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A Note on Evolution of Layer-based GIS to Object-oriented GIS in terms of Lakatos's Methodology of Scientific Research Programs

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レイヤ型 GIS からオブジェクト指向 GIS への系統発生的進化に関する研究ノート 

杉 原 弘 恭 ・ 中 村 健 ・ 山 下 潤 ・ 生 駒 依 子

A Note on Evolution of Layer-based GIS to Object-oriented GIS in terms of Lakatos's Methodology of Scientific Research Programs

Hiroyasu SUGIHARA, Takeshi NAKAMURA, Jun YAMASHITA and Yoriko IKOMA

Abstract: Since the first object-oriented language was invented in 1972, object-oriented studies have been conducted in various fields of information sciences. Regarding the object-oriented GIS, an application of it has recently overwhelmed that of the traditional layer-based GIS in the infrastructure sector. The purpose of the present study is to review an evolution of the layer-based GIS to object-oriented GIS in terms of Lakatos's methodology of scientific research programs. A development history of object-oriented language and GIS is briefly mentioned in the first and second sections, and then, the layer-based GIS and object-oriented GIS are compared with each other from several aspects. Finally, some concluding remarks are drawn, and further research directions are shown in the fourth section.

Keywords:オブジェクト指向言語(object-oriented languages),施設管理(facility management) ,シームレスマッピング(seamless mapping) ,データベースのバージョン管 理(version management of database)

1.  はじめに 

  2001 年 9.11 同時多発テロを契機に設立された国家 安全保障省では,連邦政府,州政府,自治体,企業か ら既存の種類の異なるデータフォーマットのオープン な取り込みの実現

1

がクリティカルとなる一方で,エネ ルギー省は,相互依存する各種ライフラインの,サイ バー・アタックによる影響解析への対応が求められた.

これらの省で採用されたソフトはユーティリティ関係で 実績のあったオブジェクト指向・ネットワーク指向

GIS (object-oriented GIS,以下 OOGIS)

2

であった.

この動向を反映し,その後アメリカの自治体等での採 用も増え,インフラ部門では, 2004 年に OOGIS の Smallworld のシェアがレイヤ型 GIS(layer-based

GIS,以下 LBGIS)大手である ESRI のシェアを抜い

た.このような動向に対応して, GIS 各社が OOGIS への対応を強めている

3

オブジェクト指向は,実世界を自然な形でコンピュ ータ上に実現させようとする考えに基づくものである.

すなわちオブジェクト指向は,生物が細胞からどのよ うにして複雑な構造を作り上げるのか

4

ということに ヒントをえた Alan Kay が, 1972 年に代表的なオブジ 杉原 弘恭  〒100-0004  東京都千代田区大手町 1-9-3

公庫ビル 5F 日本政策投資銀行 地域政策研究センター  Tel:03-3244-1102 Fax:03-3270-5237 

e-mail:[email protected] 

(2)

ェクト指向言語(Smalltalk

5

)を開発したことを嚆矢 とする.それ以降今日まで,後述するカプセル化のよ うな考え方よりも,データとアルゴリズムを分離する 構造化プログラミングの方が普及したことと,現在は ハードウェアの能力向上で問題は解消されたが,オブ ジェクト指向言語の処理速度が遅いことが災いして,

クリティカルマス的な普及には至らなかった.この間,

多くのオブジェクト指向方法論が提唱され, 1997 年に なってやっと,オブジェクト指向標記方法についての み世界標準

6

が成立した.

オブジェクト指向に関する GIS 研究は進んでいるが,

本稿の目的は,LBGIS から OOGIS へのパラダイム・

シフト(単線的発展)というより,むしろ MSRP

7

(系 統発生的進化)として発展しつつある OOGIS の現状 を把握することにある.

2.  オブジェクト指向 GIS とは 

OOGIS においては,現実世界のモノ・事象(物理的・

抽象的な実体(instance) )を,データ(属性)とそれ を操作する手順(メソッド)と一体にしたオブジェク トにカプセル化して,コンピュータ上に再現する.オ ブジェクトの種類をクラスという.そして,モデル化 したオブジェクトに対し,機能を実装するためにオブ ジェクト指向言語を用いる.オブジェクトの組み合わ せとオブジェクト間のメッセージをプログラムとして 記述する.

個別のインスタンスに対して意味と機能を付加する ことができる,というオブジェクト指向の考え方は GIS の取り扱う領域が現実世界そのものであることか ら重要である.意味情報(モノの性質や状態)をその 文字属性データと幾何属性データ(および内部的なト ポロジ・データ)としてカプセル化して管理し,自ら の機能をふるまいとして実装する方が本来は直感的で,

管理対象の変化や必要なアプリケーションの変化に対 する拡張性,再利用性が高くなる.

3. OOGIS と LBGIS の比較からみた特性 

ここでは OOGIS の代表として Smallworld を採り

上げ, LBGIS と比較しながらその特徴を明らかにする.

LBGIS の基本である Layer Cake Model や Overlay

Method は McHarg がエコロジカルプランニングで用

い,教え子の Dangermond(ESRI 社社長)が GIS ソ フトに採用し GIS のベースとなったものである

8

. McHarg の Layer Cake Model は,もともと古いデー タから現在のデータへ下から上に順々に並べるもので,

生態系の各要素(主題図)間の連関はよく認識してお り,単純にレイヤを重ね合わせることにはもともと否 定的であった

9

.しかしながら,当時のハード,ソフト の性能限界や,目に見えにくい各要素間の連関よりも,

地図の視覚化の側面が優先された結果,現在のような

LBGIS が主流になったと考えられる.

3-1.  所属ネットワークごとの事物管理 

図形表現のみを対象とする CAD や,それらを管理 しやすい形で階層化した LBGIS では,個々のモノと しての情報の管理や,その相関関係を記述することが 難しい.一方,OOGIS では容易である。

上水道アプリケーションを例にとると,文字属性デ ータ(水道管やバブルの口径や開閉状況) ,幾何属性デ ータ(ラインや座標) ,トポロジ・データ(生成される 接続情報であるノードとリンク)からなるカプセルで は,文字属性を変えると,幾何属性のふるまいを変化 させることができる.

文字属性(バルブの開閉状態)を見て,幾何属性(シ ンボルの形状)を変化させると同時に,上流から下流 までの水の流れ方を示すことができる.このことで,

一部のバルブの開閉状態の変化により,現実に起こり うる水圧分布や流量,流速,流向といった水道管ネッ トワーク全体におよぼす影響が,オブジェクト全体の ふるまいの変化として捉えることができる.

また, OOGIS では,ひとつのオブジェクトが複数の

幾何属性 (形状) を持つことができる.これにより例え ばモノの位置 (シンボル,ライン,ポリゴン幾何属性) のみならず,その注記 (テキスト幾何属性) をひとつの オブジェクトのレコードに格納したり,プラント内部 の電動バルブの配管ネットワーク上の位置と,駆動さ せる電力を供給する電源ネットワーク上の位置を同時 に持たせたりすることができる.

この性質を応用すると,建物の中と外の世界を跨ぐ

モノもひとつのオブジェクトとして管理できる.例え

(3)

ば,建物の中にある交換機が落ちたときに,外で通信 サービスの障害を受ける顧客を探すこともできる.

また,水道管とガス管は,同じ管でもオブジェクト として所属するネットワークのグループが異なるため,

GIS 上ガス管と接続されることは起こりえない.同様 に,同じラインを表す幾何属性データでも,道路と川 も同様に接続されることはない.

これ以外にも,間伐材の収集を対象としたアプリケ ーションでは,道路の幅員などの属性によって,通れ るか通れないかの道路の幾何属性を判断し,最短距離 を瞬時に見つけることができる.

3-2.  シームレスマッピング 

多くの LBGIS では,大縮尺から小縮尺間のシーム

レスな拡大・縮小に,実際はスケールの異なるレイヤ を数枚用意して順次切り替えることが多い.これに対

して OOGIS では,あくまで単一オブジェクトの表示

/ 非 表 示 の制 御 の み で, ミ リ メ ート ル 単 位 から

4,000km 四方をカバーし,シームレスな座標空間への

対応を可能としている.

東京駅を例にあげると, LBGIS ではスケールの異な るレイヤの同じ位置に東京駅が存在していても,各レ イヤの駅は別の存在で,ひとつのレイヤで東京駅を削 除しても他の東京駅には影響はない. OOGIS では単一 のオブジェクトとして駅を管理しており,スケールに 応じて幾何属性を制御する.すなわち,詳細表示のお りには駅舎の形状が見えるポリゴンで,広域表示のお りにはシンボルとしてのポイントで表示する.いずれ を削除してもオブジェクトのインスタンスとしての東 京駅は単一レコードゆえ、東京駅というオブジェクト レコードは削除され,どちらかが残るということはな い.

3-3.  時系列変化への対応 

ファイル単位で形状全体をグループ化して管理する

LBGIS では,個々の形状のピースをユニークにレコー

ドとして記録していないので,変化を管理しようとす るとレイヤ全体のコピーを持ちつづけなければならな い.一方, OOGIS では,ひとつひとつのモノが文字属 性 (いわゆる属性),幾何属性 (形状) を持つオブジェ

クトのレコードとして管理される.これがデータベー スに格納されると属性が変わろうが,形状が変わろう が,変わった部分はそのレコードにのみ作用するので,

変更差分だけを保持できる.

まず, OOGIS では,ひとつのバージョンが,オブジ

ェクトの集合全体 (= データベース全体) の,ある時 間 t における状態を示す,という考え方をとる.そし て,個々のオブジェクトが属性情報,空間情報を持っ ている(下式) .現実世界の時間の中に,個々のモノが 存在し,変化していくことに対応している.

  V

n

(t, Z

1

, Z

2

, ... Z

n

)   ただし, Z

i

(a, x, y, z) ここで,

V :

バージョン,

Z :

オブジェクト,

a :

属性,

x, y, z :

空間情報, t

:

時間情報

この考え方に基づき,図 1 のようにユーザーからは 最新のブロックだけが見えるようにしたものが,デー タベースのバージョン管理の考え方である.各バージ ョンにおいてユーザーが書き込み権を取得し,データ ベースの同時更新を行うことも容易である.

      図

1

変更の見え方(斜字が変更データ)

3-1〜3-3 で述べた点を,2 時点間の森林の変化を例

に概念的に図示したものが図1である. LBGIS では 2 時点 2 種類のレイヤが必要だが,OOGIS では同じレ イヤ上で森林のオブジェクトだけ変化させればよい.

    図2 

2

タイプのGIS によるマップの

2

時点の変化例

時間の変化 ふるまい(behavior)

事物も,面もオブジェクト

LBGIS OOGIS

時間の変化 ふるまい(behavior)

時間の変化 ふるまい(behavior)

事物も,面もオブジェクト

LBGIS OOGIS

A1 B1 C1 D1 E1 F1

B2 D2

A2 B3

F2 B4

E2 V1 V2 V3 V4

t

A2 B4 C1 D2 E2 F2 User

(4)

3-4.  オブジェクト指向データベースとの関係 

現在商用レベルでは,可用性,処理性能の点で,オ ブ ジ ェ ク ト 指 向 デ ー タ ベ ー ス (OODB:

Object-Oriented DataBase

10

)よりも,リレーショナ ル・データベース( RDB : Relational DataBase )が優 勢である.

LBGIS では主に RDB が使用されている.OOGIS

についても,大規模かつ複雑なデータを RDB に格納 し,オブジェクトとしてアクセスできる仕組みをオブ ジェクト指向言語で実装する方法が,現実世界のモノ

(リアルワールド・オブジェクト)を柔軟に取り扱う 際に有利であるとされており

11

, 現在実務上必要な要件 を満たし,市場で認知されつつある OOGIS は,RDB との組み合わせとなっている.この関係を表 1 に示す.

表1  データベースと

GIS

の組合せ

Layer-oriented GIS Object-oriented GIS

RDB

◎ ◎

OODB

△ ○

4.  むすびにかえて 

GIS データの入手が比較的容易になり,ハード,ソ フトの性能が向上し,GIS の使用目的が多様化してい

る現在, LBGIS は高度な地図作成と空間分析機能の拡

充に注力するとともに,冒頭に述べたようにオブジェ クト指向対応も強めている.

他方 OOGIS は,データベース設計から、ユーザー・

インタフェースまで一貫した統合環境で構築できるよ うになってきていることを活かし.時系列分析機能に よって,シミュレーション対応に注力するとともに,

ビジュアルな対応も強化しつつある.

したがって全体としてみれば,LBGIS から OOGIS への展開はパラダイム・シフトというよりも,系統発 生的な進化途上にあるといえよう.

多くの企業(特にユーティリティ事業者や通信事業 者) ,公共事業体において, GIS データを管理するだけ ではなく,積極的に活用することが重要視されてきて いる.施設や設備管理,土地管理,競争の激化する市 場の可視化といった過去や現在の把握に見られる従来 の使い方のみならず,これらの目的で収集したデータ に含まれる企業戦略上,政策立案上必要な,様々な潜

在的リスク要因の分析,動向や状態の変化のシミュレ ーションなど,未来を写し出す鏡としての使い方への 対応も必要となってきている.ここでは,現実世界を 正確に投影し、事業領域の変化や政策転換などに柔軟 に対応できる GIS が求められる.

また, LBGIS, OOGIS で作成されたマップを Google

Earth にオーバーレイすることで,ユーザーが自在性

の高いビューワーとして使用することが可能となって いるが, Google Earth も LBGIS の特徴を持っており,

掲載するマップのデータ容量によってはうまく作動し

ない. Web2.0 が目指す双方向ネットワークの世界が進

展するにつれ,どのような GIS が WebGIS としてふさ わしいのかの検討も将来的な課題である.

<参考文献> 

高阪宏行・岡部篤行編(1996) 『GIS ソースブック』古今書院

Chance, A, Newell, RG and Theriault, DG (1991)

Smallworld GIS: An Object-Oriented GIS – Issues and Solutions, SMALLWORLD TECHNICAL PAPER NUMBER 3.

Kay, A (2003)

イ ン タ ビ ュ ー

1)

9)

http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/ITARTICLE/200 30412/1/>

Lakatos, I (1970) The Methodology of Scientific Research Programmes, Cambridge Univ. Press.

Longley, PA, Goodchild, MF, Maguire, DJ and Rhind, DW (2001) Geographic Information Systems and Science, Wiley & Sons, Ltd.

McHarg, I (2000) Regional Planning,

Regional Policy

レ ビュー』vol.4, 2001, 日本政策投資銀行地域政策研究センター.

1 GE

社の

Smallworld

が採用されたが,Smallworld では,バーチ ャル・データベースを用いたオープン・アーキテクチャーを達成 している.

2 Smallworld

は,1988 年にケンブリッジで

Smallworldwide Ltd.が

開発したもの(高阪・岡部編,1996 『GIS ソースブック』参照)で,

GE

社が

2000

年に、電力送配電分野におけるソフトウェア・ソリ ューションへの事業展開を契機に,ユーティリティ(電気・ガス・

水道)業界でシェア1位のSmallworldを買収する形で現在に至 っている.

3 ESRI

社の

ArcSDE

など.

4 Kay (2003)

参照.

5 1960

年代に開発されたオブジェクト指向言語の

Simula

logo

から作成されたという.

6 UML: Unified Modeling Language

7 Lakatos(1970)

参照.

8 Longley et al. (2001) p.314

ほか参照.

9 McHarg(2000)や教え子のH. Shapiro

や磯辺行久による.

10 1980

年代後半に登場.

11Chance et al, (1991)

参照.

参照

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