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ねじのゆるみ事例

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Academic year: 2021

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キーワード:ねじのゆるみ、トルク締付け法、繰返し締付け、トルク係数、締付け力

はじめに

一本のねじのゆるみが時には重大な事故を招 くことがあり、ねじを利用する者にとって、ね じのゆるみ防止は常に留意しなければならない 重要な課題の一つです。ここでは、実際に発生 したゆるみトラブルの一事例を紹介し、考えら れる原因とその防止策について説明します。

ゆるみに対する基本対策

ねじがゆるむメカニズムについては、すでに 多くの文献で解説されています。中でも代表的 な例として、図1のようなねじ締結体に、せん 断型外力やねじり型外力が作用した時に発生す るゆるみは、被締結部材とねじ部品の間に滑り が生じることによって発生すると説明されてい ます。言い換えると、このような外力が作用し ても被締結部材とねじ部品の間に滑りが生じな ければゆるみは発生しません。すなわち、被締 結部材とねじ部品の間に滑りを生じさせないだ けの適切な締付け力で締付けることが、このよ うな場合の基本的なゆるみ対策となります。

ゆるみ事例

府下のねじメーカから、「舶用エンジンの周 辺装置に取付けられていたボルト・ナットがゆ るんで脱落した」というトラブルについて相談 が寄せられました。

エンジンの稼動とともに大きな振動外力が作 用します。被締結部材とボルト・ナットとの間

に滑りが生じないように適切な締付け力を設定 し、締付けに際してはトルク締付け法による締 付け管理を注意深く行っていたということです。

1年毎の装置点検では、一旦ボルト・ナットを 外して再び締め直しを行っています。1ヵ月前 に2年目の点検を行ったばかりで、もちろんこ の時もトルク締付け法による締付け管理が行わ れています。

ねじの締付け理論において、締付けトルク (T)と締付け力(F)の間には、次のような比例 関係が成立します。

T=K・d・F ・・・・・・ (1) Kはトルク係数、dはねじの呼び径 トルク締付け法とは、式(1)の関係を根拠に、

締付けトルクを指標にして締付け力の管理を行 う方法です。トルク係数(K)は、おねじとめね じが接触するねじ面の摩擦係数と、ねじ部品と 被締結部材が接触する座面の摩擦係数に依存し た値であり、実際に使用するねじ部品と被締結 部材の各予備試料を用いて締付け試験を実施し て求めておきます。

この事例の場合でも、当初の締付けに先がけ て締付け試験を実施して、トルク係数を実測値 として求めた上で、式(1)を使って締付けトル クを計算しています。当初の締付け、およびそ の後の装置点検における締付けにおいても、計 算されたトルクを目標値として締付け管理が行 われました。

ゆるみの原因

本事例におけるゆるみ防止の基本的対策は、

一見万全であるかのように見えます。しかし、

そこにはトルク締付け法の重大な落し穴が隠れ ています。

図2は、本事例とは別のボルト・ナットを 使った実験で、締付けとゆるめを繰返し行った 場合のトルク係数と締付け力を測定した結果を 図1 ねじ締結体に作用する外力

ねじのゆるみ事例 −トルク締め付け法の落とし穴−

No.03019 

Technical Sheet 

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2 丁目 7 番 1 号

http://tri-osaka.jp/   Phone:0725-51-2525 

(2)

示します。この実験では、締付け回数が多くな るにつれて、ねじ面、座面の摩擦が増大して、

そのためにトルク係数が大きくなっています。

トルク係数が大きくなっているにもかかわらず、

同じトルクで締付けを行った結果、繰返し回数 が多くなるとともに締付け力が低下している様 子が見られます。

本事例の場合も、1年目、2年目の装置点検 で締め直しを行う度に、この実験と同じような ことが起きていたものと予想されます。装置点 検の度にトルク係数が増大していたにもかかわ らず、当初と同じトルクで締付けを行ったため に、結果的に締付け力が低くなってゆるみが発 生したものと想像できます。

ねじの締付けとゆるめを繰返し行う場合、ト ルク締付け法にはこのような落し穴があること に注意しなければなりません。

ゆるみ対策

本事例のように装置点検などでねじの締め直 しを行う場合でも、常に安全な締付けを確保す るにはどうすればよいのでしょうか?

上述のように、締付けとゆるめを繰返すこと によってトルク係数が変化するのであれば、締 付けを繰返す度にトルク係数の測定をやり直せ ばよいのです。しかし、一年後の装置点検でね じをゆるめた時点で、トルク係数の測定をやり 直すための試料として、それと同等のボルト・

ナット、被締結部材を用意するというのは実際 上不可能なことです。

そこで、より現実的で確かな方法として、ボ ルト、ナットなどのねじ部品を新しいものに交 換してしまうという方法があります。ねじ部品 を全て新しくすれば、ねじ面および座面の摩擦 が当初と同じ状態、すなわちトルク係数が当初 の値となって、当初と同じトルクで締付けるこ とができます。座面摩擦を当初と同じ状態に戻 すには、図3に示すような共回り防止機能を持 つ爪付き座金あるいは舌付き座金を座面に組み 込んでおきます。ボルト・ナットを交換する際 に、この座金も一緒に交換すれば、ねじ面摩擦 とともに座面摩擦も当初と同じ状態に復元する ことができます。トルク係数が当初と同じであ るかが不確実なときは、それら新しいねじ部品 であれば、予備試料を用意して締付け試験をあ らためて実施することでトルク係数の値を測定 し直すことも容易に出来ます。

むすび

ねじの締付け管理を行っている現場では、9 5%以上がトルク締付け法を利用しています。

トルク締付け法は、非常に簡便で扱いやすい方 法ですが、使い方を誤ると紹介したようなねじ のゆるみや、時にはねじの破損といったトラブ ルに結びつきます。

トルク締付け法を正しく利用するには、これ から締付けるボルト、ナット、被締結部材のト ルク係数の現在値が正確に把握されていること が大前提になります。前出の式(1)を十分理解 して、事故の無い安全なねじ締めを行ってくだ さい。

図2 繰返し締付け特性

図3 共回り防止座金

本件のお問い合わせがありましたら、機械金属部金属材料系 森岡亮治二郎まで。

Phone:0725-51-2708 

 (作成者 角谷 秀夫/2003 年 10 月 31 日)

参照

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