 1 6 3 . 2 0

(貸)実質実現可能原価節約 1 4 5 . 8 5 期央から期末までの価格上昇分 ( $ 3 , 200‑$3 , 0 0 0 x  1 0 0 / 9 8 )  x  11/20x 1 0 2 / 1 0 0   +  ( $ 3 , 400‑$3 , 2 0 0X  1 0 2 / 1 0 0 )   x  1 0 / 2 0 = $ 1 4 5 . 8 5  

( c )   (借)実質実現可能原価節約 4 . 5 0 貸)有 価 証 券 4 . 5 0 期首有高についての価格上昇分 未売却分についての価格上昇分

( $ 2 7 4 ‑ $ 2 7 2 X  1 0 0 / 9 8 )  x  1 0 2 / 1 0 0   +  ( $ 2 4 8 ‑ $ 2 4 4X  1 0 2 / 1 0 0 )  =$‑4.50 

( d )   ( 借 ) 固 定 負 債 3 . 0 0 貸)実質実現可能原価節約 3 . 0 0 ( 借 ) 支 払 利 息 3 . 0 6 貸)実質実現可能原価節約 3 . 0 6 (4.5%‑4%) x $ 6 0 0x  1 0 2 / 1 0 0 = $ 3 . 0 6  

実質購入時価会計の場合も,さらに期首の資産,負債および資本を期末の一般物価水準に修 正する必要がある。これを行うと,次のようになる。

( e )   (借)正味貨幣債権保有損失 4 . 6 0 貸 ) 株 式 資 本 金 4 . 6 0   ( $ 1 0 0  x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 1 0 0 )   +  ( $ 2 6  x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 2 0 )  =  $ 4 . 6 0  

( 借 ) 有 価 証 券 1 0 . 5 0 貸 ) 株 式 資 本 金 1 0 . 5 0 ( $ 2 7 2  x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 2 7 2 ) 一 ( $ 3 0x  1 0 2 / 1 0 0  ‑$ 3 0 )  =  $ 1 0 . 5 0  

( 借 ) 固 定 資 産 6 7 . 3 5 貸 ) 株 式 資 本 金 6 7 . 3 5

$ 1 , 6 5 0  x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 1 , 6 5 0  =  $ 6 7 . 3 5  

( 借 ) 株 式 資 本 金 2 4 . 4 9 貸)実質実現可能原価節約 2 4 . 4 9

$ 6 0 0  x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 6 0 0  =  $ 2 4 . 4 9  (固定負債分)

( 借 ) 株 式 資 本 金 4 8 . 0 4 貸 ) 実 質 実 現 剰 余 金 3 1 . 0 4 実質未実現剰余金 1 7 . 0 0  

$ 7 6 0 . 4 3  x  1 0 2 / 9 8  ‑$ 7 6 0 . 4 3  =  $ 3 1 .   0 4  

$ 4 1 6 . 5 7  x  1 0 2 / 9 8 ‑ $ 4 1 6 . 5 7 = $ 1 7 . 0 0  

そして,これらの仕訳に基づいて,実質購入時価会計の損益計算書と期末貸借対照表を作成 するならば,次のようになる [E&B, 1 9 6 1 , p p . 2 5 4 ,  2 4 8 ; 訳書, 2 1 5 , 2 1 0 ‑ 2 1 1 頁 ] 。

損 益 計 算 書 売 上 高

費消材料原価 賃 金 ・ 雑 費

2 , 1 3 1 . 8 0   1 , 5 6 6 . 7 2  

4 , 0 8 0 . 0 0  

(13)

減 価 償 却 費 1 6 3 . 2 0  

支 払 利 息 2 7 . 5 4   3 , 8 8 9 . 2 6   実質当期営業利益 1 9 0 . 7 4   正味貨幣債権保有損失 4 . 6 0   実質実現可能原価節約

有 価 証 券 ‑4.50  棚 卸 資 産 4 1 .  7 8   固 定 資 産 1 4 5 . 8 5  

固 定 負 債 3 0 . 5 5   2 1 3 . 6 8   実 質 経 営 利 益 3 9 9 . 8 2   利 益 の 処 分

連 邦 所 得 税 1 7 3 . 4 0   配 当 金 7 5 . 4 8   実 質 実 現 剰 余 金 3 5 . 9 9  

実質未実現剰余金 1 1 4 . 9 5   3 9 9 . 8 2  

期末貸借対照表(実質購入時価) 現金・受取勘定 5 7 6 . 0 0  

有 価 証 券 2 4 8 . 0 0   棚 卸 資 産 6 9 0 . 0 0   固 定 資 産 1 , 7 0 0 . 0 0  

‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 3 2 1 4 . 0 0  

N  購入時価会計の論拠

以上によって購入時価会計の内容と算出過 程が明らかとなったので,本節において,か かる購入時価会計がどのような論拠を有して いるのかを見てみることにしよう。これを行 うための糸口は,エドワーズ=ベルの規定し た会計の任務である。彼らによれば,会計の 任務とは経営者の行った意思決定の結果を評 価できる資料を提供することであった。これ を会計における「業績評価任務」と呼ぶこと ができる。

彼らは一見してこの業績評価任務のみを強

流 動 負 債 4 5 0 . 0 0   固 定 負 債 5 9 7 . 0 0   株 式 資 本 金 7 9 1 .  0 2   実質実現剰余金 8 2 7 . 4 6   実質未実現剰余金 5 4 8 . 5 2   3 , 2 1 4 . 0 0  

調しているきらいがあるが,その背後にもう lつの会計の任務が存在することを見逃して はならない。それは,業績評価の結果によっ て , I ……(1)当期の生産過程を統制し, ( 2 ) 未 来の意思決定をより良いものにし, ( 3 ) 意思決 定の過程それ自体を改善する J [E&B , 1 9 6   , 1 p . 4 ; 訳 書 , 3 頁]という任務である。この任務 を会計における「意思決定の促進任務 j と呼 ぶことにする。

このように,会計には 2 つの任務が見出さ

れるのであるが,ここで改めて,これら 2 つ

の任務が具体的に何を意味するのかを,エド

ワーズ=ベルおよびエドワーズニベル=ジョ

(14)

ンソンの所論から推論してみよう 6 ) 。 まず,経営者の業績評価任務に関して,一 般に業績を評価するという場合,それ自体で は何も評価することはできず,他のなんらか のものと比較することによってはじめて評価 が可能となる。会計の場合,それは他の期間 との比較であり,他の企業との比較であると いうことができる。したがって,経営者の業 績評価の具体的内容は,期間比較と企業間比 較ということになる。

そして,これらの任務内容を遂行するため の条件は, I 会計モデルは,事象が発生した ときに測定されなければならない」というこ と で あ る 。 換 言 す れ ば 期 間 の す べ て の 事 象を記録しなければならず,またその期間の 事象のみを記録しなければならないというこ とである。なぜならば,ある期間の会計記録 に過年度に発生した事象もしくは将来の期間 に発生するかもしれない事象が含まれている ならば,純粋な期間比較および企業間比較が 不可能となるからである。

次に,意思決定の促進任務に関して,それ は企業における重要な要素としての投資意思 決定を促進することである。そして,具体的 には,現在の投資を継続して増加すべきか,

減少しながら他のより有利な投資代替案を探 求すべきか,それとも即座に中止して他のよ り有利なものに投資を変更すべきかを経営者 に報告することである。この報告によって,

経営者は実際に意思決定を行うことになる。

そして,この任務を遂行するための条件は,

「会計モデルは,変化の発生した原因を明確 に識別できるように,変化を分類しなければ ならない」ということである。ここで,変化 の発生した原因とは,取りも直さず「利益の 発生した原因」であり,後述するように,こ れを明確に分類することによって,具体的な 投資意思決定が可能となるわけである。

以上の理解をふまえて,それでは次に,購 入時価会計がこのような内容の経営者の業績 評価任務と意思決定の促進任務とを果たすか どうかを検討してみよう。その場合,前節と 同様に,一般物価水準が変動しない場合と一 般物価水準が変動する場合とに分けて考察す ることにする。こうすることによって,購入 時価会計の論拠がより明確になり,さらに購 入時価会計と実質購入時価会計の両概念の比 較と評価に役立つように思われるからであ る 。

1  一般物価水準が変動しない場合

まず,一般物価水準が変動しない場合,購 入時価会計が経営者の業績評価に役立つかど うかということから検討してみよう。これま での説明から明らかなように,購入時価会計 は関係のある事象をそれが発生する都度測定 し,過年度に発生した事象もしくは将来の期 間に発生するかもしれない事象を排除して記 録する。すなわち,購入時価会計は当期営業 利益と実現可能原価節約とによって当該期間 に発生した事象をすべて報告し,また当該期 間の事象のみを報告する。これによって,経 営者の責任の所在を明確にすることができる

ということになる。

過去の期間になされた意思決定がその期間 に認識されずに,当該期間に認識されるなら ば,経営者の責任の期間的帰属が不明確とな り,経営者の業績に関する期間比較が行えな いことになる。これに対して,購入時価会計 における当期営業利益と実現可能原価節約の ようにある期間に行われた意思決定の結果が その期間に認識されるならば,経営者の責任 の期間的帰属が明確となり,経営者の業績に 関して純粋な期間比較が行えることになる。

このように,購入時価会計は企業の営業活動

ならびに保有活動に関して期間比較の可能な

(15)

情報を提供し,経営者の期間間の業績比較に 役立つのである。

これと同じことが,企業間比較についても いうことができる。企業間比較は,経営者の 責任の期間的帰属を明確にすることによって はじめて達成される。取得原価会計のように,

期間利益に過去の意思決定による成果が混入 されるならば,たとえ 2 つの企業が同じ期間 利益を報告したとしても,当該期間のみに帰 属する経営者の業績は異なるかもしれず,そ れゆえ 2 人の経営者の業績を比較することは できない。これに対して,購入時価会計によ れば 2 企業聞の経営者の責任帰属が期間的 に明確にされ,したがって彼らの業績を直接 比較することができるのであるに

このように,購入時価会計によれば経営者 の責任の期間的帰属が明確となり,これによ って期間比較と企業間比較とが可能になる。

しかし,この意味では,購入時価会計におい

て経営利益を当期営業利益と実現可能原価節 約とに分ける積極的理由はない。経営者の業 績を評価するためには,全体としての経営利 益を総合的に評価するだけで十分であり,ま たそうしなければならなし叶

h

らである。した がって,経営利益を当期営業利益と実現可能 原価節約とに分ける必要性は別のところにあ り,それが第 2 の問題である意思決定の促進 任務に関係することになる。

購入時価会計は,利益が発生した原因を明 確に識別するために,これを当期営業利益と 実現可能原価節約とに正しく分類する。これ が意思決定の促進にどのように役立つかを検 討してみよう。それを行うために,またこれ からの考察過程で役立つと思われるので,前 節で算定した経営利益と実質経営利益の当期 営業利益率と経営利益率とを示した表 l をこ

こで掲げておく 8 ) 。

表 1 当期営業利益率と経営利益率

¥利¥益名利主主¥ 率

当期営業利益率 当期営業利益 平均的総資産

経 営 利 益 $ 1 8 7  

1/2 ( $ 3 , 0 3 7  +  $ 3 , 2 1 4 )  

実質経営利益 $ 1 9 0 . 7 4   1/2($3 , 1 6 1  +$3 , 2 1 4 )  

いま,無リスクの証券に投資するならば,

8 % の利子が稼得できると仮定する。そうす ると,当期営業利益率から判断して,当該製 品への投資は失敗であったことが明らかとな る。というのは,これは 6.0% であり, 8 %   の利子率よりも低いからである。したがって,

経 営 利 益 率 経 営 利 益 平均的総資産

$ 4 7 4  

=6.0%  =  15.2% 

1/2 ( $ 3   , 0 3 7  +  $ 3 , 2 1 4 )  

$ 3 9 9 . 8 2  

=6.0%  =  12.5% 

1/2($3 , 1 6 1  +$3 , 2 1 4 )  

この製品に再投資すべきではなく, 8 % 以上 の当期営業利益率を稼得できる他の投資代替 案を探求すべきである。

しかし,実現可能原価節約を加味した経営

利益率が示すように,企業の状態は良くなっ

ている。というのは,それは 15.2% であり,

(16)

8% の利子率よりも高いからである。このよ うな場合には,この製品への投資を減少し,

同時に,当期営業利益率も 8% 以上になるよ うな投資代替案を探求し,それが発見できれ ば投資を変更すべきである。また,当期営業 利益率も経営利益率も共に 8% を割るなら ば,経営者は即座にその製品への投資を中止 し,投資の変更を意思決定することになる。

このように,購入時価会計は利益を当期営 業利益と実現可能原価節約とに分離すること によって,経営者の意思決定のために,再投 資等に関する様々な情報を提供する。この情 報によって,経営者は一般に次のような意思 決定を行うことになる。

( 1 )   当期営業利益率が利子率よりも高いな らば,その投資を増加すべきである。

( 2 )   当期営業利益率が利子率よりも低い が,経営利益率が利子率よりも高いなら ば,その投資を減少させながら,利子率 よりも高い当期営業利益率を稼得できる 新しい投資代替案を探求すべきである。

( 3 )   当期営業利益率も経営利益率も共に利 子率よりも低いならば,その投資を即座 に中止し,投資を変更すべきである。

以上によって明らかなように,一般物価水 準が変動しない場合,購入時価会計は経営者 の業績評価任務と意思決定の促進任務を具体 的に果たすことなり,したがって,これらが 購入時価会計の論拠であるということができ る 。

2  一般物価水準が変動する場合

それでは,一般物価水準が変動する場合に,

実質購入時価会計は経営者の業績評価任務と 意思決定の促進任務を果たすことができるで あろうか。これに関して,結論から先に述べ るならば,実質購入時価会計は両者の任務を より改善された形で果たすということができ

る。このことを以下で,購入時価会計と対比 しながら述べてみよう。

まず,経営者の業績評価任務に関して,実 質購入時価会計も,当該期間に発生した事象 をすべて報告し,また当該期間の事象のみを 報告することによって,経営者の責任の所在 ないし期間帰属が明確となる。そして,これ によって,期間比較と企業間比較が可能とな るのであるが,実質購入時価会計の場合,こ れらがさらに真の意味で遂行されることにな る。その理由は次のとおりである。

まず,期間比較についていうと,一般物価 水準が変動する場合,雨期間の経営利益は比 較不能となる。なぜならば,両者の測定単位 (物価水準)が異なるからである。これを是 正するためには,経営利益をいずれかの期間 の一般物価指数で修正し,両者の測定単位を 同じにして実質経営利益を算定しなければな らない。このために,既述のように,期末ド ルによる一般物価指数修正が行われることに なる。

そして,この一般物価指数の修正によって,

実質購入時価会計は期間比較を可能にし,経 営者の過去の業績との比較ができるわけであ る。すなわち,実質購入時価会計は測定単位 として一般購買力単位を採用し,すべての会 計数字をある時点の一般物価水準で修正する ことによって,同質の測定単位による統一的 な会計測定を可能にし,これによって,真の 意味で期間比較を可能とするのである。

次に,企業間比較であるが,これを説明す るために,再び表 lに注目しよう。そこでは,

当期営業利益率と実質当期営業利益率はまさ

に等しく, 6.0% である。これは,当期営業

利益率が一般物価水準の変動に影響されない

ことを意味している。これに対して,経営利

益率は 15.2% であるのに,実質経営利益率は

12.5% に下落している。これは,実現可能原

(17)

価節約が一般物価水準の変動に大いに影響さ れるからにほかならない。したがって 2 つ の企業が同額の経営利益を報告するとして も,一般物価水準が変動する場合,異なった 実質経営利益を計上するかもしれない。

一般的にいうと,これは,ある企業の経営 利益が主に一般物価水準の変動によって影響 されない当期営業利益から成るけれども,他 の企業の経営利益は主に一般物価水準の変動 によって影響される実現可能原価節約から成 るためである。したがって,一般物価水準が 変動する場合,購入時価会計は実質的に企業 聞を比較することはできず,これを可能にす るのは実質購入時価会計のみである。すなわ ち,実質購入時価会計のみが真の意味で企業 間比較を行うことができる。そして,前述し た期間比較の可能生とともに,この会計は経 営者の業績評価に役立つのである。

それでは,意思決定の促進任務に関しては どうであろうか。この場合も,実質購入時価 会計はこの任務を果たすことができる。すな わち,実質購入時価会計も,利益を実質当期 営業利益と実質実現可能原価節約とに分離す ることによって,再投資等に関する様々な情 報を提供し,投資意思決定を促進する。その 理由は次のとおりである。

もう一度,表 1に注目しよう。このような 状況のもとでは,購入時価会計の場合と同様 に,当該製品への投資は失敗で、あったことが 明らかとなる。というのは,実質当期営業利 益率は 6.0% であり, 8% の利子率よりも低い からである。したがって,この製品に再投資 すべきではなく, 8% 以上の実質当期営業利

益率を稼得できる他の投資代替案を探求すべ

であり, 8% の利子率よりも依然として高い からである。このような場合には,購入時価 会計の場合と同様に,この製品への投資を減 少し,同時に,実質当期営業利益率も 8% 以 上になるような投資代替案を探求し,それが 発見できれば投資を変更すべきである。また,

実質当期営業利益率も実質経営利益率も共に

8% を割るならば,経営者は即座にその製品 への投資を中止し,投資の変更を意思決定す

ることになる。

このように,実質購入時価会計も利益を実 質当期営業利益と実質実現可能原価節約とに 分離することによって,経営者の意思決定の ために,再投資等に関する様々な情報を提供 する。この情報によって,経営者は一般に次 のように意思決定を行うことになる。

( 1 )   実質当期営業利益率が利子率よりも高 いならば,その投資を増加すべきである。

( 2 )   実質当期営業利益率が利子率よりも低 いが,実質経営利益率が利子率よりも高 いならば,その投資を減少させながら,

利子率よりも高い実質当期営業利益率を 稼得できる新しい投資代替案を探求すべ

きである。

( 3 )   実質当期営業利益率も実質経営利益率 も共に利子率よりも低いならば,その投 資を即座に中止し,投資を変更すべきで あるの。

以上によって明らかなように,実質購入時 価会計は経営者の業績評価任務と意思決定の 促進任務とを真の意味で具体的に果たすこと になり,したがって,これらがこの会計の論 拠であるということになる 1 0 ) 。

きである。 v むすびに代えて

しかし,実質実現可能原価節約を加味した

実質経営利益率が示すように,企業の状態は 以上本稿では,時価会計の論理的考察の出

良くなっている。というのは,これは 12.5% 発点として,エドワーズ=ベルの所論を参考

(18)

にしながら購入時価会計の論理を検討してき た。そして,そこにおいて,購入時価会計は 経営者の業績評価任務と意思決定の促進任務 を果たすことが明らかとなった。

すなわち,購入時価会計は,経営者の業績 評価任務に関して,当該期間に発生した事象 をすべて報告し,また当該期間の事象のみを 報告することによって,経営者の責任の所在 ないし期間的帰属が明確となり,これによっ て期間比較と企業間比較とを可能にする。ま た,意思決定の促進任務に関して,購入時価 会計は,利益を当期営業利益と実現可能原価 節約とに分離することによって,投資等に関 する様々な情報を提供し,投資意思決定を促 進するのである。

さらに,一般物価水準の変動を加味した実 質購入時価会計は,経営者の業績評価任務に 関して真の意味における期間比較と企業問比 較とを可能にし,また,意思決定の促進任務 に関して,購入時価会計と同様に投資意思決 定を促進するのである。

このように,購入時価会計は非常に有用な 会計システムであるが,問題点が全くないわ けではない。そこで最後に,購入時価会計の 問題点を指摘し,同時に購入時価会計の会計 における真の役割を明らかにするとともに,

売却時価会計をも含めた時価会計一般の論拠 の一端を解明していきたい。

前節で述べたように,購入時価会計は利益 を当期営業利益と実現可能原価節約とに分離 することによって,経営者の意思決定のため に,再投資等に関する様々な情報を提供する。

そして,この情報によって,経営者は,現在 の投資を継続して増加すべきか,減少しなが ら他のより有利な投資代替案を探求すべき か,それとも即座に中止して他のより有利な ものに投資を変更すべきかの意思決定を行う ことができた。

しかし,ここで注意すべきことは,これら の意思決定の背後に, I 現在の利益が将来の 利益を予測できる」という考えがあるという ことである。現に,エドワーズ=ベルは「・一

…現在報告される利益が将来を予測すること ができる . . . . . . J [E&B , 1 9 6 1 , p . 1 0 3 n J と述べ,

このことを裏付けている。そして,これは,

現在既知の知識体系を未知の領域に拡大して 利用する「外挿法」の思考にほかならない。

したがって,購入時価会計はこの外挿法的思 考を有しているということができる。

この考えに対してスターリングは,それは 測定問題と予測問題とを混同しているとして 批判する。すなわち, I 将来を示すために使 用される数字は通常,過去に存在したが将来 に存在することが予測されない要素の影響を 除去するために調整され,将来に存在するこ とが予測されるが過去に存在しなかった要素 の影響を加えるために調整される。 J[ S t e r ‑ l i n g ,  1 9 7 0 ,  p . 3 2 9 ; 訳書, 3 0 2 頁]つまり,経営利 益がそのまま将来を予測するための資料とな ることはできず,将来を予測するためには,

それに何らかの調整を加えることが必要とな る 。

さらに重要なことに,現在の利益が将来の

利益を予測するために使用されるのは,現在

の利益の測定値それ自体が適合的であるから

である。これとは逆に,その測定値がいかに

将来利益を良く予測するかに基づいて,利益

を測定する方法を選択することは誤りであ

る。というのは,そのようにしてなされた測

定値は「平均利益」ないしは「調整利益」と

なる可能性があり,企業の実際の活動を表さ

なくなるからである。会計は測定でなければ

ならず,予測と混同してはならない。したが

って,外挿法によって測定問題と予測問題と

を混同した,購入時価会計における経営者の

意思決定促進任務の論拠は若干後退せざるを

(19)

えないのである。

しかし,それにも増して,購入時価会計の 最大の問題点は,資産の評価基準である購入 時価である。購入時価はあくまでも未所有資 産の購入または非購入の意思決定のみに使用 すべきであり,所有資産の評価基準として使 用すべきではない。というのは,購入時価は 所有資産には関係しないからである。このこ

とをスターリングは次のように述べている。

「……所有資産の受入価値(購入時価一筆者) はそれらの売却に適合せず(というのは,そ れらを払出価値(売却時価一筆者)で売却し なければならないから),それらの購入にも 適合しない(というのは,それらはすでに所 有されているから)l1 )oJ [ S t e r l i n g , 1 9 7 9 , p .   1 2 4 ; 訳書, 1 8 2 頁]

したがって,購入時価を資産の評価基準と して財務諸表に計上してはならないというこ とになる。財務諸表の資産はすべて所有資産 であるからである。この意味で,購入時価は 通常の会計システムに載ることができず,臨 時的な評価基準であるといわざるをえない。

すなわち,購入時価が経営者の意思決定促進 任務を果たすのは,未所有資産の購入または 非購入の意思決定の領域に限定されるという ことになり,また購入時価は臨時的な評価基 準にすぎないので,これに基づく購入時価会 計も通常の会計システムには載らない臨時的 な会計にすぎないといわざるをえない。

それでは,購入時価会計は経営者の業績評 価任務に関してどのような役割を真に果たす のであろうか。その答えとして,これまで,

購入時価会計は期間比較と企業間比較とを可 能にすることによって経営者の業績評価任務 を果たすとしてきたが,より具体的には,購 入時価会計はとりわけ経営者の行った資産購 入活動の善し悪しを評価する役割を果たすと いうことができる。そして,その理由はこの

会計の計算構造的特質から明らかとなる。

購入時価会計は,利益を当期営業利益と実 現可能原価節約とに分離する。これは,経営 利益の測定において,購入時価が利益測定の 媒介の役割を果たしており,これを媒介とし て,利益が分割されるからである。そして,

これはさらに,取得原価会計や実質取得原価 会計の場合には,購入市場と販売市場の価格 差によって利益が認識されるのに対して,購 入時価会計の場合には,購入市場と販売市場 の価格との聞にもう 1つの購入市場価格を介 在させたことに起因している。

すなわち,経営利益の測定においては,一 方では,購入市場における価格変動を保有活 動による実現可能原価節約として認識し,こ れを期末購入時価と期首購入時価との差額と して測定するとともに,他方では,販売市場 の営業活動における利益を当期営業利益とし て認識し,これを売上収益と購入時価費用と の差額として測定するのである。ここで,前 者の利益を「購入市場利益」と呼び,後者の 利益を「販売市場利益」と呼ぶならば,購入 時価会計はこの購入市場利益と販売市場利益 の両者を包含した会計であるということがで きる。

このように,購入時価会計は性格ないし次 元の全く異なる 2 つの利益概念を含んでお り,これを購入時価が媒介しているので,こ の会計の計算構造的特質を次のようにいうこ とができる。すなわち,購入時価会計は,購 入時価を媒介として, I 保有活動による購入 市場利益と営業活動による販売市場利益を包 含した二元的会計」である。

この二元的会計のうち,購入時価会計にあ

って取得原価会計や実質取得原価会計にない

ものは, I 購入市場利益」であり,これがこ

の会計の特徴であるということができる。そ

して,いうまでもなく,この購入市場利益が

(20)

実現可能原価節約である。これは,価格上昇 期においである資産を価格上昇前に購入し,

その資産を価格上昇後に保有していることに よって,支出が節約されたことによる利得で ある。換言すれば,これは資産購入活動の成 功度を表す指標である。したがって,購入時 価会計は,実現可能原価節約を認識すること によって,資産購入活動の成功度を評価する ことができ,これによって,経営者の業績評 価任務を果たしているのである。

以上によって明らかなように,購入時価会 計は,資産購入活動における意思決定および 業績評価の任務を具体的に果たすことにな る。ただ,前述したように,購入時価会計の 評価基準である購入時価はあくまでも未所有 資産の購入または非購入の意思決定のみに使 用すべきであり,所有資産の評価基準として 使用すべきではない。つまり,購入時価を資 産の評価基準として通常の財務諸表に計上す べきではない。この意味で,購入時価は通常 の会計システムに載ることができず,臨時的 な評価基準であるといわざるをえず,さらに,

これに基づく購入時価会計も臨時的な会計シス テムにすぎないといわざるをえないのである。

このように,購入時価会計の論拠は,それ を厳密に検討することによってかなり限定的 なものとなったが,しかし,この会計の論拠 の本質は依然として不変である。そして,そ の論拠とは,経営者の業績評価任務に関して,

購入時価会計が,当該期間に発生した事象を すべて報告し,また当該期間の事象のみを報 告することによって,経営者の責任の所在な いし期間的帰属が明確となり,これによって 期間比較と企業間比較とを可能にするという

ものである。

取得原価会計のように,過去の期間になさ れた意思決定がその期間に認識されずに,当 該期間に認識されるならば,経営者の責任の

期間的帰属が不明確となり,経営者の業績に 関する期間比較が行えないことになる。これ に対して,購入時価会計における当期営業利 益と実現可能原価節約のようにある期間に行 われた意思決定の結果がその期間に認識され るならば,経営者の責任の期間的帰属が明確 となり,経営者の業績に関して純粋な期間比 較が行えることになる。このように,購入時 価会計は企業の営業活動ならびに保有活動に 関して期間比較の可能な情報を提供し,経営 者の期間聞の業績比較に役立つのである。

これと同じことが,企業間比較についても いうことができる。企業間比較は,経営者の 責任の期間的帰属を明確にすることによって はじめて達成される。取得原価会計のように,

期間利益に過去の意思決定による成果が混入 されるならば,たとえ 2 つの企業が同じ期間 利益を報告したとしても,当該期間のみに帰 属する経営者の業績は異なるかもしれず,そ れゆえ 2 人の経営者の業績を比較することは できない。これに対して,購入時価会計によ れば 2 企業聞の経営者の責任帰属が期間的 に明確にされ,したがって彼らの業績を直接 比較することができるのである

しかしながら,ここで注意すべきことは,

この論拠は購入時価会計に固有の論拠ではな いということである。というのは,この論拠 は時制的に「現在」を表しているすべての会 計に妥当するからである。したがって,この 論拠は評価基準として現在的な売却時価を使 用する売却時価会計にも妥当することにな り,購入時価会計それ自体の特別な論拠では ない。すなわち,この論拠は売却時価会計を も含めた時価会計一般の共通的な論拠である ということができるのである。

これまでしばしば述べてきたように,購入

時価会計が通常の会計システムに載ることが

できず,臨時的な会計システムであることか

参照

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