1 新庁舎・新病院建設に関する調査特別委員会 行政視察報告書 焼津市議会議長 石田善秋 様 新庁舎・新病院建設に関する調査特別委員会 報告者 深田百合子 下記の調査事項をもって行政視察を行いましたので、概要を報告いたします。 期 間 平成28年10月17日(月)~18日(火) 視察先 千葉県浦安市:新庁舎建設について 東京都青梅市:新庁舎建設について 参加者 鈴木浩己委員長 小栁津健二郎副委員長 池谷和正委員 杉﨑辰行委員 鈴木繁雄委員 松本修藏委員 深田百合子委員 視察先選択理由と市概要 1.浦安市 <選択理由> プレハブ造の第2・第3庁舎など分散していた庁舎と平成8年度に耐震補強工 事を実施したが安全性に問題のあった本庁舎を統合し、平成 28 年5月に新庁舎を 完成させた。また、人口規模も焼津市と類似した浦安市を調査したく行政視察先 として選択した。 <市の概要> 人 口:166,034人 世帯数: 77,124世帯 面 積: 16.98㎢ 浦安市は、東京湾の奥部に位置し、東と南は東京湾に面し、西は旧江戸川を隔 てて東京都江戸川区と対峙し、北は市川市と接しています。 土地は、旧江戸川の河口に発達した沖積層に属する低地と、その約3倍に及ぶ 公有水面埋め立て事業によって造成された埋め立てからなっており、おおむね平 坦です。 昭和 53 年4月に待望の市制施行「浦安市」が誕生しました。昭和 58 年には東 京ディズニーランドがオープンし、その後も周辺地区に大型リゾートホテルなど が建設され、国際色豊かなまちになりました。昭和 63 年 12 月には JR 京葉線も 開通し、新浦安、舞浜の駅周辺の整備も進み、浦安は東京ベイエリアを代表する 都市として発展を続けています。
2 2.青梅市 <選択理由> より一層の市民サービス向上を第一として、ワンストップ行政サービスを目指 し、1階に窓口を集約し、窓口機能の充実、利便性の向上を図るため、平成 22 年7月に新庁舎を完成させた。また、人口規模も焼津市と類似した青梅市を調査 したく行政視察先として選択した。 <市の概要> 人 口:136,472人 世帯数: 62,365世帯 面 積: 103.31㎢ 青梅市は、東京都の多摩地域西部に位置し、東京都2市3町、埼玉県2市7市 町に隣接しています。 市域のほぼ中央を多摩川が西から東に貫流し、北部は入間川の支流である霞川 と成木川が流れています。東部の平地から上流にかけて丘陵地、山地と変化し、 最高地点の標高は鍋割山の 1,084mです。 まちの基幹産業だった織物業や林業は構造不況によって衰退し、往時をしのぶ ことはできませんが、工業団地造成による企業誘致や、観光資源の活用による新 たなまちづくりが進められています。そして、西多摩の中核市「青梅」の役割と その将来性は、圏央道青梅インターの開通によってにわかに高まりつつあります。 視察内容 1 浦安市「新庁舎」について (1)建設に至るまでの経過 昭和 61 年頃より人口が急速に増加したため、第二庁舎(プレハブ棟)を設置 したり、その増築を行っていたため、平成2年度に「庁舎建設準備委員会」を設 置し、新庁舎建設の検討を行っていたが、社会経済状況の悪化により、平成 10 年度に、前年度に策定した新庁舎建設基本構想(案)を凍結した。 平成 13 年、浦安市基本計画が策定され、新庁舎建設の検討を再開する。平成 17 年度、庁内に「新庁舎建設検討委員会」を設置、また学識経験者・市内関係団 体・公募市民による「新庁舎建設市民懇談会」を設置。平成 18 年度、「新庁舎建 設基本構想(案)」を策定し、パブリックコメントを実施。平成 19 年度、「新庁 舎建設基本計画(案)」を策定し、パブリックコメントを実施したが、平成 20 年 度、リーマンショックの影響により、新庁舎建設事業の一時中断を発表。 市長が平成 24 年度施政方針において、庁舎建設事業の再開を表明。平成 24 年 度、事業手法をデザインビルド方式に決定し、平成 25 年度に工事請負契約を締 結、平成 26 年 9 月に工事に着手し、平成 28 年 5 月下旬に竣工する。
3 (2)新庁舎の概要について 敷地面積 6,853.21㎡ 建築面積 3,118.25㎡ 延床面積 25,630.85㎡ 構 造 免震構造/鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 階 数 地上11階/塔屋1階 建物高さ 54.30m 最高高さ 55.17m 総事業費 119 億 3,800 万円(新庁舎 87 億円+駐車場 32 億 3,800 万円) ▲ 浦安市での視察研修の様子 (3)新庁舎の特徴について ①災害時の中枢となる庁舎 ・首都直下地震も想定した免震構造により高水準の安全性を確保 ・自家発電設備や防災井戸などを備え、インフラ施設が途絶した場合でも、災 害対策本部の運営と市役所業務が継続できる庁舎 ・4階に「災害対策本部室」及び防災拠点の機能を持つ諸室を配置 ・液状化発生の可能性を踏まえ、新庁舎周辺部を含む範囲に地盤改良を実施 ②親しみ・やさしさを感じる庁舎 ・わかりやすく見やすい案内表示を行うほか、入口付近に「総合案内窓口」を 配置し、来庁者に適切な案内をおこなっている ・市民の利用頻度が高い部署を低層階に集中的に配置することで、来庁者の利 便性向上を図っている ・子ども連れの来庁者に配慮し、庁舎内で子どもを一時的に預かる「託児所」 を1階に配置
4 ・安心して授乳ができる「授乳室」を1階と 10 階に配置 ・分散している庁舎や機能を効率よく集約・配置し、便利でわかりやすい庁舎 ・吹き抜けを全館通して配置することで、行先がわかりやすく、明るい開放感 のある空間となっている ・障害者の方々に様々な意見を聞いて、多目的トイレの配備や非常時の誘導設 備などのユニバーサルデザインを取り入れている ③コスト・環境を考慮した庁舎 ・新庁舎の建設は、施工事業者のノウハウを設計段階から活かす「デザインビ ルド方式」を採用することで、コスト縮減を実現 ・発電時の排熱を利用する「ガスコージェネレーションシステム」を施設内で 実施することにより、効率的な電力の利用が可能となっている ・吹き抜けを利用した自然換気・自然採光など自然エネルギーの利用で省エネ ルギー化を図っている ・長期耐久設計とすることで品質強化を図るとともに、ライフコストを大幅に 削減 ・環境配慮型庁舎として、建物の環境配慮の格付けとなる CASBEE の S ランク (最高ランク)を取得 ④開かれた議会 ・議会施設は高層階に配置し、議会動線と来庁者動線が交錯しないように配慮 ・10 階の傍聴席には、子ども連れの方も傍聴できるよう「特別傍聴席」を配置 2 青梅市「新庁舎」について (1)建設に至るまでの経過 昭和 60 年 公共施設整備基金の積立を開始 平成 2年 総合長期計画において、新庁舎建設が計画 平成 5年 新庁舎建設基本構想を作成 設計競技方式(コンペ)を行い設計者を決定 平成 6年 基本設計完了 平成 7年 財政状況が厳しいため、スケジュールの変更を決定 平成 11 年 市長が所信表明で、新庁舎建設を進めることを表明 平成 12 年 「庁舎建設検討特別委員会」を設置 平成 15 年 同委員会から、「庁舎建設をすべきである」報告を受ける 平成 16 年 「庁舎建設特別委員会」を設置 平成 17 年 基本構想を作成 平成 18 年 設計競技(プロポーザル提案方式)により設計者が決定 基本設計完了 平成 19 年 実施設計
5 平成 20 年 制限付き一般競争入札により請負業者を決定し、工事開始 平成 22 年5月 竣工 平成 22 年7月 20 日 開所 平成 23 年4月 旧庁舎解体、外構工事等が竣工 (2)新庁舎の概要について 敷地面積 16,046.18㎡ 建築面積 4,957.26㎡ 延床面積 22,097.76㎡ 構 造 地下1階:鉄筋コンクリート造 地上7階(行政棟)、4階建(議会棟):/鉄骨鉄筋コンクリート (一部鉄骨)造 免震構造 総事業費 88 億 9,273 万円 (3)新庁舎の特徴について ①市民の方が日常的に利用する市民課、保険年金課、福祉、税などの主な窓口を 1階にまとめ、ワンストップサービスに向けた対応として利用しやすい庁舎と なっている。(来庁者の 89%が1階のみで要件が済む) ②視覚障害者に白杖認識音声誘導システム、トイレ内音声案内などを、聴覚障害 者にフラッシュライトによる異常連絡、LED 文字情報などを、また、各階に多 目的トイレを設置するなど、バリアフリーに配慮した庁舎となっている。 ③地震等の災害時に備えて免震構造を採用し、災害対策本部室の常設や自家発電 設備、災害時の職員用給水確保、簡易マンホールトイレ、防災倉庫などを設置 し、防災拠点として機能する庁舎としている。 ④地中熱利用や太陽光発電、雨水の再利用等の自然エネルギーも活用とともに、 自然換気システムや屋上緑化を図り、環境に配慮した庁舎となっている。 ▲ 青梅市での視察研修の様子(会派控室を見学)
6 3 所 感 両市の新庁舎建設の過程は、膨大な事業費が掛かることから一時計画を中断し、 事業手法などの見直しを図り完成まで 20 年余の歳月を掛けていた。これは計画の 進め方や事業手法などを丁寧に調査・検討していく事の大切さを示唆していた。 完成された両市の新庁舎は、障害者の方々や子ども連れの来庁者に配慮した庁 舎になっている。また、来庁者の多くの皆様が1階又は低層階において用件が済 むようなワンストップサービスに向けた対応となっており、庁舎玄関入口付近に は、「総合案内窓口」が設置されていた。1階フロアーは、プライバシーにも十分 配慮した上で、非常に広く余裕を持ったフロアーとなっていた。 地中熱、太陽光、雨水の再利用など自然エネルギーを最大限活用した、環境に 配慮し、コスト削減を目指した庁舎となっていた 本市が今後、新庁舎の建設を検討する上で非常に参考となった。