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安全・安心を提供する自動運転に向けた取り組み

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Academic year: 2022

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(1)

CASE時代のクルマ社会をリードするモビリティソリューション F E A T U R E D A R T I C L E S

[ⅱ]安全・安心を提供する自動運転技術・電動化

安全・安心を提供する

自動運転に向けた取り組み

安藤 敏之|

Ando Toshiyuki

佐々木 朋春|

Sasaki Tomoharu

工藤 英康|

Kudo Hideyasu

岡田 隆|

Okada Takashi

交通事故ゼロの実現のためには,ドライバーのミスを車がサポートして交通事故を未然に防止す る機能や,ドライバーの運転負荷を低減する機能の開発が必要である。その機能として,緊急時 の自動ブレーキなど安全・安心を提供する先進運転支援システムや,ハンズオフでの前車追従な ど快適・利便を提供する自動運転技術がある。

本稿では,自動運転につながる利用可能な走行場所や限定された走行シーンの拡大に対応す るロードマップとその実現に必要な三つの技術の面から,日立グループの先進運転支援と自動運 転技術開発のこれまでの実績と今後の取り組みを紹介する。

1. はじめに

近年,自動車業界は100年に一度と呼ばれる大変革期 を迎えている。将来動向としてC(Connected:コネク テッド),A(Autonomous:自動運転),S(Shared & 

Services:シェアリング/サービス),E(Electric:電動 化)の頭文字を取った「CASE」をトレンドワードに,

幅広い領域で急速な技術開発が進められている。中でも 自動運転(AD:Autonomous Driving)は,センシング 技術の進歩や大規模データ,人工知能(AI:Artifi cial  Intelligence)などの活用による新たな機能を創出し,自 動車の安全・安心および快適・利便な移動を実現させよ うとしている。

本稿では,交通事故ゼロをめざして安全・安心を提供 する日立グループの先進運転支援システム(ADAS:

Advanced Driver Assistance Systems)や自動運転技術 への取り組みについて,これまでの実績や将来の方向性 を示すロードマップおよび技術開発の動向を紹介する。

2. 自動運転技術への期待

日本における交通事故件数と死亡者数の推移を図1に 示す1)。自動車の急速な普及に伴い,交通事故による死 亡者数は1970年に1万6,765人でピークに達したが,さま ざまなパッシブセーフティ機能の開発・装備などによっ て,2020年には2,839人まで低減した。

今後これをさらに進めて自動車による事故ゼロ・死傷 者ゼロを達成するためには,これまでのパッシブセーフ ティからアクティブセーフティに重点を置き,運転時の 疲労軽減や事故につながるヒューマンエラーを車がサ ポートして事故を未然に防止する先進運転支援システ

(2)

ム,さらには人の運転操作を必要としないことでドライ バーの負荷低減につながる自動運転機能の搭載が有効で ある。

3.  自動運転に向けた 日立グループの取り組み

日立グループは,安全・安心な移動を提供するため,

20年以上にわたり先進運転支援システムや自動運転の 実現につながる技術や製品の開発に取り組み,自動車 メーカーに採用された実績を持つ(図2参照)。

3.1

センシング技術

予防安全では,危険な状態をいち早く察知するために,

車両の前後左右を同時かつ正確に認識するセンシング技

シングルレンズ カメラ

ACCユニット レーザー付き ACCシステム

ADAS ECU 第一世代

ECM ESC

EPS

ADAS ECU 第二世代

ADAS ECU 第三世代 ステレオカメラ

第二世代

ステレオカメラ 第三世代

コンパクトステレオカメラ 第二世代

コンパクトステレオカメラ 第三世代

AD ECU

OTAユニット MPU

CANゲートウェイ ステレオカメラ

第一世代

先進運転支援システム/自動運転領域製品に関して,

20

年以上の提供実績

2000 2001 2004 2008 2009 2010

関連製品群

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 図2|先進運転支援システム/自動運転における日立グループの実績

日立グループは20年以上にわたり,先進運転支援システム/自動運転や関連する車両制御などの製品開発に取り組み,自動 車メーカーに採用された実績を持つ。

注:略語説明

ACC(Adaptive Cruise Control),ADAS(Advanced Driver Assistance Systems),AD(Autonomous Driving),ECU(Electronic Control Unit),CAN(Controller Area Network) MPU(Map Position Unit),OTA(Over The Air),EPS(Electric Power Steering),ECM(Engine Control Module)

交通事故件数(万件) 死亡者数(人)

120 100

80 60

40 20

1948 1951 1954 1957 1960 1963 1966 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005 2008 2011 2014 2017 2020

0 0

2021年11月〜

自動ブレーキ搭載義務化 2013年

ABS搭載義務化 2012年 ESC搭載義務化 2007年 飲酒規制厳罰化 1995年 衝突安全ボディ エアバッグ普及

2008年 全席シートベルト

着用義務化 1971年

前席シートベルト 着用努力義務

2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 事故発生件数

死亡者数

18,000

出典警察庁交通事故統計20211月)

図1| 交通事故件数と死亡者数(日本)

パッシブセーフティ装置の普及拡大により交通事故死 者数は年々減少している。さらなる交通事故死者数 の低減に向けて,事故を未然に防ぐ予防安全技術に よるアクティブセーフティ装置の導入が期待される。

注:略語説明

ESC(Electronic Stability Control),ABS(Antilock Braking System)

(3)

術が重要になる。特に日立グループでは,画像の取得と 同時に周囲物体までの距離を認識できるステレオカメラ の開発に注力してきた。その機能の有効性から,これま でさまざまな車両に採用・搭載され,多くの事故を未然 に防いできた2)

3.2 ECU

センサーで認識した情報などから的確な判断を瞬時に 行うECU(Electronic Control Unit)についても,先行 車追従走行や車線維持機能などを制御する先進運転支援 システムのECUを開発し,製品として車載してきた実績 を持つ。

近年では,ハンズフリーでの高速道における先行車の 追従走行,低速車両の追い越し,自動車線変更を可能に する機能を実装したECUを開発し,人の操作を必要とし ない自動運転の実現に寄与している。

3.3 車両制御

状況に応じた安全な対応をするためには,判断した結 果の挙動や経路に沿って「走る」,「曲がる」,「止まる」

といった車両運動を的確に制御しなければならない。

日立グループはこれまで安全かつ快適に車両を動かす制

御プログラム3)のほか,EPS(Electric Power Steering)

やESC(Electronic Stability Control)といった制御デバ イスなどを開発し製品化してきた。

3.4

コネクテッドカー

自動車単体での進化だけでなく社会インフラを通じて 収集された膨大な情報を活用することで,自動運転の価 値を向上させるコネクテッドカー技術がある。

自動車と社会インフラやセンターサービスおよびそれ らをつなぐ通信セキュリティ技術に至るまで,日立グ ループが持つ包括的な事業領域を活用し,OTA(Over  The Air)による車載ソフトウエア更新や鍵管理の仕組み に代表されるセンターから車両までのセキュリティを確 保するセキュアな配信を一括して提供できることも,

日立グループが持つ特徴の一つである4,5)

4. 自動運転に向けたロードマップ

先進運転支援や自動運転技術領域に対する日立グルー プの取り組みや今後実現しようとしている機能は,横軸 に自動運転技術の進化,縦軸に提供する機能・価値を置 いたロードマップで示すことができる(図3参照)。

2015 機能 ・ 価値

2020 2025

自動運転技術の進化

ADAS ゾーンAD ゾーン

快適性向上安全性向上

自動車線維持 自動緊急ブレーキ

交差点衝突軽減ブレーキ 出会い頭衝突防止

自動緊急回避 交差点走行支援

安全性MAX

(事故ゼロ)

快適性MAX

(タスクゼロ)

Mind Off

Eyes Off Hands Off

Lv.1(高速)

Lv.2(高速)

Feet Off Hands On

Lv.5

安全・安心 快適・利便

ODD拡大 2)

運転操作の拡大〜 ODD拡大

(1)

走行場所 の拡大

難所 一般道 幹線道

高速道

交差路 複数車線

単一車線 自動速度維持

車線維持支援 衝突速度低減 安全・安心

難状況 悪天候 自動右左折 自動交差点通過 自動分合流

自動追越 自動車線変更

前車追従(全速度域)

前車追従(高速)

快適 ・ 利便

現在位置 図3|先進運転支援システム/自動運転ロードマップ

先進運転支援システム/自動運転に対する日立グループのこれまでの実績や今後の取り組みをロードマップで示す。二つの ODD拡大の推進によって,安全性と快適性の向上をめざしている。機能名称の黒字は安全・安心機能,白抜き文字は快 適・利便機能を表している。

注:略語説明

ODD[Operational Design Domain:運行設計領域(自動運転車が安全に走行可能な領域)

(4)

CASE時代のクルマ社会をリードするモビリティソリューション F E A T U R E D A R T I C L E S

4.1

走行可能領域の拡大をめざすロードマップ

同図の下半分に示した領域は先進運転支援の領域で,

衝突速度の低減や自動緊急ブレーキなど安全・安心を向 上する機能の提供によって,安全性を最大にし,最終的 には事故ゼロの達成をめざしている。その上の領域は,

自動運転の領域で,安全・安心を基盤として前車追従や 自動分合流・自動右左折といった快適性・利便性を向上 する機能の提供によって,ドライバーの運転負荷を軽減 し,最終的にはタスクゼロの達成をめざしている。

このような自動運転技術の進化と普及拡大を,日立グ ループは先進運転支援システムや自動運転で走行できる 場所や領域を拡大していくこと,と捉えている。自動運 転が可能な領域はODD(Operational Design Domain:

運行設計領域)と言われている。先進運転支援システム や自動運転で走行できるシーンの拡大,すなわちODD拡 大によって,安全・安心かつ利便で快適な移動を実現す るために,日立グループは次に挙げる二つの領域拡大に 取り組んでいる。

4.2

走行場所の拡大

一つ目のODD拡大は,走行場所の拡大である。先進運 転支援システムや自動運転機能は,走行環境が整備され た高速道路や自動車専用道など,走行場所を限定した機 能として装備され普及を始めている。今後は,その作動 領域を高速道路から幹線道路,さらには一般道や市街地 に広げることでODD拡大を進めようとしている。

4.3

運転操作の拡大

二つ目のODD拡大は,運転操作の拡大である。先進運 転支援システムや自動運転機能が使用できるのは,当初 は単一車線内での走行に限定されていたが,技術の進化 とともに車線変更や低速車両の追い越しに拡大してき た。今後は,さらにサポート可能な運転操作を広げ,交 差点での右左折操作や狭い道路でのすれ違いなど難所に おける運転をサポートできる機能へと発展させていく。

5. 自動運転を実現する技術開発

前述したODD拡大に必要な三つの技術について,以下 に述べる。

自車両が目的地に向かって高速道路を走行している途 中で,分岐にさしかかった状況を図4に示す。

自車両の前方に示した領域(A)は,車載センサーで 認識が可能な領域(一般には200 m程度)を,さらにそ の先の領域(B)は,車載センサーでは認識が難しい遠 方の領域を示している。

5.1

(1)車両から見える領域を「正確に認識する技術」

交差点や市街地など一般道における運転では,前方だ けでなく車両全周囲の複雑な状況を正確に把握して,次 の動作を的確に判断しなければならない。

そのため日立グループでは,多種多様なセンサーの情 報を組み合わせて補完することで,より精細な認識を実

市街地や交差点など複雑な状況を 瞬時かつ正確に認識する。

センサーフュージョン 人工知能など

(1)車両から見える領域を「正確に認識する技術」

道路状況,渋滞情報,制限速度など

経路の先の状況を,事前に把握して準備する。

高精度地図 通信技術 リスク予測など

(2)車両から見えない領域を「先読みする技術」

車両が置かれた状況に応じて衝突防止や揺れ の少ない動きなど瞬時にかつ的確に判断して,

車両を安全にかつ快適に制御する。

ADAS ECU AD ECUなど

(3)得られた情報から「的確に判断して制御する技術」

(A)車両から見える領域

(B)車両から見えない領域 図4|ODD拡大のために必要な三つの技術

自車両が目的地に向かって高速道路を走行している途中で,分岐にさしかかった状況を示している。ODD拡大のためには,

(1)〜(3)の三つの技術が必要になる。

(5)

現するマルチセンサーフュージョン技術や,多くの物体 が入り組んだ複雑なシーンでも状況を正しく認識できる AIの開発に取り組んでいる[論文「自動運転/先進運転 支援システムの進化を支えるセンシング技術」(67ペー ジ)参照]。

5.2

(2)車両から見えない領域を「先読みする技術」

車両から認識できない先の道路の状況を先読み情報と して把握できれば,急カーブ前の減速や渋滞最後尾への 衝突回避,インターチェンジ手前での余裕のある適切な タイミングでの車線変更など,先の状況を見据えた経路 設定や円滑な車両制御が行えるため,より安全で急な加 減速を伴わない快適な走行が実現できる。

日立グループでは先読み情報を獲得するために,高精 度地図をMPU(Map Position Unit)で読み出し,現在 の自車位置を推定する技術や,先のリスク予測をする技 術,OTAやCGW(Central Gateway)などを介したセ キュアな通信を通じて,クラウドからの地図更新および 渋滞情報など先の道路状況を取得する技術開発に取り組 んでいる[論文「安全性と快適性を両立する自動運転向 け車載ユニット」(81ページ)参照]。

5.3

(3)得られた情報から「的確に判断して制御する技術」

道路状況は走行中にも刻々と変化するため,常に車両 が置かれた状況に応じて瞬時かつ的確な制御が求められ る。それを担うのがADAS ECUやAD ECUであり,日立 グループはこれまで小型・高信頼性のECUを開発し,さ まざまな先進運転支援機能や自動運転機能を実装し製品 化してきた(図2参照)。

さらには,横揺れやジャークを最小限に抑えた快適な 移動のための軌道計画アルゴリズム6)や,目標軌道に対 して高精度に追従走行可能な車両制御技術など,より高 度に安全と快適を両立させる車両制御技術を開発してい る[論文「安全・安心・快適を実現する車両統合制御技 術」(72ページ)参照]。

6. おわりに

これまで述べてきたように,センサーや通信・状況判 断や車両制御などの幅広い技術領域が求められる先進運 転支援や自動運転技術に対して,日立グループは広範囲

に多数の技術やサービスを研究開発し保有している。

この強みを生かし,安全・安心や事故ゼロ・死亡者ゼ ロの実現に向けて,持続可能な社会の構築に貢献する先 進的なモビリティソリューションを,ECUからセンター サービスに至るトータルシステムとして提供するシステ ムインテグレータをめざしていく。

執筆者紹介

安藤 敏之

日立Astemo株式会社 パワートレイン&セーフティシステム事業部 AD/ADASビジネスユニット 戦略本部 事業企画部 所属 現在,AD/ADASのマーケティングおよび技術戦略に従事 自動車技術会会員,

自動車技術会認定プロフェッショナルエンジニア

佐々木 朋春

日立Astemo株式会社 パワートレイン&セーフティシステム事業部 AD/ADASビジネスユニット Japanリージョナルビジネスユニット兼 戦略本部 所属

現在,AD/ADASの日本における事業管理とグローバル戦略に

従事

工藤 英康

日立Astemo株式会社 パワートレイン&セーフティシステム事業部 AD/ADASビジネスユニット 戦略本部 事業企画部 所属

現在,AD/ADASの事業戦略,製品戦略に従事

岡田 隆

日立Astemo株式会社 技術開発統括本部 次世代モビリティ開発本部 自動運転技術開発部 所属

現在,AD/ADASに関する先行技術開発に従事

日本機械学会会員,計測自動制御学会会員,

自動車技術会会員 参考文献など

1)警察庁 交通事故統計,令和2年(2020)年報,

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/toukeihyo.

html

2)株式会社SUBARU,スバル アイサイト搭載車の事故件数調査結果 について(2016.1)

https://www.subaru.co.jp/press/news/2016_01_26_1794/

https://www.subaru.jp/safety/eyesight/

3)日立ニュースリリース,一般道での自動運転実用化に向け,安全な 走行を実現するための高精度な追従走行を可能にする技術を開発

(2019.10)

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/10/1011a.

html

4)日立ニュースリリース,高度運転支援ECUおよびOTAによる自動地図 更新に対応した高精度地図ユニットが日産の新型「スカイライン」 初採用(2020.9)

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/09/0908.

html

5)日立ニュースリリース,新型レジェンドにAD ECU,OTAユニットが採用

OTAによる車両制御ソフトウエアの更新に対応(2021.4)

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2021/04/0426.pdf 6)日立ニュースリリース,快適な自動運転車両空間を実現する高精度

な軌道計画技術を開発(2021.5)

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2021/05/0525a.

html

参照

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