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ヒシ属の継続栽培試験に見られる変異 4-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香川生物(KagawaSeibutsu)(38):1−4,2009

ヒシ属の継続栽培試験に見られる変異 4

久 米

修 〒76卜8074 高松市太田上町78−11

T[cpanutsvariationcultivatedfbrgenerations4

OsamllKume,7β−ノノ,00Jαぬ朋′椚αC揖7七んα〝7d加7∂ノーβ07尋,ノ呼)α〃. は じ め に 筆者は,ヒシ属打呼α果実の変異の遺伝性 を確認するため,数系統のヒシ属について世 代を継続して栽培してきた。筆者が栽培した ヒシ属は,大型無刺,大型2刺,大型4刺, 中型2刺,中型4刺,小型4刺であるが,そ の結果の一部として大型無刺,大型2刺,大 型4刺,中型2刺,中型4刺,小型4刺につ いては先に報告した(久米,2006・2007・ 2008)。今回は,大型2刺と大型4刺として栽 培した2系統について報告する。 試験の方法 栽培試験に使用したヒシ属の親果実と栽培 の方法,果実の計測部位と計測方法は,久米 (2006)に示した通りである。今回報告する ヒシ属の産地は,2系統共に 香川県高松市檀紙町「半田池(別名:大池)」 で採集したものである。 果実形態の各部位の名称は,既報(久米, 2006)の通り,基本的には三木(1953)及び 角野(1987)に従った。下位突起について は,刺針の先端部に逆刺のつくものを下刺と し,つかない突起を擬角(Nakano,1964)と した。 栽培試験の結果 今回報告するものは,2003年8月31日に原産 地の溜め池でそれぞれ1茎ずつを採集し,系 統番号TllとT12として栽培した。この年に 図1.継続栽培したヒシ属果実の変異. 各系統とも上段が2003年産,順次段毎に2008年 産まで,左端の個体が次年の親果実.物差の目 盛り数字はm乱 −1一

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(2)

表1..系統別果実生産数と各部一位の計測値. 部位寸法計測は正常種子のみとした.平均値/範囲,*は擬角型Dhを示す. 部位寸法(mm) 生産数(個) 系統番号生産年 未熟 小型 正常↑慧腐敗 WI HI DI D3 40い0/37.6∼41い7 37…9/32い8∼42い5 33.8/27.3∼38.8 33日9/25.8∼39.4 34一.5/33い7∼35い3 29.4/26.5∼32.3 19い6/19.2∼20り3 22い0/18い4∼28一.2 20.4/17.0∼23。.1 19.8/1臥4∼22‖4 20.0/19.1∼21い7 17.2/14.4∼19.5 11い0/10.1∼11小915.9/14‖9∼17小1 9り9/7.6∼11い317…8/15い3∼21,2 臥1/7。.5∼10…916..0/13い2∼17り8 臥9/8‖1∼11..916.5/ほ2∼18“9 9..7/9.6∼9リ916日4/16小0∼17‖2 10.5/9.9∼11.214.3/12.7∼16.1 1 00 4 1 、リ■

420‖836

3 4 こり︶ ▲パU 7 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 2 2 2 2 1 1 T 47一.2/40い4∼51.7 39.2/30..6∼43..6 37り7/27.0∼42り7 37.3/35小1∼40..0 32.8/31.6∼34.8

32.3

21一.6/19.0∼24い8 22り3/15.3∼27い7 23..8/196∼30..2 21.7/20り8∼23小0 20.2/19.7∼20.9

18.8

13い4/11”8∼151 11…5/6…5∼1717 11…5/7…9∼13一9 11.5/10.7∼12−3 10.4/9.3∼11.9

10.5

17.7/16−1∼19い3 18い5/ほ1∼22い9 18い2/15.5∼21…4 17.9/17.2∼18.8 16巾7/16い2∼17.4

14.3

4 4112631 3 4 5 良U 7 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 2 2 2 2 2 1 T 表2.未熟小型果実各部位の計測値.計測可能な果実のみとし,萎縮腐敗した果実の欠矢部位は除く. 部位寸法(m) 系統番号 生産年 WI HI DI D3 Dh hw 小型発芽果実 Tl1 2007 20.7 10.4 4.1 8.9 17.7 2.9 29.2 16.3 8。0 13.6 30.8 4.5 20.6 12.5 3.9 9.0 21.2 4.0 小型未発芽果実 Tl1

2004

生産された果実の一つを親として−,2004年か ら2008年の5年間に渡って世∴代を継続して栽 培した。そ・の結果を図1及び表1,表2に示 した。

系統番号Tllは,2003年に4個の大型2刺

果実を生産したが,下刺は無く,発達した擬

角があった。この内1個を元親に選択して栽

培したところ,2004年の果実は全て大型4刺

となり,擬角型の果実は得られなかった。

2005年から2008年は,各年全て4刺型であっ

た。2004年以降に得られた果実は,いずれも 上刺或は下刺,刺針部の逆刺ともによく発達 しており,上刺或は下刺の途中が膨らんだ既 報の系統番号T2のオニビシ r〃αJα乃∫LいVar. ノ甲0乃血Nakaiに酷似した形態をしていた。

系統番号T12は,2003年に4個の大型4刺

果実を生産したが,上刺或は下刺,刺針部の 逆刺ともによく発達しており,上刺或は下刺 の途中が膨らんだT2のオニビシに酷似した 形態をして−いた。この内1個を元親に選択し て栽培したところ,2004年に生産された14個 の果実の内1個だけ,下刺の片方が擬角に変 形していたが,その反対側は正常な刺針をつ けていた。2005年から2008年に生産された果 実は,各年全て4刺型であり,個体内或は年 次による形態変異は少なく,Tllの2004年以 降の果実に酷似していた。

上刺先端部の位置についてほ,Tll・T12

いずれの系統も,全て肩より下がっており, 平均値はほぼ近似していた。

下刺先端部の位置eについては,Tll・T

12いずれの系統も,全て付着点より下方に

あって琴筒基部より上にあった。平均値は

2004年以降ほぼ近似していた。 肩部や琴筒縁辺部の波状隆起,琴簡表面の 突起や隆起の程度は,果実により多少変異が

あるがあまり目立たず,TllとT12は類似し

ていた。 ー 2 −

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(3)

表1の続き. 部位寸法(mm) Wl〈Dh (個) e Dh hw hl h2 he −1..7/−2.、3∼−1..5*25..0/22.3∼26小8 7一.3/6…8∼7‖9 −2..8/−4..8∼−1.2 36.4/29.3∼41..3 7一2/5.1∼8‖712‖1/10.0∼16‖9 4.4/0‖9∼8‖3 7い7/4..7∼10..3 −2.6/−5.3∼一0.7 31…4/25..3∼37‖9 6。4/5…2∼7.410い2/7…8∼12…8 3い4/1.8∼7い1 6リ9/4‖5∼臥4 −3,.6/−6い4∼一1.2 31…2/27.6∼34..3 7.1/3…7∼9い4 臥2/7…0∼11.2 2.4/−0い7∼6小5 6け8/3..9∼11.1 −3..3/−3‖7∼−3。.0 30.4/29,4∼32..0 7い3/6..7∼7−9 8..7/7.8∼10.316/0日9∼2.8 7。1/6..6∼7.5 −2.9/−3.5∼−2.5 25.5/21.7∼28.9 6.6/5.9∼7.8 7.7/5.7∼9.81.2/0.4∼2.5 6.5/4.6∼8.8 −1..8/−2.6へ/−114 賂.4/39.0∼50“311い6/9‖0∼13.0 −2.5/−3.9∼−0.3 38..2/27小4∼弧.910.2/7..6∼12小7 −2.6/−6..3∼−0.8 36,.8/28,6∼43…4 9.0/7.3∼10日5 −3“0/−3い9∼−119 35り4/32‖4へノ39.2 8…2′鳳7∼9.7 −21.1/−2い8∼−1“7 28り7/26‖3′、h′32.4 7‖8/7い5∼8.2 −3.1

28.7

8.1

ほ.2/9..3∼15‖7 2.2/−0。.8∼4‖9 川0/8..5∼11.3 13..4/9.6∼16.4 5い9/1‖7∼11.9 7.5/4.5∼9,.4 12‖8/10‖1∼ほ8 6.4/3,1∼11.2 64/3‖3∼8,.0 11.8/臥8∼13.0 5.0/2。2∼6い4 6い8/5‖9∼7=7 9‖8/7い5∼12い0 3い5/0い8∼5い9 6い3/6い0∼6一7 9.0 2.5 6.6 0 4 5 0 0 0

Tll・T12の果実サイズは,年及び計測部

位によってばらつきが見られた。 特に2008年は,栽培容器の設置位置が樹陰に なった為に生育不良となり,果実の生産数が

少なく,果実サイズが小型であった。前年ま

でと比較して小型化した計測部位は,Tllの

Wl・Hl・D3・Dh,T12のHl・D3であっ

た。 以下2008年を除いた2003年から2007年を見 ると次の通りである。

上刺間幅Wl及び下剤間幅Dhは,両系統と

も年による変動が大きかった。上刺間幅Wlと

下刺間幅Dhを比較すると,Wl<Dhとなる

果実が,年により1∼4割程度あった。 琴筒の長さHlと琴簡の厚さD3について, 年により多少のばらつきはあるが,両系統は 近似した大きさであった。

上刺の太さDlと下刺の太さhwはTllがT

12よりもやや小さかった。 小型果実の発芽について,今回もTllにお

いて,成熟果実の1/2∼2/3程度の小型果

実で発芽するものがあった(図2c)。この小 型果実で,発芽したものと未発芽のものの大

きさについてはあまり差異がなかった(表

2,図2d)。 考 察 先に報告したT2(久米,2006)のオニビ シと今回報告したTll・T12の各部位の大き さを比較してみると,Wlはばらつきが大きい もののT2がやや大きく,Hl,D3は近似し ている。これら果実のサイズと外部形態から 判断してTll・T12の系統はオニビシに該当 すると思われる。 同じく既報のT6(久米,2008)とTll・ T12の各部位の大きさを比較してみると,Wl はT2よりも近似して−おり,Hl,D3はT2 と同様近似して−いる。Dl,Dh,hwは4系 統間に差が見られる。2008年に被陰により果 実サイズが小型になったTllの果実の外部形 態は,T6に類似したものが見られた。 Nakano(1964)は,オニビシに3刺のものが 現れる事があるが,子の代に4刺に返り安定 性を持たないと報告している。刺針の数の変 異については,これまでにも報告したが(久 米,2006・2007),今回T12において下刺の片 方だけが擬角になった3刺型が1例だけ確認 された(図2b)。ただしこれは,下刺の刺針 − 3 −

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(4)

部だけが欠落したものの様であり,既報同様 一時的な奇形と判断した。

大型2刺のT3・T4系統で,年により擬

角型或は4刺型の変異果実が見られる事を先 に報告したが(久米,2006),今回は当初擬角

型であったTllが次年以降4別型に変異し

(函2a),T12のオニビシと酷似した果実を 着ける様になった。これらの結果から類推す ると,大型果実の系統については,擬角の生 成は不安定な様に見受けられる。一つの仮説 として,基本に2刺の系統と4刺の系統があ り,下刺部位の変異の起こり様で擬角型が形

成されている可能性が推定される。今後T

3・T4・Tll系統の栽培を継続して,経過

を観察してみたい。 文 献 角野康郎.1987.日本産ヒシ属の変異に関す る予察的研究.植物分類地理38:199− 210. 久米 修.2006.ヒシ属の継続栽培試験に見 られる変異1.香川生物33:1−12. .2007,ヒシ属の継続栽培試験に見 られる変異2.香川生物34:13−19. .2008.ヒシ属の継続栽培試験に見 られる変異3.香川生物35:1−8. 三木 及1953.遺体からみたヒシ(符甲α) の形態的諸性質と水生への適応等につい て.生態学会報2(3):111−116. Nakano,H.1964.FurtherStudiesonT[q)a丘om JapananditsA嘩acentCountries.Bot.Mag. Tokyo77:159−167. 図2.栽培中に見られた果実の変異と小型果実の発芽.

a:Tll果実の変異(左2004年親,右2005年親),b:2004年産T12の3刺型果実,C:2007年

産Tll最大(左)最小発芽(右)果実,d:Tll小型発芽(左2007年産)未発芽(右2004年産)果 実.物差の目盛り数字はm乱 冊・4・−

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