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第3章

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Academic year: 2022

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(1)第3章. 第3章. 快適性向上のための技術と課題. 快適性向上のための技術と課題. 省エネルギー技術はベース技術で,技術優先で開発が進められる.これに対して, 快適性に関する技術は,その時代の顧客ニーズに合わせながら,さらに技術シーズ を融合させて,タイミング良く製品に適用して行くことが必要で,商品価値を高め る上で非常に重要である. 快適性に関しても,ここ 15 年位の間に,以下に示すような,温冷感に関する除 湿・加湿・高暖房能力や,空気質に関する空気清浄・換気・抗菌化やクリーン化と いった面で様々な研究開発が行なわれてきた.. ・冷房(暑い) ・暖房(寒い) ----- 低温暖房能力向上 温冷感. ・除湿(蒸し暑い) -- 省エネルギー・快適除湿 ・加湿(乾燥) ・気流制御(気流感) -人検知. 快適性. ・空気清浄:電気集塵,静電フィルター 空気質. ・換気. :給排気機能. ・抗菌. :イオン化,クラスターイオン,水分微粒化. ・クリーン :室内機フラットパネル,フィルター自動清掃. 本章では,近年の快適性に関する動向と開発技術について,温冷感に関するもの を中心に概説し,課題の整理を行う. また本研究のメインテーマである,サイクル再熱除湿サイクル,ガスインジェク ションサイクルについても,快適性の点から評価し,課題を明確にする.. 3.1 3.1.1. 温冷感 除湿機能. 暑いとか寒いといった感覚は,冷房能力や暖房能力を高めれば基本的には解決で きる.これに対し蒸し暑いといった不快感に対しては,室温をあまり下げずに湿度 を下げることが必要である.. - 38 -.

(2) 第3章. 快適性向上のための技術と課題. 日本では,湿度が高く温度も比較的高い梅雨があったり,湿度が高く肌寒い春 雨・秋雨といった季節がある.こうした湿度の高い時期を快適に過ごすには,湿度 をメインに制御し,さらに温度も制御する除湿という機能が有効である.圧縮式空 調機では蒸発器で冷却・除湿を行なえることから,これまでに色々な除湿方式が開 発されてきた. ルームエアコンディショナにおいて,これまでに開発された除湿方式とその特徴 を図 3.1 に示す. 各除湿方式の特徴は以下である. (a) 低風量冷房運転 冷房運転において,室内風量を少なくして除湿能力を上げる方式である. この方法は,ほとんどコストアップにならずに実現でき,長い間使用されてき た.最近でも低価格機種では,この方式が採用されている. しかしこの方式は室内風量の減少に伴い蒸発器の温度が下がり,除湿能力増大 と同時に吹出空気温度が下がるため,足元が冷えて快適性が損なわれる. (b) ヒータ再熱除湿 室内機において蒸発器の風下に電気ヒータを設け,吸込空気を,冷却・除湿し たあとヒータで再加熱し,温度を下げずに湿度を下げて吹き出す方式である. この方式は吹き出される空気を室温と同等にできることから,快適な除湿運転 が可能になる.しかしヒータ容量を大きくできないことから吹出空気の温度を広 い範囲で制御できず,また電気ヒータの追加によりコストアップになったり,消 費電力が増えてしまう. (c) サイクル再熱除湿 室内熱交換器を除湿運転時にのみ作用する絞り機構を介して2分割し,除湿運 転時には,冷媒流の上流側の部分を再熱器(凝縮器の一部),下流側の部分を冷 却器(蒸発器)とし,吸込空気を冷却器で冷却・除湿し,再熱器で加熱してから 吹き出す方式である. この方式は,少ないコストアップで,圧縮機や室外ファンの能力制御により吹 出空気の温度・湿度を広い範囲に制御でき,室内熱交換器の分割の仕方で以下の 二つの方式がある. 1) 前後分割方式:室内熱交換器を,絞り機構を介して,風上側の冷却器と風下. - 39 -.

(3) 第3章. 快適性向上のための技術と課題. 側の再熱器に前後に2分割する方式で,除湿運転時には,室内吸込空気を冷却 器で冷却・除湿したあと再熱器で再熱する方式である.この方式は,40 年以 上前に Ogata ら1)によって冷房専用機で開発されたことがあるが,暖房運転を 行おうとすると,室内熱交換器で空気流と冷媒流の熱の流れが向流にならず, 熱交換効率が低下する.また当時は一定速圧縮機が使われており,吹出空気の 温湿度をほとんど制御していなかった. 2) 上下分割方式:室内熱交換器を,絞り機構を介して,上側の再熱器と下側の 冷却器とに上下に2分割する方式で,除湿運転時には,室内機の吸込空気が冷 却器で冷却・除湿されると同時に再熱器で加熱され,その後両空気流は混合さ れて冷え過ぎない低湿度の空気となって吹き出される. さらに最近では,省エネルギーのために,室内熱交換器を室内機の前面から 背面まで設けたΛ形構造(後述の図 6.1 参照)にして,伝熱面積を増やす傾向 にある.この場合,室内熱交換器を,前面下部と前面上部から背面にかけての 山形部分とに分け,除湿運転時には前面下部が冷却器,上部山形部分が再熱器 になるようにしている.. Conventional dehumidification. Type. (a) Weak cooling. (b) Heater reheat. (c) Refrigeration cycle reheat. Cooling+Week air flow. Week air flow+Heater reheat. Cycle reheat+Inverter control. Expansion valve. Heater. Comp. Low speed. Indoor fan Week flow. Evaporator. Condenser. Evaporator. Outdoor fan. Condenser. Air flow Refrigeration cycle. Expansion valve Condenser (Open). Expansion valve. 凝 縮 器. Condenser. Method. New dehumidification. Dehumidification valve 除 湿 制 Inverter 御 弁. 凝 縮 器. Comp. Week flow Low speed. Comp. Control. Control. Evaporator. Dehumidification Capacity. Two times as much as dehumidifier. Three times as much as. Four times as much as. dehumidifier. dehumidifier. Blowing air temperature [℃]. Room temperature – (6~10). Room temperature – (2~6). Room temperature-3 ~ Room temperature+3. Attained relative humidity [%]. about 70. about 60. about 40. Characteristic. ・Blowing air temperature is low. ・Temperature over floor is low.. Fig.3.1. ・Electricity consumption is large. ・Reheating capacity is low.. ・ Heating capacity is large and variable. ・ Electricity consumption is small. ・ Various uses.. Comparison of dehumidification method. - 40 -.

(4) 第3章. 快適性向上のための技術と課題. 本論文では,(c)のサイクル再熱除湿方式の研究開発を行った.最初に(c)-1)方式 と(c)-2)方式を冷房,暖房,除湿の性能および構造の単純さから総合的に評価し, 室内熱交換器を上下に分割する(c)-2)の方式を採用した(第 4 章に詳述).この方式 の場合,冷房運転や暖房運転において,室内熱交換器の 2 分割された各部分とも空 気流と冷媒流の流れを向流にできることから,分割による熱交換性能の低下を防ぐ ことができる. また除湿運転用の絞りとして冷媒音を低減した除湿弁を開発し,除湿能力の大幅 増大を図った.さらに最近は,回転数可変のインバータ制御圧縮機,DC ファンモ ータや制御にマイコンを使用していることから,温度センサに加えて湿度センサを 組み込み,マイコンにより圧縮機やファンの回転数を制御して,吹出空気の温度, 湿度を制御する除湿運転制御方法の研究開発を行った. 以上は本論文のメインテーマの一つであり,第2部で詳述する. 3.1.2 加湿機能 暖房運転時,圧縮式空調機自体では加湿ができないため,低湿度の冬場では湿度 が下がりすぎてしまう.そこで図 3.2-(a),(b)のように,給水不要な加湿機構が開発 され,ルームエアコンディショナに適用された32).. (b) Humidification by outdoor unit. (a) Humidification by indoor unit. <Upper face>. <Front face> Absorbent Heater. Fan. Absorbent Dry air Outdoor air (to outdoor) Heater. Indoor air. Dry air Wet air (Outdoor) (Indoor). Outdoor air. Wet air Fan (to indoor). Problem: Humidification capacity at low humidity Electricity consumption. Problem: Humidification capacity. Fig.3.2. Fan. Humidification method. - 41 -.

(5) 第3章. 快適性向上のための技術と課題. (a)の方式は,換気機能と一体にしたもので,室内機に排気口を設け,さらにそこ に吸湿剤ロータを設けて,排気空気の水分を吸着したあと,ロータを回転してヒー タにより加熱し,水分を脱着させて室内に戻す方式である.これは,水分を外に逃 がさないようにして,人間からの蒸発水分だけ湿度を上げるというものである. (b)の方式は,室外機にデシカント機能を搭載し,外気からとった水分を室内に 送って加湿する方式である. しかし(a)の方式では人体からの発汗作用が少なく,(b)の方式では冬場は外気の 湿度が低いことから,両者とも加湿能力が十分ではない. 3.1.3 高暖房能力 暖房運転では低外気温ほど高暖房能力が必要になるが,ルームエアコンディショ ナのような圧縮式空調機では低外気温ほど能力が低下してしまう.これに対して, インバータ制御圧縮機が開発され,さらにインバータ制御も PWM 方式に続いて力 率を 99%以上にできる PAM 方式が開発されて,圧縮機回転数を大きく増大できる ようになり,低外気温時の暖房能力を大幅に増大できるようになった. この結果,低外気温時でも石油ファンヒータと同等の暖房能力を発揮できるよう になり(8 畳用ユニットで,外気温-15℃の時,両者とも暖房能力 3.5 kW),さらに 暖房費を石油ファンヒータより安くできる可能性がある.これにより,最近は東北 や北海道等の寒冷地でも暖房機として使用されるようになってきた. 図 3.3 は,冬に札幌の家庭にルームエアコンディショナを取り付けたときの室内 外の温度変化を測定した結果であり33),十分使用可能なことがわかる. しかし立ち上り時等も含めて,暖房機として十分満足できるものにするには,能 力的に余裕が必要である.そこでインバータ圧縮機を使ったガスインジェクション サイクルを開発して,さらに暖房能力を向上させた.この内容は本論文のもう一つ のメインテーマであり,第3部で詳述する. 圧縮式空調機は,暖房運転時に,燃焼式に比べて吹出空気温度が低い,除霜運転 が必要であるといった課題はあるが,再生可能エネルギーである空気熱源を利用し ているため,CO2 削減にとって非常に重要な技術であり,今後とも精力的に省エネ ルギー化と快適性向上の研究を進める必要がある.. - 42 -.

(6) 第3章. 快適性向上のための技術と課題. <Condition> ・Room air conditioner (RAS-2810HX):Rated capacity 2.8/4.2 kW (cooling/heating) ・Living room :10-tatami wide ・Place :Sapporo ・Date :March 3rd. Temperature (℃). Blowing air temperature Indoor air temperature. Keeping about 25 ℃ at no control. Keeping above indoor 23 ℃ at outdoor -10 ℃. Outdoor air temperature Time (minutes). Fig.3.3 Heating drive property using room air conditioner (Sapporo). 3.1.4. 気流制御と人検知. 快適性向上のためには,一般に,室内機の吹出気流を,冷房時には人体に直接当 らないように水平に向け,暖房時には足元から温めるように下方に向けるが,最近 は CFD による気流解析を活用して,より快適な気流分布・温度分布にする検討が 盛んに行なわれている.そしてその結果に基づいて,室内機の縦・横の風向グリル の向きを複数のモータで制御するようになっている. また,人検知センサーを搭載して,人の居る所に気流を向け,そこだけを空調す るようにして,快適性向上と省エネルギーを図ろうとする技術の採用が増えている. このような技術は,ソフトとハードの両面から検討して,省エネルギーにより CO2 削減を図りながら快適性の向上を図ろうとするもので,今後の一つの方向でも ある.. - 43 -.

(7) 第3章. 3.2. 快適性向上のための技術と課題. 空気質. 空気質に関して,空気清浄,換気,抗菌,クリーン化といった面で様々な技術が 研究開発されている. 空気清浄としては,室内熱交換器の風上側に電気集塵機あるいは静電フィルター を設ける方式が開発されている.電気集塵方式はコスト的に高くなるが集塵機能は 高い.フィルター方式は電気集塵に比べて集塵機能が劣り,フィルターのメンテナ ンスが必要であるが,コスト的に安い. 給排気機能を組み込んだルームエアコンディショナも開発された.高密度実装さ れた室内機に給排気機能を組み込む込むために,構造的に色々な工夫がなされた. しかし,排気により室内の熱が逃げてしまうが,まだこの熱の回収機構までは組み 込まれていない. 抗菌作用や脱臭作用を行う機構も組み込まれた.クラスターイオンを発生させた り,イオン化させたり,微粒化させた水分を発生させたりして,抗菌や脱臭を行う ようにしている. クリーン化に対する消費者のニーズも大きい.そのために室内機前面パネルのフ ラット化が行われた.これはファンの送風性能や熱交換器の伝熱性能と深く関係す るため,CFD 熱流体解析を利用して,性能への悪影響が無いように開発された. またフィルターの自動掃除機能も開発され,フィルター掃除の負担が大幅に軽減さ れた. 以上のような機能は,消費者ニーズに答えて商品性を高めるために重要な技術 である.しかし,スペースの狭い室内機内に組み込むことが多く,場合によっては 省エネルギー性を損なうことになるため,これを防ぐように熱交換器やファンを含 む全体構造を十分考慮して適用する必要がある.. - 44 -.

(8) 第3章. 3.3. 快適性向上のための技術と課題. 本章のまとめ. ルームエアコンディショナにおいては,商品性の点から快適性の向上も重要であ り,ここ 15 年位の間に温冷感や空気質に関する様々な快適性向上技術が開発され, 製品に適用されてきた. 温冷感に関しては,サイクル再熱除湿や加湿機構による快適な湿度制御,および インバータ制御の改善やガスインジェクションサイクルによる暖房能力の向上が 図られた.またこれらの開発は,同時に省エネルギーを図りながら行われた. 空気質に関しては,最近,花粉症,インフルエンザ,クリーンといった点と関係 して,空気清浄,抗菌・除菌,掃除のし易さに関する機能が開発されている.特に 抗菌・除菌に関しては,ニーズも高く,様々な方式が提案されているが,まだまだ 改善が必要と思われる. 空調機における快適性の向上は,空調機本来の目的であり,これからもその時々 の顧客ニーズに合わせ,省エネルギーと両立させながら,様々な技術を開発してゆ くことが必要である. 本研究では,快適性の中でも特に重要な温冷感に関する技術に注目し,快適除湿 運転の行えるサイクル再熱除湿サイクルと高暖房能力が可能なガスインジェクシ ョンサイクルの研究開発を行った.これらの技術は,ハード的な性能向上に加えて, 回転数制御が可能な圧縮機やファンをマイコンにより適切に制御することにより, より一層の快適性向上と省エネルギーを図れるシステム的技術である.今後,省エ ネルギーを図りながら快適性を向上させるためには,こうしたシステム的な技術の 研究開発が不可欠である.. - 45 -.

(9) 第3章. 第 1 部のまとめ 快適性向上のための技術と課題. 第1部のまとめ 近年,圧縮式空調機であるルームエアコンディショナは,冷房運転,暖房運転に 加えて除湿運転が可能なことから年間空調機として使われるようになっており,省 エネルギーを図りながら快適性の向上を図ることが大切である.またルームエアコ ンディショナのような圧縮式空調機の技術は,再生可能エネルギーである空気熱源 を利用しており,将来的にも重要な技術である. ルームエアコンディショナに対しては,ここ 15 年位の間に,以下のような大き な課題が発生し,これらをクリアするために,様々な技術が研究開発されてきた. 第1部では,これらに対する最近の動向を述べ,開発技術と課題を明らかにした. 1) オゾン層保護のための冷媒の代替化 2) 地球温暖化ガス削減のための省エネルギー化 3) 生活の質の向上に対応した快適性の向上 まず冷媒では,オゾン層保護に対応してルームエアコンディショナで使われてい た冷媒の R 22 がオゾン破壊係数 ODP がゼロの R 410A に変更され,さらに最近で は地球温暖化係数 GWP がゼロに近い冷媒の検討が進められている. 省エネルギーに関しては,省エネルギー法の改正・施工に伴いトップランナー方 式が導入され,これに対応して圧縮機,熱交換器,ファン等の要素技術からユニッ ト実装の最適化や冷凍サイクルの高効率化まで,様々な技術が開発されてきた. また生活の質の向上に関して,温冷感,空気質,クリーン化に対する快適性向上 のニーズが生じ,これに対応した様々な技術が開発されてきた. しかしこうした技術開発にもかかわらず,ルームエアコンディショナの消費電力 は増え続けており,更なる省エネルギーが必要になっている.これに対してこれま では主に要素機器の効率向上により省エネルギーを図ってきたが,すでに限界に近 付いており,今後は冷凍サイクルと関係したシステム的な技術開発が不可欠である. また快適性の向上は省エネルギーを図りながら実現することが必須である. 以上の課題に対して,第2部,第3部では,省エネルギーを図りながら快適性の 向上を実現できる技術として,以下のサイクルシステム的技術の研究開発を行った. 第2部:省エネルギーで快適な除湿運転が可能なサイクル再熱除湿サイクル. 第3部:省エネルギーと高暖房能力が可能なガスインジェクションサイクル.. - 46 -.

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