07377096
「書くこと」の阻害要因のモデル化と授業デ、ザ、インの工夫 一中学校国語科を中心として一
学校教育専攻 総合学習開発コース 南 和 美
1.問題の所在
「書くことJは,私たちの日常生活と密接に結び ついている。本論文で扱う「書くことj とは,文 字を用いて文および文章を作ることとし
r
作文」と同義として扱うこととする。
大西 (1991)は「児童・生徒の文章表現力の低 下が,問題になって久ししリと指摘している。
教師の作文指導の在り方について柳谷(2006)は 問題提起しており,島村ら(2004)の調査からも「書 くことjの指導に対して逃避傾向にあることが明 らかになった。また,八島(1968)の指摘にもある ように「書くこと Jの指導lこついては,通時的な誤題 であることがわかる。
一方,中央教育審議会答申(2008)には,言語活動 の充実について明記され,国語科に寄せられる期 待も大きいG しかし,中学校の現場において,子 どもも教師も作文から逃避する傾向にあることは 否めない。故に「書くこと Jを嫌がる子どもたち の「書く」という活動を阻害している要因に着目 し,研究を進めることとした。
2.研涜の目的
①中学生の「書くこと Jの阻害要因を探り,その モデノレ化を図る。
②阻害要因のモデノレをもとに書くこと Jを促 進する授業デザインを作成し,実践を通し,その 有効性を明らかにする。
指 導 教 員 村 川 雅 弘
3.
r
書くこと Jの阻害要因の構造中学校国語教師によるワークショッフ。や子ども および中学校国語教師への質問紙調査の結果から,
子どもの「書くことJの阻害要因を抽出・整理し,
モデ、ノレ化を図ったものが図1である。
教飾の指導方法の問題
113カリキユラムの閲豊富 i学校敬宵全体に関わる図忽
ミム孟~~孟霊長選設置一一日
図1r醤〈こむの阻害要因の構造
図1は「現代社会J
r
学校@教師Jr
子どもjの3つの視点によって構成されている。子どもた ちの生活基盤となる社会には,生活体験の不足や 人間関係、の希薄さ,情報社会の弊害といった今日 的課題が内包されている。それらが学校教育にお ける指導計画や学校カリキュラムに大きな影響を 与えている。また,学校教育全体に関わる問題と して,設備等の外的学習環境や子ども同士のコミ ュニケーションや学級の雰囲気等の内的学習環境 は,間接的な要因ではあるが,子どもたちの学習 を考えるにあたり,切り離すことはできない。
一方
r
書くこと Jに関して直接子どもに働 きかけることができるのは,授業における作文A吐
っ
つ 山
指導である。そのため,教師が作文指導を行う 場 合 に は 文 章 産 出 の 基 盤 カJおよび「文章 産出の要素となる力jへのこ方面への働きかけ が重要であることを図1は示している。しかし,
教師用質問紙調査からは文章産出の要素と なる力jへの働きかけに偏りがちであることが 明らかとなった。それ故に,文章を産出するた めには,その基盤となるカを充足させることが 必要で、ある0
4 . r
書くこと Jの促進する授業ヂザインのモヂ ルの構築と実践F中では,グループ学習を取り入れ「関心@意 欲Jや「思考力Jや「読む体験jを刺激し,
r
文 章にする力Jを高めようと試みたE またワークシ ートを活用したレポート作成ではr
自分の意見 や思いを文章にして書くJr
自分が作った文章を 読み返し,書き方の工夫をするjの項目に対して,授業前調査よりも子どもの自己評価が向上した。
以上より,各校の授業デザインは有効に働い たと考えられる。しかし,そのためには,子ど もの現状を把握し,授業の各段階において指導 の手だてを効果的に配置することが重要となる。
図1をもとに,これまでの作文教育に関する 6.今後の課題
先行研究・実践の知見を参考に授業デザインを 子どもに対して,書く機会を増やしたと 構築し, M 県内の~M 中 .T 中 .F 中の 3 校で実 しでも,教師が適切な対応しなければ,子 践を行った。授業内容はそれぞれ,俳句 (M中), どもの「やらされ感」を払拭することはで 古文他
( T
中),説明文( F
中)の発展学習とし き な い 。 子 ど も の 質 問 紙 調 査 結 果 か ら 書 て「書くこと Jを取り入れた。いずれも授業デザインにおける「①授業前,②導入,③展開,
④まとめ,⑤授業後jの各段階における指導の 手だでを意図して学校や子どもの現状と照らし 合わせ単元を開発した口
5.授業デザインの有効性の検証
M 中における俳句の実践では,導入時におけ るICTの活用により,俳句への興味・関心が高 められ,スムーズに句作へと入ることができた口 これは「関心・意欲」や「感性Jを 刺 激 し 発 想する力」を引き出すことをねらいとしており,
それが有効に働いた例であると言える。
T中では古文での実践を中心に,シラパスと 対応させ,長期的に「書くこと」の指導に取り 組んだ。書かせて終わる作文指導ではなく,評 価・交流の場を設け,子どもに自信をつけさせ ることによってほ年生になって身についた力J として「書くこと Jを挙げる子どもが32.4%を 占め,他領域と比較すると大幅な伸びを示した。
くこと」を促進するためのポイントは,褒 められることによる自信や達成感にあるこ とが明らかになった。故に,授業デザイン を作成するにあたり,そうした場面を授業 において設定することで,子どもの「書く こと Jを促すことが可能となるo また,でき 上がった作品だけで、なく,文章を作る過程の指 導の充実も重要である。そのためには,子ども の実態から出発し,それに応じて手だてを授業 デザインに反映させることが必要となる。
本研究では中学校に焦点を当てて「書くこ とjの実践を行ったが,他学校種においても「書 くこと Jの阻害要因に共通項があると考えられ る。故に,子どもの「書くことjを促進する授 業デザインを構築するために,学校種間におい ても情報交換・共有することが今後の課題で、あ る。
〔主引用文献・参考文献〕
大西道雄(1991)短作文の授業.国土社,p.23
円b
り ムワム