経尿道的超音波断層法 と膀胱鏡 に よる子宮頚癌膀胱浸潤 の診断
旭川医科大学泌尿器科学教室(主任: 八竹 直教授)
藤 井 敬 三
西 原 正 幸
橋 本
博
徳 中 荘 平
八 竹
直
金 子 茂
男-旭川医科大学産婦人科学教室(主任: 清水哲也教授)
萬
豊
清
水
哲
也
DIAGNOSIS OF THE INVASION OF UTERINE CERVICAL CANCER TO THE BLADDER
BY TRANSURETHRAL
ULTRASONOGRAPHY AND CYSTOSCOPY
Hiromitsu Fujii, Masayuki Nishihara, Hiroshi Hashimoto,
Sohei Tokunaka, Sunao Yachiku and Shigeo Kaneko
Department of Urology, Asahikawa Medical College
(Director: Prof. S. Yachiku)
Yutaka Yorozu and Tetsuya Shimizu
Department of Obstetrics and Gynecology, Asahikawa Medical College
(Director: Prof. T. Shimizu)
We studied the usefulness of transurethral
ultrasonography
in diagnosing the invasion of uterine
cervical cancer to the bladder. Ten female patients with bladder tumors, as a control group, were
examined by transurethral
ultrasonography. The cervix of the uterus of them was clearly demonstrated
on the tomogram. Fourty-two patients with uterine cervical cancer (FIGO stages 0 and I: 11 cases, stage
II: 6 cases, stages III and IV: 22 cases, recurrence group: 3 cases) were examined by transurethral
ultrasonography. The findings were classified into 3echo patterns according to the changes of the
tomo-gram of the interface between the bladder wall and the cervix of the uterus. The criteria are as follows;
BIo: the image of the bladder muscle layer adjoining the cervix of the uterus keeps thin smooth continuity.
BI1: the image of the bladder muscle layer adjoining the cervix of the uterus is indented or destroyed, and
an irregular hyperechoic area appears by the side of the uterus. BI2: the image of the bladder muscle layer
is covered by the echoes growing from the cervix of the uterus. We concluded that BIo seen in 31 cases
corresponded to negative signs of the tumor invasion to the bladder wall, BI1 in 9 cases to signs of the
tumor invasion to the bladder muscle layer, and BI2 in 2 cases to signs of the tumor invasion to mucosa
or submucosal layer of the bladder. The antero-posterior diameter and lateral diameter of the uterine
cervical image were measured and "presumed ellipse area" was calculated in each stage of patients. The
results showed that the more advanced the stage was, the larger became the uterine cervical size. As a
result of cystoscopic examination performed in all cases at the same time, the findings such as flat
mucosal edema and/or an elevated base of the bladder seemed to be not significant for diagnosing bladder
involvement by uterine cervical cancer. Transurethral
ultrasonography
is considered to be a very
accurate and objective method for diagnosing the invasion of uterine cervical cancer to the bladder.
要 旨: 子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 の 診 断 に お け る, 経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 の 有 用 性 に つ い て検 討 した. 女 子 膀 胱 腫 瘍 患 者10例 を コ ン トロ ー ル 群 と した が, 経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 で 全 例 に 子 宮 頚 部 が 描 出 で き た. 42例 の 子 宮 頚 癌 患 者(FIGO分 類0∼1期11例, II期6例, III∼IV期22例, 再 発 群3例) に 対 し経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 を 行 い, 膀 胱 壁 と子 宮 頚 部 の 境 界 部 断 層 像 の 変 化 を3段 階 に 分 類 した. 子 宮 頚 部 に接 す る膀 胱 筋 層 像 が な め らか に 連 続 性 を 保 つ も の をBI0と し, 子 宮 頚 部 に 接 す る膀 胱 筋 層 像 に不 整, 断 裂 と, そ の 近 傍 の 子 宮 側 に 不 整 な 強 エ コ ー を 認 め る も の をBI1と し, 子 宮 頚 部 か ら の び た エ コ ー に よ り, 膀 胱 筋 層 像 の 消 失 を 認 め る も の をBI2と した. BI0は31例 に認 め られ, 膀 胱 浸 潤 陰 性 の 所 見, BI1は9例 に認 め られ, 膀
胱 筋層 内浸 潤 の所見, BI2は2例 に認 め られ, 膀胱 粘膜 ない しは粘 膜下 に及 ぶ浸潤 の所 見 と考 え られた。
さ らに各患 者 の子宮 頚 部像 の前後 径 と左右 径 を stage 別 に計測 し,"仮 想楕 円面 積" を 算 出 した が stage
が 高 くな る程, 子宮 頚部 は拡大 す る傾 向を認 めた. 同時 に行 った膀 胱鏡 検査 の結 果 か ら, 膀胱 底部 の隆
起 や平 等浮 腫 の存在 は, 膀胱 浸潤 診 断上 の有 意所 見 とはな り得 ない と思わ れた. 経尿 道的 超音 波 断層法
は 子宮頚 癌 膀胱 浸潤 の診断 に, よ り正 確 で客 観的 な検 査 法で あ る と思わ れ た。
緒 言 子 宮 頚 癌 患 者 の進 行 期 決 定 は 従 来, 熟 練 し た 婦 人 科 医 に よ る双 合 診 を 主 と し, 周 囲臓 器 へ の 浸 潤, 特 に 膀 胱 へ の 浸 潤 に 関 し て は 触 診, 膀 胱 鏡 検 査, IVPな ど の 所 見 を 総 合 し て 行 わ れ て き た 。 し か し, 膀 胱 鏡 検 査 で は, 膀 胱 粘 膜 ま で 腫 瘍 浸 潤 が 及 ん で, 初 め て 膀 胱 浸 潤 陽 性 と診 断 で き る も の の, 膀 胱 筋 層 に 及 ぶ 程 度 の 比 較 的 早 期 の 浸 潤 例 に 関 し て は, 正 確 な診 断 は 困 難 で あ る 。 し た が っ て 触 診 所 見 で は 膀 胱 浸 潤 が疑 わ れ て も, IVP, 膀 胱 鏡 検 査 で は 異 常 が な く, 手 術 時 に 初 め て 膀 胱 浸 潤 が 明 ら か とな り, 根 治 手 術 を 断 念 せ ざ る を 得 な か っ た り, 膀 胱 全 摘, 尿 路 変 更 術 を 追 加 しな け れ ぽ な ら な い 症 例 も稀 で は な か った 。 これ ま で, 婦 人 科 医 の み で な く, 尿 路 浸 潤 の 有 無 に 関 し て, コ ソ サ ル テ ー シ ョ ン を うけ る 泌 尿 器 科 医 に と っ て も, 子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 を 診 断 す る上 で, よ り優 れ た 診 断 法 の 確 立 が, 望 ま れ て き た 。 今 回, 我 々 は, す で に 膀 胱 癌 の 深 達 度 判 定 に威 力 を 発 揮 し て い る, 経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 を 子 宮 頚 癌 患 者 に 施 行 し, 子 宮 頚 部 と膀 胱 壁 の 境 界 部 断 層 像 の 観 察 と 膀 胱 鏡 所 見 との 比 較 か ら子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 診 断 に お け る, 当 断 層 法 の 有 用 性 に つ い て 検 討 し, 若 干 の 知 見 を 得 た の で 報 告 す る。 対 象 1985年5月 よ り1986年10月 ま で に 尿 路 浸 潤 検 索 を 目 的 に 当 科 を 紹 介 され た34歳 か ら83歳 (平 均59.2歳) ま で の 子 宮 頚 癌 患 者42例 と コ ソ ト ロ ール 群 と し て, 当 科 で 入 院 治 療 を うけ た, 47歳 か ら80歳 (平 均66.4歳) ま で の 子 宮 へ の腫 瘍 浸 潤 の な い, 女 子 膀 胱 腫 瘍 患 者10例, 計52例 を 対 象 と した 。 各 子 宮 頚 癌 患 者 の 当 科 受 診 時 の FIGO stage分 類 は1), 未 治 療 の0期2例, I期9例, II期6例, III期19例, IV期3例, な らび に再 発 患 者3 例 で あ っ た 。 また 腫 瘍 の 組 織 型 に つ い て は, 扁 平 上 皮 癌 が41例, 腺 癌 が1例 で あ っ た 。 装 置 ・方 法 装 置 は ア ロ カSSD523シ ス テ ム で, 走 査 装 置 と し て, 外 筒 径24Fr.の7.5MHzピ ス トル 形 経 尿 道 式 体 腔 内 ラ ジ ア ル ス キ ャ ナASU58を 観 測 装 置USI82に 接 続 す る。 ピ ス トル 形 ス キ ャ ナ の 振 動 子 は 直 径 が5mmの フ ォ ー カ ス 型 で 探 触 子 の 先 端 よ り10mmと19mmの 部 分 に 中 心 の あ る90ﾟ, 120°の2振 動 子 切 替 型 で あ る。 記 録 は POIaroid filmtype 667に 撮 影 した. 尿 路 浸 潤 を 目的 に 紹 介 さ れ た 子 宮 頚 癌 患 者 に つ い て は, 検 尿, 一 般 的 診 察 とIVPに よ る 上 部 尿 路 の 異 常 の 有 無 の 検 討 の後, 無 麻 酔 あ る い は, 仙 骨 部 硬 膜 外 麻 酔 下 で, 砕 石 位 を と り, 100か ら250mlの 滅 菌 水 注 入 下 で 膀 胱 鏡 検 査 を 行 っ た 。 引 き続 き探 触 子 の 外 筒 管 と ピ ス トル 形 探 触 子 を 経 尿 道 的 に 膀 胱 内 に 挿 入 し, 膀 胱 内 に 100か ら200mlの 滅 菌 水 を 注 入 し て 走 査 を 行 った 。探 触 子 を 最 も 深 く挿 入 して か ら, 膀 胱 頂 部 よ り少 しず つ 引 き抜 き な が ら, 子 宮 体 部, 頚 部, 膣 壁 と これ らに 接 す る 膀 胱 壁 の 断 層 像 を 観 察 した 。 さ ら に 子 宮 頚 部 像 と膀 胱 壁 像 に つ い て の 精 査 を 行 っ た 。 コ ン トロ ー ル 群 の 女 子 膀 胱 腫 瘍 患 者 に つ い て は, 経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 に よ る膀 胱 腫 瘍 深 達 度 診 断 の 際 に, 同 時 に子 宮 体 部, 頚 部, 膣 壁 の 断 層 像 に つ い て 観 察, 記 録 し た も の を 検 討 に 用 い た 。 結 果 1. コ ン トロ ー ル 群 の 膀 胱 壁 子 宮, 膣 壁 の 断 層 像 子 宮 へ 腫 瘍 浸 潤 の な い, 女 子 膀 胱 腫 瘍 患 者10例 に つ い て 検 討 し た 。 膀 胱 頂 部 か ら後 壁 で の走 査 で, 10例 中5例 に楕 円 形 の 子 宮 体 部 が 描 出 さ れ た 。 年 齢 が40歳 か ら60歳 代 の4 例 に つ い て は, 全 例 子 宮 体 部 が 描 出 さ れ た が, 70歳 以 上 の 高 齢 者 で は 子 宮 体 部 は 萎 縮 を 来 して い るた め か, 描 出 困 難 な もの が 多 か っ た 。 ま た 子 宮 体 部 は 必 ず し も 膀 胱 の 後 方 正 中 に 位 置 す る と は 限 らず, 左 方 な い し右 方 に 偏 位 し て い る も の も見 ら れ た 。Fig.1は, 47歳 の 表 在 性 膀 胱 腫 瘍 患 者 の 膀 胱 後 壁 で の 走 査 で 描 出 さ れ た, 子 宮 体 部 像 で あ る 。 子 宮 体 部 の 内部 に は, や や 荒 い 穎 粒 状 で 均 一 な 輝 度 を も った 筋 層 エ コ ー を 認 め た 。 膀 胱 三 角 部 で の 走 査 で は, 全 例 で 子 宮 頚 部 が 描 出 で き た 。 子 宮 頚 部 の 断 層 像 は 内 部 に 均 一 な穎 粒 状 の 筋 層 エ コ ー を 認 め, 周 囲 と の境 界 は 明 瞭 に 区 別 され た 。子 宮 頚 部 に 接 す る 膀 胱 筋 層 像 は 子 宮 頚 部 像 に 比 べ echogenic で あ り うす く滑 ら か に 接 し て お り, 子 宮 頚部 に よ る圧 排 を うけ る も の が6例, うけ な い も の が4 例 あ っ た(Fig.2). 膀 胱 三 角 部 か ら頚 部 付 近 で の 走 査 で 扁 平, 口唇 様 の 膣 壁 像 が10例 中6例 に 描 出 さ れ た. 膣 の 前 後 壁 像 は 膀 胱 筋 層 像 よ り hypoechoic で 相 接 し て お り, 内 腔 は echogenic で 線 状 に描 出 さ れ た(Fig. 3), II. 子 宮 頚 癌 患 者 の膀 胱 鏡 所 見 子 宮 頚 癌 患 者42例 の 全 例 に, 超 音 波 検 査 と同 時 に 膀 胱 鏡 検 査 も 施 行 し た が, 子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 の 際 の 内 視 鏡 的 な 有 意 所 見 と され て い る, 膀 胱 底 部 の 隆 起, 平 等 浮 腫 な ら び に 胞 状 浮 腫, 腫 瘍 形 成 に つ い て, stage 別 に 検 討 し た(Table1). 膀 胱 底 部 の 隆 起 に つ い て は, 0 ∼1期 で は, 軽 度 隆 起 が7例 (63.6%) に 認 め ら れ た が, 高 度 隆 起 例 は 認 め な か っ た. III∼IV期 群 で は 高 度 隆 起 が8例(36.4%)に 認 め られ, 軽 度 隆 起 例 も含 め る と16例(74.8%)に 底 部 の 隆 起 を 認 め た. 膀 胱 三 角 部 か ら膀 胱 頚 部 に か け て の 浮 腫 に つ い て は, 平 等 浮 腫 の み の 所 見 は い ず れ の 群 で も 認 め られ る が 腫 瘍 浸 潤 を 強 く疑 わ せ る 所 見 で あ る胞 状 浮 腫 合 併 の 場 合 は, III ∼IV期 群 の5例(22.7%)と 再 発 群 の1例 の み に 認 め られ た. また これ らIII∼IV期5例 の うち, 2例 は 膀 胱 粘 膜 の 一 部 を 破 る 腫 瘍 形 成 を 認 め, 腫 瘍 浸 潤 が 明 らか で あ っ た. 膀 胱 鏡 上, 明 らか に 膀 胱 浸 潤 陽 性 と 診 断 で き た の は2例 で あ り, 胞 状 浮 腫 合 併 の4例 に つ い て は 膀 胱 漫 潤 の 疑 診 例 と し た. III. 子 宮 頚 癌 患 者 の 経 尿 道 的 超 音 波 断 層 像 1. 1期 以 下 の 患 者 の 断 層 像 癌 が 子 宮 頚 部 内 に 限 局 す る と推 測 され る, 0期, I 期 の11例 の 断 層 像 で は, 子 宮 頚 部 の 内 部 エ コ ー は 均 一 な 場 合 と不 均 一 な場 合 が あ っ た が, 腫 瘍 像 を 明 瞭 に 区 別 す る こ とは で き な か った. いず れ も子 宮 頚 部 の 輪 郭 は 明 瞭 で あ り, 子 宮 頚 部 に 接 す る 膀 胱 筋 層 像 に も不 整 断 裂 な ど を 認 め ず, ほ とん ど コ ン トロ-ル 群 の 断 層 像 と差 を 認 め な か った た め, 全 例 膀 胱 浸 潤 陰 性 と診 断 し た. 11例 中9例 に 根 治 的 手 術 が 施 行 され た が, い ず れ も 手 術 時 の膀 胱 の 剥 離 は 容 易 で あ り, 病 理 組 織 学 的 に も, 子 宮 外 へ の 腫 瘍 浸 潤 の な い こ と が確 認 され た, 2. II期 以 上 な ら び に 再 発 患 者 の 断 層 像 癌 が 子 宮 頚 部 外 に 浸 潤 して い る と考 え ら れ るII, III, IV期 な ら び に 再 発 例, 計31例 の 断 層 像 で は 子 宮 頚 部 の 内 部 エ コ ー は 均 一 な場 合 が14例, 不 均 一 な場 合 が17例 あ った が, 正 常 子 宮 頚 部 組 織 像 と腫 瘍 像 を 画 像 上 区 別 す る こ と は で き な か った, 子 宮 頚 部 像 の 辺 縁 に つ い て は, 明 瞭 な も の が21例, 不 明 瞭 な も の が10例 あ った. 次 に 子 宮 頚 部 と膀 胱 壁 の 境 界 部 断 層 像 の 異 常 所 見 に つ い て 検 討 した(Table2). 31例 中, II期1例, III∼IV 期6例, 再 発 例2例 の 計9例 に, 膀 胱 筋 層 像 の 不 整 や Fig.1 膀 胱 後 壁 で の 走 査 で 描 出 さ れ た 子 宮 体 部 像.B: bladder, CP: corpus uteri Fig.2 膀 胱 三 角 部 で の 走 査 で 描 出 さ れ た 子 宮 頚 部 像. B: bladder, CX: cervix uteri Fig.3 膀 胱 頚 部 側 で の 走 査 で 描 出 さ れ た 膣 壁 と直 腸 像. V: vagina wall, R: rectum Table 1 子 宮頚 癌 患 者 の膀 胱 鏡 所 見
断 裂 像 と と も に, そ の 近 傍 の 子 宮 頚 部 よ りに 不 整 な, hyperechoic areaを 認 め た 。 これ ら の所 見 は膀 胱 筋 層 内 へ の 腫 瘍 浸 潤 像 と考 え られ た. またIV期 の2例 の 断 層 像 で は, 子 宮 頚 部 か ら の び た エ コ ー に よ り膀 胱 筋 層 像 が 完 全 に 消 失 して い た が, これ ら2例 は膀 胱 鏡 で 腫 瘍 形 成 を 認 め た 膀 胱 粘 膜 浸 潤 例 で あ る こ と か ら, 膀 胱 筋 層 像 の 消 失 の 所 見 は, 膀 胱 粘 膜 な い し は粘 膜 下 へ の 腫 瘍 浸 潤 像 と考 え られ た. 3. 超 音 波 断 層 法 に よ る 子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 の 浸 潤 度 判 定 基 準 の 作 成 1, 2の 結 果 よ り, 子 宮 頚 部 と膀 胱 壁 の 境 界 部 断 層 像 の 変 化 を も とに して, 経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 に よ る子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 の 浸 潤 度 判 定 基 準 を 作 成 し た(Table 3). 膀 胱 浸 潤 (bladder invasion)をBIと 表 示 し, BI0 は 膀 胱 浸 潤 陰 性 と し, BI1は 腫 瘍 浸 潤 が 膀 胱 筋 層 内 に 及 ん で い る と考 え られ る も の と し, BI2は 腫 瘍 浸 潤 が 膀 胱 粘 膜 な い し は, 粘 膜 下 に 及 ん で い る も の と した. こ の 判 定 基 準 に 基 づ き子 宮 頚 癌 患 者42例 を 分 類 す る と, BI0 31例, BI 19例, BI 22例 とな る。 4。 子 宮 頚 癌 患 者 の 膀 胱 鏡 所 見 と超 音 波 断 層 法 所 見 と の 比 較 子 宮 頚 癌 患 者42例 の 膀 胱 鏡 所 見 (底 部 隆 起 と浮 腫 に つ い て) と超 音 波 断 層 法 所 見 に つ い て 比 較 検 討 し た (Table4). 膀 胱 底 部 の 隆 起 に つ い て は, BI2群 の2例 は い ず れ も高 度 の 隆 起 を 認 め た が, BI0群 の3例 に も 高 度 の 隆 起 を 認 め た. ま た 膀 胱 筋 層 浸 潤 陽 性 と考 え ら れ るBI1群9例 の な か に は, 底 部 隆 起 を 認 め な い も の が2例 あ り, 底 部 隆 起 の 有 無 の み で は 膀 胱 浸 潤 の 判 定 は不 可 能 と 思 わ れ た 。 胞 状 浮 腫 の 合 併 に つ い て は6例 中5例 が, BI1, BI2群 で あ った こ とか ら, 胞 状 浮 腫 の 存 在 は 膀 胱 浸 潤 診 断 上 の 有 意 所 見 とな る も の と考 え ら れ た. しか し平 等 浮 腫 に つ い て は, BI0群 に も14例 認 め られ, ま たBI1群 の1例 に は浮 腫 を 認 め な か っ た もの も あ り, 平 等 浮 腫 の存 在 は膀 胱 浸 潤 診 断 上 の有 意 所 見 とは, 必 ず し も い え な い と思 わ れ た 。 IV。stage 別 の 子 宮 頚 部 像 の 仮 想 楕 円 面 積 に 関 す る 検 討 コ ン ト ロー ル 群 と子 宮 頚 癌 患 者 で 得 られ た 各 断 層 像 で, 子 宮 頚 部 が 明 瞭 で か つ 最 大 の 大 き さ を 示 した 断 層 像 に つ い て, 子 宮 頚 部 の 前 後 径aと 左 右 径bを 計 測 し, 子 宮 頚 部 を 楕 円 と 仮 定 し てa/2×b/2×πに よ り "仮 想 楕 円 面 積" を 算 出 し , コ ン ト ロ ー ル 群, 0∼1期 II期, III∼IV期 群 別 に比 較 検 討 した 。 前 後 径 左 右 径 の 平 均 値 は い ず れ も stage が 高 く な る に つ れ 高 値 と な り (Table5), "仮 想 楕 円 面 積" の 平 均 値 に つ い て は, t検 定 で 各 間 に 有 意 差 を 認 め た (p<0.05) (Fig.4)。 した が っ て 子 宮 頚 癌 で は, stage が 高 く な る に つ れ, 子 宮 頚 部 は 拡 大 す る傾 向 に あ る と考 え て 良 い と 思 わ れ た. V。 症 例 症 例1。52歳, 子 宮 頚 癌 stage Ib 尿 沈 渣 正 常, IVPに て 上 部 尿 路 に 異 常 な し。 膀 胱 鏡 で は, 膀 胱 三 角 部 の 軽 い 隆 起 を 認 め るが 浮 腫 は 認 め な い 。 超 音 波 断 層 像 で は(Fig.5), 子 宮 頚 部 像 の 拡 大 は な く, そ の 輪 郭 は 明 瞭 で 内 部 エ コ ー の 乱 れ も な い. 子 宮 頚 部 に 接 す る膀 胱 筋 層 像 は, 子 宮 に よ り圧 排 を う け て い る が, うす く な め ら か で 不 整 や 断 裂 を 認 め な い 。 Table 2 子宮 頚 部 と膀 胱 壁 の 境 界 部 断 層 像 の 異 常 所 見 Table 3 超 音 波 断層 法 に よ る子 宮頚 癌 膀 胱 浸潤 度 の 判 定 基準 Table 4 子宮 頚 癌 患者42例 の 膀 胱 鏡 所 見 と超 音 波 断 層 法 所 見 の比 較 Table 5 子宮 頚 部 の前 後 径, 左 右 径 と仮 想 楕 円 面 積 の 平 均値
超 音 波 診 断 上, BI0と 診 断 し た. 広 汎 子 宮 全 摘 出術 施 行 され, 病 理 組 織 学 的 に 子 宮 外 腫 瘍 浸 潤 の な い こ とが 確 認 さ れ た. 症 例2.50歳, 子 宮 頚 癌 stage IIIb 尿 沈 渣 正 常, IVPに て 上 部 尿 路 に 異 常 な し. 膀 胱 鏡 で は, 膀 胱 底 部 の 高 度 隆 起 と膀 胱 三 角 部 か ら頚 部 に か け て 平 等 浮 腫 を認 め た. 超 音 波 断 層 法 で は(Fig.6), 子 宮 頚 部 の 前 後 径 は4.0cm, 左 右 径 は6.3cmと 拡 大 し, 内 部 エ コ ー は 均 一 で あ った. しか し子 宮 頚 部 に 接 す る 膀 胱 筋 層 像 は 不 整 で あ り, そ のす ぐ子 宮 頚 部 側 に不 整 な hyperechOic area を 認 め た た めBI1と 診 断 し た.
症 例3.79歳, 子 宮 頚 癌 stage IVb 尿 沈 渣 で 血 膿 尿 を 認 め る. IVPで は 軽 度 の 左 水 腎 症 を 認 め た. 膀 胱 鏡 で は 膀 胱 底 部 の 高 度 隆 起 を 認 め, 強 い 平 等 浮 腫 に 胞 状 浮 腫 を 伴 っ て お り, 膀 胱 三 角 部 の 左 に 腫 瘍 形 成 を 認 め た(Fig.7A). 超 音 波 断 層 像 で は (Fig.7B), 子 宮 頚 部 の 前 後 径 は7.0cm, 左 右 径 は7.7 cmと 著 明 に 拡 大 し, そ の 辺 縁 は 不 整 で あ る, 子 宮 頚 部 か ら の び る エ コ ー は 膀 胱 内 に 突 出 し, そ の部 位 の 膀 胱 筋 層 像 は 消 失 して お り, BI2と 診 断 し た. 検 査10日 後 に 腫 瘍 死 した が, 剖 検 時 の 病 理 組 織 学 的 所 見 か ら も, 膀 胱 粘 膜 固 有 層 まで 達 す る腫 瘍 浸 潤 が 確 認 さ れ た(Fig. 8), 症 例4. 72歳, 子 宮 頚 癌 stage IVa 尿 沈 渣 正 常. IVPで は 右 腎 造 影 さ れ ず, 左 の 軽 度 水 腎 症 を 認 め た. 膀 胱 鏡 で は 膀 胱 底 部 の 高 度 隆 起 を 認 め, 右 側 を 中 心 に 平 等 浮 腫 に 胞 状 浮 腫 を 合 併 し, 右 尿 管 口 は 確 認 出 来 な か っ た. ま た, 膀 胱 三 角 部 右 に 隆 起 性 の 腫 瘍 形 成 を 認 め(Fig.9A), 膀 胱 粘 膜 に お よ ぶ 腫 瘍 浸 潤 と診 断 した. 超 音 波 断 層 像 で は(Fig.9B), 子 宮 頚 部 の 著 明 な 拡 大 と, 膀 胱 筋 層 像 の 消 失 を 認 め, BI2と 診 断 し た. 外 部 照 射4,000rads腔 内 照 射540rads終 了後 の 膀 胱 鏡 検 査 で は, 平 等 浮 腫 は 認 め る が 腫 瘍 形 成 は な く, 右 尿 管 口 も確 認 で き る(Fig.10A), 超 音 波 断 層 像 で は (Fig.10B), 子 宮 頚 部 は 治 療 前 に 比 べ 縮 小 し て お り, Fig.4 対 象 患老 の子 宮 頚 部像 の仮 想楕 円面 積
Fig.5 症 例1の 断 層 像 (BI0の 所 見). B: bladder, CX: cervix uteri
Fig.6 症 例2の 断 層 像 (BI1の 所 見). B: bladder, CX: cervix uteri
Fig.7A 症 例3の 内 視 鏡 写 真, 膀 胱 粘 膜 に 腫 瘍 形 成 を 認 め る.
Fig.7B 症 例3の 断 層 像 (BI2の 所 見). B: bladder, CX: cervix uteri
膀 胱 内 突 出 も軽 減 して い る. 消 失 し て い た 膀 胱 筋 層 像 は 一 部 不 整 な と こ ろ も あ る が 再 生 し て きて お りBI0の 所 見 で 放 射 線 治 療 が有 効 で あ った と思 わ れ た. 考 案 子 宮 頚 癌 のFIGO分 類 で は1), IVa期 を 膀 胱 直 腸 の 粘 膜 へ 浸 潤 の あ る もの と し, 膀 胱 粘 膜 へ の 浸 潤 に 関 し て は, 膀 胱 鏡 検 査 で 潰 瘍 や 腫 瘍 形 成 が あ れ ぽ 浸 潤 は確 実 で あ り, 隆 起 と裂 溝 を 認 め, こ れ が 触 診 に よ っ て 腫 瘍 と固 く結 びつ い て い て も, IVa期 と して よ い と して い る. した が っ て膀 胱 鏡 検 査 の み で 病 期 の 決 定 は 可 能 と思 わ れ る が, 膀 胱 浸 潤 の 有 無 は 手 術 の 難 易 や 患 老 の 予 後 に か な り大 きな 影 響 を 与 え る 因 子 で あ り, 治 療 に 先 立 って 膀 胱 壁 へ の 腫 瘍 浸 潤 の 有 無 を 正 確 に 診 断 す る こ と が 極 め て 重 要 と な る. 子 宮 頚 癌 の 膀 胱 浸 潤 の 際 の
膀 胱 鏡 所 見 と して, Wandoy and Simon21は, (1)三 角 部 膨 隆, (2)胞 状 浮 腫, (3)脳 回 転 状 横 溝(4)腫 瘍 の膀 胱 内 出 現 の4階 程 を 指 摘 した. 天 神3)は295例 の 子 宮 頚 癌 患 者 の 膀 胱 鏡 所 見 の 検 討 か ら, 軽 度 変 化 と高 度 変 化 に 区 別 し, 高 度 変 化 で あ る平 等 浮 腫, 胞 状 浮 腫, 脳 回 転 様 浮 腫 を 認 め た 場 合 は, 膀 胱 筋 層 ま で 浸 潤, 炎 症 また は 癒 着 が お よ ん で い る と考 えた. し か し浮 腫 を認 め た 48例 中43例 は 癌 の 前 方 浸 潤 例 で あ った と して い るが, 全 例 に 膀 胱 壁 へ の 腫 瘍 浸 潤 が 確 認 さ れ た わ け で は な く, ま た 残 り5例 は 腫 瘍 浸 潤 と関 係 の な い 浮 腫 で あ っ た と述 べ て い る. 我 々 の 膀 胱 鏡 所 見 に 関 す る検 討 で も, 胞 状 浮 腫, 腫 瘍 形 成 に つ い て は 有 意 と思 わ れ た が, 底 部 隆 起, 平 等 浮 腫 に つ い て は い ず れ の stage で も認 め られ る こ とが わ か り腫 瘍 浸 潤 を 疑 う指 標 と は な り得 な い と考 え られ た. 以 上 よ り膀 胱 外 方 よ り浸 潤 の 進 行 す る 子 宮 頚 癌 の 早 期 膀 胱 浸 潤 を 膀 胱 鏡 検 査 の み で 判 定 す る こ と は 困 難 と思 わ れ た. 近 年 の 画 像 診 断 学 の 進 歩 に よ り子 宮 頚 癌 に 対 して も CTや4)5)MRI6)7)が 用 い られ, 治 療 前 の 腫 瘍 浸 潤 の 程 度 や 転 移 の 検 索 に よ る進 行 期 の 判 定 に, こ れ ら が有 効 で あ る こ とが 報 告 され て い る. CTに よ る子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 診 断 に つ い て は, 本 邦 で は, 鈴 木 ら5)の子 宮 膀 胱 間 の free space の 変 化 を も と に し た, "grade 分 類" が 有 名 で あ る. 鈴 木 ら に よれ ば, 膀 胱 鏡 的 に腫 瘍 浸 潤 の 有 無 が 確 認 さ れ た 症 例 に お け るCTの 正 診 率 は93.5%と 高 率 で あ った が, IIIb期 症 例 の 異 常 所 見 の 出 現 率 が 低
い 点, 子 宮 前 屈 に よ る, partial volume phenomenon の た め, 判 定 困 難 で あ っ た 例 が20.9%あ った 点 な どで, CTの 限 界 に つ い て も指 摘 して い る. MRIは 組 織 分 解 Fig.8 症 例3の 病 理 組 織 標 本. 膀 胱 粘 膜 固 有 層 に腫 瘍 浸潤 が 及 ん で い る Fig.9A 症 例4の 内 視 鏡 写 真, 隆 起 性 の 腫 瘍 形 成 を 認 め る.
Fig.9B 症 例4の 断 層 像 (BI2の 所 見), B: bladder, CX: cervix uteri
Fig.10A 症 例4, 放 射 線 治 療 後 の 内 視 鏡 写 真. Fig.10B 放 射 線 治 療 後 の 断 層 像 (BI0の 所 見),
能 に す ぐれ, 子 宮 頚 癌 のT1値T2値 が 正 常 子 宮 組 織 よ り延 長 して い る こ とか ら画 像 上 腫 瘍 病 巣 の 描 出 が 可 能 と さ れ て い る が6), 現 時 点 で は 膀 胱 浸 潤 に つ い て は, 触 診, 膀 胱 鏡 検 査 以 上 の 精 度 は 期 待 で き な い との 意 見 も あ る7)。 超 音 波 断 層 法 に よ る 子 宮 頚 癌 膀 胱 浸 潤 の 診 断 に つ い て は, 経 腹 的8), 経 直 腸 的 ア プ ロ ー チ9)に よ る 診 断例 も 報 告 さ れ て い る が, 経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 に よ る 検 討 に 関 し て は, 本 邦 で は, 関 場, 浮 田 ら10)11), 仲 山, 中 山 ら12)13), 藤 井 ら14)の3施 設 の報 告 が あ るの み で あ る 。経 尿 道 的 超 音 波 断 層 法 は Holm ら15)によ り考 案 され, 中 村 ら15)によ り膀 胱 腫 瘍 の 深 達 度 判 定 に 臨 床 応 用 さ れ る に 至 っ た が, そ の 高 い 正 診 率 に よ り現 在, 膀 胱 腫 瘍 の 深 達 度 診 断 に は 欠 か せ な い 診 断 法 と な って い る。 我 々 の 恥 た 走 査 装 置 に は, 径5mm, 周 波 数7.5MHzの 振 動 子 を 備 え て い る が, 今 回 の検 討 よ り膀 胱 壁 の み な ら ず, 子 宮 頚 部 を は じ め 子 宮 体 部, 膣 壁 の 描 出 も十 分 可 能 で あ る こ とが わ か った 。 膀 胱 腫 瘍 の場 合 で は, 腫 瘍 と膀 胱 筋 層 の 音 響 イ ン ピ ー ダ ン ス の 差 か ら, 腫 瘍 基 底 部 と膀 胱 筋 層 の 境 界 を 区 別 す る こ とが 可 能 で あ る が, 子 宮 頚 癌 の 場 合, 腫 瘍 像 と正 常 子 宮 頚 部 像 を 区 別 で き な い た め, 我 々 の 判 定 基 準 で は, 子 宮 頚 部 に接 す る膀 胱 筋 層 像 とそ の 近 傍 の 異 常 像 を 判 断 の 指 標 と した. 関 場 ら10)は膀 胱 壁 は2本 の echogenic な 線 状 エ コ ー と, そ の 間 の echo poor な 筋 層 像 か ら な り, 2層 の linear
pattern を 示 す と し, 外 側 と 内 側 の 線 状 エ コ ー の 連 続 性, 不 整 像 か ら膀 胱 壁 の 浸 潤 度 を 判 定 し て い る. し か し 中 村16)に よ れ ば, 膀 胱 筋 層 像 は う す い 一 層 の echogenic な 層 と し て 描 出 さ れ る こ と が 多 い と し て お り, 我 々 の 経 験 で も膀 胱 壁 が2層 の linear pattern を 示 す こ と は極 め て 稀 で あ った 。 仲 山 ら12)は膀 胱 浸 潤 診 断 上 の 指 標 と して, 膀 胱 壁 の 伸 展 不 良 や 断 裂 の 他 に, 膀 胱 子 宮 頚 部 境 界 の 子 宮 側 に 強 い エ コ ー を 認 め る所 見 (high echo amplitude), を 指 摘 し, これ ら の所 見 を 総 合 し て 浸 潤 度 を 判 定 し て い る. 我 々 の 判 定 基 準 で は BI1を, 膀 胱 筋 層 像 の 不 整 断 裂 とそ の 近 傍 の子 宮 頚 部 側 に 不 整 な hyperechoic area を 認 め る もの と し た が, こ の hyperechoic area は 仲 山 ら の い う high echo amplitude と同 一 の 所 見 と考 え られ る. 今 回 の 検 討 で は, BI1と 診 断 した9例 に つ い て の 病 理 組 織 学 的 検 討 が 行 え な か った た め, この hyperechoic area が い か な る 病 態 に よ っ て 出 現 す る か は 不 明 で あ る。 予 想 さ れ る 病 態 と して, (1)膀 胱 子 宮 中 隔 に腫 瘍 浸 潤 が 及 ん だ 際 の 炎 症 性 反 応, (2)膀 胱 筋 層 内 に 腫 瘍 浸 潤 を 来 し筋 層 が 肥
厚 し, さ らに筋層 の浅 層 と深層 が分 裂 した状 態, な ど
が考 え られ 今後 の検討 課題 と考 え てい る。膀胱 筋層 へ
の浸潤 像 につい ては, 各施 設 とも独 自の基準 に基 づ き
判定 が な されて お り, 今後 さ らに詳細 な検 討 の後, 判
定基 準 の統一 を 図 ってい く必要 が あ る と思わ れ る。 し
か し膀胱 浸潤 陰性 の診 断 と膀 胱粘 膜 な い しは粘 膜 下へ
の腫瘍 浸 潤像 につい ては, 各施設 ともほぼ 同一 の知 見
が得 られて お り, 経尿 道的 超音 波 断層法 が, 従来 の諸
検査 に比 べ 子宮頚 癌膀 胱浸潤 の診 断に よ り正確 で客 観
的 な診 断法 で あ るこ とは, ま ちが いない と考 え られた。
なお今 回の対 象患 者 の子宮 頚部 像 の "仮 想楕 円面積"
の算 出 か ら stage が高 くなるにつ れ, 子宮頚 部 が拡 大
す る傾 向 にあ る こ とが明 らか にな った が, この ことは
放射 線療 法 や化学 療法 によ る治療 効 果 の判定 や, 治療
後 の局所 再発 の診 断 に も当断層 法 が応 用 可能 な ことを
示 して い る。 もち ろん子宮 頚癌 以外 の骨 盤 内悪性腫 瘍
の膀 胱浸 潤 診断 に も応 用可 能 と思わ れ, 今後, 経 尿道
的超 音波 断 層法 の検査 適応 は ます ます拡 大 して い くも
の と思わ れ る。
結
語
(1) 子 宮頚 癌 患者42例 に対 し経 尿道 的 超 音 波 断層 法
を施 行 し, 子宮頚 癌 の膀胱 浸潤 像 につ いて検 討 した。
(2) 膀 胱浸潤 陰 性 の断層 像で は,
子 宮頚 部 に接 す る膀
胱筋 層像 はなめ らか に連続 性 を保 って い るが, 膀胱 筋
層像 に不 整 や断裂 と, そ の近傍 の子 宮頚 部側 に不 整 な
強 エ コーを 認め る場合, 腫 瘍 が膀胱 筋層 内 に浸潤 して
い る と考 え られ た。腫 瘍 浸潤 が膀 胱 粘膜 に及 ん でいた
症例 で は子 宮頚部 か らの びた エ コーに よ り膀 胱筋 層像
は消 失 して いた。
(3) 同時 に行 った膀 胱鏡検 査 の結 果 よ り,
膀 胱底 部 の
隆起 や, 平 等浮腫 の存 在 は, 膀 胱浸 潤診 断上 の有 意所
見 とは, な り得 な い こ とがわ か った.
(4) 経 尿 道的 超 音波 断 層法 で得 られ た各 患 者 の子 宮
頚部 像 の前後 径, 左右 径 を計測 し, "仮 想楕 円面積" を
も とめ たが, 子 宮頚癌 で は stage が 高 くな るにつれ, 子
宮頚 部 が拡 大す る傾 向 にあ る ことがわ か った。
(5) 経 尿道 的超 音波 断層 法 は従来 の諸検 査 に比 べ,
子
宮頚 癌膀 胱 浸潤 の診 断 に, よ り正確 で客 観的 な診 断法
で あ る と考 え られた.
文
献
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