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知的障害特別支援学校小学部における仲間相互交渉を促進させるための指導方法の検討―発表する児童の発表行動への介入が聞き手の児童へ及ぼす効果―-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学教育実践総合研究(Bull. Educ. Res. Teach. Develop. Kagawa Univ.),37:57-67,2018

知的障害特別支援学校小学部における

仲間相互交渉を促進させるための指導方法の検討

―発表する児童の発表行動への介入が聞き手の児童へ及ぼす効果―

滝澤 健

・ 武藏 博文

* (香川県立香川丸亀養護学校) (高度教職実践専攻) 763-0085 丸亀市飯野町東分592-1 香川県立香川丸亀養護学校 *760-8522 高松市幸町1-1 香川大学大学院教育学研究科   

Consideration of Teaching Method to promote Interaction

between Children in Elementary School Course of Special

School for Intellectual Disabilities

Ken Takizawa and Hirofumi Musashi

Kagawa Prefectural Kagawa Marugame School for Special education, 592-1 Higashibun, Iino-cho, Marugame 763-0085Graduate School of Education, Kagawa University, 1-1 Saiwai-cho, Takamatsu 760-8522

要 旨 知的障害特別支援学校小学部に在籍する3年生の児童を対象に,「帰りの会」で児 童同士による相互交渉場面を設定し,聞き手の児童の注意喚起を高めるための改善を,発表 する児童の発表行動への介入として行った。その効果を,発表する児童への聞き手の児童の 注視行動を指標に分析した。結果,注視行動を増加させる発表行動への介入として,①評価 者の指名予告,②対象物の指示の2点の有効性が示唆された。 キーワード 知的障害 仲間相互交渉 協同学習 「発表者」と「聞き手」の役割

Ⅰ.研究の背景と目的

 近年,発達障害児における小集団指導を対 象とした仲間相互交渉の研究(井澤・梶永, 2000;小島,2000,2001;涌井2003)が行われ てきた。その成果は,相互交渉を促すための文 脈の明確化やプロンプトのタイミング,集団随 伴性の適用など,学校現場で実践するための学 習環境への示唆を多く与えている。また,知的 障害特別支援学校においても,小集団を対象と した協同学習の取組や,仲間同士の相互交渉を 促進することを目的とした実践研究(網谷・武 藏,2008;村中・小沼・藤原,2009)が報告さ れている。  網谷・武藏(2008)では,小学部1・2年生 を対象とし,日課として位置付いている「朝の 会」で,社会的コミュニケーション場面を設 定し,「発表者」と「聞き手」の役割学習の効 果を検討した。学習環境の設定として,相互交 渉を繰り返し学習できる機会の提供,教師を介 在者とした段階的な指導,「発表者」と「聞き 手」の役割の明確化の有効性を示唆している。 また,課題として,交渉相手の応答性への配慮 を指摘している。応答性を明確にする条件とし て,相手の応答行動を明確に受け取れる物理的 な位置関係と,活動内に聞き手一人一人への話 し手の応答が随伴するような手続きの設定を挙 げている。つまり,発表者→聞き手,聞き手→

(2)

発表者の一方向の相互交渉の流れだけではなく て,聞き手の応答に対する発表者の応答行動ま での含めた相互交渉の設定が必要であるとして いる。  村中・小沼・藤原(2009)では,小学部6年 生の児童5名を対象に,学級単位で実施される 小集団指導「朝の会」の授業改善を行った。結 果,机や教材の配置など,教室内の物理的環境 設定に基づく係活動の設定により,児童同士の やり取りを含む課題遂行機会が増加することが 確認された。また,指導の手続きとして,児童 同士のやり取りで課題を遂行するためには,そ の前に,指導者とのやり取りで課題遂行できて いた教材をそのまま使用することを挙げてい る。  2つの実践研究から,児童同士の相互交渉の 効果的な指導場面として,「朝の会」のような 学級単位で実施され,日課として位置づけられ ている授業が適していると言える。学習環境と しては,相手に注目しやすい座席や教材の配置 などの物理的な環境設定と,相互交渉の文脈の 明確化,指導者が介在した指導の手続きの有効 性が示唆されていることが共通している。いず れの実践研究も,児童同士の相互交渉を成立さ せるための条件は検討されているが,成立後 の,発表者,聞き手それぞれの行動の質を高め るための指導の手続きは検討されていない。  また,日課として位置づけられ,構造化され た場面での児童同士の相互交渉では,発表者が 一方的,形式的に話し,聞き手が視聴している かどうかを確認しないことが時々見られる(村 中,2013)。聞き手が,発表者の行為に注目し なくても,パターン的なやり取りや,視覚的な 提示物を手掛かりとして応答可能になっている 場合もあり,形式的なやり取りになりやすいこ とが課題である。  村中(2013)は,仲間同士のやり取りの指導 において,まず機会をつくり増やしていくこと から,やり取り行動の質を高めることの必要性 を指摘した。やり取り行動の質を,聞き手や環 境設定などの文脈に応じて,適切に働きかけ る・応答する,年齢相応の振る舞いなどの伝達 手段の選択と,相手に伝わらない場面での修正 力としている。また,具体的な指導方法とし て,発表者では,絵やマーク,文字などの視覚 的な手掛かりを使って伝える方法や,聞き手の 注意喚起を促すための予告や指示,終了の合図 の明確化,聞き手では,札などの物や動作を介 した応答を紹介している。  そこで,本研究では,発表者の行動の質を高 めることを,聞き手の注意喚起を促す発表行動 の獲得と捉えた。日課として行われ,既に児童 同士の相互交渉(発表者→聞き手,聞き手→発 表者)が成立している「帰りの会」の発表場面 を対象とし,児童同士の相互交渉をさらに促進 させることをめざした。本論では,発表者の発 表行動への介入が,聞き手の応答性に及ぼす効 果を検討することを目的とした。

Ⅱ.方法

1.対象児  特別支援学校小学部3年生3名(A児,B児, C児),4年生(D児,E児,F児)の計6名の 複式学級を対象とした。仲間相互交渉の実態 は,朝の会や帰りの会など,毎日,繰り返し行 われ,定型的な相互交渉場面,例えば,物を配 る係活動を介した「~さん,どうぞ」,「ありが とう」の相互交渉や,司会として他の児童に「~ お願いします」と役割を依頼し,聞き手として それに応じることは,全員可能であった。しか しながら,休憩時間など,より自然な文脈での 児童同士の相互交渉は少なく,その成立には, 大人の介入が必要であることが多かった。  特に,C児は,大人とであれば2語文での会 話が成立するものの,独り言を言っていること が多く,自分からの仲間への働きかけが弱かっ た。授業場面以外では,他の児童との相互交渉 はほとんど見られず,授業中に,他の児童が発 表していても,下を向いたり,手遊びをした りしていることが多かった。自閉症の診断が あり,田中ビネーⅤ知能検査の結果はIQ46で あった。  そこで,6名の児童を本実践の対象とした

(3)

が,分析の対象はC児とした。  6名の保護者には,個別の指導計画を基に, 目標と支援内容,個人情報やデータの取り扱い について説明し,同意を得た。 2.指導期間  指導期間は,X年7月~X年12月の8月を除 く5ヶ月間で,週5回,1回20分間の指導を計 49回行った。BL期は,X年7月7日~7月10 日まで計3回,介入Ⅰ期は,X年9月4日~10 月23日までの計23回,介入Ⅱ期は,X年10月28 日~12月24日までの計23回であった。 3.指導場面と設定  指導場面は,一日の終わりに実施している 「帰りの会」を設定した。在籍児童6名の学級 で,教師2名で指導を行った。  「帰りの会」の活動は,①始めの挨拶,②下 校方法の確認,③明日の日付と予定確認,④給 食の振り返り,⑤先生の話,⑥帰りの歌,の順 であった。これらの活動のうち,対象児の関心 が少なかった「下校方法の確認」と「給食の振 り返り」の発表場面を介入の対象とした。  「下校方法の確認」は,司会の児童から指名 された児童が,下校の手段(スクールバス,送 迎,デイサービス等)を発表するというもので あった。  「給食の振り返り」は,同様に指名された児 童が,その日に食べたメニューから,自分がお いしかった物を発表するというものであった。  帰りの会における席の配置は,前方の黒板に 向かって横に一列に並ぶようにした(Fig. 1)。 C児は左から3番目の席であった。司会は6名 の児童が輪番で行った。発表の順番は顔写真で 示し,固定し継続して行った。支援者は,主 に,司会や前に出て発表する児童への支援を行 う教師(以下,MT)1名と,聞き手の児童へ の支援を行う教師(以下,ST)1名とした。 4.指導目標 (1)下校方法の確認  発表する児童が選ぶ下校方法に注目し,聞き 手の児童としての役割(発表内容に合った手札 を上げて,「○ですね」と言うこと)を遂行す ることを目標とした。 (2)給食の振り返り  発表する児童が選ぶメニューに注目し,聞き 手の児童から指名された評価の児童が,その役 割(「〇がおしかったね」と言いながら手札を 上げる)を遂行することを目標とした。 5.発表場面における相互交渉の流れと介入条件 (1)下校方法の確認  下校方法の確認では,Table 1に示すように, 司会の児童から指名を受けて,発表する児童は 前方に配置されたホワイトボードの前に立ち, Fig.1 座席と教材などの配置 Ⅱ.方法 1.対象児 特別支援学校小学部 3 年生 3 名(A 児、B 児、 C 児)、4 年生(D 児、E 児、F 児)の計 6 名の複 式学級を対象とした。仲間相互交渉の実態は、 朝の会や帰りの会など、毎日、繰り返し行われ、 定型的な相互交渉場面、例えば、物を配る係活 動を介した「~さん、どうぞ」、「ありがとう」 の相互交渉や、司会として他の児童に「~お願 いします」と役割を依頼し、聞き手としてそれ に応じることは、全員可能であった。しかしな がら、休憩時間など、より自然な文脈での児童 同士の相互交渉は少なく、その成立には、大人 の介入が必要であることが多かった。 特に、C 児は、大人とであれば 2 語文での会 話が成立するものの、独り言を言っていること が多く、自分からの仲間への働きかけが弱かっ た。授業場面以外では、他の児童との相互交渉 はほとんど見られず、授業中に、他の児童が発 表していても、下を向いたり、手遊びをしたり していることが多かった。自閉症の診断があり、 田中ビネーⅤ知能検査の結果は IQ46 であった。 そこで、6 名の児童を本実践の対象としたが、 分析の対象は C 児とした。 6 名の保護者には、個別の指導計画を基に、 目標と支援内容、個人情報やデータの取り扱い について説明し、同意を得た。 2.指導期間 指導期間は、X 年 7 月~X 年 12 月の 8 月を除 く 5 ヶ月間で、週 5 回、1 回 20 分間の指導を計 49 回行った。BL 期は、X 年 7 月 7 日~7 月 10 日 まで計 3 回、介入Ⅰ期は、X 年 9 月 4 日~10 月 23 日までの計 23 回、介入Ⅱ期は、X 年 10 月 28 日~12 月 24 日までの計 23 回であった。 3.指導場面と設定 指導場面は、一日の終わりに実施している「帰 りの会」を設定した。在籍児童 6 名の学級で、 教師 2 名で指導を行った。 「帰りの会」の活動は、①始めの挨拶、②下 校方法の確認、③明日の日付と予定確認、④給 食の振り返り、⑤先生の話、⑥帰りの歌、の順 であった。これらの活動のうち、対象児の関心 が少なかった「下校方法の確認」と「給食の振 り返り」の発表場面を介入の対象とした。 「下校方法の確認」は、司会の児童から指名 された児童が、下校の手段(スクールバス、送 迎、デイサービス等)を発表するというもので あった。 Fig.1 座席と教材などの配置

MT

ST

ホワイトボード 黒板 テレビと テレビ台 くじ引きと発表机 椅子

A

B

C

D

E

F

司会

(4)

自分の下校方法を発表した。発表後,聞き手の 児童は,2種類の手札から,発表の内容に合っ たものを選んで上げ,「せーの」の合図で「〇 ですね」と言うようにした。  介入条件は,Table 2に示すように,BL期 は,事前に下校方法の写真カードがホワイト ボードに貼られている条件で,介入Ⅰ期には, 発表する児童が,指名され,前に出てから下校 方法の写真カードを貼るようにした。介入Ⅱ期 には,指示棒で下校方法の写真カードを指し示 して発表するようにした。 (2)給食の振り返り  給食の振り返りでは,Table 3に示すように, 司会の児童から指名を受けて,発表する児童は 前に出て,テレビ画面に映し出された給食のメ ニューの中から,自分がおいしいかった物の上 にイラストカードを貼るようにした。イラスト カードを貼った後,「〇がおいしかったです。」 と発表し,聞き手の児童の中から評価する児童 を任意に指名し,評価を求めるようにした。評 価者の児童は,発表内容に合わせて,「〇おい しかったね」と言いながら手札を上げるように した。  介入Ⅰ期では,評価者の指名をくじ引き制 にし,発表する児童が,くじを引いて指名す るようにした。介入Ⅱ期では,テレビ画面に イラストカードを貼らずに,指示棒で画面を指 し示して発表するようにした。聞き手の児童が 評価する時には,画面上に,イラストカードが 貼られていない条件で評価をするようにした (Table 4)。 6.指導の手続き (1)下校方法の確認  1)BL期  各自の下校方法を連絡帳の通信欄や本人から の聞き取りで事前に把握し,ホワイトボードに 下校方法の写真カードを貼っておいた。発表 は,4年生,3年生の順に行い,順番を固定し た。司会は輪番で児童が行うようにした。司会 進行,発表の指導はMTが行った。聞き手の児 童が発表内容に合わせて2種類の手札から選 んで上げる際に,間違ってあげている場合は, Table3 給食の振り返り場面の相互交渉の流れ 相互交渉の流れ ①発表する児童は、司会の児童からの指名を受 けて、前に出てテレビ画面上の給食メニュー にイラストカードを貼って示す。 ②発表する児童は、「〇がおいしかったです。」 と発表した後、「△さん、どうですか」と聞き 手の児童から評価する児童を指名し、評価を 求める。 ③指名された評価者の児童は、「〇がおいしかっ たね」と言って手札を上げる。 Table4 給食の振り返り場面の各期における 介入条件 BL期 介入Ⅰ期 介入Ⅱ期 ①指示 イ ラ ス トカードあり イ ラ ス トカードあり イ ラ ス ト カードなし 指示棒で発 表 ②発表 任意で聞き手の児童を 指名 くじ引きで 指名 くじ引きで指名 ③評価 イ ラ ス トカードあり イ ラ ス トカードあり イ ラ ス トカードなし Table1 下校方法の確認場面の相互交渉の流れ 相互交渉の流れ ①発表する児童は、司会の児童からの指名を受 けて、前に出る。 ②発表する児童は「〇で帰ります」と言う。 ③聞き手の児童は「せーの」の合図で、「〇です ね」と言いながら手札を上げる。 Table2 下校方法の確認場面の各期における 介入条件 BL期 介入Ⅰ期 介入Ⅱ期 ①指示 下校方法写真あり 下校方法写真なし 下校方法写真なし ②発表 下校方法写真あり 下校方法写真あり 下校方法写真+指示 棒あり ③評価 - - -

(5)

STが修正するようにした。  2)介入Ⅰ期  発表する児童への注目を促すことを目的とし て,下校方法の写真を事前に貼っておくことか ら,発表する児童が貼るように発表方法を変更 した。BL期と同様のホワイトボードを使用し, 全員が一人で発表方法を遂行できるようになる まで,MTが事前に発表方法のモデルを示すよ うにした。  3)介入Ⅱ期  発表する児童が,より聞き手の児童を意識し て発表できるように,指示棒を用意し,下校方 法の写真カードを貼った後,指示棒で写真カー ドを指し示しながら発表するようにした。介入 Ⅰ期と同様に,全員が一人で新しい発表方法を 遂行できるようなるまで,MTが事前にモデル を示した。また,「棒は?」といった言葉掛け や指差しによるプロンプトを行い,徐々にフェ イドアウトさせていくようにした。 (2)給食の振り返り  1)BL期  発表の前に,テレビ画面に給食メニューの写 真を映し出し,「〇さん,これは何ですか」と, 一つずつメニュー名を児童に確認するようにし た。メニュー名を確認した後,発表に移るよう にした。発表した後,聞き手の児童の中から評 価する児童を任意に指名するようにしたが,指 名される児童に偏りが見られても特に修正する ことはしなかった。  指名された評価者の児童が評価した後,MT が再度,評価を行い,おいしかったメニューの 味などの情報を補ったり,児童の発表方法,評 価方法を称賛したりした。 2)介入Ⅰ期  指名される回数を増やし,誰が当たるかを予 測できないようにし,発表者の行為に注目を促 すことを目的として,くじ引きで指名するよう にした。あらかじめ,くじ引き箱の中には,6 名分の棒付きの顔写真カードを入れておいた。 おいしかったメニューを発表した後,くじを引 いて評価者の児童を指名するようにした。1回 に付き1名指名するようにし,発表ごとに顔写 真カードを戻すようにした。  新しい発表の流れを説明するために,MTが モデルを示すようにした。また,モデルを示す 時には,「ジャカジャカ・・ジャン」と言って, 指名されることに期待感がもてるようにした。 箱の中を覗き見たり,一度引いたものを元に戻 そうとしたりする児童については,その都度, 修正を行うようにした。  3)介入Ⅱ期  くじ引きによる指名が定着した後,発表者へ の注目をさらに促すために,テレビ画面上の給 食メニューにイラストカードを貼らずに,指示 棒で指し示しながら発表するようにした。発表 方法を変更する際には,よく聞いていないと, 後で評価できないことを伝え,発表する児童に 注目することを促した。  指示棒を使って画面を指し示しながら発表す る方法を全員の児童が一人でできるようになる まで,MTがプロンプトを行い,徐々に減らし ていくようにした。また,指名された評価者の 児童が,発表内容を忘れたり,見ていなかった りして評価できない場合は,「もう一度,お願 いします」と言って,発表を再度,依頼するこ とを教えた。 7.教材・支援ツール (1)下校方法の確認  縦90cm×横60cmのホワイトボードに6名の 顔写真カードを並べ,BL期では,それぞれの 横に下校手段の写真カードをあらかじめ貼って 提示しておくようにした。介入期には,発表す る児童が下校方法の写真カードを貼るようにし た。写真カードは,ホワイトボードの下に容器 を用意し,種類ごとに分けて収納するようにし た。聞き手の児童には,2種類(スクールバス, デイサービスの車)の写真が貼られた手札を用 意し,各児の椅子の横に容器を設けて出し入れ できるようにした(Fig. 2)。 (2)給食の振り返り  テレビ画面に,あらかじめデジタルカメラで 撮影しておいた給食メニューを映し出すように した。おいしい表情を表したイラストカードを

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6枚,A4サイズのホワイトボードに並べて, テレビ台に提示した。イラストカードは,発表 する児童がテレビ画面に直接貼ることができる ように,裏面に両面テープを付けておくように した。また,イラストカードの着脱がスムーズ にできるように,両面テープの粘着力を事前に 調整しておいた。聞き手の児童にも,おいしい 表情のイラストカードが貼られた手札を用意 し,「下校方法の確認」と同様に,各児の椅子 の横に収納できるようにした。  おいしかったメニューを発表した児童には, 任意で2名の児童を評価者として指名し,感想 を尋ねるやり取りを促した。介入期には,任意 指名から,くじ引き制に移行した。くじ引き は,顔写真が貼られた手札を人数分用意し,顔 写真が見えないようにスリットの入った取り出 し口を設けた箱に入れ,箱から抜き出すことが できるようにした(Fig. 3)。 8.測定と分析方法  教室斜め前方から,聞き手の児童の様子をビ デオで撮影した。撮影したビデオを基に,2名 の教員(担任と筆者)で対象児の注視行動を記 録し分析した。注視行動は,発表行動の流れの 中で,一度でも発表する児童やテレビ画面,ホ ワイトボードを注視したと思われる場合を,注 視行動の生起とした。  下校方法の確認では,1回の授業で,6名が Fig.2 ホワイトボードと手札 Fig.3 テレビ画面とくじ引き

(7)

発表し,聞き手として役割を遂行する機会が, 自分の発表以外の5回となった。発表行動を 「①指示」「②発表」「③評価」の3つの場面に 分けて,合計15場面(5回×3場面)における 注視行動の生起率を示した。  給食の振り返りも,同様に6名が発表し,聞 き手としての役割を遂行する機会が,5回と なった。発表行動を「①指示」「②発表」「③評 価」の3つの場面に分けて,合計15場面(5回 ×3場面)における注視行動の生起率を示した。 「③評価」場面では,指名されなかった場合も, 発表する児童や,評価する児童等への注視行動 を記録した。

Ⅲ.結果

1.下校方法の確認  下校方法の確認場面における6名全員の注視 行動の生起率の平均と,C児の注視行動の生起 率をFig. 4に,3場面ごとの注視行動の生起率 をFig. 5に示す。  BL期では,全体平均とC児の間に,注視行動 の生起率の差はあるものの,減少傾向は同じで あった。3場面ごとの注視行動の生起率の比較 では,発表する児童が前に出ている間の注視行 動に差が見られた。C児は,発表する児童が前 に出て発表している間,下を向いていることが 多く,評価する場面になり,「せーの」合図を 聞いて,慌ててホワイトボードに貼られている 下校方法の写真カードや友達が上げている手札 を確認して,手札を上げる様子が観察された。  介入Ⅰ期では,15試行目から,全体平均との 差が少なくなり,同様の経過を示した。3場 面ごとの注視行動の生起率の比較では,全体 平均,C児ともに,全ての場面での生起率が上 がった。  C児においては,発表する児童が下校方法の 写真カードを選び貼っている行為への注視行動 が見られるようになり,「①指示」場面での注 視行動が増加した(37.8%)。  介入Ⅱ期では,全体平均,C児ともに,「② 発表」場面での生起率が上がった。指示棒を 使って発表する児童やホワイトボードへの注 視行動が増加した(46.3→73.9,27.9→67.3%)。 またC児は,「①指示」場面で,発表する児童 が下校方法のカードを探している様子を見て, 自分の手札を選択するといった評価の準備行動 が見られるようになった。 2.給食の振り返り  給食の振り返り場面における6名全員の注視 行動の生起率の平均とC児の注視行動の生起率 をFig.6に,3場面ごとの比較をFig. 7に示す。  BL期では,3場面ごとの注視行動の生起率 の比較では全体平均,C児ともに「①指示」「③ 評価」「②発表」の順に生起率が高くなった。 C児は,テレビ画面を見ることはあるものの, 下を向いていることが多かった。評価者として 指名される機会も少なく(15回中3回),注視 行動の生起率が減少した。指名された時は,テ レビ画面に貼られたイラストカードを確認し て,「〇がおしかったね」と手札を上げて評価 する様子が見られた。  介入Ⅰ期では,3場面ごとの注視行動の生 起率の比較で,全体平均,C児ともに「②発 表」場面において,児童がくじ引きをする様子 に関心を示し,注視行動の生起率が向上した (30→86.7,0→88.7%)。C児は,くじを引く 前の「ジャカジャカ・・ジャン」という合図に, 笑顔が見られ,関心事であることが伺えた。く じ引きの結果を見て,指名されないことが分か ると自分の手札を片付ける様子も見られた。  介入Ⅱ期では,3場面ごとの注視行動の生起 率の比較で全体平均では,介入Ⅰ期とほとんど 変化がなかったのに対して,C児は,「①指示」 場面で,指示棒でテレビ画面を示して発表する 様子に注目する様子が見られるようになり,注 視行動の生起率が増加した(55.7→76.7%)。「③ 評価」場面の注視行動は,全体平均,C児とも に減少した(52.2→50.6,45.3→36.9)。C児は, 指名された時には,自信がなさそうに,MTの 方を見ながら手札を上げる様子や,発表内容を 忘れて,「えっ」「あー」など困っている様子も 見られたが,指名されなかった時でも,「あ,

(8)

Fig.4 下校方法の確認における注視行動の生起率

9

Fig.5 3 場面ごとの注視行動の生起率(下校方法の確認) 61.1 69.3 74.3 29.2 46.3 73.9 63.9 79.2 82.2 0 20 40 60 80 100 BL期 n=72 介入Ⅰ期 n=538 介入Ⅱ期 n=552

全体平均

①指示 ②発表 ③評価 Fig.4 下校方法の確認における注視行動の生起率 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 全体平均 C児 BL 期 写真あり 既に貼られている 介入Ⅰ期 写真なし 発表者が貼る 介入Ⅱ期 写真なし 発表者が貼る 指示棒 Fig.6 給食の振り返りにおける注視行動の生起率 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 全体平均 C児 BL 期 介入Ⅰ期 くじ引き指名 イラストカードあり 介入Ⅱ期 くじ引き指名+指示棒 イラストカードなし (%) (Session) (%) 0 37.8 51.3 6.6 27.9 67.3 73.3 83.8 85.8 0 20 40 60 80 100 BL期 n=15 介入Ⅰ期 n=111 介入Ⅱ期 n=113

C児

①指示 ②発表 ③評価 (%) (%) (Session) Fig.5 3場面ごとの注視行動の生起率(下校方法の確認)

9

Fig.5 3 場面ごとの注視行動の生起率(下校方法の確認) 61.1 69.3 74.3 29.2 46.3 73.9 63.9 79.2 82.2 0 20 40 60 80 100 BL期 n=72 介入Ⅰ期 n=538 介入Ⅱ期 n=552

全体平均

①指示 ②発表 ③評価 Fig.4 下校方法の確認における注視行動の生起率 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 全体平均 C児 BL 期 写真あり 既に貼られている 介入Ⅰ期 写真なし 発表者が貼る 介入Ⅱ期 写真なし 発表者が貼る 指示棒 Fig.6 給食の振り返りにおける注視行動の生起率 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 全体平均 C児 BL 期 介入Ⅰ期 くじ引き指名 イラストカードあり 介入Ⅱ期 くじ引き指名+指示棒 イラストカードなし (%) (Session) (%) 0 37.8 51.3 6.6 27.9 67.3 73.3 83.8 85.8 0 20 40 60 80 100 BL期 n=15 介入Ⅰ期 n=111 介入Ⅱ期 n=113

C児

①指示 ②発表 ③評価 (%) (%) (Session) Fig.6 給食の振り返りにおける注視行動の生起率

9

Fig.5 3 場面ごとの注視行動の生起率(下校方法の確認) 61.1 69.3 74.3 29.2 46.3 73.9 63.9 79.2 82.2 0 20 40 60 80 100 BL期 n=72 介入Ⅰ期 n=538 介入Ⅱ期 n=552

全体平均

①指示 ②発表 ③評価 Fig.4 下校方法の確認における注視行動の生起率 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 全体平均 C児 BL 期 写真あり 既に貼られている 介入Ⅰ期 写真なし 発表者が貼る 介入Ⅱ期 写真なし 発表者が貼る 指示棒 Fig.6 給食の振り返りにおける注視行動の生起率 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 全体平均 C児 BL 期 介入Ⅰ期 くじ引き指名 イラストカードあり 介入Ⅱ期 くじ引き指名+指示棒 イラストカードなし (%) (Session) (%) 0 37.8 51.3 6.6 27.9 67.3 73.3 83.8 85.8 0 20 40 60 80 100 BL期 n=15 介入Ⅰ期 n=111 介入Ⅱ期 n=113

C児

①指示 ②発表 ③評価 (%) (%) (Session)

(9)

シチュー」とメニュー名をつぶやくなど,発表 内容に関心を示す様子が見られるようになっ た。  発表者が指示棒で示すテレビ画面に注目する のを忘れて,応答に困る様子は他の児童にも見 られた。

Ⅳ.考察

1.下校方法の確認  下校方法の確認の結果を基に,聞き手の注意 喚起を促すための発表行動への介入が,どのよ うに聞き手の児童の応答性に効果を及ぼしたか を考察する。 (1)既知条件から未知条件への変更  下校方法の確認では,発表内容が事前に提示 されている状態での発表行動(既知条件)か ら,発表者が発表内容を提示しながらの発表行 動(未知条件)へ変更した。事前に下校方法の 写真カードをホワイトボードに貼っておくので はなく,発表者がその場で貼るようにすること で,評価に必要な情報を得るために,発表者の 行為に注目する必要性が生じたと考える。発表 者が写真カードを探す行為を見て,C児が自分 の手札を選ぶといった,評価のための準備行動 が生じたことからもそのことが伺える。  しかしながら,C児において,「①指示」場 面の注視行動が他の場面より低かったのは,下 校方法が,「スクールバス」「デイサービス」の 2種類であることがほとんどで,時間経過とと もに,パターン的な記憶に頼るようになり,注 目する必要性が徐々に減少していったこと考え られる。 (2)指示棒による対象物の指示  介入Ⅱ期から,写真カードを指示棒で指示し ながら発表する方法を導入したことで,C児の 「②発表」場面での注視行動の生起率が向上し た。その理由として,指示棒を使って発表する ことにより,注目する対象が明確になり,後続 する「③評価」場面での評価行動に影響を与え たことが考えられる。また,指示棒その物と, それを使う行為がC児の興味を喚起したことも 考えられる。  指示棒を使う発表行動は,教師も授業で行っ ている方法であり,対教師と成立しているやり 取りの方法を,児童同士のやり取りに段階的に 移行させた。この指導の手続きは,教師が介在 者となった段階的な指導(網谷・武藏,2008) や,教師とのやり取りで課題遂行できていた教 材をそのまま使用すること(村中・小沼・藤原, 2009)と共通すると考えられる。 (3)聞き手の児童からの影響  「③評価」場面においてC児の注視行動の生 起率は,発表行動への介入に関わらず,各期間 に差は少なく,BL期から高い頻度で維持され た。その理由として,「せーの」の合図で「〇 ですね」と言いながら手札を上げる定型的な相 互交渉は,見通しを持ちやすく具体的操作を伴 Fig.7 3場面ごとの注視行動の生起率(給食の振り返り)

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Ⅳ.考察 1.下校方法の確認 下校方法の確認の結果を基に、聞き手の注意 喚起を促すための発表行動への介入が、どのよ うに聞き手の児童の応答性に効果を及ぼしたか を考察する。 (1)既知条件から未知条件への変更 下校方法の確認では、発表内容が事前に提示 されている状態での発表行動(既知条件)から、 発表者が発表内容を提示しながらの発表行動 (未知条件)へ変更した。事前に下校方法の写 真カードをホワイトボードに貼っておくのでは なく、発表者がその場で貼るようにすることで、 評価に必要な情報を得るために、発表者の行為 に注目する必要性が生じたと考える。発表者が 写真カードを探す行為を見て、C 児が自分の手 札を選ぶといった、評価のための準備行動が生 じたことからもそのことが伺える。 しかしながら、C 児において、「①指示」場面 の注視行動が他の場面より低かったのは、下校 方法が、「スクールバス」「デイサービス」の 2 種類であることがほとんどで、時間経過ととも に、パターン的な記憶に頼るようになり、注目 する必要性が徐々に減少していったこと考えら れる。 (2)指示棒による対象物の指示 介入Ⅱ期から、写真カードを指示棒で指示し ながら発表する方法を導入したことで、C 児の 「②発表」場面での注視行動の生起率が向上し た。その理由として、指示棒を使って発表する ことにより、注目する対象が明確になり、後続 する「③評価」場面での評価行動に影響を与え たことが考えられる。また、指示棒その物と、 それを使う行為が C 児の興味を喚起したことも 考えられる。 指示棒を使う発表行動は、教師も授業で行っ ている方法であり、対教師と成立しているやり 取りの方法を、児童同士のやり取りに段階的に 移行させた。この指導の手続きは、教師が介在 者となった段階的な指導(網谷・武藏、2008) や、教師とのやり取りで課題遂行できていた教 材をそのまま使用すること(村中・小沼・藤原、 2009)と共通すると考えられる。 (3)聞き手の児童からの影響 「③評価」場面において C 児の注視行動の生 起率は、発表行動への介入に関わらず、各期間 Fig.7 3 場面ごとの注視行動の生起率(給食の振り返り) 57.8 74.2 74.8 30 86.7 79.6 47.8 52.2 50.6 0 20 40 60 80 100 BL期 n=90 介入Ⅰ期 n=640 介入Ⅱ期 n=670

全体平均

①指示 ②発表 ③評価 33.3 55.7 76.7 0 87.7 88.3 26.7 45.3 36.9 0 20 40 60 80 100 BL期 n=15 介入Ⅰ期 n=106 介入Ⅱ期 n=103

C児

①指示 ②発表 ③評価 (%) (%)

(10)

うものであったことが挙げられる。「せーの」 の合図は,発表者ではなく聞き手の児童が発す るものであったが,C児の注意喚起のきっかけ として機能していたことが考えられる。また, 「③評価」の段階で,ホワイトボードには,下 校方法が写真カードで示されており,発表者の 行為に注目しなくても,それを参照して答える ことが可能であったことも影響していると考え る。 2.給食の振り返り  給食の振り返りの結果を基に,聞き手の注意 喚起を促すための発表行動への介入が,どのよ うに聞き手の児童の応答性に効果を及ぼしたか を考察する。 (1)評価者の指名予告  介入Ⅰ期では,評価者の児童の指名を任意か らくじ引きに変更した。くじ引きによる指名が 効果的であった理由として,まず,くじを引く 行為そのものに関心があったことが挙げられ る。くじを引く際の「ジャカジャカ・・ジャ ン」の合図を楽しみにし,友達と一緒に口ずさ む様子からもそのことが伺える。次に,くじを 引く際の「ジャカジャカ・・ジャン」の合図が, 指名の事前予告の役割を果たしていたと考えら れる。くじ引きの結果を見て,自分が当たらな いと分かると「③評価」場面を待たずに,評価 用の手札を片付けた様子があったからである。 BL期の指名方法は児童が任意で口頭で行うも のであったことと比較すると,介入Ⅰ期では, くじを引く行為が事前予告となり,聞き手の注 意喚起を促したと考えられる。  一方,「③評価」場面でのC児の注視行動は 減少した。くじ引きでは,指名者が棒付きの顔 写真カードで示されるため,誰が指名されたの かが視覚的に分かりやすくなった。そのため, 自分が評価者ではないことが分かると,発表者 に注目する必然性はなくなり,「③評価」場面 におけるC児の注視行動は減少したと考えられ る。これは全体平均も同様だった。評価は,指 名された児童が一人で行うため,自分が当たら なかった場合は,活動がなく発表者へ注目する 必要がなかったからである。このことから,指 名されなかった場合の評価活動への参加方法 (例えば,評価の後に拍手をすること等)を検 討することが課題であると考える。 (2)指示棒による対象物の指示  介入Ⅰ期までは,テレビ画面上に直接,イラ ストカードが貼られていたため,「①指示」「② 発表」場面で,発表者の行為に注目していなく ても,「③評価」場面で,テレビ画面上のイラ ストカードから発表者が何を選んだのかを判断 して,評価することができていた。それに対し て介入Ⅱ期では,指示棒でテレビ画面を指し示 しながら発表するため,「③評価」場面で,評 価をするためには,発表者が指示棒で指し示す メニューに注目する必然性が生じ,注視行動の 生起に影響を及ぼしたと考えられる。 (3)やりとりの修正  介入Ⅱ期以降のエピソードとして,C児に限 らず,発表者が指し示した物をよく見ていなく て応答に困ったり,MTの表情を見ながら手札 を上げたりする様子が見られた。このような応 答が困難な場面では,主にMTが「もう一度お 願いします」など,児童に再質問を促していた が定着はしなかった。児童同士の相互交渉を促 進させるためには,聞き手から発表者に質問や 援助を求めることや,発表者が聞き手の状況を 判断して自発的に発表し直すことなど,やり取 りを修正することが求められ,そのための指導 の手続きを検討していくことが課題であると考 える。

Ⅴ.まとめ

 本実践を通して,知的障害児の仲間相互交渉 を促進させるための発表方法の要素として,評 価者の指名予告と,発表内容に注目させるため の対象物の指示の有効性が示唆された。課題と しては,指名された評価者以外の聞き手の児童 の参加方法とやり取り場面の修正方法の指導の 手続きの検討であった。  本研究では,分析対象が1名と少なく,他児 との比較ができなかった。また,聞き手児童の

(11)

注視行動を分析対象としたため,発表行動の向 上のための指導の経過をデータとして示すこと ができなかった。 謝辞  本研究を行うに当たり,丸橋順子教諭,宮武 ちか子教諭にご協力いただいたことを感謝いた します。 付記  本研究は,平成26年度科学研究費助成事業 (奨励研究)26911004の補助を受けて実施した。 本研究の内容は,日本特殊教育学会第54回大会 (平成28年,新潟)において発表した。 文献 網谷優子・武藏博文(2008)発達障害児の集団にお ける社会的コミュニケーション環境についての 検討―「発表者」「聞き手」の役割学習の効果―. 特殊教育学研究,45(5),265-273. 井澤信三・梶永真代(2000)自閉症生徒間におけ る社会的相互交渉を促進するためのプロンプト 条件の検討.兵庫教育大学研究紀要,21(1), 123-131. 小島恵(2000)発達障害児・者における集団随伴性 による仲間同士の相互交渉促進に関する研究の 動向.特殊教育学研究,38(1),79-84. 小島恵(2001)集団随伴性による発達障害児集団内 の相互交渉に関する研究―知的障害児と自閉症 の比較から―.国立特殊教育総合研究所研究紀 要,28,1-9. 村中智彦・小沼順子・藤原義博(2009)小集団指導 における知的障害児童の課題遂行を高める先行 条件の検討―物理的環境と係活動の設定を中心 に―.特殊教育学研究,46(5),299-310. 村中智彦(2013)「学び合い,ともに伸びる」授業づ くり.明治図書出版. 涌井恵(2003)発達障害児集団における集団随伴性 による仲間相互交渉促進に関する条件分析.コ ミュニケーション障害学,20,63-73.

参照

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