範型と多様性の探究 : 井筒俊彦の言語文化論の射程

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範型と多様性の探究:

井筒俊彦の言語文化論の射程

小 野 純 一

1 はじめに  井筒俊彦(1914-1993)は,東洋諸宗教思想の研究者であり,独自の哲学的 プロジェクトを遂行した哲学者である。彼の東洋宗教思想の研究は,実証研 究を超え,言語文化一般の理解,さらには人間知性の検証を射程に据える。 彼は,言語文化研究から東洋の諸思想研究に取り掛かり,そこから,普遍的 な次元へと考察を転じた。彼は思想を言語文化形成の基礎的要素の一つとみ なし,考えること,考えたことが言語化され,文化が形成されるという観点 から,人間知性や認知の仕組み一般にまで考察を進める。井筒は,多様な言 語文化的枠組みを超えて人間の認識を成り立たせる認識と思考の型を構造的 に分析し,そのような型を設定の基準と連関性に従って組み直すことで,普 遍性を探求する。  井筒の理論的探求がいかなる意義を持つのか検討することは,言語思想文 化の研究はいかなる理念を持つべきかという方法論的考察に直結する。井筒 は言語文化の理論として意味論を提唱した。これを再検討し,井筒の最も重 要な側面とみなす研究者たちもいる1。文化人類学では合衆国で指導的立場 にあったクリフォード・ギアツ(Clifford Geertz;1926-2006)が井筒の意味 論を取り上げており,イスラーム研究を超えて注目される2。 1 Thoha 2010.

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文献

Tilman Borsche, Sprachansichten. Der Begriff der menschlichen Rede in der Sprachphilosophie Wilhelm von Humboldts, Stuttgart: Klett-Cotta, 1981. Wilhelm von Humboldt, On Language: On the Diversity of Human Language

Construction and its Influence on the Mental Development of the Human Species, edited by Michael Losonsky, translated by Peter Heath, Cambridge: Cambridge University Press, 1999.

井筒俊彦『意識と本質』岩波書店,1983 年。 同『意味の深みへ』岩波書店,1985 年。 同『神秘哲学』『井筒俊彦著作集』第一巻,中央公論社,1991 年。 同『意味の構造:コーランにおける宗教道徳概念の分析』『井筒俊彦著作集』 第四巻,牧野信也訳,中央公論社,1992 年。 同「東洋思想」木田元他編『コンサイス20 世紀思想事典 第 2 版』三省堂, 1997 年,64-74 頁。

Immanuel Kant, Kritik der Urteilskraft, die Werke Immanuel Kants in der Ausgabe von Wilhelm Wischedel, Band X, Frankfurt am Main: Suhrkamp, 1974.

Hans-Werber Scharf, Das Verfahren der Sprache: Humboldt gegen Chomsky, Paderborn: Ferdinand Schöningh, 1994.

Richard A. Shweder and Byron Good (Eds.), Clifford Geertz by His Colleagues, Chicago and London : University of Chicago Press, 2005, p.99.

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参照

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