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RNA部位特異的な修飾能をもつ人工核酸の創製と核酸 構造および機能制御への応用
菊田, 健司
http://hdl.handle.net/2324/2236162
出版情報:九州大学, 2018, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン:
権利関係:やむを得ない事由により本文ファイル非公開 (3)
氏名 菊田健司
論文名 RNA部位特異的な修飾能をもつ人工核酸の創製と 核酸構造および機能制御へ の応用
論文調査委員 主査 九州大学 教 授 佐々木 茂貴 副査 九州大学 教 授 王子田 彰夫 副査 九州大学 准教授 谷口 陽祐 副査 九州大学 講 師 森本 浩之
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
DNAやRNAなどの核酸塩基の化学修飾は遺伝子の発現を精密に制御している。修飾部位が核酸 塩基の認識に直接的に干渉するため、核酸塩基の化学修飾法はその構造・機能解析に加え遺伝子発 現を制御する画期的な医薬品やバイオツールに展開できる。本研究の目的は RNA の核酸塩基を部 位特異的に化学修飾可能な人工核酸の創製である。その特色は人工核酸を含むオリゴ核酸と相補的 な RNA の二本鎖形成によって反応点と標的塩基を選択的に近接させる点である。従来の遺伝子発 現の促進や抑制に加えmRNAの化学修飾によってコドン情報を編集することを狙う。
1. 化学活性化能をもつ架橋形成核酸の開発
既に4-ビニルチミジン(T-vinyl)が開発され、相補的なウラシルあるいはその隣接するアデニン
と化学架橋(クロスリンク)を形成することが見出された。しかし T-vinyl は不安定であり細胞応 用は困難であった。そこで安定性と反応性を満たすために T-vinyl を基に誘起反応性をもつ架橋形 成核酸を設計した(Fig. 1)。T-vinylのビニル基をチオールで保護し、スルフィド保護基による安定 性の向上とチオールの
β
脱離反応による活性化を狙った。種々のスルフィド誘導体を含むオリゴ核 酸を合成しmRNAに対する反応を検討した結果、チオピリミジン誘導体(S-Pym)がT-vinylに比 べ高収率に反応した。S-Pym保護基によってT-vinylの失活が抑制されたためだと考えられる。2. 鎖内クロスリンクによる
i
-motifの安定化i
-motifはシトシン豊富な配列で形成される四本鎖構造であり、その細胞内形成が2018年に初めて確認された。しかし
i
-motif は中性緩衝液中で不安定であり、その結合分子の探索や開発は 困難である。そこで鎖内クロスリンクの形成によってi
-motif 構造を安定化させることを検証し た(Fig. 2)。その結果、架橋型では天然型に比べ、より中性条件でi
-motif の形成が示された。熱力学的解析を行い、鎖内クロスリンクによる
i
-motif 安定化の要因はエントロピー変化の減少 であることを明らかにした。i
-motifを中性条件で安定化できたことは生理的条件で結合する分子 の開発に繋がると考えている。安定性 の向上
クロスリンクi-motif
N N
N N HN
O N
N
cc c c cc ccc
cc
C-C+塩基対 c
中性条件で不安定
O N
N N H H
DNA O
N N
N H H DNA
H
cc c c cc ccc
cc c
i-motif
Figure 2. 鎖内架橋の形成による
i
-motifの安定化 Figure 1. S-Pym体の活性化β脱離反応 活性化
O O HN N N N
O
T-vinyl
O O HN N
S-Pym Uracil
N N O
S N N H
3. 人工的なmRNA修飾による翻訳制御
mRNAの化学修飾が翻訳に及ぼす影響を非細胞系で評価した。まずクロスリンク修飾では発光タ ンパク質であるルシフェラーゼの発現を抑制し、短鎖タンパク質を産生させることを達成した(Fig.
3A)。さらにクロスリンク修飾はmRNAとアンチセンス鎖の二本鎖を安定化させる効果があり、そ の二本鎖でリボソームが停止することにより短鎖ペプチドが産生されることを見出した。一方、ア デニンとシトシンに対する官能基転移修飾が翻訳に及ぼす影響を調べた結果、完全長の天然ペプチ ドが産生された(Fig. 3B)。この結果から官能基転移修飾反応を核酸認識に影響しない RNA ラベ ル化法に応用できる可能性が示された。
4. 光誘起反応性をもつアセチル転移核酸の開発
シトシン部位特異的なアシル化法の確立を目指し、光誘起反応性をもつアセチル転移核酸の開 発を検討した。
N
4-アシルシトシンの脱アミノ化によってウラシルが生成するため、シトシンのア シル化法はRNA修飾技術ならびに塩基編集技術になり得る。そこでN
-アシル-7-ニトロインドリ ンによるアミンの光アシル化反応に着目し、N
-アセチル-7-ニトロインドリンを塩基部位にもつ人 工核酸によるRNA中のシトシンアミノ基部位特異的な光アセチル化反応を設計した(Fig. 4)。まずインドリン 5位と糖部 1’位を結合させたヌクレオシド誘導体(5位カップリング体)をオリ ゴ核酸に組み込み、RNAに対する光反応を検討した。その結果、アセチル化RNAは得られなか ったが活性中間体の形成が示唆された。そこで近接効果の向上を目指し3位カップリング体と非 環状体を設計した(Fig. 5)。3位あ
あ カ ッ プ リ ン グ 体 の グ ア ニ ン 類 似 な配向性、非環状体の柔軟な配向性 に よ っ て 活 性 中 間 体 の ア セ チ ル 基 を シ ト シ ン ア ミ ノ 基 に 接 近 さ せ る ことを狙った。これら誘導体をそれ ぞれ含むオリゴ核酸を合成し、RNA に対する光反応を検討した。その結 果、3 位カップリング体を用いてア セチル化 RNA が生成したことが示 唆された。
以上、本研究ではRNAの核酸塩基を部位特異的に化学修飾可能な人工核酸の設計と合成を行い、
人工的な化学修飾が核酸構造と機能に及ぼす影響を調べた。化学活性化能をもつ架橋形成核酸は安 定性と反応性を兼ね備えており、既存分子の課題を克服した画期的な分子である。クロスリンク修 飾を応用し、
i
-motif 構造の安定化に成功した。mRNA のクロスリンク修飾および官能基修飾が翻 訳に及ぼす影響を明らかにし、新たな知見を得ることができた。最後に核酸分子の塩基認識能と化 学反応を組み合わせてRNAの光アセチル化反応の設計と検討を行った。RNA塩基の部位特異的な アセチル化は世界的にも例が無く、独創的な反応になり得る。これらの機能性分子や実験結果は従 来見出されていないものであり、本研究は博士(創薬科学)の学位に値すると認める。Figure 4. シトシンに対する光アセチル化反応の設計
Figure 5. 光アセチル化を目指したインドリン誘導体
N4-Ac-rC 光活性化
部位特 異 的 アセチル化 O RNA
N N H2N N NO2
O
DNA
N N
DNA O RNA
N N H2N O O
O
HN NO2
DNA O RNA
N N NH O
rC 活性中間体
N NO2 O
O O O DNA
DNA 3位カップリング体 O
O O
N NO2 O
DNA DNA
5位カップリング体
N NO2 O
O DNA O DNA
O
非環 状 体 近接効果
の向上
Figure 3. (A) 翻訳を停止させるクロスリンク修飾 (B) 翻訳に影響しない官能基修飾
mRNA
Truncated peptide
N N ORN O O RNA
O N N
(A) (B)
Native peptide 翻訳
mRNA
N N
O HN
O N
N N HN
O N
N N