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直流給電システム用スイッチング電源の

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(1)

直流給電システム用スイッチング電源の 高周波化のための低損失回路技術の研究

Study on Energy Loss Reduction for High Frequency Switching Power Supplies in DC Feeding Systems

2018 年 12 月

長崎大学大学院工学研究科

Graduate School of Engineering, Nagasaki University

池 田 敏

Satoshi Ikeda

(2)
(3)

数式記号・略称 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⅳ まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

第 1 章 緒論

1. 1. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 1. 2. 直流給電システム導入の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1. 2. 1. 直流による給電システムの発達 ・・・・・・・・・・・ 6 1. 2. 2. 民生用途にみる直流給電システム ・・・・・・・・・・ 7 1. 3. スイッチング電源の役割と回路方式 ・・・・・・・・・・・・・ 10 1. 3. 1. 絶縁方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 1. 3. 2. 非絶縁方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 1. 4. スイッチング電源の高周波化の背景と課題 ・・・・・・・・・・ 20 1. 5. スイッチング電源におけるデバイスと高周波化の関係 ・・・・・ 23 1. 5. 1. マグネティクス技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 1. 5. 2. パワー半導体デバイス技術 ・・・・・・・・・・・・・ 31 1. 5. 3. 集積回路デバイス技術 ・・・・・・・・・・・・・・・ 33 1. 6. 非絶縁低ワット用途における高周波化の背景と課題 ・・・・・・ 38 1. 7. 絶縁高ワット用途における高周波化の背景と課題 ・・・・・・・ 43 1. 8. 本研究の目的と意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

第 2 章 準共振形 SEPIC コンバータ

2. 1. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 2. 2. 従来技術と問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 2. 3. 提案回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 2. 4. シミュレーション ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 2. 5. 第 2 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62

第 3 章 アクティブクランプ共振形 SEPIC コンバータ

(4)

第 4 章 低損失アクティブスナバを用いた 昇圧型フルブリッジコンバータ

4. 1. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83 4. 2. 従来技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 4. 3. 従来技術の問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 4. 3. 1. 軽負荷動作における課題 ・・・・・・・・・・ 90 4. 3. 2. スタートアップ動作における課題 ・・・・・・ 91 4. 4. 提案回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 4. 4. 1. 軽負荷動作における課題の解決 ・・・・・・・ 94 4. 4. 2. スタートアップ動作における課題の解決 ・・・ 95 4. 4. 3. スナバ制御 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 4. 5. 試作機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 4. 6. 実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103 4. 7. 第 4 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108

第 5 章 低損失アクティブスナバを用いた昇圧型

フルブリッジコンバータの双方向化と効率改善

5. 1. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109 5. 2. 提案回路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110 5. 3. 試作機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 5. 4. 実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117 5. 5. 提案回路の効率改善 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120 5. 6. 第 5 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126

第 6 章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127

(5)

Symbol Designation Unit

C キャパシタンス F

Cr クランプキャパシタのキャパシタンス F

Cex1, Cex2 共振用キャパシタのキャパシタンス F

Ci 入力キャパシタのキャパシタンス F

Co 出力キャパシタのキャパシタンス F

Cr 共振用キャパシタのキャパシタンス F

Cs エネルギー蓄積用キャパシタンス F

D Duty cycle, 時比率 -

Ei 入力電圧 V

Eo 出力電圧 V

f 周波数 Hz

F 規格化周波数(F = fr / fs -

fr 共振周波数 Hz

fs スイッチング周波数 Hz

I 電流 A

ICS キャパシタCsの電流 A

IDS 半導体スイッチ電流 A

ID ダイオード電流 A

If LED出力電流 A

IIN 入力電流 A

IL インダクタ電流 A

(6)

Symbol Designation Unit

ILr 共振用インダクタ電流 A

iMg 絶縁トランスの励磁電流 A

Io 負荷電流 A

IS1 半導体スイッチS1の電流 A

IS2 半導体スイッチS2の電流 A

ITR トランス電流 A

L インダクタンス H

L1, L2 エネルギー蓄積用インダクタンス H

LF , LM エネルギー蓄積用インダクタンス H

Lp 絶縁トランスの励磁インダクタンス H

Lr 共振用インダクタンス H

N1 トランスの一次側巻数 -

N2 トランスの二次側巻数 -

NH トランスの高電圧(直流バス)側巻数 -

NL トランスの低電圧(蓄電池)側巻数 -

P 電力 W

R, RL, Ro 負荷抵抗

T スイッチング周期 s

TD デッドタイム s

TON オン時間 s

Ts スイッチング周期 s

(7)

Symbol Designation Unit

V 電圧 V

VCS キャパシタCsの電圧 V

VCs_hys キャパシタCsの両しきい値間のヒステリシス電圧 V

VCs_th1 キャパシタCsの上しきい値電圧 V

VCs_th2 キャパシタCsの下しきい値電圧 V

VDS ドレイン・ソース間電圧 V

Vf LED出力電圧 V

VGS ゲート・ソース間電圧 V

VGS1 半導体スイッチS1のゲート・ソース間電圧 V

VGS2 半導体スイッチS2のゲート・ソース間電圧 V

Vin 入力電圧 V

VH 高電圧(直流バス)側電圧 V

VL 低電圧(蓄電池)側電圧 V

VLF インダクタLFの電圧 V

VLr 共振用インダクタLrの電圧 V

Vm フルブリッジ回路のバイアス電圧 V

Vo 出力電圧 V

Vref 基準しきい値電圧 V

μ 透磁率 H/m

μ 透磁率(複素表現における実部) H/m

μ 透磁率(複素表現における虚部) H/m

(8)

AC Alternating Current

CLCL CLCL型電流共振コンバータの略

CPU Central Processing Unit,中央処理装置

DC Direct Current,直流

DSP Digital Signal Processor,ディジタルシグナルプロセッサ

EMS Energy Management System,エネルギーマネジメントシステム

FET Field-Effect Transistor,電界効果トランジスタ

FOM Figure of Merit, 半導体における性能指標

FPGA Field-Programmable Gate Array

FRD Fast Recovery Diode, 高速リカバリダイオード

FRT Fault Ride Through, 事故時運転継続要件

GaN Gallium Nitride, 窒化ガリウム

IC Integrated Circuit,集積回路

IGBT Insulated Gate Bipolar Transistor,絶縁ゲートバイポーラトランジスタ

JFET Junction Field-Effect Transistor,接合型電界効果トランジスタ

LED Light Emitting Diode, 発光ダイオード

LLC LLC型電流共振コンバータの略

LVDS Low Voltage Differential Signaling,低電圧差動伝送 MOSFET Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor

PCS Power Conditioning System, Power Conditioning Subsystem

PI Proportional-Integral

SEPIC Single Ended Primary Inductor Converter

SiC Silicon Carbide,炭化珪素

SPS Samples per Second,出力データレート

TR Transformer,トランス,絶縁トランス

VHF Very High FrequencyVHF周波数帯の略

(9)

再生可能エネルギーを電源とするエネルギーマネジメントシステムの新たな主流 となりつつある直流給電システムに用いられる電力変換装置の小型・軽量化の要求に こたえるべく,スイッチング電源の駆動周波数の高周波化が研究されている[1]-[8] スイッチング電源はスイッチ素子のオンオフ動作により所望の電力変換を行うが,高 周波化にともない損失やノイズの増大といった問題が発生する。これらの問題を抑制 するために,半導体スイッチのストレスを共振によるソフトスイッチング技術やスナ バ技術により低減する方法が注目されている[9]-[23]

主に E 級コンバータや絶縁型電流共振形コンバータを軸に高周波化の研究が進展 しているが[24]-[39],高周波化には周辺技術としてのデバイス技術との統合的解決が 必要となる[40]-[61]。そのためにスイッチングにともなう損失を抑制すると同時に半 導体スイッチの電圧ストレスを低減する技術が必要となり,代表的なものにアクティ ブクランプ技術がある[62]-[88]

太陽電池や蓄電池などの電力を変換する場合に適用が検討される昇降圧コンバー タに関しても,共振回路やスナバ回路の適用によるスイッチング損失の低減がこれま でに検討されている。数百ワットまでの小容量電源の高周波駆動に最も適した昇降圧 コンバータ回路のひとつである SEPIC コンバータ(Single-Ended Primary-Inductor

Converter)に関して,これまで検討されてきた共振形 SEPIC 回路はインバータ部と整

流部に分けた動作が論じられ,それらが一体となったコンバータとしての動作は明ら かにされておらず,高周波駆動を行いながらソフトスイッチングによる高効率化を実

(10)

また数キロワット以上の大容量電源の高周波駆動に最も適した昇降圧型コンバー タのひとつである昇圧型フルブリッジコンバータは,既存の多段構成によるコンバー タに比べて簡素な構成となるため高効率化が期待されるが,フルブリッジ回路を構成 するスイッチ素子に印加されるバイアス電圧が上昇するモードが存在するという本 質的な課題を対策することが容易ではなく,高周波駆動を行いながら広範な入力電圧 に対して高効率化を実現することは困難であり,上記の電圧上昇を対策する回路を動 作させることでかえって損失が増大するという課題があった[106]-[126]

本論文では,直流給電システムに用いられる電源の小型軽量化の要求に応えるため に,電源の心臓部である DC-DC コンバータ回路のパワー半導体スイッチ素子に印加 される電圧の上昇をアクティブに低減する対策を講じることにより,高周波駆動と高 効率化を両立する新たな回路技術を提案し,その特性を明らかにする。

具体的には,最も用途の広い数百から数キロワットの容量の直流給電システムに対 応できる回路技術を対象に,まず数百ワットまでの小容量電源の高周波駆動に最も適 した共振形SEPICコンバータの新たな回路方式の提案を行い,動作原理の解明と有用 性の検証を行う。次に数キロワット以上の比較的大容量の電源の高周波駆動に最も適 した昇圧型フルブリッジコンバータの新たな回路方式の提案および動作原理の解明 と試作機の開発,有用性の検証を行う。本論文の研究の成果により,最も用途の広い 数百から数キロワットの容量の直流給電システムに対応できる回路技術が進展し,来

(11)

案を行った。提案回路においてソフトスイッチングが達成される基本動作とその条件 を明らかにしたが,この準共振形SEPICコンバータにはスイッチ電圧のピーク値の増 大という課題が明らかとなった[127]。この課題は共振回路に過剰なエネルギーが蓄積 されることで発生すると考えられるため,次にエネルギーを回生し共振電圧ピーク値 を抑制するアクティブクランプ回路を適用したアクティブクランプ共振形 SEPIC ンバータを検討した。この回路は共振回路において発生するエネルギーをアクティブ クランプ回路により出力側へと回生し,主回路のスイッチ電圧のピーク値を抑制し,

主回路は電圧共振によるソフトスイッチングを達成してスイッチ電圧ストレスを低 減することができる。しかしながら主回路の設計方針に関しては明らかにされていな いため,これらを明らかにした[128]-[132]

昇圧型フルブリッジコンバータを対象として,まずブリッジ回路バイアス電圧が上 昇するモードが存在するという本質的課題への対策として,バイアス電圧が上昇した ときのみ必要最小限に動作する低損失アクティブスナバ回路を導入した新たな回路 方式を提案し,本方式の基本動作を明らかにするとともに,低損失アクティブスナバ 回路の設計方針についても明らかにし,試作品を用いた実験による検証を行った

[133]-[138]。さらにこの方式を蓄電池の充放電装置にも応用可能とするため双方向化

した回路方式を提案し,スイッチ素子,スナバ回路,トランス構成に関する高効率化 の手法を提案し,実験による検証を行った[139]-[141]

本論文は第1章から第6章で構成され,以下に各章の概要を示す。

(12)

型フルブリッジコンバータの概略について論じ,その課題を明らかにした。

2 章では,準共振形SEPIC コンバータを対象とし,従来の共振形SEPIC コンバ ータに対し,スイッチ直近に独立した共振用インダクタを付加することでスイッチ電 圧の電圧共振によるソフトスイッチングを行う準共振形 SEPICコンバータを提案し,

そのインバータ部と整流部が一体となったソフトスイッチング動作条件を明らかに した。またスイッチ素子に対し入力電圧の 57 倍の電圧ストレスが加わる課題を明 らかにするとともに,回路パラメータとスイッチ電圧特性の関係を明らかにした。

第3章では,アクティブクランプ共振形 SEPIC コンバータを対象とし,準共振形

SEPICコンバータの課題であるスイッチ電圧の増大を抑制するため,アクティブクラ

ンプ回路の適用を検討した。まず回路パラメータとスイッチ電圧および回路特性の関 係を明らかにし,さらにそれらが出力電圧およびソフトスイッチングの成立条件に及 ぼす影響についてシミュレーションと実験により検証を行った。

第4章では,昇圧型フルブリッジコンバータの基本構成および動作原理について述 べたあと,低損失アクティブスナバを適用した簡単かつ高効率な回路を提案し,その 基本構成および動作原理について明らかにし,実験による検証を行った。

第5章では,昇圧型フルブリッジコンバータを蓄電池の充放電装置にも応用可能と するため双方向化した回路方式を提案するとともに,スイッチ素子,スナバ回路,ト

(13)

第1章

緒 論

1. 1

はじめに

本章では,直流給電システム導入の背景として,再生可能エネルギーを電源とする 電力システムにおける応用と民生用途における応用について述べたあと,スイッチン グ電源の高周波化の背景について述べる。また直流給電システムに適用が検討される スイッチング電源の役割と回路方式について,入出力間の絶縁の有無および電力容量 の大小によって回路技術を分類し,技術背景について述べる。電源の高周波化におい ては,高周波動作に適したデバイスを選択したうえで,回路を構成するデバイスのス トレスを低減することが重要な鍵となり,本研究が取り組む課題の中心もそこにある。

そこで低損失回路技術と密接な関係にあるデバイス技術として,マグネティクス技術,

パワー半導体デバイス技術,加えてアナログ集積回路技術をとりあげて論じる。

その上で,本研究で対象とするSEPICコンバータおよび昇圧型フルブリッジコンバ ータの基本原理をふまえ,それぞれの高周波化の背景について論じ,課題を明らかに する。本章のまとめにかえて,本研究の目的と意義を述べる。

(14)

1. 2

直流給電システム導入の背景

1. 2. 1 直流による給電システムの発達

近年,地球温暖化や省エネルギー化への関心が高まっており,太陽光発電に代表さ れる再生可能エネルギーの普及が進んでいる。太陽電池に代表される発電デバイスが 発生した直流電力や蓄電池を統合して供給信頼度を向上させたシステムにおいては,

発電ならびに蓄電した電力を最大限利用するため,各発電デバイスに直流変換回路を 接続して直流バスに接続する方式が提案されている[1]-[5]

エネルギー伝送に直流を用いる直流送電は,長距離送電の場合に電線の抵抗で発生 する送電損失が小さいこと,線数が少なく鉄塔などの設備コストが抑えられること,

連系する電力系統間の設備故障等によるトラブルの波及対策が容易であり供給信頼 度が高いことなどの様々な利点があるため普及が進んでおり,日本国内でも数か所で 用いられている。代表的なものに,東日本の 50Hz 地域では北海道~青森の北本連系 線,西日本の 60Hz 地域では徳島~和歌山の阿南紀北直流幹線がある。また半導体の 開発や再生可能エネルギーの活用にともない,消費エリアごとの直流給電システムが 特に鉄道分野や通信分野で多く採用されている[3], [4]

通信分野では,インターネットの普及にともない,上記の直流送電系統や蓄電池シ ステムや再生可能エネルギー発電システムとの連系制御により供給信頼度とシステ ム効率を向上させるため,ビッグデータを扱うデータセンターを中心に従来の交流給 電システムから直流給電システムへの移行が進められている。再生可能エネルギーと

(15)

1. 2. 2 民生用途にみる直流給電システム

民生用途においても,近年の創蓄エネルギーマネジメント技術の普及ならびに施 工面の課題対策を要因として,直流給電システムの応用が検討されている。直流給電 を導入した住宅用多灯照明システムの構成例を図1. 2に示す。住空間であるため数十

~数千の灯具が配備されるためその施工性と信頼性,灯具ごとの高効率化と小型化が 大きな課題であるとともに市場競争力を高めるポイントとなるが,本システムにおい ては灯具直流給電系統を DC48V 以下の安全電圧に設定することで施工性と信頼性を 高め,また従来は灯具ごとに配備していた AC/DC 変換部を交流配電系統の近傍に統 合することで灯具の小型化とシステム効率の向上を実現している。前節で述べた直流 給電システムと組み合わせることでこの AC/DC 変換部は省略でき,さらなるシステ ム効率と信頼性の向上が図られる[6]

これらの照明用アプリケーションを足掛かりとして,スマート配電盤や監視システ ム等を統合した住宅用または店舗用エネルギーマネジメントシステムへの拡張,集合 住宅などに応用範囲を広げて行く検討がなされている[7], [8]。また車載用途でも直流 給電系統においてDC48Vを採用する検討がなされている。

ここで述べたように,システムそのものが直流給電を基軸とした新しい形に変革し ていくなかで,システムを構成する電力変換装置についてもその役割や要求仕様は変 化してきている。すなわち,より高い電力変換効率を,広い電圧範囲に対応しながら の安定動作と両立して,小型かつ軽量に実現することが求められてきている。

(16)

1. 1 再生可能エネルギーと蓄電池を活用した直流給電システムの構成例 Figure 1. 1 Direct current power supply system deploying renewable energy sources and

rechargeable batteries.

Transformer

Gating Signals

Utility EMS Wind Power

Generating Station

DG EMS Solar Power

Generating Station

Fuel Cell Power Generating Station

Micro-Turbine Power Generating Station

Local Utility

Local Loads Measurements

AC/DC

DC/DC

DC Bus

Control

DC/AC

DC/DC

Energy Storage Station

DC/AC DC/DC

DC Load

AC Bus

DC/DC Control Gating

Signals Gating Signals

Control

Infinite Bus

Local Loads

Local Loads Control

Gating Signals

(17)

1. 2 直流給電を導入した住宅用多灯照明システムの例

Figure 1. 2 Example configuration of direct current supply system for residential use deploying multiple lights.

AC Main

Solar Power Generator

Local Loads AC/DC

DC/DC

DC Bus

Energy Storage

Station DC/AC

DC/DC

AC Bus DC/DC

Control Gating

Signals Gating Signals

Control

Local Loads

Local Loads Control

Gating Signals Fuse Panel

LED Light

LED Light

LED Light Control

(DC Main)

Local Loads

Local Loads Lighting System

(18)

1. 3

スイッチング電源の役割と回路方式

直流給電システムにおいて電力変換装置として用いられるスイッチング電源は,高 周波絶縁トランスにより入力回路と出力回路を絶縁するか否かにより,絶縁方式と非 絶縁方式に大別される。本節ではそれらを高ワット(kW級~)と低ワット(~100 W 級)の主な用途に分類して,各用途における役割と回路方式について論ずる。

なお電源の要素技術においては,相互に共通の技術や課題が研究されてきた背景が あり,本来回路方式ごとに切り離して考えることはできない。本節では理解のため分 類しているが,共通の技術や課題が多くあることを念頭におかれたい。

1. 3. 1 絶縁方式

高周波絶縁トランスにより入力回路と出力回路を絶縁する絶縁方式は,安全性を確 保するために電源が主にとる構成であり,非絶縁方式に比べて汎用性が高い。太陽電 池用電源や照明用電源のように,これまで非絶縁で対応していた用途にも絶縁への要 求が高まっている。

本研究では,太陽電池用電源に適用できる絶縁型コンバータを対象として新たな回 路方式を提案するとともに,さらにそれを双方向化して蓄電池の充放電装置にも適用 できる回路方式を提案している。

1. 3. 1. 1 高ワット絶縁用途

近年,太陽電池や二次電池といった直流電源と直流バスとの間における電力変換装

(19)

これを分散配備した高周波絶縁型の電力変換装置で代替し,パワーコンディショナ システム自体に絶縁機能を付加することで,コンバータ回路技術による高効率化を行 うことにより,システムの小形軽量化が飛躍的に進んでいる[1], [2]。図1. 3に示すの はパワーコンディショナの小型軽量化の開発例である。

太陽電池や二次電池といった再生可能エネルギー源からの直流電圧を入力される 電力変換装置は,その広範な電圧範囲にわたって動作する必要があり,電圧変換と絶 縁を各段で分担した多段構成がこれまで多く採用されてきた。絶縁を担う回路段にお いては,ハーフブリッジやフルブリッジといったブリッジコンバータの回路方式が主 に採用される。

1. 3 パワーコンディショナの小型軽量化の開発例 非絶縁型

パワコン

商用周波 変圧器 三相10kWパワコンの従来構成

絶縁型 パワコン

開発例

単体で 絶縁対応 90L 60kg

効率94%

160L 150kg 効率96%

126L 70kg 効率94%以上

250L 210kg

体積半減 重量1/3 全体効率

約90%

(20)

1. 3. 1. 2 低ワット絶縁用途

フライバック形やフォワード形といった,絶縁型コンバータの基本方式およびそれ らの改良方式が主流であったが,高周波化のためにこれらの基本方式にアクティブス ナバを適用してソフトスイッチングを実現する研究が活発であった[62]-[88]

近年,動作電流を共振形として低損失で高周波化を実現する電流共振方式が定番の 仲間入りをしつつある[32]-[39]。図1. 4に示すのはその代表例であるLLC共振形コン バータの回路図である。1990年代に松下寿電子工業(当時)の小松らによってディス プレイ電源用途に製品化がなされたことを契機に国内でも各メーカがこぞって採用 を進めた。小松によると, LLC 共振形コンバータは真空管の時代から提案されてい た回路方式であり,その入力電圧条件の厳しさから実用化が進んでいなかったが,国 内外の規制により入力力率を改善する必要が生じ,力率改善を行うために前段におか れる非絶縁型の(主に昇圧型)コンバータの出力電圧を安定化する(ただし数%の商 用周波レベルの電圧リプルが含まれる)機能を流用して副産物的に実用化ができたの だという[35]。

最近になって,電流共振方式をもとにさらなる低損失化を追究した新方式への展開 が進められている[37]-[39]。図1. 5に示すのはその代表例であるCLCL共振形コンバ ータの回路図である。図1. 6に示すスイッチング動作波形にみるように,CLCL共振 形コンバータにおいては LLC 共振形コンバータに比べてスイッチ電圧とスイッチ電 流の重なりが小さくなり,低損失化される。

(21)

1. 4 LLC共振形コンバータ Figure 1. 4 LLC resonant converter.

1. 5 CLCL共振形コンバータ Figure 1. 5 CLCL resonant converter.

Q1

Q2

D2 D1

Cin

Co TR

N1

N2 Cr Lr

Cp Ls

N3 Q1

Q2

D2 D1

Cin

Co TR

N1

N2 Cr Lr

N3

(22)

(a) LLC共振形コンバータ

(b) CLCL共振形コンバータ

t v, i

Large turn-off

losses

Current

Voltage

Current

Voltage

t v, i

Quasi-ZCS turn-off

(23)

1. 3. 2 非絶縁方式

非絶縁方式は一般に絶縁方式に比べて簡素かつ低コストに実現できるため,天井設 置の照明器具や筐体での保護がなされている装置など,人体が負荷部に触れない前提 であるなどの条件付きで安全性が保障される用途において,単独で広く用いられてい る。また絶縁を要する電源装置においても,絶縁はいずれかの回路段で確保されてい ればよいため,絶縁方式との多段構成による併用で電圧や電流の安定化を担う構成要 素として多く用いられる。

1. 3. 2. 1 高ワット非絶縁用途

1. 1の直流給電システムに求められる高ワットの電源回路としては,ブリッジ型 回路およびその直列複合回路,あるいはマルチレベル化回路が用いられ,回路方式と してはチョッパ型などの基本回路方式の同形回路群の積層複合構造をとるモジュー ル型マルチレベルコンバータ技術や,同形回路群に位相差を設けて動作させるインタ リーブ技術といった複合回路において,制御の工夫により高機能化を追求する試みや 回路ストレス低減と高周波化を両立する試みが活発である。大電力を扱う半導体デバ イスに加え,インダクタやコンデンサなど受動部品の発熱も課題となるため,放熱機 構や実装技術との統合的アプローチが必要となる[1], [2]

(24)

1. 3. 2. 2 低ワット非絶縁用途

低ワット非絶縁の用途にはスイッチング電源の最も基本となる回路方式が用いら れ,装置も小型となり,とくに電源の小型化が求められることが多い。図1. 7に,非 絶縁コンバータの基本回路方式を示す[89]-[101]。このうち極性を反転することなく昇 降圧の電圧変換が可能なのはSEPICコンバータのみである。

LED 照明用途の電源回路では器具一体型電源の一部で非絶縁方式が認められてお り,低ワットの非絶縁型ではSEPICコンバータが,広範な入出力電圧範囲に対応可能 かつ,低コストで実現できる方式のため,業界の主流となっている[1], [2]

LED照明用途として,入力電圧が一定となる直流給電システムへの適用を検討する 場合にも,LED 負荷の仕様変更や商品ラインナップ間での電源共用化を要求される LED照明用途において広範な出力電圧範囲に対応可能かつ,低コストで実現できる方 式のため,SEPICコンバータが最適と考えられる。

非絶縁コンバータの小型化には高周波化が不可欠であり,高周波化しても絶縁コン バータほどには効率を損なわないため,とくに動作電圧と動作電流の重なりを低減す るソフトスイッチング技術の研究が近年活発化している。

LED 照明用途として最適と考えられる SEPIC コンバータにおいても,高周波化の ために共振型回路によるソフトスイッチングを適用する,共振形SEPICコンバータに 関連する研究がこれまでに報告されている[102]-[105]

(25)

1. 2の直流給電システムに求められる低ワットの電源回路としては,コストの面 からも省リソースのマイコンを活用する必要があり,回路と制御との両面からの損失 低減アプローチが最近の検討によって進展している。

1. 8 LED照明用途の電源回路に用いられる回路方式の,電圧電流を各軸に取

った仕様領域ごとの分類を示す。商用交流を入力とする電源装置においてはトランス による絶縁が要求されるが,器具一体型電源の一部で非絶縁方式が認められている。

電源回路として,低ワットの非絶縁型ではSEPICコンバータが多く適用されている。

SEPIC コンバータは入力力率改善(適宜)と広範な入出力電圧範囲に対応可能かつ,

低コストで実現できる方式であるため,業界の主流となっている。

すなわち低ワット非絶縁用途においては SEPIC コンバータに共振形スイッチを適 用してソフトスイッチング化し,高周波化してインダクタやトランスといった占有ス ペースの大きな受動部品を小型化する方法が有効である。さらに準共振形,複共振形,

アクティブクランプ方式といった展開を図ることが,仕様とコストを両立する実用的 な回路方式を選択する近道である。

なおSEPICSingle-Ended Primary Inductor Converterの略であり,この中にコンバ ータという言葉を含んでいるため,SEPICコンバータという呼び方は厳密には重複と なる。しかしながらこれを避けてSEPIC回路(英:SEPIC circuit)とする例はむしろ 少なく,国際的にもSEPIC converterと呼ぶのが主流となっている。この事情を考慮し,

本論文ではSEPICコンバータ(英:SEPIC converter)に統一する。

(26)

Zeta

D L1

Q L2

Co Cs

Ei

Ro Eo

D L1

Q

L2 Cs

SEPIC

Co Ei

Ro Eo

Buck-Boost

D

Q L

Co Ei

Ro Eo

Boost

D L

Q Co

Ei

Ro Eo

Buck

D

Q L

Co Ei

Ro Eo

D L1

Q

L2

Co Cs

Ei

Ro Eo

Cuk

(27)

(a) 非絶縁タイプ

(b) 絶縁タイプ

1. 8 LED照明システムに適用される電源回路の方式 Figure 1. 8 Selection of power converters for led lighting systems.

(28)

1. 4

スイッチング電源の高周波化の背景と課題

半導体スイッチのスイッチング動作を基本とし,出力の安定化を行うスイッチング 電源には,トランス・インダクタ等の磁気部品及びコンデンサが配備され,それらは スイッチング動作の駆動周波数,いわゆるスイッチング周波数を高めることにより一 般に小容量,すなわち小形軽量なものとなる。電力変換装置の進化の歴史はすなわち 小型軽量化の歴史と言ってもよく,そのための高周波化は最重要の研究課題であると ともに,近年においても画期的な提案の報告が活発になされている[40]-[43]

1. 9に電源のスイッチング周波数と部品定数の関係を,降圧チョッパ方式の電源 を例に示す。インダクタとコンデンサの大きさを決定する LC値はともに周波数と 反比例の関係にあることから,それらは電源のスイッチング周波数を高めることによ って小型軽量化できる。これらの部品は電源の中に占める容積および重量の割合が最 も大きいため,スイッチング周波数を高周波化することが電源の小型軽量化につなが るとされている。

しかしながら,スイッチング電源の本質的動作に伴うスイッチング損失やノイズ等 はスイッチング周波数に比例して増加するため,単純な高周波化は電源性能への負の 影響が大きく成功しない。高周波化に適した回路方式と理想動作の追究による統合的 解決が必要となる。図1. 10に高周波化による電源性能への影響をまとめた相関図を 示す。高周波化により主要な電源性能である効率,サイズ,コスト,信頼性のすべて に負の影響がもたらされ,またそれぞれの電源性能についても相互の影響がある。例 えば効率に直接の負の影響として示されているスイッチング損失とインダクタにお

(29)

1. 9 電源のスイッチング周波数と部品定数の関係

Figure 1. 9 Relationship between power supply drive frequency and component design.

インダクタ 容量値: L

入力 出力

スイッチング 周波数:f

V

インダクタ容量値L コンデンサ容量値C 周波数f に反比例

I

コンデンサ 容量値:C 大きい

重たい

(30)

1. 10 高周波化による電源性能への影響

Figure 1. 10 Affection of high frequency driving in switched mode power supplies.

高周波 スイッチング

安全性 ディレーティング ライフサイクル 冗長性

複合化 集積化

高周波化 冷却

実装技術 ノイズ 冗長性 複合化 集積化 ライフサイクル

運用コスト

効率 サイズ

コスト 信頼性

(31)

1. 5

スイッチング電源におけるデバイスと高周波化の関係

1. 4節において述べた通り,スイッチング電源の高周波化においては,回路技術の みならず周辺技術とのトレードオフを考慮した統合的解決が必要となるため,これら を切り離して考えることはできない。放熱技術やノイズ対策技術といった周辺技術の なかでも,デバイス技術は本研究が主に取り組むテーマであり,本研究は高周波化に おいてもデバイスへのストレス増大を防いで電源性能への負の影響を抑えることを 目的とする低損失回路技術の提案を行っている。

本節では特に,デバイス技術の中でも高周波化と密接な関係にある,マグネティク ス技術,パワー半導体デバイス技術,加えて集積回路技術について論ずる。

1. 5. 1 マグネティクス技術

電源回路において使用されるトランス・インダクタ等の磁気部品は,そのサイズお よび重量においてコンデンサ以上に電源全体に占める割合が大きい。なかでも磁気部 品を構成する磁心(コア)がそのサイズと重量を決定づける最大の要素である。ここ では電力変換回路で利用されるカテゴリの磁性材料および磁性部品の技術動向をも とに,近年の関心事であるスイッチング電源の高周波化に対応するために必要とされ る磁性材料の電気・磁気的特性と利用可能な磁性材料,ならびに高周波化に対応する ための磁性部品の構造について論ずる。

(32)

1. 5. 1. 1 フェライト磁性材料

フェライトは,加藤与五郎・武井武の両博士により当初は磁石材料,いわゆるハー ドフェライトとして発明(1930)された,鉄を主成分とする酸化物磁性材料である。

後に磁心材料,いわゆるソフトフェライトとしての有用性が見出され,ソフトフェラ イト生産のために東京電気化学工業株式会社(現在の TDK)が設立(1935)される などした[44]

ソフトフェライトはNi-Mn系,Cu-Zn系,Ni-Zn系などに代表され,それぞれ磁束 変動の周波数に対する透磁率μの特性と適用範囲が異なる。高透磁率フェライトの特 性と用途を周波数と透磁率に対応して分類したものを図1. 11に示す[45]

スイッチング電力変換回路用途においてはこれまで,数 100kHz までの領域で出来 るだけ高い磁束密度を確保するために,透磁率μの大きなNi-Mn系フェライトが一般 的に使用されてきた。しかしながら近年の高周波化の流れにともない,数 100kHz での領域に高周波化の限界を持つNi-Mn系材料ではなく,これまで専ら高周波信号伝 送やノイズフィルタ用途に用いられてきたNi-Zn系材料をスイッチング電力変換用途 に用いることに注目が集まっている。これについては次節で論ずる。

フェライトの使用上の課題としては,成形加工および使用条件による磁気特性の変 化を考慮して,必要に応じ設計マージンを取るなどの対策を講じなければならない。

一般にフェライトは焼成後に透磁率が減少を経て一定値に安定化(disaccomodation するが,その後も外部からの磁気的,熱的,機械的な擾乱により透磁率が増加し,ふ

(33)

1. 11 高透磁率フェライトの特性と用途 [45]

Figure 1. 11 Performance and applications of high magnetic permeability ferrites.

104

103

102

10-3 10-2 10-1 1 10 102 103 104

周波数 [MHz]

透磁率μ

10

テレビ偏向コイル,

フライバックトランス

テレビ用変成器,

トランス,コイル

マイクロ波素子

(ジャイレータ)

搬送コイル

搬送トランス ラジオ用アンテナ,

変成器,コイル

10-3 10-2 10-1 1 10 102 103 104

Mn-Zn フェライト

Cu-Zn

Ni-Zn

Cu-Zn-Mg

Mn-Mg-Al, Cu-Zn フェロックプレーナ YIG

(34)

1. 5. 1. 2Ni-Mn系フェライト磁性材料

MHz~数十MHzの高周波駆動によるコンバータの実現においては,数100 kHz

MHz 近辺に高周波化の限界を持つ Ni-Mn 系フェライト材料ではなく,これまで専 らノイズフィルタ用途に用いられてきたNi-Zn系フェライト材料をスイッチング電力 変換用途に用いることに注目が集まっている。

フェライト材料の複素透磁率μ*はμ’-jμ”で表され,周波数が低い領域ではほぼ 一定で損失も極めて小さいが,限界周波数 frを超えるとμの減少とともにμが急激 に増大する。μの増大は損失の増大を意味するため,一般に限界周波数 fr を超えな い範囲が実用周波数領域となる。図1. 12に,Ni-Zn系フェライトの複素透磁率の周波 数依存特性を示す。

Ni-Zn系フェライト材料の限界周波数はNi-Mn系のそれと比較して100倍~数千倍

であり,数十 MHz と報告されている。また使用温度の限界であるキュリー温度も

Mn-Zn系フェライトが150℃程度なのに対して350450℃となるため,使用条件によ

る制約を緩和できる長所がある[45], [46]

(35)

1. 12 Ni-Znフェライトの複素透磁率の周波数依存性 [45]

Figure 1. 20 Frequency characteristics of complex permeability of Ni-Zn ferrites.

104

103

102

10-1 1 10 102 103

周波数

f

透磁率μ’

10

x = 0.30

1

[MHz]

虚の透磁率μ”

Ni

x

Zn

1-x

Fe

2

O

4

103

102

10

1

10-1 x = 0.30

0.36 0.50

0.64

0.80

1.00

0.36 0.50

0.64

0.80

1.00

実線:μ’,破線:μ″

(36)

1. 5. 1. 3 非フェライト系材料

フェライト系材料の大きな課題として,磁束密度ならびにインダクタンス値の調整 をコアにギャップをもうける事で実現している点がある。これはコアやインシュレー タ等の部品を汎用化できるため実用面で大きな長所とも言えるが,同時にギャップを 設けることによる局所的なノイズや損失の発生が問題提起され,ギャップを設けない 粉体成形コアの活用が近年注目を集めている[48], [49]

ダスト系材料コアの中でも比較的高周波領域まで低損失を維持できるセンダスト コアは広く用いられていたが,現状は数10 kHzまでの用途に留まっている。

アモルファス系材料はダストコアより高い磁束密度を実現できるためより広い電 源用途に応用されてきたが,製造プロセス精度の要求等からコスト高となる傾向にあ った。アモルファスリボンの積層巻を樹脂ケースに入れたものや樹脂モールドしたも のが普及していたが電源用途には局所的ギャップを入れる必要があり,フェライト系 と同様の課題が生じていた。

重畳電流が小さい領域のみインダクタンスを大きくする案としてフェライトとダ スト系材料の2種のコアを貼り合わせた所謂スインギングチョークも用途によっては 有効であり一時普及したが,重畳電流が大きな領域ではフェライトが飽和して損失が 増加する,不連続要素が加わることで設計や制御が難しくなるなどの課題があるため,

現在ではあまり用いられなくなっている。

(37)

1. 5. 1. 4 コアレス(空心)化

コアレス化による課題としては,空間をコアと考えると比透磁率がおおよそ1であ ることにより,構成されるインダクタおよびトランスのインダクタンスが小さく制限 されることである。これは即ち電力変換回路のエネルギー容量が制限されることを意 味しており,従来は空心コアの活用例は上限を数100 mW程度とする制御電源に留ま っていた。

制御電源における近年の活用例として,Analogue Devices 社の高圧絶縁ゲートドラ イバICにおいて,数100 mWの電力をIC内に設けた超小型空心トランスを介して伝 送する技術が実用化されている。

また近年,独自の VHF 高周波ソフトスイッチング技術と磁気共鳴技術を応用して 10 Wの電力伝送を行う技術がノートPCACアダプタにて商品化された例があり,

他用途への応用にも期待が高まっている。上述の AC アダプタにおいては10 kHz 傍の高周波駆動がなされ,空心トランスによる絶縁電力伝送が実現されている。

(38)

1. 5. 1. 5 高周波化に適する磁性部品の構造

VHF 帯での高周波化においては発生する高周波交流磁界の局所化を避ける事が必 要であり,ここではコア構造の工夫とコイルパターンの工夫によるアプローチを論じ る。コア構造においては磁界の局所化の発生点であるギャップの分散化が必須かつ実 用的であり,フェライトコアにおいてはセンターポールギャップを複数設ける方法,

また粉体状の形成が可能な素材全般において樹脂やセラミックのスペーサを混在さ せた構成としてギャップを分散化させる方法が実用化されている[52]

またフェライトコアを磁路を並行に細分化するように分割する(Split Core)アプロ ーチが近年検討され,特に車載用途等で問題となる 100℃以上の高温において,コア の渦電流損を低減できることがTDK社から報告されている[52]

またコイルパターンの工夫により,発生磁界ならびに渦電流を細分化して渦電流損 等の低減を図るアプローチも検討されており,基板内にパターン形成を行う必要があ る場合には特に有効である。前節で述べた VHF 高周波 AC アダプタにおいてもミア ンダ型パターンの折り返し距離を小さくした改良形のパターンで空心トランスを実 現した構成が採用されている[22], [23]

(39)

1. 5. 2 パワー半導体デバイス技術

半導体スイッチのスイッチング動作を基本とするスイッチング電源において,スイ ッチとして用いられるパワー半導体デバイスは最重要の構成要素のひとつである。一 般にその性能指標とされるFOMFigure of Merit)はオン状態の等価抵抗とゲート蓄 積電荷の積で表され,オン状態の等価抵抗はデバイス耐圧の約2.5乗に比例して増加 することが知られている。デバイス耐圧はチップの絶縁層の厚さに依存するため,製 造された時点で決定するが,耐圧が小さいものを使用するほどオン状態の等価抵抗を 小さく抑えられ,損失を低減して電源の効率を向上させることができる。

従来のSi半導体における性能障壁であるFOMトレードオフを抜本的に解決する手 段として,SiCおよびGaN半導体に注目が集まっている[53]。前者は耐圧600 V以上 の中低速スイッチング動作に対し,後者は耐圧600 V以下の高速スイッチング動作に 適しているとされている。図1. 13WBGWide Band Gap)半導体デバイスの応用 範囲を表す図である。近年の開発動向に目を向けると,今後は数kW以上の大電力用 途においてはSiCの低損失性,数100 W以下の中小電力用途においてはGaNの高速 動作性に重点をおいた活用が進んでいる[54], [55]。

(40)

1. 13 ワイドバンドギャップ半導体デバイスの応用範囲[54], [55]

Figure 1. 13 Application area of wide bandgap semiconductor devices.

10M 1M 100k

1M

100 1k

10 10k

動作周波数 [Hz]

システム出力容量[VA]

10k

100k 1k

100M

100 10

GaN?

GTO

GCT IGBT Module

Power Transmission Bipolar SiC

New Device Trend Traction

Application Trend Thyristor

Triac

Inverter Automotive

UPS

MOSFET

Si SiC

Unipolar SiC

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図 1. 2   直流給電を導入した住宅用多灯照明システムの例
図 1. 5 CLCL 共振形コンバータ Figure 1. 5 CLCL resonant converter.
図 1. 9   電源のスイッチング周波数と部品定数の関係
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