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Academic year: 2021

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(1)

車輪とレールの 潤滑手法の研究

車輪・レールは使用するうちに摩耗や損傷が発生する と、削正や交換を行っている。これらのメンテナンスコ ストを削減するためには、車輪、レールの寿命を延ばす ことが有効であり、その手段として、材質、熱処理の選 択、断面形状の工夫、車両重量の削減などが行われてき た。しかし、両者ともに使用していくうちに摩耗してい くので、安全性や良好な乗り心地の維持のためにメンテ ナンスは不可欠となる。摩耗を抑えられればメンテナン スコストも削減できるという考えから提案されたのが

「潤滑」である。「潤滑」にはその目的や適用条件により 数種の方法があり、用途によっては全く違った性質の

「潤滑剤」を用いることもある。そこで、各種潤滑剤を用 いて現車搭載試験、営業線塗布試験等を行い、最適な車 輪・レールの潤滑手法について研究を行った。

2.1 潤滑の目的

一般に知られている車輪とレールの潤滑は、外軌潤滑 と内軌潤滑がある。外軌潤滑は曲線区間における外側レ ール(外軌)の肩部と車輪フランジの摩耗を防止する。

内軌潤滑は曲線の内側レール(内軌)の頭頂面に対して 潤滑を行い、列車通過時の「きしり音」やレール頭頂面 に発生する「レール波状摩耗」を防止する(図1)。

2.1 外軌潤滑の現状

外軌潤滑は、車輪フランジ摩耗防止とレール側摩耗防 止のために行われている。1950年代にアラジンと呼ばれ る地上式レール塗油装置が用いられ、車両においても車 上式レール塗油器やフランジ塗油器が開発され一定の効 果をあげている(図2)。

ただし、これらの問題点は、以下のとおりである。

(1)油を用いるため、飛散・拡散のために踏面に回る恐れが あり、勾配線区では空転・滑走が発生する懸念がある。

(2)鉱油が主成分のため、沿線環境の観点から改善の余 地がある。

(3)地上式では塗油のためにレール探傷に支障が出る。

(4)車上式では油が床下機器に飛散・付着し、汚損する。

(5)材料補給の手間がかかる。

車輪・レールの境界領域において、曲線区間の内軌レールには「波状摩耗」及び「きしり音」、外軌レールには「レール側 摩耗」、車輪には「フランジ摩耗」が発生している。そこで、車輪・レールのメンテナンスコストを削減することを目的とし て、最適な車輪・レールの潤滑手法の研究を行った。車輪フランジ摩耗対策として、車輪用潤滑剤の現車搭載試験を実施し、

約30%の摩耗低減効果を確認した。また、内軌レール波状摩耗対策として、地上用潤滑剤の営業線塗布試験を実施し、最 大1/3程度の横圧低減効果が確認できたが、地上用潤滑剤が高価なため、コスト面等で課題が残った。

●キーワード:潤滑、車輪フランジ摩耗、レール波状摩耗、きしり音、横圧

1. はじめに

2. 潤滑

瀧川 光伸*

村越 史明**

萬谷 太郎*

図1 曲線区間における潤滑の目的

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(2)

2.2 内軌潤滑の現状

レールにおける摩耗現象のひとつとして「レール波状 摩耗」がある。多くは急曲線の内軌レールの踏面に発生 し、列車通過時に振動・騒音の原因となる。そのため、

発生個所ではレール削正が行われている。これまで内軌 のレール踏面を潤滑するとその発生を抑えられるとの研 究が行われ、当社でもごく一部区間において内軌レール 塗油が実施されているが、普及していない。その理由は、

以下のとおりである。

(1)油をレール頭頂面に塗布するのは、列車の空転・滑 走を直接引き起こす懸念がある。

(2)空転・滑走が起きない範囲での摩擦係数をもった潤 滑剤がなかった。

3.1 車輪用潤滑剤

車載式レール塗油器等による潤滑では、レール頭頂面 に油が飛散し、列車が空転・滑走する恐れがあるため、

勾配線区にはほとんど採用されていない。この欠点を克 服するために工夫されたのが車輪用潤滑剤である(図3)。 車輪用潤滑剤はできるだけ摩擦係数を小さくする潤滑剤 である。固形タイプでは油のように飛散や回り込みがな く、床下機器への汚損の恐れもない。

図2 車上式レール塗油器 に塗布されるメカニズムとなっている。なお、台車への

取付構造については、車輪踏面部へ接触しないように検 討する必要がある(図4)。

3.3 車輪用潤滑剤の現車試験方法

現車試験の線区選定にあたっては、急曲線が多く車輪 フランジ摩耗が発生しているが、急勾配のためフランジ 塗油器やレール塗油器が設置できない線区の中から大糸 線を選定し、試験対象車両は松本車両センター所属の E127系電車A4編成(McクモハE127-104、TcクハE127-104)とし た(図5)。E127系1編成(2両)の各先頭軸に車輪用潤滑 剤を取り付けるため、T車用とM車用の塗布装置取付金具 を検討した。台車部品の輪軸ツリ(T車用)及び砂まき管 ササエ(M車用)部分を活用することとした(図6〜8)。 また、踏面ブレーキを考慮して潤滑剤の車輪フランジ接 触位置を検討し、アプリケータの取付位置を決定した。

なお、潤滑剤を取り付ける直前に車輪転削を行い、車輪 形状を整えた。

外軌に対する潤滑手法の研究

3.

図3 車輪用潤滑剤とホルダー

図4 車輪用潤滑剤の塗布装置(フランジ接触状況)

図5 試験対象車両(E127系A4編成)

(3)

3.4 車輪用潤滑剤の現車測定条件

現車試験では、潤滑剤の車輪への転写効果、潤滑剤搭 載編成と非搭載編成との車輪フランジ摩耗量の比較、潤 滑剤の消費量等の評価を行った。搭載編成と非搭載編成 の条件を表1に示す。

3.5 車輪用潤滑剤の現車測定結果

車輪フランジ摩耗量は、吉田式デジタルタイヤ測定器 及び車輪形状測定器ミニプルーフにより測定を行った。

比較対象とした車両は、試験車両とほぼ同時期に車輪転 削を行った編成とし、季節による走行条件の変化を最小 限にするために、同時期・同期間内の変化値を用いた。

摩耗量は10万km走行あたりで比較を行った。測定結果を 図9〜図11に示す。

Mc車では、踏面ブレーキ及び耐雪ブレーキの影響によ り車輪踏面の凹摩耗が発生している。その結果、Mc車に ついては、吉田式測定器では踏面基準面が変わり、評価 が困難である。フランジ摩耗量の大きいTc車で比較する と、潤滑剤搭載編成の車輪フランジ摩耗量は、非搭載編 成と比較して、吉田式及びミニプルーフともに平均30%

摩耗軽減を確認することができた。

また、潤滑剤の車輪への転写効果については、車輪フ ランジ部の摩擦係数測定では、フランジ接触点の移動等 の影響により明確な効果が認められなかった。現車試験 では、フランジ摩耗率比較から1両4軸以内の転写効果が あると推定することができた。潤滑剤の消費量推移の結 果を図12に示す。

車輪転削直後は削正痕の影響により消費量が高くなっ たが、次第に消費量が低くなる傾向となった。平均消費

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一 般 論 文 1

図9 フランジ摩耗率比較(吉田式測定器)

図10 試験車両の車輪凹摩耗量

図11 フランジ摩耗率比較(ミニプルーフ)

表1 搭載編成と非搭載編成の条件

図7 T車取付状態 図8 M車取付状態 図6 試験車両の潤滑剤取付位置(■部分)

図12 固形潤滑剤消費量変化の推移

(4)

た、空転滑走の懸念が少なく、急勾配線区に適している ことがわかった。車輪取替経費と潤滑剤材料費を勘案し て、急勾配線区で車輪フランジ摩耗の大きい線区への導 入が期待される。現在、小海線の新型ハイブリッド気動 車で搭載する予定となっており、他の山岳線区について も導入を検討している。

4.1   地上用潤滑剤

地上用潤滑剤は、曲線でのレール内軌波状摩耗ときし り音を低減させるために考案された潤滑剤で、適度な摩 擦係数をもつ特性があり、車輪の空転滑走が発生しやす い範囲では乾燥状態とほぼ変わらないクリープ力特性が 得られるように工夫されている。また、環境に配慮して、

水性の潤滑剤となっている(図13)。

4.2 地上用潤滑剤の塗布装置

地上用潤滑剤の塗布装置は、装置本体(タンク及び制 御ユニット)、車輪検知センサー、塗布バー、電源用ソー ラーパネルの構成となっている(図14,図15)。車輪検知 センサーにより塗布開始と終了のタイミングを制御してい る。

4.2   地上用潤滑剤の構内試験

仙石線での本線試験を行う前に仙台車両センター宮城 野派出構内で205系電車によるブレーキ試験を実施した

(図16)。地上用潤滑剤は乾燥状態と比べて、問題のない 範囲であった。

また、R200mの曲線での騒音測定を実施した。車輪近 傍では600Hz付近、1200Hz付近で約20dBの低減が確認で きた(図17)。

図15 地上用潤滑剤の塗布バー

図17 車輪近傍騒音測定結果

内軌に対する潤滑手法の研究

4.

図13 地上用潤滑剤

図16 構内ブレーキ試験結果(減速度)

(5)

4.3  地上用潤滑剤の本線試験

構内現車試験を実施して、問題のないことを確認した 後、レール波状摩耗の発生しやすい箇所(仙石線上り東 塩釜〜本塩釜間)で本線塗布試験を実施した。対象は R254m、全長205mの曲線で、レール削正を実施した後、

横圧、摩擦係数等の測定を行った。

対象曲線での205系電車4両編成の内軌横圧は、地上用 潤滑剤塗布により最大1/3程度まで軽減されることが確認 できた(図18)。

塗布装置からの距離と内軌横圧の変化を測定した(図19)。 塗布装置からの距離が100mとなると乾燥状態と同様とな り、潤滑剤の効果をいかに延伸させるかが課題となった。

塗布装置からの距離とレールの動摩擦係数を測定した

(図20)。レールの動摩擦係数は塗布地点から100m付近ま で増加し、100m付近で急激に減少してから再度増加して いる。これは車輪に付着した潤滑剤が再度レールに付着 したものと考えられる。以上のことから、曲線全体にわ たり最適な潤滑状態を維持することは難しいことがわか る。波状摩耗の軽減効果については、一部で確認できた が、曲線全体に対する効果に疑問が残った。

4.4 地上用潤滑剤のまとめ

内軌レール潤滑によりきしり音約20dB低減、内軌横圧 軽減最大1/3程度が確認できた。波状摩耗軽減については、

曲線全体での最適な潤滑の塗布維持が難しいため、効果 が明確にならなかった。さらに、レール取替経費を考慮す ると材料が高価なこと、海岸沿いでは塩分の影響を受け、

液体が分離して固形化してしまうこと等の課題が残った。

車輪フランジ摩耗対策については、メンテナンスコス ト低減が期待できるため、急勾配線区での車輪用潤滑剤 の導入を推進していく。レール波状摩耗対策については、

今回の地上用潤滑剤における安定的な潤滑、材料コスト、

メンテナンス、耐久性等の課題があるため、新材料や車 上塗布方式などの検討を進める必要がある。

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一 般 論 文 1

図18 内軌横圧測定結果

図19 塗布装置からの距離と内軌横圧

5. おわりに

図20 塗布地点からの距離と動摩擦係数・付着量

参考文献

1)石田誠;軌道と車両の相互作用(9)、日本鉄道施 設協会誌、2000年12月,p.35〜38

2)石田誠、青木宣頼;レール摩擦係数の要因分析、

日本鉄道施設協会誌、2005年2月,p.22〜25 3)瀧川光伸、村越史明;急曲線内軌潤滑による軌

道への影響調査、2005年日本土木学会発表論文 4)村越史明、瀧川光伸、陸康思;2004年J-RAIL発

表論文

参照

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