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取締役の会社に対する責任の追及 : 株主代表訴訟 の中日比較を中心に

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(1)

取締役の会社に対する責任の追及 : 株主代表訴訟 の中日比較を中心に

著者 樊 紀偉

雑誌名 同志社法學

巻 61

号 7

ページ 153‑206

発行年 2010‑03‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012129

(2)

取締役の会社に対する責任の追及一五三同志社法学 六一巻七号

取締役の会社に対する責任の追及 ―

株主代表訴訟の中日比較を中心に

樊 紀 偉

  (二二六九)

  ︵   ︵   ︵   ︵

  ︵   ︵   ︵   ︵   ︵

(3)

取締役の会社に対する責任の追及一五四同志社法学 六一巻七号

はじめに

  取締役責任制度は︑会社の損害の回復を目的とする損害填補機能と︑取締役の任務懈怠の防止を目的とする抑制機能 をもつが

役体社会︑し有を位地るた主出の務義利権︑れらめ認の資格体締取︑てしそ︒るなと主者法の別はと主株るあでが人法 ︑締取はかうどかるきで実現が能機のつ二たしうそ役責の関はに社会︒るいてし係に任接密と度制るす及追を 1)

が会社に損害を与えた場合︑その責任を追及するのは本来会社である︒しかし︑会社と取締役との利害関係または特殊な関係などから︑その責任追及が行われない可能性があり︑その結果︑会社ひいては株主の利益が害されるおそれがあ

お社るいてれらめ認てい会に法 訟わち株主代表訴の制度が多くの国すな︑︒にそのため︑株主が︑会社のため取度え制るす起提を訴締るす対に等役 2)

3

  二〇〇五年の中国会社法改正で︑株主の権利を強化するために株主代表訴訟制度が導入された︒しかし︑株主の権利の保護を強化するために導入された株主代表訴訟制度はあまり活用されていないと指摘されている

︒中国においては︑ 4

大いに期待されていた株主代表訴訟制度がなぜあまりよく利用されていないのであろうか︒また︑中国の株主代表訴訟制度はどうあるべきであろうか︒取締役の不正行為の防止および会社ひいては株主の利益の保護のために︑これらの問

題を検討する必要がある︒また︑同改正により︑株主代表訴訟制度と密接な関係をもつ取締役の会社に対する責任の制度も若干の修正が行われた︒取締役の会社に対する責任の制度が機能するために︑取締役の会社に対する責任のあり方

および株主代表訴訟制度のあり方を検討する必要がある︒

  一方︑日本における株主代表訴訟制度は一九五〇年の商法改正により導入され︑二〇〇五年の会社法制定に至るまで

何度も改正されてきた︒中国における株主代表訴訟制度は日本に比べて歴史と経験が浅いので︑日本の株主代表訴訟制

  (二二七〇)

(4)

取締役の会社に対する責任の追及一五五同志社法学 六一巻七号 度の沿革︑理論および判例の検討は︑中国の株主代表訴訟制度を検討するにあたり示唆的であると考える︒また︑日本では︑アメリカの株主代表訴訟制度または日米の比較について深く研究する論文は多数ある一方︑他の諸国︑特に中国 に関する株主代表訴訟制度を検討し︑比較する論文は少ない

なる的際国︑はとこす企討検を方りあのな業制企に発活が動活業の活間日中に特︑動度訟ど中を比較︑し国の株主表訴 株訴表代主︒の国両日中制訟実度の理論及び務上の運用な 5)

っている現代において︑意義があると考える︒

  本稿では︑次のような順序で検討する︒まず︑一において取締役の会社に対する責任の責任事由について︑中日両国

の具体的な規定の内容を明らかにする︒また︑両国の制度を比較したうえで︑中国法における取締役の会社に対する責任のあり方を検討する︒次に︑二において取締役の会社に対する責任の追及方法としての株主代表訴訟制度について︑

日本法の沿革と中国法への導入の背景を検討し︑両国における具体的な規定を明らかにする︒そのうえで︑中国法における株主代表訴訟制度に関する問題を検討する︒そして︑三では︑二において明らかにされた問題をもとに︑中日両国

における株主代表訴訟制度に関する具体的な制度を比較しながら︑中国における株主代表訴訟制度のあり方を考察する︒

  (二二七一)

(5)

取締役の会社に対する責任の追及一五六同志社法学 六一巻七号

一  取締役の会社に対する責任の法的構造

︵一︶日本法

 

1

会社法制定以前における取締役の会社に対する責任制度の沿革

  況状の前以正改法商の年〇五九一

6

  日本において︑取締役の会社に対する責任がはじめて明文で規定されたのは一八九三年に施行された一八九〇年の旧商法までさかのぼる

締るの会社に対す責た任の規定は削除役取れ九︒その後の一八九︑年の商法改正でさ 7

︒しかし︑取 8

締役の会社に対する責任の規定は欠いていたものの︑取締役の善管注意義務を定めた規定により法令・定款に違反した取締役は当然に会社に対し責任を負うと解されていた

取会︑はきとたしを認承の算決で総主株︑は任責償賠害損のこ︒ 9

締役に不正行為があった場合を除き︑免除されるとされていた

︵一八九九年商法一九三条︶︒ 10

  一九一一年の商法改正で︑会社と取締役との委任関係が明文化された︵一九一一年商法一六四条二項︶︒両者の関係 は契約関係であり︑委任関係に関する民法の規定を適用するものとした

︶連賠害損テシ帯シノ對ニ社会ハ役締償責其商項一条七七一法年ニ一一九一﹂︵ス任取ハ役キ﹁取締カ其任務ヲ怠リタルト 会の役締つ取︑たに社い対する責任に︒てはま 11

と規定し︑任務懈怠は取締役が会社に対して責任を負う責任事由であることが明らかになった

12

  一九三八年の商法改正において︑取締役の責任については一九一一年商法の内容をそのまま継承し︑二六六条一項に 規定された︒また︑株主総会の特別決議によって取締役の会社に対する責任を免除することが可能になった

13

  (二二七二)

(6)

取締役の会社に対する責任の追及一五七同志社法学 六一巻七号

  沿の法商の任責るす対に社会役の締取るけおに降以年〇五九一革   一九五〇年の商法改正では︑米国法の強い影響を受け︑取締役の権限が拡大されたことにあわせて︑取締役の会社に 対する責任が明文化され︑より厳格化された

一取銭金るす対に役締②付︶︑号一︵任責当配貸け違年条六六二法商正改一責八九一︑号二︵任法①ていおに項一条︑ てす明の任責る会対に社化の役締文はについ︒︑一九五〇年商法二六六取 14

項三号︶︑③競業避止義務違反責任︵三号︶︑④取締役会の承認を得た利益相反取引に基づく責任︵四号︶︑および⑤法令または定款違反責任︵五号︶が個別的に列挙された︒

  一九七四年の商法改正により︑①に違法な中間配当に基づく責任が追加された︵同改正商法二六六条一項一号︶︒

  一九八一年の商法改正時に︑二六六条一項三号の競業避止義務違反責任が外され︑株主権の行使に関する利益供与に 基づく責任が規定された︵同改正商法二六六条一項二号︶︒その直接的な目的は︑上場会社における﹁総会屋﹂への利益供与の根絶を図ることにあったが

適対ば総会屋以外にすある利益供与にもれでにの主の権利行使関︑してなされた株 15

用され得るものとなっていた

16

  会社法制定前の商法︵以下﹁旧商法﹂という︶においては︑取締役の会社に対する責任については︑旧商法二六六条

一項一号から四号が特殊な責任を定めたものであるのに対し︑同項五号の法令定款違反責任は取締役の会社に対する債

務不履行による責任を定めたものであった

17

  また︑旧商法二六六条一項五号の﹁法令﹂の範囲については︑非限定説と限定説に分かれていた

︒従来の通説である 18

非限定説は︑旧商法二六六条一項五号で規定されている﹁法令﹂は︑会社や株主の利益の保護を目的とする具体的規定のみならず︑取締役の善管注意義務・忠実義務を定める一般的な規定および公益保護を目的とする全ての法令︵刑法︑

独占禁止法等︶を含むとしている︒それに対して︑限定説は︑取締役が法令違反として会社に対して責任を負うのは︑

  (二二七三)

(7)

取締役の会社に対する責任の追及一五八同志社法学 六一巻七号

会社や株主の利益の保護に直接関係する法令︑および公序良俗に関する法令に限定すべきであるとしている︒これにつ

いて︑最高裁は︑旧商法二六六条一項五号の﹁法令﹂にはあらゆる法令が含まれるとし︑非限定説を採用した

19

 

2

会社法における取締役の会社に対する責任の責任事由の類型   会社法の制定により︑取締役の会社に対する責任が抜本的に改正された︒条文の用語は旧商法二六六条一項五号の﹁法 令又ハ定款ニ違反スル行為ヲ為シタルトキ﹂から﹁その任務を怠ったとき﹂に変更され︵会社法

定事か任責反違款務令法は由任任責な的懈怠責任に変わったら 般一︶︑項一条三二四 20

定所規の任責付貸銭金の定号三項一条六六二法商旧︒ 21

は︑同項四号所定の利益相反取引の一種として特別な規定を設けないことにして

責に任務懈怠責任含任まれることとしは 益く除された︒利相︑反取引に基づ削 22

る怠場合に任務懈がじあったと推定すた生に︑害損に社会りよが引取反相益利 23

こととした︵会社法四二三条三項︶︒また︑旧商法二六六条一項一号の違法配当責任および二号の株主の権利の行使に関する利益供与責任は別の条文を設け︑特別の法定責任とされた︵会社法四二六条︑一二〇条四項五項︶︒

  任務懈怠   会社と取締役との間の委任関係︵会社法三三〇条︶に基づき︑取締役は受任者として善良な管理者の注意をもって職務を遂行しなければならない︒その任務を怠ったことにより生じた損害につき︑取締役は会社に対し損害賠償責任を負

たっあで す注意義務の違反を意味解ると善することが一般的管は的と社法四二三条一項︶︒伝統な︵見解によれば︑任務懈怠会 24

さり・忠実義務の違反であ︑義法令違反も含まれると務意怠注た︑取締役の任務懈は︒︑会社に対する善管ま 25

れている

発務いては︑①取締役が任をに怠ったこと︑②損害がつ件る要締役の任務懈怠によ損︒害賠償請求権の発生取 26

  (二二七四)

(8)

取締役の会社に対する責任の追及一五九同志社法学 六一巻七号 生したこと︑および③損害の発生につき取締役の任務懈怠と因果関係があること︑であるとされている

27

  会社法制定により︑利益相反取引と競業取引は︑取締役が任務懈怠責任を負い得る一類型となった

︒取締役に利害関 28

係が認められる場合︑当該取締役の業務執行の適正さ及び公正さについて厳格に審査することが求められるべきである

求の総会︵取締役会設置会社場株合は取締役会︶の承認を主で合上た︑利益相反取引の場には︑利害関係を開示したま ︒ 29

めることも必要となる︒しかしながら︑利益相反取引によって損害が生じたとき︑株主総会︵取締役会設置会社の場合は取締役会︶の承認を受けたかどうかにかかわらず︑任務懈怠と推定されることが明確にされた

︵会社法四二三条三項︶︒ 30

しかし︑承認を受けなかった場合には承認を受けた場合よりも取締役は不利に取り扱われて然るべきであるという主張もある

31

  競業取引は︑利益相反取引と同じく︑取締役が会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図る危険性が類型的に認められることから︑取締役と会社との利益が対立しうる諸々の行為の中で︑特に規制されている

︒取締役が自己 32

または第三者のために競業取引を行うと︑法令違反行為をしたこととなり

取損定推と額の害のれ社会が額の益利さる得項︵会総主株︶︒二︵条三二四法社会たがて者によっ取締役自身または第三 有の認該承の社に無取かかわらず︑当︑引会 33

締役会設置会社の場合は取締役会︶の承認を受けない競業取引は会社法の具体的規定の違反になるが︑株主総会︵取締

役会設置会社の場合は取締役会︶の承認を受けたときでも︑その承認を受けた競業取引によって会社に損害が生じた場合︑取締役が責任を免れる効果はないと解される

34

  なお︑会社に刑事罰金または課徴金が課された場合に︑取締役は︑この額につき会社に対し損害賠償責任を負うかどうかについては議論がある

いさ担は取締役に転嫁せのるべきものではな負金課罰社に刑事罰金がさ︒れた場合︑この会 35

という見解がある

36

  (二二七五)

(9)

取締役の会社に対する責任の追及一六〇同志社法学 六一巻七号

  供益利るす関に使行の利権の主株与   株主の権利の行使に関して利益供与を受けた者は︑これを会社に返還する責任を負う︵会社法一二〇条三項︶︒同時に︑株主の権利の行使に関して会社または子会社の計算において財産上の利益を供与することに関与した取締役は︑連帯し

て︑供与した利益の価額に相当する額を会社に対し返還する義務を負う︵会社法一二〇条四項︶︒この責任は無過失責任であるが︑利益の供与に関与していない取締役は︑その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合

は︑連帯責任を負わないとされ︵会社法一二〇条四項︶︑立証責任が転換された過失責任となっている︒

  剰余金分配   会社法四六一条の分配可能額を超えて剰余金の分配をした場合には︑当該行為に関する職務を行った取締役︑議案を

提案した取締役および右の分配により金銭等の交付を受けた株主は︑交付を受けた株主が受領した金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う︵会社法四六二条一項︶︒ただし︑剰余金分配に関与した取締役がその職務を行うに

ついて注意を怠らなかったことを証明したときは︑当該義務を負わない︵会社法四六二条二項︶︒その責任の性質については︑転換された過失責任と解されている

37

 

3

取締役の会社に対する責任の性質と証明責任   旧商法二六六条一項各号の責任は︑無過失責任を基本的な原則にして構成されたものであったが︑無過失責任を定めた取締役の責任は厳格に過ぎ︑過酷な結果を招くとの批判を受けていた

お旧に正改の法例特法商の年二〇〇二︑たま︒ 38

いて︑委員会等設置会社の取締役・執行役の責任について過失責任主義が採用されていたので︑各種類の会社間におけ

  (二二七六)

(10)

取締役の会社に対する責任の追及一六一同志社法学 六一巻七号 る規定のアンバランスを調整する必要があった

例もこは法社会︑りあ景を背なうよのそ︒るれ過て成の任責失過︒たし構失再てしと義主任責いっと流潮なルバーロな する締取︑とにけ向を目の国外役る会社に対︒責任の過失責任化がグ諸 39

外として︑自己のための利益相反取引に基づく責任および株主の権利行使に関する利益供与に基づく責任は︑無過失責任として規定されている︒その理由は︑自己のために利益相反取引をした場合︑会社に対して損害を与える可能性が高

いと考えられているからである

40

  取締役の任務懈怠責任の判断構造において一元説と二元説が存在しているが︑学者と立案担当者との見解は異なる

41

学者の理論によると︑一元説と二元説との違いは具体的な法令違反をそれだけで任務懈怠とみるかどうかというところにある

務分債務に二分する債務二論手を前提に︑取締役の債段と者務れに対し︑立案担当に︒よると︑債務を結果債そ 42

を手段債務ととらえ︑任務懈怠と﹁責めに帰すべき事由﹂が同じ要件であるかどうかによって︑一元説か二元説かを区別している︒立案担当者の解説では︑会社法は任務懈怠の要件と﹁責めに帰すべき事由﹂の要件を区別する二元説を採

用していると説いている

43

  一般の任務懈怠責任は︑民法の債務不履行に基づく損害賠償責任の理論と同様に解されているが

︑取締役の具体的な 44

行為義務が︑結果債務的なものであるか︑あるいは手段債務的なものであるかによって︑債務不履行の要件の充足の仕

方が異なるという主張もある

生怠側役締取②︑実事の懈責務任①︑はにきとるのめ求由発が害損③びよお︑事にるきでがとこるす帰す請を償賠害損 づ任責償賠害損くに基にの履不務債の法行よ理社の任責るす対に会論の役締取︑ばれ︒民 45

したこと︵損害の発生︑任務懈怠行為と損害の発生との因果関係︑損害額︶等について証明しなければならない︒①と③の証明責任は会社側︵株主代表訴訟の場合には株主側である︶にある︒民法の債務不履行理論によると︑②の﹁責め

に帰することができる事由﹂は︑故意︑過失または信義則上これと同視すべき事由を意味する

︒このような②の帰責事 46

  (二二七七)

(11)

取締役の会社に対する責任の追及一六二同志社法学 六一巻七号

由がないことの証明責任は責任を免れようとする取締役側にあるとされている

47

  取締役がした利益相反取引により会社に損害が生じたときには︑︵

a

引役締取たしを取︶反相益利該当︑︵

︵定はたま︑役締取たし決をとこるすを引

b

︶取該当

c

の︑﹁きつに役締取たし成賛に議決認︶承の会役締取るす関に引取該当そ

の任務を怠ったものと推定する﹂という推定規定がある︵会社法四二三条三項︶︒この場合には︑債務不履行に関する証明責任の一般原則の例外として︑取締役の責任を追及する会社または株主は利益相反取引がなされたことを証明すれ

ば足り︑任務懈怠がなかったことの証明責任が取締役の側に転換される

48

  競業取引に基づく取締役の責任を追及する場合には︑取締役の競業取引行為により会社が被った損害の金額を証明す

るのは困難であるため︑会社の損害額は当該競業取引によって取締役または第三者が得た利益の額に相当すると推定される︵会社法四二三条二項︶︒競業取引に基づく責任は過失責任である︒株主総会︵取締役会設置会社の場合は取締役会︶

の承認を受けなかった場合には︑具体的な法令違反となるから︑会社または株主はそうした承認を受けないで競業取引がなされたことを証明すれば足りる︒それに対し︑株主総会︵取締役会設置会社の場合は取締役会︶の承認を受けた場

合には︑会社または株主は︑競業取引が行われたことを証明するだけでは足りず︑取締役が﹁競業取引をなすに際し善管注意義務・忠実義務に違反したこと﹂を証明しなければならない

49

︵二︶中国法

 

1

二〇〇五年の中国会社法改正の背景   中国会社法は一九九三年一二月二九日に公布され︑一九九四年七月一日に施行された︒当時の中国には会社法の規定

に合致する会社は極めて少なく︑会社運営の実務的な経験も不足しており︑会社法の理論的研究も不十分なものであっ

  (二二七八)

(12)

取締役の会社に対する責任の追及一六三同志社法学 六一巻七号

八わ当︑はられこ︑がたれ行のが正改の回二の日八二月時差年すたっあでのものめたる処し対に題問な的別個たっ迫 四の制五〇〇二らかてれさ定が〇法社会国中に年三九九年第︒一〇二びよお日五二月二年三九九九一︑でま正改回一 50

51

一方︑経済面では︑市場経済が大きく発展しており︑会社特に私企業の数は大幅に増加してきた︒私企業の急増に伴い︑私有財産の法的保護を強化することが要求され︑旧会社法は新しい社会状況に適応できなくなった︒

  また︑中国では会社の経営者または支配株主の権限濫用および粉飾決算の問題が深刻であった︒会社特に上場会社の巨額粉飾決算などの不祥事が相次いで発生し︑中国の会計制度・監査制度・証券市場に対する信用を失墜させ︑ガバナ ンスの不備が明らかになった

︒護および株主の権の保利をがた要ま高っ声るす請 な︑化強の任責のど役ポ締のような背景のもと︑コーレ︒ート・ガバナンスの強化︑取こ 52

  なお︑二〇〇一年には中国のWTOへの加盟が実現し︑金融・資本市場のグローバル化の中︑中国の法制度とグローバルスタンダードとの融合が求められるようになった

にな程日が正改の法社会︑めたいし和調が則規OTWと法社会︒ 53

上がっていた

︒たっなにうよ 要本的に改正する必とがあるを考えられる抜法争社た︑会社の国際的な競力︒を強化するためにも︑会ま 54

 

2

中国会社法における取締役の会社に対する責任の沿革   二〇〇五年の中国会社法改正にあたり︑取締役の責任に関する制度は抜本的な整理が行われたといえる︒二〇〇五年

以前の中国会社法︵以下﹁旧会社法﹂という︶においては︑取締役の会社に対する責任は︑有限責任会社と株式会社を区別して規定されていたほか︑一般条項と個別の規定に分かれていた︒旧会社法の中の一般条項は︑取締役が法令・定

款に違反し会社に損害を与えた場合には会社に対し損害賠償責任を負うと規定していた︵法令・定款違反責任

︶︒旧会 55

  (二二七九)

(13)

取締役の会社に対する責任の追及一六四同志社法学 六一巻七号

社法における個別の規定としては︑①取締役の会社資金の流用に関する行為の禁止︵旧会社法六〇条一項︶︑②取締役

が会社財産を用いて株主または他人の債務を保証する行為の禁止︵同条三項︶︑③取締役の競業取引の禁止︵旧会社法六一条一項︶︑および④取締役が定款の規定または株主総会の承認を受けずに会社と取引をする行為の禁止︵旧会社法

六一条二項︶があった︒

  二〇〇五年の中国会社法改正により︑有限責任会社と株式会社の取締役の責任の規定が統合され︑新設された第六章

﹁取締役︑監査役︑高級管理人の資格と義務﹂の中に規定されることになった︒取締役の会社に対する責任の一般条項については︑旧会社法の規定がそのまま引き継がれている︵中国会社法一五〇条︶︒取締役の責任に関する旧会社法の

個別の規定は︑①が新会社法一四九条一項

56

︒条るいてれさ合統に中の文

1

五︑︑②が同項三号︑③が同項じ同れ号さ定規に号六号同が④てしそ︑項   また︑忠実義務などの違反により取締役が得た利益については︑旧会社法のもとでは③の場合にのみ︑取締役が得た利益を会社に帰属させる︵旧会社法六一条一項︶ものであったのに対し︑新会社法のもとでは︑③だけでなく︑①②④

についても不法行為により取締役の得た利益は会社に帰属すべきと明文で規定されている︵中国会社法一四九条二項︶︒

 

3

中国会社法における取締役の責任の類型   会社とその取締役との関係については︑日本会社法三三〇条で﹁株式会社と役員及び会計監査人との関係は︑委任に

関する規定に従う﹂と規定されていることとは異なり︑中国会社法においては︑会社と取締役との間にどのような関係があるのかは明文では規定されていない︒学説上︑会社とその取締役との関係は委任関係であると一般的に解されてい

おは取締役の義務について︑の取締役は法律・行政法規︑の明も社と取締役との関係は確︒には規定されていない会 57

  (二二八〇)

(14)

取締役の会社に対する責任の追及一六五同志社法学 六一巻七号 よび定款を遵守し︑会社に対して忠実義務および勤勉義務を負うとしている︵中国会社法一四八条一項︶︒

  ここにいう忠実義務の内容は︑受託者である取締役がその地位を利用し会社の利益の犠牲において自己または第三者 の利益を図ってはならないというものであると解されている

︒取締役はその関連関係 58

︶︒負与えた場合には損害賠償責任をう害国条一二法社会中と︵るいてれさを損えこにはならず︑てれ違反して会社に て位を利用し害会社に損を与の地 59

この条文は二〇〇五年の中国会社法改正によって新設されたものであり︑取締役の忠実義務に違反する行為に対する責任と解されている

て止を執行するときに禁さ職れる行為が規定され務が四役た︑中国会社法一九︒条一項には︑取締ま 60

いる︒同項一号から七号は︑具体的に禁止される行為が列挙され︑取締役の会社に対する責任の具体的な責任事由を明確にしている︒それらの具体的な責任事由に対し︑同項八号は﹁忠実義務に違反するその他の行為﹂と規定し︑これは

包括規定︵一般条項︶だと考えられている︒

  中国会社法一四九条一項一号から七号における取締役の具体的な不正行為および同項八号の一般的な忠実義務違反行

為は︑その特殊な地位を利用したものである︒この不正行為により取締役の得た利益を会社に帰属させる︵中国会社法一四九条二項︶︒また︑この不正行為により会社に損害が生じた場合には︑中国会社法二一条がこの損害賠償責任を追

及する根拠規定となると考える︒しかし︑利益相反取引または競業取引により会社に直接の損害がない場合には︑会社

の取引先の減少︑企業秘密の漏洩などの間接損害の算定が困難となろう︒その場合には︑当該不正行為により会社に生じた損害とは何なのかが問題となる︒中国会社法一四九条二項は取締役が不正行為により得た利益は会社に返還させる

と規定しているが︑こうした利益は会社の損害として認定されるか否かについて疑問もある︒

  また︑中国会社法一五〇条は︑会社の取締役は︑その職務を執行するにあたり︑法令または定款に違反したことによ

り会社に損害を与えた場合には︑会社に対して損害賠償責任を負うと規定している︒これは法令または定款に違反した

  (二二八一)

(15)

取締役の会社に対する責任の追及一六六同志社法学 六一巻七号

取締役の会社に対する責任である︒また︑ここにいう法令の範囲については︑全ての法令を含むと考えられている

61

 

4

取締役の会社に対する責任の性質と立証責任   中国会社法の中で︑取締役の会社に対する責任は︑忠実義務違反の責任と法令・定款違反の責任が規定されているが︑この二つの責任が過失責任かまたは無過失責任かについては条文からは明らかではない︒学説上は︑取締役の会社に対 する責任は過失責任を原則とし︑無過失責任を例外とすべきという主張

過べ失推定原則に従うきという主張もある は任締責るのに対し︑取役がの会社に対するあ 62

わ証かったことを明がする責任を負な実は︒失過に役締取︑事則原定推失過 63

せるものである︒過失推定原則によると︑取締役の責任を追及する側が取締役の行為により損害が発生したことを証明すれば足り︑取締役は過失がなかったことを証明しなければ︑責任を免れることができない︒しかし︑取締役の会社に

対する責任の責任事由は多様化しており︑責任事由により︑会社の利益を害する危険の程度には差異があるから︑一律過失推定原則を採用することについては議論の余地があろう︒

  中国会社法においては︑取締役の責任追及に関する立証責任が規定されていない︒また︑責任を免れようとする取締役にどのような立証責任が課されるかについても規定されてない︒実務上︑取締役の責任を追及する側は︑①取締役が

忠実義務に違反したこと︑または法令・定款に違反したこと︑②会社の損害は取締役の行為と因果関係があること︑および③会社の損害の金額︑などを証明しなければならない︒免責のためには︑取締役は自分の行為と会社の損害との間

に因果関係がないことを証明しなければならない︒

  (二二八二)

(16)

取締役の会社に対する責任の追及一六七同志社法学 六一巻七号 ︵三︶小括   上述したように︑中国会社法において取締役の会社に対する責任は︑忠実義務違反の責任と法令・定款違反の責任とに分かれている︒中国法における取締役の会社に対する責任は日本の会社法制定前の商法の規定と類似しているが︑取

締役の利益相反取引責任と競業取引責任について︑異なる点がある︒中国においては︑利益相反取引または競業取引を行った取締役が︑株主総会の承認を受けなかった場合には︑こうした取引によって得た利益を会社に帰属させると規定

している︒一方︑株主総会の承認を受けた場合には︑取締役が利益相反取引または競業取引によって得た利益を︑会社に帰属させる必要はないと考えられる︒しかし︑株主総会の承認を受けた利益相反取引または競業取引によって会社に

損害が生じたときに︑当該取引を行った取締役が損害賠償責任を負うか否かは明らかではない︒

  日本では会社の株式所有が分散しているのに対し︑中国においては︑会社の株式所有は比較的集中している︒この状

況のもとでは︑取締役︵特に支配株主である取締役︶は︑自分または第三者の利益を追求するために︑株主総会をコントロールすることによって利益相反取引または競業取引を行うおそれが高くなるだろう︒したがって︑利益相反取引ま

たは競業取引の危険性に鑑みると︑利益相反取引または競業取引を行った取締役には厳格な責任を課すべきである︒すなわち︑株主総会の承認の有無にかかわらず︑利益相反取引または競業取引を行った取締役は︑当該行為により会社に

損害が生じた場合に損害賠償責任を負うことを明確に規定すべきである︒

  また︑取締役の会社に対する責任が過失責任かまたは無過失責任かについて︑各責任事由が異なるので︑一律に過失

責任または無過失責任にするのは︑妥当ではないだろう︒会社の利益の保護と取締役の経営権の保障とのバランスをとるために︑日本の立法を参考にして︑取締役の会社に対する責任は原則として過失責任とする一方で︑利益相反取引責

任および競業取引責任は例外的に無過失責任にすべきである︒

  (二二八三)

(17)

取締役の会社に対する責任の追及一六八同志社法学 六一巻七号

二  株主代表訴訟制度の枠組   取締役の会社に対する責任を追及するか否かの判断は︑本来会社に委ねるべきであるが︑取締役と会社との間の特殊

な関係により︑会社が取締役の責任を追及せず︑会社ひいては株主の利益を害するおそれがある︒その場合には︑株主が訴えを提起することが会社の利益の保護のための重要な手段となる︒そこで︑二〇〇五年に株主権を強化するために︑

株主代表訴訟制度が中国会社法に導入された︒以下では︑中日両国における株主代表訴訟制度を検討・比較したうえで︑中国の株主代表訴訟制度の問題を検討する︒

︵一︶日本法

  日本では︑株主の権利を強化するため一九五〇年の商法改正によって︑単独株主権として株主代表訴訟制度が導入された︒一九九三年に株主代表訴訟の手数料が一律八二〇〇円に改正された

表た急は数件の訟訴代し主株︑果結のそ︒増 64

65

経済界は株主代表訴訟の﹁濫用﹂や﹁脅威﹂を指摘し︑二〇〇一年に株主代表訴訟に関する和解や会社の被告取締役側への補助参加などの訴訟上の手続整備が行われた︒二〇〇五年の会社法制定にあたり︑原告株主の適格および︑不提訴

理由の通知の導入等につき︑株主代表訴訟制度が修正された︒以下では︑日本の株主代表訴訟制度の沿革を検討する︒

 

1

原告適格

  求請訴提主株のてしと権主数株少

前正改法商年〇五九一権   一九五〇年の商法改正前は︑日本商法はドイツ法の強い影響下にあり︑取締役等の責任追及について株主の単独提訴

  (二二八四)

(18)

取締役の会社に対する責任の追及一六九同志社法学 六一巻七号 権を認めず︑ドイツ法と同様に基本的に少数株主権としての提訴請求権を認めるだけであった

66

  ドイツ商法を手本とした一八九九年商法では︑株主総会が取締役に対する訴えの提起を決議したときまたは株主総会

がそれを否決した場合に資本の一〇分の一以上に当たる株式を有する少数株主が取締役に対する訴えの提起を監査役に請求したときは︑会社は右の決議または請求の日から一ヵ月以内に訴えを提起しなければならないとされていた︵一八

九九年商法一七八条

︑のき続引りよ前月ヵ三日本会の会総主株が主株資のき有れさ定限に主株るすを一式株るた当に上以%〇るで使行を権 は求請訴提の主株︑内で正権法商の年八三九改容のか求請訴提︑がたっな︶︒らわ変どんとほは一 67

また提訴請求は株主総会の会日から三ヵ月以内になされることを要することとされた︵一九三八年商法二六八条一項二項︶︒

  一九五〇年の改正前の商法において認められていたのは︑一定の要件を満たす少数株主が会社への提訴を請求することのみであり︑株主自らの名で取締役の責任を追及する訴えを提起することはできなかった︒

  導の権起提訟訴表代のてしと主権株独単

正改法商年〇五九一入   一九五〇年の商法改正の当時は︑GHQ︵連合国軍最高司令官総司令部︶による占領期であり︑GHQの思惑が大き

く商法改正に影響した︒GHQは︑当時の日本における少数株主保護法制の不備がアメリカからの投資の障害となることを危惧していたので︑株式会社の株主権の強化および外国会社に関する規定の整備を本改正の大きな目的としてい

た︒そこで︑株主権の強化の一環として︑取締役の責任が明確化され︑単独株主が会社のために取締役の責任追及の訴えを提起できるアメリカ型の株主代表訴訟制度が導入された

68

  日本の株式会社を民主化することおよび株主の地位を強化することというGHQの商法改正の狙い

に沿った形で︑取 69

  (二二八五)

(19)

取締役の会社に対する責任の追及一七〇同志社法学 六一巻七号

締役等の責任追及を会社に対して請求するには︑改正前の一〇%以上に当たる株式を有しなければならないという要件

が削除され︑一株でも株式を有する株主は会社に対し提訴請求ができるようになった︒すなわち︑株主の提訴請求権は︑単独株主権となった︒原告適格および提訴前の手続につき︑六ヵ月前より引続き株式を有する株主が会社に対し取締役

の責任を追及する訴えを提起することを書面で請求し︑会社がその請求の日から三〇日以内に訴えを提起しない場合︑当該株主は会社のために訴えを提起することができることとされた︵一九五〇年商法二六七条一項二項︶︒例外として︑

三〇日の期間の経過により︑会社に回復することができない損害が生じるおそれがある場合には︑当該株主はその三〇日の経過を待つことなく︑直ちに訴えを提起することが認められた︵一九五〇年商法二六七条三項︶︒株主権の強化に

ついては︑﹁会社荒し﹂などによる代表訴訟の濫用の恐れを理由として︑激しい批判が加えられた

70

  二〇〇五年の会社法制定による原告適格の修正は︑主に株主代表訴訟の係属中に会社の組織再編行為によって原告株

主の地位に変動が生じた場合において︑原告適格が継続するかどうかについてのものである︒会社法制定前の商法においては︑株式交換・株式移転により原告は完全子会社となる会社の株主でなくなることを理由に原告適格を喪失すると

いう解釈が下級審裁判例での支配的立場となった

八場訴該当︑はに合るのなと主株の社会親訟原完こ法社会︵たしととる告め認を続継の格適全が株告原の訟訴表代主主 式社︑はで法に会︑てし対式れ株移交換・株︒転により係属中の株そ 71

五一条一項一号︶︒

  この改正の理由については︑①任意に株主資格を放棄したわけではない原告株主にとって酷であること︑②被告・会 社側の制度濫用の危険があること︑および③原告株主は依然として完全親会社の株主として完全子会社に対する利害関係が継続していることとされている

72

  また︑旧商法には︑株主代表訴訟の提起を制限する規定はなかった

者当三第はくしも主株該がえ訴︑はで法社会︑が 73

  (二二八六)

(20)

取締役の会社に対する責任の追及一七一同志社法学 六一巻七号 の不正な利益を図り︑または会社に損害を加えることを目的とする場合には︑株主は提訴請求をすることができないとしている︵会社法八四七条一項但書︶︒この規定は株式会社の保護の観点から新設されたものであると解されている

74

 

2

株主代表訴訟により追及できる取締役の責任の範囲   株主代表訴訟により追及できる取締役の責任の範囲について︑一九五〇年改正商法二六七条は︑﹁取締役の責任﹂と規定するにとどまっていたが︑これをどのように解するかという問題が学説上議論されていた︒

  株主代表訴訟により取締役の責任を追及できる範囲については︑学説上︑多数説である全債務説と少数説である限定債務説に分かれている︒取締役が取引上の債務を含む会社に対して負担する一切の債務とする全債務説

に対し︑限定債 75

務説は︑旧商法二六六条の取締役の損害賠償責任および旧商法二八〇条ノ一三の取締役の資本充実責任に限られるとする

76

  全債務説の理論上の根拠は︑①取締役と監査役との間または取締役相互間の特殊な関係に基づく会社の提訴懈怠の可能性は︑発生原因に関わらず一切の債務について存在すること︑②全債務説を採らないと︑会社から金銭の貸付を受け

た取締役が弁済を怠った場合に︑会社を代表してその貸付をした代表取締役及びその貸付に賛成した取締役の未弁済額

の弁済責任については代表訴訟が認められるのに︑貸付を受けた取締役の弁済義務についてはこれが認められないことになって著しく権衡を失すること︑③一九五〇年の商法改正後の商法二六六条一項五号にいう﹁法令﹂の中には取締役

の一般的な忠実義務ないし善管注意義務を定める規定も含まれると解されること︑④一九五〇年の商法改正後の商法二六七条は︑ただ﹁取締役の責任﹂としており︑その範囲を制限する規定上の根拠がないことなどが挙げられている

77

  限定債務説の理論上の根拠は︑①会社に自ら提訴するかどうかの裁量権を認めていない商法の下で︑取締役が会社に

  (二二八七)

(21)

取締役の会社に対する責任の追及一七二同志社法学 六一巻七号

対して負担する一切の債務を含めることは︑株主の代表訴訟を広く認めすぎることになり不都合であること︑②提訴懈

怠の可能性は支配株主等に対する関係においてもありうるのであって︑代表訴訟の立法趣旨は提訴懈怠の可能性だけでは十分に説明できないこと︑③広く代表訴訟を認めることは会社荒しを容易にすることになることとされている

78

 

3

提訴前の手続   一九五〇年改正商法は︑六ヵ月前より引続き株式を保有する株主が株主代表訴訟を提起するには︑原則として︑会社に対し書面で取締役の責任を追及する訴えの提起を請求しなければならないとしていた︵一九五〇年商法二六七条一

項︶︒当時は︑株主が会社に請求するには︑書面が唯一の方式であったが︑二〇〇一年一一月の商法改正によって︑株主総会のIT化に伴い︑会社への請求は︑書面だけでなくその他の省令で定められた方法で提起することができること

とされた︒

  株主からの提訴請求を受けた会社が提訴するかどうかを決める﹁考慮期間﹂については︑三〇日とされていた︵一九 五〇年商法二六七条二項︶︒三〇日では会社が訴訟を提起するか否かの判断をするには短すぎるという意見があった

役否に︑提訴すべきかか査を慎重に判断させめ監たかにそのため︑株主らたの提訴請求を受ける 79

︑二〇〇一年一二月の 80

商法改正では︑監査役の考慮期間は三〇日から六〇日に延長された︵同年改正商法二六七条三項︶︒

  二〇〇五年の会社法制定の際に︑会社には不提訴理由の通知が義務づけられた︵会社法八四七条四項︶︒それは︑提

訴請求をした株主が株式会社に対し調査の結果やそれを前提として訴えを提起しないこととした株主会社の判断プロセスの開示を請求することを認めることにより︑役員間の馴れ合いで提訴しないような事態が生じないように牽制すると

ともに︑株主が株主代表訴訟を遂行する上で必要な訴訟資料を収集することを可能にする趣旨の規定である

81

  (二二八八)

(22)

取締役の会社に対する責任の追及一七三同志社法学 六一巻七号

 

4

裁判所への手数料   一九五〇年に株主代表訴訟制度が導入されて以降︑代表訴訟を提起する際の手数料は財産権上の請求として算定され

るかまたは算定不能とみなして財産権上の請求でない請求として算定されるかについて明文の規定がなかった︒実際には財産権上の請求として手数料を算定することを採用した裁判所が多く︑その場合︑株主の請求額が高ければ株主の納

める手数料も高くなった

82

  当時︑株主代表訴訟制度の問題点とりわけ制度の濫用に対する無防備さについて議論があったが

︑株主代表訴訟の実 83

態について︑株主代表訴訟が濫用されていないというよりは濫用も活用もされていないのではないかということ︑および問題とすべきは︑﹁濫用の危険﹂があるかどうか︑それにどう対処すべきかということではなく︑代表訴訟が活用さ

れていないのは何故か︑それが活用されるようにするためにはどのような対策を講じるべきかということではないかという指摘があった

問︑の無担保の債務保証飛巨ばしや使途不明金の額︑代題方で︑一九九〇年初︒めに︑損失補填問他 84

題等の不祥事が続発していたので︑取締役等に対する監督制度が十分に機能していないという指摘もあった

か事上げられた会社法の見直し項取の一つとして︑アメリカ側りてたい九九〇年に始まっい︑わゆる日米構造協議にお ︒一︑たま 85

ら株主代表訴訟制度を改善すべきという問題が提起された

86

  このような背景のもと︑株主代表訴訟制度の利用状況の改善と効率化のための商法改正案が一九九三年六月に成立し︑同年一〇月一日より施行された︒ここで注目すべきは︑株主代表訴訟にかかる手数料が︑﹁財産権上の請求でない﹂

請求として算定されることが明記されたことである︒つまり︑民事訴訟費用等に関する法律四条二項により︑代表訴訟を提起するための手数料は︑一律八二〇〇円︵二〇〇三年以降一三〇〇〇円になった︶とされた︒そのため︑株主代表

訴訟は著しく増加した︒数百億円︑さらに一〇〇〇億円を超える損害賠償を請求する株主代表訴訟が提起されるように

  (二二八九)

(23)

取締役の会社に対する責任の追及一七四同志社法学 六一巻七号

なるなど︑請求額の高額化が指摘されていた

87

 

5

担保提供制度   一九五〇年の商法改正前は︑少数株主の提訴請求権の濫用を防止するために︑資本の一〇%以上の株式を有する株主が取締役に対する訴えの提起を監査役に請求でき︑監査役の請求があれば当該株主は相当の担保を提供しなければなら ないとしていた︵一九三八年商法二六八条二項三項︶︒そのほか︑会社が敗訴したときに提訴請求をした株主は会社に対してのみ損害賠償責任を負うと解されていた

88

  一九五〇年の商法改正によって︑株主の権利が強化されたことにより︑株主代表訴訟の濫用の可能性が増大する恐れがあったので︑日本側は一九五〇年改正前の商法中の担保提供制度の規定を復活させることを望んだが︑GHQの担当

者はそれでは無資力の少数株主の提訴が不可能になるとして︑被告が悪意を疎明したときに限り担保提供を命じ得るという妥協案を出し︑それが一九五一年に成立した﹁商法の一部を改正する法律の一部を改正する法律﹂︵一九五一年法

律二〇九号︶を通じて実現した

担た権を償保するめ請と解されている求 っ賠のていつに害損た被にがの制度の趣旨は濫訴防止あ︒り︑不当訴訟によって被告こ 89

正一と比較して︑九制五一年の商法改度供商︒保担の前正改法提の年〇五九一 90

により採用された担保提供制度は︑被告である取締役等からの請求が必要であるほか︑被告である取締役等が原告の﹁悪意﹂を疎明することを要件としている︵一九五一年商法二六七条四項五項︶︒

  この﹁悪意﹂の意味について︑学説上争いがある︒悪意説は︑原告株主が被告取締役を害することを知っていることと解する

明はうとする意図︑あるい加せ害意思についてまで疎よらよ困の説は︑被告を害しう︒とする意図や被告をこ 91

を要求するのは不適当であるとする︒それに対して︑害意説は︑単に被告取締役を害することを知ってなしただけでは

  (二二九〇)

(24)

取締役の会社に対する責任の追及一七五同志社法学 六一巻七号 足りず︑不当に被告を害する意思︵加害意思︶を有していることを要するとする説である

言意のである︒さらに︑第三説は悪説るおよび害意説と異なり︑ここにもす﹁義めのと意﹂の意悪を格にとらえよう厳 保の説は担す提供を課た︒こ 92

う﹁悪意﹂とは︑原告は被告取締役が会社に対し責任を負うべき理由がないことを知りながら︑または嫌がらせなど不当な目的で訴えることとする

93

  一方︑裁判例をみると︑﹁東海銀行担保提供申立事件

提責をとこいなの任きりべう負てし対に行知ながすてっもを図意る害がを人立申ら専︑ら銀︶被︵人立申るあで役締告 申屋は裁地お古名︑てい悪﹁立意とは︑被﹂人︵原告︶が取に 94

起した訴えであることが必要である﹂と判示した上で︑原告株主がこのような意図をもって訴訟を提起したものではないとして担保提供の申立てを却下した︒本判決においては害意説が採用された︒それに対して︑﹁蛇の目ミシン工業担

保提供申立事件

顕容いなが性能可るれさ認合が求請り限いなし更変場︑いみきべす測予とい低が込請見の証立の実事因原求はる充補あ 部告要重の因原求請︶は原﹁︵裁地京東︑ていおな分﹂っに幅大を張主︑てあにが点の当失体自張主に 95

著な事由がある場合︑あるいは被告の抗弁が成立して請求が棄却される蓋然性が高い場合等に︑そうした事情を認識しつつ訴えを提起したものと認められるときは︑悪意に基づく提訴として担保提供を命じうる﹂と判示し︑担保提供の決

定を出した︒本決定は︑悪意説を採用したものである︒一方︑﹁ミドリ十字株主代表訴訟担保提供申立事件抗告審

﹂に 96

おいて大阪高裁は︑﹁株主の悪意とは︑株主が株主代表訴訟を提起することが︑不法行為に当たるもののうち︑それを知りつつ提訴した悪意をいう︒すなわち︑代表訴訟の提起が不法行為となる場合のうち︑過失によるものを除き︑故意

による悪質な訴権濫用に当たるものだけを取上げ︑担保提供の対象としたものである﹂と判示し︑担保提供の申立を却下した︒本決定では︑過失による提訴を排除し︑悪意の認定基準について﹁蛇の目ミシン工業担保提供申立決定﹂より

も︑より厳格に解している

97

  (二二九一)

(25)

取締役の会社に対する責任の追及一七六同志社法学 六一巻七号

  また︑学説では︑﹁悪意﹂とは︑①提訴株主の請求に理由がなく︑かつ同人がそのことを知って提訴した場合︑②提 訴株主が不法不当な利益を得ようとして提訴した場合と解する見解が有力である

等る︑もとっも︒い社てれが継き引会法まで及追任責︑﹁は書八但項一条七四まのにのそは︑商法代時担保提供制度が 年お︑二〇〇五法に成立した会社︒な 98

の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合﹂︑株主は提訴請求をすることができないとしている︒被告である﹁役員の保護﹂のための制度としての担保提供制度に対し︑

この規定は会社に損害を加えることを目的とする場合に提訴請求を不適法とするもので︑当該﹁会社の保護﹂を目的とする

99

 

6

他の株主および会社の訴訟参加   一九五〇年の商法改正により︑株主または会社は︑係属中の株主代表訴訟に参加することができるようになった︒しかし︑不当に訴訟を遅延させまたは裁判所の負担を著しく増加させる場合には︑訴訟参加が認められない場合があった

︵一九五〇年商法二六八条二項︶︒取締役の責任を追及する訴えについて︑他の株主または会社の訴訟参加を認める趣旨は︑馴合訴訟を防止することにあると解されていた

100

  係属中の株主代表訴訟に参加し得る株主は︑六カ月前から引続き株式を有する株主だけでなく︑保有期間が六ヵ月未満の株主も参加することができる︒即ち︑すべての株主が︑係属中の株主代表訴訟に参加することができる︒この点に ついて︑会社荒しの危険はあまりないので

しお加参訟訴︑はていに︑本日︒るいてれかは補が参と者事当︑と﹂加助助補﹁のてしと人加参分解︑上説学︑はて見 の起はと面場の訴提の訟な表代主異株る加いつに質性の参︒訟訴の主︑他株 101

ての﹁独立当事者参加﹂および﹁共同訴訟参加﹂という三つの形態がある︒株主の訴訟参加は︑当事者参加と解する通

  (二二九二)

(26)

取締役の会社に対する責任の追及一七七同志社法学 六一巻七号

的説解と加参助補訟る訴同共︑し対にす 102

もある︒ 103

  会社の訴訟参加の性質についても︑学説上︑見解が分かれている︒通説は︑会社が株主代表訴訟に参加して主張する 権利と原告株主の主張する権利が同じであること︑馴合訴訟を防止するためには強力な訴訟上の地位を認める必要があることなどを理由に︑会社は原告株主の共同訴訟人として参加するべきであると解している

︒それに対して︑共同訴訟 104

的補助参加説

︑補助参加説 105

および独立当事者参加説 106

者事力有が説加参る当あ立独︑がるあがで 107

108

  会社が被告側に補助参加できるかどうかについては︑二〇〇一年一二月の商法改正までに︑否定説と肯定説とで盛ん に議論されていたが

役を社会︑がだい継き引れ被こも法社会︶︒項八条の告六断査監︑にめたるせさ判側に重慎を加参助補のへ八二商年法 の査に件条を意同の役り監よに正改法商の年会被社め一〇〇二︵たれら認︑が加参助補のへ側告同 109

の全員の同意を得なければならないと規定されている︵会社法八四九条二項︶︒こうした立法には︑①監査役全員による同意という要件をもって︑会社の被告取締役側への補助参加の公正性を担保できるか疑問であるということに加え︑

②会社の被告取締側への補助参加の結果︑原告株主と被告取締役との間には著しく情報の不均衡が生じるという問題があると指摘されている

110

  会社の訴訟参加の機会を保障するために︑二〇〇一年の商法改正により︑原告株主は会社に訴訟告知をしなければな

らないと規定された︵二〇〇一年商法二六八条三項︶︒この訴訟告知は︑判決の効力が会社に及ぶことを前提として︑会社に自己の利益を守るために訴訟参加をする機会を与え︑敗訴した場合に原告株主が会社から責任を追及されないよ

うにしておくという機能がある

︶︒当主株の他を訟訴該て知っよに知通はたま告にらく一項四条八六二法商年〇せ〇二︵たしととこる公な滞遅は社会 参保確の会機の加め訟訴の主株の他︑たのにたこたけ受を知告の︑︒りよに正改同︑ま 111

会社法では︑会社への訴訟告知および株主への公告・通知の制度が引き継がれている︵会社法八四九条三項四項︶︒

  (二二九三)

(27)

取締役の会社に対する責任の追及一七八同志社法学 六一巻七号

 

7

訴訟上の和解   一九五〇年に株主代表訴訟制度を導入したときには︑原告である株主が︑被告取締役と和解できるかどうかが当時の商法には規定されていなかった︒株主代表訴訟係属中の原告株主と被告取締役との和解について︑学説上は︑会社の関 与なしに自由に和解をなし得るとする肯定説

はとるすといなきで説こ定るす解和に由自と否 112

に分かれていた︒ 113

  実際には︑紛争を迅速かつ適切に解決するために︑代表訴訟上の和解が行われていたが︑この効力については解釈上 の疑義があった

知︑解和の上訟訴が社会に当めたるす慮配に益利のの事株社通を容内の解和し対に会者が所判裁︑合場いなで主の他び 締告被と主株告原︑りによ正改法商の年一〇〇取役︒規よお社会︒たれさ定で等文明とるきで解和は二 114

し︑かつ︑会社はその和解に異議があれば二週間以内にこれを述べるよう催告することを要するものとされた︵二〇〇一年商法二六八条六項︶︒和解通知および催告は︑監査役が会社を代表してこれを受けるとされた︵二〇〇一年商法二

七五条ノ四︶︒また︑会社が上記の催告期間内に︑書面をもって異議を述べなかった場合は︑上記通知の内容をもって会社が和解することを承認したものとみなすとされた︵二〇〇一年商法二六八条七項︶︒

  二〇〇五年に成立した会社法は︑和解に関する規定について︑会社法八五〇条に旧商法の規定を受け継いでいる︒

︵二︶中国法

  二〇〇五年の中国会社法改正により︑株主の権利を強化するために︑株主代表訴訟制度が導入された︵中国会社法一

五二条

︒訴るす討検ていつに度制訟表代主株の国中︑はで下以︶︒ 115

  (二二九四)

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