岡山大学大学院社会文化科学研 究科紀要第27号 (2009,3)
トル コ語 とウイグル語の関係節 における受身形
ThePassiveForm inRelativeClausesinTurkishandUighur
アブ ドウラハ マ ン ギュロル AbdurrahmanGUROL
1.はじめに
本稿では、まず、 トルコ語 とウイグル語における受動態の一般的な特徴や用法などを形態的及び統 語論的に検討 し、更に、 自他動詞の受動化 と非人称受動態 (Impersonalpassive)とい う現象 を関係 詞節の観点から対照研究 を行いなが ら分析 したい と思 う。
よく知 られているように、トルコ語では、他動詞 も自動詞 も受動化の接尾辞 「‑1、‑n」の付加 によっ て受動化で きる。 ウイグル語で も同 じ受動化の接尾辞が使われるが、ウイグル語の受動態、特 に自動 詞の受動化 に関する先行研 究 はご くわずか しかない。例 えば、 ウイグル人の研究者Tomnr(1987)、
(2003)とseper(2002)では、他動詞の受動化 に限 られると述べ られてお り、 自動詞の受動化 につい ては述べ られていない。更 に、Milikadam (2004,p.3)の修士論文では、「ウイグル語では、受動化の 接尾辞は自動詞 につけることがで きないが、形態的な方法でイディオムの形成 をする。限 られた数の 自動詞に受動化の接尾辞 をつけることによって、元の動詞 と語嚢的な意味が異なる別の動詞 を作るの である。 これ らの派生動詞は受動の意味 を表 さず、イデイオマテイツクな意味になる」 と述べている が、本稿では、様々なウイグル語のデータに基づいて、ウイグル語で も自動詞の受動化が可能である
ことを示す。
2.トルコ語の動詞の特徴
トルコ語の受動態 を検討する前に、まず トルコ語の動詞の特徴 を見 る必要がある。 トルコ語の動詞 に も他動詞 と自動詞 とい う二種類があ り、 自動詞は更に 「非能格 自動詞 」 (unergative)と 「非対格 自動詞」 (unaccusative)に分 けられる。 前者 には、動作主あるいは行為者句 の意志的 ・意図的な動 きがみ られるが、後者 にはその ような意志性 は現れない。NaklpOglu(2001,pp129‑150)は トルコ語の 自動詞 を、動作が内部か ら扇動 される内部扇動 と外部か ら扇動 される外部扇動 に分類 している。そ し てそれによ り非能格性 と非対格性が決 まる と主張 している。NaklpOgluの この分類 によると、動詞は 下記のように分類で きる。
・ .'声
1 2 3 4 5
Atla(飛び降りる) Agla(泣 く) 01(死ぬ) Bt.Iyil(育つ) Bat(沈む) catlS(働 く) GtlL(笑う) Boかl(演れる) Buna(はける) ctlrtl(腐 る) YtJz(泳 ぐ) Hap$lr(クシャミする) Dog(生まれる) YaSLan(年をとる) Don(凍 る) Kos(走る) HICklr(しゃっくりをする) Bayll(気絶する) Er主(溶ける) Konus(話す) Horla(いびきをかく) sol(しおれる) oyna(違ぶ) Uytl(寝る) Klrll(割れる) Ytlrtl(歩 く) Okstlr(せきをする) patla(爆発する) DoStl一一(考 える) KIZar(赤くなる) Karar(黒くなる) UnergatlVe UnaccusatlVe
NaklPO如 (2001)
3.トルコ語の受動態の形態論的な特徴
トルコ語では、受動表現 を表す接辞 し1、‑n」 を動詞語幹につけることによって受動態の派生動詞 がで きる。Ergln(1962)によると、本来受動接辞 として主 に 「‑1」が用 い られて、「‑1」が付け られな い動詞 に後か ら 「‑n」が付加 され るようになった。 しか し、 これ らの接辞付加用法は窓意的ではな くて、母音そ して子音調和 と関係がある。つ まり、動詞語幹が 「1」以外の子音で終わる場合は接辞 の 「‑1」が母音調和 に従 う適 当な母音 と付加 され、動詞語幹が 「l」 または母音で終わる場合 は接辞 の 「‑n」が付加 されるとい う規則がある。
く表2)
動詞語幹が 「1」以外の子音で終わる動詞 sev(好む)他‑ sev‑il(好 まれる) vur(打つ)他‑ vur‑ul(打 たれる) dur(止 まる)自‑ dur‑ul(止 まられる) inan(信 じる)他‑ inan‑ll(信 じられる) 動詞語幹が子音の
「
りで終わる動詞cat(盗む)他 ‑cah n(盗 まれる)
動詞語幹が母音で終わる動詞
terle(汗 をか く)自‑ terle‑n(汗がかかれる) oku(読む)他‑ oku‑∩(読 まれる)
yolla(送る)他 ‑ yolla一m(迷 られる)
sit(消す)他‑ siH n(消 える) kal(泊 まる)自‑ kal‑1n(泊 まられる)
上の表で見 られるように トルコ語では、他動詞 も自動詞 も適切 な接辞の付加 によって受動化で きる。
4.ウイグル語の受動態の形態論的 な特徴
Tomur(1987)によると、 ウイグル語の受動表現 における動詞 には、動詞語幹 に受身の意味 を表す 接辞 「‑1、‑m」がついた派生動詞が用い られる。動詞語幹 に受身の接辞 を付 ける時は、次のような規 則がある。
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(表 3)
動詞語幹が 「1」で終わるときは、「‑nJlが付 く al(取る)‑ e12‑in(取 られる)
bol(分ける)‑b61‑tin(分けられる)
動詞語幹が 「1」以外の子音で終わるときは、「‑il, ‑u1,‑01」が付 く
yaz(書 く)‑ yez‑il(書かれる) kOr(見る)‑ kor‑nl(見 られる) ur(打つ)‑ ur‑ul(打たれる)
動詞語幹が母音で終わるときは、「一1, ‑∩,‑yul,‑yil」が付 く
yasa(作 る)‑ yasa‑i(作 られる) de(言 う)‑ de‑yil(富われる)
ula(つなげる)‑ ula‑n(つなげられる) yu(洗 う)‑ yu‑yul(洗われる)Milikadam (2004)
動詞語幹が母音で終わる能動形の動詞 を受身形 に変えるとき、「‑1」にするか 「一m」にするかは規 則がな く、語嚢的に決定 されている。
Milikadam (2004)では、ウイグル語における自動詞の受動化は不可能であると述べ られているが、
ウイグル語における自動詞の中で も特に非能格 自動詞の受動化 は可能である。下記の 自動詞の受動化 については 「非人称受動構文」で詳 しく述べる。
(表 4)
ktll(笑う)‑ ktil‑tin(笑われる) kir(入る)‑ kir‑il(人 られる) bar(行 く)‑ ber‑il(行かれる) kel(来る)‑ ke卜in(采 られる) elk(出る)‑elk‑ll(出られる) oltur(座 る)‑ oltur‑ul(座 られる) yngBr(走る)‑ ytigtir‑nl(走 られる)
uhla(寝 る)‑ uhl卜n(藩 られる) ti∑(泳 ぐ)‑ tlz‑til(泳がれる) kon(泊 まる)‑ 女on‑ul(泊 まられる) Ot(通る)
‑O t ‑ t
ll(通 られる) isen(信 じる)‑ isen‑il(信 じられる) aeeiklan(怒る)‑ acciklin‑il(怒 られる)5.
トルコ語の受動態の統語論的な特徴トルコ語では他動詞 も自動詞 も受動化で きる。 しか し、受動態の特徴 として一般 に知 られている 目的格か ら主格への昇格 とい うプロセス も、 もともと目的語 を持たない 自動詞の受動態の場合では
1受身接辞 「‑n」は、直前の母音の性質 によ り、以下の四つの異形態の うち、一つが選択 される :‑n.‑in.un,Bt1 2逆行同化表現 によってaがeに変わる。
トルコ語とウイグル語の関係節における受身形 アブ ドウラハマ ン ギュロル
異 なって くる。 まず他動詞の受動化 プロセス を見 てみ よう。
NI N2 V N2 g V‑pass
(1) a.Ayse elbise‑yl ylka‑dl b.Elbise ylka‑n‑dl アイシェ 服‑村椿 洗 う一過去形 服 o 洗 う‑受身掛 過去形
"アイシェは服 を洗 っだ ' "服が洗 われだ '
(1b)において動詞が受動態 に変形 したため、他動詞能動文 (1a)の 目的語N2が 目的格 の位置 か ら 主格 の位置 に昇格 してい る。能動文 の主体 であ るNlは受動化 に よって消 え去 る。 しか し、ので表 し た場所 にNltaraflndan(‑ によって) とい う後置詞句 の挿入 も可能 である。 トル コ語話者 は口語 の 受動構文でN1taraflndanをまれ に しか使 わないが、文語で は動作 主 を強調す るため に自然 に使 われ てい る。
C.Elbise Ayse taraflndan ylka‑∩‑dl 服 アイシェ によって 洗 う一受身形一過去形
"服がアイシェによって洗われだ '
Balplnar(1983)はN1taraflndanが挿入 された受動構文 をTruepassivesと呼 び、 (1b)の ようにN1 taraflndanが現 れない、つ ま り動作主が消 え去 った受動構文 をAgentlesspassives(行為者句不在受動 構文) と呼 んでいる。本稿 で も同 じ用語 を使 うことにす る。 例 (1a)が能動文 で、 (1b)が行為者旬 不在受動文そ して (1C)がTruepassivesである。
6.ウイグル語の受動態の統語論的な特徴
ウイグル語の他動詞の受動化 プロセスを検討する と、 トル コ語のプロセス と全 く同 じであることが わかる。下記の例で このプロセスを見 てみ よう。
NI N2 V N2 ¢ Ⅴ‑pass
(2) a.Muellim Åli‑ni mahti‑di b.Ali mahta十 di 先生 ア 7)一対格 はめる一過去形 アリ o はめる‑受身形一過去形
"先生はア リをはめた" "アリが はめ られた"
トル コ語 と同様 に、(2b)において動詞が受動態 に変形 したため、他動詞能動文である(2a)の 目 的語であるN2が 目的格 の位置 か ら主格 の位置 に昇格 している。能動文の主体 であるNlは受動化 に よって消 え去 る。 しか し、e'で表 した場所 にNltaripindin(〜 によって) とい う後置詞句 の挿入 も可 能である。 ウイグル語 の受動文 において、後置詞 によって動作 主が表示 される場合、taripindin ト によって)の他 にbilan(‑で、 によって)とarkilik(〜で、 〜を通 じて、 ‑を通 して)があるが、一般
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的 に使 わ れ るの はtaripindin(〜 に よっ て) で あ る。 ウ イ グ ル語 話 者 は 口語 の 受 動 構 文 でN l taripindinを まれ に しか使 わ ない が、 文 語 で は動 作 主 を強調 す る た め に 自然 に使 わ れ る。 (cf. Milikadam2004)
C.Ali muellim tarlPindin mahta‑I‑di アリ 先生 によって はめる一受身形一過去形
"アリが先生 によってはめ られだ 'Milikadam (2004)
例 (2a)が能動文で、 (2b)が行為者句不在受動文 そ して(2C)がTruepassivesである。
7.非人称受動態
トル コ語 の受動文の中で独特 な特徴 を持 っている と言 われる非人称受動 は最初 にPerlmutter(1978) に よって関係文法 的な側面 か ら研 究 されて、その後、Biktimir(1986)、OzkaragOz(1986)、NaklpOglu (2001)で も様 々な側面 か ら研 究 されて きたが、 この現象 についてOzbek(2004)は次 の ように述べ て い る。
「トルコ語 においては非人称受動構文が他動詞文 は もちろんの こと二つ に下位分類 された自動詞構 文か らも派生で きる。 トル コ語の非 人称受動態 は形態的に動詞語幹 に 「Pass十Aor」が累加 される形 で、意味的 に特定の人物以外 に一般的 に誰 によって も 「される」あるいは否定形 の場合は誰 によって も 「されない」 とい う事柄 を表す ものである。受動構文 には動作主が現れないが、他の時制 を持つ受 動構文 は意味的 にもともと存在 している特定の動作主 を隠 しているので 「行為者句不在受動態」であ
る。」 (cf.Ozbek2004,p.20)
上記 に述べ られた説明 を踏 まえて、 トル コ語の非人称受動構文の例 をウイグル語 と対照 しなが ら考 察 したい と思 う。
7.1.自動詞の非人称受動化
7.1.1.非能格 自動詞文の非人称受動態
(3) a.Haftason‑1ar‑1 gOl eevre‑sin‑de kos‑u1‑ur
週末一複数形三 単所 湖 周辺‑三単所一位置格 走 る‑受身形‑アオリスト
"週末 は湖の周辺で走 られる''
b.Bazlinsanllar haftasonllar‑1 gOl cevr.e‑sin‑de kosar・ ある 人一複数形 週末‑複数形一三単所 湖 周辺‑三単評卜位置格 走 る‑アオ.)スト
"ある人連は週末 に湖 の周辺で走 る" NaklpOglu(2001) (4) a.Havuz tertemiz o1‑du, ytiz‑n卜山r
プール きれい なる一過去形、 泳 ぐ一受身形‑アオリスト
"プールが きれいになった、そ こで誰で も泳げる"
トルコ語とウイグル語の関係節における受身形 アブドウラハマン ギュロル
b.Havuz tertemiz o卜du, herkes ytlzer. プール きれい なる一過去形、 皆 泳 ぐ一アオリスト
"プールが きれいになった、そこで背泳("
(3b)か ら(3a)そ して (4b)か ら(4a)へ の受動化 にお い て、両者 は一般 的 な こ とを述べ て、
Ntaraflndanが追加で きない ものの、受動態 +アオリス トの形 を持 ってい るので非人称受動態である と言 える。 自動詞の非人称受動化 をウイグル語 に当てはめてみると、非能格 自動詞文の非人称受動化 が可能であることがわかる。非能格 自動詞文の非人称受動化が文法的 に可能であるのに、ウイグル語 話者は口語の自動詞の非人称受動化 をまれに しか使 わない。 自然な言い方は能動形である。
(5) a.Turfan‑da Buyluk digen jay nahayiti guzel bolup, トウルフアンー位置格 プエルク とい う 場所 とて も 給麓 であって buyer‑de oltur‑u1‑idu, Sohpet klh n‑idu, tamak yl‑yil‑idu.
この場所一位置格 座 る‑受身形‑アオ3 話 し す る一受身形‑7オ ご飯 食べ る一受身形‑アオ Bu Turfan‑in bir adetidir4 (ウイグル語)
これ トウルフアンー属格 一つ 習慣
"トウルフアンのブユルクとい う場所 はとて も椅麓で、この場所で座 った り、話 し合 った り、食事 し た りする。これは トウルフアンの一つの習慣である"
b. Turfan‑da Buyluk digen jay nahayiti guzel bolup, トウルフアン堀 置格 ブユルク とい う 場所 とて も 椅麓 であって buyer‑de bazladen‑1er oltur‑idu, sohpet kll‑idu,
この場所一位置格 ある人‑複数形 座 る‑7オ 話 し する‑アオ tamak yl‑yidu. Bu Turfan‑in bir adetidir
ご飯 食べ る‑アオ これ トウルフアン‑属格 一つ 習慣
"トウルフアンのプユルクとい う場所 はとても椅麓で、この場所である人達は座 り、話 し合い、食 事する。 これは トウルフアンの一つの習慣である"
(5a)のような例が他 にもある。
(6) a.Yazvekti bukO卜de uz‑i卜idu b.Herkim yazvekti bukOl‑de nz‑idu 夏の時期 この湖一位置格 泳 ぐ‑受身形,‑アオ 皆 夏の時期 この湖‑位置格 泳 ぐ‑アオ
"夏の時期 はこの湖で泳がれる" "夏の時期 は皆 この潮で泳 く… (7) a.Hepteahir‑lerde orman‑da yngnr‑til‑idu
週末一複数形一位置格 森一位置格 走る一受身形‑アオ
"週末は森で走 られる"
3アオで示されているのはアオリストの省略である。
4ウイグル語の例はウルムチ在住のインフォーマント(55歳、男性、トゥルフアン出身)によると可能である。
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b.Bazladen‑1er. hepteahir.‑1er‑de あ る人一複数形 週末一複数掛 位置格
"あ る人達 は週末 に森 で走 る''
orman‑da 森一位置格
ytlgtlr‑idu 走 る̲アオ
(8) a. Yazvekticidir‑de uhli‑n‑idu b.Bazladem‑ler yazvekti eidir‑de uhla‑ydu 夏の時期 テント位置格 寝る一受身形‑アオ ある^一複数形 夏の時期 テント位置格 寝 る‑7オ
"夏の時期 はテ ン トで寝 られ る" "夏の時期 は、あ る人達 はテ ン トで寝 る"
トル コ語 の非能格 自動詞文 の非 人称受動態 (動作主が人間以外 の もの) (不可能) (9) a.・Burada havla‑n‑1r b.Burada k6pek havla‑r
ここで 鳴 く一受身形17オ ここで 犬 鳴 く‑アオ
"ここで鳴かれ る'' "ここで犬が鳴 く''
(9a)の動詞が 「犬が鳴 く」 とい う動作 を表 してい るため、非 人称受動態 になれ ない。従 って、非 文法 的である。
(10) a.*Buyerdemiyavla‑yil‑idu b.Buyerde mnstik miyavla‑ydu ここで 鳴 く‑受身形‑アオ ここで 猫 鳴 く‑アオ
"ここで鳴かれ る'' "ここで猫が鳴 く"
上記 の (10a)の例 で見 られ る ように、 ウイグル語 で も非能格 自動詞文 の非人称受動態 (動作 主が人 間以外 の もの) は不可能である。
7.1.2.非村椿 自動詞文 の非 人称受動態 (ll) a.Bu yetimhane‑de eabuk
この 養護施設‑位置格 早 く
"この養護施設で早 く育 たれ る"
bnyti‑n一也r (トル コ語) 育つ一受身形一アオ
(perlmutter1978)
b.Aile‑si o1‑mayan herkes buyetimhane‑de eabuk btlyti‑r 家族一三単所 なる‑否定連体形 みんな この養護施設一位置格 早 く 育つ一アオ
"家族が ない人々は この養護施設で早 く育つ"
(llb)に対 す る受動構 文 は (lla)で、養護施 設 で育 て られ る資格 を持 つ 「誰 で も」 とい う事柄 を表 してい る。無論、 (lla)にNtaraflndanの挿入 はで きない。
一方、 ウイグル語では、非能格 自動詞文 の受動化 が可能であるが、非対格 自動詞 の受動化 は不可能 であ る。下記 の例 で見 られ る ように、能動形 しか表現 で きない。
(12) a.*Bu darlltan‑da tez Os佃l‑idu この 養護施設一位置格 早 く 育つ一受身形‑アオ
"この養護施設で早 く育 たれ る"
トルコ語 とウイグル語の関係節 における受身形 アブ ドウラハマ ン ギュロル
b.Åile‑si bol一magan herkim budarlltan‑da tez os‑idu 家族 一三単所 な る‑否定連体形 み んな この養護施 設一位置格 早 く 育 つ‑7オ
"家族 が ない人 々 はこの養護 施設 で早 く育 つ"
(13) a.・Yetmisindin keyin tez 七 十一奪格 後 早 く
"七 十歳 か ら早 く年 が取 られ る"
b.Herkim yetmisindin keyin 皆 七十 一奪格 後
"誰 で も七 十歳 か ら早 く年 を取 る"
yasin‑i卜idu 年 を取 る一受身形‑アオ
tez yasin‑idu 早 く 年 を取 る̲アオ
(14) *Burada patla‑n‑1r (トル コ語 ) こ こで 爆発 す る‑餐身形‑アオ
"ここで爆発 され る"
(14)の動詞 は無 生 物 に しか使 えない 「爆発 す る」 とい う非村 椿動 詞 なので、 この構文 も非文法 的で あ る。
(15) *Buyerde partili‑∩‑idu (ウイグル語) ここで 爆発 す る一受身形‑アオ
"ここで爆発 され る"
更 に、 トル コ語 で は、 間接 目的語 を もつ 自動 詞 の非人称 受動 態 も可 能 で あ る。 例 えば : (16) a.Ankara'ya buyo卜dan 営id‑il‑ir
ア ンカラヰ 格 この道 ‑奪格 行 く‑受身形‑7オ
"ア ンカ ラへ の行 く道 は この道 で あ る/ア ンカラへ は この道 で行 くこ とが で きる'' b.Herkes Ankara'ya buyol‑dan gid‑er
皆 ア ンカ ラ」i格 この道 ‑奪格 行 く‑アオ
"骨 が ア ンカ ラ‑ この道 を使 って行 く"
(17) a.sen‑den kork‑u卜ur b.Herkes sen‑den kork‑ar あ なた一奪格 怖 が る一受身形‑アオ 骨 あ なた一奪格 怖 が る̲7オ
"あ なたは恐 ろ しい人 だ/あ なた は価 が られ る" "皆 が あ なたの こ とを怖 が る'' C.Ali sen‑den kork‑ar
ア リ あ なた一奪格 怖 が る‑アオ
"ア リはあ なたの こ とを怖 が る"
例(16)と例(17)の(a)は一 般 的 な事 柄 を述 べ る非 人称 受 動 構 文 で あ る。例(18)は イデ ィオム 的 な 表現 の ように もな り、誰 もが恐 れ る人物 や概念 につ いて使 われ るケ ースが多 い。
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(18) Allah‑tan kork‑ul‑ur アツラー(神様)‑#格 怖がる‑受身形‑アオ
"誰で も神様のことを怖がる"
上記の間接 目的語 をもつ 自動詞の例 をウイグル語 に当てはめてみると、(19)の例の自動詞(gitmek) (行 く)は非能格 自動詞であるので、 ウイグル語で も非人称受動化が可能である。
(19) a.Kashgar‑ga buyo卜din ber‑il‑idu カシュガルや 格 この道一奪格 行 く一受身形‑7オ
…カシュガルへの行 く道はこの道である/カシュガル‑はこの道で行 くことがで きる"
b.Herkim kashgar‑ga buyo卜din bar‑idu 皆 カシュガルー与格 この道一奪格 行 く‑アオ
"皆がカシュガルへ この道 を使 って行 ぐ' (20) a.Tetilktin‑1er‑i bukocha‑din oH l1‑idu
休 日一複数形一三単所 この通 り一奪格 通 る‑受身形‑アオ
"休 日はこの通 りが使 われる"
b.Herkim tetilkiln‑1er‑i bukocha‑din 6t‑idu 皆 休 日一複数形一三単所 この通 り一奪格 通 る一アオ
"休 日は、皆 この通 りを通 る"
(21) a.Yehsenbeknn‑1er‑i btlisik‑tin kir‑il‑idu 日曜 日‑複数形一三単所 この ドアー奪櫓 入 る一受身掛 アオ
"日曜 日はこの ドアが使 われる"
b.Herkim yehSenbektln‑1er‑i buisik‑tin kir‑idu 骨 日曜 日‑複数形一三単所 この ドアー奪格 通る‑7オ
"日曜 日は骨 この ドアか ら入 る"
一方、 (22a)と(23a)の例の 自動詞 は非村椿 自動詞であるので、ウイグル語では受動化が不可能であ る。能動形 しか表現で きない。
(22) a.・Sen‑din kork‑il‑idu b.Herkim sen‑din kork‑idu あなた‑奪格 怖がる一受身形‑アオ 皆 あなた‑奪格 怖がる‑7オ
"あなたか ら価が られる" "皆があなたのことを怖がる"
C.Ali Sen‑den kork‑idu
ア リ あなた一奪格 怖がる‑アオ
"ア リはあなたのことを怖 が る"
(23) a.・Allah‑tin kork‑i1‑idu b.Herkim Allah‑tin kork‑idu ア ツラー(神様)‑奪略 怖がる一受身形‑アオ 皆 アッラー‑奪略 怖がる‑アオ
"アツラーか ら怖が られる'' "誰で もアッラーのことを怖がる''
い レコ語 ヒウイグル語 の関係節 における受身形 アブ ドウラハマ ン ギュロル
7.2.他動詞の非人称受動化
7.2.1.非限定 目的語他動詞文の非人称受動態
(24) a・Zehir‑len‑me‑1er‑de ayran■5 ie‑il‑ir 害毒一再帰形一名詞化一複数形一位置格 アイラン 飲 む一受身形‑アオ
"害毒 を受けた場合 はアイランを飲 むのが常識である"
b.Herkes zehir‑1en一me‑1er‑de
ayran ic‑er 皆 害毒‑再帰形一名詞化一複数形一位置格 アイラン 飲 む‑アオ
"害毒 を受けた場合は、骨がアイランを飲 む"
C.Ali zehir‑len‑me‑1er‑de
アリ 害毒一再帰形璃 詞化一複数形一位置格
"アリは害毒 を受けた場合はアイランを飲む"
ayran le‑er アイラン 飲 む‑アオ
ここで、アイランが非限定 目的語でic‑は他動詞である。(24a)に対す る能動態は(24b)であ り、(24C) に対する受動態は不在である。非限定 目的語 を持つ他動詞文の非人称受動はすべての他動詞文 におい て作 ることがで きる。
(25) a.Bura‑da sigara iri1‑mez. b.Bura‑da kimseslgara lrmeZ.
ここ一位置格 タバ コ 吸 う‑受身形‑アオ否定形 ここ一位置格 誰 も タバ コ 吸 う‑アオ否定形
"ここは禁煙です"
C.Ali bura‑da slgara アリ ここ一位置格 タ
バコ
"アリはここではタバ コを吸わない"
"ここでは誰 もタバ コを吸わない"
lC‑meZ 吸 う‑7オ否定形
例(25)は、 トルコ語の非人称受動態 を使 った 「禁煙」 とい う意味 を表す有名 な もので、 (25a)に対 す る能動文 は(25C)ではな くて、 (25b)であ る。つ ま り、「禁煙」 とい う規則 的 な事実が一般常識 を 表す受動態 (非人称受動態) を使 って聞 き手 に伝 えられる。
(26) a.zeher‑len一gen‑1er‑de ayran ie‑il‑idu(ウイグル語) 害毒‑再帰形璃 詞化‑複数形一位置格 アイラン 飲む‑受身形ワ オ
"害毒 を受けた場合 はアイランを欽むのが常識である"
b.Herkim zeher‑1en一gen‑1er‑de ayran lridu 皆 害毒‑再帰形‑名詞化‑複数掛 位置格 アイラン 飲 む‑アオ
"害毒 を受けた場合 は、骨がアイランを飲 む"
C.Ali Zeherlengen lerde ayran ieidu アリ 害毒一再棒形璃 詞什 複数形‑位置格 アイラン 飲 む‑アオ
̀̀ァリは害毒 を受けた場合はアイランを飲 む"
5アイランはヨーグル トで作 った飲み物で、毒物の被害 を受けた人は誰であって もアイランを飲 むのが常識である。
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(27) a.Buyer‑de tamaka eek‑i1‑meydu b.Buyer‑de hickim tamaka eek‑meydu ここ堀 置格 タバ コ 吸 う‑受身形‑アオ否定形 ここ‑位置格 誰 も タバ コ 吸 う‑アオ否定形
"ここで タバ コが吸 われ ない" "ここでは誰 もタバ コを吸 わない"
C.Ali buyerde tamaka eek‑meydu アリ ここ‑位置格 タバ コ 吸 う17オ否定形
"ア リはここでは タバ コを吸 わない" (ウイグル語)
上記 の ウイグル語 の例 で見 られ る ように、 ウイグル語 で も他動 詞 の非 人称受動化 は可能であ る。
しか し、 (27a)の ウイグル語 の例 では、 トル コ語 と違 って 「禁煙」 とい う意味 を表 さな くて、一般 的 にその場所 で タバ コが吸 われない とい う意味 を表す。 ウイグル語で 「禁煙」 とい う規則 的な事実 を表 す時、次 の ように表現 される。
(28) Buyer‑de tamaka eek‑iske bo卜maydu.
ここ‑位置格 タバ コ 吸 う‑名詞化 なる‑アオ否定形
"ここは禁煙 です"
7.2.2.限定 目的語他動詞文 の非人称受動態 (不可能)
(29) a.Aksam yemeg‑i plSlr‑i1‑ir, kahvaltl hazlrla‑n‑1r 夜 ご飯三 単所 作 る一受身形‑アオ 朝御飯 整 える一受身形‑アオ
̀̀晩御飯 が作 られ、朝御飯 が整 え られる''
b.Biz‑im ev‑de aksam yemeg‑i plSir‑i1‑ir, kahvaltl hazlrla‑nllr 我 々‑属格 家鳩 置格 夜 御飯一三単所 作 る‑受身形‑アオ 朝御飯 整 える‑受身形‑アオ
"我が家で晩御飯が作 られ、朝御飯が整 え られる"
C.Biz‑im ev‑de anne‑m aksam yeme皇‑i‑ni pl$lrl‑ir, 我 々堀 椿 家一位置格 母‑1単所 夜御飯一三単所一対格 作 る‑アオ babam kahvaltl‑yl hazlrlaて
父‑1単所 朝御飯一対格 整 える‑アオ
"我が家で母親 は晩御飯 を作 り、父親 は朝御飯 を整 える"
トル コ語 では、限定 され た 目的語 は限定 目的語マー カー (‑i, ‑I, ‑ti,u)でマー クされ る。限定 目的語 も非限定 目的語 の ように受動化 された時主格 の位置 に昇格 しているため限定対格 の格 を失 う。
限定村椿 を失 った ものが主格で現 れてい るが、文脈が ない場合 は元 の能動文 では限定 された 目的語 か どうかは唆味である。 この唆昧性 を排 除す るために元の構文 で示 されてい る特定の場所、特定 の状況 を表す必 要があ る。つ ま り、例(29C)で、父親が家事 に関わってい る とい う トル コの社会 では珍 しい 状況が示 されている こともあ り、aksamyemegi(晩御飯)とkahvaltl(朝御飯)が限定 目的語 になってい る。 (29b)は、構 文でbizimev‑de(我が家で) とい う特定 の場所が残 ってい るため、動作主が母親又
トルコ語 とウイグル語の関係節における受身形 アブ ドウラハマ ン ギュロル
は母親以外 の身内だ と言 うこ とが分 か るので、行為者句不在受動態 である。 (29a)の ように、bizim ev‑de(我が家で)がない場合、つ ま り文脈上、動作以外 の情報がない場合 は非人称受動態の意味合 い を持 つ。つ ま り(29a)に対す る能動文では目的語 は非限定 目的語であ る と思 われる。通常、受 身形 +アオ リス トは非人称受動態の意味 を持つが、特定 された場所bizimev(我が家)な どが文 中に現れる 場合 は非人称受動態 の意味 をもたない。 (cf.Ozbek2004,p.16)
一方、 ウイグル語で も トル コ語 と同様 に文脈上、動作以外の情報が ない場合 は非人称受動態の意味 合い を持つが、特定 された場所 な どが文 中に現れる場合 は非人称受動態 の意味 をもたない。次 の例 を 見 てみ よう。
(30) a.Ke$lik tamak‑1 hazlrla‑n‑idu, destirhan teyyarla‑n‑idll 夜 ご飯一三単所 作 る‑受身形‑アオ 食卓 整 える一受身形‑アオ
"晩御飯 が作 られ、食卓が整 え られる"
b.Biz‑nim Oy‑de ke$lik tamak‑1 hazlrla‑n‑idu, 我 々一属格 家一位置格 夜 御飯一三単所 作 る一受身形‑アオ destirhan teyyarla‑n‑idu.
食卓 整 える‑受身掛 アオ
"我が家で晩御飯が作 られ、食卓が整 えられる"
C.Big‑nim 6y‑de ana‑m ke$liktamak‑i‑ni hazlrla‑ydu, 我々‑属格 家一位置格 母‑1単所 夜御飯一三単所一対格 作 る‑アオ aCam destirhan‑i teyyarla‑ydu
軌 1単所 食卓榊 格 整 える‑アオ
"我が家で母親 は晩御飯 を作 り、姉 は食卓 を整 える"
以上、 トルコ語 とウイグル語 における非人称受動態の特徴 を表5と表6でまとめたい と思 う。
(表5) トル コ語 にお ける非 人称 受動態
非限定 目的語 限定 目的語
他動詞 動作主が それ ら以外 の 動作主が それ ら以外の
両 の場合 動作主の場合 管 .誰 もの場合 動作主の場合
○
× × ×非能格 自動詞 非対格 自動詞
「. 動作主が それ ら以外の 動作主が それ ら以外の
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岡山大学大学院社会文化科学研 究科紀要第27号 (2009.3)
(表6)ウイグル語における非人称受動態
能動態 非人称受動態
他動詞 動作主が それ ら以外の 動作主が それ ら以外 の 管 .誰 もの場合 動作主の場合 管 .誰 もの場合 動作主の場合
○
× × ×非能格 自動詞 非対格 自動詞
自動詞 動作主が それ ら以外の 動作主が それ ら以外 の 管 .誰 もの場合 動作主の場合 管 .誰 もの場合 動作主の場合
8.関係節における受動形
今 まで トルコ語 とウイグル語の受動態 と非人称受動態 について述べて きた。前述 した ことを踏 まえ て、 このセクシ ョンでは、 トル コ語 とウイグル語の関係節 における受動形 と特 に、中央 もしくは北西 グループに属 してい るカザ フ語、キルギズ語、 タタル語 な どのチュルク語 における形態論的 に非顕在 的な受動構造 について述べ たい と思 う。
まず、両言語の関係節 における受動形のプロセスを見てみ よう。
8.1.他動詞のプロセス
前述 したように、 トル コ語 は他動詞 も自動詞 も受動化で きる。他動詞の受動化 では、他動詞能動文 の 目的語 であるN2が 目的格 の位置か ら主格の位置 に昇格する。能動文 の主体 であるNlは受動化 に よって消 え去 る。 しか し、¢で表 した場所 にNltaraflndan(〜によって) とい う後置詞句 の挿入 も可 能である。
NI
NZ V N2 o V‑pass( 3 1 )
a.Ayse kap1‑yl ae‑tl b.Kapl(Aysetaraflndan )
ae‑ll‑dlアイシェ ドア一対格 開ける‑過去形 ドア の 開ける‑受身形一過去形
"アイシェは ドアを開けだ ' "ドアがアイシェによって開け られだ '
( 3 ユb )
の例 で主格 の位置 に昇格 したKapl(ドア) とい う名詞 を修飾 したい時は、 仁an,‑en)の連体形 で修飾で きる。C.Ac‑ll‑an kapl 開ける一受身形‑a。連体形 ドア
"開け られた ドア''
他動詞能動文の中に目的語以外 の補語があ り、その補語 を修飾す る時、 (‑dik)または(‑an)連体形 で修飾 で きる。主格の位置 に昇格 した目的語が特定の 目的語でそれを強調 したい時は、仁dik)連体形 を使い、 目的語が特定ではない場合 は、それ を表現 したい時 は、 (‑an)連体形 を使 う。下記の例で見
トルコ語とウイグル語の関係節における受身形 アブ ドウラハ マ ン ギュロル
てみ よう。
(32) a.Bir yolcu otobtls‑te Semslye unu卜mus 一つ 乗 客 バ スー位置格 傘 忘 れ る一過去形
"あ る乗 客 がバ スで傘 を忘 れ て しまったそ うだ '
b. (Bir yolcu taraflndan) otobtis‑te Semsiye unut‑u1‑muS (一 つ 乗 客 に よって) バスー位置格 傘 忘 れ る一受身形一過去形
"あ る乗客 に よってバ スで傘 が忘 れ られて しまったそ うだ ' C.Semsiye‑nin unut‑ul‑dug‑u otobns
傘 一属格 忘 れ る一受身形‑dik連体形‑3人称 バ ス
"傘 を忘 れ たバ ス"
d.Semsiye unut‑ul‑an otobtis 傘 掘 格 忘 れ る一受身形‑an連体形 バ ス
"傘 を忘 れ たバ ス"
一方 、 ウイ グル語 の他 動詞 能動文 の受動化 で も トル コ語 と同 じプ ロセスが見 られ るが、受動文 の 中 にあ る補語 の関係 節化 で は トル コ語 と違 って一つ の連体 形 だ けが使 われ る。 よ く知 られ てい る ように、
トル コ語 で は、一般 的 な規則 と して主語 と直接 目的語 の関係節 化 が分 け られてい る。 しか し、 ウイ グ ル語 で は、主語 と直接 目的語 の関係節 化 は同 じ連体形仁gan)で され る。
NI N2 V N2 QI V‑pass
(33) a・Ayse isik‑ni ae‑ti b.isik(Aysetaripindin) eC‑i卜di
アイシェ ドア一対格 開 け る‑過去形 ドア 8 開 ける一受身形一過去形
"アイ シェは ドア を開け t" "ドアが アイ シェ に よって開け られだ ' C.Eri1‑営an isik
開 ける一受身形一連体形 ドア
"開 け られた ドア"
ウイ グル語 で他動 詞能動文 の 中 に 目的語以外 の補 語 が あ って、 そ の補 語 を修飾す る時 は、一つの連 体 形 しか ないので、次 の よ うなプ ロセスが現 れ る。
(34) a.Ali heridar‑din pu1‑ni a卜di ア リ お客 さん‑奪格 お金 一対格 もらう‑過去形
"ア リはお客 さんか らお金 を もらった"
b.(Å1itaripindin) heridardin pul el‑in‑di
(ア リに よって) お客 さん一奪略 お金 もらう‑受身形一過去形
"ア リに よってお客 さんか らお金が もらわれ だ '
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岡山大学大学院社 会文化科学研 究科紀要弟27号 (2009.3)
C.Put e卜in‑gan heridar お金 もらう一受身形‑連体形 お客 さん
"お金 を払 ったお客 さん"
8.2.自動詞 の プ ロセス
(35) a.Film‑e gtil‑dn‑k 映画‑%格 笑 う一過去形‑1複 所
"私達 は映画 を見 て笑 っだ ' C.G也l‑qn‑en film
笑 う‑受身形‑a。連体形 映画
"笑 った映画"
(36) a.Herkes hastallk‑tan 曹 病気 一奪格
"誰 で も病気 の こ とを怖 が る"
b.Hastallk‑tan kork‑u卜ur 病気 一奪格 怖 が る一受身形‑アオ
"誰 で も病気 の こ とを怖 が る"
(37) a.Ev‑e gir‑d卜k (トル コ語 ) 家 一与格 入 る一過去形‑1複 所
"我 々 は家 に入 っだ ' b.Ev‑e gir‑il‑di
家‑%格 入 る‑受身形一過去形
"家 に入 られ た"
(38) a.cadde‑den gee‑ti‑k (トル コ語 ) 通 り一奪格 通 る一過去形‑1複 所
"我 々 は通 りを通 った"
b.Cadde‑den geril‑di 通 り一客格 通 る一受身形一過去形
"通 りが通 られ た"
b.Film‑e gtll一也n‑dn (トル コ語 ) 映 画ヰ 格 笑 う‑受身形一過去形
"映画 を見 て笑 っだ '
kork‑ar (トル コ語 ) 怖 が る‑アオ
C.Kork‑ul‑an hastallk 怖 が る一受身形‑a。連体形 病気
"怖 い病気 "
C.Gir‑i卜en ev 入 る一受身形‑an連体形 家
"入 った家''
C.Gee‑il‑en cadde 通 る‑受身形‑an連体形 通 り
"通 った通 り"
上記 の例 で見 られ る よ うに、 トル コ語 で は、 自動詞 の受 動化 も可 能 であ る。 自動 詞 能動文 の 中 に主 格 の位 置 に昇格 で きる 目的語 は ない。上記例 文 中の補 語 を関係 節化 す る時 は、 (‑an)連体 形 で関係 節 化 され る。他 動 詞 の プ ロセ スで見 た よ うに、主格 の位 置 に昇格 した 目的語 は ない ので、 (‑an)連体 形
しかで きない。一方 、 ウイ グル語 で は、
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トルコ語とウイグル語の関係節における受身形 アブドウラハマン ギュロル
(39) a.Kin°‑ga ktil‑dti‑k (ウイグル語) 映画」i格 笑 う一過去形‑1複 所
"私達 は映画 を見 て笑 っだ ' b.Kino一ga kt111山n‑dti
映画や 格 笑 う‑受身形一過去形
"映画 を見 て笑 っだ '
(40) a.Herkim kisellik‑tin 女ork‑idu 皆 病気‑奪格 怖 が る‑7オ
"誰 で も病気 の こ とを怖 が る"
C.*Kork‑i卜digan kisellik 怖が る‑受身形一連体形 病気
"価 が られる病気 "
(41) a.oy一g。 kir‑du‑k 家一与格 入 る一過去形‑1複 所
"我 々は家 に入 った'' b.Oy‑ge kir‑il‑di
家一与格 入 る‑受身形一過去形
"家 に入 られだ ' (42) a.Koea‑din Ot‑ul‑k
通 り一奪格 通 る一過去形‑1複 所
"我 々は通 りを通 っだ ' b.Koea‑din 6t‑nl‑di
通 り一奪格 通 る一受身掛 過去形
̀̀通 りが通 られ た"
C.Ktl卜nn‑gen kin°
笑 う一受身形‑連体形 映画
"笑 った映画"
b.*Kisellik‑tin kork‑i1‑idu 病気 壌 格 怖 が る一受身掛 アオ
"誰 で も病気 の こ とを怖 が る"
d.Kork‑idigan kisellik 怖 が る‑連体形 病気
"怖 い病気"
C.Kir‑i1‑gen oy 入 る‑受身形一連体形 家
"入 られた家 "
C.Ot‑Bl一gen koca 通 る‑受身形一連体形 通 り
"通 った通 り"
上記 の(39,41,42)の例 の動 詞(Ktil)(笑 う)、 (Kir)(入 る)、 (Ot)(通 る)は、動作主 あ るい は行為者句 の意志 的 ・意 図的 な動 きを表す非能格 自動詞 であるので、受動形 の関係節化 が可能 である一方、 (40) の例 の動 詞(Kork)(恐 れ る)は、動作 主 あ るい は行 為者句 の意志 ・意 図 でで きない動作 を表 す非対檎 自動詞 であるので、受動化 は不可能で、 (40d)でわかる ように、能動形 で表現 で きる。
以上、 トル コ語 とウイグル語 の関係節 におけ る受動形 をま とめ る と、 ウイグル語 の他動詞能動文 の受 動化 で は トル コ語 と同 じプ ロセスが見 られ るが、受動 文 の 中 にあ る補 語 の関係 節化 で は トル コ語 と 違 って一つの連体形 だけが使 われ る。 トル コ語で は、主語 と直接 目的語 の関係節化が区別 されてい る.
しか し、 ウイグル語 で は、主語 と直接 目的語 の関係節化 は同 じ連体形(一gan)で され る。 自動 詞の プロ セス に関 しては、 ウイグル語 で は、非能格 自動詞 の受動化 は可能であ るので、受動形 の関係節化 は可
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岡山大学大学 院社会文化科学研 究科紀要第27号 (2009.3)
能であるが、 トルコ語 と違って非対格 自動詞の受動化 は不可能であるので、受動形の関係節化が能動 形 しかで きない。
9.チュルク諸言語の関係節化 における形態論的に非顕在的な受動構造
前のセクシ ョンでは、 (‑1)と(‑∩)の受動マーカーによって形成 される受動態の主要なタイプについ て述べた。 しか し、特 に、北西 グループに属 しているカザ フ語、キルギス語、 タタル語 などのチュル ク諸言語 において統語論的 に能動形で意味論的に受動形である もう一つの タイプがあるQKarabulut (2003)は、 このタイプの構造 を非顕在的な受動構造 と呼んでいる。本稿 も同 じ用語 を使 うことにする。
Karabulut(2003,p.255)は、非顕在的な受動構造 について次の ように述べている。
「チュワシュ語、ウズベク語、キルギス語、タタル語、 トルクメン語、アゼ リ語 などのい くつかの チュルク諸言語が非顕在的な受動構造 を持つ。 トルコ語で も制限 された文脈 の中でこのタイプの構造 が使 われるか もしれない。トル コ語、トルクメン語 とアゼ リ語が同 じ言語 グループ (オグズグループ) に属すると思われるのに、関係節 におけるこのタイプの受動構造が トルクメン語では重要な役割 を果 たすが、アゼ リ語 と トルコ語に関 しては同 じことが言えない。 この構造 は特 に北西グループに属 して いるカザ フ語、キルギス語、 タタル語 な どのチュルク諸言語 と関連す るようである。」次の例 を考 え てみ よう。
(43) Bar‑gan jer (ウズベ ク語) (44) Jaz‑Ban qat (キルギス語)
行 く‑連体形 場所 書 く‑連体形 手紙
"行 った場所" "書いた手紙" Karabulut(2003,p.257) 上記の例で見 られるように、構文は形態論的に能動形である。 しか し、被修飾名詞は無生物である。
(43)のウズベク語の例 における被修飾名詞は方向格 を表す名詞で、 (44)のキルギス語の例 における被 修飾名詞は村椿 を表す名詞である。
この被修飾名詞 は動作 を表す動詞の主語 になることがで きない。場所が行 くことはで きない し、手 紙 も書 くことはで きない。それにもかかわ らず、動詞が能動形である。つ ま り、 これ らの構造 はまた、
形態的には能動形が用い られているが、意味的には受動態 に解釈 されていることがわかる。
トル コ語 における同様 な構文 として下記の例 を見てみ よう。
(45) su ak‑an yer 水 流れる‑a。連体形 場所
"水が流れている場所" Karabulut(2003,p.258)
前述 したように、 トルコ語では、一般的な規則 として主語 と直接 目的語の関係節化が区別 されてい る。主語の関係節化の場合、 仁an)連体形で、 目的語の関係節化 の場合 は、仁dik)連体形が使 われる。
しか し、上記の例では、Su(水)が修飾部の主語で、修飾 された補語Yer(場所)は起点格 目的語である。
修飾 された補語 は主語でないのに、 仁an)連体形が付いている。 (8)のセクシ ョンで述べたように、
トルコ語とウイグル語の関係節における受身形 アブドウラハマン ギュロル
特 定の主語 で ない場合 は、 仁an)連体形 を使 う。 しか し、 (45)の例 は、 ウズベ ク語 とキルギス語 の例 と異 な り、修飾部 に主語が あ らわれている。 ウズベ ク語 とキルギス語 の例 と同 じ例 が ウイグル語 に も ある。
(46) Bar上‑diga。6 yol (47) ciki‑digan isik
行 く一連体形 道 立 ち去 る‑連体形 ドア
"行 く道" "立 ち去 る ドア"
上の ウズベ ク語 とキルギス語 、 ウイグル語 の例 を見 てみ る と、修飾 された全 ての名詞 は、無生物で あ るので、修飾部の主語であ るか どうかは意味 的に簡単 に判 断で きる。一方、修飾 された名詞が人間 であ る場合 についてKarabulut(2003,p.256)は下記の例 を挙 げ、次 の ように述べ てい る。
(48) KOr‑gen kisi (ウズベ ク語) (49) Kur‑na 皇ln (チュワシュ語)
見 る一連体形 人 見 る‑連体形 人
"(何 か を)見 る人 /(誰かが)見 る人" "(何 か を)見 る人 /(誰かが)見 る人"
「構文が能動 的であるか受動的 な意味であるか を決 め るため に、発言の文脈 と聞 き手 または読 み手 の知識 は非常 に重要 な役割 を果 たす。 ヨハ ンソンは、能動分詞 は しば しば特 によ り古い言語 において 動詞の行為者 と異 なる実体 を指示す ることがある」 と述べ てい る。
上で見 たチュル ク諸言語 (ウズベ ク語、チ ュワシュ語、 キルギス語 な ど)と同様 の例 において、 トル コ語で は受 身形で しか表現 で きない。
(50) Cid‑il‑en yer (51) Yaz‑1卜an mektup 行 く一受身形‑an連体形 場所 書 く一受身形Ian連体形 手紙
"行 かれた場所" "書 かれた手紙"
(52) elk‑ll‑acak kapl (53) GOr一山Ien adam 立 ち去 る一受身形IaCak連体形 ドア 見 る一受身形‑an連体形 人
"立 ち去 られ る ドア" "見 られた人"
もし上の トル コ語 の例 を能動形 の‑an連体形 で表現す る と、下記 の例 で見 るように、被修飾名詞が 行為者 になって しまう。
(54) *Gid‑en yer (55) *Yaz‑an mektup 行 く‑a。連体形 場所 書 く‑a。連体形 手紙
"行 った場所'' "書いた手紙"
(56) *C.k‑acak7 kapl (57) GOr‑en 立 ち去 る‑a。ak連体形 ドア
"立 ち去 る ドア''
6 ‑dlganはアオリストか未来形を表すウイグル語の連体形である。
7 ‑acakは未来形を表すトルコ語の連体形である。
90
adam 見 る‑a。連体形 男
"見 た男''
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要第27号 (2009.3)
上の(54,55,56)例 で被修飾名詞である (yer,mektup,kapl)は無生物で行為者 になれないので、
非文法的である。 しか し、 (57)の例の場合、被修飾名詞である (adam)は行為者 になれるので、正 しい表現であるが、 トルコ語 はキルギス語やウズベ ク語 などと違 って、一つの意味つま り、動作 をす る行為者 とい う意味 にしか とれない。キルギス語やウズベク語 などでは、行為者か被動者かは文脈で
しかわか らない。
更 に、上の例 を‑dik連体形で も表現で きる。‑dik連体形で表現する場合 は、‑dik連体形が人称接辞 をとるので、キルギス語やウズベク語などと違って、動作 をする行為者は特定の行為者 になって しま う。次の例 を見てみ よう。
(58) °it‑tig‑i
行 く‑dik連体雅ト 3人称
"彼/彼女が行 った場所'' (60) clk‑ac婚‑1
yer (59) Yaz‑dlg‑I
場所 書 く‑dik連体形‑3人称
"徳/彼女が書いた手紙"
kapl (61) Gor‑dtiかn
出る‑acak連体#‑3人称 ドア 見 る‑dik連体形‑3人称
"彼/彼女が出る ドア'' "彼/彼女が見た男の人"
mektup 手紙
adam 男の人
上の例でわかるように、 トルコ語で主語 と直接 目的語の関係節化が区別 されている。つ ま り、 トル コ語は文法関係 をはっきりと示すのである。一方、キルギス語、 ウイグル語などのチュルク諸言語で は、主語 と直接 目的語の関係節化 は同 じ連体形が使われてお り、構文 の意味 に関 して発言の文脈 と聞 き手 または読み手の知識 とが非常 に重要な役割 を果たす。
10.まとめ
以上、 トルコ語 とウイグル語 における受動態の一般的な特徴や用法 な どを形態的及び統語論的に 検討 し、関係節の観点か ら両言語 における類似点及び相違点 をデータに基づいて明 らかに した。特 に、
ウイグル語では、受動化の接尾辞 は自動詞 につけることがで きない とい う従来の主張 に対 して、ウイ グル語で も、 自動詞の受動化が可能であると主張 した。 よく知 られているように、 トルコ譜では、他 動詞 も自動詞 も受動化の接尾辞 「‑1、 ‑nJの付加 によって受動化 で き、NaklpOglu(2001)の表 におけ る5番の非村椿 自動詞以外の自動詞の受動化が許 されるが、ウイグル語では、 トルコ語 と異な り、た だ非能格 自動詞の受動化のみが可能である。 これは動作主あるいは行為者旬の意志性 と関連があると 思われる。従 って、 トルコ語の受動文の中で独特な特徴 を持 っていると言われる非人称受動 に関 して は、ウイグル語では非能格 自動詞文でのみ非人称受動化が可能である。 ただ し、非能格 自動詞文の非 人称受動化 は文法的にウイグル語では可能であるが、 ウイグル語話者 は口語では自動詞の非人称受動 化 をあまり使用 しない。 自動詞の非人称受動化は主に文語で用い られる。非村椿 自動詞の非人称受動 化 は文語で も不可能である。
一方、関係節の観点か ら見ると、ウイグル語の他動詞能動文の受動化では トルコ語 と同 じプロセス
トル コ語 とウイグル語 の関係節 にお け る受 身形 アブ ドウラハマ ン ギ ュロル
が見 られるが、受動文の中にある補語の関係節化では トル コ語 と異 な り一つの連体形だけが使 われる。
よ く知 られているように、 トル コ語では、一般的な規則 として主語 と直接 目的語の関係節化が区別 さ れている。 しか し、 ウイグル語では、主語 と直接 目的語の関係節化 は同 じ連体形 (‑gan)が用い られる。
また、北西 グループに属 しているカザ フ語、キルギス語、 ウイグル語、 タタル語 な どのチュルク諸 言語の関係節 では二種類 の受動 の意味 を持つ構文が現れる。一つは、(‑I)と(‑n)の受動マーカーによっ て形成 される受動態の主要 なタイプ、 もう一つは、統語論 的に能動形で意味論的に受動形であるタイ プである。 北西 グループに属 しているカザ フ語、キルギス語、 ウイグル語、 タタル語 などのチュルク 諸言語 は、中性の分詞マーカーにより統語論的 に能動形で意味論的 に受動形の関係節が構成で きる。
トル コ語 にも類似 している例があるが非常 に限 られてい る。 トル コ語では、一般的な規則 として主語 と直接 目的語 の関係節化が区別 されているので、上で挙 げたカザ フ語、 ウイグル語などの例 は トル コ 語では受身形で しか表現で きない。
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