博士(工学)プ ルワントユリマン
学 位 論 文 題 名
Development and Application of a Continuous lVIeasurement System for Satellite Broadcasting Receivers
( 衛星 放送 受信機の連続測定システム開発とその応用)
学位論文内容の要旨
1978年4月 放 送試 験 衛 星 が 打 ち上 げ ら れ て 以来 、 放 送 は 衛星 時 代 を 迎 える こ と と な っ た。
そ の 後 、 幾多 の 経 緯 を 経 て本 放 送 が 行 われ る に 至 っ てい る 。 衛 星 放送 の特 徴は 視聴者 が、ア ン テ ナ 、 コン バ ー 夕 、 チ ューナ 等から 成る衛 星放送 受信 機を設 置し、 衛星か らの 電磁波 を直接 受 信 す る こと で あ る 。 そ のため 、現在 、多く の衛星 放送 受信機 が生産 ・販売 され ている 。従つ て 、 衛 星 放送 受 信 機 の 特 性評価 システ ムを開 発する こと は、よ り優れ た受信 櫞昂 発のた めに重 要 と 言 え る。 受 信 ア ン テ ナは一 般に屋 外に設 置され てい るため 、その 表面に 積雪 や雨滴 の付着 が 生 じ 、 受信 特 性 の 劣 化 が生ず る。そ のため 、受信 機の 特性評 価は長 期間に 渡っ て連続 的、か つ 、自動 的に行 える ものが 望まれ ていた 。
受 信 機 の 性 能 は 一 般 的 にG/T( 受 信 ア ン テ ナ 利 得(G)と受 信 シ ス テ ムの 等 価 雑 音 温度(T) の 比 ) で 評 価 され る 。 従 来 から 衛 星 放 送 受信 機 のG/T測 定 法 は 知 られ て い た が 、雑 音 温 度 を 測 定 す る ため に 、 ア ン テ ナを 天 頂 方 向 に向 け る な ど 手動 で 行 わ な けれ ばな らな い過程 がある た め、先 に述べ た連 続的な 自動測 定が不 可能で あっ た。
本論 文の 目的は ニニっ ある。 その 第一は 、本研 究によ って開 発さ れた、 衛星放 送受信 機のG/T 連 続 測 定 シ ス テム の 詳 細 を 明ら か に す る こと で あ る 。G/Tの 連 続 測定 が 従 来 困 難と さ れ て い た 理 由 は 、衛 星 放 送 波 が 存在す るため 受信ア ンテナ を衛 星の方 向に向 けたま まで はその チャネ ル 内 の 雑 音電 力 測 定 を 行 うこと が不可 能であ ったこ とに よる。 本研究 では、 衛星 放送受 信機の 雑 音 電 カ が周 波 数 に 対 し て、ほ ば線形 に変化 するこ とに 着目し 、衛星 放送チ ャネ ル内の 雑音電 カ を衛星 放送波 が存 在しナ ょいチ ャネル 外の雑 音電 カから 内挿す る方式 を提 案している。また、
受 信 ア ン テナ の 利 得 の 規 準とな る標準 アンテ ナへの 着雪 、雨滴 の付着 の影響 を防 ぐため 、それ を 室 内 に 設置 し て い る 。 本論文 では、 室内に おける 衛星 放送波 レベル の低下 を考 慮に人 れた、
標 準アン テナの 実効 的な利 得を明 らかに してい る。
本 論 文の 第 二 の 目 的は 、 本測定 システ ムを 応用し 、各種 のアン テナか ら成 る受信 機の長 期連 続 測 定 を 行う こ と に よ っ て、降 雪、降 雨によ る劣化 の違 いを明 確にす ること であ る。本 測定シ ス テ ム を 用い た 連 続 測 定 は、 過 去 約2年間 、 シ ステ ムの 保守期 間を除 き実施 され た。対 象とし た 受信ア ンテナ はセ ンター フィー ドパラボラアンテナ、オフセ・ソトパラボラアンテナ、ス口・ソ ト ア レ ー を 用 いた 平 面 ア ン テナ の3種 類 であ る 。 長 期 連続 測 定 の 結 果 、セ ン タ ー フ ィー ド パ ラ ボ ラ ア ンテ ナ は 鏡 面 下 部に着 雪を生 ずるた め冬期 に著 しい劣 化を生 ずるこ とが 分かっ た。ま た 、 オ フ セッ ト パ ラ ボ ラ アンテ ナは着 雪、お よび、 降雨 の影響 を受け にくい こと が示さ れた。
一 方 、 当 初天 候 の 影 響 を 受け に く い と 考え ら れ て い た平 面 ア ン テ ナが 着雪 と雨 滴の付 着のい ず れによ ってもG/Tの 劣化 を生ず ること が明ら かに なった 。
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本 論 文 は 上 述 の 研 究 成 果 を 詳 細 に 論 じ た も の で あ り 、8章か ら 構 成 され て い る 。 第1章 は 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 を 概 括 す る と と も に 研究 目 的 を 論じ て い る 。 第2章では 、従来 から知ら れてい た、衛 星放送 受信機 のG/T測定法の基本原理が概説され て いる。 この方式では、FM変調された約27MHzの帯域p昌の衛星放送波とその周波数移動を 行った信号との混合を行い、正弦波成分を発生している。これを狭帯域なスペクトラムアナラ イザのフアルタを通すことにより、SN比の良好な状態での信号電カレベル測定が可能である ことが示されている。更に、衛星放送チャネル内の雑音電カと標準雑音源出カを用いることに よって、受信機のG/T測定が可能であることを述べている。
第3章では 、G/T測定 を連続 的に行 うため に必要と なる標 準アンテナにっいて考察を行つ ている。先に述べた通り、標準アンテナはアンテナ利得の規準として用いられるため、着雪や 降雨によってその利得が変動してはならない。本研究では、標準アンテナを室内に設置するこ とによって利得変動を避けている。しかし、標準アンテナが窓ガラス越しに衛星放送波を受信 するため、受信電界強度の低下を生ずる。その影響を標準アンテナの利得に等価的に組み込む ことを論じ、その実効的な利得の測定法を明確にしている。
第4章では 、G/T測定 に必要 な衛星 放送チ ャネル内 の雑音 電カレベルの推定法を述べてい る。これは、衛星放送チャネ´レ帯域の外側の雑音電カレベル測定値から帯域内の雑音電カレベ ルを補間するものであり、衛星放送波が送信されている期間にもその帯域勾の雑音電カの推定 が 可 能 と な る 。 こ の こ と 倣G/Tの 連 続 洳J定 を 行 う 際 に 必 要 不 可 欠 な 技 術 で あ る 。 第5章では 、G/T自動 測定シ ステム のハー ドウエア 構成と それを制御するソフトウエアを 諭じている。まず、測定に用いられている主要な部品、および、測定ユニットについて説明を 行っている。次に、受信電カレベルと雑音レベルの測定に用いられるソフトウエアを明らかに している。
第6章では 、本研 究で構築 したG/T測定シ ステムの 測定精 度にっいて論じている。まず、
第3章で述べ た、室 内に設 置され た標準アンテナの実効的な利得の測定結果を明らかにして いる。次に、第4章で述べた雑音電カの推定精度を明らかにするため、衛星が食とナょり、衛星 放送波;6遡aされていない期間に実測された帯域内雑音電カレベルと推定値を比較した。その 結果 、本推 定法は0.3dB以内 の誤差 で雑音レベルを求めることが可能であることが明らかと なった。更に、受信アンテナの禾lj得の仕様値とコンバー夕内の増幅器の雑音指数から計算され る受 信 シ ス テム のG/Tの推定 値と本 研究で 構築さ れた測定 システ ムを用 いて得 られたG/T を比 較した 。その 結果、 本シス テムはG/Tを十分高い精度で測定可能であることが明らかと なった。
第7章では 、本測 定システ ムを用 いた、各種のアンテナから成る受信機の長期連続測定結 果を論じている。ここでは、衛星放送受信用に用いられている、センターフィードパラボラア ンテナ、オフセットパラボラアンテナ、ス口ットアレーを用いた平面アンテナから成る受信機 を対象とした。その結果、センターフィ―ドパラボラアンテナは冬季における着雪のため受信 信号 電カレ ベルが 低下し 、G/Tが劣 化することが分かった。平面アンテナは着雪と降雨によ り、 信号電 カレベ ルの低 下と雑 音電カレベルの上昇を生ずるため、全ての季節においてG/T の劣化カぢ生じること、また、オフセットパラボラアンテナは着雪、および、降雨によるG/T の劣 化が少 ないこ とが明 らかと なった。更に、各受信機毎のG/Tの累積分布を示し、その系 統的評価を行った。
第8章では、本研究から得られた結果の総括を行っている。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Development and Application of a Continuous lVIeasurement System for Satellite Broadcasting Recelvers
( 衛 星 放 送 受 信 機 の 連 続 測 定 シ ス テ ム 開 発 とそ の 応 用)
我が国では衛星放送が定着するに至っており、今後、諸外国においても広く実用化 されることが予想されている。衛星放送の特徴は視聴者が、アンテナ、コンバー夕、
チューナー等から成る衛星放送受信機を設置し、衛星からの電磁波を直接受信するこ とである。
受信アンテナは一般に屋外に設置されているため、その表面に積雪や雨滴の付着が 生じ、受信特性の劣化が生ずる。そのため、受信機の特性を長期間に渡って連続的、
かつ、自動的に測定できるシステムを構築することは、よりすぐれた受信機開発のた め重要といえる。
受信機の 性能は一 般にG/T( 受信アンテナ利得(G) と受信システムの等価雑音温度
(T)の比)で評価される。G/T を用いることによって降雨減衰など、伝搬路における 気象条件の影響を除き、受信アンテナ系に対する影響のみを評価することが可能とな る。従来から衛星放送受信機のG/T 測定法は知られていたが、雑音温度を測定するた めに、アンテナを天頂方向に向けるなど手動で行なわなければならない過程があるた め、先に述べた連続的な自動測定が不可能であった。
本研究に おいては 、衛星放送受信機のG/T を自動連続測定可能なシステムを開発 し 、 そ れ を用 い る こと によ って各種 の受信 アンテナ の長期 特性評価 を行っ た。
主要な研究成果をまとめると以下の通りである。
1
.
G/Tの連続測定が従来困難とされていた理由は、衛星放送波が存在するため受
信アンテナを衛星の方向に向けたままではそのチャンネル内の雑音電力測定を
行うことが不可能であったことによる。本研究では、衛星チャンネル内の雑音
電カを衛星放送波が存在しないチャンネル外の雑音電カから内挿する方式を提
案している。衛星が食となり、衛星放送波が送信されていない期間に実測され
た帯域内 雑音レ ベルと比較することによって本方式が約0.3dB 以内の誤差で雑
音電カレベルを推定できることを明らかにした。
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彦 則
光 孝
精
正
利
恭
藤
柴
倉
川
伊
小
朝
小
授 授
授 授
教
教
教
教
助
査
査
査
査
主
副
副
副
2
.受信アンテナの利得の規準となる標準アンテナヘの着雪、雨滴の付着の影響を
防ぐため、それを室内に 設置することを提案している。室内においては窓ガラ
スを通して衛星放送波を 受信するため、受信レベルの低下を生ずる。そのレベ
ル の低 下を 標準 アン テナ の実 効的 な利 得に 換算 する こ とを提案してい る。
3
.受信アンテナの利得の仕様値とコンバー夕内の増幅器の雑音指数から計算され
る、受信システムのG/T の推定値と本測定システムを用いて求められたG/lr .を
比較し、本測定システムはG/T を十分高い確度で測定可能であることを示した。
4
.本測定システムを応用し、各種のアンテナから成る受信機の長期連続測定を行
うことによって、降雪、降雨による劣化の違いを明確にした。本測定システムを
用いた連続測定は、過去 約
2年間、システムの保守期 間を除き実施された。対
象とした受信アンテナは センターフィードパラボラアンテナ、オフセットパラ
ボラアンテナ、スロット アレーを用いた平面アンテナの3 種類である。各アン
テナの測定結果を用いて 、降雨時、および、降雪時の受信信号電カレベル、雑
音 電カ レベ ル、
G/Tの24 時 間変 化を 観察 する とと もに 、各 季節毎の
G/Tの時
間率分布を求め、長期的 評価を行なった。センターフィードパラボラアンテナ
は 鏡面 下部 に着 雪を 生ず るた め冬季におい ては1Vo の時間率で
8dBものG/T の
低下をきたすことが分か った。また、オフセットパラボラアンテナは着雪、お
よび、降雨の影響を受け にくいことが示された。一方、当初天候の影響を受け
にくいと考えられていた 平面アンテナは着雪と雨滴の付着のいずれによっても
受信信号レペルの低下と 雑音電カレベルの上昇をきたし、その結果としてG/T
の劣化を生ずることが明らかになった。
これを要するに著者は衛星放送受信機のG/T 自動連続測定システムの構成法を提案 するとともにそれを用いた受信アンテナ系の長期測定結果を明らかにしたもので、高 周 波 測 定 技 術 、 ア ン テ ナ 工 学 の 進 展 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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