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後発開発途上国における電子政府の取組の評価 ―ラオスの事例から―

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(1)

後発開発途上国における電子政府の取組の評価

―ラオスの事例から―

ローワンサイ バンダサイ

*

Evaluation of E-Government Initiatives in Least Developed Countries:

A Case Study of Laos Bandaxay Lovanxay*

Abstract

In the Least Developed Countries (LDCs), Information and Communication Technology (ICT) is one of the most effective tools to alleviate poverty. Electronic government (E-Government) is an important concept for informatization in LDCs. The promotion and implementation of E-Government have become necessities, and governments should be more concerned about them. E-Government is more than just government websites; its ultimate objectives are streamlining administrative processes and enhancing governance.

As a consequence, public service processes and delivery will be more effective and efficient. However, there are many cases in which E-Government projects fall short of being used effectively for solving socio-economic issues in LDCs where a huge investment on infrastructure often takes place prior to sufficient research and a set strategy.

 In this study, I analyzed E-Government initiatives in Laos as a case study of LDCs to investigate the present situation and issues of Lao E-Government using the Waseda E-Government ranking survey method. As a result, I found that even if Lao E-Government Phase 1 systems could be developed, E-Government infrastructure and applications cannot be utilized effectively. Furthermore, there were no online services provided by the Lao government to citizens and companies, and online services planned in this E-Government Phase were not disclosed. Finally, my research finds that online information disclosure to citizens and companies in Lao government agencies is still in its early stages.

*早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程:Graduate School of Asia-Pacific Studies, Waseda University Doctoral Degree Program

Email: [email protected]

Graduate School of Asia-Pacific Studies, Waseda University Journal of the Graduate School of Asia-Pacific Studies No.34 (2017.9) pp.1-18

(2)

1.はじめに

 近年、情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)が、先進国、途上 国を問わず、経済・社会を発展させるための鍵であるとの認識が高まっている。特に、後発開 発途上国においては、ICTは貧困からの脱出のための

1

つの重要な手段と考えられる1。しかし、

途上国では

ICT

の効率的利活用の前に、国の基盤となる経済分野や社会分野のインフラに資金、

資源、人材、技術、時間を投入しなければならないため、ICTを経済・社会発展の課題解決のた めに有効活用できていないことが多い。また、多くの

ICT関連プロジェクトや大規模な ICT

イン フラ整備に関しては、国際機関や諸外国からの資金的・技術的支援により行われているケースが 殆どである。一方、ICT は従来のワークスタイルを変える可能性が大きく、途上国では

ICT

革命 によるワークスタイル変革に抵抗を示す人も少なくない。

 行政での

ICT

利活用は、ICT を利用して「行政の効率化」を図り「迅速な行政手続き」を可能 にするとともに、「行政情報の提供」を行い、「国民の政策への直接参加」を可能にする質の高い 行政サービスを国民に提供することを目的とすべきである。ICTは現代行政における

1

つの必須 インフラととらえられ、E-Government(electronic government:電子政府)は行政における

ICT

活用を論じる際に極めて重要なテーマとなる。また、近年、世界各国で電子政府の取組が進めら れており、先進国のみならず途上国においても、行政の効率化、公的サービスの向上と情報公開 の推進、国民の政策参加の促進、政府の透明化と腐敗の抑止にかかるグッド・ガバナンスの観点 や ICT 振興等を目指して、電子政府を導入する国が増えてきている。

 電子政府とは何かについては、多くの定義が提案されている。国連(2002, p.1)の定義では、

「電子政府は、政府の情報とサービスを市民に提供するためにインターネットとワールドワイ ドウェブを利用すること。」とされており、同様に世界銀行(2015)の定義では「電子政府と は、政府機関が情報通信技術(ICTとしては、ワイドエリアネットワーク、インターネット、お よびモバイル・コンピューティングなど)を使用することを指すもの。」とされている。また、

OECD(2003, p.23)では「電子政府は、より良い政府を実現するためのツールとして、情報通

信技術、特にインターネットの使用に言及する。」と定義されている。一方、日本の

IT

基本戦略

(2000)では「電子政府は、行政内部や行政と国民・事業者との間で書類ベース、対面ベースで 行われている業務をオンライン化し、情報ネットワークを通じて省庁横断的、国・地方一体的に 情報を瞬時に共有・活用する新たな行政を実現するものである。」と定義された。言い換えるな らば、電子政府とは、「行政機関がインターネット及び

ICT利用を通じて、行政内部をオンライ

ン化させる行政業務の効率化、行政と国民の間にオンライン化させる行政サービスの提供及び行 政の意思決定における住民の参加を促進すること。」であると言うことができる。

 多くの途上国政府は、ICT活用を論じる際に電子政府の実現を主要な目標として挙げている。

電子政府の実現とは、行政が提供するすべてのサービスを時間的及び地理的制約なしに利用する ことを可能とするという。すなわち、すべての行政手続に関し、インターネットを経由し、オン ライン申請の受付、オンライン・サービスが

24

時間可能となる電子政府を実現しなければなら ない。しかし、後発開発途上国では、政府の各機関がホームページを開設し、情報を政府ホーム

1総務省「情報通信白書平成24年版」の第1部、第2節「3 開発途上国の貧困からの脱出とICT」による。

(3)

ページに掲載しさえしていれば政府としての責任が果たされたとしているケースも多く見られ る。また、後発開発途上国では、行政でICTを使っているレガシーシステムが少ないことで、先 進国・新興国が進めている先進的な電子政府システム・技術を導入する傾向にある。しかし、電 子政府のシステム開発における資金・技術というリソース不足や、電子政府を構築する初期の段 階からデジタル・ディバイドの解消を視野に入れる電子政府アプリケーションの設計を行わず、

電子政府システムの開発に成功しても結果的に利用されないことや、持続的にシステム運営が進 まない等の問題を抱える国は多い。後発開発途上国にとって、電子政府は総じて難しい課題であ る。また、後発開発途上国において電子政府の取組がうまく進んでいない最大の理由としては、

高額投資で開発・導入された電子政府があまり利用されてないまま電子政府の取組が進められて いることと、電子政府を利用すべき政府機関におけるICTリテラシーの低さが挙げられる。さら に、電子政府推進を中心としているICT関連省庁以外においては、電子政府の取組があまりうま くいっていないことが多く指摘されている。

 本研究で取り上げるラオス人民民主共和国(ラオス)は、東南アジア諸国連合(Association

of Southeast Asian Nations: ASEAN)に構成され、国際連合が定めた世界の社会的・経済的な開

発途上国の中でも特に開発の遅れた後発開発途上国(Least Developed Countries2)のひとつであ る。ASEANは

2015

年に

ASEAN

共同体(安全保障共同体、経済共同体、社会・文化共同体)を 設立し、10ヶ国で

5.7

億人の大規模な社会ネットワークが誕生した。これにより、人やモノ、ひ いては情報の流通が活発化すると予想されるが、ASEAN諸国の間には、ICTインフラを含む社 会インフラの面で大きな格差がある。表

1

は、ASEAN諸国における電子政府ランキングを示し

表1 ASEAN 諸国の電子政府ランキング ASEAN諸国

早稲田大学世界電子政府

進捗度ランキング 国連の電子政府ランキング

2016 2016 2014 2012 2010 2008 2005

シンガポール 1 4 3 10 11 23 7

タイ 21 77 102 92 76 64 46

マレーシア 31 60 52 40 32 34 43

インドネシア 32 116 106 97 109 106 96

フィリピン 38 71 95 88 78 66 41

ベトナム 45 89 99 83 90 91 105

ブルネイ 46 83 86 54 68 87 73

ラオス 対象外 148 152 153 151 156 147

カンボジア 対象外 158 139 155 140 139 128 ミャンマー 対象外 169 175 160 141 144 129

日本(参考用) 5 11 6 18 17 11 14

(出所)早稲田大学世界電子政府進捗度ランキングと国連の電子政府ランキングを基に筆者作成

2国際連合の国連開発計画委員会が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て国連総会の決議によるLeast Developed Countries(後発開発途上国)

(4)

たものである。ここからは、電子政府発展の格差が年々大きくなっていることが読み取れる。ま た、表

1

から分かるように、国連の電子政府ランキングでは、10年の間、ラオスのランキング

147−156

位の間に留まっており、ランキングの変動があまり大きくない。この結果から、ラ

オス政府の

ICT

政策・戦略が十分に実施されていないのではないか、ラオス政府における多くの 電子政府プロジェクトは十分に有効活用されていないのではないかと、いう疑念が生じている。

さらに、後発開発途上国であるラオスに対して、日本をはじめとする先進国や国際機関からの支 援が継続されているが、その支援成果に関するラオス政府の報告は少なく、学術的な評価がなさ れた研究は少ない。特に

ICT

分野・電子政府に関するラオス政府からの報告書はごくわずかであ り、学術的な研究論文はなかった。

 本研究では、後発開発途上国のラオスを事例し、ラオスにおける電子政府の状況及び課題を分 析した上で、電子政府の取組について評価し、ラオスの電子政府を促進させる要因を考察するこ とを目的としている。また、ラオスにおけるICT・電子政府に関する研究論文の一つとして、今 後の

ICT

政策や電子政府についてラオス政府に提言するための資料となることを目指している。

2.先行研究

 Jeongwonら(2009)は、後発開発途上国における

ICTの主な成功要因として、「資金調達、人

的資本、政治的なリーダーシップ、ICTインフラ整備、制度整備」を挙げている。すなわち、シ ステム開発・運営における資金をどこから調達しているか、ICT人材開発における投資はされて いるか、ICT関する知識を備えた政治家・政府高官によるリーダーシップはみられるか、ICTイ ンフラが整備されているか、そして全体を取りまとめる政策・制度はあるかが、ICTの成功に起 因するという。そこで、本研究では、早稲田大学電子政府・自治体研究所(2016)が行ってい る早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査における

10

の評価指標の中から、電子政府の 基本となる

4

つ評価指標「ネットワーク・インフラ」「行政管理の最適化」「オンライン・サービ ス」「ホームページ」に着目して、後発開発途上国における電子政府の取組について分析を行う。

また、作られた電子政府を国民、企業、政府職員らが利用しない要因や利用を促すための法制制 度・政策についても分析を行う。

 表

2

に示しているように、早稲田大学電子政府・自治体研究所(2016)の早稲田大学世界電子 政府進捗度ランキング調査では、電子政府を国民に普及させるためにはネットワーク・インフラ が非常に重要であり、その国のネットワーク・インフラの整備状況を表す指標として、インター ネット利用率、ブロードバンド普及率、携帯電話加入率が挙げられる。ネットワーク・インフラ が整備されているだけなく、電子政府の取組に伴う行政変化に対して、行政内部プロセスを改善 する統合エンタープライズアーキテクチャー・モデルや行政管理予算システムが、行政管理を最 適化すると指摘している。また、行政が国民や企業に提供する主なオンライン・サービスとし て、電子入札システム、電子納税システム、電子決算通貨システム、Eヘルス制度とワンストッ プ・サービスが挙げられる。インターネットを活用した利害関係者と政府のやりとりの窓口とし ては、ナショナル・ポータルが基本的なインターフェースであり、ポータル・サイトの状況を図 るために、情報公開の観点、技術的観点及び機能性観点についての調査がなされている。

(5)

表2 早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査の指標(抜粋)

ネットワーク・インフラの充実度

(公的ネットワークの構築・整備)

11 インターネット加入者

12 ブロードバンド・ユーザー

13 デジタル携帯電話加入者

行財政改革への貢献度,行政管理の最適化

(EAなどの効果)

21 最適化進捗度

22 統合EAモデル

23 行政管理予算システム

各種オンライン・アプリケーション・サービ スの進捗度(オンライン・サービス活動の 種類や進捗度)

31 電子入札システム

32 電子納税

33 電子決済・通関システム

34 eヘルス制度

35 ワンストップ・サービス

ホームページ,ポータル・サイトの利便性

(ナショナル・ポータルの状況)

41 ナビゲーション機能

42 双方向対話性

43 インターフェース

44 技術的利便性

  (出所)早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査の資料

 Heeks(2003)は、途上国の電子政府プロジェクトでは、プロジェクトが実現されないか、

又は新しいシステムが実装されてすぐ中止に追い込まれるいわゆる完全失敗のプロジェクトが

35%を占め、電子政府の取組における大きな目標が達成されないか、又は望ましくない障害が生

じている一部失敗のプロジェクトが

50%にのぼり、残りわずか 15%のプロジェクトが成功した

と評価している。

 山本(2004, p.54)の調査結果によれば、途上国では電子政府の取組がうまく進んでいないこ とには、利用する官僚たちの

ICT

に対する意識の低さが起因しているという。ほとんどの官庁で コンピュータが設置され、ネットワークにもつながっているものの、机の上の飾りになってし まっている官僚があまりにも多いという。もう一つの理由は、どの国でも見られる官僚文化にあ る。電子政府に関して、ICT関連省庁は熱心に進めようとしているものの、他の省庁がそれにつ いてこないという 。制度上、どの省庁も横並びであるため、電子政府への取組に熱心でない省 庁があるからといって、ICT関連省庁が命令をするわけにはいかない。また、村上進ら(2012,

p.286)は、電子政府における業務の改革が図られず、情報システムの更改だけにとどまる例が

多く見られると指摘している。そのため、システムの個別最適化のみで全体最適化は図られず、

行政サービスを利用するユーザーにとって、最適化の効果を実感できるまでに至っていない。つ まり、電子政府プロジェクトを設計する段階で、ユーザー指向を考える必要がある。さらに、

Janja(2011)は、電子政府プロジェクトが頻繁に失敗した原因の 1

つは、チェンジマネジメン

ト戦略の貧弱さであると指摘している。また、Lemmaら(2014)の研究では、電子政府の失敗 を避けるための

1

つの方法は、電子政府実施中におけるチェンジマネジメントであると主張し、

考慮すべき要素としては、「変化への適応、技術解釈、リーダーシップ、人材のスキル開発・ト レーニング、パフォーマンス管理、継続的なコラボレーション」を挙げている。

 国際協力機構(2001)の調査研究によると、行政サービスの向上や民主的な政治の推進を図る ためには、ICTを活用した行政を推し進めるための法制度整備が必要である。そのため、ICTを

(6)

活用して行政業務の電子化・システム化を進めて業務の効率化を図るとともに、情報収集・分析 能力を高め、行政の組織強化を図ることが重要となっている。また、Ricardoら(2003)の研究 では、IT活用によって経済成長を達成した国では、IT政策における「長期的、能力構築の目的、

変化への適応及び他の国家政策と連携」がなされたと指摘している。一方、Young-Sikら(2007)

の研究では、途上国における

ICT

マスタープランアプローチが失敗した要因は、非常に短い期間 に多くの変化が生じるために、既存システム及びそれを利用する市民が変化に対応できていない ことであると指摘している。また、Aliら(2014)の研究では、途上国における電子政府導入は 簡単なプロセスではなく、政府全体が日常業務を変える必要があるため、非常に長期的かつ複雑 なプロセスであり、結果として政府のすべての活動に応じてリエンジニアリングさせ必要がある と指摘している。

3.ラオス概要

 ラオス人民民主共和国は、236,800平方㎞の国土面積を持つ東南アジアのインドシナ半島に位 置する共和制国家である。北に中国、西にミャンマー、東にベトナム、南にカンボジア、タイ の

5

カ国と国境を接し、人口は

680

万人である。ラオスは、近年、経済成長が目覚ましく、ミレ ニアム開発目標(MDGs)の達成を引き継ぐ持続可能な開発目標(SDGs)に向けて、2020年ま でに途上国から脱却することを目指している。ラオスは、2010年には一人当たりの

GDPが 1,000

ドルを超え、2016年度の世界銀行の報告によれば、ラオスにおける過去

5

年間の

GDP成長率は

7%台後半で推移し、2015

年の成長率は

7.0%、GDPは 123

億米ドルとなった。また、急速な経

済成長に対し、産業インフラの一つである

ICT

の発展は遅れている。特に、ラオスの

ICT

サービ ス産業は、発展の初期段階にあり、周辺国に比べ市場規模も小さい。その原因としては、国家レ ベルの

ICT

関連の産業振興策が存在しないこと、ICT人材育成の質の問題等の様々な理由が考え られる。

4.研究手法

 本研究では、ラオスにおける電子政府の状況・課題を分析するために、上記で述べた電子政府 の基本となる

4

つの評価指標、「ネットワーク・インフラ」「行政管理の最適化」「オンライン・

サービス」「ホームページ」における調査手法を用いた調査につき分析する。Charlesら(2008)

は、情報政策研究では、マルチメソッドアプローチの使用が、十分な情報を収集するために最適 であり、問題を十分に理解して分析できると指摘している。マルチメソッド研究の利点は、収集 したさまざまな種類のデータが、単一の方法によらず、問題にもっと注目できるということであ る。本研究では、文献レビューや現状のデータ分析、及びインタビュー等の量的調査及び質的調 査の実施により、問題の分析を行う。また、質的調査におけるインタビューは、Fielding(2008)

が定義されているインタビューの連続体モデルに用いて、インタビューの質問は事前に標準化さ れている構造化インタビューを使用した。

 また、ラオス政府におけるホームページ評価については、早稲田大学世界電子政府進捗度ラン キング調査の「ホームページ、ポータル・サイトの利便性」評価指標における手法を用いた。こ の評価指標はナショル・ポータ状況を図るために、ナビゲーション機能、双方向対話性、イン

(7)

ターフェース、技術的利便性について総合的に実際にホームページを調査し、「情報公開の観点、

技術的観点、機能性観点」の

3

つの観点から指標を分類している。

 −  情報公開の観点:それぞれの機関に関する一般情報・ニュース・連絡先及びその関連機関 へのリンク情報等が存在するかどうかの評価であり、全体評価点数における割合は

18%

とする。

 − 機能性観点:検索機能・サイトマップ・ブログ・ソーシャルネットワーキングサービスと の連携・外国語ページ・オンライン・サービスへの連携及びセキュリティ対策等を評価 し、全体評価点数における割合は

36%とする。

 −  技術的観点:多様なウェブブラウザの対応評価に加え、第三者のデータでの評価として、

Googleの携帯端末やデスクトップ端末向けのホームページのパフォーマンスを測定する Page Speed Insights

を用いて、それぞれのホームページが携帯端末やデスクトップ端末向 けのページのパフォーマンスを測定する。全体評価点数における割合は

46%とする。

5.研究結果と分析

(1)インタビューによるラオス政府機関における ICT 取組の現状

 筆者は

2016

2

月、ラオス行政における

ICT利活用及びラオス電子政府事情について、付録 1

に示すように、個々の政府機関の部長・センター長クラスのICT管理者

13

名を対象とした約

20−

60

分間のインタビュー調査を

13

回にわたって実施した。インタビューの質問として「ICT政策・

電子政府の取組の現状、ICTシステム開発・運営の現状、課題及び予算、将来取り組む

ICT

政策 など」を取り上げ、事前に質問を設定した。それぞれの対象者へインタビューを実施した。本稿 では、以下のように主なインタビュー結果を一部取り上げる。

 − ネットワーク・インフラ:

  高等学校の遠隔教育システムでは、以前に電子政府システムのインフラを使用してい たが、接続不安問題が多く継続的にネットワークが使用できず、企業のインフラを使用し ているために、予算が厳しい状況にある。 …教育スポーツ省

ICT

センター、センター長  − ICT政策及び行政管理の最適化:

  ラオスの電子政府フェーズ

1

は終了したが、電子政府フェーズ

1

の経験を生かして、

現在、次の電子政府に関する政策を策定している。しかし、電子政府に対する慎重姿勢が 高まっており、他の

ICT

政策と連携しなければならない。 …郵便電気通信省電子政府セ

ンター、センター長

ICT

政策は実施されておらず、支援している国際機関や諸外国が業務を円満に運営す るために、必要に応じて

ICT

使用方針のみが作成した。 …計画投資省国際協力局、部長

  電子政府があまり利用されていない理由としては、①ラオスの行政業務プロセスでは 紙ベースが多く、ICTを理解して活用できる人が少ない。②紙ベースであるためにシステ ムに慣れておらず、システムの利用に加え紙ベースも継続されているために、業務が二重 化して負担が増大したため、ICTの利用を止めた。 …郵便電気通信省電子政府センター、

センター長

(8)

 − オンライン・サービス:

  電子政府プロジェクトはあくまでも電子政府基盤となるプラットフォーム及び業務基 本のアプリケーションを提供しているだけで、実際にエンドユーザーにオンライン・サー ビスとして提供するのは、それぞれの行政機関であるはずだが、ほとんどの行政機関は、

電子政府使用における業務改善及び促進は電子政府センターに責任があると認識してい た。 …郵便電気通信省電子政府センター、センター長

  電子政府システムやオンライン・サービスはほしいが、開発はしたくないし、アプリ ケーション開発協力や資金を協力しない行政機関が多く、開発には支障が出てくる。 … 郵便電気通信省電子政府センター、センター長

 − ホームページ、ポータル・サイト:

  ラオス統計ホームページLaoInfo (http://www.laoinfo.gov.la/) のような情報が多いポータ ル・サイトでも、国民にはあまり知られておらず,利用されていない。 …計画投資省ラ オス統計局情報普及部、部長

 − ICT人材・ICTリテラシー:

  人材不足が一番の課題であり、特にデータベース技術者のような高技術を持つ

IT技術

者が不足している。システム開発はアウトソーシングする必要があり、継続的なシステム 展開には課題が残されている。 …計画投資省国際協力局、部長

  開発段階では中国企業が開発していたが、実際に運用していく

IT

スタッフの能力や技 術的な面に問題が出てきた。またエンドユーザーには何回かシステム使用研修を行ってい ても、システムの操作が複雑なために,結局うまく活用されなかった。 …教育スポーツ 省

ICT

センター、センター長

 インタビュー結果を総合的に分析すると、ラオスでは、ネットワーク・インフラ整備が不十分 であることや、電子政府に対する認識及び

ICTリテラシーの低さ、電子政府に伴う業務変革によ

るチェンジマネジメントが実施されていないことが、電子政府があまり利用されていない主な要 因であると考えられる。インタビューの結果及び得られた資料によって、次に文献による分析及 び量的分析を行う。

(2)ラオス ICT 政策事情の分析

 図

1

のように、ラオスの

ICT関連政策としては、2009

年に首相令として承認された国家

ICT

方針がある。同方針は、ラオスにおける

ICT利用の方向性を示したものであり、「住民への ICT

アクセスの提供」、「IT関連企業の投資を促進する環境作り」、「情報セキュリティを守るための 仕組み作り」、「ラオス語コンテンツ普及振興」等が目標として掲げられている。現在、2016年

1

月末にラオス人民革命第

10

回全国代表者大会で承認されたビジョン

2030

に合わせた国家

ICT

マスタープラン

2016−2020

と国家

ICT

開発戦略

2016−2020

のドラフト版が検討されている。ま た、2016年

11

月第

8

期第

2

回国民議会において

ICT法が可決された。これによって、ICT

法が 施行されると、より具体的な

ICT

戦略や

ICT

マスタープランが促進されると考えられる。さらに、

2017

年内の国民議会にて電子情報保護法案が審議される予定であり、電子データ・電子情報の 扱いや個人情報保護が、この法案で規制されると見込まれる。

(9)

 その他、2012年

1

月に施行した電気通信法(改正法)や電子署名に不可欠なオンライン認証 局を規定する電子トランザクション法も、米国の支援を受けて、2012年

12

月に施行された。ま た、2015年

8

月には、サイバー犯罪防止法が国会に承認・施行された。もっとも、ラオスで は、国家レベルでのICTに関する戦略・計画及びマスタープランや

ICT

産業振興政策が策定さ れていない。その理由は、独立行政法人国際協力機構(JICA)とラオス

ICT

商工協会(Lao ICT

Commerce Association:LICA)が 2009

年から

2012

年にかけて共同でラオス

IT

サービス市場を 調査した結果によれば、意思決定が出来る政府高官の中で、ICTを産業インフラの一つと理解し ている人物が他国に比べ極端に少ないこと、及び、ICTに関するマスタープランや産業振興策等 に関する予算が少ないことにあると考えられる。

図1 ラオスの ICT に関連政策・主な電子政府システム一覧

(出所)ラオス政府の郵便電気通信省の資料、Khamphay(2015)資料を基に筆者作成

(10)

 また、2011年の第

7

期第

1

回国民議会で承認された政府機関の再編では、郵便電気通信省と、

科学技術省の

2

つの省が、ICTを所管することとなった。この再編で消滅した旧科学技術機構が 所管していた電子政府プロジェクト、ラオス国立インターネットセンター、ラオス衛星プロジェ クト等は郵便電気通信省に吸収されることとなった。ICTサービス産業関連事項は、郵便電気通 信省の所管とされたが、ICT関連に関しては、科学技術省が政策・戦略を作り、郵便電気通信省 が実施しているとの見方が有力である。しかし、郵便電気通信省は本来あるべき姿の

ICT

省へ移 行する姿勢があり、ICT監督における郵便電気通信省と科学技術省の対立が続いたことが、ICT 政策の遅延を招いた理由の一つであると言える。

(3)ラオス電子政府状況の分析  ① ラオス電子政府事情

 図

1

に示しているように、ラオスにおける電子政府の取組は

2003

年からスタートし、当初は 韓国政府が

ASEAN

支援枠として電子政府ロードマップを策定していた。その後、2005年にイン ド政府の支援によって、電子政府アクションプランが策定され、2006年にラオス政府によって 承認された。電子政府フェーズ

1

は、中国政府からの借款によって

2006

年に中国のアルカテル 上海ベル社と旧科学技術機構により共同開発されていた。電子政府フェーズ

1

では、全国光ファ イバー網構築やビエンチャン首都内の政府機関向けの無線

WiMAX

網の構築を実施し、各政府機 関にハードウェア・ネットワーク機器等を配備した。また、電子政府フェーズ

1

における電子政 府ポータルや政府運営用アプリケーション(電子職員、電子文書管理、電子アーカイブ、テレ ビ会話等)、サービス用アプリケーション(電子登録、電子地図、eラーニング、ウイルス対策、

電子メール等)、国民向けアプリケーション(検索エンジン、電子ニュース、電子公開アーカイ ブ等」の開発が計画された。

 電子政府センター(2013)の報告により、2013年時点での電子政府フェーズ

1

におけるインフ ラ利用率は

51%で、アプリケーション・データベース利用率は 33%しかなかった。また、この

報告では、最終結論として電子政府フェーズ

1

が一部失敗に終わったとされている。もっとも、

その後、電子政府フェーズ

1

のインフラ及びアプリケーションの使用状況や評価についての報告 が行われていないことからすると、これらのアプリケーションは一般的には公開及び使用されて おらず、システムが開発できても、結果として電子政府の取組が有効に活用されないままに終了 した可能性が高いと推測される。このように、ラオス電子政府プロジェクトの開発・運営には、

問題が生じていると言える。

 電子政府センターによれば、現在、電子政府フェーズ

2

の計画が進行中であるとともに、電子 政府開発計画等のドラフトが策定されているが、電子政府フェーズ

1

の失敗により、政府からは 計画の承認がまだされていない。電子政府フェーズ

1

以外の大規模プロジェクトとしては、中国 政府からの借款で実施されている教育スポーツ省の高等学校の遠隔教育システムや、世界銀行の 無償支援による通関システムとして知られている

ASYCUDA、ロシア政府の協力による外務省の

電子パスポートシステムの導入も進んでいる。また、韓国の対外経済協力基金からの借款で、新 たな国税電子申告・納税システムが

2017

年から開発する予定である。その他に、日本政府の支 援で、人材育成や医療分野における保健省の遠隔医療相談システムを中心とした支援及び協力が

(11)

なされている。この支援では、保健省

ICTマスタープラン策定や、ICTマスタープランから具体

的実行段階の共同研究、及び

ICT

の利用に関する地方部における保健医療環境として「中央病院 と地方病院における遠隔相談用のシステム構築」のパイロットプロジェクトも実施されていた が、電子政府フェーズ

1

のインフラを経由する計画だったため、システム開発変更に伴い、想定 していた成果が得られなかった。さらに、世界銀行が支援している工業商業省の貿易ポータル やスイス政府・諸外国の支援で複数府省における情報提供・共有プラットフォームLao DECIDE

Info等があった。

 このように、ラオスにおける電子政府の取組は国際機関や諸外国からの資金的・技術的支援に より行われているが、それらが実際にラオス政府に利活用され、国民に利益をもたらしているの かについては疑問が生じる。多くのプロジェクトは、プロジェクト終了後にスムーズにラオス政 府側に引き継がれておらず、システム維持における課題を抱えている。

 ② ネットワーク・インフラの評価分析

 国際電気通信連合の「Measuring the Information Society Report 2016の

Use indicators」のデー

タによる早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査の「ネットワーク・インフラ」評価指標 の調査手法を用いて評価した結果、ラオスは

10

点中

1.1

という低い結果であった。また、その 内訳としては、「インターネット利用率:18.2%、ブロードバンド普及率:0.5%、携帯電話加入 率:14.2%」であった。インターネット利用では、ラオスは後発開発途上国の平均より(12.6%)

上になっているが、インターネットを経由した電子政府のオンライン・サービス等の利用のため には、ネットワーク・インフラの整備が未だ不十分であり、そのため、電子政府の利用がまだ普 及されないと考えられる。

 また、ラオスの電子政府フェーズ

1

では、全国光ファイバー網構築やビエンチャン首都内の政 府機関向けの無線

WiMAX網の構築を実施したにも関わらず、上記評価数字が大きく影響を与え

なかった。これらのネットワーク・インフラが有効的に利用されていないのではないか、あるい はインフラ整備の維持にかかるコストや資源に問題があるのか、という疑念が生じている。

 さらに、ネットワーク・インフラの整備は援助国からの開発援助資金に頼るだけでは、最適な

ICT

インフラの導入は難しい。ネットワーク・インフラが整備されていない場合、整備には長期 間を要することから、電子政府を構築する初期の段階からデジタル・ディバイドの解消も視野に 入れて、計画的に通信設備等のネットワーク・インフラを整備する必要がある。そのため、各省 庁がデータを相互に活用できる省庁間 LAN を整備し、その次の段階としては、各地方自治体及 び学校、図書館、病院等の公共機関を結ぶネットワーク化を行うための光ファイバーによる大容 量データ伝送回線を整備し、次に企業及び市民へサービスを提供するためのネットワーク・イン フラなどを用いたローカルアクセス回線を整備する必要がある。

 ③ 行政管理の最適化の分析

 早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査の「行政管理の最適化」評価指標の調査手法を 用いて、ラオスにおける電子政府の最適化の状況について調査した。ラオス政府電子政府セン ターが発行した「ラオス電子政府プロジェクトの実施報告書」をもとにして、ラオスの「行政管 理の最適化」指標は

12

点中

3.2

という低い結果であった。これは、2003年から電子政府の取組 を実施してきたにも関わらず、電子政府の取組に伴う行政変化に対応したシステムの最適化が

(12)

十分に行われていないことを示唆する。「電子政府ロードマップ」や「電子政府アクションプラ ン」等の政策が国際機関や諸外国からの支援により講じられても、実施の段階で多くの問題が生 じていると考えられる。特に、行政内部プロセスを改善する統合エンタープライズアーキテク チャー・モデルや行政管理予算システムについては実施に至っておらず、電子政府を進めている 機関において、電子政府の取組にどの程度効果があったのかを判断する評価手段がなく、分析が なされなかったことから、電子政府の取組の戦略・計画が十分検討されていないと考えられる。

 また、行政管理が最適化されておらず、業務変革によるチェンジマネジメントが実施されてい ないために、政府職員が電子政府を利用するインセンティブをもたず、その結果電子政府の利用 率が低くなったと考えられる。電子政府を進行させるためのチェンジマネジメントは重要であ り、簡素で効率的な電子政府の実現に向けて、行政の業務のあり方を見直し、業務処理の電子 化、共通化及びシステムの一元化による業務・システムの最適化を図らなければならない。

 ④ オンライン・サービスの評価分析

 早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査の「オンライン・サービス」評価指標では、

「電子入札システム、電子納税システム、電子決算通貨システム、Eヘルス制度及びワンストッ プ・サービス」に関して、オンライン・サービス状況を測るために、サービスのレベル、セキュ リティ及び利便性について評価している。この指標の調査手法を用いて、2017年

4

18

日にお ける調査結果を表

3

に示す。この結果から、政府透明性が重要な役割となっている電子入札シス テムがなく、他のシステムは、オンライン・サービスとしてではなく、それぞれの政府機関が情 報公開するために、静的ホームページを開発・運営していることが分かった。また、評価時に ホームページにアクセスできない現象が続いた。この理由についてはホームページの評価分析に おいて述べる。

 総合的な評価結果として、ラオス政府から国民や企業に提供するオンライン・サービスが存在 せず、ラオスの電子政府フェーズ

1

で計画した「電子政府ポータルや政府運営用アプリケーショ ン、オンライン・サービスのアプリケーション」が本当に開発されたのかという疑念が生じる。

 また、ラオスでは、現在国税電子申告・納税システムを開発していて、2020年に利用可能と している予定であり、これは国民や企業に提供するオンライン・サービスとして、新たな膜を開 く。一方、このシステムに伴う業務変革によるチェンジマネジメントや、利用者向けの

ICT

リテ ラシーの向上は重要な課題となり、システム開発が計画・設計の通り実施されるかどうかを管理 させるプロジェクトマネジメントも初期段階から、デジタル・ディバイドの解消を視野に入れる アプリケーションの設計を図らなければならない。

表3 ラオス政府のオンライン・サービス評価結果

システム 評価内容 ホームページ・アドレス

電子入札システム 存在しない。 存在しない

電子納税システム 財務省国税局のホームページとして、静的 ホームページで情報ダウンロードのみ。SSL セキュリティ等の対策はない。

http://www.tax.gov.la/

(13)

電子決算通貨システム 財務省関税局のホームページが、評価時、ホー ムページアクセス不可能。尚、ASYCUDA ついては、インタビューの結果により、国 民・企業に公開しているのではなく、関税局 のイントラネット上での使用。

http://www.customs.gov.la/

Eヘルス制度 保健省のホームページであるが、評価時、

ホームページアクセス不可能。 http://www.moh.gov.la/

ワンストップ・サービス ナショナル・ポータルとして、静的ホーム ページで情報ダウンロードのみ。SSLセキュ リティ等の対策はない。

http://www.laogov.gov.la/

(出所)筆者作成

 ⑤ 政府機関のホームページの評価分析

 早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査の「ホームページ、ポータル・サイトの利便 性」評価指標の調査手法を用いて、ラオスの中央政府

18

機関に、首相府、国民議会、中央銀行 を加えた全

21

機関のホームページを調査した。評価点数は最高

8.0

点であり、「5.0 以上:平均 以上で、3つの観点ともバランスがとれており、特に機能性観点が優れている」、「4.0-5.0:平 均的、一般的なホームページで

3

つの観点ともバランスがとれているか、又はどちらかの観点に おける点数が高い」と「4.0 未満:平均以下で、ホームページの初期状態として、3つ観点にお ける評価が低いか、又はどちらかの観点における点数が高い」を意味する。

 2017年

4

18

日における調査結果を表

4

に示す。この結果から、平均及び平均以上となる評 価点数が

4.0

以上になった機関は

7

機関(33%)となったことが分かる。一方、評価点数が

4.0

未満になった機関は、10機関(48%)となったことが分かる。これらのホームページは、それ ぞれの機関における情報公開の段階で、検索機能や外国語ホームページといった機能性がなく、

技術的な面でも一般的なレベルの到達にとどまっている。また、評価点数が

5.0

以上の機関は、

司法省、工業産業省と国民議会の

3

機関(14%)のみで、これらのホームページは、ラオス国家 における法制強化一連のプロジェクトの一環として、国民への法律・規定を公開するために諸外 国及び国際機関による支援で作られたホームページであった。さらに、以前ホームページが存 在したが、何らかの理由で評価時にホームページにアクセスできない機関は、4機関(19%)と なったことが分かる。ホームページにアクセスできない主な理由としては、ホームページのコン テンツを格納するホスティング・サーバーをそれぞれ機関に独自に持っているために、ITイン フラとセキュリティ対策の不十分さによって、ホームページが閉鎖されていることが考えられ る。また、これらの政府機関はホームページを持つべきであるにも関わらず、ラオス政府機関に おけるホームページ普及が、まだ全体的に行き届いていないことと言える。

 総合的な評価結果として、ホームページを通して、ラオス政府機関における国民・企業への情 報公開は、まだ初期段階であると言える。公開されている情報内容については、それぞれの機関 における活動・一般的なニュース及び関連法制がほとんどであり、ホームページ、ポータル・サ イトの利便性としての技術的観点・機能性観点がまだ低い。

 また、途上国においては電子のコンテンツがそれほど豊富ではないため、オンライン・サービ

(14)

スを利用しようとする国民や企業も少ない。これらの問題を解決するには、まず行政情報を電子 化し、インターネット等で公開してICTの活用促進を図ることが重要である。そのためには行政

WAN・ LAN の構築を行い、更にプロバイダーを介してホームページを開設し、政府白書、統

計情報、その他中央官庁の活動広報・

各種情報、地域情報、健康医療情報、生活情報、観光・イ

ベント情報等を公開・発信するのが有効と考えられる。各種規制や法律、汎例も有用な情報であ り、広く公開することが求められる。このように広く行政情報を公開することにより、行政の透 明性が向上し、グッド・ガバナンスが促進される。

表4 ラオス政府機関のホームページ評価結果

No ラオス中央政府 主な機関(各府省)

早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング 調査の手法

ホームページ・アドレス

(最大点 8.0) 情報公開 技術的総合点数 機能性

1 司法省 5.6 平均以上 http://www.moj.gov.la/

2 工業商業省 5.0 平均以上 http://www.moic.gov.la/

3 国民議会 5.0 平均以上 http://www.na.gov.la/

4 内務省 4.7 平均 http://www.moha.gov.la/

5 教育スポーツ省 4.6 平均 http://www.moe.gov.la/

6 ラオス中央銀行 4.2 平均 http://www.bol.gov.la/

7 首相府 4.1 平均 http://www.laogov.gov.la/

8 天然資源環境省 3.9 平均以下 http://www.monre.gov.la/

9 郵便電気通信省 3.9 平均以下 http://www.mpt.gov.la/

10 外務省 3.7 平均以下 http://www.mofa.gov.la/

11 科学技術省 3.7 平均以下 http://www.most.gov.la/

12 公共事業運輸省 3.7 平均以下 http://www.mpwt.gov.la/

13 国防省 3.5 平均以下 http://www.mod.gov.la/

14 計画投資省 3.5 平均以下 http://www.investlaos.gov.la/

15 農業森林省 3.1 平均以下 http://www.maf.gov.la/

16 公安省 3.0 平均以下 http://www.laosecurity.gov.la/

17 財務省 2.9 平均以下 http://www.mof.gov.la/

18 エネルギー鉱業省 評価時、ホームページアクセス不可能 http://www.mem.gov.la/

19 情報文化観光省 評価時、ホームページアクセス不可能 http://www.micat.gov.la/

20 保健省 評価時、ホームページアクセス不可能 http://www.moh.gov.la/

21 労働社会福祉省 評価時、ホームページアクセス不可能 http://www.molsw.gov.la/

(注)情報公開の観点、技術的観点、機能性観点それぞれの点数の達成割合で、高80%以上、中4079%、低40未満

(出所)筆者作成

6.結 論

 本稿では、後発開発途上国の電子政府事情の一例として、ラオス

ICT

政策及び電子政府の現 状と課題を調査した。特に、ラオスの電子政府フェーズ

1

の取組に着目し、電子政府の取組につ

(15)

いて評価し、ラオスの電子政府を促進させる要因を考察した。調査した結果により、電子政府 フェーズ

1

のインフラ及びアプリケーションは一般的には使用されておらず、システムが開発さ れても、電子政府の取組が有効に活用されないまま終了してしまっていることが分かった。

 また、本研究では、早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査における

10

の評価指標の 中から、電子政府の基本となる

4

つ評価指標「ネットワーク・インフラ」「行政管理の最適化」

「オンライン・サービス」「ホームページ」における調査手法を用いて、ラオスにおける電子政 府の取組について評価した。その結果として、ラオスの電子政府フェーズ

1

で構築された全国光 ファイバー網などが、ネットワーク・インフラの整備としては未だ不十分であり、電子政府の利 用が普及していないということが分かった。また、行政管理の最適化については、電子政府に伴 う業務変革によるチェンジマネジメントが行われておらず、政府職員らの電子政府に対する認識

及び

ICTリテラシーの低さや、電子政府を使うとかえって業務が増えることから、開発された電

子政府が利用されていないということが分かった。

 一方、国際機関や諸外国から資金的・技術的支援を受けているにも関わらず、多くのプロジェ クトは、プロジェクト終了後にスムーズにラオス政府側に引き継がれておらず、システムの保持 のための課題が生じている。また、ラオス政府から国民や企業に提供されるオンライン・サー ビスがなく、ラオスの電子政府フェーズ

1

で計画されたオンライン・サービスも公開されなかっ た。さらに、早稲田大学世界電子政府進捗度ランキング調査の「ホームページ、ポータル・サイ トの利便性」評価指標の調査手法を用いてラオス政府の各省庁のホームページに対して評価した 結果では、ラオス政府機関における国民・企業へのオンラインでの情報公開がまだ初期段階にと どまっていることが分かった。

7.おわりに

 本研究では、後発開発途上国における電子政府の状況及び課題を分析した上で、電子政府の取 組について評価し、電子政府を促進させる要因を考察することを目的としている。本稿では、後 発開発途上国の一例として、ICT分野・電子政府に関する学術的な研究論文がなかったラオスに おける電子政府の取組を分析した。本稿で取り上げた分析結果は、今後ラオスにおける

ICT

政 策・電子政府に関する研究に対して、基礎的研究として参考文献になると期待している。また、

ラオス政府にとっては、学術的研究によるラオスの電子政府に対する評価資料として、ラオスの 電子政府における進捗評価及び促進政策を実施させるものとして考えられる。

 後発開発途上国における電子政府の取組があまり進まないこととしては、多くの電子政府のシ ステムが開発できても、電子政府に対する抵抗感・誤認識及び

ICTリテラシーの低さや、電子政

府を使って現行業務が増えることからという理由で、電子政府を利用しないことが大きい要因 だと考える。特に電子政府を使うべき政府職員が開発された電子政府を利用せずに、利用する 前に電子政府に対する抵抗感を持ってしまうことになると、電子政府の効果がなくなる。また、

後発開発途上国の特徴では、ICTシステム導入に関し、外国企業や諸外国に片寄る傾向があるた め、ICTシステム開発に関わるラオス国内ICT人材の育成や、ラオス国内

ICT産業に貢献するこ

とを十分行っているとは言えない。JICAとLICA(2012)のラオス

ITサービス市場調査では、IT

サービス企業は、全国で

150

社程度しかなく、その多くは従業員数

20

人以下の小規模な企業で

(16)

あるため、ラオスの

ICT企業は大型の ICTシステム開発を受注することができず、隣国中国・タ

イ・ベトナムの企業や、その他の外国企業が受注してきたという現状がある。さらに、電子政府 を進めている機関でも、電子政府の取組が失敗したのか成功しないのかを判断・評価する手段が なかったことや、要因究明が行わなかったことから、電子政府の取組の戦略・計画が十分検討さ れていないことと言える。電子政府振興の法制度が十分に整備されないにも関わらず、多くの電 子政府のシステムが開発できても、システム利用における法制上の制約がなかった。このよう に、

ICT

及び電子政府関連政策が優先的に検討する必要がある。すなわち、法制度整備によって、

人々・技術のリソースをバランスよく管理するとともに、電子政府を使う人々が

ICT

の技術で開 発したシステムを利用させるアプローチは、後発開発途上国にとって電子政府の取組を成功させ る要因と言える。

 今後、電子政府を利用しない要因を検討すると共に、後発開発途上国における電子政府の利用 促進を図る

ICT・電子政府関連政策及び電子政府の開発に関するモデルの作成を行っていきたい

と考えている。

(受理日 2017年

4

27

日)

(掲載許可日 2017年

7

29

日)

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付録1:インタビューしたラオス政府機関一覧

No 日程・時間:機関名 インタビュー者 担当システム

1 2016/02/24・60分: 郵 便 電 気 通 信

省、電子政府センター Phonpasit Phissamayセンター長 電子政府フェーズ1の開発・

運営 2 2016/2/1630分:計画投資省、国

際協力局 Aroungyadeth Rasphone部長 ODAデータベース管理シ

ステム、Lao DECIDE Info

3 2016/2/16・30分:計画投資省、ラ

オス統計局、情報普及部 ViengKham Somsaard部長 ラオス統計システム

4 2016/2/23・30分:農業森林省、科

学技術研究 Thatheva Saphangthong所長 Lao DECIDE Info 5

6 2016/2/23・25分 &2016/2/25・40

分:教育スポーツ省、ICTセンター Phoukhaoka Sacklokham副センター

長、Salyphone Oudthajack係長 高等学校の遠隔教育システ

7 2016/2/25・30分:工業商業省、輸

入輸出局 Phoutsawanh Khounchantha部長 貿易ポータル

8 2016/2/2530分:工業商業省、統

計・情報センター Khamphanh Heuangmanyセンター

貿易情報システム

9 2016/2/25・45分: 財 務 省、 統 計・

情報センター Vilaythong Southavilay副センター

債務管理システム

10 2016/2/29・40分:財務省、税務局、

計画ICT Thammaloth Rasphone部長 税務管理システム 11 2016/2/29・40分:財務省、関税局、

計画ICT Anousak Sisa-ad部長 電子通関システム

−ASYCUDA

12 2016/2/29・20分:工業商業省、企

業登録データベース・オフィス Udone Phoutthabandid副室長 企業情報管理システム 13 2016/2/29・30分:天然資源環境省、

ICTセンター Bountieng Sanaxonhセンター長代

天然資源情報管理システム

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