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水銀の功罪についての歴史的考察

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水銀の功罪についての歴史的考察

Mercury: to be Blessed or Banned? A Global and Historical Outlook

Lars D. Hylander(ラース D. ハイランダー)

Uppsala University, Department of Earth Sciences, Air, Water and Landscape Science

(ウプサラ大学地球環境科学部)

Villavägen 16, S-752 36 Uppsala, Sweden

(訳 佐竹 研一・中津 千恵子 立正大学地球環境科学部)

e-mail:[email protected] 摘  要

メタルとしての水銀は、その物質の特性を利用して各種の測定器や電気伝導体など として様々なところで利用されている。また、他の元素と結びついた水銀化合物の用 途は、例えば歯科治療用のアマルガムや殺虫剤としての有機水銀化合物など広範囲に わたっている。また水銀の反応性そのものは、主に塩素アルカリプラントや小規模な 金の採掘で利用されている。しかし、やがて水銀使用に伴う危険性が人や野生生物に 現れた深刻な水銀中毒の症例によって次第に明らかになり、水銀の使用を中止するこ とが水銀汚染を回避する最も簡単かつ確実な方法だということが分かってきた。

本稿では、5世紀にわたる水銀の生産と消費について、国別、地域別(大陸別)に、

また包括的に(全地球的に)過去から現在までを鳥瞰し、水銀の段階的削減の可能性に ついて考察を行う。水銀は産業革命以前に、主に銀や金の採掘で現在までの総水銀消 費量の半量近く(50%近く)が消費された。その消費の半分以上はヨーロッパ大陸であ り、4分の

1

はアメリカ大陸である。その中にあってスウェーデンでは、環境対策に よって近年一人あたりの水銀消費量が産業革命以前のレベルにまで減少した。しかし 塩素アルカリ工業の分野では、世界的にいまだに大量の水銀が消費されている。工業 国で大量に生産され保持されている水銀は、他国の小規模零細鉱山者への流出など 様々な問題を生み出す可能性があり、これを避けるためには国際的規制が必要である。

このことは水銀を含む廃棄物の適切な管理について、世界全体で早急に対応する必要 があることを意味している。

キーワード:塩素アルカリ工業、水銀、水銀アマルガム、水銀汚染、メチル水銀 1.はじめに

水銀は人類に発見されて以来、多くの迷信と結び ついてきた。確かに水銀は物質として特異である。

常温(室温)ではどんな金属も固体であるのに、水銀 は光り輝く金属でありながら液体である。また表面 張力が強く、床にこぼしたりすると、その凝集力に よって玉状になり、子供が遊ぶにはおもしろいが危 険な物質である。水銀はほとんどの金属と結合し

(ただし鉄は例外)、結合した金属の本来の特性とは 全く違った性質を持つアマルガムを形成する。錬金 術師が水銀はあらゆる金属、金さえもつくることが

できる

prima materia

(第一物質)だと信じていたこ

とも理解できる。錬金術師たちが試みた方法とは違 う方法ではあるが、事実、実際に水銀から金をつく ることも可能である。ただし、水銀を周期律表で隣 に位置する金に変えるには高エネルギーを伴う物理 現象を使った方法が必要である1)。しかし、これに は莫大なエネルギーを必要とするため採算が取れな

い。おまけに、造られた金は安定しない(安定同位 体にならない)ので、その金の所有者は金が崩壊し ていく際に生ずる有害な放射線にさらされることに なるのである。

水銀は以下の化学形態で存在する。すなわち、

1)金属または原子状水銀(Hg

0)として、2)水銀が酸

化されて

Hg

(Ⅰ)や

Hg

(Ⅱ)の水銀イオンとして、

あるいは塩や硫化物と結合し無機化合物として、

3) C

(炭素)と結合して、特にメチル基(CH3)と結合 してメチル水銀(CH3

Hg

、MeHgとも表記する)に 代表される有機水銀として。このうち環境中に自然 に存在する水銀は、主に原子状

Hg、 Hg

(Ⅱ)、

CH

3

Hg

3

つであり、ジメチル水銀(CH3

Hg

CH

3)やその 他の有機水銀化合物や

Hg

(Ⅰ)化合物は工業的に合 成される2)

本稿の目的は、水銀の毒性を知ることによって、

変化した水銀の世界的消費傾向と水銀使用の廃絶に 向けた努力を示すことである。スウェーデンとアメ リカ合衆国では、過去から現在にいたる水銀消費の

(2)

動向の記録が十分に残っている。これをもとに、他 の国の社会経済的、文化的、地学的情報を重ね合わ せることによって、その国の水銀消費を評価し、現 在、水銀削減運動が直面しているいくつかの障害に 焦点を当てながら、水銀量の段階的削減の可能性へ と議論をつなげていく。

2.水銀中毒の事例

2.1 人体への影響

原子状水銀の毒性については、大プリニウス

(Pliny the Elder)(紀元前

79

年没)によって既に報告 されている。また水銀塩の毒性は、ルイス・キャロ ルの「不思議の国のアリス」に出てくる「狂った帽 子屋」(“mad hatters”)に象徴されるように、フェル ト帽を作るときに毛皮を水銀化合物で処理したため 帽子屋が水銀中毒になったことによって証明されて いる3)

鉱山での労働災害に目が向けられるようになっ たのは、ほんの二、三十年前である。1990年代、

世界的に有名な、歴史ある水銀鉱山(スペインのア ルマデン鉱山にある

MAYASA)では、鉱山労働者は 1

6

時間以上、週に

2

日以上鉱山で働くことを禁 止されていた4)。さらに、週

2

日は近くの谷あいで 農作業をして体力回復をはかり、残りは休息を取る こととされていた。また、鉱山労働者は特別なカー ボンマスクの着用を義務付けられており、毎月血液 検査と尿検査で健康状態をチェックされ、もし水銀 値が高かった場合には休むように言われていた。

日本では、1940年代および

1950

年代に、すでに 深刻な水銀中毒を示唆する事件が起こっている。熊 本県の水俣で原因不明の病気によって

100

名以上が 亡くなり、痺れ、言語障害、痙攣性の腹痛、歩行障害、

失明、失聴、中風(麻痺)などの症状を呈した患者が 数千人にのぼった。しかしながら政府は、1965年 に新潟で同様の症例が報告されるまで、なんら適切 な対策を講じなかった5)。そして

1968

年、新潟の 工場で大量の水銀を排出する工程が閉鎖され、その 二、三ヵ月後には水俣でも閉鎖され、主にプラスチ ック製造の原料として使われるアセトアルデヒドの 製造過程の触媒としての水銀の使用は明らかに時代 遅れのものとなった6)。しかし、塩化ビニルの製造 過程で水銀塩を使う方法は

1971

年まで続けられて いた。

一方、メチル水銀やエチル水銀など種子のカビを 防ぐ目的で使用される有機水銀化合物の使用量の増 加は、有機水銀化合物による深刻な水銀中毒者を生 んだ。イラクでは、住民が有機水銀化合物で殺菌処 理された穀物で焼いたパンや殺菌処理された種を餌 とする家畜の肉や卵を食べ、水銀中毒になることが しばしばあった。1971年から

1972

年にかけて広範 な水銀中毒が起こり、6,530人が病院にかけこみ、

そのうち

459

人が死亡したが7)、病院までたどりつ けず、中毒死した人がどのくらいいたかは知る由も ない。

そのほか水銀の使用から受けるダメージを予測す ることが困難な例としては、アメリカ人の農家の例 がある。彼は自宅で飼っていた豚に(水銀化合物で)

殺菌処理された穀物を餌として与えていた。あると き、その豚をご馳走に供したときに悲劇は起こった。

一家の子供

3

人が精神病、失明、失語、麻痺といっ た深刻な神経系障害にみまわれたのである。妊娠中 の母には中毒症状は現れていなかったが、生れてき た子供には視覚障害と発達障害があった8)

重金属の毒性の専門家として世界的に有名な化学 者、アメリカ合衆国ダートマス大学化学部のカレ ン・ヴェッターハーン教授は、1995年に「物事の 結果を予見することが難しいことはよくある。判断

(予測)に必要な知識が常にあるとは限らないからで ある。その中で最善の判断(予測)をしなければなら ない。」と言っていた。しかし、その

2

年後、博士 は日常的な実験中にジメチル水銀を数滴こぼし、そ のうちの

1

滴が親指にかかったことによって亡くな った。ドラフトの中でラテックス製の手袋をはめて 作業をするという万全の備えをしていたにもかかわ らずである。この事故によって、ジメチル水銀の

1

滴が手袋にしみこみ、その毒性は認識されていた よりもはるかに強いことが明らかになった9)2.2 初期の警鐘指標生物としてのカラスとワシ

今日では、重金属やその他の環境汚染物質をモニ タリングする際に指標生物が広範に使われている。

例えば塩素アルカリプラントのモニタリングに使用 された地衣類や大気汚染のモニタリングに使用され た樹木の入皮、コケ植物による環境モニタリングが それである10)-12)。このようなモニタリング方法は、

カモメの死体が空から降ってきたり、ネコが「踊り ながら」水俣湾に泳ぎ出すという不自然な様子が見 られた

1950

年代には知られていなかった。この分 野における科学の新しい時代の始まりは、1950 年 にスウェーデンの科学者カール・ボルグがスウェ ーデンの

Örtofta、Scania

で採取したミヤマガラス

Corvus frugilegus

カラス科の鳥)の死体から高濃度 の水銀を検出したことをきっかけとしている13)。こ のミヤマガラスのほか、ホオジロの仲間(

Emberiza citrinella)、キジ(Phasianus colchicus)、ヨーロッ

パヤマウズラ(

Perdix perdix

)といった種子を食べ る小鳥やそれを餌食にするタカやオジロウミワシ

Haliaeetus albicilla L.)といった鳥へと、種子にコ

ーティングされたメチル水銀が食物連鎖を介して生 物濃縮され、移動していったことが明らかになった のである。スウェーデンでは、ワシは水銀のほかに も

DDT

PCB

に毒されて絶滅の危機にさらされ、

1971 年にワシを絶滅から救うプロジェクトが開始 された。かろうじて孵化したひなに毒の入っていな

(3)

い(水銀に汚染されてない)肉を食べさせることによ って、越冬できる個体数が大幅に増加した14)。その ように餌を与え続けた結果、水銀、DDT、PCBの 使用が禁止されたことも相まって、30年後にはワ シの個体数は元に戻った。しかしながら、食物連鎖 の上位には、環境中に放出されている新しい人為起 源の汚染物質による危機が依然として存在し続けて いるのである。

種子を食べる小鳥やそれを餌とする鳥(猛禽類)が 水銀化合物で殺菌処理した種子によって死んだこと で、1960年代のスウェーデンおよびフィンランド では水銀使用についての危機感が高まり、研究が進 められた。それにより、製紙工場や塩素アルカリ工 場近くで捕獲した魚にも高濃度の水銀が蓄積されて いることが明らかとなった15)-17)。このような歴史 的経緯を経て他の工業国でも公的機関が業界に対し て水銀や水銀化合物の毒性を認識させるようになっ たのである。

3.世界の水銀生産と消費

世界の水銀の消費量、特に年代別の消費量につい てのデータは乏しいが、水銀の生産量については水 銀鉱山で詳細に記録しているので、それから水銀の 消費量を推計することができる。ただし、旧ソ連お よび中国での生産量の記録は幾つかの要因で不完全 なため推定値を使っているので、世界の水銀生産量 は控えめな数字になっている18)。第一次世界大戦終 結時の

US National Defense Stockpile

(米国国家防衛 備蓄-訳注:有事の際、他国に依存することなく国 防を遂行することを目的として

1939

年に成立され た)のときを除いては、水銀の世界市場における備 蓄量が

2、3

年分を超えていることはない。この備 蓄量は現在では

4,435 t

を維持しているが、これは

1990

年代初めに売り切れてしまった後、徐々に増 えてきた数字である。

登録されている水銀の世界生産量の約半量はヨー ロッパ産で(図 1)、スペインの水銀鉱山だけで世界

の生産量の

3

分の

1

の水銀が採掘されている18)。約

4

分の

1

はアメリカ産で、残りはアジアの主にキル ギスタン産で、その他、旧ソビエト連邦、中国と続 く。ただし、アジアの生産量については輸出量を生 産量としており、国内消費量が含まれていない。し たがって、実際の生産量とは開きがあるため、先に 述べたように概算値である。水銀の生産量は時代や 鉱床により激変しているが、水銀の産出そのものは 主に西地中海から中央アジア(現在では東に移行し てきているが)にまたがる水銀鉱脈から得られてい る18)

環境問題としては、銅、金、鉛、亜鉛等の硫化物 を精錬する際に副産物として得られる水銀量の増加 が問題となるだろう19)。この水銀の行方については現 在あまり知られていないが、量が増えれば人体や環境 に対する危険度も増すので、注意すべきである20)。 また精錬所の排出ガスから水銀を取り除いたとして も、この水銀がメッキや零細な金採掘の現場で使わ れれば、人体曝露や環境中への排出については危険 を取り除いたことにならない。

世界全体では、水銀の消費量および生産量のピー クは

20

世紀半ばであるが、水銀が主に銀や金の採 掘の際に使われたスペインの植民地や北米では、

そのピークはそれよりも少し早い20)。ヨーロッパ 諸国および日本での一人あたりの消費量のピーク は

1960

年代から

1970

年代初頭にかけてであるが、

その消費量にはかなりの差がある(表 1)。スウェー デン、ドイツ、英国、アメリカ合衆国および日本で は、一人あたりの最大年間水銀消費量は

10 g

を超 えている。これから分かるのは、化学(薬品)業界(産 業、工場)や製紙業界(工場、産業)で使用される塩 素や苛性ソーダ生産を支える塩素アルカリ工場で水 銀が工業用に大量に消費されていることである。ア メリカ合衆国では、消費ピークは他よりも

1

世紀ほ ど早いが、それは水銀が金アマルガムに(金鉱でア マルガム法に)使われており、一方で塩素アルカリ 工場では水銀の代わりにアスベスト・ダイヤフラム 法(アスベスト隔膜法)を使っているため、工業用の

図 1 世界に�ける水銀生産�の����������� 世界に�ける水銀生産�の����������� 世界に�ける水銀生産�の�����������

(�ー�����������カ���生産���.�ー�����������カ���生産���.�生産���.生産���..

(枠内の上部が�ー���産の占める割合�

(4)

水銀消費量はスウェーデンや日本よりも少ないから である。オランダやデンマークなどの工業国では、

1

人あたりの年間水銀消費量は

5 g

よりも少ないが

表 1)、それは、食品およびその他の産業での水銀 消費が少ないからである。金の採掘ブームで水銀が 使われる以前、

1970

年代初期の工業後進国の

1

人あ たりの年間平均水銀消費量は約

1 g

であった(表 1)。

4.消費�ターン

4.1 金属水銀の利用

4.1.1 �マルガム法と小規模の金の採掘

時代や地域によって水銀の利用パターンは大きく 変化している。16世紀末までは、金属水銀は錬金 術や金メッキの際のアマルガム(表面に金アマルガ ムを塗布し、後に加熱して水銀を蒸散させる)に使 用されるにとどまっていた。後に、同様の方法で板 ガラスから鏡を作るときには銀アマルガムが使われ るようになった21)。この新しい「発見」によって、

金属水銀の生産量が飛躍的に増加した(図 1)。この 水銀は、それからのち

3

世紀以上にわたって、主に ラテンアメリカでは銀を、北米では金をアマルガム 法によって抽出するのに使われた(図 2)。南米の銀 の生産量は、最初の

10

年間はヨーロッパ流の精錬 技術を採用していたために少なかったが、1555年 以降アマルガム法が採用されると飛躍的に増加し た。アマルガム法の導入により薪の使用量は激減 し(これは精錬所で薪がほとんど使われなくなった ことによる)、またヨーロッパに比べ金属含有量が 少ない鉱石からも多くの銀が抽出されるようになっ た。興味深いことに、スウェーデンはじめヨーロッ パ諸国では銀の精錬に鉱石を溶かして銀を取り出す

方法が主に使われ、アメリカでは主にヨーロッパ産 の水銀を使ったアマルガム法が採用された。

スペインのアルマデンやスロヴェニア共和国のイ ドリアから南米へ、鉱山用として

19

世紀末までに

130,000 t

の水銀が輸出された。また植民地からの

独立後は

19

世紀末まで、銀はアマルガム法によっ て中南米で生産された。それに使われた水銀消費量 の記録はないが、Nriaguは、銀の全生産量の

70%

がアマルガム法によると仮定すると

70,000 t

の水銀 が使われていると見積もっている22)

アメリカ(大陸)の金銀鉱業に使われた水銀は、そ れまでに採掘された水銀の約半量である。アマルガ ム法が隆盛になってから

1

世紀以上経つが、それは 地質学的観点からすれば、ほんの短い期間である。

土壌有機物と結合した水銀や酸化物や水酸化物、そ の他、地表に降下沈着した水銀と土壌化合物との関 係についてはあまり知られていないが、水銀放出の 影響は何世紀も続くと思われる。温帯や北方森林帯 では、降下沈着した水銀は最初は有機物と結合する が、やがて有機物が結晶化、鉱物化していく段階で 放出される23)

北米では

1799

年にノースカロライナ州で既に金 鉱が発見されているが、1847年にカリフォルニア 州で金鉱が発見され、北米のゴールドラッシュ(時 代)が始まった。さらに、半世紀後にはカナダ西部 のクロンダイクとアラスカで(ゴールドラッシュ の)ピークを迎え、水銀も当時の世界生産量の約半 分が消費された24)。その結果、環境中に水銀が拡散 した。それは土壌や底質中、あるいは金鉱域の河川 に生息する魚介類の水銀含有量が増加したことに より明らかとなり、魚介類の摂取制限につながっ

25), 26)。1850年から

1900

年の間にアメリカ合衆国

表1 ��水銀消費�の����ー����カ�����カ合���その�の�水銀消費�とその内� ��水銀消費�の����ー����カ�����カ合���その�の�水銀消費�とその内� ��水銀消費�の����ー����カ�����カ合���その�の�水銀消費�とその内�20�.

Year Consumption a Consumption pattern(%)(%)%)

(g persong person-1 y-1b(ton yton y-1 Chlor-

alkali Catalysts Fungi-, pesticides Paper

industry Paint Pharma-

ceutical Dental Laboratory Electro-

techn. Batteries Control instrum. Other

Japan 1957-1960 10.6 1064 29.2 25.1 14.0 c c c c d 21.1 d 5.8 e d e 4.7

1963-1969 16.8 1666 34.3 28.1 11.1 c c c c d 21.0 d 3.9 e d e 1.7

1970 12.023 1254 70.7 0.1 3.0 c c c c d 19.5 d 4.5 e d e 2.2

1971 8.5 880 74.0 0.2 0 c c c c d 13.6 d 9.9 e d e 2.3

1972 6.5 690 60.0 0.0 0 c c c c 4.9 f 4.9 f 25.1 f 5.1

France 1970 5.9 298 66.1 0.0 1.5 0.0 0.0 1.7 0.0 0.0 10.1 d 0.0 20.6

Netherlands 1970 4.1 67 29.9 0.0 6.0 0.3 35.2 0.3 0.3 6.0 0.0 d 0.0 22.7

Sweden 1963-1969 10.9 91 58.8 0.0 g 21.0 g h 0.2 14.3 i 2.4 1.2 j 2.1

1970 6.9 77 75.4 0.0 g 3.9 g h 0.1 17.3 i 1.2 1.3 j 0.8

W.Germany 1970 14.9 902 24.0 3.0 4.0 1.0 13.0 1.0 3.0 4.0 26.0 d 10.0 11.1

1971 10.1 624 53.8 6.7 7.2 0.0 4.6 0.1 3.4 1.5 5.2 d 2.9 14.5

All W.Europe 1972 6.7 2243 52.3 3.1 12.3 c c c c 4.6 f 7.7 16.9 f 3.1

USA 1972 8.7 1829 22.6 1.9 22.6 c c c c 3.8 f 20.8 24.5 f 3.8

1972 8.7 1826 21.8 1.5 3.5 0.0 15.5 1.1 5.6 1.1 18.1 11.3 12.4 8.1

Others k 1972 1.2 3693 51.4 l m m m m m f 14.0 l 29.9 m f 4.7

Total World 1972 2.2 8454 46.1 l m m m m m f 14.3 l 35.5 m f 4.1

a Consumption by industry including Hg in products for export, Hg in imported consumer products is excluded.Consumption by industry including Hg in products for export, Hg in imported consumer products is excluded.Consumption by industry including Hg in products for export, Hg in imported consumer products is excluded.

b Population sizes from UN, 1973–1975. Per capita consumption 1970 in Belgium-Luxemburg 10.5, Denmark 4.3, Italy 6.1, Netherlands 4.1, and UK 4.2 g Hg y-1(UK 11.9, 6.7, 12.8 in 1969,Population sizes from UN, 1973–1975. Per capita consumption 1970 in Belgium-Luxemburg 10.5, Denmark 4.3, Italy 6.1, Netherlands 4.1, and UK 4.2 g Hg y-1(UK 11.9, 6.7, 12.8 in 1969,Population sizes from UN, 1973–1975. Per capita consumption 1970 in Belgium-Luxemburg 10.5, Denmark 4.3, Italy 6.1, Netherlands 4.1, and UK 4.2 g Hg y-1 (UK 11.9, 6.7, 12.8 in 1969,(UK 11.9, 6.7, 12.8 in 1969,UK 11.9, 6.7, 12.8 in 1969, 1971, 1972)...

c Paint and pharmaceuticals included inPaint and pharmaceuticals included inPaint and pharmaceuticals included in “Fungicides, pesticides.”“Fungicides, pesticides.”“Fungicides, pesticides.”

d "Laboratory" includes inorganic chemicals used in dentistry, batteries etc."Laboratory" includes inorganic chemicals used in dentistry, batteries etc."Laboratory" includes inorganic chemicals used in dentistry, batteries etc.

e Control instruments included inControl instruments included inControl instruments included in “Electrotechnical.”“Electrotechnical.”“Electrotechnical.”

f Not indicated.Not indicated.Not indicated.

g Fungicides and pesticides included in “Paper industry.” Use in paper industry prohibited from 1969.

h Data not available, marginal quantities of Hg used.

i No registered production of laboratory chemicals.

j HgCl2 added to manganese dry cells; Hg oxide cells were not produced in Sweden.

k World excluding Japan, W. Europe, USA.

l Catalysts included in “Electrotechnical.”

m Fungicides, pesticides, paper industry, pharmaceutical, dental included in “Batteries.”

(5)

とカナダで採掘された水銀

63,300 t

のほとんどが北 米大陸およびオーストラリアの金鉱で(金採掘に)使 われた(表 1、図 1)。1880年ごろにはシアン化合物 でろ過する方法が導入され、二、三年のうちに広ま っていったが、その後、約

10

年間は依然として金 の精錬には大量の水銀が使われていた(図 2)。

1980

年代に金価格が上がると、水銀を使ったア マルガム法での金採取が主流になった。当時は、ラ テン・アメリカ、中央アフリカ、中国、東南アジア でも、この方法が使われた。このゴールドラッシュ 時に、2,000 tもの水銀がアマゾン川に排出された と推定されているが27)、ブラジルでは鉱山が疲弊し たために量は減ったものの、いまだアマゾン川への

たれ流しが続いている。その結果、ブラジルの金鉱 労働者の多くは近隣諸国からの季節労働者で、金鉱 では今日でもアマルガム法が使われている。

中国、モンゴル、ロシア(主にはシベリア)では、

正確な数量は分からないが、今でもかなりの量の国 内産水銀が金を抽出するのに使われている。中国で は

1985

年以降28)、ロシアでは

1990

年以降29)、公的 にはアマルガム法は禁止されているにもかかわら ず、中国でアマルガム法に使われる水銀の消費量は

He

28)によれば

1995

年は約

80 t

であるとされて いるが、最近の研究では、実際はこれよりはるかに 多いとされている(表 2)。Sukhenkoと

Vasiliev

は、

1990

年代初期のシベリアにおけるアマルガム法で の水銀排出量は年間

30 t

と報告している29)。先の ゴールドラッシュ時の東南アジアにおける水銀の消 費量と排出量はよく分かっていない。Appletonら によれば、金採掘のピーク時の

1986

年~

1988

年に

140 t

の水銀がフィリピンのアグサン川流域に放

出されたことが報告されているが、この期間(時期)

以外はよく分かっていない30)

現在では、世界約

50

カ国で、1,000~

1,500

万人 が小規模の金採掘者(または金職人ともいう)として 働いていることが知られている。そのほとんどが水 銀を使い、年間

500

700 t

の水銀を排出している

表 2)。水銀価格の高騰とキャンペーンのおかげで 彼らの水銀使用量が減ったため、水銀排出量は確実 に下がってきている。その一方、金の価格が上昇し ていることで新たな金採掘者が次々と登場し、その 数は金の枯渇のため採掘現場を離れるものの数より も多いと推定される。

蒸留器(レトルト)を導入して水銀排出量を減ら し、それによって労働者の健康被害を減らそうとし た現場もあるが、蒸留器を使っても安全なレベルま で水銀の排出量を減らすことができないことが分か った31)。現在、市場では、水銀を使う方法を続ける のではなく、水銀を使わない他の方法が増えてきて いる32)

水銀アマルガム法は、効率の悪い方法だというこ とを認識すべきである。この方法では、50%以上の 表 2 ���金採掘��のいる��に�ける 200� �の  ���金採掘��のいる��に�ける 200� �の���金採掘��のいる��に�ける 200� �の

推定水銀排出�

Region and country Hg(t)(t)t) Region and country Hg(t)(t)t)

Africa Americas

Burkina Faso -b)b) Bolivia 10

Central African Republ. Brazil 15-202020

Two Congos 00 Canada >00

Ethiopia Chile 1

Gambia -b)b) Colombia 30-404040

Ghana 4666 Ecuador 2

Guinee Conakry -b)b) French Guyana e) 3

Madagascar -b)b) Guyana 5

Mali 5 Peru 20-353535

Malawi 00 Suriname 8

Mozambique 3555 USA >00

Senegal -b)b),c),c),c),c) Venezuela 10-151515 South African Republ. 0.5

Sudan 3555 Central America 2555 Tanzania 10151515 Sum >106->144106->144->144144 Zimbabwe 10202020

Sum 36->36->->57575757 Other areas Former Soviet Union

Asia countries 20

China d) 200300300300

India Australia

Indonesia 100150150150

Laos 5

Philippines 20

Myanmar 00 World total >487->696487->696->696696

Vietnam 00

Sum 325->475325->475->475475

a) Revised from Hylander and Meili, 2005. Small-scale gold miningRevised from Hylander and Meili, 2005. Small-scale gold miningRevised from Hylander and Meili, 2005. Small-scale gold mining

(recreational)recreational)is also practised in European countries such as Finland andis also practised in European countries such as Finland andis also practised in European countries such as Finland andis also practised in European countries such as Finland and Sweden but without using Hg.

b) Mercury not used by tradition and conservatism.Mercury not used by tradition and conservatism.Mercury not used by tradition and conservatism.

c) Law banning the use of Hg for gold mining.Law banning the use of Hg for gold mining.Law banning the use of Hg for gold mining.

d) Figure for 1997.Figure for 1997.Figure for 1997.

e) Law banning the use of Hg for gold mining.from January 1, 2006. Maxson, Law banning the use of Hg for gold mining.from January 1, 2006. Maxson,Law banning the use of Hg for gold mining.from January 1, 2006. Maxson, 2006.

図 2 1��1 ���の���カ合��に�ける水銀消費内�2  1��1 ���の���カ合��に�ける水銀消費内�1��1 ���の���カ合��に�ける水銀消費内�

(�サイクル分含む�..

1993 ��前は�サイクル水銀�は 0�� 30����が�1990 ���� 30����が�1990 ��30����が�1990 ��

末にはほとんどの水銀が�サイクルされる�うに���.� ��の�.� ��の�� ��の�

均値は�USGS1��3 � 200� �の��消費�をもとに�出している.� 200� �の��消費�をもとに�出している.200� �の��消費�をもとに�出している.�の��消費�をもとに�出している.の��消費�をもとに�出している.

(6)

金が取り出せないことがよくあるため、アマルガム 法の後に残った金をシアン化合物ろ過法で回収する ことがよくある。それによって水銀の排出量が増加 し、環境をますます悪化させる。加えて、アマルガ ム法で処理することで金の回収率も低下する32)4.1.2  歯科用�マルガムに使われる水銀と

その排出(��

水銀アマルガムは虫歯の充填剤として虫歯治療 に

150

年以上も使われてきた。そのため、歯科医 およびその患者は直接的に水銀にさらされ、また、

一般大衆および環境は火葬場から排出される水銀や 家庭排水、歯科医院からの排水に含まれる水銀によ って間接的に水銀の危険性(毒性)にさらされてきた のである。歯科医院からの排水に含まれる水銀の毒 性と生物濃縮する性質を考慮し、スウェーデンでは

1980

年代にアマルガム・セパレーター(アマルガム 分離装置)が導入された。しかしながら、これらの アマルガム・セパレーターは、規格検査で

95%以

上の水銀除去が求められているにもかかわらず、実 際に使用された場合の除去率についてはほとんど調 べられていない。

排水に放出される水銀の実際量の測定は、スウ ェーデンの

12

の歯科医院に沈殿タイプのアマルガ ム・セパレーターを設置して行われた。その測定は、

1

回目は従来のオペレーション状態で、2回目は改 良型を高水圧で排水システムを洗浄する方法で、連 続する

4

開業日の排水全てを集めて行われた。そし てその結果、歯科医院の排水に含まれる水銀量は、

改良型を高水圧洗浄、アマルガム・セパレーターや フィルターを定期的に交換しながら使うことで、減 らすことができるだろうということになった33)。し かし加えて、歯科医院からの水銀排出を止めるため には時間はかかるが唯一の方法として、歯科医療に 水銀を使わないことだということも分かった。した がって、歯科用アマルガムが禁止され、900万のス ウェーデン人の虫歯に充填されている

30 t

の水銀 アマルガムがなくなるまでは34)、既に市場に出回っ ている沈殿タイプのアマルガム・セパレーターや現 在開発中のものを単独、もしくは一緒に使うことで、

現在のアマルガム充填剤を入れたり、磨いたり、取 り除いたりすることによって排出される水銀を少な くするようにすべきである。

Hylander

は、アマルガム・セパレーターを使用す

ることで市の排水システムから水銀量を許容レベル まで除去できるかどうか調査した35)。この調査では、

市販の

3

つのタイプのアマルガム・セパレーターを 現場に設置した。これらのセパレーターは、デンマ ークおよび

ISO

(国際標準化機構)で

99%水銀が除去

できるとされているものであり、除去の方法は沈殿 法である。また、これに合わせて現在開発中の薬品 を使って沈殿させるプロトタイプのセパレーターも 同時設置した。この調査の結果は、市販のセパレー

ターの実際の処理能力(除去能力)は水銀除去率

70%

91%、処理後の排水の水銀濃度は平均 1.5 mg L

1 であり、製造元や認定機関が発表した臨床現場での 想定除去率をはるかに下回るものだった。しかしな がら、プロトタイプのセパレーターでは、水銀除去 率

99.9%、処理後の水銀濃度は平均 0.004 mg L

- 1で あった。沈殿タイプのセパレーターは、構造上の問 題で排水処理プラントに甚大なダメージを与える水 銀フラクションを除去できないのである。ISOプロ トコルではアマルガム・セパレーターのテスト時に この水銀フラクションを考慮に入れてなかったので、

この点は改良が必要である。

スウェーデンにいる

7,300

人の歯医者の

85%がフ

ルタイムで歯科治療に携わっており、使われている デンタル・チェアは

6,200

台である。水銀排出量の 標準値をデンタル・チェア

1

台あたり年間

5 g

とす ると、総量では年間

31 kg

になる。もしアマルガム・

セパレーターが機能していない(正しく作動しなか ったり使われなかったりした)場合には、スウェーデ ン全体では年間

100 kg

近い水銀が歯科医院から排 出されることになる33), 36), 37)。これは水質の水銀汚 染源としては大変なものであるが、もし水銀除去能 力の高いセパレーターを設置すれば、この数字は年 間

0.1 kg、デンタル・チェア 1

台あたり

0.016 g

にま で下げることが可能であると思われる35)

スウェーデンでは、2008年末までには歯科用充 填剤に水銀が使われなくなるとされているが34)、 現在排水中の水銀の

95%以上を占めるとされてい

る古くなった(磨り減った)アマルガム充填剤の廃棄 や、また既に歯科医院の排水管にたまっている水銀 が、その後も漏れ続けることが考えられる。これは 慎重に考え、対処しなければならない事柄(問題)で ある。確かに歯科医たちは自発的に水銀の排出を減 らしたいとしているが、スウェーデンやアメリカ合 衆国ではセパレーターの設置が義務付けられていな いため、実際にお金を払ってセパレーターを設置し ようとする歯科医は多くない36), 38)

水銀は毎日の食物の咀嚼でアマルガム充填剤が削 られることによっても、排泄物経由で廃水中に放出 される。スウェーデン全体では充填されているアマ ルガムの水銀は

40 t

で、そこから年間約

100 kg

の 水銀が排泄されている34), 37)

アマルガム充填剤の水銀

100

200 kg

は、最終 的には火葬の際に大気中に放出される。それは、廃 ガス処理設備のある火葬場がスウェーデンでは約半 数しかないからである34), 39)。また、排煙浄化装置で は、廃ガス中の水銀を完全に除去することができな いからである。火葬場から水銀が大気中に拡散する のを防ぐには、火葬前に故人からアマルガム充填剤 を取り出せば済むことである。これは、検死や火葬 の際に義務づけられているペースメーカーを取り出 すことに比べれば、はるかに死者の尊厳を傷つけな

(7)

い正当な環境に優しい方法である。スウェーデンで は、大気中に放出される水銀源としては、歯科用ア マルガムに次いで精錬所と塩素アルカリプラントの 水銀電極があげられるが、この

2

つを足しても火葬 場から大気に拡散される水銀量のほうが多い34), 39)。 スウェーデン以外の国々でも歯科用アマルガムか らの水銀汚染の危険性についての認識が深まってい る。例えば、デンマークでは歯科用アマルガムの挿 入が臼歯を除いて禁止されている40)。EUでは、歯 科用アマルガムに使われる水銀消費量は年間総消費

量の約

30%で、塩素アルカリ工業についで第 2

であるため41)、現在では使用を制限する方向に向か っている42)。日本では、排水中の水銀値が規制され、

1999

年のデータでは

7,000

万件の充填治療のうち水 銀アマルガムが使用されているのは

3.7%だけであ

43)

4.1.3 水銀電極を使う塩素�ルカ�工�

20

世紀になると、金銀の精錬用のみならず工業 用途が拡大したために、世界的に水銀の生産量およ び消費量が増加した(図 1 � 図 3)。当時も今も、

塩素アルカリ工業では水銀が大量消費されている。

ここでは塩水を電気分解して塩素、水素、水酸化ナ トリウム(稀にカリウムも)を生産するのに水銀が使 われるからである。1996年には、全生産量の

40%

にあたる約

1,344 t

の水銀が、世界全体の塩素アル カリプラントで消費された。現在では、西ヨーロッ パと北米の塩素アルカリプラントでの

2000

年の水 銀消費量は全生産量の

9.4%にあたる 173 t

と報告 されているので2)、30%あるいはそれ以下にまで減 少していると推定される。西ヨーロッパおよび北米 以外の塩素アルカリプラントでの水銀消費量につい ての情報は十分ではない。ヨーロッパにおける塩素 アルカリプラントでは、その半数近くがいまだに水 銀セルを使用しているが、それはアメリカ合衆国の

10%に相当する。一方、日本の工場では 15

年以

上も前から水銀を使わない製造方法が取り入れられ

ている44), 45)

塩素アルカリプラントから大気や排水中に直接放 出される水銀量(測定値)は、ここ数年、確かに減少 している。それは、西ヨーロッパおよび北米では特 に顕著であるが、それでも西ヨーロッパでの水銀排 出量は年間約

10 t

にものぼっている46)。また、西 ヨーロッパの塩素アルカリプラントで年間

135 t

の 水銀が消費されることで、水銀を含んだ大量の汚泥 が生じている47)。政府や地方自治体への定期報告が されるようになったほんの数年前までは、水銀消費 量の約 10%が排出されたり製品に混入されている とのみ説明されていて、汚泥中の水銀については何 ら触れられていなかった。上述の西ヨーロッパに属 する

12

ヶ国の年間消費量が

135 t

であるのに対し、

現在では、25の

EU

加盟国の水銀消費量は年間約

190 t

である。この

190 t

のうち約

86 t

は廃棄され、

32 t

は工場内でリサイクルされ、残りは製品中(塩 素、水酸化ナトリウム等)に残留しているか、ある いは環境中に放出されるほか、詳細な行方が分から ない分とされている44)

廃棄物として出される水銀は、将来的にも問題と なる。もしこれらの廃棄物の水銀をリサイクルをし ないでゴミ埋め立て地に捨てるとするならば、その 廃棄物の生産者は将来にわたってゴミ埋め立て地を 維持するための費用を負担しなければならない。

水銀電極を使って塩素や水酸化ナトリウムを生産 するのは、もはや経済的にも良い方法とは言えな い。隔膜法なら水銀を使用も排出もしないし、エネ ルギー消費も少なくて済むのである。2007年まで に

EU

のすべての塩素アルカリプラントに水銀を使 わない方法を導入することは、経済的にも社会的に も可能だと考えられている(Dir. Jean-Marie Cadiou

and Head of Unit Per Sørup, Institute for Prospective Technological Studies, at a EU Joint Research Centre Presentation in Stockholm, 15 March 2001)。また、

塩素アルカリ工業における(水銀の)大気放出削減 に関するパリ委員会決議(90/3 of 14 June 1990)で

「2010 年までに水銀セルは完全に段階的に廃止され 図 3 1��1 ���のス��ー�ンに�ける水銀消費内�  1��1 ���のス��ー�ンに�ける水銀消費内�1��1 ���のス��ー�ンに�ける水銀消費内�

(�サイクル分含む�..

塩素�ルカ�工場から出る�サイクル水銀�は明らかにされてい�いの で�このグラフには含まれ�い.1990 ��に��で��され���水銀に.1990 ��に��で��され���水銀に1990 ��に��で��され���水銀に ついては�消費�に含まれている.��の中には����(19�0 ��には.��の中には����(19�0 ��には��の中には����(19�0 ��には

�0���温度計�体温計�測定��電気��が含まれる.� ��均は��消費.� ��均は��消費� ��均は��消費

�をもとにしている20�

(8)

るべきである。」との目標が採択された47)。これを 受け、塩素アルカリプラントにおける水銀セル使用 を

2010

年までに廃止することを目標とすることと なった。この方針を受けて、スウェーデンの塩素ア ルカリプラントは

2010

年までに水銀を使わない製 造方法に変更されることになった。スウェーデンに はもともと水銀セルを使用する工場が

10

社あった が、現在は改築予定の工場が

1

社残っている。しか しながら、ヨーロッパの塩素アルカリ製造業者を代 表する組織であるユーロクロール(EuroChlor)は、

「2010年までにということで採択はされたが、水銀 セルの完全撤廃はそれよりも遅れる、場合によって は

2020

年以降になる」との見解を示している44)

インドの塩素アルカリ工業界は、2012年までに 完全に水銀を使用しない生産体制に自主的に移行 すると発表した(Dr YR Singh, Executive Director,

Alkali Manufactureink Association of Incia, 28 Sep.

2007 at the workshop

“Mercury: Reducing uses,

emissions and impacts in India,” organized in New Dehli, India, by Toxicslink, www.toxicslink.org)。

インドのそうした表明は、ユーロ・クロールの見 解以上に、塩素アルカリ業で水銀を使用すること の危険性を周知させることとなった。インド政府 は、1991年以降、水銀電池を使用した塩素アルカ リプラントの新規操業を禁止している(Prashant

pastore, Sr. Programme Coordinator Toxics Link, pers. comm. 15 Nov. 2007)。環境森林省汚染防止

中央委員会(Ministry of Environment and Forest

Central Pollution Control Board)は、「環境保護の

ための企業責任憲章(宣言)(Charter on Corporate

Responsibility for Environment Protection)

(CREP)」を案出するために、一連の企業間相互会 議を開催した。水銀電池を使用しない製造方法への 移行は、南北アメリカ大陸でも始まっている。

4.1.4 電�製品や計測��に使われている水銀

1992

年に禁止される以前は、スウェーデンでは 大量の水銀を使っている体温計を輸入していた。ま た温度計(寒暖計)、計測機器、リレー(継電器)、ス イッチ、整流器といった体温計ほど水銀を使わない ものは国内生産していた(図 3)。スウェーデンでは、

第一次世界大戦から第二次世界大戦までは、計測機 器や電化製品に大量の水銀が使われていた。

一方、アメリカ合衆国では、2つの大戦にかかる 期間以降もずっと電化製品や計測機器等に大量の水 銀が使われ続けてきた。それはメーカー数社が水銀 を使わないタイプの体温計や家のサーモスタット、

車のスイッチ等への切り替えを嫌ったからである

図 2、図 3)。しかしそんなアメリカ合衆国におい ても、いくつかの州が水銀体温計や水銀を使った新 商品の製造、販売、流通を禁止するなど、変化の兆 しが見えている48)

比較的少量の水銀は、スウェーデンおよびアメリ

カ合衆国両国でもいまだ蛍光管に使われている。少 量とはいえ蛍光管中の水銀をリサイクルしなけれ ば、環境中に排出される水銀はかなりの量になる。

4.1.� 金属水銀のその�の用途

水銀は潜水艦のバラストやジャイロスコープ、灯 台、水/空気ポンプなどに使われているが、現在で は、これらの製品(商品)はどれも水銀を使わないタ イプのものに変更可能である49)。また、少量の水銀 は、いまだポーラログラフィー分析やプラズマ・デ ィスプレイに使われている50)。家庭内で習慣的に

(儀式的に)使われる水銀は、子供も含め直接人がそ の危険にさらされるので大きな(重要視すべき)問題 だが51)、水銀にまつわる迷信に線引きをするのは難 しいので、水銀廃絶のための効果的な方法がなかな か得られない。

�.水銀�合物の用途

�.1 触媒に使われる水銀塩

触媒として様々な水銀塩が使われて、大量の水銀 が排出されている。触媒の定義は、自身は変化せず に化学反応を促進する物質ということである。触媒 として水銀塩が使われると、水銀が合成される製品 にとって必須の物質ではない場合でも、大量の水銀 が排水中に放出される。水俣ではアセトアルデヒド の製造に

HgSO

4が使われたことで、190~

225 t

の 水銀が排出された(アセトアルデヒドはプラスチッ ク製造の原料である)52)。また、塩化ビニル(上記と は別種のプラスティック)の製造工程では塩化第二 水銀(HgCl2)が使われ、アセトアルデヒドほどでは ないがやはり水銀が排出された。排水中に含まれる 無機水銀およびメチル水銀は、主にアセトアルデヒ ドの製造工程から生じたものである。

日本では、

1971

年に塩化ビニルの製造工程は 閉鎖された。今日では、この工程は

VCM

(vinyl-

chlorid-monomer;

塩化ビニルモノマー)工程と呼ば れているが、近年、中国でビル建設用の配水管など の

PVC

の需要が高まったために、VCMの製造が復 活した。その結果、現在年間数百

t

の水銀が中国の

VCM

製造工程で消費されている。また水銀触媒は、

ポリウレタンやビニルアセテートの製造にも使われ ている。

�.2 顔料としての水銀

辰砂(HgS)は顔料、薬、防腐剤として何千年にも わたって使われてきた。中国では

1,000

年以上も前 から、明るい赤/オレンジ色(朱色)の顔料は、寺院 や宮殿の塗料から紙幣に押印する朱肉まで幅広く使 われてきた。中国でどのくらいの量の辰砂が採掘さ れたのか記録は残っていないが、イドリア(スロヴ ェニア共和国西部にある水銀鉱山とレースの町)

では、500年間に

7,628 t

の水銀に相当する顔料が 生産され、そのほとんどは辰砂であった。辰砂はア

(9)

メリカ合衆国においても重要で、1882年には辰砂 を製造するために

195 t

の水銀がニューヨークに送 られた。これは、アメリカ合衆国における同年の金 銀採掘に使われた水銀量(205 t)に匹敵する45)。当 時、どれほど辰砂が重要だったかは、辰砂を製造す るためにアメリカ合衆国から中国へ、上記とほぼ同 量(182年に

239 t)の水銀が輸出されていたことか

らも分かる。アメリカの辰砂産業は

19

世紀中は水 銀を大量に消費し続けたが(図 2)、その後減衰し、

1940

年代には硫酸アンチモンや鉛丹、ヘマタイト といった安価な化合物に完全に取って代わられた。

�.3 有�殺菌剤としての用途

有機水銀化合物は生物に対する毒性が強く、塗料 の防腐剤(抗菌剤)や紙パルプの粘着剤(のり剤)、種 子や植物の殺菌剤として使われている。スウェーデ ンでは、

1940

年代に殺菌剤として使われ始めると、

急速にその生産を伸ばし、1950年代末期には年間

輸入量

140 t

の約半分の水銀が殺菌剤生産に消費さ

れた。そのほとんどは製紙工業に(水銀の年間輸入

量の

42%)、2%は塗料の防腐剤(抗菌剤)に、6%は

農業用に使われた(図 3;明細はなし)。スウェーデ ンで生産される農薬の

3

分の

2

は輸出されたが、そ の主な輸出先はデンマークであり、このためデンマ ークの工業用の水銀消費量は少ない(表 1)。しかし 前述したように、農業用の水銀使用量は数%にも かかわらず、それによって鳥や動物が死んだこと が人々の関心を引きつけた。結果として、1967年 末までに粘着剤に水銀が使われなくなり、1973年 以降はボート用の抗菌ペイント、1988年以降は 農薬に水銀が使われなくなり、この年、National

Chemicals Inspectorate

1970

年代に水銀殺菌剤が 禁止されて以降、例外的に認めていた水銀含有殺菌 剤の登録を抹消した。

スウェーデンよりは小規模ながら同様の傾向はア メリカ合衆国でも見られた。1950年代には年間水 銀消費量

1,830 t

17%が有機水銀化合物の生産に

使われ、その内訳は製紙用粘着剤に

3%、抗菌ペイ

ントに

4%(例えば船体のラテックス・ペイントを

長持ちさせる、湿気でペイント表面がカビないよ うにするために使われた)、殺虫剤を含む農業用が

11%である(

図 2;明細はなし)。この数字は、アメ

リカ合衆国の経済活動が林業よりも農業に重きを置 いていることを反映している。一方、水銀化合物を 使わない製紙用粘着剤や農薬などは、アメリカ合衆 国とスウェーデンでほぼ同時期に導入され、アメリ カ合衆国では抗菌ペイントの生産が

1980

年代まで に

3

倍以上の伸びを示し、水銀の使用は減少した。

メーカーからの要請で、EPAは

1993

年に最後の

2

つになっていた水銀含有殺菌剤の商品登録を抹消し た45)

�.4  爆薬生産に使われ�水銀�が�多���

第二次世界�戦期

雷酸水銀は

1799

年にホワードにより発見された 物質であるが、1860年代にノーベルによって爆薬 の起爆剤として用いられ、19世紀には雷管に広く 用いられるようになった。この雷管は、鉱山や運河、

道路、鉄道の建設現場、ダイナマイトやその他の爆 薬に広く使われた。

第一次世界大戦直前、アメリカ合衆国において火 薬生産のために消費された水銀は、年間総消費量の

3

分の

1

を超える

250

300 t

だった(図 2)。乾燥 した火薬は衝撃に対して非常に敏感なので、雷酸水 銀を輸送するのに危険が伴う。そのため、火薬は雷 管組立工場の近くで製造しなければならなかった。

スウェーデンでは雷管のほとんどは輸入されていた が、2、3の爆薬工場の雷管用に、火薬が一部国内 製造されており、その製造に使われる年間水銀消費 量は

1940

年当時、年間水銀輸入量の約

2%に当たる 0.7 t

と推測される(図 3)。

第二次世界大戦以降、雷酸水銀はアジ化鉛と

DDNP

(ジアゾジニトロフェノール)にとってかわ られた。スウェーデンでは、雷酸水銀の製造は

1959

年には終焉した20)

�.� 水銀バ�テ�ー

電池の寿命を延ばすために HgCl2が添加された 酸化水銀電池と、アルカリ電池の製造に使われる水 銀の消費量は、1980 年代にアメリカ合衆国、日本、

西ヨーロッパ諸国で急激に増加した(表 1、図 2、

図 3)。日本では、1990年の水銀消費の

65%が電池

の製造に使われた53)。それとは対照的に、スウェー デンでは酸化水銀電池を国内では生産はしていなか った。わずかにマンガン電池の製造に少量の水銀が 使われていたが、一方で水銀を使った電池が大量に 輸入されていた54)

�.� 医薬用に用いられる水銀

家庭用および病院用(業務用)の傷消毒薬に、いま だ塩化第一水銀(HgCl2)を使っている国がある。こ の消毒薬は戦時中は大量に使われたが、図 1で明 らかなように、それは爆薬生産に消費される水銀量 が大幅に増加したことが引き金になっている。スウ ェーデンでは、19世紀後半に医薬用に盛んに水銀

(カロメル=塩化水銀、Hg2

Cl

2および金属水銀)が使 用された。主には梅毒治療に、また総人口

350

万~

500

万人の

0.3%から 1%にあたる性病患者(1

万人

5

万人 21), 55))の治療に用いられた。このことでひ

どい水銀中毒になる者がいた(図 3)。しかしながら、

この時期スウェーデンにおける

1

人あたりの水銀消 費量は少なく、一方、アメリカ合衆国では金の採掘 にほとんどの水銀が消費され(図 2)、加熱処理工程 によって放出される水銀蒸気によって、人々は(鉱 山労働者は)直接的に水銀中毒の危険にさらされて いた。

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