博士(環境科学)
Md.TauddinSikder学 位 論 文 題 名
Analyses of contaminants and development ofahigh‑
performance water purification technique for surfaCeWater
( 陸 水 の 汚 染 分 析 お よ び 高 効 率 水 浄 化 法 の 開 発 )
学位論 文内容の要旨
各先進諸国例えば日本ではかってカドミウムによるイタイイタイ病及び有機水銀によ る水俣病など重金属による重篤な環境汚染が大きな社会問題となっていたが、法整備も 進み近年では河川水中の重金属濃度等は厳しく制限されている。一方、発展途上国の多 くでは、河川は住民の交通手段や経済活動を行う上で重要な役割をしている。しかし、
多くの発展途上国では、下水処理設備の発達が遅れているため、工業・農業及び生活排 水などが集落の周辺の河川にほぼそのまま流出している。そのため重金属等による環境 汚染物質による汚染の懸念も深まっている。本研究では、まず、先進国及ぴ発展途上国 の河川水等の陸水において汚染状況に違いがあるのか否かに着目し、先進国及び発展途 上国洞ソI|水のサンプリングを行ない、水質測定を行ない、汚染の現状を明らかにすると 共に、その汚染の機構を解析した。続いて、今日も多くの発展途上国で重金属汚染が懸 念される現状から、陸水に人為的に混入される高濃度重金属の効果的でかつ、発展途上 国においても応用が可能で取り扱いが容易な重金属除去法を構築することを目的とした。
本論文は6章から構成され、第1章では研究の背景として発展途上国および先進国の 汚染の現状、及び汚染除去法にどのよう物質が応用されているのかの概略を述べた。
第2章では、先進国(日本、大阪及び北海道)及ぴ発展途上国(インドネシア、モン ゴノレ及ぴバングラデシュ)より主要16河川(一部湖沼を含む)・計39地点を選び、河川 水および一部地点で土壌等のサンプリングを行ない、基本水質、各種アニオン濃度及ぴ 重金属濃度を測定し、汚染の内容について討論した。その結果、今回測定した範囲の河 川では、世界保健機構が提唱する環境基準を大幅に超過する汚染は認められず、途上国 と先進国間の汚染構造に大きな違いが無いことが示された。また主成分分析等の解析に より、それぞれの国や地域に特徴のある汚染を示すことに成功した。また発展途上国の 多くの汚染は、インフラの整備および下水処理等の施設の充実化により防げる可能性を 示した。
第3章では、汚染のうちで特に重金属に着目し、いくっかの発展途上国の河川におい て環境基準を上回る汚染が現実に存在していること、それらの汚染が工場等の人為的な 汚染によるものである可能陸を示した。またこれらの汚染対策として、有効な重金属除
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去システムが必要であることを提案した。また、本研究で用いた解析方法が全ての河川 で汎用出来る可能陸に言及し、将来的に河川の汚染を同一評価系にできうる可能陸にも 触れた。
第4章では、この重金属汚染の除去システム構築に関して、エピクロロヒドリン架橋 によルシクロデキストりを重合不溶化した安価で取り扱いが簡便な不溶型シクロデキス トリンを用いた重金属除去能にっいて論じた。本不溶型シクロデキストリンは、カラム 充填等により容易に種々の環境汚染化学物質の吸着除去に対応可能である。また攪拌後 の沈殿によって吸着剤を回収できる利点を有している。これまで、シクロデキストリン 誘導体は有機化合物に対して吸着除去できることが良く知られていたが、重金属の吸着 除去に関しては殆ど知られていなかった。本章において、カドミウムおよびクロミウム に関して不溶型Q,ロ及びッ・シクロデキストリンの吸着除去能を調べた結果、シクロデ キストリン誘導体は効率よく重金属を吸着し、その吸着能は高濃度において、カドミウ ムで100%近い吸着能を示した(クロミウムは20〜30%)。さらに金属を含んだ溶液の pHを変化させたところ中´陸域のみで高い吸着能を示した。このことは、不溶型シクロデ キストリンを現実の河川水に応用する際の大きな利点になると考えられた。また、3種 のQ,ロ及びvーシクロデキストリン問の吸着能の差は殆ど認められなかった。このこと はポリマー化による不溶化の際にシクロデキス卜リンが同じような化学的性質を獲得し た可能Itが考えられた。フーリエ変換赤外分光法およびX線光電子分光法の解析の結果、
不溶型シクロデキストリンの重金属吸着には酸素を含む官能基が重要な役割を果たして いることが示唆された。また比表面積分析により重金属が結合できるエリアがそう大き くない可能性が示された。
第5章では、銅の不溶型シクロデキストリンへの吸着能について検討した。4章にお いて3種のQ,ロ及びッ‐シクロデキストリン間の吸着能の差は殆ど認められなかったこ とから、本章ではB‑シクロデキストリンのみを用いた。銅においてもカドミウムと同様 の結果を得たが、銅がナトリウム塩と拮抗して吸着能を減じることと、4章の結果から 不溶型シクロデキストリンが2価の金属イオンのみに反応するわけではないこと、及び 繰り返しの脱着実験により、本不溶型シクロデキストリンが脱着を繰り返す複数回の使 用に耐える素材であることが示された。
6章では、本研究によって新たに見出した部分および提唱にっいてまとめた。以上の 研究結果から、まずフィール阿升究では、発展途上国の河川の汚染の多くは下水処理施 設を完備することによって防げるが、未だに一部の河川に人為的重金属汚染の可能性が 残されていることを明らかにした。次に重金属の吸着材研究の成果として、本研究で提 案された不溶型シクロデキストリンは、効率良い重金属を吸着材であることが示された。
また、このシクロデキストリンは、中´陸域の水に含まれる高濃度の重金属除去に有効で あり、かつ吸着脱着操作が容易であることが示された。以上のことから不溶型シクロデ キストリンにより、発展途上国の河川水及び工場廃水の重金属汚染除去等に成果を挙げ ることが期待される。
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学 位論文 審査の要旨 主査 副査
副査 副査 副査 副査
教 授 教 授 教 授 准 教授 助 教 教 授
田中 坂入 田中 新岡 藏崎 細川
学 位 論 文 題 名 俊 信 教
正 敏
逸 夫 ヨ罍 正 明
幸(高等教育推進機構)
Analyses of contaminants and development ofahigh‑
performance water purification technique for surfaCeWater
( 陸 水 の 汚 染 分 析 お よ び 高 効 率 水 浄 化 法 の 開 発 )
先進諸国、例えば日本ではかつてカドミウムによるイタイイタイ病及び有機水銀による水 俣病など重金属による重篤な環境汚染が大きな社会問題となっていたが、法整備も進み近年 では河川水中の重金属濃度等は厳しく制限されている。一方、発展途上国の多くでは、河川 は住民の交通手段や経済活動を行う上で重要な役割を担っているが、工業・農業及び生活排 水などが集落の周辺の河川にほぽそのまま流出しているため、重金属等による環境汚染の懸 念も深まっている。本研究において申請者は、まず、アジアの先進国及び発展途上国の河川 水等における汚染の現況を把握するために、河川水のサンプリングおよび水質測定を行ない、
その汚染の機構を解析した。続いて、陸水に人為的に混入される可能性のある高濃度重金属 の効果的な除去法を提案した。
まず、先進国(日本;大阪及び北海道)及び発展途上国(インドネシア、モンコルレ及びパ ングラデシュ)より16河川(一部湖沼を含む)から計39地点を選び、河川水および一部地点 では土壌等のサンプリングを行ない、基本水質、各種アニオン濃度及び重金属濃度を測定し、
汚染の現況につしゝて検討した。その結果、今回測定した河川では、世界保健機構が提唱する 環境基準を大幅に超過する汚染は認められず、今回測定した項目においては途上国と先進国 間の汚染構造に大きな違いが無いことが示された。また主成分分析等の解析により、それぞ れの国や地域に特徴のある汚染を示すことに成功した。また日本の結果と比較することで発 展途上 国の多 くの汚染 は、イン フラの 整備およ て鬪E実化に より防げる可能性を示した。
さらに、重金属による汚染に着目すると、いくっかの発展途上国の河川において環境基準 を上回る汚染が現実に存在していること、それらの汚染が工場等の人為的な汚染によるもの である可能性を示した。またこれらの汚染対策として、有効な重金属除去システムが必要で あることを提案した。また、本研究で用いた解析方法が全ての河川で汎用出来る可能性に言
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及 し 、 将 来 的 に 河 川 の 汚 染 を 同 一 評 価 系 で 評 価 し う る 可 能 性 に も 触 れ て い る 。 次 い で 、 重 金 属 汚 染 に 対 す る 解 決 法 の1っ と し て 、 重 金 属 除 去 剤 の 利 用 を 提 案 し た 。 す な わ ち 、 工 ピ ク 口 口 ヒ ド リ ン 架 橋 に よ ル シ ク 口 デ キ ス ト り を 重 合 不 溶 化 し 、 取 り 扱 い を 簡 便 に し た 不 溶 型 シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 重 合 体 を 用 い た 重 金 属 除 去 シ ス テ ム の 提 案 で あ る 。 本 不 溶 型 シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 重 合 体 は 、 カ ラ ム 充 填 等 に よ り 容 易 に 種 々 の 環 境 汚 染 化 学 物 質 の 吸 着 除 去 に 対 応 可 能 で あ る 。 ま た 、 直 接 汚 染 水 に 投 ヌ 攪 拌 後 、 沈 殿 等 に よ っ て 本 不 溶 型 シ ク 口 デ キ ス ト リ ン を 回 収 で き る 利 点 を 有 し て い る 。 こ れ ま で 、 シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 誘 導 体 は 有 機 化 合 物 に 対 し て 吸 着 除 去 で き る こ と が 良 く 知 ら れ て い た が 、 重 金 属 イ オ ン の 吸 着 除 去 に 関 し て は 殆 ど 知 ら れ て い な か っ た 。 本 研 究 に お い て 、 カ ド ミ ウ ム 、 銅 お よ び ク 口 ム に 関 し て 不 溶 型a, ロ お よ び ァ ‐ シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 重 合 体 は100 ppm程 度 の カ ド ミ ウ ム お よ び 銅 に お い て100
% ( ク 口 ム は20■‑‑30% ) 近 い 吸 着 能 を 持 つ こ と を 示 し た 。 さ ら に 金 属 を 含 ん だ 溶 液 のpHを 変 化 さ せ た と こ ろ 中 性 域 の み で 高 い 吸 着 能 を 示 し た 。 こ の こ と は 、 不 溶 型 シ ク 口 デ キ ス ト リ ン を 現 実 の 河 川 水 に 応 用 す る 際 、 分 離 回 収 カ 溶 易 な 点 と 併 せ て 、 大 き な 利 点 に な る と 考 え ら れ た 。 ま た 、3種 のa, ロ お よ び ァ ・ シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 間 の 吸 着 能 の 差 は 殆 ど 認 め ら れ な か っ た 。 ま た 、 エ ピ ク 口 口 ヒ ド リ ン 架 橋 構 造 自 体 に も 若 干 の 重 金 属 結 合 能 が 認 め ら れ た が 、 そ の 重 金 属 結 合 の 多 く は シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 分 子 に よ る 寄 与 で あ る こ と カ 塚 さ れ た 。 重 金 属 イ オ ン の 吸 着 前 後 の 不 溶 化 シ ク ロ デ キ ス ト リ ン 重 合 体 の フ ー リ ェ 変 換 赤 外 分 光 法 お よ 乙 腿 線 光 電 子 分 光 法 の 測 定 の 結 果 、 不 溶 型 シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 重 合 体 の 重 金 属 吸 着 に は 酸 素 を 含 む 官 能 基 が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 繰 り 返 し の 脱 着 実 験 に よ り 、 本 不 溶 型 シ ク 口 デ キ ス 卜 リ ン 重 合 体 が 複 数 回 の 使 用 に 耐 え る 素 材 で あ る こ と も 示 さ れ た 。 以 上 、 本 論 文 に よ り 、 発 展 途 上 国 の 一 部 の 河 川 に 人 為 的 重 金 属 汚 染 の 可 能 性 が 残 さ れ て い る こ と を 明 ら か に し た 。 次 に 重 金 属 の 吸 着 材 研 究 の 成 果 と し て 、 本 研 究 で 提 案 さ れ た 不 溶 型 シ ク □ デ キ ス ト リ ン 重 合 体 は 、 効 率 良 い 重 金 属 吸 着 材 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 ま た 、 こ の シ ク 口 デ キ ス ト リ ン は 、 中 性 域 の 水 に 含 ま れ る 高 濃 度 の 重 金 属 除 去 に 有 効 で あ り 、 か つ 吸 着 脱 着 操 作 が 容 易 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 以 上 の こ と か ら 不 溶 型 シ ク 口 デ キ ス ト リ ン 重 合 体 の 応 用 は 、 発 展 途 上 国 の 河 川 水 及 び 工 場 廃 水 の 重 金 属 汚 染 除 去 に 成 果 を 挙 げ る こ と が 期 待 さ れ る 。 審 査 委 員 一 同 は , こ れ ら の 成 果 を 評 価 し , ま た 研 究 者 と し て 誠 実 か つ 熱 心 で あ り , 大 学 院 博 士 課 程 に お け る 研 鑽 や 修 得 単 位 な ど も あ わ せ , 申 請 者 が 博 士 ( 環 境 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 半u定 し た 。
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