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国立歴史民俗博物館研究報告 第221集 2020年10月
朝鮮植民地期の
日本人漁業経営の実態と展開
かつて瀬戸内海沿岸や九州北部の日本漁民が朝鮮半島沿海地域に通漁し,移住した。このことを,
当時の日本人漁民側の視点から「朝鮮海出漁」ないし「韓海出漁」と呼んだ。日本漁民の移動は,
単に人の移動だけではなく,結果として日本漁民と朝鮮漁民との交流を生み,相互の漁業技術の移 転,文化の伝播を生じさせた。こうした背景には,植民地期の漁業経営の実態があるが,その内実 については,意外にもこれまでほとんど明らかにされてこなかった。
本研究では,香川県観音寺伊吹島と広島県坂町横浜の 2 漁村の出身漁民による朝鮮への通漁・移 住について,実証研究にもとづく事例を提示し,比較検討を行った。その結果,次の 4 つの結論に 至った。
第 1 に,朝鮮への通漁・移住後の漁具・漁法の変更,根拠地の移動を指標とした発展型モデルの 伊吹島と,継続型モデルの坂町横浜といった分類が可能であること。第 2 に,出身地を離れた植民 地期朝鮮においても,地縁者,血縁者の相互援助にもとづく漁業経営が行われていたこと。第 3 に,
網元等漁業経営者や関連業種の経営者等は朝鮮に移住・定住することが多かったが,出身地側から 季節的労働者として移動し,漁業や水産加工に従事する者も多かったことである。同時に,漁業根 拠地とした地域の朝鮮人住民を季節ごとに短期雇用していた。第 4 に,植民地期という不幸な時代 での生活者の事例ではあるが,日本と朝鮮相互の接触により文化や技術が移転,伝播し,相互に形 を変えて現在まで継承されている例として,漁業経営があげられることである。
【キーワード】通漁・移住,伊吹島,坂,漁業経営,朝鮮植民地期
【論文要旨】
磯本宏紀
ISOMOTO Hironori
はじめに
❶朝鮮への通漁・移住漁村の概況
❷香川県観音寺市伊吹島からの朝鮮への通漁・移住
❸広島県坂町横浜からの朝鮮への通漁・移住
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2地域出身者による朝鮮への通漁・移住形態の比較 おわりにStatus and Development of Japanese Fisheries Management During Korea’s Colonization Period:A Focus on the Fishermen of Kan-onji-City Ibuki-jima,
Kagawa Prefecture, and Saka-cho Yokohama, Hiroshima Prefecture
香川県観音寺市伊吹島,広島県坂町横浜出身の 漁業経営者を対象として