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国語科授業カとしての

f

てぴきj研究

教科・領域教育専攻 言語系コース(国語) 佐 藤 浩 美

1 .研究の目的と方法

本研究は、国語科授業力としての「てびきJ について、その具体的な姿とはたらきを明らか にすることを目的とする。「国語科授業カ J を

「てびき」に具体化した第一人者は大村はま氏 である。そこで、大村はま氏の「てびきJ観と その源流を明らかにし、大村はま氏が戦前の芦 田恵之助氏から fてびきJをどう学び、継承し たのか、さらにその継承した「てびきjを戦後 にかけてどう深化・発展させていったのかをあ

とづける。

さらに、大村はま氏の「てびきjをわれわれ はどのように学び、継承していけばよいのかを、

大村はま氏の「学び方Jや、その「学び方Jを 追試した「実験授業J、「授業の推定Jをとおし て探究し、自らの「国語科授業力 Jとしての「て びきj性を高めることを目的とする。

2.論文の構成

本論文は、序章・結章のほか、次の五章で構 成する。

第一章 中学校国語科授業の現状と課題 第二章 「てびきjとは何か

第三章 芦田恵之助氏の「綴方の教壇Jに みられる「てびきJ性

第四章 大村はまの開発した「書き出しJ

「書きつぎJの「てびきJ性 第五章 大村はまの開発した「てびき J単元

一単元「中学校国語学習の出発j

指導教官 村 井 万 里 子

3.論文の内容

第一章では、中学校国語科授業の現状と課題 を「授業J

r

研究授業J

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教師教育jの点から指 摘し、それを解決するには、教師が「国語科授 業力 J としての「てびき」性を高めていくこと が修練の急所になることを明らかにした。

第二章第一節では、戦前・戦後という歴史的 な視点から大村はま氏の「てびきJ観の源流を 明らかにした。大村はま氏の「てびき Jは、戦 前の授業における先達の「てびきjを継承し、

戦後直後の新制中学校の出発期に「てびき Jの 原型を見出し、さらに、『通信教育学指導書』

の執筆をとおして、戦後の「てびきj理念を受 容して展開したことが明らかになった。

第二章第二節では、大村はま氏の到達した「て びきJ観を明らかにした。教師の力強い指導と、

生徒の主体性や自主性を引き出す働きとを統合 した極地を示すものであり、教師の指導力が結 晶した「国語科授業力jそのものをあらわすも のであった。子どもの「学びjの産出点をとら え、子どもを「学びJの集中に追い込むことで、

子どもを自立した「学び手jへと導くものであ るo これは、授業を生命づけるo また、「てび きJと「国語科授業力Jとのかかわりを考察す ると、教師が子どもを「てびきJすることは「国 語科授業力 Jそのものであり、教師の「指導力j

と「学習者把握力 Jの一致した産出点に、めざ すべき「てびきJの姿があることが明確になり、

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この産出点が「国語科授業力Jの源であること がわかった。また、教師の修練は自らの「てび きJ性を高めていくことにあり、そのことは、

自らの「国語科授業力jを高めることになる。

第二章第三節では、大村はま氏の「てびき」

の具体像を、①「てびき J とは何か、②「てび き」の種類、③「てびきjの機能の面から明ら かにした。その結果、その具体像は、柔軟かっ 豊かな姿であることがわかった。ことばを超え た「形式Jの「てびきjがあること、「てびきj

がつかわれる場は授業すべてにおいてであり、

授業以外にも及び、また「てびき Jが教師や教 室にも機能していることが明確になった。

第三章では、大村はま氏が実際にその場に立 ち会って学んだ芦田恵之助氏の「綴方の教壇J の分析・考察を行った。芦田恵之助氏の優れた 授業は、授業まるごとが「てびき J となるよう 組織され、子どもに有効にはたらいていること がわかった。また、「ことばJの形式を超えた fてびきJが子どもに現象として働いていた。

この授業の体験から大村はま氏は芦田恵之助氏 の「授業記録Jから、その日見た授業の呼吸や 機微、ことばや間のとり方等をよみがえらせな がら、体感を通して学んでいることがわかった。

第四章では、大村はま氏が芦田恵之助氏の「綴 方Jの授業を継承し、芦田恵之助氏の課題であ った「記述中Jの指導法、「記述Jと「批正j

とを結ぶ「手がかりJを、「書き出しの研究J をとおして、「書き出しJ

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書きつぎJの指導に 見出し、さらに深化・進展させたことを明らか にした。このことから、大村はま氏は、芦田恵 之助氏の「随意選題jをさらに進展させたと位 置づけられる。また、大村はま氏の「書き出しj

f書きつぎjの指導は、教師が子どもの内的対 話を援助することを繰り返すことで、いつのま

にか子どもを自立した「書き手」へと導くもの である。また、「書き出しJ

r

書きつぎJの指導 力は、子どもの作文を診断・推測する力に支え られており、子どもに自由に書かせる気持ちを もたせたまま、いつのまにか筋の通った書き応 えのある文章を書かせることを可能にする。ま た「話し出しJ

r

話しつぎj等にも応用できる ものであり、大村はま氏の「国語科授業力 J を 大いに飛躍させる契機になっていた。この指導 力の獲得は、大村はま氏が約二年に渡り子ども の文章を実証かつ分析的に実験授業等を行し、な がら読み続けたことによりもたらされている。

第四章第三節では、この事実をもとに、大村 はま氏の「書き出しの研究Jの追試となる実験 授業を行い、「書き出し J

r

書きつぎJは後続の 文章を方向づける働きや、文章の方向を診断・

推測する手がかりがあることが実証できた。

第五章では、自らの修練として、大村はま氏 が昭和四十七年度に入学した石川台中学一年生 が三年間学んだカリキュラムの発掘を行い、本 単元が後の単元学習の「てびきj単元として位 置していることがわかった。本単元までの授業 準備や単元導入段階までの授業をできる限り推 定することをとおして、教師にとって「授業力j

が要求される「中学校国語学習の出発jにおけ る、氏の授業を体感した。大村はま氏の「てび きJは授業全体が、学習者を「学習共同体の場j

へと導くために組織されていた。大村はま氏を 学ぶ「学び方Jとして、氏の授業全体を多面的、

立体的にとらえることの重要性を認識した。

4  今後の課題

①授業全体の「てびきJ性を高めるための修 練の方法をさらに開発していきたい。

②中学校三年間のカリキュラムの原型を明ら かにしていきたい。

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