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平 家 物 語 研 究

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Academic year: 2021

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平 家 物 語 研 究

教科・領域教育専攻 言語系(国語)コース

上 回 公 幸

I、研究の動機及び目的

軍記物語の最高傑作と言われる『平家物語』

は、今なお多くの読者を魅了してやまない。

そのような『平家物語

J

の魅力に周辺挿話、

または主役に対してその周辺にいる人々の物語 がある。『平家物語

J

の物語的魅力は、そのよう な活き活きとした周辺挿話や脇役にこそ感じら れるのである。そこで、そのような脇役の中で もスポットライトを当てられにくい乳母子に焦 点を当て作品を読むこととした。実際に『平家 物語』の乳母子達は実に印象深いキャラクター ばかりである。なぜ彼らはそのように描かれた のか。彼らの物語がどのような構造を持ってい るのか。『平家物語』における乳母子とはそもそ もどのような役割であるのか。以上三点を問題 として設定し、『平家物語』を深く読み解くこと を狙いとする。

E  論文の構成

第 一 章 乳 母 子 の 意 識

第一節 「宮御最期jにおける乳母子 一六条佐大夫宗信 第二節 「木曽最期jにおける乳母子

一今井四郎兼平 第三節乳母子の規範意識

第 二 章 創 ら れ た 乳 母 子 遼

第一節 「重衡生捕Jにおける乳母子 一後藤兵衛盛長

一乳母子を視座として

指導教員 松 原 一 義

第二節 f能登殿最期jにおける乳母子 一飛騨三郎左衛門景経 第三節小道具的な乳母子

第 三 章 乳 母 子 の 流 れ

第一節 『保元物語』における乳母子達 第二節 『平治物語』における乳母子達 第三節 『保元物語~W平治物語』と『平家

物語』の乳母子誇との比較

E 論文の概要

本研究では乳母子の f規範意識J (第一章)、

「樹毒性J(第二章)、「描写享受J(第三章)と いう三つの視点をそれぞれ設定し、分析・考察 を進めてきた。

第一章では、『平家物語』の中から二例の乳母 子を取り上げ、その登場場面の描写さらに人物 像の描写を、『平家物語』中の他の登場人物との 比較、史実関係との対照を通して考察した。第 一節においては六条佐大夫宗信という人物を取 り上げ、彼が『平家物語』で臆病者として典型 化されているのは、他に描かれた長谷部信連と いう豪傑との相互強調効果の一端を担っている ということで結論づけた。第二節では今井四郎 兼平を取り上げ、彼もまた主君義仲との相互強 調効果の一端を担っていることの明らかにした。

そして第三節では宗信と兼平の人物像の対比を 通して、そこに主君との契約意識があることを 読み取り、さらにそれぞれに見える『平家物語』

‑240‑

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の評語をもあわせて考えることで、描写の特徴 をあぶり出した。その結果、〈捨身の忠義〉とい う規範意識が共通して乳母子像の中に見えるこ とを明らかにした。

第二章では、第一章とは別の『平家物語

J

中 の乳母子二例を取り上げて、乳母子自身、また は乳母子の周囲の人物や乳母子誇そのものの史 実との対応関係を考察した。第一節では後藤兵 衛盛長という人物を取り上げ、彼の史実に不明 瞭な部分を諸本間の物語描写の差異を用いるこ とで克服しながら、そこにみえる虚構性の強さ を明らかにした。第二節では飛騨三郎左衛門景 経という人物を取り上げて、彼の登場する章段 の明確な虚構性を確認し、そこに登場している 景経もまた虚構によって創作された人物である ことを明らかにした。第三節ではこれまでに見 た乳母子諸には主君の最期という登場場面の共 通性があることを指摘して、そこに〈捨身の忠 義〉を確認し、さらにすべての乳母子像の行動 描写が印象的である点を確認した上で、彼らが

〈捨身の忠義)を根底においた虚構の物語世界 において、ある特定の人物を強調するために登 場させられたことを発見した。そしてそのよう な役割を〈強調媒体としての乳母子〉と位置づ けた白

第三章では、以上に述べた『平家物語』中の 乳母子像が『平家物語』特有のものであるのか どうかを、近接する軍記物語である『保元物語』

『平治物語』に登場する乳母子像との比較を通 して考察した。第一節では『保元物語』にみえ る乳母子誇を読み深めた。その結果、主君との 友愛のみを簡潔に(一面的に)描かれる乳母子 と、もっと複雑な心情世界を(多面的に)描か れる乳母子があることが確認された。第二節で は『平治物語』にみえる乳母子請を読み深めた。

その結果、主君への献身的な態度を一面的に描 かれる乳母子と、また必ずしも一面的とはいえ ない描写の乳母子とが描かれていることを確認 した。はからずも、『保元物語~

w

平治物語』で は描写の一面性、多面'性といった点で同じよう な乳母子描写の新教が見え、さらに多面的で、あ るのは鎌田政清という一人の人物像のみという、

一致も見られた。そこで第三節では一面的乳母 子描写の単純性に〈捨身の忠義〉の源流を見い だし、多面的鎌田政清像には武家倫理と根源的 人間倫理の二律背反の物語構造を見いだした。

そして『保元・平治物語』から『平家物語』に 単純な〈捨身の忠義〉の引き継ぎと、もっと複 雑な政清の人物描写がいくつかの人物像に解体、

典型化されていったとの結論に至った。

W 今後の課題

『平家物語』における乳母子以外の人物 描写において、今回取り扱った乳母子の 描写と類似するもの、あるいはその関係 性、対立性が見出せるものを抽出検証し、

『平家物語』の中での乳母子の位置をよ り明確に位置づける。

一 今回取り扱ったものとは別の軍記物語に 登場する乳母子需を考察し、その描写の 享受についてより深い考察を進める。

一武家倫理観、仏教観、儒教観といったよ うな思想との関連から乳母子諌を考察し、

そこに形成されている概念世界をより明 確にする。

四 乳母子研究は王朝(貴族)文学研究の方 面ではある程度の進展を見せており、そ れら先行研究との関わりから武家社会の 文学における乳母子誇の特徴を追究する。

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参照

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