「昭和
56年
1月 1日 施行 の民法一部 改正 の問題点」
(親族
,相
続法上 の今 後の問題
)田
和
俊
輔
(昭和55年5月20日受理) かね て審議 中で あった民法一部改正案 が国会 を通過 し,1981年
1月 1日 か ら施 行 され るこ とにな った。 問題 点 が少 くないの で指摘 す ることにす る。1.子
と共 同相 続 した場 合 の遺産相 続 の妻 の取 り分 につ いて2,
夫 の直系尊属 と共同相続 してい る場 合 の妻 の取 り分 につ いて3.夫
の兄弟姉妹 と共同相 続 した場合 の妻 の取 り分 につ いて4.特
別寄与者 の相続分 につ いて5,嫡
出 に あ らざる子 の相 続 分 につ い て6.妻
の代襲相 続 につ いて7.
夫婦財産共 有制 につ いて8.夫
婦 の氏 につ いて1.子
と共同相続 した場合 の遺産 相 続の妻 の取 り分 について 改正法 は従来,配
偶 者取 り分 が%,子
の取 り分 が%で
あったの をそれ ぞれ%と
した。立法 論 の根 拠 は,妻
の貢献度 か ら見 ると低 い,妻
の取 り分 が子 の半分 とい うのは低 い,と
い うこ との よ うで あ る。 しか し配偶者 とは妻 のみでは な く,妻
か ら見 て夫 も配偶 者 で ある。妻 に先立 たれた夫 の相 続 分 もまた%だ
ったの で あ るか ら妻のみの座 を軽視 していた との評 は当 らない。配偶者 (主と して妻 の 場 合)と
い う意見 もあったが,現
在,男
女 の平 均寿命 が後者 が前者 を10年 上廻 るとい うだけでは一80 田 方的 な断定はで きない。次 に母親 たる寡婦の取 り分 が子の半分であるのが不合理 であるとの論 につ いては
,子
が1人の場合のことであって,子
が複 教であるときは,た
とえ子 が2人であった として も%×
%=%ず
つであ り,子
1人の相続分が母親の倍 になることはない。 ま して子 が3人以上 にな った場合 は%×
/=%に
なる。 また人間の本性 からとい うよ り動物一般 の本能 からみて も,種
族保 存が本質であると考 えられる。人が生 まれ,成
長 し,結
婚 し,働
き,生
活の糧 を得,子
供 を産み, 子供 を育て,い
つか必ず死亡す るとい う人生 をた どる以上,子
孫の保全,発
展 のために生活財 を残 してい くとい うのが自然の形 である。子 が社会, または国家の担い手 としてのみ着 目され,社
会 の 子,国
家の子 としてしか評価 されない社会主義国家,超
国粋主義国家の場合 は別 として,自
由資本 主義国家 においては,多
少の国家的援助(1)はあるとしても,一
般的 には,直
系尊属の残 した財産 を 直系尊属 が継承 し,そ
の追産 が次の世代の生計の基礎 となるのが自然である。 そもそも相続 とい う 411念が古くローマ法の家制度 とそれに基づく家長 (Sui iuris)と 絶対的 な家長権(dominium,manus,
POtestas,Patria Potestas)の
法定相続 に始 まり,わ
が旧民法の家督相続制度は,巻
間論者の指 摘す るよ うなわが国独特の ものではな く,む
しろわが国 こそラテ ン法系の始祖法たるローマ法の最 も忠実 な伝承国 といえるのである。十二表法の規定 に依 れば家長 が死亡 したときは遺言がな くて も 法の規定 に従 って当然 に開始せ られる相続 を法定相続 とし,そ
の除,後
継者 (Sus he∝S)が
ないと きには,死
者 に最近の宗族 がこれ を相続 し,も
し宗族 がない時 には氏族 の ものがこれ を相続すべ き ことに規定 している佗)。 相続す る者の順位 は三つ に分れていて第一順位 に於て死亡者たる家長 を相 続すべ き者 は (Sui heredes)員「 ち,死
亡者た る家長の家長権 に服 していて,そ
の死亡 によって自 主権者 となるべ き者,即
ち家長の家子家女である。 これ らの者は,家
長の生存中既 にその財産 を家 長 と共 に共有 し又はその財産 に於 て期待的の権利 を有 しているばか りでな く,家
長 と共 に家の祭祀 をつかさどるのであるか ら,家
長の死亡によって先 づ これ を相続す ることは当然であって,む
しろ これ らの者の有 していた期待的 な権利が家長の死亡 によって確定的 となるものに他 な らない。 これ に加 え, これ らの者は,必
然的 に家長の死亡後 もなrD・祖先の祭希Eや家の事業た る耕作その他 を継続 せねばならないのであるか ら,そ
の意味 に於 て必然相続人 (heredes necessari)と いわねばなら ない。す なわち, これ らの者 はあえて相続 を承認せず とも当然 に相続人であると共 に,そ
の相続 を 拒絶す ることを得 ない。 第二順位 となる者は,も
し第一順位の必然相続人 がないとき,死
亡者の財産 と祭iEとは最近 の宗 族 によって相続 される。十二表法の規定は単 に最近の宗族 を規定す るのみであってその男子である か女子であるかは問わなかったが,女
子 も男子 と同様 に相続人 となり得たが,585年のボコーニア法 (lex Voconia)は場 合 によって女子が遺言 によって相 続 人 に指 定 されることを禁 じ,こ
の法律 の 解釈 によって,死
亡者の姉妹以外の女子は相続 をな し得 ない とされるよ うになった。最近 の宗族 と は死亡者の家以外の者 としてその家外相続人 (heredes extranei)であ り,か
つこれ らの者 は相続 を承認す ることによって相続人 となると共 にその相続 を拒絶す ることを得 る任意相 続 人 (hercdes「昭和56年 1月 1日 施 行の民法一部改正の問題点」 81 vOluntari)である。 第二順位者 は
,死
亡者 た る家長 に家内相続人 も宗族 もないときには,最
初 はその財産 はその属 す る氏族 に帰 したが,後
にはその氏族 の中の何人 かに帰す るよ うになった。 ただ,氏
族 に属 す る者 が 家長 と如何 なる親等 にあるかは正確 に知 ることはで きないか ら,こ
の場合 は,最
近の者 力耳日続す る とい うことは行 えなかった。 わが国の民法は1873年明治政 府 の法律 顧 問 と して来 日 したフランスのボアソナー ド(Gustave Emile BOissOnade)(1825二 1910)の指導 によって明治29年4月27日施行 され,部
分的 な改正 は, 明治34年,大
正15年,昭
和13年と行 われたが,大
綱 における改正は行 われず第二次大戦 の終 了を迎 えた。第二次大戦の敗戦 を契機 として占領軍の指示 に依 り害法改正 が行 われ,両
性の平等 と個人主 義的主由権 が民主化の名の下 に強力に推 し進 め られ昭和22年法律61号,222号
,昭
和23年法律260号 をもって,民
法第四編第五編 の全面改正 が行 われ,ま
た総則編第14条乃至18条の妻の無能力規定の 削除 が行 われた。 ちなみに妻の無能力規定 につ いては,第
二次大戦後 までフランス民法,イ タリア 民法 が財産権 について類似 の規定 をもち,現
行 わが民法760条乃至762条に定め る夫婦別産別, 日常 家事債務の連帯責任,婚
姻費用の分担,所
属不明財産の共有推定 とは全 く反対の夫の支配 に依 る財 産共有制がとられてID・り,わ
が国はこれに倣 い一応別産制はとるが夫 に依 る妻の財産 に対す る管理 共通制 がとられていたことは注 目に値す る偲)。 つ ぎに現行外国立法例 における妻の法定相続分であるが現行 ドイツ連邦共和国 (西 ドイツ)民
法 1371条(1)に依 るとは)配偶者死亡 に依 る残存配偶者の相続分は%と
され, わが国の現行相続分の%を
はるかに下廻 っていること,ま た現行 フランス民法730条偲)に依 れば,子
を主た る相続人としており, わが国の妻の相続分 が少 な過 ぎた とか妻の座 が冷遇 されていたとは至」底考 えられないのである。西 ドイツの妻の相続分 については,春
間,婦
人運動家,評
論家,
ジャーナ リス トの紹介 の中 にはかな り誤 りがあるので明示 してお きたい。 まず西 ドイツは,夫
婦別産制 をと り,婚
姻前の特有財産 が婚 姻 に依 り合一 されることはない (1368条)脩)。 但 し婚姻生活維持 の消費財 は共同使用で き (1369条), このよ うな場合,夫
婦の一方 が合理的 な理由な くこれを拒 んだ り,病
気,不
在等の理 由でその意思 を表現で きないよ うな場合 は,対
第二者 間で不測の損害 を与 えることがあるから後見裁判所 (das Vormundschaftsgericht)が 夫婦の一方 に代って他の一方 に承諾 を与 えることができるとしている171。 また日常生活消費材 も夫婦の共有 とされる憾)。 そ して夫婦の一方の死亡 に依 る婚姻解消の際,前
記 の相続分 を残存配偶者は受 けるこ とになるが,嫡
出子はもちろん,嫡
出 に非 ざる子,そ
の他,被
相 続人の血縁 につながる者 で相続権 を有す る者 に対 しては,相
続 をみ とめない場合で もそれに代 る生 活財の提供 をしなければならない。遺留分 に関 しては,た
とえ生前贈与 や違贈 がこれ らの者 に対 し て行 われていたとしても残存配偶者 が減殺 を行 い得 ることはわが民法 と同様 である191。 被相続人死 亡の際,遺
産 も遺贈 もない場合 は,婚
姻生活 に入 つたときの財産(Anfangsverm6gen)と
婚姻終 了 した時の財産 (Endvermёgen)と を比較 し,後
者 が前者 を上廻ったとき,その額 か ら債務 を引去 り,82 田 生前贈与 を受 けた分 をこれに加算 して算出す る。 一方 フランスにrDhいては
,現
行民法731条に依 れば,相
続人は,子 ,そ
の直系卑属,傍
糸親,残
存 配偶者 (法定 ならびに判決 に依 るもの)で
ある10。 現行 フランス民法 は残在配偶者の相続分 につい て極 めて注 目すべ き規定 を設けているので紹介す る。765条に依 れば子 のない被相続人 力滸日続権 のあ る親 も,兄
弟,姉
妹 もその卑属 も残 さなかったときは,残
存配偶者が全遺産 を承継 で きるが,相
続 開始時 に離婚 していたり,法
律上別居の判定 があった場合は除 かれる。766条に依 れば父方母方 いず れかの親 を残 さず,或
は兄弟,姉
妹 その卑属 も残 さなかった ときは,遺
産 の半額 を残存配偶者は受 ける。要するに直系尊属 と残存配偶者 力>目続す る場合 は,わ
が現行法 (昭和56年 1月 1日 改正迄の) の場合 と同様 であるはD。 フランス民法 766条について,残
存配偶者 が離婚 していないこと,別
居の認 定がなされていないことを要す るのは,765条
の場合 と同様である。 もし,残
存配偶者 が離婚せず, 別居の認定 も受けず,
しかも全 く遺産 を承諸 しない場 合 は,遺
産 に対 して使 用権 がみ とめ られ る (767条)。 又,子
供 がいる場合の残存配偶者の相続分 は/で
あり,被
相続人の兄弟,姉
妹,そ
の卑属, 尊属,嫡
出子 がいた場合は,残
存配偶者 の相続分は%に
なる租D。 このよ うに見て くると,フ
ランス民法の場合 も,わ
が国の現行民法の方 が妻 には るかに有利 であ り,妻
の座 の強化 とか,婦
人の解放 とかが改正の論拠 として唱道 されたことは論理性 がないといわ ねばならない。現行のわが民法は,残
存配偶者 が,被
相続人 との間の嫡出子 と相続す る場合 は%,
被相続人の直系尊属 と相続す る場合 は%,被
相続人の兄弟姉妹 と相続す る場合 は%と
されているこひ。 現在,独
仏 に比べてすでに優遇 されている妻が,改
正法で更 に優遇 され,子
と相続す る場合の相続 分%,直
系尊属 と相続す る場合%,兄
弟姉妹 と相続す る場合%と
い うのは,先
進諸国の主法例 を精 査す ることな く, タイ トルのみ を悪用 し,如
何 に もわが国の婦人,妻
の地位 が低 いかのごときF「象 を一般国民 に与 え,そ
の誤謬 を利用 してのムー ド利用,政
治的意図に基 く改正 としか受取 れないの である。 ことに妻 が被相続人の直系尊属 (それも多 くの場合は父又は母で あろ うが)と
相続す る場 合の%と
い うのは長上 に対す る自然の尊敬 と,老
齢者 に対す るいたわ りとして極 めて当 を得た もの であったことは,前
記 フランス法 に代表 されるラテ ン法系国の態度であ り,又
わが国の国民の 自然 な感情であったと思 われる。改正 に先立 っての世論調査 でも,各
%で
よいとい う大勢であったのに もかかわ らず,こ
の様 な形 で法案 が提出 されたことは,立
法起案者の真意 と良識 が どこにあったの かと疑 わざるを得 ないのである。 子 と共同相続す る場合の配偶者の相続分 について,
もう一つ見落せ ないことがある。 それは国民 年金法49条にい う寡婦年金 との関係 である。同法50条の規定 によ り,夫
が老齢年金 の被保険者 であ るとき,夫
の死亡 に依 て,夫
の受給すべ き金額の%を
終身受けることがで きることで ある。同法5 条①一号に掲げる厚生年金保険法 に定める厚生年金 を夫が受けていた場合 も同様である。同法 に依 れば,必
要受給条件 をみた した男が受給開始 を受ける年齢が現在60才であるのに対 モン,女
の場合55 才であることは,平
均寿命が女性が男性 より10年長い現在,差
別と断ぜ ざるを得ない。又,寡
婦年「昭和56年1月 1日施行の民法一部改正の問題点」 83 金なるものは
,老
齢年金,厚
生年金,共
済年金 を通 じ,夫
がその所得 か ら賦課,徴
収 された もので あることを考 えるとき,こ
れは一種 の遺産 と考 えることがで きる。夫の死亡に依て効力 を発生す る 点からいえば,一
種の遺贈 と見 ることもで きる。遺贈 と見 るならば当然903条の規定の適用 があつて しかるべ きである。すなわち,生
前,夫
が妻のために支払 って きた保険料 は生前贈与 として遺産 と 合算すべ きであ り,夫
の死亡 を条件 として妻 に終身,支
払 われるであろ う寡婦年金 は遺贈 としてホ ーマ ン式計算 に依 て算出 し合算すべ きであろ う。 この よ うな点 は看過 されて,今
回の問題 が論ぜ ら れたことは不合理である。フランス民法767条はこの点,極
めて注意深 い規定 を設 け,公
平 を図って いる。すなわち生存配偶者 は,「遺産相続 を終身年金 にかえることがで きる。」10と して い るのであ る。 この ことは,私
が,現
行民法の妻の相続分が多過 ぎるといっているのではない。現在の年金法 に依 る寡婦年金 がある限 り,そ
して前述 のよ うなフラ ンス法 に見 られるよ うな公平 な手だてが講ぜ られないのであるな らば,現
行の取 り分%が
最 も当 を得ていた と論ず るものである。2.夫
の直系尊属 と共同相続 している場合の妻の取 り分 について 次 に新法の妻の取 り分 について今一つの批判 すべ き点は,民
法877条と,752条
との関連 である。 877条は,「直系血族及び兄弟姉妹 は,互
に扶養 をす る義務 がある。」とされ,752条
は,「夫婦 は同居 し,互
に協 力 し扶助 しなけれIドならない。」 としている。 この論法 か らい くと,子
及 びその直系卑属 は,親
及 びその直系尊属 が老齢 に達 した時,こ
れ を扶養す る義務 があるわけで,わ
が国の淳風美俗 にかなった規定であると思 う。 けだ し,現
世代 にある者はすべて前世代の直系血族 があつては じめ てこの世 に生 を享 けたのであ り,自
己 を看護,養
育 して くれた者 に対 し孝養 をつ くすのは自然の情 であるか らである。 ここに前述 の ローマ法 及 び その衣鉢 を継承す るラテ ン系諸国の「家」=“
la famille"の 概念がある。共同体 としての「家」の概念は決 してわが国独特の ものではな く,又 ,戦
後, 占領軍 に依 て論難 された封建的 なものでもない。現行憲法及び皇室典範 に定める「皇室」 は, 新民法 に依 て完全 に破壊 された「家」の中で法律上残 された唯―の「家」であるといえる。旧憲法 時代の国家 を一つの家 と考 え,大
氏族 の長 としての宗家 を「皇室」 と考 えていたことが当事 の 占領 軍当局, ことに民政部 の忌避 す る所 となり,こ
のよ うな民族主義国家=強
国=超
国家主義破壊 が民 主化,個
人主義化の名の下 に「家」 が破壊 された と見 るのが実状 である。当時の 日本国政府 もまた 「家」 がわが国独 自の ものであり,世
界の法律概念 をはずれたものであるかの如 き口吻 を洩 らし, 迎合 したことは遺憾であった といわなければな らない。 この考 え方 に基 いて「家」 が廃止 された夫 婦中心の戸籍 が編成 されるよ うになったが,民
法 は,直
系血族及 び兄弟姉妹の扶養 を義務づけてい る。片方,憲
法第14条は基本権の章で平等 をうたい,親
子の関係迄 も一種の社会的身分であるかのようなとらえ方を始めている。刑法第
200条 (尊属殺
),205条
(傷害致死)② に関し
,前
者について
は尊属 た るの故 を以 て,一
般 殺 人 よ りも刑 が加重 され るこ と を,最
高裁 は最初 背定 し,つ
いで否定84 田 して い る。前者 につ いての判 決理 由は「人倫
,淳
風,美
俗 に反 す る。」 で あ り後者 につ いては,「親 子 の関係 もまた個 人的 に平等 で ある。」 とい うものであ った。 更 に傷害致死 が自己又 は配偶者 の直系 尊属 に対 して犯 された と き,一
般傷 害致死 が2年
以上 の懲 役 で あ るの に対 し,無
期 又 は3年
以上 の 懲役 で あ ることにつ いては,一
貫 して人倫 を理 由 に背定 していることは,「 家」 の概 念 に拘束 され な が ら個人 を説 かなければ な らない現代の精ネ申的 矛盾 を象徴 してい るかの よ うで ある。 妻 の取 り分 を,亡
夫 の残 された直系尊属 よ りは るか に多 くす るとい う発想 が国民大方 の抵抗 を受 けたのは この よ うな高藤 があった か らと考 え られ る。夫婦 は互 いの愛情 で結 ばれ るもので あ るこ とは憲法第
24条① をまつ迄もなく明らかであるが
は
',配
偶者は血族ではない。立法例の中には親族と
しないものもある。直系尊卑属の間は自然であれ
,法
定であれ血族である。直系血族である以上
, 877条は,扶
養 を命ず るが,配
偶者相互の間は協 力扶助関係752条である。前途 のごとく生 を授 かっ た尊属 が老齢 に達 した ときこれ を扶養す るのは当然の ことであ り法はそれ を命 じているのである。 又,子
を始め とす る直系卑属 が成人す るまでこれ を親 を始 め とす る尊属 が養育す るの も法の命ず る ところであるはOo 妻は,亡
夫の直系血族 に対 しては姻族の関係 をもつЬ この ことは,妻
と夫の親 その他の尊属 に対 す る関係 は対等 とい うことにもな り,法
も扶養義務 をみ とめていない。 この意味 からいって,妻
が 夫の直系尊属 と共同相続す る場合 の取 り分 を%か
ら%に
したことは理 に反す るといわれなければな らない。 蛇足 なが ら1人の女の人生 を考 えるとき,次
のよ うな矛盾 を感 じるのである。妻 とな り,親
とな ったとき,夫
亡人 とい う形で子の相続分の%に
食込 んだ者 が,老
齢 になった ときその子 に扶養 を義 務づけるとい う形 になるのである。遺産 には どうして も家産的 な考 え方 がつ きまとい,家
族的単位 で生活す る以上,前
世代 か ら後世代へ受継 されるのが自然である以上, それは正 しいことであるは '。 次世代への相続分は,子
の半分は不都合 と称 し,余
生の生活保障金 として取 ってお きなが ら,次
世 代 に扶養 を要求す る.と い うのは余 りにもエゴイステ ックな論法 といわざるを得 ない。 しかも子 に先 立たれた母親 こそ生活維持の資が必要であるのに今度 は,息
子の嫁 に%を
取 られるとい うのは何 と しても不合理 であ り,老
人問題 を公的福祉機関の設置増 だけで機械的 に解決 しょうとして老人の精 神的不幸 を招 き,社
会問題化 しつつ ある昨今,今
回の改正 は,逆
行す る措置 といわざるを得 ない。 老人は直系卑属 に依 る扶養 を望 んでお り,子
の立場 と しても自分 を養育 して くれた者の終 りを見届 けるのが自然の情 だか らである。 ラテ ン系諸国 に二世代,三
世代共住 の習慣 が多 く,わ
が国の法 も また1867年以来,否
,旧
幕時代 か らの伝統の強化 でもあった ものが敗戦 を機 に,英
米法系の考 え方 が強制 され,親
を顧みない子,子
を顧みない親 が当然祝 され るよ うな法改正 力耳目次 いで行 われてい ることは甚だ慨口歎に耐 えない。 俊「昭和56年 1月 1日 施 行の民法一部改正の問題点」
85
3.夫
の兄弟姉妹 と共同相続 した場合の妻の取 り分 について 現行法 が妻の取 り分%,兄
弟姉妹 の取 り分/を
改めて妻の取 り分%,兄
弟姉妹 の取 り分%に
改め た。私 は,こ
の点 には賛成である。む しろ兄弟姉妹の取 り分は零で もよかったのではないかと思 う。 けだ し,家
庭 は,社
会 における最小,最
基礎的生活単位 である。前述 した親,そ
の他 の直系尊属, 子 その他の直系卑属 の妻 に対す る相続分 に関す る見解 もすべて世代の交替 に依 る家産の維持 とい う 立場 に立 ったものである。家産の維持 とい う考 え方 がわが国独特の ものではな く,個
人の尊重 に矛 盾す るもので もな く,む
しろ民法のい う直系血族相 互の扶養義務,夫
婦の協 力,扶
助,同
居の義務 はむ しろ家産の維持 が対社会的 に迷惑 をかけないための必須義務 としているとも解釈で きるのであ る。 その意味で子 も,夫
の直系尊属 もない場合 に既 に他の単位 の家庭 を営 んでいる兄弟姉妹 に相続 させ ること自体,一
貫性 を欠 くと思 われる。或いは,個
人の平等 と均分相続の ことが反論 として挙 げ られるかもしれない。 しか し,兄
弟姉妹 の均分相続は親又は直系尊属 の死亡の時 に既 に解決 した 問題 であって,兄
弟姉妹相互の間 に迄,及
ぼすべ き問題ではないと思 われる。兄弟姉妹 の中で特 に 被相続人力>目続 させ るに適 当 と考 えた者 に対 しては遺言制度 を活用すればよい し,遺
言がなかった 場合 には特別縁 故者 (958条の三)の
扱 いをすればよいのではなかろ うか。残 された妻の相続 分は この場合,余
生 を送 るための唯―の引当金 になることを忘 れてはならない。 この場合 に,前
述 の年 金 も勿論,夫
の追志 に沿 った遺産 と解す ることに何の矛盾 も生 じない。何 はともあれ,こ
の場合の 妻の相続分 が%か
ら%に
改 め られたことは当 を得 たもの と解す る。4.特
別寄与者の相続分について 旧法 にはみ とめ られなかったものであるが,数
人の子供 の中の1人或 は,農
家,商
家の嫁 といっ たよ うに相続 人の中で家 業 に特別 に寄与 した者 に,協
議 又は審判 に依 て,他
の相 続人の相 続分 以 上 に与 えることがで きるよ うに新法 は規定 した。主た る立法理 由は婦人の地位 の向上 とい うことの よ うであるが,実
益 はむ しろ,あ
る程度の「家」の復活であろ う。立法説明 に農「家」,商
「家」, 「家」業 とい う所 に明 らかに見 られるよ うに,既
に法律上消滅 し,終
戦直後 の御用学者的意見 と, 作為的,合
目的 々に倉」られた民主的世論 なるものに依 て徹底的 に破壊 され葬 られた筈の「家」 が明 らかに顔 を出 しているのである。今一つ立法沿革上,無
視 で きないのは,第
二次大戦後新民法施行 の際,農
村 における農地の相続 について,法
務省は,民
法900条の趣 旨か ら均分相続 を主張 し,農
林 省は農地の細分化 をおそれて単独相続 を奨励 したいきさつがある。 ここに既 に「家」制度 の破壊 が, 集団産業たる農業 に打撃 を与 えているので ある。 その後,細
々と或 る程度の「家」の復活 が日昌えら れたが,そ
れは個人の基本権 を強調 し,殊
に「嫁」 とい う地位 を,世
界 に比類 なき程冷遇 された地 位 であるかの如 く唱導 して きた一部 の世論指導者の論点 とは真 っ向か ら対立す るわけであ り,今
回86 田 の改正 は
,財
産相続 に限 ってではあるが,或
る程度,長
子相続,単
独相続 を容 易 にす る意図が見 ら れるのである。前述 の二つの矛盾論点の妥協調整が今回の改正の一つの要素であることは疑 ないで あろ う。以上 は,一
種のメ リッ トと考 えられるが,改
正 を機 に,遺
産相続 をめ ぐって トラブルが発 生す るのは必至であ り「寄与」の客観的規準 が法 に うたゎれていない以上, この審判 は,民
法877条 の直系血族,兄
弟姉妹間の骨肉相食 む闘争 を如何 に処理すべ きか解決 に窮 す ると思 われる。 このデ メ リッ トが予想 される限 り,「寄与」 についての基準 は定めておかなければな らないと考 える。5.嫡
出にあ らざる子の相続分について 現在嫡出 にあらざる子の相続分は嫡出子の半分であるが10,生
まれた子 に罪はないとあって,嫡
出子 と同額 にすべ しとい う意見があったが,見
送 られた。 もっともなことと賛意 を表す る者である。 生 まれた者 に罪はないといっても,生
んだ者 に罪がないとはいえない。 わが国は現在,一
夫一婦制 をとってお りは9,婚
姻外 に生 まれた子 に対 して優遇 す ることは残 された妻 に対す る侮辱 である。 わが国の倫理感はそ うであっても,外
国の立法例 は必ず しもそ うではないといった反論,ま
たわ が国 には嫡出にあらざる子 は少 いが,欧
米先進国 には多いとかい う反論 もあるが,政
治的 な理由で 片付 け られる問題ではない。 この ことは,姦
通罪 に対す る各国の立法態度 を見 ても重大 な関係 があるのがわかる。 イギ リス法 系は不処罰,フ
ランス法系不平等処罰,
ドイツ法系の平等処罰90。 具体的 にはイギリス,ソ
ビエ ト, ポーランドは全 くの不処罰,
ドイツ刑法172条,中
華民国刑法239条,ス
イス18年案181条は男女平等 処罰,フ
ランス,イ タリア刑法は夫 の姦通 に関 しては蓄妾 としてのみ罰す る。 わが国刑法の旧姦通 罪規定 (刑法183条)が
妻の姦通のみ を罰 していたことは周知の とお りである1211。 なおフランス刑法 339条,イ タリア刑法560条が蓄妾 を処罰 していることも注 目に値す る9D。 また戦後 のわが国刑法は 前記姦通罪 を昭和22年法律124号で削除 し,男
女 いずれの姦通 も処罰 しないこと,また昭和31年5月 24日,法
律118号を以て売春防止法 が施行 (昭和32年4月 1日)さ
れ売春 が禁止 されていること (同 法3条),フ
ランスで単純売春 を罰せず,西
ドイツ,オ
ース トリヤ,オ
ランダに公娼制度 がみ とめ ら れていることなどとのかねあいを無視で きない。優生保護法14条に依 る人工妊娠 中絶 が比較的広 く み とめ られるわが国 と比べ,カ
ソリック信仰の立前 か らこれが殆 どみ とめ られない諸国 とも事情 が 異 る。要す るにわが国で嫡出 にあらざる子 が比較的少 いのは,わ
が国の性道徳 意識 が一段 と高いか らではないの も事実である。 フランス民法 には “infant nOn natural"と い う言葉 があ り,嫡
出子,非嫡出子 ともう一つ違 った概念 を表 わ している。強姦 に依 る被害
,妊
娠,出
産 とい う形 をとった場 合 がこれに該当す ると考 えられる。西 ドイツはまた旧規定や,1960年 ,1962年
案 と比べ今回の第四 次刑法改正法 による改正 では,姦
通罪 を廃止 し,姻
族 間の近親姦 を不可罰 とし,人
工授精 に関す る 規定 を設けなくなってお り99処罰の範囲はいちじるしく制限 されて きている。各国の蓄妾,公
娼,「昭和56年 1月 1日 施行 の民法一部改正 の問題点」
87
変愛,婚
外子,人
工 中絶,姦
通 に対 す る一般 人 の感覚 に大 きなへ だた りが あ り,わ
が国 において も 現 行法 下 では結 果的 に対価 を与 えた性 関係 は法的 に非難 され るが,対
価 の ない性 関係即 ち姦 通 は法 的 に非難 され ない とい う不合理 な こ とに帰着 す る。嫡 出 にあ らざる子 を嫡 出子 と同等 に扱 え とい う 主張者 の中 には,非
嫡 出子 に財産分与 した ところで,未
亡人 の取 り分 が少 な くなるわけで は ないか らよいの では ないか とい う意 見 が あった由で あ るが,金
銭 面 のみ で女性 サ イ ドに立 ったエ ゴ イズ ム 以外 の何物 で もない。運 用次第 では蓄妾のすす め と さえな りかね ないので あ り,貞
操 を守 った未 亡 人 に対 す る侮辱 と精神 的苦通 が全 く顧慮 され ない わけで,吾
人 の到底首肯 し難 い所 で あ る。 なお, 嫡 出 で ない子 には,父
又 は母 の認知 の ない子 が あ り,父
の認知 の ない子 の ことをかって私 生子 と称 した が,昭
和 17年 の改正 で この呼称 は な くなった が,母
との関係 では こ う呼 ばれ る。今 回の改正案 段 階 で嫡 出子 と同等 化 の対 象 と考 え られたの は,認
知 の あった嫡 出 にあ らざる子 (強制認知 就 籍 の 場 合 を含 めて)に
限 られた こ とを忘 れては な らない。6.妻
の 代 襲 相 続 に つ い て これ も今回の改正 で見送 られた所である。世間 にままあることであるが,嫁
した妻が,夫
に先立 たれ,姻
族関係 を終 了 させる意思 を表示 しないで (728条②)夫
の両親 (又は一方)の
面倒 を見た上, 夫の父,又
は母 が死亡 した とき,妻
に夫 との間の子 があれば別 として,姻
族 たる義父,義
母 の財産 を現行法 では相続す ることがで きない。 これは極 めて悲惨 なことであるが,相
続法 自体 が,親
等 な き親族 たる残存配偶者 が余生の生活保障費 として死亡配偶者の財産分与 を受けるとい う形 の他 は, 直系血族 から直系血族への財産 とい う形 を取 っている以上,致
し方のない所である。中国,韓
国 に おいて配偶者の姓が各別姓 であるのは,配
偶者 を他人 と見て夫の家へ入れないとい う考 え方 に由来 す るので あり,決
して同権思想の表れではなかった こと,わ
が国 においても旧幕時代終 了迄,配
偶 者 (妻)が
夫の家名 を取得す ることな く,た
だ中国,韓
国のよ うにその姓 を名乗 らなかったことと, 公郷,武
家以外の者 は氏姓 を持 たず,又
,古
くか ら承継 した氏姓 を持 っていても名乗 ることを許 さ れなかった為,国
民全部 の95%(公
郷,武
家 を合 して5%)を
占め る庶民 に別姓が意識 されなかっ たに過 ぎない。1867年以降,す
みやかに仏独法 に倣 い,こ
れ を採用 し,ロ
ーマ法 にな らった「家」 制度 を採 り続 けたわが国の場合,家
産相続の概念は今 は廃止 された家督相続の概念 と共 に生 き続 け, 配偶者の相続は,直
系尊属 か ら卑属への相続 とは全 くカテゴ リー を異 にしていると思 われる。前 に 述べたよ うに妻 を「家」の構成員 と考 えるよ うな改正 がなされた とき,こ
の問題 はスムーズな解決 がなされるのではあるまいか。但 し,現
実の反対理 由は, もっと卑近でR「物的 なもので あ り,妻
の 代襲相続 をみ とめると,後
妻 に入 り,極
めて短期 間 しか婚姻生活 を続 けなかった者 が亡夫 の死後, 亡父 の尊属の遺産 を独 占して,
しかもその後,す
ぐ再婚す るとい う場合 も考 えられ,国
民感情 に合 わないとい う意見 が大勢 を占めた為 である。結論的 には見送 られたことであるが,今
後 の解決方法88 団 としては
,立
法化することなく,遺
言 (961条)制
度 の活用 と,昭
和37年法律40号に依 て追加 された 958条の三 (特別縁故者)町
目当 と認 めるときは,家
庭裁判所 は,被
相続人 と生計 を同 じくしていた 者,被
相続人の療養看護 に努めた者 その他被相続人 と特別の縁故 があった者の請求によって」 とい う章句 を活用 して解決す るのがよいと考 える。反論 に見 られ るよ うな複雑 でデ リケー トな問題 があ ればこそ劃一的立法でな く,家
庭裁半」所の判断 に依 て解決す ることがむ しろ各 ケースに応 じた公平 な解決 がで きると信 ず る者である。 なお,今
回,新
設 された特別寄与者 の中に958条の三 の特 別縁 故者 は含 まれず,後
者は約 く迄,相
続権者の中での特別寄与者であることに注意 しなければならな い。 .7.夫
婦 財 産 共 有 制 に つ い て これも今回論議 され,見
送 られた所である。賛同 を得 られなかった理 由の最たるものは奈庭 内の 混乱 を招 くとい うにあ りもっともな論拠 と肯定す る。 しか し私 はこれについては更 に詳細 な反論 を 持つので開陳す る。 現行民法 は,夫
婦別産 制 を骨子 と し (762①),特
有財産制 を とってい る (762①)。 これは憲法 14 条 の法 の下 の平等,13条
の個 人 の尊重 の精神 を直接 には受 けた もので あ るが沿革的 には女性 の解放, 男女平 等 とい う一連 の婦人運動 の一つ と して強調 された結 果 にほ かな らない。旧法時代 の夫婦 の財 産 関係 が夫 に依 る管理共 通制 で あった ことは既 に述 べ た。 この よ うなことが男女差 別 で あ るといっ て非難 したのは女性 で あ り,女
性 の要 求 を容 れて別産制 になった もの を共有制 にせ よ とい うの は如 何 に も勝 手 な理 論 といわ ざるを得 ない。 実体 法的 に見 て も,現
行法 は事 実上,共
有制 で あ る。 す な わ ち,夫
婦 の一 方 が 日常 の家事 に関 し て第二者 と法律 行為 を した と きは,他
の一方 は, これ によって生 じた債 務 につ いて,連
帯 して その 責 に任 ず る (761条)。 また,夫
婦 の いず れ に属 す るか明 かで ない財 産 は,夫
婦 の 共 有 に属 す るものと推定される
(762条②
)。要するに,結 婚前に配偶者各自が有していた財産と婚姻中に各自の名
で得た財産 は特有財産 である力蔦 それ以外の財産 は広 く共有の推定 が働 くということである(762①)。 しかしこのことは婚姻中 に得 た財産 に当然 に配偶者の一方 が%の
持分 を有す ることを意味す るので な く,離
婚す る場合 には じめて,相
手方 に対 して財産の分与 を請求す ることがで きるにす ぎない。 分与 については当事者間の協議,協
議 が調 わなかった り,協
議 をす ることがで きないときは,家
庭 裁判所 に対 して協議 に代 わる処分 を請求す ることがで きるが (768条③),こ
の場合,家
庭裁判所 は, 当事者双方 がその協 力によって得 た財産の額 その他一切 の事情 を考慮 して,分
与 をさせ るべ きか ど うか並 びに分与の額及び方法 を定める。注意すべ きは財産分与の請求は協議上の離婚 だけでな く裁 判上の離婚の場合 も可能であることである(768,771)。 この ことは離婚原因 をつ くった者の倒 か ら 離婚の申 し立 て をす ることがで きないにもかかわらず (770),不貞行為 があ つた為め裁半」離婚 され「昭和56年1月 1日施行の民法‐部改正の問題点」
89
た妻 も,女
性 が経済的弱者 で あるとい う理 由で なお財産分与 を請 求す ることをみ とめたわけであり, 憲法 14条 ① の両性 の本 質的平等,家
族 生 活 におけ る個 人 の尊厳 と両性 の平等 (憲法 24条)に
背 馳す ると考 えざるを得 ない。現在,婦
人 の社会的進 出 と称 して,女
性 の体 質,素
質 に適 合 しない (否, 滴性 を無視 した と も考 え られ る)と
考 え られ る職 業,職
域 に迄,機
械 的悪 平等 とも考 え られ る優 遇 措 置 が講ぜ られて い る以上,不
貞 を働 いた り,夫
を悪意 で遺 葉 した よ うな形 で離 婚原 因 を作 った妻 に対 して,弱
者 扱 い にす る こ とは盗 人 に金銭 的 な扱 い にな り逆差 別 とい わ ざる を得 ない。 フ ラ ンス 民法 は,こ
の よ うな場合,財
産分与 をみ とめ な いば か りで な く,損
害 をこ うむ った夫 婦 の一 方 に損 害賠償 を命 じて い る。 以上 の よ うに現民法 は婚 姻生 活 が継 続 す る限 り,財
産 共有制,破
綻 した と きに,家
庭 裁判所 の客 観的判 断 に依 り,妻
の貢献度,分
与 に値 す る客 観的条件 を判 定 す るわけで,
きわめ て理 にか なった 法制 と考 える。貢 献度 も,分
与 に値 す る客観 的 条件 も無視 して一律 に機 械 的 に半分 とい うの は余 り に も不 貞の妻 を優遇 し男性 を差 別 した ことにな るか らで あ る。今回,762条 ①の「婚姻中自己の名で得た財産は,そ の特有財産とする」という規定を改めて「婚
姻中に得た財産は夫婦の共有とする」と改めようとする空気が一部婦人層に強かつたことは前述の
とお りで あ るが,夫
婦 間 の静 酷 を乱 す とい う理 由で否定 された こ とは誠 に尤 もで あ り,喜
び に耐 え ない。諸外国 の法 令 を見 て も合 衆 国 の場 合 を除 いて この よ うな乱 暴 な発 想 は例 を見 ないので ある (西 ドイツ,フ
ラ ンス,オ
ー ス トリア,イ タ リア民法等)。 も し762条 ① の条文 が主唱者 の主張 どお りに改正 された と した場 合 を想定 して第二 の婦 人層 か らの反対 意見 は次 のとお りである。「夫婦 の い ず れ も,各
自,俸
給 を他 の一 方 の承 認 が なければ受取 れ な くな るの は不便 で あ る。」「婦 人 の社会的 進 出 が盛 ん にな るにつ れ,妻
の俸 給 が夫 の俸 給 よ り高額 になった場合,プ
ー ル され るのは不味 い」 とい った意見 で ある。 これでは全 く妻 は 自分 の生活保障 させ る部 分 は夫 の収入 を食 いつぶす が,自
分 の収 入 は家計 に充 てず,自
分 だ け が使 用 した り,そ
れ が当然 だ とい う論法 にな り,全
く沙汰 の限 りで あ る。発 想根拠 の一 と して,夫
が30万 円の収入 があるとす れば妻 の15万 円分 の貢 献 が あるか ら 30万 円の収入 が得 られ るの で あ り,夫
が50万 円の収 入 があ るとす れば妻 の25万 円分 の貢 献 があると した者 があ るが, も しそ うで あ るな らば,独
身 を通 すサ ラ リーマ ンの収 入 は ど うして あ り得 るの か とい える。 また,妻
の家事労THllを金銭的 に換算 す れば 月額8万
円 に相 当 す る とい う目的 的数 字 を案 出 した者 もあ つた。 して見 る と8万
円の俸 給 で生 活 して い るサ ラ リーマ ン (夫)は
全 く働 きが ない こ とになる。 また,一
般 に夫 は,外
で俸給 とい う生活 の糧 を得,家
庭 に持 ち帰 り,家
族 に衣 食住 を 与 え,子
供 の教育 費 をまか な うが,職
場 で依 然,食
費 を支 払 わなければならない。家庭 に あ る妻 に, 前述 の論法 で俸 給 を支 払 うとす れば,当
然,夫
は妻 か ら食費,被
服 費,家
賃 の半額 を徴 収 しなけれ ば論理 の一貫性 を欠 く。 この場合,差
引勘 定 をす ればマ イナスの出 るこ とは当然 で あ る。 それ故 に こそ,わ
が民法 768条 の財産分与 の請 求規定 があるのである。大部分 ヨー ロ ッパ 諸国 が離婚 の際 の夫 婦 財産 関係 の清算,調
整規 定 を持 って い るの は その ためで あ る9む 。 しか も財産 分与 につ いては裁半J90 田 所 の合理的
,客
観的判断 を求 め るの が一般 で ある。夫婦 は本来,両
性 の合意 す なわ ち愛情 によって 結 ば れ る もの で あ る。 それ故 にこそ,相
互 の協 力 によ り,維
持 され なければ な らず (憲法 24条①), また それ故 にこそ相 互 に協 力扶助 の義務 が あるので あ り (民法 752条),そ
の資産,収
入 その他一切 の事情 を考慮 して,婚
姻 か ら生 ず る費用 を分担 し,夫
婦 の一 方 が 日常 の家事 に関 して第二者 と法律 行為 を した ときは,他
の一方 は, これ によって生 じた債務 につ いて,連
帯 して その責 に任 じ (民法 761条),夫
婦 のいずれに属 す るか明 かでない財産 は共有 に属 す るもの と推 定 されるのである (762②)。 一部婦人層 の主張 したよ うな考 え方 は,夫
婦 の愛情 関係及 び それ に基 く協 力扶助 関係 を破 壊 し,夫
婦 をそれ ぞれ一個 の男女関係 に違 元す る効果 しか持 た ないよ うにす るだけで あ る。夫婦 が単 なる一 個 の男女 で あ り,単
に乱 交 を避 け,無
制限 の性 交のみ を社会的 にみ とめ られた一つ の屋根 の下 に生 活 す る個 に過 ぎない とい う結 果 になれ ば それは,家
の破壊 か ら,親
子 の破 壊,夫
婦 の破 壊 とい う, 本 能 のみ に従 い,没
人格,無
感覚,受
情 欠如 の姿以 外何物 も残 らない結 果 にな るで あろ う。8,夫
婦 の 氏 に つ い て 今回 の改正 では全 く問題 に され なか った が,婦
人層 の一部 に夫婦 が別姓 を称 す ることがで きるよ うにせ よ とい う意 見 が あ る。現行法 が夫婦 が夫 または妻の姓 を称す るこ とに してい るの が男女同権 の上 か ら不合理 だ とい うので あ る。 また一部 の学者 の意見 と して民法上 の 「家」 が消 滅 した今 日, 氏 は既 に「家」 を表 す名称 では な く,単
に個 人 を示 す名称 に過 ぎないの だか ら,夫
婦 が同一 の氏 を 称 す る必要 はない。同一 の氏 を強制 す るのは家制度 の精神 的名残 りで あ るとい う者 もある。 な る程 そ うか も しれないが,謬
見 がない とい えない。先 づ夫婦 の氏 は,婚
姻 の際 に定 め るところ に従 い, 夫 又 は妻 の氏 を称 す る (民750)と していることは,婚
姻 の時期 に任意 にいずれかを自由選択 で きるの で あ り,現
行 チエ ロス ロバ キ ヤ民法 と同様 で ある。要 す るにそこに国家 又 は第二者 の強制 に依 り夫 の姓 を夫婦 の姓 とせ よ といってはい ないので あ る。第二の姓 を名乗 ることは,直
系尊 卑属 間 の関係 が一般社会 か ら見 て不明確 にな り,相
続,結
婚,不
法 行為 の場 合 の親 の監督責任 の追 求等 の場 合 に 不測 の損害 を与 えることにな り到底 不可能 で ある。連 姓 につ いて もわが国の文字 がアルフ アベ ッ ト で ない以上,人
の同一性 を表 わす とい う現行戸籍法 の趣 旨 には適 合 しない。現 在,中
国,耳 ヒ鮮,韓
国 が夫婦別 姓 で あ る根 拠 につ いては既 に述 べ た が,わ
が国の民法 の母法,フ
ラ ンス,
ドイツ民法 の 態度 を見 る と,
ドイツ民法 は1355条 において夫婦 は共通 の姓 を名乗 る。夫婦 は婚姻 に際 し申 し立 に 依 り夫 又 は妻 の氏 を称 す ることがで きると してい る。 この点,わ
が国 の現行 法 と同 じで あ るが,最
近迄
,同
条 は,「 妻 は夫 の氏 を称す るもの とす る」 ― ミDie Frau erhilt den Familiennamen dざ sMannes.″ と して お り
,度
々,改
正 の要 求 があったが国会 で否定 され,最
近,上
記 の よ うに改 め られ た もので ある。 す なわ ち,`
Zum Ehemann k6nnen die Ehegatten bei der Eheschlic8ung
durch Erklarung gegenilber dem Standesbeamten den Geburtsnamen des Mannes oder den
「昭和56年1月 1日 施行の民法一部改正の問題点」 91
Geburtsnamen der Frau bestimmen.″ となった。 しか し注 目すべ きは同条 第
2項
後段 で あ つて,夫婦 が別段 の意思表示 を しない と きは
,夫
の氏 が夫婦 の姓 と され,夫
の氏 とは,婚
約 中 または,婚
姻時 におけ る夫 の姓 で あ ると明記 してい ることで あ る一
Treffen sic kehe Bestimmung,so ist
Ehename der Geburtsname des Mannes, Geburtsname ist der Name, der in der
Geburtskunde der Ver10bten zur Zeit der EhescHieBung einzutragen ist.ま た同条(研頂 に
依 れば
,自
分 の氏 を夫婦 の姓 と しない夫 は戸籍吏 に申立 ることに依 て夫婦 の姓 の前 に自分 の氏 又 は 婚 姻 の際 に名乗 っていた姓 を付加 す ることがで きるが,こ
の為 には公の許可 が必要 で あ る。 また(4) 項 に依 れば,妻
に死別 した り離婚 した夫 は,前
項 の場 合,夫
婦 の姓 を保持 し,戸
籍吏 に申立 れば, 旧姓 す なわ ち,元
の氏又 は婚姻 の際,名
乗 って いた姓 に復 す ることがで きる。 この場 合 も公 の許可 が必要 で ある99。 この よ うな考 え方 の根拠 には,夫
婦 は社会的最小 の単位 で あ り,連
帯 して対社会的責任 を負 わね ば な らない。夫婦 が別 々の姓 を名乗 るよ うになれば,外
面的 には真実 の夫婦 で あるか,内
縁 の妻 か, 単 な る同楼者 で あ るか,全
く無縁 の者 で あ るか区別 がつ かない ことにな る し,子
の姓 は ど うな るか とい う問題 も生 ず る。第二者 か ら見 て夫婦 で あ るこ とを確 認 又 は推認 で きれば,善
意 の第二者 が法 津上 不測 の損害 を蒙 ることがないか らとい うにある と思 われ る。つ ぎの よ うな所説 が あ るか ら紹介 す る。 “夫 の家名 (Familienname)使 用 は妻 の権利 で あ リー方 に義務 た るもの と解 せ られ る を通常 とす る。婚姻 に囚 る共同生活関係 の当然 の結 果 と云 うべ く,併
し氏名使 用 は他方 に絶対権 た る性 質 を有 するものとして一般 人 の濫用 に紺 し之 を禁止 す る作用 を持 つ。貴族 の裕号 (Adelsbezeichnung) は現 行 法 の下 に尚氏名 の一 部 で あ るので あ るか ら同 じく妻 が之 を使 用 し得 べ く,女
性 的 な貴 族 名 (例へ ばGrafn―)が
用 ひ られてゐ る(RGZ.Bd.■
3S.107)。 (旧)1355条
は別 に妻 が従来 有 し た りし自己の家名 を何等 の附 言 な くして夫 の氏名 の傍 に使 用 す ることを禁ず るもので ないけれ ども(DOppelname),共
同 生 活 事 務 に対 す る夫 の決定権 は或 る場 合夫 の権利 濫用 とな らざる限 り,妻
の 前家名使 用 を禁止 し得 るもの と解せ らる ゝを当然 とす る。 尚妻 は婚姻 の解消後 も夫 の家名 を使 用 し 得 ることは勿論 で ある"'0。 “(旧)1355条
は夫婦 を不平等 に取 扱 うものである (Neuffer StAZ 53, 209)。 婚 姻 の締 結 とともに生 ず る夫 の氏 の称用 によ り妻 に人格権 の喪 失 を招来 することは疑 ないが, 夫 婦 が共通 の氏 を称 す ることは従来 の慣 習,伝
統 な るのみ な らず,婚
姻 関係 を外部 に表 現 す る もの で あ る。 それ故 に,基
本 法 第3条第2項
の形式的実現 は不可能 で あ るが,常
に同条 の根 本原理 が考 慮 に入 れ らるべ きで あろ う。旧内閣草案(l Art.3)は
,従
来 の原則 を踏襲 して,原
則 と して妻 は 夫 の氏 を称 す るが,戸
籍吏 に対 す る意思表示 によっ て 自己の幼女名(Mddchenname)を
附加 す る権 利 を有す るもの とす る。"9う しか し,現
行 法 は先 に述 べ たよ うに,夫
婦共 通姓,但
し,何
れの姓 の選 択 も自由 となった こ とは男女 同権 と夫婦 の連帯責任表 象 の二 つの要 求 を充 し,
しか も夫 が妻 の姓 を 名 乗 る と きは,自
分 の 旧姓 を家姓 の前 に付 置 す る こ と をみ とめた こ とは,男
姓 の改名嫌悪 の感情 も 配慮 した ことにな り,わ
が国 のよ うな漢字名 の場 合 には適 用 し難 いが,合
理 的妥協的 解決 で あ ると92 田 和 思 う。又
,夫
婦 いず れの姓 も選 択 で きることになった ことは,わ
が国 が旧入婿縁組,婿
養子 縁組 の 伝 統 か らG.H.Qの
婿養 子廃 止指 示,家
制度廃 止 指示後 の新法 下 において,実
情 と調和 の為 め,実
娘 しか持 たぬ親 が先 ず他人 の男子 を養子 に とり,
しか る後 に,実
娘 と結婚 させ る方式 をとる上 で考 え 出 された現行法 が逆 に西 ドイツの法律 にあ らわ された よ うで興味ぶ かい もの がある。 又 フ ラ ンス民法 の態度 で あるが,疑
義 を生 じて,か
って文部 省在外研 究員 と して西 ドイツ滞在 中 パ リ控訴院 を公式訪問 し面識 を得,現
在パ リ破 毀院 判 事 で あ るクレール ーフ ァルデル (Dro Clair.Fardel)法
博 に紹介 した結 果 (1976年 3月 18日)を
照会 す ると, 1.原
則 と して夫 婦 は夫 の氏 を名 乗 る。但 し妻 が職 業 を持 ってい る場合,夫
婦連 姓 を用 い ることがある。妻 が弁護士 や女医 や実業家 な どが これ に該当す る。2.夫
は妻 の氏 を名乗 らない。3.離
婚 に際 して は妻 は旧姓 に復 す る。但 し,最
近 の判例 は夫 の姓 を保持 す ることを認 めてい る。例 えば,妻
が夫 の姓 で仕事 を し,そ
れ が著 名 で あ るとか,結
婚 で も うけた子 がお り,母
の姓 を名乗 ることに依 て,社
会 か ら異 常視 され るよ うな場合 で ある90。
1.En principe la femme mよ
rio porte le nom de sOn mari.Cependant,surtout lorsqu' elle exerce une profession il lui arrive d'utiliser a la fois le nOm de sOn mari et le sien i c'est ce quc font les femmes avocats, mOdecins, cOnlmer,ants, CtC, ………
2. Lc mari n' use pas du nOm de sa fenlme. 3. En cas de divOrce la fename reprend son nom de ieune fille. Cependant, depuis une loi tOute recente les 」
uges peuvent
l'autOriser a conserver le nom du mari ; ill's le ferOnt Lorsque la Femme exer,ant une prttfessiOn est connue sous le nOm du mari, ou encore 10rsq'il y a des enfants du mariagepour que ceux ci portent le mOme nOm que leur mere pour que ceux ci portent le mOme
nom que leur mOt・ e, ce qui Ovite d'attirer l'attentiOn du public sur les difficult6s qui se sont OlevOes dans la famille.
以上
,要
す るにフ ラ ンス,
ドイ ツ法共,夫
婦 は同一 姓 を名乗 り,別
姓 をみ とめて お らず,そ
の根 拠 は対社会的連帯責任 の明確化 で あ り,わ
が国の民法 の夫婦 の同居協 力,扶
養 の義務,
日常家事 に おけ る連帯 責任,夫
婦 の特 有財産 以外 の財産 に該当す るもの に対 す る共有 の推定規定 な どの精ネ申に きわめて合致 す るもので あ り,
ま して,い
ず れの姓 の選択 もみ とめてい るので あるか ら,何
等,女
性 を差 別 した もの とい うには当 らない と考 える。 そ して この よ うな観点 に立 つ と,離
婚 に際 し,妻
が旧姓 に復 す る規定 を一部 婦人層 の意見 で改 めた ことも批半」の余地 があ るので ある。す なわ ち昭和 51年 法律 66号 に依 り,「 婚姻 によって氏 を改 めた夫又 は妻 は,協
議 上 の離 婚 によって婚姻前 の氏 に復 す る」 旨の民法 767条 の規定 に新 た第二項 が追加 され,「 前項 の規定 によって婚姻前 の氏 に復 した夫 又 は妻 は,離
婚 の 日か ら3箇
月以 内 に戸籍法 の定 め る ところによ り届 け出 るこ とによって,離
婚 の 際 に称 していた氏 を称す ることができる。」 と した。全 く女性 の恣意 を尊重 した規定 とい うほほ かは ない。 けだ し,離
婚 は夫 婦共 同体 の破壊 で あ り,結
婚 生 活 の破 綻 で あ る。協議離婚 は,妻
の納 得 又 は妻 か らの 申 し出 に依 て成立 した以上,自
ら同居,協
力扶助 の権利義務 を放棄 した者 で あ る。 しか 俊「昭和56年1月 1日施行の民法一部改正の問題点」
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も一方 には,前
述 の よ うに婚姻 に依 り旧姓 を失 うことが没人格 故,別
姓 を認 め よと主張 してい るの で あ る。連帯関係 を自 ら放 棄 した者 が,嫌
って別 れた夫 の姓 を名乗 らせ よ とい うのは余 りにも身勝 手 で あ る。 その名 に於 て著名 で あった か らとい うの も根拠薄 弱 で あ る。 な らば それ故 にこそ,離
婚 の理 由 を明 らかに して本来 の姓 で 自立 す れば良 いので ある。 自 ら捨 てた形骸 を利用 だけ しよ うとい うの は余 りに も身勝 手 す ぎると云 わ ざるを得 ない。注 目すべ きは この規定 が裁半」上 の離婚 に も準用 され てい るこ とで ある (民771条)。 このことは不 貞 を働 いて離婚 された妻,夫
を悪意 で遺 棄 した妻, 婚姻 を継 続 し難 い重 大 な理 由,た
とえば夫 の直系尊属 を虐待 したよ うな理 由で離婚 された よ うな妻 も公 然 と,離
婚 中 の夫 の姓 が名 乗 れ るの で あ る。767条 の条 文 に依 る限 り,離
婚 した夫 の意思 は全 く問題 に されず,そ
の意思 に反 して もよ く,又
, これ につ いての裁半」所 の審判 を経 るこ ともな く文 字 どお リー方 的 に妻 は旧夫 の姓 を名 乗 れ るの で あ る。以 ての外 とい わねば な らない。 前述 フ ラ ンス 民法 が,離
婚 した妻 は旧姓 に復 す るもの と し,裁
半」で それ相 当の客観 的理 由 があると きに限 り,旧
夫 の姓 を保持 す ることを認 めてい るの は公平 に合致す ると思 う。 旧 ドイツ民法 時代 の (ミュ ンヘ ン) 控訴院判例 に「 妻 の墓石 に其 の第一 の夫 の家名 のみ が刻 まれた場 合 に於 て夫 の権利 の侵 害 あ り」 とした もの がある
(OLGo Munchen,in」
W.1923S,132)y9
傾聴 すべ き法理 論 と考 え る。注 (1光 憲法25条②:「国は,す べての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努め なければならない。」,憲法96条②:「すべて国民は,法律の定めるところにより,その保護する子女に普通 教育 を受 け させ る義務 を負 う。義務教育 は,これ を無償 とす る。」憲法25条① 「すべて国民は,健康 で文化的 な最低限度の生 活 を営 む権 利 を有す る。」,生活保 護法1条 :「この法律 は, 日本国憲法第25条に規定す る理 念 に基 き,国が生活 に困窮 す るすべ ての国民 に対 し,その困窮の程度 に応 じ,必要 な保護 を行 い,その最低 限度の生活 を保障す るとともに,その 自立 を助長す ることを目的 とす る。」同法2条 :「すべ て国民 は, この 法律 の定 め る要件 を満 たす限 り,この法律 による保護 を,無差別平等 に受 け ることがで きる。」 イタリア憲法38条①:「労働の能力を持たず,生 活に必要な手段を奪われたすべての市民は,社 会的な扶養 と援助 を受ける権利 を有す る。」
1
②:「労働者は,事 故,病 気,労働不能及び老年,その意に反する失業の場合において,彼 らの生活の必要に 応 ずべ き手段 が定 め られ,保障 され る権利 を有す る。」 ③ :「労働能力の ない者及 び傷害 を受 けた者 は,教育及び職 業指導 を受 ける権利 を有す る。」 ④ :「本条の定 め る任務 は,国によ り設 け られ,又は支持 された機関及 び施設 が行 な う。」 ⑤:「私的な生活保護は,自由である。」 ワイマール憲法151条① :「経済生活の秩序 は,すべ ての人 に対 して人間た るに値す る生活 を保障す ることを 要す る。個人の経済上 の 自由は この限界内 にないて確保 されるべ きで ある。」 161条 :「健康及 び労働能 力 を維持 し,産婦 を保護 し,並びに年齢,病弱及 び生活の変化 に基 づ く経済上 の結 果 を防護す るために, ドイツ国は,被保 険 者 の適 切 な協 力の下 に包括的保障制度 を設 ける。」 フランス第4 共和国憲法前文①:「国は,すべての人,特に児童,母親及び年老いた労働者に対し,健康の保護,物質的 安定,休息及び余暇を保障する。すべて人は,その年齢,肉 体的又は精神的状態,経済的事情のために労働 不能の状態 にあるときは,適当 な生活の手段 を共同体 か ら取得す る権利 を有す る。」12:「国は,国家的 災厄 か ら生ず る負担 に対 す るすでての フランス人の連帯 と平等 とを宣言す る。」 ソ連憲法 ■条:「ソ連邦の経済生94 田 活は,社会の富の増大,勤労者の物質的及び文化的水準の不断の向上,ソ 連邦の独立の強化,及びその防衛 能力の増強のために,国家の国民経 済計画 によって規定 され,又指導 される。」120①:「ソ連邦の市民は, 老齢並びに疾病及び労働能力喪失の場合に,物質的保障 を受ける権利 を持つ。」120②「 この権利 は,国家 の負担による労働者及び事務職員の社会的保障の広範な発展,勤労者に対する無料医療の提供,勤労者の利 用に供せられる広く行きわたった保養地の供与,によって保障される。」,ユ ーゴ憲法36条⑦:「一時的失業 の間 に物 質的保護 を受 ける権利 は,法律 の定 め る条件 の下で保障 される。③ 「社会共同体 は,十分 に労働 で きない市民 に適 当 な職 業のための条 件のほか,その能力 を改 善す るための条 件 をつ くり出す。」⑩「社会共 同体 は,労働 で きない市民及 び生 計 の手段 を有 しない市民 に援助 を与 える。
J①
「労 働 で きるにもかかわら ず,働こうと しない人 はすべて,労働 に基 づいて人間 が享受す る権利及 び社会的保護 を享受す ることはで き ない。」38条① 「1目互扶助及 び連 帯 の原則 に従 って,労働者は,連邦 法の定め る均 ―の社 会保障制度内で被 保険者 となる。J②
「義務的社会保障 に基づいて,労働 者は,保健 及 びその他,病気,労働能 力の減退 又は 衷失,及び老年に備える権TUを与えられる。」56条①「すべて市民は,健康を保護される権利を有する。J57
条①「社会共同体 は,母親及 び子供 に対 して,特別の保護 を与 える。」 (2光 船田享二:羅,弱法,刀江書院,昭和5年 4月 5日,p.202,pp 524-525, (3た 旧民法68条 :「婦ハ夫 ノ許 可 ヲ得 ルニ非サ レハ贈 与 ヲ為 シ之 ヲ受 諾 シ不動 産 ヲ譲渡 シ之 ヲ担保 二供 シ借財 ヲ 為 シ債権 ブ譲渡 シ之 ヲ質入 シ元本 ヲ領収 シ保証 ヲ約 シ及 ヒ身体 二瑞絆 ヲ受 クル約束 ヲ為 スコ トヲ得 ス又和解 ヲ為シ仲裁ヲ受ケ及ヒ訴訟ヲ起スコトヲ得スJ72条①:「夫ノ許可を得スンテ婦ノ為ンタル行為ハ之ヲ鎖除 ス ル ヨ トヲ得」Dr. Erich Ambrock, VOrsitzender Richter am Landgericht Berlin, ``Ehe und Ehescheidung,,, Walter de Gruyter, Berhn New York, 1977, S 77
COde Civil, SOIXANTE―
SEIZIEME EDITION, JURISPRUDENCE GENERALE DALLOZ ll, Rue
SOuff10t-75240 PARIS CEDEX 05, 1976∼ 1977, p 382
op― cit,, “Ehe und Ehescheidung,, S,77.
op―cit, “Ehe und Ehescheidung,, S,76.
op―cit.,“Ehe und Ehescheidung,,S77,こ の点 と1368条についてはわが現行民法760条,761条 ,762条
② が極めて類似 した規定 を設けている。760条 :「夫婦は,そ の資産,収入その他一切の事情 を考慮 して,婚 姻から生ずる費用を分担する。」,761条 :「夫婦の一方が日常の家事に関 して窮三者 と法律行為 をしたときは , 他の一方は, これによって生 じた債務について,連帯 してその責に任ずる。但 し,第二者に対 し責 に任 じな い旨を予告 した場合は,この限 りでない。」,762条 ②:「夫婦のいずれに属するか明かでない財産は,そ の共 石 に属 す るもの と推定す る。J
(9) op―cit “Ehe und Ehescheidung" S 77
(llll. op―cit. “COde Civil,, p.383.
住り.民法900条② :「配偶者及 び直系尊属 力淋目続人であるときは,配偶者の相続分及 び直系尊属 の相続分 は,各々
三分の一 とす る。」
(121す op―cit '`Code Civil,, P,392.
10.民法900条。
(10. op― cit. “Code Civil,, p.392.
10.憲法24条①:「婚姻は,両性 の合 意のみ に基 いて成 立 し,夫婦が同 等の権不1を有す ることを基本 と して,相 互の協 力によ り,維持 されなければ な らない。Jなる民 法742条 :「人違 その他 の事 由 によって当事 者間 に婚 姻 をす る意 思 がないとき。」は婚 姻 は無 効 とされ,民法752条 :「夫 婦は同居 し,互に協 力 し扶助 しなければ ならない。」 住0.民法818条,819条 ,820∼824条,834条 ,なお766条。 tり.ソ ビエ ト連邦で さえ一定金額迄 の個 人の遺産相続 をみ とめている。 10.民法900条四号。 19.民法732条 :昭己偶者の ある者は,重ねて婚姻す ることがで きない。J,刑法184条 :昭こ偶者 アル者重 ネテ婚姻 ヲ為 シタル トキハ2年以下の懲役 二処 ス其相婚 シタル者亦同 シ。」 (5). (6) (7). (8).
「昭和56年1月 1日 施行の民法一部改正の問題点」
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90.瀧川幸辰編:「刑事法学辞典J,増補版,有斐閣,昭和43年12月 1日 再版第六刷,p122.
91光 木村亀二:「刑法各論」,法文社,昭和32年3月20日復刊初刷,p.213
9D.前出「刑法各論」,p.213.
90
団藤重光,平川京信:「刑法各論J(新版),(法律学全集41),有斐閣,P220.9ゆ 西 ドイツ民法1371条,op一Cit “Ehe und Ehescheidung,,s,77, フランス民法253条,op―Cit DALLOZ,
CODE CIVIL, p 150, フランス民法58条, 68条-73条, MARCEL BRAZIER:``Ie nouveau droit du divorce" , Editions, apil Pour les Avocats, Versailles, 1966, pp 690--692
951. op― cit, “Ehe und Ehescheidung,, S,31,
90
田島 順,近藤英吉,補追 福地陽子:「現代外国法叢書 獨逸民法 〔Ⅳ〕親族法」有斐 閣,昭和30年 8月30日 (復刊版)初版第一刷発行
,p80
9り 前出,「現代外国法叢書 鴇逸民法 〔Ⅳ〕新族法」p496.
¢0.なおフランス民法264条 op―
Cit``DALLOZ CODE CIVIL,,p153
フランス民法 が「妻は大 の姓 を名乗ることがで きる」 とい う表現 が されていることは,夫婦別姓 をみ とめた り,妻が夫の姓 を名乗 らな くて もよ
いと解釈 してはな らない。フランス法の表現 で「で きるJと いっているのは,「な されば な らない」 とい う意
味 で,誤解 があってはな らない。
99,前出,「現代外国法叢書 獨逸民法 〔Ⅳ〕親族法」p.80,
Zur Revision des Zivilrechts auszufuhren am I 」an., 1981 l Uber das Erbteil der Frau am Erbfolge
lch widersetze mich darauF, daPJ das Erbteil der d卜 erlebenden Frau, die mit delil Abk6mmling Erbin wird, von 1/3 zu 1/2 grё Ber wird
Denn, ,venn die Aヽkёnlmlinge Plural sind, ist das Erbteil des Abk6mmlings nicht grbBer als
das Erbteil der lutter, und es ist naturlich, dall das Vorfahren der Nachkonamenschaft das Erbe nachlassen will Und denn es ist auch tatslchlich,da8 der Abk6mmling seine Frau(oder seinen Vater)durch das Gesetz unterhalten mu8, und um seine Frau oder seinen Vater zu unterhalten, mu8 er das zustandige Verm6gen bediirfen, und auch die dberlebende Frau kann die
H■lfte der 」ahresrente im exklusive ganzen Leben bekonamen, deren Grundlage ihr Gatte zahite. 2.Uber das Erbteil der Frau,die mit ihrem Gattens Vater oder Mutter Erbin wird
Das Erbteil wird vOn 1/2 zu 2/3 gr68er. Von demselben Grund und der aHgemeinen
Sittlichkeit, da8 die Nachkonamenschaft das VOrfahren verehrt, ist es unnaturlich. 3 Uber das Erbteil der Frau, die mit ihrem Gattens Brllder Oder Schwestern
Das Erdteil wird vOn 2/3 zu 3/4 gr68er Das ist fdr mich affirmativ, weil das Erbteil der Frau in dieseIII Fall den Charakter als einzige Lebenshaltungskosten hat, und weil Gattens Bruder Oder Schwestern sein oder ihr Erbteil von ihrem ヽrater oder ihrer Mutter erhielten 4. Uber das Erbteil des unlegitimen Kindes
Der Entwurf, da8 das Erbteil des unlegitimen Kindes mit dem Erヽ teil des legitimem Kindes
gleich ist, 、vurde durch 6ffentliche 卜Ieinungen geleugnet,