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(1)

計算構造から見たアメリカにおける会計原則等の分類

岡田裕正

Abstract

Firstly, this paper describes accounting structure of the asset-and- liability view and the revenue-and-expense view. In measuring income, B/S plays main role in the asset-and-liability view, but P/L plays main role in the revenue-and-expense view.In addition to the analysis above, this paper clarifies that there are two income concepts in the revenue- and-expense view, because of the different definition of revenue and expense. Lastly this paper classifies the accounting standards (or prin- ciples) in the US. from the discussion of the former part of this paper.

はじめに

会計原則やその前提となる会計諸概念の検討を通じて利益を制度的にどの ようなものとして考えるかという問題に対して,資産負債アプローチと収益 費用アプローチのいずれを採用するのかということは,会計原則の内容に関 わるために,避けて通れない問題である。本稿は,主に米国の財務会計基準審 議会(Financial Accounting Standards Board: FASB)が公表した『FASB 討議資料 財務会計と財務報告のための概念フレームワークに関する論点 の分析:財務諸表の構成諸要素とそれらの測定』 (FASB Discussion Memo‑

randum, An Analysis of Issues Related to Conceptual Framework for Finan‑

(2)

c i a 1  A c c o u n t i n g  a n d  R e p o r t i n g :  E 1 e m e n t s  o f  F i n a n c i a 1  S t a t e m e n t s  a n d  T h e i r   M e a s u r e m e n t : 以下,討議資料と略す)を手掛かりにして 2 つのアプロー チの計算構造がどのようなものか検討し 1) ,それに基づいてこれまでアメリ カで公表されてきた主な会計原則や会計基準の計算構造的な分類を試みよう とするものである 2 。 )

資産負債アプローチと収益費用アプ口一チの特徴

これまで公表されてきた会計原則などが資産負債アプローチと収益費用ア ブローチのいずれに属するかを計算構造的に分類するために,これら 2 つの 計算構造がいかなるものなのかを明らかにすることが必要である。本節では,

FASB の『討議資料』に基づいて,これら 2 つのアプローチの特徴を計算 構造の検討と関わりを持つと考えられる範囲でまず取り出すことにしたい。

『討議資料』によると, 1 財務諸表を通じて伝達される情報の焦点に位置 する」ものが営利企業の利益であるとされている (FASB ( 1 9 7 6 )p a r .   4 ) 。 財務諸表の連携を前提にする場合,本来,企業の収益と費用との差額として の損益計算と企業の正味資産の増減額としての損益計算とは「同ーの測定プ ロセスに属する」ものである (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r .   3 1)。しかし, 1 長期にわ たる強調点の相違が,利益測定に関する 2 つの指導的流派を生み出した」と して,資産負債アプローチと収益費用アプローチの存在を指摘しているので ある (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r .   3 1 )

資産負債アプローチでは,利益は 1 1 期間における営利企業の正味資源の

1) 

~討議資料』に基づいて,資産負債アプローチと収益費用アプローチの計算構造を検討

したものとして藤井(1 9 9 7)第 5 章がある。

2  )アメリカの会計原則等を資産負債アプローチと収益費用アプローチとに分類したもの として,上野(1 9 9 3 ) がある。上野(1 9 9 3 ) では,アメリカ会計学会 (AAA) とアメリ カ公認会計士協会 (AICPA) が公表した会計原則や基準について,それらがいずれのア プローチに属するかを検討しているが, 2 つのアプローチの利益観の相違を収益と費用

との対応と考えるか,純資産の変動と捉えるかに求めている。

(3)

増分の測定値」であるとされ,利益は資産と負債の増減額に基づいて定義さ れるので,資産と負債が鍵概念と位置づけられ,資産は経済的資源,負債は 経済的資源を他の実体に移転する義務を内容としたものとされている。そし て,その他の財務諸表の構成要素は資産と負債の変動として測定されるので ある (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r .  3 4 ) 。

そのため収益や費用(さらに利得と損失)の定義は利益がいかにして得 られたかを示すことを目的としており,したがって利益=収益‑費用+利得 一損失という関係が存在しているけれども,この関係は利益を定義づける ものでも,その金額を決定するものでもないのである (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r .   2 1 1 ) 。

他方,収益費用アプローチでは, I 利益が,儲けをえてアウトプットを獲 得し販売するためにインプットを活用する企業の効率の測定値である」とい うように効率性の尺度として利益を説明しているが,論者によっては収益力 を測定することでもあるとされている (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r . 3 8 ) 。このアプ ローチでは,収益と費用との差額で利益を定義するため,収益と費用とが鍵 概念となり,収益はアウトプット,費用はインプットを内容にしているとい われる (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r . 3 8 ) が,別に収益は成果,費用は努力と述べて

もいる (FASB ( 1 9 7 6 )   pa r .   3 9 ) 。

収益費用アプローチでは,収益と費用との適切な対応に関心があるため,

利益が所有主持分ないし資本の増減と一致することがあっても,それは副次 的にすぎない (FASB ( 1 9 7 6 )   pa r .   4 1)。それゆえ資産や負債には繰延費用 や繰延収益的な項目が含まれる可能性がある。

このように 2 つのアプローチの利益には,資産負債アプローチのように純

資産の純増減部分と見るか,収益費用アプローチのように収益と費用との差

と見るかという相違があるが 3) , W 討議資料』によると,この相違をもたら

3  )周知のように, w 討議資料』では, 2 つのアプローチの相違について,実質的なものと

実質的でないものとに分けて論じている。実質的な相違として指摘されているのは,(1)

(4)

すのは 2 つのアプローチが持つ視点の相違である (FASB( 1 9 7 6 )   pa r .   4 8 ) 。 この 2 つのアプローチが持つ視点については, w 討議資料』では,会計の目 的と対象という 2 つの点から論じていると考えられる 4 。 )

具体的にいうと,資産負債アプローチでは,企業活動の目的をその富の増 大であると捉えている (FASB ( 1 9 7 6 )   pa r .   4 8 ) 。したがって,それを測定 することが会計の目的になっていると考えられ,それゆえ会計の対象は企業 の富(企業が所有する事物)となっている。

これに対して,収益費用アプローチでは,企業ないし経営者の業績を測定 することが会計の目的であるとされており,それを受けて会計の対象は事物 ではなく行為(企業が何を行ったのか)であるとしている (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r . 4 8 ) 。

以上述べたところをまとめると次のように表示できるであろう。

目 的 対 象 鍵概念 リ 手

..LLL

資 産 負 債 富 の 増 減 企 業 の 富 資 産 と 正味資源の増分の アプローチ の リ 誤 定 負 債 測定値

収 益 費 用 企業や経営者 企業の行為 収 益 と 企業の効率性(収 アプローチ の業績の測定 費 用 益力)の測定値

」 一 一

2  資産負債アプローチの計算構造

前節では 2 つのアプローチの特徴を見てきたが,本節と次節では,これ に基づいてそれぞれのアプローチにおける計算構造を考えることにする。

まず資産負債アプローチの計算構造を考える場合,損益は正味資源の純増

資産や負債の内容を,経済的資源および義務とするか,繰延費用および繰延収益とする かということと, ( 2 ) 本節で述べたように利益の内容を純資産の変動とするか収益と費用 との差額とするかということである (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r s . 4 8 ‑ 6 8 ) 。

4  )拙稿(1 9 9 8 )p p . 9 1 ‑ 9 3 。

(5)

減となっていることと,収益と費用は利益がいかにして得られたのかを説明 するものであるが,これらは利益の計算要素としては位置づけられていない ことに注意するべきであろう。これらのことは,損益の計算という点から見 ると,損益計算書がそれに関わっていないことを意味していると理解できる からである。

したがって,収益と費用とによらずに正味資源の純増減を確定するために は,期首と期末の純資産を比較することによって行う以外にないので,まず 資産と負債の各要素を構成する事物の期末在高がそれぞれ確定される必要が あり,次いでこれらの在高に基づいて期末の純資産を求めて,期首のそれと 比較することになる 5) 。そして,このように事物の増減に焦点をあてる会計 で算定される利益は企業が保有する財の純増減を内容とするものであるとい えるが,逆に事物がひとつだけしか存在しないような場合であっても成立す るであろう。例えば,最初に現金だけあり,期末にも現金だけしかない場合,

資産負債アプローチでは途中の行為は考えられないので,出資者からの出資 や出資者への分配がないとすれば,現金の純増減がそのまま損益となるとい えるのである 6 。 )

つぎに,純資産の比較に基づく損益計算に対して,収益と費用とをどのよ うに関係づけることができるのか考えてみたい7)。収益と費用とは損益を計 算するための要素とはされていないが,

~討議資料』によると,資産負債ア

プローチの論者は連携した財務諸表を支持しているとしているからである (FASB  ( 1 9 7 6 )   p a r . 8 1 ) 。

5  )藤井 ( 1 9 9 7 )p p . 1 3 5 ‑ 1 3 6 。

6  )これは,藤田 ( 1 9 9 7)で指摘される複数表現財単式簿記とも異なっている。複数表現 財という用語は,ひとつひとつの財が他の財の価値変化を表現しあうという意味がある が,資産負債アプローチの場合には,ひとつひとつの財の変動が問題とされるのであり,

他の財の価値変化を相互に表現しあう関係にはなっていないからである。資産負債アプ ローチはひとつひとつの財の変動を寄せ集めたものということもできるであろう。

7)さらに,利得と損失もあるが,ここでは割愛しておく。

(6)

しかし,既に述べたように資産負債アプローチでは,利益=収益‑費用と いう関係は利益を定義するものでも測定するものでもないとされているの で,資産負債アプローチにおける財務諸表の連携は貸借対照表と損益計算書 とにおける損益の 2 重の計算という形での関係にはならない。損益を計算す るという視点からの損益計算書の計算構造というのは資産負債アプローチで は考えることができないのであるから,収益や費用の位置づけについては別 の観点から考える必要がある。

『討議資料』では,収益と費用という要素の定義は損益がし叶斗こして得ら れたかを示すことを目的になされるとしている (FASB ( 1 9 7 6 ) pa r .   2 1 1 ) 。 したがって,利益=収益‑費用という関係式は,純資産の変動として算定さ れた損益がそれだけあるのはなぜかということ,すなわち損益の原因を収益 と費用とで示す式と見ることができるであろう。資産負債アプローチでは,

利益を計算するという役割をもった貸借対照表とその利益の説明をするとい う役割をもった損益計算書との聞の関係として貸借対照表と損益計算書との 連携を考える必要があるのである。

さらに,

~討議資料』では収益と費用とは資産と負債の変動に関わらせて

定義されるとされているが,損益に関わる資産と負債の変動部分,すなわち 純資産の変動をもたらす部分だけを取り出して,それをそのまま収益と費用 として再度表示するものとはなっていない。そのまま表示したのでは損益の 原因表示とはならないであろう。『討議資料』では損益がいかにして得られ たのかを示すために,収益は「期中のある種の取引および事象における純資 産の源泉」を表し (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r .   2 0 8 ) ,費用は「期中の当期収益をも たらすと期待される取引および事象における純資産の犠牲」を表す (FASB

( 1 9 7 6 )   pa r .   2 0 8 )のである。収益と費用は,純資産の変動をもたらした「源 泉」や「犠牲」を表すという意味では,資産と負債の増減を内容としつつも,

それをその変動をもたらした原因別に集計して構成し直したものと考えられ

るのである。そこで,このようなことを内容とする収益費用と利益との関係

(7)

を考えることになるが,資産負債の変動をその内容として含んでいることを あわせて示すために,収益費用ではなく,資産の増減,負債の増減でこの関 係式を書き直してみると次のようになる。

損益=収益‑費用

=(資産増加+負債減少)‑(資産減少+負債増加)

=資産増加+負債減少‑資産減少‑負債増加

この式をそのまま現行の損益計算書のように表記するためには,次のように 変形する必要がある。

損益+資産減少+負債増加=資産増加+負債減少

これを T 字型にあてはめれば,資産負債アプローチでの損益計算書という ことになるだろう。今,貸借対照表において利益が算定された場合を考える ならば,その利益の説明をする形は次のようになるだろう。

損 益 計 算 書 利 益

資 産 減 少 負 債 増 加

資 産 増 加 負 債 減 少

これを収益と費用とで書き直すと次のようになる。

損 益 計 算 書 利 益 │ 収 益 費 用 │

さらに貸借対照表における損益計算との関係を簡単な設例でもって示せ ば,次のようになるだろう。誤解を恐れずにいえば,最初に純資産の変動に 基づいた損益の算定があり,次にその損益の原因を説明するものとして収益 と費用とがあるといえるのである。そこで,資産負債アプローチにおいては,

次の図のように貸借対照表で算定された損益が損益計算書に振り替えられる

関係になっているといえるであろう 8 。 )

(8)

【設例】

1  )現金 1 0 0 円で営業を始めた。

2  )現金 1 0 0 円で商品を購入した。

3  )上記商品のうち 7 0 円分を 8 0 円で現金販売した。

現 金 商

︑ ︑ ︐

3 残

A U   A U  

Ei

︑ ︑ ︐

︐ ノ

/

7 0  

3 0   1 )   1 0 0  

3)  8 0  

2)  1 0 0   残 8 0 貸 借 対 照 表

商品 3 0  

資本 1 0 0

利益 1 0   」一一

損 益 計 算 書 利益 1 0  

2  )商品 1 0 0 現金 8 0  

2  )現金 1 0 0

3  )商品 7 0   I  3) 現金 8 0  

ここで,損益計算書は,貸借対照表で求められた利益 1 0 が,取引 3 )にお ける商品 7 0 の減少と現金 8 0 の増加によって生じたことを,それらが生じた原 因を明らかにして説明することになる。取ヲ I 2  )については,この例では純 資産の変動を引き起こしていないので記載されることはないであろうが,収 益は資産増加,費用は資産減少を内容としているので,このように記録する

ことは可能である。

資産負債アプローチの損益計算の特徴は,貸借対照表で損益が算定され,

損益計算書はそれを説明するものになっている点にある。その結果,資産や 負債のどの変動を損益とするかということが問題になり,しかも,収益費用 は損益を説明するものではあるが,損益を算定するものではないために,ど の範囲までの損益を説明するかという問題が生じる可能性をもっているとも

8 ) 藤井(1 9 9 7 ) p . 1 3 9 に示されている A モデルにおける貸借対照表と損益計算書のシェー

マを併せて参照されたい。ただ,実際には貸借複記が行われるので,収益費用勘定への

記録も資産負債の変動の記録と同時になされるであろう。

(9)

いえるのである 9) 。資産負債アプローチは,損益計算ということだけで見れ ば,貸借対照表だけで足りると考えられるのであるが,損益計算書をそこに 加えることによって,財務諸表の連携という前提の中で「利益を計算するも の」と「利益を説明するもの」という関係を作っていると考えられるのであ る 。

3  収益費用アプローチの計算構造

つぎに収益費用アプローチでの計算構造について見ていくことにしたい。

『討議資料』によれば,収益費用アプローチは,収益と費用との差額による 損益計算を考えるので,収益と費用とを鍵概念としていた。

しかし,

~討議資料』は,収益費用アプローチの収益と費用との定義につ

いて多様な見方があるとし,その結果,資産負債アプローチに非常に近いも のからそうでないものまで幅広く存在していることを認めているのである (FASB ( 1 9 7 6 )   p a r s .   2 1 4 ‑ 2 2 0 )   1 0 ) 。すなわち,収益と費用の内容について,

収益はアウトプットの財務的表現,費用はインプットの財務的表現というよ うに,アウトプットとインプットとを中心に考えるものの他に,収益を成果,

費用を努力とする考えがあることも示しているのである。このように収益費 用アプローチを多様に捉えているということは,逆にそれをひとつのものと しては捉えていないということであろう。そこで,本節では収益費用アプロー チを以下に見るように 2 つに分けて検討していくことにする 1 1 ) 。

9  )例えばその具体的な例として, FASBの財務会計基準ステートメント 1 3 0 号で示された ように,包括利益の表示において純資産の変動のすべてが損益計算苫に表示されていな かったことに対する基準の公表はこのことを表しているように思われる。

1 0 )   r 討議資料』では, APBが公表した『第 4 号ステートメント』は資産負債アプローチ に近く,ペイトン=リトルトン『会社会計基準序説』はそうではなく, r 会計用語公報』

は両者の中間にあるとしている (FASB ( 1 9 7 6 )   pa r .   2 1 5 ,  2 1 8 ,  2 1 9 ) 。

1 1 ) 前注でも述べたように『討議資料』では,収益費用アプローチを広く捉えているので,

実際には本節で述べるものの中間的なものもあるだろう。

(10)

( 1 )   収益をアウトプッ卜,費用をインプットとして捉える場合

収益と費用とをアウトプットとインプットとして捉える場合,それらの内 容は,現金であれ商品であれ企業が生み出したものとそのために費消したも のと広く理解することができるであろう。そして,収益と費用との差額とし ての利益はアウトプットとインプットとの差額となるので,通常の損益計算 書の形で示せば次のようになる。

損 益 計 算 書

イ ン プ ッ ト │アウトプット 利 益 │

このように,損益計算書において,企業が保有している財をどれだけ費消 し,それによって新たにどれだけの財を生み出したかということが表示され ることになる。そして両者を対照させて,インプットからアウトプットへの 流れが表されることになるので,そのことを通して企業の行為を表す会計を つくろうとしているといえるのである。このことは同時に,損益計算書では,

どれだけのインプットを用いてどれだけのアウトプットを得ることができた のかという企業や経営者の効率を表示するものになっていると見ることがで きる。

しかし,インプットされる財はインプット前には企業により保有されてお

くことが必要であるし,アウトプットによって獲得された財も,獲得された

後はやはり企業によって保有されることになる。その意味では,インプット

前の財やアウトプット後の財を表すことも必要となるが,それは資産として

貸借対照表において表されるといえるであろう。貸借対照表には企業が保有

している資産が収容されており,それがインプットされ,新たなアウトプッ

トになるという財の流れを損益計算書が表すということになってくると考え

られるのである。この点を,先ほどと同じ設例を用いて示してみると,次の

ようになるだろう。

(11)

貸 借 対 照 表 損 益 計 算 書 1  )現金 1 0 0 I  1 ) 資本 1 0 0

2)  ,商品 1 0 0

2 ) 現金 1 0 0 →  2  )現金 1 0 012)' 商品 1 0 0 3)  ,現金 8 0  I  3) 商品 7 0   →  3  )商品 7 0  I  3 ) ' 現金 8 0   l 

ここでは,上記の取引例のうち,取引 2 )の商品購買過程において現金が インプットされて,商品がアウトプットされたと考え,同様に 3 )の販売過 程において商品 7 0 がインプットされて,現金 8 0 がアウトプットされたと考え ている。貸借対照表と損益計算書の 2 つによって,インプット前に保有され ている財→インプット→アウトプット→アウトプット後に保有された財とい う流れが示されることになり,財の流れを通して企業の行為を表示するもの になっていると考えられるのである。

このように,現金であれ商品であれ,いかなる財であろうとインプットさ れたものが費用として,またアウトプットされたものが収益として損益計算 書に計上されるというのが,ここで問題にしている収益費用アプローチの損 益計算であろう。インプットとアウトプットの内容を費消あるいは生成され た財貨一般として広く考えるならば,費消された財と生成された財との差額 で損益は計算されることになるので,利益の内容は企業が保有する財全体の 純増減ということになるであろう。収益と費用の内容をそれぞれアウトプッ トとインプットとする収益費用アプローチの場合,損益が純資産の純増減と して定義される可能性があるといえるのである 1 2 ) 1 3 ) 。

1 2 ) 例えば,上野(1 9 9 3 ) では,純資産の純増減という点で資産負債アプローチの特徴と していると思われるが,ここで示したようにこの特徴は収益費用アプローチでも生じ得 ると考えられる。

1 3 ) 本稿の設例では,生産過程を入れていないが,もしそれを考慮するならば,生産過程

にインプットされたものとそこからアウトプットされたものについても損益計算 3 に表

示されることになるであろう。

(12)

ところで,通常はここでの貸借対照表の借方には現金8 0 と商品3 0 が記録さ れ,損益計算書でも取引 2 ) は計上されることはないので,最終的にできあ がった貸借対照表と損益計算書は,前節で見た資産負債アプローチのそれと 類似して見えることになる。しかし,収益費用アプローチの場合,経営者の 効率を表示するために,インプットとアウトプットを内容とする費用と収益 とを期間的に対応させることが必要である。『討議資料』では,このプロセ スをアウトプットを先に確定した上で,それに対応するインプットを計算す る会計手続がとられるとしているので (FASB ( 1 9 7 6 )   pa r .   4 0 ) ,まだアウ トプットに結実していない財の費消はインプットとして認識されず,損益計 算書には含まれない。収益費用アプローチでは,期間的には次期以降に対応 させるべきアウトプットやインプットを貸借対照表に繰延項目として含める 可能性があるのであるという点で,資産負債アプローチとは異なっていると 考えられる 1 4 ) 。

( 2 )   収益を成果,費用を努力として捉える場合

つぎに,収益を成果,費用を努力とする考えに基づく収益費用アプローチ について検討する必要があるが,

~討議資料』では主に,ペイトン=リトル

トン共著の『会社会計基準序説 j (以下,

~序説』と略す)に基づいて説明し

ていると考えられるので(例えば FASB ( 1 9 7 6 ) p a r .   2 1 8 ) ,それを参考に検 討することにしたい。

『序説』も, r 事業活動の不断の流れをできるだけ真実」に測定すること が会計の課題である ( P a t o n , e t   a l .   ( 1 9 4 0 )   p . 1 1,訳 p . l 7)としている。

そして,企業の行為を努力と成果で表示するために価格総計が重視されてい

1 4 ) さらにインプットされた財とアウトプットされた財とを対象とするのであれば,イン

プットやアウトプットされた財の評価が取得原価でなければならない理由は,ここだけ

の考察からはでてこないように思われる。

(13)

る。それは経営者が交換取引時点で一番合理的であると判断したものとして 価格総計を仮定している ( P a t o n , e t  a l .   ( 1 9 4 0 )   p . 2 2 ,訳 p . 3 6 ) からでもあ る。このように経営者によって合理的と判断された価格に基づいて成果と努 力を収益費用として表し,それらを対応させることによって,経営者の効率 性を表示しようとしているのである ( P a t o n , e t  a l .   ( 1 9 4 0 )   p . 1 0 ,訳 p . 1 6 ) 。 そして,成果を表す収益については,販売によって相手から受け取った現 金などによって測定される生産物であるとされている ( P a t o n , e t   a l .   ( 1 9 4 0 )   p . 4 6 ,訳 p . 7 9 ) 。単にアウトプットとして生産物を獲得しただけでは収益の 認識はされないのであり,さらにそれを販売することが必要になっているの である。『序説』に従うならば,成果というときには生産物を販売すること によって現金ないしは現金等価物をえることが必要なのである。ここでの収 益には,生産物というアウトプットと,その生産物の交換による収入という

2 つの要素が含まれていると考えて良いであろう。

収益に対して,努力を表す費用は,原価の費消分であるが,収益としてア ウトプットが収入と結びつくまでは費用として認識されない ( P a t o n , e t   a l .  

( 1 9 4 0 )   p . 7 0 ,訳 p . 1 1 9 ) 。この原価は理想的な状態では,特定の財や用役を 取得するために即時に支払われるべき現金によって測定される ( P a t o n , e t   a l .   ( 1 9 4 0 )   p . 2 6 ,訳 p . 4 5 ) としているので,費用は当期の収益に対応され るべき現金支払部分として理解することができるであろう。

このように努力と成果によって企業の行為を表そうとする収益費用アプ

ローチでは,収益は販売によって現金を獲得するまでは認識されないのであ

り,それと対応される費用はやはりそれを取得するときの現金の支出と結

びついているのであるから,努力と成果に基づいて算定される損益は,収入

と支出の差額として求められる現金の純増減を内容としてもっていると考

えられる。先ほどの設例を用いて示すならば,次のように図示できるであろ

つ 。

(14)

貸 借 対 照 表 損 益 計 算 書 1  )現金 1 0 0 1  )資本 1 0 0

2  )商品 1 0 0 2  )現金 1 0 0

│  3 )   ,現金 8 0   3  )商品 7 0   →  )商品 7 0   3 ) ' 商品 8 0   │ 

先ほどの設例では,取引 2 )の購買過程でもインプットとアウトプットと を捉えることができるために,それらを収益と費用として計上することが可 能であったが,ここでは成果は販売によって収入と結びつくまでは認識され ないので,この段階で努力と成果との対応は考えられないことになる 1 5 ) 。ま た,取引 3 )において,損益計算書貸方を商品としているのは,収益を,相 手から受け取った現金または現金等価物によって測定された生産物としてい るからである。したがって,損益計算書の貸方の商品は販売によって受け取 った収入額,借方の商品は仕入れに要した支出額で測定されているので,そ の差額としての損益は収支差額として見ることができるであろう。そして,

期末に売れ残った商品は次期以降の販売による収入と対応されるべき支出の 繰延を表しているといえるのである。

( 3 )   2つの収益費用アプローチの比較

本節で述べたように収益費用アプローチは収益と費用の内容をどのように 考えるかによって大きく 2 つに分けることができるであろう。いずれであっ ても『討議資料』が述べるように,損益計算書における収益と費用との対応 による損益計算を考えている点では 2 つの収益費用アプローチは共通してい

1 5 ) ここでも生産過程の扱いが問題になるが,基本的に製品が販売されて始めて収益とし

て認識されるとするこの立場では,生産過程は貸借対照表側での資産の形態の変化とし

て扱われるということになるであろう。その意味では, 2 つの収益費用アプローチは生

産過程が損益計算書で表示されるか貸借対照表で表示されるかの相違として考えること

ができるように思われる。

(15)

るということができるであろう。そして,損益計算書と貸借対照表との関連 において企業の行為を表示するようになっているといえるが,逆に貸借対照 表の項目は費用や収益を期間的に対応させるために次期以降に繰り延べられ るべきものを計上したものでもあるのである。

しかし,収益と費用との内容の相違によって,算定される損益の内容に相 違が生じてくるのである。収益と費用とをアウトプットとインプットとして 捉える場合には,アウトプットされた財とインプットされた財との差額とし て損益が算定されるのであるから,損益は企業が保有している財の純増減,

すなわち純資産の純増減として捉えられることになるであろう。これに対し て,努力と成果として捉える場合には,それが交換過程における現金収支と 結びついて理解されるために,損益の内容は現金の純増減として捉えられる

ことになるのである 1 6 ) 。

4  アメリ力における会計原則などの分類

これまで,資産負債アプローチと収益費用アプローチの計算構造について 検討してきた。そこで,これまでの議論をふまえて,会計原則などを分類す る場合,つぎのような分類の視点がでてくるだろう。

まず,損益計算という点で考えれば,資産負債アプローチは貸借対照表で の損益計算を中心に考えているのに対して,収益費用アプローチは損益計算 書での損益計算を中心に考えているという点で,両者は相違しているのであ

り,この点を分類の視点にすることができる。

つぎに,収益費用アプローチは収益と費用の内容の捉え方によって,算定

1 6 ) この収益費用の内容の相違は,既に本文で述べているように,例えば費用の繰延とし

ての資産の内容の捉え方にも相違をもたらすであろう。現金増減で損益を捉える場合に

は,資産として計上される項目の多くは次期以降の収入と対応するべき支出ということ

になる。これに対して,財の増減で損益を捉える場合には,資産は次期以降のアウトプ

ットとの対応を待つインプットということになる。

(16)

される損益の内容が財の純増減として把握されるか現金の純増減として把握 されるかという相違が生まれてきている。その意味では,収益費用アプロー チは,これをさらに 2 つに分けることができるのである。

そこで,これらの点を手掛かりにして,これまでアメリカで公表されてき た会計原則や会計基準などの分類を試みることにしたい。以下では,まず ( 1 ) これらにおける損益計算が貸借対照表を中心とするか,損益計算書を中心と するかという視点から分類し,さらに ( 2 ) 損益計算書を中心とするものについ て,それらの損益の内容という面から分類をすることにしたい。ここで分類 の対象とするのは,公表された年代順に次のものである 1 7 ) 。

・サンダース=ハットフィールド=ムーア共著『会計原則 j (以下, SHM 

原則と略)

・ペイトン=リトルトン共著『会社会計基準序説』

・アメリカ会計学会 (AAA) W 会社財務諸表の根底にある会計原則 j (以下,

1 9 4 1 年原則と略)

・アメリカ会計学会『会社財務諸表の根底にある会計諸概念と諸基準 j ( 以 下 , 1 9 4 8 年基準と略)

・アメリカ会計学会『会社財務諸表に関する会計と報告諸基準 j (以下,

1 9 5 7 年基準と略)

・スプラウズ=ムーニッツ共著『会計原則試案 j (以下,試案と略)

・アメリカ会計学会 (AICPA) 会計原則審議会 (APB) 第 4号ステートメ ント『企業財務諸表の根底にある基礎概念と会計原則 j (以下, APB第

4 号ステートメントと略)

・財務会計基準審議会 (FASB) W 財務会計諸概念ステートメント j (以下,

概念ステートメントと略)

1 7 ) 本稿で取り上げるもののうち, SHM原則, AAA 1 9 4 1 年原則, 1 9 4 8 年基準を除いた 5

つの会計目的や対象については拙稿(1 9 9 8 ) で検討しているので,併せて参照していた

だきたい。

(17)

( 1 )   貸借対照表中心か損益計算書中心か

第 lの分類視点は損益計算の中心を貸借対照表においているのか,損益計 算書においているのかということである。

このような視点から見ると,損益計算を貸借対照表を中心にしているもの としては,試案と概念ステートメントをあげることができるであろう。

試案は損益を計算する財務諸表を特に明確にしているわけではないが,1利 益は純資産の増加関数である。したがって利益の構成要素(収益,費用,利 得ならびに損失)の測定は資産と負債の側における測定に依存しなければな らない J ( S p r o u s e , e t  a l .   ( 1 9 6 2 )   p .1l,訳 p . 1 2 4 ) と述べている。基本的に 利益の測定が会計のプロセスであると考えているが,この会計プロセスにつ いては「ある一定期間中における正味稼得利益額の測定以上のものを提供し なければならない」として, I 利益の構成要素についての資料が,過去を評 価し将来の予測をするための基礎資料として必要である J ( S p r o u s e ,  e t  a l .  

( 1 9 6 2 )   p . 4 5 ,訳 p . 1 6 7 ) と述べている。利益を測定することと,その構成 要素を測定することとを分けているが,利益を純資産の増加関数としている ことから,純資産に基づいてそれが決まるものとし,収益と費用はその利益 の説明として位置づけているといえるであろう 1 8 ) 。

概念ステートメントについて見れば,利益は出資者による投資や分配以外 によって生じた持分の変動となっているのに対して,収益と費用はその利益 の内訳要素として位置づけられている (No.6 ,p a r .  6 5 ,  7 6 ,  7 7 ) が,損益 計算書 1 9 ) は当該企業の資産や負債に変動をもたらす原因を示す情報とされ ている ( N o .5 ,  pa r .   3 0 ) 。このような点から考えると,貸借対照表におけ る損益計算を考えているということはできるであろう。

1 8 )  

~討議資料』でも,資産負債アプローチにおいては利益は従属変数とされている

(FASB  ( 1 9 7 6 )   p a r . 3 7 ) 。

1 9 ) 概念ステートメントでは「稼得利益包括利益結合計算書」と呼ばれている。

(18)

なお,次の分類視点である利益の内容との関係で付け加えておけば,これ らはいずれも期首と期末の純資産の比較による純資産の純増減として損益の 内容を捉えているといえるであろう。

他方,これら 2 つ以外のものは,損益計算書を中心にした損益計算を想定 しているといえるであろう。これらはいずれにおいても,利益を説明すると きに収益と費用との対応によるものであるとしているからである。序説につ いては既に前節の( 2 ) で説明しているので,これ以外のものについて簡単に見 ておくことにしたい。

SHM 原則では, r 損益計算書は, (企業利益の決定という‑岡田)課題を 達成しようとするひとつの試みである J ( S a n d e r s ,  e t  a l .   ( 1 9 3 8 )   p . 2 5 ,訳 p . 2 9 ) と述べており,損益計算書における損益計算を考えている。貸借対照表 における資産の多くの項目については,収益に対応する費用の繰延と考えて いる ( S a n d e r s , e t  a l .   ( 1 9 3 8 )   p . 5 7 ,訳 p . 5 9 ) 2 0 ) 。

1 9 4 1 年原則では「利益は実現された収益を原価原則に基づいて,原価の消 費分あるいは費消分に対応せしめることによって測定される J ( p .1l,訳 p . 1 1 0 ) として,収益費用と関連づけて損益を規定しているのに対して,貸借 対照表については基本的に次期以降の営業活動に照応する原価部分が計上さ れたものとしている ( p . 1 0 ,訳 p p . 10 7 ‑ 1  0 8 )  2 1 ) 2 2 ) 。

1 9 4 8 年基準では「企業の利益は,収益が費用を越える額によって測定され た正味資産(資産より負債を差しヲ│いたもの)の増加分である J ( p . 1 5 ,訳 p . 1 2 3 ) として,利益は損益計算書で表示されるべきとしている ( p . 1 8 ,訳 2 0 )   W 討議資料』では, SHM 原則は当時普及していた収益費用アプローチを反映したもの

と考えている (FASB ( 1 9 7 6 )   pa r .   1 3 1 脚注)。

2 1)本稿での 1 9 4 1 年原則, 1 9 4 8 年基準および 1 9 5 7 年基準についての引用などについては,

中島(1 9 6 4 ) 所収の原文および邦訳のページを本文中に併記している。

2 2 ) なお, AAA が公表したこれら 3 つの会計原則や基準の計算構造および次節で述べる損

益の内容については拙稿(1 9 9 6 ) で検討している。

(19)

p . 1 2 8 ) 。これに対して貸借対照表は,原価のうち次期以降に照応すべき部分 が資産として計上されるとしている ( p . 1 5 ,訳 p . 1 2 3 ) 。

1 9 5 7 年基準は資産評価を資産のもっている用役潜在性と関連づけ,その用 役潜在性の流れを表そうとしている ( p . 5 4 ,訳 p . 1 9 5 ) 。損益については「企 業実現純利益は,…・・・ ( a ) 収益を対応する費消済原価と比較して求めた過 不足差額,と, ( b ) 資産の売却,交換その他の転換から企業にもたらされ たその他の利得又は損失,とから生じる,その純資産変動額である J ( p . 5 6 ,  訳 p . 1 9 8 ) としている。費消済原価は資産のもっている用役潜在分が費消さ れた場合に計上されたものである ( p . 5 7 ,訳 p . 1 9 9 ) が,逆に次期以降に貢 献するものは資産として貸借対照表に計上されることになる。

APB第 4 号ステートメントは,会計の一般目的を経済的資源や義務の変 動についての

d

情報提供においている点で,財を対象にした資産負債アプロー チ的な特徴を見ることができる。しかし,会計の主題を企業の経済活動を表 すために経済的資源の創造,蓄積,使用に関する測定報告としている ( A I C ‑ PA  ( 1 9 7 0 )   pa r .   1 1 8 ) 。純損益については, I 一会計期間における収益の費用 超過額(不足額)である」と定義し,収益,費用,純利益(純損失)につい ては「収益ー費用=純利益(純損失) J というように損益を計算するものと して関係づけている (AICPA( 1 9 7 0 )   pa r .   1 3 4 ) 。他方,貸借対照表は財政 状態を表示するものであり,所有主持分の計算までは説明しているが,損益 の算定という役割までは言及していない (AICPA ( 1 9 7 0 )   pa r .   1 3 2 ) 。さら に,資産や負債には繰延項目の計上を認めてもいる。このような点から考え て,損益計算という点からは損益計算書を重視したものということができる であろう 2 3 ) 。

2 3 )   W 討議資料』もまた APB 第 4 号ステートメントについては,資産負債アプローチの特 徴を持つところと収益費用アプローチの特徴を持つところがあるとしている (FASB

( 1 9 7 6 )   par.47 脚注)が,収益費用の定義に関するところでは収益費用アプローチに分

類している (FASB ( 1 9 7 6 )   pa r . 2 1 7 ) 。

(20)

( 2 )   純資産の純増減か現金の純増減か

次に損益計算書を中心とする 6 つのものについて,それらを損益の内容と いう点からさらに分類していきたい。その検討にあたっては,費用と収益の 内容をインプットとアウトプットとして捉えるか,努力と成果として捉える かということが問題になる。しかし,これらの原則などはインプットやアウ トプットまたは努力や成果ということを明確にしているものは少ないので,

ごの点を考察するためには,具体的に現金の受け払いと結び、つけて収益や費 用を捉えることができるかどうかということも手掛かりになるであろう。

まず,収益や費用を現金の受け払いと結びつけているもの,すなわち現金 の純増減を利益の内容とするものとしてあげられるのは, SHM 会計原則,

序説, 1 9 4 1 年原則になるであろう。序説については既に努力と成果との関係 で述べているので,それ以外のものについて見ておくことにしたい。

SHM 原則は利益を富の増加分 C S a n d e r s , e t  a l .   ( 1 9 3 8 )   p .1l,訳 p . 1 7 )

としているのであるが,利益決定にあたっての収益費用の決定やそれに関わ

る資産原価の決定について個別的に議論をしている。そこで利益の主たる源

泉である商品売買益に限定してみると,売上に関しては「当該会計期間にお

いて販売された財又は提供されたサービ、スに対する請求書の金額である」と

し,その内容を「若干の例を除いて,現金,法的請求権ないしその他の価値

ある対価と交換に,他人に所有権を譲渡するような売上高のみが,正しいも

のとしてこの中に含められる J ( S a n d e r s , e t  a l .   ( 1 9 3 8 )   p p . 2 8 ‑ 2 9 ,訳 p p . 3 2 ‑

3 3 ) としている。つまり売上が現金の受け取りと結びつけられているのであ

る。他方,売上原価は「販売された特定の商品やサービスに関して個別的に

発生した費用でなければならない J C S a n d e r s ,  e t  a l .   ( 1 9 3 8 )   p . 3 0 ,訳 p . 3 5 )

としているだけで,取得原価または原価を現金の支払いと結びつけて理解し

ているかどうか必ずしも明確ではない。ただ,収益が現金の受け取りと結び

つけられているので,収益に対応されるべき原価は,計算上の同質性を考え

ると現金支払額の費消部分と考えるべきであろう。

(21)

1 9 4 1 年原則の場合にも,収益認識のタイミング

P

を「財又は用役の顧客への引 渡」と「それと同時に起きる現金ないし現金等価物の獲得」に裏付けられたと きに認識される ( p . 1 0 , 訳 p . 1 0 9 ) としているので,現金の受入と関連づけら れている。そして,収益に対応される費用は原価の費消分とされており ( p . 1 1,訳 p . 1 1 0 ) ,その原価は基本的に現金の支払によって測定される ( p . 9 , 訳 p . 1 0 6 ) としているので,原価は現金の支払いを内容としていると考えら れる。したがって,現金支払い部分の費消分ということができるであろう。

これらに対して,残りのものは純資産の純増減を内容としていると考えら れる。

1 9 4 8 年基準は,収益の内容を「販売において受領した資産 J ( p . 1 6 ,訳 p . 1 2 3 ) としているが,これは収益を販売過程におけるアウトプット的に捉え ているということができるであろう。この点は収益の認識に関して, r 資産

が移転され,役務が行使され,あるいは企業の財がもう一方の当事者によっ て利用され,それと同時に資産の取得あるいは債務の減少を伴う場合に認識 される J ( p . 1 6 ,訳 p . 1 2 4 ) というように,資産の移転などと引き替えに生じ た資産の取得としていることからもいえるであろう。そして,この引用にお ける,顧客に引き渡された商品のように資産の移転部分は費用でもある ( p . 1 6 ,訳 p . 1 2 4 ) ので,その点では費用はインプット的に捉えられていると考 えられる。他方,資産に関して1 9 4 8 年基準では,その原価を現金の支払いと 結びつける点では 1 9 4 1 年原則などに比べると弱くなっていると考えられ る 2 4 ) 。したがって,インプットとアウトプットで比較される損益の内容は現 金純増減というよりは広く資産の純増減と見るべきであろう。

1 9 5 7 年基準では,収益と費用の内容については,それぞれ「顧客に提供し た製品または用役の総体を金額で表示したもの J ( p . 5 6 ,訳 p . 1 9 8 ) , r 原価の

うち次期以降の業務活動に明確に識別できるような貢献力を持たないもの」

2 4 ) 拙稿(1 9 9 6 ) p p .   1 3 ト 1 3 2 。

(22)

( p . 5 7 . 訳 p . l 9 9 ) としている。費用に関しては,資産の原価の費消分とな っているが,資産評価が用役潜在性を表すものとされているのであるから,

内容としては用役潜在性の費消として理解することができる。収益について は. 1 9 4 8 年基準と異なり. r 顧客に提供した製品」を内容としているので,

販売過程においてインプット的になっていると理解される。しかし,その収 益の額を表示するのは,対価として受け取った資産であり,それは用役潜在 性をもったものであるから,用役潜在性の増加を伴っていると理解されるの で. 1 9 5 7 年基準の損益は用役潜在性の純増減ということができるであろう。

APB 第 4 号ステートメントの場合には,経済的資源を基礎にして資産を 定義し,それに基づいて,収益については「資産の増加 J . 費用については

「資産の減少 J (AICPA  ( 1 9 7 0 )   pa r .   1 3 4 ) と定義している。このことは,

収益をアウトプット,費用をインプットとして理解できるので,これらの比 較による損益は純資産の純増減ということができると思われる。

結 び

本稿では,これまでアメリカで公表されてきた会計原則や基準等について,

それが資産負債アプローチに属するか収益費用アプローチに属するかという ことを検討してきた。その際のポイントとしては,損益計算において貸借対 照表を重視しているか損益計算書を重視しているかということと,そこにお ける損益の内容がある。それをまとめると次のようになるであろう。

貸借対照表中心 損益計算書中

d

心 SHM 原則

現 金 純 増 減 序 説

1 9 4 1 年原則 試 案 1 9 4 8 年基準 純資産純増減 FASB 概念ステートメント 1 9 5 7 年基準

APB 第 4 号ステートメント

(23)

このような分類をしてみると,おおむねアメリカの会計基準等の変遷が,

損益計算書における現金純増減を内容とした損益計算から,損益計算書にお ける純資産純増減を内容とする損益計算を経て,貸借対照表における純資産 の純増減を内容とする損益計算に移行していると思われる。このような変遷 が生じていると断定するにはまだ検討した材料が少ないが,もしそのように いえるとすればそれが生じた背景等についてさらに検討してみることが必要 であろう。それは,わが国の企業会計原則の改正‑改革の方向性を探る上で も大切なことであると考えられるのである。

参 考 文 献

• American A c c o u n t i n g  A s s o c i a t i o n  ( 1 9 4 1 )   , A c c o u n t i n g  P r i n c i p l e s  U n d e r l y i n g  C o r p o r a t e   F i n a n c i a l  S t a t e m e n t s " .  AAA.中島省吾訳編『改訂 A.A.A.会計原則』所収,中央経済社,

1 9 6 4 年 。

• American A c c o u n t i n g  A s s o c i a t i o n   ( 1 9 4 8 ) , A c c o u n t i n g  C o n c e p t s  and S t a n d a r d s  U n d e r ‑ l y i n g  C o r p o r a t e  F i n a n c i a l  S t a t e m e n t s " .  AAA.中島省吾訳編『改訂 A.A.A.会計原則』

所収,中央経済社, 1 9 6 4 年 。

• American A c c o u n t i n g  A s s o c i a t i o n   ( 1 9 5 7 )  , A c c o u n t i n g  and R e p o r t i n g  S t a n d a r d s  f o r   C o r p o r a t e  F i n a n c i a l  S t a t e m e n t s " .  AAA.中島省吾訳編『改訂 A.A.A.会計原則』所収,

中央経済社, 1 9 6 4 年

0

・ AmericanI n s t i t u t e  o f  C e r t i f i e d  P u b l i c  A c c o u n t a n t s   ( 1 9 7 0 ) .   S t a t e m e n t  o f  t h e  A c c o u n t i n g   P r i n c 伊 l e sBoard N o .   4 :   B a s i c  C o n c e p t s  and A c c o u n t i n g  P r i n c i P l e s   U n d e r l y i n g  F i n a n c i a l   S t a t e m e n t s  o f  B u s i n e s s  Ente ゆ r i s e s .AICPA. 川口順一訳『アメリカ公認会計士協会企業会 計原則』同文舘, 1 9 7 3 年 。

• F i n a n c i a l  A c c o u n t i n g  S t a n d a r d s  Board  ( 1 9 7 6 )  .  FASB  D i s c u s s i o n  Memorandum ,  An  A n a l ‑ y s i s  o f  I s s u e s  R e l a t e d  t o   C o n c e p t u a l  Framework f o r  F i n a n c i a l  A c c o u n t i n g  and R e p o r t i n g   : E l e m e n t s  o f  F i n a n c i a l  S 似た m e n t sand T h e i r  M e a s u r e m e n t .  FASB. 津守常弘監訳 WFASB 財務会計の概念フレームワーク』中央経済社, 1 9 9 7 年

0

・ F i n a n c i a lA c c o u n t i n g  S t a n d a r d s  Board ( 1 9 8 4 ) ,  S t a t e m e n t  o f  F i n a n c i a l  A c c o u n t i n g  C o n c e p t s  

N o .   5 :   R e c o g n i t i o n  and Measurement i n   F i n a n c i a l  S t a t e m e n t s  o f  B u s i n e s s  E n t e r p r i s e s .  

FASB.平松一夫・広瀬義州共訳 WFASB財務会計の諸概念(改訳版).n中央経済社,

(24)

1 9 9 0 年

0

・ F i n a n c i a 1A c c o u n t i n g  S t a n d a r d s  Board ( 1 9 8 5 ) .   S t a t e m e n t  0 1  F i n a n c i a l  A c c o u n t i n g  C o n c e p t s   N o .   6 :   E l e m e n t s  0 1  F i n a n c i a l  S t a t e m e n t s ;  A R e p l a c e m e n t  0 1  F  ASB C o n c e p t s  S t a t e m e n t  N o .   3  ( i n c o ゆ o r a t i n ga n  a m e n d m e n t  0 1  FASB C o n c e p t s  S t a t e m e n t  N o .   2 ) .  FASB. 平松一夫・

広瀬義州共訳 rFASB 財務会計の諸概念(改訳版)~中央経済社,

1 9 9 0 年

0

・ S a n d e r s , T.H. ,  H . R .  H a t f i e l d  and U.Moore ( 1 9 3 8 ) .   A  S t a t e m e n t  0 1  A c c o u n t i n g  P r i n c i p l e s ,  American I n s t i t u t e  o f  A c c o u n t a n t s  ( R e p r i n t e d  by American A c c o u n t i n g  A s s o c i a t i o n )   ,  山本繁・勝山進・小関勇共訳 rSHM 会計原則』同文舘,昭和5 4 年

0

・ S p r o u s e , R . T .  and M.Moonitz ( 1 9 6 2 ) .   A T e n t a t i v e  S e t   ザ B r o a dA c c o u n t i n g  P r i n c i p l e s  l o r   B u s i n e s s  E n t e ゆ r i s e s ( A c c o u n t i n g  R e s e a r c h  S t u d y  N o .  3    , ) AICPA. 佐藤孝一・新井清光 共訳『会計公準と会計原則』所収,中央経済社, 1 9 6 2 年 。

• P a t o n ,  W.A. and A . C .  L i t t l e t o n   ( 1 9 4 0 ) .   A

η

I n t r o d u c t i o n ω C o ゆ o r a t eA c c o u n t i n g  S t a n ‑ d a r d s ,  AAA.中島省吾訳『会社会計基準序説』森山書庖, 1 9 5 8 年

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・上野清貴稿 IFASBまでの資産・負債の概念」土方久編著『貸借対照表能力論』第 I 部 第 2 章所収,税務経理協会, 1 9 9 3 年 。

・藤井秀樹『現代企業会計論』森山書庖, 1 9 9 7 年

0

・藤田昌也『会計利潤論』森山書届, 1 9 8 7 年

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・藤田昌也『会計利潤の認識』同文舘, 1 9 9 7 年

0

・拙稿(1 9 9 6 ) r  A.A.A. 会計原則の計算構造 J r 経営と経済』第7 6 巻第3 号 。

・拙稿(1 9 9 8 ) r 会計目的・対象と損益についての研究ノート J r 経営と経済』第7 8 巻第 2 号 。

(付記:本稿は文部省科学研究費補助金(奨励研究 ( A ) ) による研究成果の一部である。)

参照

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