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中国の消費市場におけるグローバル・ブランドと原 産国イメージの関係

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Academic year: 2022

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中国の消費市場におけるグローバル・ブランドと原 産国イメージの関係

著者 李 玲

URL http://hdl.handle.net/10236/11599

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− 110 −

学 位 の 専 攻 分 野 の 名 称 学 位 記 番 号 学位授与の要件 学位授与年月日 学 位 論 文 題 目

論 文 審 査 委 員 (主査)

(副査)

李     玲

中国の消費市場におけるグローバル・ブランドと原産国イメージの 関係

博 士(商 学)

甲商第19号(文部科学省への報告番号甲第472号) 学位規則第4条第1項該当

2013年3月16日

藤 沢 武 史 和 田 充 夫 川 端 基 夫

教 授 教 授 教 授

論 文 内 容 の 要 旨

1.本論文の動機と目的と調査手法は明確に論じられている。

 まず、消費行動における情報の手掛かりの重要性に着眼し、国際的消費者にとって決定的情報の手掛かり とは何かという問題意識から研究に着手している。本論文が目的とするところは、消費者行動や国際マーケ ティング研究においても重要だと位置付けられてきた「グローバル・ブランド」と「原産国イメージ」を情 報の手掛かりとして重要な独立変数とみなし、これらが及ぼす中国沿岸部の消費者の購買態度への影響を明 らかにすることにある。その方法論として、文献サーベイを通じて仮説を構築し、アンケート調査結果によ りその仮説を検証している。

2.本研究の概要は下記のとおりである。

 まず文献サーベイを踏まえて、ブランドの重要性に関する歴史的経緯が述べられ、ブランド研究の発展が 詳説されている。ブランド・エクイティ論を皮切りにブランド研究全般は盛んになったものの、グローバル・

ブランドの領域に関しては、消費者の視点に立った研究が割合に少ないことが明らかにされている。ただし、

ブランドの意味付けに関連した国家間での比較研究が盛んになる傾向が見て取れ、発展途上国の消費者は先 進国の消費者と異なる意味をグローバル・ブランドに付与し、自らが付与した意味付けに基づいて購買行動 を起こす傾向が鮮明だと力説される。

 次いで、原産国イメージ(COO イメージ)の研究を概観した結果、発展途上国または先進国の消費者の間で、

行動のパターンは多少似ているものの、国別に詳細な比較を試みると、COO イメージに対する評価または COO イメージによる購買意向などに及ぼす影響は必ずしも国家間で同様とはならないという点に目を向け ている。そして、中国において、都市が異なれば、エスノセントリズムによるマイナス効果は COO イメー ジから購買意向に及ぼす影響を低減させる場合もあるということ、すなわち、マクロ COO イメージ、ミク ロ COO イメージとブランドのグローバル性といった情報の手掛かりが中国の消費者の購買行動に及ぼす影 響を洞察する価値は大きいとみなし、実証研究に取り組むことの意義をこれら想定される因果関係から見出 している。

 さて、本論文の特徴は何と言っても、仮説構築とその検証結果にある。その結果は以下のとおりであり、

本実証研究の結果と既存研究成果との関係付けも随所に試みられ、そのことで研究意義がより明確化してい る。調査対象として、消費者の居住都市は北京、上海、広州、製品クラスの国籍は日本、米国、欧州に限ら

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れている。製品カテゴリーは特定化されていない。一般論的な結論を導き出すためである。変数間の因果関 係を分析する統計手法として、共分散構造分析が用いられている。

 まず、ブランド知識に関する測定項目を用いて因子分析が試みられ、購買経験や製品機能や性能と関わる 項目とそうでない項目とが分類される。実証分析から、製品評価において、製品属性が不明確な場合、専門 家にとって COO イメージは無効であるが、製品属性が明確であっても、専門家は COO イメージの使用に は慎重であり、特定のブランドや物的品質と一致した場合のみ有効だと判断される。他方、素人にとっては いずれの場合であれ、製品評価に COO イメージは有効視される。つまり、COO イメージはブランド専門 家において製品属性の再生に役立つが、素人の場合、それは製品属性の説明に使われるといった違いが抽出 される。したがって、Maheswaran(1994)と Pecotich & Ward(2007)の研究が本論文においても支持さ れることになる。すなわち、消費者が持つブランド知識のタイプによって製品評価で用いられる情報の手掛 かりも異なるという点が証明されたのである。ただし、上記の両研究ともに、被験者に製品説明を提供し、

あるいは特定のブランドを提供した上での回答が用いられている。ということから、消費者が持っているブ ランド知識の量による情報の手掛かりの効果を検証するという本論文での手法は、初めての試みともいえよ う。

 次いで、直接知識との関係において、ブランドのグローバル性へ向かうパスは負の影響を及ぼすことが見 出される。つまり、消費者がブランド知識に関する専門知識を持つようになれば、ブランドという情報の手 掛かりとしての効果は次第に軽減していくと考えられる。この結果は、1980年代後半から盛んに行われてい た多属性モデルの検証結果(例えば、Johansson et al.,1985)と一致している。製品属性や製品に関する親 近性や経験を増大するにつれ、COO イメージやブランドのグローバル性といった情報の手掛かりの効果が 減少していくという関係が明らかとなる。

 第3に、消費者が購買行動において、自ら所有しているブランド知識によって情報の手掛かりを選択する ところから新しい発見が得られる。中ブランド知識層においては、マクロ COO イメージとミクロ COO イメー ジの効果が混合している。高ブランド知識層では、グローバル性とマクロ COO イメージの効果の双方とも が確認される。しかしながら、購買意向との関係を検証した結果、マクロ COO イメージはいずれの状況に おいても有意な値を示せないため、ブランドのグローバル性の影響と重要性はさらに目立つ。

 上記以外にも重要な検証結果が提示され、因果関係に説明が加えられているが、紙幅の関係で省かせてい ただく。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

 課程博士論文の審査委員会を2月18日に開催した。審査の結果、同じようなテーマでの研究が皆無に近い という点に加え、李玲氏が仮説検証のためにアンケート調査結果から有意な因果関係を導き出すのに成功し、

既存研究成果との関連付けを常に怠っていない点が高く評価された。まさに忠実な研究姿勢を保ちつつ、オ リジナリティの創出に努め、既存研究への貢献も大きいので、本論文は博士学位論文に十分に値するという ことで意見が一致した。上述の論文内容の要旨からも、李玲氏の論文は学位論文に値するとみなせるが、根 拠を列挙して、それを証明したい。

 まず本研究は、中国沿岸部都市に居住する消費者の購買意向に及ぼす COO イメージおよびブランド知識 の効果を実証した研究として類例を見ない。選択された統計分析手法が調査目的ならびに変数間関係の特定 化のためには最適であり、分析も精緻化している。すなわち、変数の特定化ならびに因果関係のパスの明確 化、そして統計的手法に共分散構造分析を用いており、寸分の隙がない。

 実証研究ならではの導出結果も注目され、研究の価値が認められよう。第1に、低知識では情報の手掛か

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りが無効となり、高知識群ではグローバル性の強い影響力が見られたというように、ブランド知識の効果が 見事に検証されている。第2に、調査対象地域として、ブランド知識を豊富に保有していると予想される北 京、上海、および広州を選んだのは、調査目的からして適切である。第3に、グローバル性の重要性が現時 点の中国で確認されたとはいえ、直接知識からグローバル性へのパスが負の影響を表している点は見逃せな い。つまり、時間などの変化とともに、消費者のブランドに関する専門知識が増えてくると、グローバル性 の効果も変化するという可能性が示せる。第4に、中国市場において、男女、地域、世代間の相違が明らか にされている。これら結果は関係企業にとって、中国市場内で市場細分化を行うのに役立つ。

 これら検証結果には既存研究を乗り越えるほど見るべき点が多く、重要な研究内容が随所に盛り込まれて いる。とはいえ、本論文には研究課題がいくつか残されている。

 第1に、被験者となった消費者のブランド知識の量を明確にするには至っていない。例えば、先進国の消 費者が持っている知識の量や質と比較した上で、その知識の量や質の位置付けを明確に示せると、中国の他 の都市、あるいは同様な市場状況にある他の発展途上国での消費者行動を予測するのに役立つだろう。

 第2に、中国消費者がブランドのグローバル性を求める理由として、品質やプレステージ以外に何かない かを探索するのが望ましい。

 第3に、マクロ COO イメージは購買意向に影響を及ぼしていないという結果を得たとはいえ、情報の手 掛かりとしての有用性を否定するには時期尚早だと考えられる。なぜならば、本文の図表37に示されている ように、中・高消費者群が持っている知識はマクロ COO イメージと正の関係にあるからだ。つまり、外国 製品の購買プロセスにおいて、消費者は最初の段階にどの製品を考慮集合に入れるかという意思決定を行う 際、用いようとする情報の手掛かりはまさにマクロ COO イメージである。本研究でのグローバル性の効果 が顕著に見られたのは、先進国という国家イメージによる部分がかなりあると推測される。

 上述の疑問に答えるためにも、今後、先進国のブランドのみならず、中国現地のグローバル・ブランドも 用いて、そのグローバル性の効果を検証すべきであろう。その結果を用いて中国と外国のブランド間の違い を解明しながら、中国人消費者がブランドを求める要因に関するより深い洞察を試みられると、本研究から さらなる飛躍が期待されよう。そのためには、アンケート調査のみならず、特定の消費者層を対象に入念な インタビュー調査を併せて実施し、中国消費者の購買プロセスにおける消費心理や消費実態の解明が欠かせ ない。

 確かに課題が残るとはいえ、これらは今後の研究の発展方向性を示すに過ぎず、本研究の体系を揺るがす ものでもなく、かつ厳密さとオリジナリティを歪めるものでもない。ゆえに、李玲氏が提出した本論文が博 士学位論文としての体裁はもとより、高度な研究レベルを示現したことに変わりはない。よって、本論文は 審査委員一同より、博士学位論文として十分に妥当かつ適正であると認められるに至った。

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