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自己株式とみなし配当 1. 自己株式取得の法務自己株式は 会計上は資本取引として認識し 純資産の部から取得価額を控除する形式で表示します ( 自己株式会計基準 7) 一方税務上では 発行法人の貸借対照表と自社株式の取引価額次第で みなし配当課税と所得税の源泉徴収が必要な場合があります 自己株式の取得

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自己株式とみなし配当

M&A における利用方法

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(2)

自己株式とみなし配当

1.自己株式取得の法務

自己株式は、会計上は資本取引として認識し、純資産の部から取得価額を控除する形式で表示します(自己株式 会計基準 7)。一方税務上では、発行法人の貸借対照表と自社株式の取引価額次第で、みなし配当課税と所得税の 源泉徴収が必要な場合があります。

自己株式の取得はその財源が分配可能額(配当可能利益)に限定されている点からも、その経済実態は利益配当 です(会 461)。このため税務上は、相対取引による自己株式の譲渡の場合、売却額のうち「資本金等の額」を越える部 分は、配当とみなされます(法令 9①十二)。税務上でみなし配当が生じるパターンは、以下の通りです。

①非適格合併 適格合併は除く ※非適格合併の際の「抱合株式」には、みなし配当課税

②非適格の分割型分割 適格分割は除く

③有償減資

残余財産の分配 無償減資は除く ※無償減資ではみなし配当が生じない

④自己株式の取得 みなし配当が生じない例外

(法法 24①四、法令 23③)

①証券取引所や店頭市場での市場取引、ToSTNeTでの取得

②事業全部の譲受での取得

③合併、分割、現物出資での取得

④被合併法人の合併反対株主の買取請求権に応じた取得

⑤単元未満株主、端数処理による買取(所令 61①九)

⑤出資の消却等

⑥組織変更

金庫株を取得する法人は株主に配当する訳ですから、みなし配当金額の 20%を所得税として源泉徴収する義務が あります(所法 25①四)。これは、翌月 10 日までに納付する必要があります。

上場会社がToSTNet等の証券取引所の開設する市場取引で自己株式を取得する場合は、相対取引のケースと異 なり、税務上でみなし配当課税されません。売り手にとっては、買い手が発行会社かどうか分からないからです。法人 株主でも個人株主でも同様です。この場合は、株主は通常の売却損益や譲渡所得として扱われます。自己株式の取 得会社サイドでは、全額を資本金等の額で減少させます(法令 8①十八)。

(3)

2.取得会社の会計・税務処理

(1)会計処理

自己株式を相対取引で 500 株・200 万円(@4,000 円)で取得した非上場企業の会計処理は、以下の通りです。非上 場企業の資本金は 500 億円、資本準備金は 0 円、発行済株式総数は 1 億株、1 株当たりの「資本金等の額」は 500 円、純資産の部は 4,000 億円と仮定します。

自己株式 2,000,000 現預金 1,650,000

預り金(源泉所得税) 350,000

取得した自己株式は、純資産の部からマイナス形式で表示します(自己株式会計基準 7、8、会計規 76②五)。純資 産の部の変動を記載する株主資本等変動計算書でも、自己株式の前期末残高・当期変動額・当期末残高を記載しま す(会計規 96⑦)。

(2)税務処理

非上場会社が自己株式を取得した場合の税務処理は、以下の通りです。別表上での申告調整が必要となります。

資本金等の額 250,000 現預金 1,650,000

利益積立金 1,750,000 預り金(源泉所得税) 350,000

※源泉徴収所得税額=1,750 千円×20%=350 千円

平成 18 年 4 月 1 日以降は、税務上も自己株式の取得は資産として取り扱われずに、資本控除と考えます。交付金 銭が@4,000 円なのに対して「資本金等の額」は@500 円なので、みなし配当は@3,500 円となります。非上場株式の 配当の場合、所得税 20%、住民税 0%の源泉義務があります(所法 181、182①二)。なお、消費税は証券市場での取 得は課税取引で、それ以外は不課税取引です(消基通 5-2-9)。

(3)申告調整と別表四、五の記載例

資本金等の額 250,000 自己株式 2,000,000

利益積立金 1,750,000

上記の(1)と(2)の比較により、差異が調整されます。

<別表四>

区分 総額 留保 社外流出

① ② ③

加算 みなし配当 1,750,000 配当 1,750,000

減算 自己株式 1,750,000 1,750,000

(4)

<別表五(一)>

Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書

区分 期首利益積立金 期中増減 期末

減少 増加

利益準備金

別途積立金

自己株式 - - △1,750,000 △1,750,000

Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書

項目 期首資本金等の額 期中増減 期末

減少 増加

資本金 50,000,000,000 50,000,000,000

資本準備金

自己株式 - - △250,000 △250,000

上場企業が公開買付(TOB)により自己株式を取得した場合も、上記の相対取得の場合と同様にみなし配当となる ので、資本金等の額と利益積立金を減少させます。

3.法人株主の会計・税務処理

上記設例で、株式発行法人に相対取引で金庫株した売り手の会計処理は以下の通りです。売り手の簿価は 500 株 で 1,200,000 円(@2,400 円)とします。

(1)会計処理

現預金 1,650,000 投資有価証券 1,200,000

仮払金(源泉所得税) 350,000 特別利益(投資有価証券売却益) 800,000

会計処理は、通常の有価証券の売却と同様です。なお実務上は、会計監査の必要がない非上場企業において下 記(3)の申告調整の煩雑さを回避するために、最初から(2)の税務処理と同様にみなし配当と譲渡損の両建計上の 会計処理をする場合もあります。

(2)税務処理

法人株主の税務処理は、以下の通りです。別表四、五の申告調整が必要となります。

現預金 1,650,000 投資有価証券 1,200,000

仮払金(源泉所得税) 350,000 みなし配当金 1,750,000

特別損失(投資有価証券売却損) 950,000

(5)

①みなし配当金額は通常の受取配当と同様に、別表四で所得減算できる(法法 23⑥)。

②投資有価証券売却損は、損金算入できる(法法 61 条の 2①一)。

③仮払源泉所得税は通常の源泉所得税と同様に、所得税額控除できる(還付可、法法 68①)。

つまり、3 段階の法人税のタックス・メリットを享受できます。①について、TOB での相対取引の金庫株の取得は、売 り手が法人株主の場合は、税務上のみなし配当規定が適用されます。つまり売却額が発行法人の「資本金等の額」を 超える場合には、その超える部分の金額がみなし配当となります。そして内国法人の場合は益金不算入とされ、その 50%分を減算できます。全額を有価証券売却益に計上した会計処理のままで税務処理を失念すれば、課税所得が過 大計上されて税額計算が不利となります。

(3)申告調整と別表四、五の記載例

特別利益(投資有価証券売却益) 800,000 みなし配当 1,750,000

特別損失(投資有価証券売却損) 950,000

<別表四>

区分 総額 留保 社外流出

① ② ③

加算 受取配当金 計上漏れ 1,750,000 1,750,000

減算

みなし配当の益金不算入額 1,750,000 1,750,000

投資有価証券売却損 計上漏れ 950,000 950,000

投資有価証券売却益 否認 800,000 800,000

<別表五(一)>

別表四での留保の加減算項目が合計で 0 になるため、記載不要です。

2,000,000 円

1,200,000 円

簿 250,000 円 資本金等の額

※1 簿価-資本金等の額=950,000 円=税務上の投資有価証券売却損

※2 売却価格-資本金等の額=1,750,000 円=税務上のみなし配当金額

(6)

4.売却株主の課税関係

自己株式の買手 上場企業 非上場企業

ケース 市場買付 公開買付(TOB) 相対取引

個人株主 譲渡所得課税

(申告分離、所法 25①四括弧書き)

同左

(措置法 9 条の 6) 同下

法人株主 売却損益課税

(通常の法人税課税、法法 24①四括弧書き) みなし配当課税+売却損益課税

個人株主にとっては、自己株式の売却は原則として譲渡所得と配当所得に 2 分されます。個人株主の場合は、上場 会社が公開買付(いわゆる TOB)で自己株式を買い取る場合には、みなし配当課税をしないという特例があります(措 置法 9 条の 6)。この場合は、自己株式の TOB に応じた個人の所得税の計算は、総合課税される配当所得ではなく有 利な 10%課税の譲渡所得になります。自己株式を TOB した場合の上場会社の税務処理は、法人株主でも個人株主 でも資本金等の額と利益積立金を減少させます(法令 8①二十一)。上記の個人の所得税の特例(措置法 9 条の 6)は、

法人の税務処理と関係がないからです。なお、この特例は平成 22 年度税制改正により、平成 22 年 12 月 31 日で廃止 されます。

5.自己株式の発行会社の課税関係

みなし配当が発生しない市場買付のケースでは、取得法人サイドでは自己株式の取得対価の全額が「資本金等の 額」の減少額となります。税務処理としては、借方=資本金等の額のみとなります。一方、自己株式を公開買付する場 合は、資本金等の額と利益積立金を減少させます。

自己株式の発行会社 課税関係

公開買付

(金商法 27 条の 22 の 2)

資本金等の額と利益積立金の減少

(株主が個人でも法人でも同様)

市場購入 資本金等の額の減少

(資本金等の額がマイナスとなる場合でも、利益積立金を減少させない)

(7)

M&A における利用方法

1.利用方法(財務内容の優れた企業を買収後に自己株式を取得させるスキーム)

上記のように、法人株主が自己株式売却で金銭交付を受けた場合は、その金銭の額が子会社の「資本金等の額」

を超える部分は、みなし配当とされます(法法 24)。そして子会社株式の場合は関係法人株式等に該当するためみな し配当金額の 100%が、子会社株式以外については 50%を益金不算入とすることが出来ます(法法 23)。

(1)このため、他の企業を買収直後に、親会社がその子会社株式を自己株式として買取らせると、益金不算入の対 象となる関係法人株式等に係るみなし配当が実現されて、法人税等の負担を軽減させることができます。さらに、

その買収した法人の「資本金等の額」が小さく、また利益積立金の額が大きいほど両建計上する株式譲渡損・み なし配当の金額とも大きくなり、より効果が高くなります。

(2)子会社の解散による残余財産の分配やキャッシュアウト・マージャーのような非適格組織再編成でも、同様の効 果があります。利益積立金のある会社を買収直後に解散して残余財産の分配を受けた場合は、親会社で子会社 株式譲渡損と益金不算入の対象となるみなし配当が実現することによって課税所得を軽減することができます。

投資ファンドが SPC を設立して上場企業の株式を 100%支配するスキームでも、ターゲット企業の売却交渉が長期 化した場合に金庫株をさせて、SPC が資金調達する場合があります。現行税制においてはこのようなスキームに対応 する個別規定は設けられておらず、課税当局がこれを否認する積極的な法的根拠はありません。当局が執り得る手 段は、同族会社等の行為計算の否認規定の適用のみになります(法法 132)。

2.M&A(子会社株式売却)のストラクチャーの有利選択

合併や買収等の事業再編成において親会社が黒字の子会社株式を外部売却する場合は、直接相手に売却すれ ば多額の売却益が発生します。そこで一度子会社に自己株式として取得させれば、「資本金等の額」を越える部分が みなし配当となり上述のトリプル・メリットが発生します。このスキームでは、子会社に以下の 3 条件が必要です。

①税務上の利益積立金が十分にあること、

②会社法上の分配可能額が十分にあること(会 461)

③資金繰りに問題がないこと

受取配当の益金不算入は、6 ヶ月以上保有かつ 25%以上の出資比率で関係法人株式等に該当します(法法 23

⑤)。関係法人株式等に該当すれば、その全額 100%分を申告減算できます(法令 22 条の 2①一)。

(8)

3.平成 22 年度税制改正の影響

平成 22 年度税制改正では、100%グループ内で子会社に自己株式を取得させた場合は租税負担が軽減されるた め、譲渡損益を計上しないことになりました(法法 61 条の 2⑯)。改正前の特別損失(子会社株式譲渡損)は、親会社 の資本金等の額を減算する事になります(法令 8①十九)。この税制改正は、今後のグループ内のストラクチャー構築 に大きな影響を及ぼす内容と言えます。

【改正前】 【改正後】

100%子会社に相対取引で自己株式を譲渡した親会社の会計・税務処理は、以下の通りです。

(1)会計処理

現預金 1,650,000 投資有価証券 1,200,000

仮払金(源泉所得税) 350,000 特別利益(投資有価証券売却益) 800,000

(2)税務処理

現預金 1,650,000 投資有価証券 1,200,000

仮払金(源泉所得税) 350,000 みなし配当金 1,750,000

資本金等の額 950,000

(3)申告調整

特別利益(投資有価証券売却益) 800,000 みなし配当 1,750,000

資本金等の額 950,000

※1 行目は別表四で加減算留保、利益積立金は純額で 950,000 円増加する 親会社

子会社 100%

・みなし配当の計上

・譲渡損益の計上

・自己株式の取得 子会社株式譲渡 対価

100%グループ内

親会社

子会社 100%

・みなし配当の計上

・譲渡損益を計上しない (資本金等の額にチャージ)

子会社株式譲渡 対価

100%グループ内

・自己株式の取得

(9)

<別表四>

区分 総額 留保 社外流出

① ② ③

加算 受取配当金 計上漏れ 1,750,000 1,750,000

減算 みなし配当の益金不算入額 1,750,000 1,750,000

投資有価証券売却益 否認 800,000 800,000

<別表五(一)>

Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書

区分 期首利益積立金 期中増減 期末

減少 増加

利益準備金

別途積立金

資本金等の額 - - 950,000 950,000

Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書

項目 期首資本金等の額 期中増減 期末

減少 増加

資本金 資本準備金

利益積立金 - - △950,000 △950,000

上記改正は、平成 22 年 10 月 1 日以後の自己株式の取得から適用されます。

Reference Purpose Only

本レターに掲載している情報は、一般的なガイダンスに限定されています。この文書は、個別具体的ケースに対する会計・税務のア ドバイスをするものではありません。会計上の判断や税法の適用結果は、事実認定や個別事情によって大幅に異なることがありえます。

また、解説の前提となる会計規則や税制が変更されている可能性もあります。実際に企画・実行される場合は、当事務所の担当者にご 確認ください。

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