• 検索結果がありません。

経過時間の把握状況が長時間単純作業の成績と疲労度に与える影響

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "経過時間の把握状況が長時間単純作業の成績と疲労度に与える影響"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

経過時間の把握状況が長時間単純作業の成績と疲労度に与える影響

Effects of the Way of Understandings of Elapsed Time on Fatigue and Performance of Long-time Simple Task 1W143130-9 溝渕 光太郎 指導教員 渡邊 克巳 教授

MIZOBUCHI Kotaro Prof. WATANABE Katsumi

概要: 本実験は、長時間単純作業を行うに際し、経過時間の把握の可不可や方法がどのように疲労度や作業成績に影響 を及ぼすか明らかにする事を目的として行われた。そして、時間の観点から最も作業者にとって疲労蓄積を抑制し作業の 質を落とさない環境の構築・実現に向けた第一歩として本実験は行われた。そのために実験参加者は実験開始からの経過 時間が把握できない状況(notime)、カウントアップ形式で把握できる状況(up)、カウントダウン形式で把握できる状況

(down)の3条件下で、矢印の向きを素早く回答するビジランス課題をそれぞれ30分間行った。それぞれの条件下にお ける矢印の呈示から回答までの平均反応時間と質問紙調査に基づいた実験前後の疲労度の変化を主な従属変数とした。実 験参加者の性格特性や、実験序盤と実験終盤における反応時間の変化といった観点も交え、実験結果のメカニズムに対す る考察を行った。

キーワード:時間評価、疲労、ビジランス課題、課題成績、経過時間 Keywords:time perception, fatigue, vigilance task, performance, elapsed time

1. 実験背景

現代社会に生きる我々にとって、しばしば長時間単純作業は避 けられないものである。この際、疲労を感じ作業の出来も落ちて いくのは当然と言えるが、どのような作業環境であれば疲労を蓄 積させずに、また作業の質を落とさずに済むのだろうか。著者は、

自らの「あと何分かかるのか」「まだ終わらないのか」とつい時計 を見たり時間を気にしたりしてしまう経験から、時間評価に着目 し検討を行った。

時間評価については、経過時間を連続表示で把握できる方が離 散表示よりも小さくなる(岩村,2004)ことや、カウントダウン表 示で呈示された時間はカウントアップ表示のそれより小さくなる

(高橋ら,2014)ことが判明している。また、疲労の蓄積が作業成 績を低下させることはGelald(1989)を始めとして多くの研究で 確認されてきた。しかし、時間評価と疲労度及び作業成績の関連 についての研究は十分に行われていない。

2. 実験方法

本実験には、男性8名女性10名の大学生及び大学院生18名が 参加した(平均年齢21.4歳、SD=2.19)。実験参加者は3日間連

続で、notime条件、up条件、down条件下で図1に示すビジランス

課題を 30 分間行った。手掛かり刺激が呈示された直後に呈示さ れる矢印の向きを素早く回答するという試行を各条件下で 50

行ずつ行った。実験参加者はdown条件、up条件においては画面 左上にて実験開始からの経過時間を把握することが出来た。また、

試行間隔は10 s~60 sの中からランダムに選ばれた。実行不可能 な最長反応時間を100 ms、恣意的に反応を遅らせた最短反応時間

2000 msとして外れ値の選定を行った。

図1 ビジランス課題(up条件の例)

そして、実験開始前後に産業疲労研究会が公表している質問紙 による調査を行い、実験を通じてどれほど疲労したかをリッカー ト尺度の5件法による平均回答値の変化量から測定した。また、

実験全行程終了後、参考として実験参加者の性格特性を測定した。

3. 実験結果

疲労度について分散分析を行ったところ、有意な主効果が認め られた(F(2,34)=6.96, p<.01)。Holm法の多重比較により、notime 条件の疲労度が down 条件よりも有意に高いことが示された

(p<.05)。また、平均反応時間について分散分析を行ったところ、

(2)

有意な主効果が認められ(F(2,34)=3.94, p<.05)Holm法の多重比

較によりnotime条件の平均反応時間がdown条件よりも有意に長

いことが示された(p<.05)。これらの結果を図2に示す。

図2 疲労度と平均反応時間(エラーバーは標準誤差を表す)

次に、down 条件が疲労と作業成績に与える因果関係の順序を 検討する為に、各実験の50試行を序盤16試行と終盤16試行に 分けた。それぞれの平均反応時間を求め、この時間的要因との 2 要因分散分析を行った。その結果表示方法要因の主効果は有意で あり(F(2,34)=4.10, p<.05)時間的要因による主効果は有意傾向で あった(F(1,17)=3.09, p<0.1)が、交互作用は有意ではなかった

(F(1,17)=0.81, ns)。

最後に、性格分析に基づき実験参加者を「せっかち群」と「我 慢強い群」にグルーピングし、疲労度および平均反応時間につい て、最初の分散分析と同様に検定を行い、そののち性格要因と表 示方法要因による2要因分散分析を行った。その結果せっかち群 では平均反応時間において有意な主効果が認められ(F(2,16)=

8.86, p<.01)、Holm法の多重比較によりnotime条件の平均反応時

間が down 条件および up条件よりも有意に長いことが示された

(p<.05)。疲労度についても有意な主効果が認められ(F(2,16)=

4.52, p<.05)、notime条件の疲労度がdown条件よりも有意に大き

いことが示された(p<.05)。ところが、我慢強い群においては疲 労度について(F(2,16)=2.41, ns)も平均反応時間について(F(2,16)

=1.18, ns)も有意な主効果は認められなかった。また、表示方法 要因と性格要因による交互作用は有意には認められなかった。こ れらの結果を図3に示す。

図3 せっかち群と我慢強い群(エラーバーは標準誤差を表す)

4. 考察

離散表示ではなく連続表示のカウントダウン形式という点で、

down条件は時間評価が小さくなりやすい状況と言える。時間を短 く感じる事で疲労が蓄積されにくくなると考えると、実験結果は 妥当であると言える。反応時間についても、タイムプレッシャー が作業成績を向上させる事例があるため(白石ら、2006)平均実 験結果は妥当と言える。また、down条件という作業環境は自己評 価が我慢強い人よりもせっかちな人にとって、より効果的である ことが示唆された。

時間的要因との2要因分散分析の結果は、「実験序盤は条件によ って反応時間に差は無いが、実験終盤は差が出る」という命題を 支持しない。よって、down条件という環境が疲労度を軽減させそ の結果作業成績を向上させたというのではなく、down条件という 環境が、作業成績を向上させ、その結果疲労を軽減させたものだ と考えられる。すなわち、「down 条件が疲労を抑えて、時間が経 つほどそれが顕著に表れる」というのではなく「目の前でカウン トダウンされているだけで作業効率が上がる」と解釈できる。し かし、実験の条件を再度慎重に検討し交互作用が本当に無いのか を研究する必要がある。これは、序盤における各条件間の平均反 応時間の差が、終盤のそれよりも小さくなっているからである。

実験時間を3時間などに増やすことで交互作用が有意になる可能 性がある。

今後の展望としては、同じカウントダウン形式による時間の把 握でも、視覚的にどのような表示方法が更に最適であるかの研究 が望まれる。また、本実験で明らかにされたような有意差が認め られるビジランス課題の難易度の範囲を調べる研究も期待される。

引用論文

GERALD P. KRUEGER(1989). Sustained work, fatigue, sleep loss and performance: a review of the issues, WORK & STRESS, VOL.3, No2, 129-141.

岩村綾馬(2004).「待つ」という行為における心理的時間の評 価に関する研究 ,東京大学建築学科2004年度卒業論文梗概集.

白石舞衣子,宮谷真人(2006).タイムプレッシャーと注意の焦点 化がP300およびLRPに及ぼす影響, 広島大学大学院教育学研究 科紀要, 55, 259-265.

高橋怜央, 齋藤慶典, 坂本真士(2014).カウント方向が時間評 価へ及ぼす影響 ,日本心理学会第78回大会, 1EV-1-078.

参照

関連したドキュメント