[報告]
全身反応時間とバランス能力および
その他の身体機能との関係
佐藤 洋一郎
1)村上 賢一
1)1
)東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
要旨
本研究の目的は,健常人における全身反応時間とバランス能力および身体機能との関係を明らかにし,
全身反応時間が転倒と関連のある指標となるかを検討することとした.被験者は,平均年齢
28.8歳(
17~
72歳)の健常人
138名とした.測定項目は,全身反応時間,ファンクショナルリーチテスト,サイ ドステップ,握力,膝関節伸展筋力,長座位体前屈および関節可動域(他動:下肢伸展挙上,足関節背 屈)とした.各測定項目間の関係をみるために,ピアソンの積率相関係数を用いた.結果,全身反応時 間は
2つのバランス能力の指標および筋力(握力と膝関節伸展筋力)と有意な相関を示した.全身反応 時間が,転倒と関連のあるバランス能力や筋力と関連性があったことにより,全身反応時間が転倒とむ すびつきがある可能性が示唆された.
【キーワード】 全身反応時間,バランス能力,身体機能
Ⅰ.はじめに
転倒は,高齢者の身体機能を低下させ,高齢 者をリハビリテーションの対象とする要因の
1つである.転倒の要因には,主にバランス能力 低下や筋力低下が挙げられる
1).バランス能力 の指標としてファンクショナルリーチテストが 広く用いられており,
Duncanら
2)は,地域在 住の高齢男性において,テストの値が,
10イン チ(約
25cm)以上の者に対して,
10~
6イン チの者では転倒のオッズ比が
2.00,
6インチ以 下の者では
4.02となったと報告している.さら に,サイドステップは側方のバランス能力の指 標として用いられており,藤澤ら
3)は,地域在 住の高齢者において,聴取した転倒歴とサイド ステップ長との関係を検討し,下肢長で標準化 したサイドステップ長が
1.00以上の群は,
1.00以下の群に対して転倒のオッズ比が有意に低
かったと報告している.
転倒は,外的因子である段差などの障害物に つまずくことによって生じる
4)といわれている.
ヒトは,障害物などにつまずいた際,姿勢保持 の戦略として支持基底面内に重心を保つよう努 力する.そして,支持基底面内に重心を保持で きなければステッピングの反応を出現させ新し い支持基底面をつくる.出現したステッピング 反応は,身体を支える脚力と俊敏性を必要とし,
どちらか一方が不足していれば姿勢を保持でき ずバランスを失い転倒してしまう.バランス能 力の指標であるファンクショナルリーチテスト やサイドステップは,対象者自身が姿勢をコン トロールしながらバランスを保持するものであ る.そのため,外部の刺激に対する速さである,
いわゆる俊敏性を測定することはできず,障害
物につまずいた際などのステッピングの反応を
必要とする場合のバランス能力を評価できない.
全身反応時間は,刺激(音や光など)に対して 全身を床から浮かばせるまでの反応時間であり,
つまずいた際に下肢によって身体を支えるため の脚力と俊敏性の両方を同時に評価することが できると考えられる.
これまで,全身反応時間について,地域在住 の高齢女性に対して,
12週間のエクササイズを 行わせた際に全身反応時間が有意に向上したと の報告
5)や,女子大生に対して
8週間のレジス ンタンストレーニングを行わせ,その後全身反 応時間が向上を示したとの報告
6)がなされてお り,トレーニングによって全身反応時間(俊敏 性)が向上すると考えられている.しかし,ト レーニングによって全身反応時間が向上する要 因について身体機能の変化の観点から考察はさ れておらず,全身反応時間がどのような身体機 能とむすびつきがあるかが不明である.
以上のことから,本研究の目的は,全身反応 時間が,転倒と関連のあるバランス能力指標や 身体機能(筋力と柔軟性)とどのような関係が あるかを明らかにし,全身反応時間が転倒と関 連のある因子であるか否かを検討することとし た.
Ⅱ.方法
1.対象
当大学大学祭の体力測定企画に参加した
173名のうち,身長および体重を計測した
138名(男 性
48名,女性
90名)を対象とした.任意に分 類した各年代の被験者数,被験者の年齢および 身体特性を表
1に示す.被験者の平均年齢は,
28.8
歳(
17~
72歳)であった.被験者へは測 定の趣旨を十分に説明し,書面による同意を得 た後,測定を行った.
2
.測定項目
1)全身反応時間
マルチカウンタシステム(ディケイエイチ:
PH-1210
)を用いて測定を行った.被験者は,
測定用マットに裸足で乗り,その後,両膝およ び股関節軽度屈曲位での立位姿勢をとり開始肢 位とした.被験者は測定の前に何度か練習を行 った.口頭指示にて予告信号を与えた後,
1か ら
3秒の間隔で音刺激(ディケイエイチ:
PH-1250,1000Hz)をランダムに与えた.音
刺激から両足底がマットから離れた時点までの 時間を全身反応時間とした.測定回数は
2回と し,最小値を解析に用いた.
2
)ファンクショナルリーチテスト
被験者は,裸足にて床上のラインに左右のつ 表
1被験者の年代と身体特性
年代
対象者数 男性: 10 男性: 23 男性: 10 男性: 5 男性: 48
女性: 43 女性: 28 女性: 11 女性: 8 女性: 90
合計: 53 合計: 51 合計: 21 合計: 13 合計: 138
mean SD mean SD mean SD mean SD mean SD
年齢(歳) 男性 18.0 0.8 21.7 1.8 41.4 5.4 57.6 8.0 28.8 13.7
女性 18.2 0.8 21.1 1.6 44.9 5.4 56.9 8.0 25.8 13.3
合計 18.1 0.8 21.3 1.7 43.2 6.2 57.2 7.7 26.8 13.5
身長(cm) 男性 169.9 4.6 172.3 6.8 171.6 3.6 166.4 1.3 171.0 5.7
女性 159.6 5.5 159.1 4.8 159.4 3.6 153.3 5.2 158.9 5.3
合計 161.5 6.7 165.1 8.8 165.2 7.2 158.4 7.8 163.1 7.9
体重(kg) 男性 61.7 6.5 60.9 7.4 69.8 5.0 61.8 6.7 63.1 8.0
女性 55.9 10.1 51.3 6.3 52.0 5.0 52.0 4.1 53.5 8.1
合計 57.5 9.5 56.5 8.4 61.4 11.5 56.1 7.1 57.7 9.3
BMI 男性 21.4 2.4 20.5 1.8 23.7 2.4 22.3 2.3 21.6 2.5
女性 22.0 3.7 20.9 2.6 20.4 2.4 22.2 2.0 21.4 3.1
合計 21.8 3.4 20.6 2.2 22.1 3.1 22.2 2.0 21.5 2.8
50歳以上 全体
BMI: Body Mass Index
10歳代 20歳代 30・40歳代
SD: 標準偏差(Standard Deviation)
ま先を合わせて直立姿勢をとった.スタンスは 自身の肩幅と一致させた.被験者の利き手(字 を書く手)にて測定を行い,開始肢位を肩関節
90度屈曲位,肘関節伸展位,前腕回内位および 手指伸展位とした.測定器(オージー技研株式
会社:
GB-210)のバーを手指先端につけて,そ
のバーを前方へできるだけリーチするよう被験 者へ指示した.その際,体幹を回旋させない,
踵を浮かさないよう注意した.測定回数は
2回 とし,最大値を解析に用いた.
3
)サイドステップ長
サイドステップの誘導路として
2 mの直線ラ イン(ライン
A)を引き,開始位置に直線ライ ン(ライン
B)を誘導路に対して垂直にはりつ けた.被験者は,進行方向(利き脚:ボールを 蹴る脚)の足底外側をライン
Aに平行に合わせ て閉脚立位(裸足)となった.そこから可能か 限り大きくサイドステップ(開脚)して,その 後その脚に合わせて閉脚立位になるよう指示さ れた.また,被験者は,動作中,上肢で体を支 持しないこと,ジャンプしないことを指示され た.動作が終了した時点で進行方向の足底外側 の位置にマークをして開始位置からの距離を計 測した,測定は
2回行い,最大値を解析に用い た.その後,利き脚の棘果長を布メジャーにて 計測し,その値にてサイドステップ長を除して 標準化した値を解析に用いた.
4
)握力
被験者は,立位にて握力計(竹井機器株式会 社:
TKK5401)を身体から離した状態で
3秒か けて最大努力にて握るよう指示された.測定は 利き手にて行わせた.その際,
1人の検者によ って声かけを行った.被験者の握り幅が,手指
MP関節伸展位,
PIPおよび
DIP関節
90度屈 曲位となるようレバー位置を調整した.測定回 数は
2回とし,解析には最大値を用いた.
5
)膝関節伸展筋力
被験者は測定用椅子に座り,骨盤をベルトに て椅子へ固定された.被験者の測定肢位は股関
節および膝関節屈曲
90度とし,被験者は,ベ ルトに固定されたセンサ(アニマ社製:μ
Tas F-1)を
3秒かけて最大努力にて蹴るように膝 関節伸展することを指示された.測定側は利き 脚(ボールを蹴る脚)とし,センサ下端が内果 最突出部の高さにくるように調節した.測定回 数は
1回とした.また,膝関節裂隙からセンサ 中央までの距離を計測し,徒手筋力計の値(
N) に距離(
m)を乗じて,膝関節回りのモーメン トに換算した.
6
)長座位体前屈
被験者は測定台のうえで長座位姿勢(膝関節 伸展位)をとり,背中全体を壁にあてた状態を 開始肢位とした.その後,母指と他の
4指で測 定器(竹井機器工業株式会社:
TKK5112)をは さみ,膝関節伸展位を維持しながら体幹および 股関節を屈曲するよう指示された.測定回数は
2回とし,最大値を解析に用いた.
7
)関節可動域
被験者はベッド上背臥位姿勢をとり,①下肢 伸展挙上,②足関節背屈(膝関節伸展位),③足 関節背屈(膝関節屈曲位)の
3つの運動方向に ついて他動的な関節可動域を測定させた.検者 は
2名とし,
1名は関節を運動させ,他の
1名 は,角度計を操作した.測定回数は各運動方向
1回とした.
3
.統計解析
年齢(
4水準:
10歳代,
20歳代,
30・
40歳 代,
50歳以上)および性別の
2要因が測定変数 に影響を及ぼしているか否かを検討するために 二元配置分散分析を用いて解析した.さらに,
各測定項目の関係を検討するためにピアソンの 積率相関係数を求めた.また,分散分析の結果,
年齢が影響を及ぼしている測定項目については,
年齢を統制した偏相関係数を求めた.統計学的
有意水準を
5%とし,解析には
SPSS16.0Jを用
いた.
Ⅲ.結果
1
.各測定項目値と年齢および性別の影響 表
2に年代(
10歳代,
20歳代,
30・
40歳代,
50
歳以上)および性別による各測定項目の平均 値,標準偏差および各項目の標本数を示した.
全身反応時間は,年齢の主効果は有意ではなく,
性別の主効果のみ有意であった.平均で,男性
が
60 msec程速い値を示した.ファンクショナ
ルリーチテストでは,年齢の主効果のみが有意 であり,性別の主効果は有意ではなかった.
20歳代の値が最も大きく,最も小さい値を示した
50歳以上と比較すると
60 mm程度の差を認め た.サイドステップ長は,年齢および性別の有 意な主効果を認めなかった.握力は,年齢の有 意な主効果は認めず,性別の主効果が有意であ
り,
14 kg程度男性で大きな値を示した.膝関
節伸展筋力は,年齢の有意な主効果を認めず,
性別の主効果が有意であり,
50 Nm程度男性で 大きな値を示した.長座位体前屈は,年齢の主 効果が有意であり,おおよそ年齢の増加ととも に系統的に減少した.性別の主効果は有意では なかった.下肢伸展挙上は,年齢の主効果が有 意であり,
30・
40歳代が最も小さく,最も大き い値を示した
10歳代とは
17度程度の差を示し た.性別の有意な主効果は認めなかった.足関 節背屈角については,伸展位および屈曲位とも に年齢および性別の主効果は有意ではなかった.
2
.測定項目間の相関関係
各測定項目間の相関係数を表
3に示す.全身 反応時間は,ファンクショナルリーチテスト,
サイドステップ長,握力および膝関節伸展筋力 と有意な負の相関を示した.柔軟性の指標であ る長座位体前屈や関節可動域(下肢伸展挙上,
足関節背屈)とは有意な相関を示さなかった.
バランス能力の指標であるファンクショナルリ ーチテストとサイドステップ長は,筋力の指標 である握力および膝関節伸展筋力と有意な相関 を示し,柔軟性の指標となる長座位体前屈と関
節可動域とは有意な相関を示さなかった.また,
ファンクショナルリーチテストとサイドステッ プ長はともにバランス能力の指標として用いた が,両指標間で有意な相関は示さなかった.年 齢を統制した偏相関係数の結果をみると,ファ ンクショナルリーチテストは,膝関節伸展筋力 のみと有意な相関(
0.435)を示した.長座位体 前屈は,下肢伸展挙上と有意な相関を示した.
Ⅳ.考察
今回,俊敏性の指標として用いられている全 身反応時間が,転倒と関連のあるバランス能力 や他の身体機能とどのような関係があるかを検 討した.結果,バランス能力(ファンクショナ ルリーチテストとサイドステップ長)および筋 力(握力と膝関節伸展筋力)と有意な相関を示 した.
本研究の被験者は,若年者から高齢者までの 年齢層を含んでおり,高齢者(
60歳以上)と若 年者では,運動能力の構造的特徴が異なるとい う報告
7)もあることから,
1つの群として対象 を扱うには注意が必要となる.しかし,バラン ス能力の指標であるファンクショナルリーチテ ストおよびサイドステップ長の結果が,それぞ れ過去の報告
3)8)と同程度な相関係数にて筋力 と関係があったことから,今回の被験者を
1つ の対象群として扱っても差し支えないと考えら れる.
全身反応時間に関する過去の報告から,女子 大学生を対象とした
8週間のレジスタンストレ ーニングによって向上する
6)ことや,地域在住 高齢女性に対しての
12週間のエクササイズに て,歩行能力の向上とともに全身反応時間が向 上する
5)ことは知られている.しかし,トレー ニングによって全身反応時間が向上する要因に ついては,過去の報告では触れられていない.
本研究の結果から,全身反応時間は筋力と有意
な相関を示した.つまり,全身反応時間と筋力
との間には結びつきがあり,トレーニングによ
年代 標本数meanSD標本数meanSD標本数meanSD標本数meanSD標本数meanSD 全身反応時間( s )男性90.3040.031200.3300.06170.3810.02550.3560.057410.3360.056 女性240.4040.082210.3900.09280.3570.02550.3860.074580.3910.080 全体330.3770.085410.3610.083150.3680.031100.3710.064990.3680.076 FRT( mm )男性9395.664.717394.264.87348.332.05326.666.138377.267.4 女性26334.252.320373.848.48338.332.05316.256.559346.652.0 全体35349.961.137383.156.715342.946.810321.458.297358.660.0 SSL( % )男性9158.620.120148.916.75142.024.54131.913.238148.518.0 女性24131.215.117134.714.27131.424.55128.521.653132.116.5 全体33138.620.537142.417.012135.820.39130.017.491138.918.9 握力( kg )男性844.55.71539.85.4939.04.4338.66.63540.66.9 女性3424.64.42427.54.41028.84.4625.95.37426.24.7 全体4228.49.13932.27.71933.78.8930.18.310930.88.7 膝関節伸展力( N ・m)男性7163.036.913135.234.07123.225.83103.837.730136.642.1 女性2581.922.21587.632.1786.525.8770.724.55483.326.0 全体32107.747.128112.440.514103.245.91084.833.084106.342.9 長座位体前屈( cm )男性550.110.21531.917.6733.46.1324.215.13034.516.8 女性2040.412.01438.815.9738.06.1541.09.34639.612.2 全体2542.312.12935.216.91435.711.2834.713.87637.614.3 下肢伸展挙上( 度 )男性491.311.11175.511.1771.412.1482.512.62677.912.7 女性2194.322.01182.712.9677.512.1498.816.54289.319.2 全体2593.820.52279.112.31374.211.7890.616.16884.917.8 足関節背屈( 度 )男性513.05.71114.16.3716.44.9410.07.12713.96.4 (膝関節伸展位)女性2216.66.41111.86.4614.24.9411.32.54314.56.3 全体2715.96.42213.06.31315.45.9810.65.07014.36.3 足関節背屈( 度 )男性525.07.11123.66.0727.13.8422.58.72724.66.5 (膝関節屈曲位)女性2223.47.01122.35.2620.83.8522.02.74422.65.8 全体2723.76.92223.05.51324.26.1922.25.77123.46.1
全体10歳代20歳代30・40歳代50歳以上 FRT: ファンクショナルリーチテスト(Functional Reach Test)SSL: サイドステップ長(Side Step Length)、棘果長にて標準化
表 2 年 代別お よび 性別に よる各 測定項 目の結 果
1.全身反応時間-0.325-0.0870.048 2.ファンクショナルリーチ-0.336**0.0270.122 3.SSL-0.427**0.1560.0710.170-0.315 4.握力-0.367**0.305**0.3070.480**0.134-0.219 5.膝関節伸展筋力-0.415**0.524*0.435*0.320**0.729**0.244-0.126 6.長座位体前屈-0.0800.2480.0270.165-0.0190.1940.436** 7.下肢伸展挙上角0.0660.0830.122-0.194-0.288*-0.0810.497**0.436** 8.足関節背屈角(膝伸展位)-0.0220.013-0.096-0.009-0.001-0.0210.0530.1500.2360.374 9.足関節背屈角(膝屈曲位)0.0250.1180.1810.1050.2170.0010.0540.3680.0570.3410.547** *1 ピアソンの積率相関係数. * : p<0.05, ** : p<0.01.8 rrrpartialpartial674 rr5 *2 偏相関係数(制御変数:年齢SSL : サイドステップ長(Side Step Length)
3 rrpartial*22 r*11
表 3 測 定 項 目 間 の 相 関 係 数
る全身反応時間の向上は,筋力の向上が要因で ある可能性が示唆された.筋力は転倒との関連 が強いとの報告
9)と今回の結果を踏まえて考え ると,筋力の向上は俊敏性を向上させることに つながり,その結果,転倒の発生率を減少させ ることができるのではないかと考えられる.今 後は,地域在住の高齢者を対象として体力測定 の項目に全身反応時間を加えて,転倒との関連 を検討していく必要があると考えられる.
さらに,全身反応時間は,バランス能力の指 標であるファンクショナルリーチテストとサイ ドステップ長と有意な相関を示した.これまで,
全身反応時間とバランス能力との関連性につい て検討した報告はなく,全身反応時間が,バラ ンス能力と独立したものではないことが示唆さ れた.また,バランス能力についての両指標は 転倒とも関連があり
2)3),本研究の結果から,全 身反応時間は転倒と関連があることが考えられ た.ただし,全身反応時間およびバランス能力 の
2つの指標は,ともに筋力と有意な相関を示 し,その結果,全身反応時間とバランス能力が 結びついた可能性も考えられる.今後,他のバ ランス能力指標との関係を検討し,全身反応時 間とバランス能力との関連を明らかにしていく 必要があると考える.
これまで,地域在住の高齢者を対象とした体 力測定などでは,バランス能力や筋力といった 運動の速さを求めない測定項目が用いられてい たが,全身反応時間のような俊敏性を求める測 定項目は用いられていない.今回,転倒と関連 のあるバランス能力や筋力と全身反応時間との 間に関連性があったことより,全身反応時間が 転倒と結びつく可能性がある.今後,全身反応 時間と転倒との関連性を検討し,全身反応時間 の速さが転倒を予測するものかを検討していこ うと考える.
Ⅴ.結論
全身反応時間が転倒と関連のあるバランス能
力の指標および筋力とどのような関係があるか を明らかにし,全身反応時間が転倒と結びつく 可能性があるかを検討した.結果,全身反応時 間はバランス能力(ファンクショナルリーチテ ストとサイドステップ長)および筋力(握力と 膝関節伸展筋力)と有意な相関を示した.全身 反応時間は,転倒と関連のあるバランス能力や 筋力と関連性があったことにより,転倒と関連 のある因子である可能性が示唆された.
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Yoichiro Sato1),Ken-ichi Murakami1)
1) Physical Therapy Course, Department of Rehabilitation, Faculty of Medical Science & Welfare, Tohoku Bunka Gakuen University
Abstract
The purpose of the present study was to examine a relationship between whole body reaction time and fall by correlation analysis among whole body reaction time, balance ability and other physical ability. We measured the seven items (whole body reaction time, functional reach test, side-step length, grip strength, strength of knee extension, sit and reach and passive range of motion) in 138 healthy participants (age: 17-72 years) Through correlation analysis, whole body reaction time significantly correlated with the items relate to balance ability (functional reach test and side-step length) and the items related to muscle strength (grip strength and strength of knee extension).
This result suggests that whole body reaction time might be a useful item for evaluating risk of falling of elderly people.
【Key words】Whole body reaction time,Balance ability,Physical ability