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262 F s PRO A Community Investment and the Role of Non-profit Organizations: Present Conditions in the US, the UK, and Japan Takashi Koseki Abstract 1

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3

3

5

52

2

コ ミュ ニ テ ィ投 資 と非 営 利 組 織 の 役 割

ア メ リ カ ・イ ギ リ ス ・ 日本 の 現 状

小 関

隆志

旨 〕

1.近 年 日本 に お い て も社 会 的 責 任 投 資(SRI)が

注 目 を 集 め て い る が,SRIの

一 分 野 で あ

る コ ミュ ニ テ ィ投 資 はSRIの 議 論 の 中 で,ほ

とん ど視 野 の 外 に置 か れ て きた 。

2.コ

ミ ュ ニ テ ィ投 資 は,経

済 的 に不 利 な 地 域 で 活 動 して い る社 会 的 企 業 や 非 営 利 組 織,

ない し住 民 個 人 に 資 金 を 融 通 す る こ とで,地 域 経 済 の 活 性 化 と住 民 の 生 活 水 準 向 上 を 図 る

手 法 で あ り,補 助 金 や 寄 付 金 に よ る支 援 とは 異 な る。

3.ア メ リ カ や イ ギ リ ス で は1990年 代 以 降,政 府 の フ ァ ン ドや 免 税 制 度 と い っ た 促 進 政 策 も 奏 功 し て,コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 の 部 門 が 大 き く成 長 し て い る 。

4.日

本 に お い て は,貧

困 で 荒 廃 した 地 域 に 資 金 供 給 す る とい う意 味 で の コ ミ ュ ニ テ ィ投

資 は ほ とん ど見 ら れ な い が,フ

ェ ア トレ ー ドや 自然 エ ネ ル ギ ー とい っ た 市 民 事 業,NPO

の 事 業 に融 資 す る例 が 最 近 生 ま れ て き た 。 そ の 担 い 手 は協 同 組 合 金 融 機 関 や 「

市 民 金 融 」

と呼 ば れ る 市 民 活 動 団 体 で あ る。

5.日

本 で は,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 を促 進 す る よ うな 政 策 ・法 制 度 は 整 備 さ れ て お らず,地

域 経 済 の 末 端 を支 え る 中小 の 協 同 組 合 金 融 機 関 は厳 しい競 争 に さ ら さ れ て い る 。 こ う した

中 で 金 融 庁 も2003年

に リ レー シ ョ ンシ ップ ・バ ン キ ン グ の 政 策 を打 ち 出 し,独 自 の 存 在

意 義 を認 め る よ うに な っ た 。

6.コ

ミュ ニ テ ィ投 資 は,地 域 の 経 済発 展 の 格 差 を緩 和 し,住 民 主 体 で 内 発 型 の 発 展 を 目

指 す 点,SRIを

通 して 民 間 資 金 を 導 入 で き る 点 に意 義 を認 め られ る。 非 営 利 組 織 や 協 同組

合 金 融 機 関 は,コ

ミ ュニ テ ィ投 資 の 中 心 的 な担 い 手 と して 位 置 付 け られ る 。

7.他

方,コ

ミ ュ ニ テ ィ投 資 は依 然 と して リス ク が 高 く,リ ス ク を下 げ て 投 資 を増 や す た

め に,コ

ミ ュ ニ テ ィ投 資 の担 い 手 の力 量 形 成,政

府 に よる 促 進 政 策 が 求 め られ る 。

(2)

Community

Investment

and the Role of Non-profit

Organizations:

Present Conditions

in the US, the UK, and Japan

Takashi

Koseki

Abstract

1. The issue of SRI (Socially Responsible Investment) has been getting popular in Japan

recently. However, community investment, which is an element of SRI, has rarely been

mentioned in the SRI discussions so far.

2. Community investment is for enterprises, nonprofit-organizations and residents in

deprived communities in order to regenerate local economy and to improve quality of life. So,

community investment is different from grants or donations.

3. In the US and the UK, community investment has been greatly developed since the 1990s,

partly by governmental support for community investment such as fund or tax relief.

4. In Japan, there aren't many cases of supplying resources to poor areas. However, new

initiatives have been born recently which invest in civil enterprises such as fair-trade

enterprises, natural energy and charities. They are co-operative financial institutions, and

civil financial organizations.

5. But in Japan, the government hasn't made policies and laws to promote community

investment, and local co-operative banks are now under severe competition. In 2003, FSA

recognized local banks' proper role in communities, and announced new policy of

"relationship-banking".

6. Community investment has a number of important roles, that it mitigates economic

discrepancy, requests endogenous local development, and can bring in private resources

through SRI. In particular, non-profit organizations and co-operative financial institutions

have an important position in community investment.

7. But community investors must take on high risk. Capacity-building of community

development financial institutions (CDFIs) and supportive governmental policies are also

needed in order to degrade the risk of community investing.

(3)

コ ミュニ テ ィ投 資 と非営 利組 織 の役割 一

263

コ ミュ ニ テ ィ投 資 と非 営 利 組 織 の 役 割

ア メ リ カ ・イ ギ リ ス ・日本 の 現 状 一

小 関

隆志

は じ め に 1.SRIの 概 要 2.コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 3.結 論 主 要 参 考 文 献 は じ め に 近 年 日 本 に お い て も 注 目 を 集 め て い る 社 会 的 責 任 投 資(SociallyResponsibleInvestment;以 下SRIと 略 称)は,企 業 社 会 責 任'(CorporateSocialResponsibility;以 下CSRと 略 称),特 に コ ー ポ レ ー ト ・ガ バ ナ ン ス 向 上 を 促 進 す る 一 手 法 と し て 広 く認 識 さ れ,株 式 上 場 の 大 企 業 と証 券 会 社 な ど の 金 融 機 関 を 中 心 に 実 践 が 進 め ら れ て い る 。 だ が,SR【 を 進 め る 上 で,非 営 利 組 織 や 市 民 活 動 団 体,協 同 組 合 な ど が 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ と は,少 な く と も 日 本 に お い て は あ ま り意 識 さ れ て こ な か っ た よ う に 思 わ れ る 。 ま た,SRIに は 主 に3つ の 形 態 が あ る が,従 来 は そ の う ち ス ク リ ー ニ ン グ に 焦 点 が 当 て ら れ, そ れ 以 外 の 形 態,特 に コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 に 関 し て は,少 な.く と もSRIの 範 疇 に お い て は,ほ と ん ど 視 野 の 外 に 置 か れ て き た 。 本 論 文 は,特 に コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 の 分 野 に 焦 点 を 当 て な が ら,SRIに お け る 非 営 利 ・協 同 セ ク タ ー の 役 割 と 課 題 を 明 ら か に し た いpそ の 際,SRIの 先 進 地 で あ る ア メ リ カ 合 衆 国 や イ ギ リ ス を 参 照 し な が ら,日 本 の 現 状 に 対 す る 示 唆 を 考 察 す る 。 全 体 の 構 成 と し て は,① 最 初 に 社 会 的 責 任 投 資(SRI)に つ い て,そ の 概 念,歴 史 的 背 景 と 近 年 の 状 況,主 な 論 点,非 営 利 ・協 同 セ ク タ ー の 役 割 を 簡 潔 に ま と め,② 次 に コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 に 関 す る 歴 史 ・制 度 ・現 状 ・事 例 を 整 理 し,③ 最 後 に 結 論 と し て,コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 の 意 義 と課 題,非 営 利 ・協 同 セ ク タ ー の 役 割 を論 じ る 。

(4)

1.SRIの

概 要

(1)SRIの

定 義 と 範疇

そ もそ もSRIと は何 か と い う定 義 自体,論

者 に よ っ て 少 しず つ 異 な っ て い る。 現 時 点 で は,

オ ー ソ ラ イ ズ さ れ た 定 義 が あ る わ け で は な い 。 これ は,SRIの

意 義 ・目的 及 び そ の 範 疇 を ど う

捉 え る か に か か って い る とい え る 。

RussellSparkesは,最

も優 れ たSRIの 定 義 と してChrisCowtonに

よ る 定 義 を 引 用 して い る 。

Cowtonに

よれ ばSRIは 倫 理 投 資(EthicalInvestment)と

同義 で あ り,「 株 式 投 資 の 選 択 ・運 用

に お い て 倫 理 的 ・社 会 的 基 準 を用 い る こ と」1)と 定 義 して い る 。

Cowtonと

か な り近 似 して い る の は,(株)イ

ンテ グ レ ッ クス の秋 山 を ね で あ る。 秋 山 は 「あ

る会 社 が ど れ だ け利 益 を上 げ て い る か だ け で は な く,社 会 に対 す る 責 任 を 意 識 して ル ー ル を 守

り誠 実 に仕 事 を した結 果 と して 利 益 を上 げ て い る か を評 価 す る こ とに よ っ て,株 式 投 資 と い う

か た ち で 誠 実 な 会 社 を 応 援 して い こ う とい う考 え方 」2)と 定 義 して い る が,こ

の 定 義 に よ れ

ばSRIの 形 態 は株 式投 資 の ポ ー トフ ォ リオ に 限 定 され て お り,判 断基準 と しては企業 に よる法

令 ・規 範 の 遵 守 と 「

誠 実 さ」 を最 も重 視 して い る。 す な わ ち,法 令 ・規 範 を誠 実 に守 り,不 祥

事 を起 こ さ な い よ う態 勢 を整 え る とい う倫 理 的 側 面 が前 面 に 出 て い る。

これ ら に対 し谷 本 寛 治 らは,倫

理 性 や 法 令 ・規 範 の遵 守 で は な く,む しろ企業 の よ り積極 的

な経 営 戦 略 と してSRIを 捉 え よ う とす る。 谷 本 はSRIを

経 営 活 動 の プ ロ セ ス に社 会 的 公 正 性

や 環 境 へ の 配 慮 を組 み 込 み,ス

テ イ ク ホ ル ダ ーへ の ア カ ウ ン タ ビ リ テ ィ(説 明 責 任)を

果 た し

て い く こ と」3)と 定 義 し,「SRIを

昨 今 の企 業 不 祥 事 に か らめ,コ

ンプ ラ イ ア ンス ,倫 理 とい

う観 点 か ら特 徴 づ け て し ま う な らば,そ

の 理 解 は狭 い と言 わ ざる を得 な い 」 と,秋 山 ら のSRI

定 義 を批 判 す る。 即 ち戦 略 的 にCSRの

実 践 を進 め,市

場 でSRIの 高 い 評 価 を得 る とい う方 針 と

い え る 。 同 様 に,足

達 英 一 郎 ・金 井 司 もSRIを

「CSRを 評 価 軸 とす る 投 資 手 法 」4)と 捉 え

,

CSRに

よ っ て 企 業 価 値 を高 め,SRIの

評 価 に反 映 さ せ る とい う点 を重 視 して い る 。 谷 本 らの 視

角 か らす れ ば,検

討 さ れ るSRIの 形 態 は や は り株式 投 資,特

に ス ク リー ニ ング に限 定 され て く

る5)。

他 方,SRIと

は何 か とい う 明快 な定 義 は与 え てい な い が,エ

イ ミー ・ドミ ニ は,投 資 に よ っ

て 社 会 に 影 響 をお よ ぼ す(Thewayyoumakemoneymakesadifference)と

い う点 を 強 調 して

い る6)。 ド ミニ はSRIと

して 株 式 投 資 の 選 択(ス

ク リー ニ ン グ)だ

け で な く,株 主 行 動 や コ ミ

ュ ニ テ ィ投 資 を含 め て い る 点 が前 者 と大 き く異 な る。SRIの 先 進 地 で あ る ア メ リカ で は

,ス ク

リー ニ ン グ(特

に ネ ガ テ ィ ブ ・ス ク リ ー ニ ン グ),株 主 行 動,コ

ミ ュ ニ テ ィ投 資 の3種 類 が 典

型 的 な形 態 と され てい る。

企 業 の倫 理 性 ・誠 実 さ に 焦 点 を 当 て る の か,企 業 の リス ク管 理 手 法 と見 るの か,企 業 価 値 向

(5)

コ ミュニ テ ィ投 資 と非 営利 組織 の役 割 一

265

上 に 向 け た 戦 略 に重 点 を置 くの か,そ れ と も投 資 を通 じた社 会 変 革 に 力 点 を置 くの か,論 者 の

立 場 や 視 点 に よ ってSRIの 定 義 ・範 疇 に 差 異 が 生 まれ て くる 。 さ ら に,後 述 の よ う に コ ミ ュニ

テ ィ投 資 をSRIに 積 極 的 に位 置 づ け よ う とす る と,投 資(investment)の

持 つ 意 味 自体 も広 が

り を持 つ こ と に な る。SRIに お け る非 営 利 ・協 同 セ ク ター の 役 割 を考 察 す る 上 で は,ス

ク リー

ニ ン グ に と ど ま らず,株

主 行 動 や コ ミュ ニ テ ィ投 資 も含 め ,投 資 を通 じた社会 変革 とい う捉 え

方 が 最 も当 て は ま る と筆 者 は考 え る。

(2)SRIの

歴 史 的 背 景 と近 年 の 状 況

SRIの 歴 史 的 背 景 と近 年 の 状 況 に 関 し て は,既

に多 くの文 献 で 詳 し く紹 介 され て い る の で,

こ こ で は あ え て 詳 し く記 す 必 要 は な い7)。 た だ し,SRIが

企 業 価 値 の 向 上 に役 立 つ とい う側 面

だ け が 強 調 され る と,SRIが

市 場 原 理 の 中 で 自発 的 に 成 長 して きた か の よ うな 印 象 を 与 え か ね

な い 。歴 史 的 ・制 度 的背 景 をふ りか え る と,教 会 や 市 民 運 動 組 織 な どの 非 営 利 組 織 や,政 府 に

よ る政 策 ・法 制 度 と い っ た 市 場 外 部 か ら の圧 力 がSRIの 成 長 に 大 きな 影 響 を与 えた とい え る。

SRIの 源 流 は 欧 米 の 宗 教 者 に よ る教 会 資 金 の 運 用(ネ

ガ テ ィ ブ ・ス ク リー ニ ン グ)と

して始

ま り,1970年

代 以 降 に ベ トナ ム 反 戦 運 動 や 南 ア フ リ カ の ア パ ル トヘ イ ト反 対 運 動,消

費 者 運

動(欠

陥 商 品 の 告 発)な

ど と結 び つ い た株 主 行 動 が 盛 り上 が っ た 。1990年 代 以 降 急 成 長 を見

せ て い る こ ん に ち のSRIは,年

金 基 金 な ど機 関投 資 家 に よる ス ク リ ー ニ ング が 中心 で,SRIの

源 流 に あ っ た 宗 教 的 ・倫 理 的 ・社 会 運 動 的 な色 彩 が 薄 れ,よ

り企 業 的 で 組 織 的 な色 彩 が 濃 くな

っ て い る(「 ダー ク グ リー ンか ら ラ イ トグ リ ー ンへ 」8)。 だ が,か

つ て 宗 教 的 ・倫 理 的 ・社 会

運 動 的 なSRIの 運 動 で 問 わ れ た社 会 問 題(平

和 ・反 戦,雇

用 に お け る 差 別 の 禁 止,自

然 環 境 保

護 な ど)が 現 在 のSRIの 投 資 基 準 と して 一 定 程 度 受 け 継 が れ,ICCRな

ど の 宗 教 関係 団 体 や,

CEPやC(ropAmerica,IRRCを

は じめ,企 業 に対 す る 監 視 活 動 を行 う市 民 運 動 組織 が 現 在 で も

大 き な 影 響 力 を持 っ て い る こ と9)は,非

営 利 ・協 同 セ ク タ ー の役 割 を考 察 す る 上 で 見 逃 せ な

い点 で あ る 。

日本 の 場 合 も,東 京 電 力 に対 して脱 原 発 を求 め る株 主 運 動,障

害 者 雇 用 率 の 達 成 な どを 求 め

る株 主 オ ン ブズ マ ン の運 動,環

境 に や さ しい 事 業 に 融 資 す る未 来 バ ン ク事 業 組 合 をは じめ10),

市 民 に よ る非 営 利 組 織 が 日本 のSRIの 萌 芽 期 を牽 引 して きた 。

他 方,特

に ヨー ロ ッパ 諸 国 で は,政

府 に よ る政 策 や 法 制 度 が,SRI急

成 長 の 大 き な 契 機 とな

っ た こ と も,明

らか で あ る。 た と え ば イ ギ リス で は,2000年7月

に 施 行 さ れ た 年 金 法 改 正 に よ

り,全 て の職 業 年 金 は投 資 方 針 の なか で どの 程 度 社 会 ・倫 理 ・環 境 の 側 面 を考 慮 して い る か を

開 示 す る義 務 を負 う こ と に な っ た 。 この 制 度 改 正 を きっ か け に して機 関 投 資 家 がSRI運 用 を採

用 す る こ と に な っ た と言 わ れ て い る 。 またCSR担

当 大 臣 の ポ ス トも ブ レ ア政 権 の 下 で新 設 さ

(6)

れ た。 フ ラ ンス で は2001年5月

に新 経 済 規 制 法 が 成 立 し,全 て の 上 場 企 業 が 社 会 ・環 境 報 告 書

を発 行 す る義 務 を負 う こ とに な っ た。 ま た 「

持 続 可 能 な 成 長 」 大 臣 も新 設 さ れ た 。 ス ウ ェー デ

ンの 国 営 年 金 も社 会 ・環 境 面 の 配 慮 を義 務 付 け ら れ る な ど,ヨ ー ロ ッパ 各 国 でCSRやSRIに

連 した 法 制 度 の 整 備 が 進 み つ つ あ り,SRI市

場 の拡 大 につ な が っ て い る。

(3)SR1に お け る 非 営 利 組 織 の 役 割 Guay,Dohら に よ れ ば,SRIに お け る 非 営 利 組 織 の 役 割 は 近 年 と み に 増 大 し て い る と い う が 11),SRIに お け る 非 営 利 組 織 の 役 割 を 一 言 で い う な らSRIのfacilitator(促 進 者)で あ ろ う。 し か し,非 営 利 組 織 と い っ て も 幅 広 く,ま たSRIの 形 態 に よ っ て,非 営 利 組 織 の 役 割 も 異 な っ て く る12)。 第 一 に,ス ク リ ー ニ ン グ に 際 し て は,非 営 利 組 織 はSRI運 用 会 社 と提 携 し て 各 企 業 を 調 査 し, ス ク リ ー ニ ン グ の 判 断 基 準 と な る 情 報 提 供 を 行 う こ と が 多 い(イ ギ リ ス のEIRiS(Ethical InvestmentResearchServices),ベ ル ギ ー のEthibelGroup,日 本 の パ ブ リ ッ ク リ ソ ー ス セ ン タ ー な ど)。 非 営 利 組 織 に 限 ら ず 営 利 企 業 も 調 査 を 行 っ て い る 。 ま た,SRIの 推 進 組 織 で あ る 社 会 投 資 フ ォ ー ラ ム13>(SocialInvestmentForum:SIFと 略 称)も 非 営 利 組 織 の 一 種 で あ る 。SRI 資 産 運 用 は,投 資 信 託 銀 行 な ど が 主 だ が,中 に は 非 営 利 目 的 のPaxWorldFundsやTriodos

Bankな ど も存 在 し て い る 。 他 方,直 接SRIに 関 す る 業 務 を行 っ て は い な い が,AccountAbility やSAI(SocialAccountabilityInternational),GRI(GlobalReportingInitiative)な ど の よ う に14), CSRの マ ネ ジ メ ン ト規 格 や ガ イ ドラ イ ン を 作 成 ・推 進 し て い る 非 営 利 組 織 も,ス ク リ ー ニ ン グ の 選 定 基 準 を 提 供 し て い る 点 で 重 要 な 役 割 を 果 た して い る と 言 え る 。 第 二 に,株 主 行 動 に 関 し て は,① 非 営 利 組 織 が 自 ら 株 主 と し て,株 主 総 会 で 提 案 した り,経 営 者 側 と 交 渉 し た り し て,要 求 を 反 映 さ せ よ う と す る 。 別 の 言 い 方 を す れ ば,市 民 活 動 組 織 が 運 動 の 対 象 と す る 企 業 の 株 式 を 取 得 し,株 主 提 案 権 を 獲 得 し,企 業 と の 対 話 を 進 め る 。 ② 企 業 の 株 主 に 対 し て 問 題 の 所 在 を 知 ら せ,株 主 行 動 に 協 力 し て くれ る よ う 説 得 す る 。 株 主 総 会 で 提 案 し た 非 営 利 組 織 側 の 提 案 が,株 式 全 体 の 何%の 支 持 を 得 ら れ る か が よ く話 題 に な る と こ ろ だ が,こ れ は ど れ ほ ど多 くの 株 主 の 理 解 を か ち と っ た か に よ る と 思 わ れ る 。 ③ 株 主 の 代 理 と し て 行 動 す る 。 た と え ば 多 くの 株 主 の 利 害 を 代 表 し た 形 で 株 主 代 表 訴 訟 を 起 こ す 場 合 な ど が あ て は ま る 。 第 一 の ス ク リ ー ニ ン グ も,第 二 の 株 主 行 動 も,い ず れ も企 業 に 対 す る 監 視(モ ニ タ リ ン グ)の 役 割 を 非 営 利 組 織 は 担 っ て い る の で あ る 。 第 三 の コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 に つ い て は 後 述 の よ う に,大 企 業 に 対 し て コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 を働 き か け る(働 き か け る 手 段 と し て ス ク リ ー ニ ン グ や 株 主 行 動 を 用 い る)場 合 と,非 営 利 組 織 自 ら が,な い し は 大 企 業 や 政 府 ・自 治 体 ・他 のNPOな ど と 提 携 し な が ら,コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 を 手

(7)

コ ミュニテ ィ投資 と非営利 組 織 の役割 一

267 が け る 場 合 と が あ る 。 以 下 で は,コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 に 焦 点 を 当 て な が ら,ア メ リ カ,イ ギ リ ス,日 本 の 状 況 を 検 討 し て い き た い 。

2.コ

ミ ュ ニ テ ィ 投 資

(1)コ

ミ ュ ニ テ ィ投 資 の 位 置

前 述 の よ う にSRIに は ス ク リ ー ニ ン グ,株 主 行 動,コ

ミ ュ ニ テ ィ投 資 の3種 類 が 典 型 的 な形

態 と され,日

本 で もSRIを 紹 介 した文 献 に3形 態 が 紹 介 され て い る が,こ

れ まで 日本 で は ス ク

リー ニ ン グ,特 に ポ ジ テ ィブ ・ス ク リー ニ ング が 関 心 の 対 象 で あ っ た と思 わ れ る 。

た と えば 日本 政 策 投 資 銀 行 の 調 査 「

社 会 的 責 任 投 資(SRI)の

動 向 」は,ア

メ リ カ ・ヨー ロ ッ

パ 諸 国 に お け るSRI,CSRの

制 度 的 環 境 整 備 や 投 資 信 託 の 動 向 に 焦 点 を 当 て て い る。 秋 山 を

ね ・菱 川 隆 二 も ス ク リ ー ニ ン グ と企 業 倫 理 の 関 係 に議 論 を限 定 して い る 。 谷 本 寛 治 ら も,株 主

行 動 や コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 の 歴 史 的 展 開 に は 少 し触 れ つ つ も,ス

ク リ ー ニ ン グ とCSRの

関連 を

主 な研 究 対 象 と して い る。 足 達 英 一 郎 ら も,ス

ク リ ー ニ ン グ とCSRの

関 連 に議 論 を 限 定 して

い る 。 特 に 日本 に お い て は,CSR,特

に コー ポ レー ト ・ガ バ ナ ンス 向 上 や 自然 環 境 対 策 に よる

リス ク管 理 の 一 手 法 と して,あ

るい はSRIに

よ る企 業 価 値 上 昇(日

経 平 均 株 価 と の差 異 と して

表 さ れ る)に 関 心 が 向 け られ て き た 。 同 時 に,ア

メ リ カ のERISA法

に 象 徴 さ れ る よ う に,受

託 者 責 任 との 関 連 でSRIの

正 当 性 も関 心 を呼 ん で きた15)。 他 方 で は,SRIの

分 野 に お い て は,

株 主 行 動 や コ ミュ ニ テ ィ投 資 が 相 対 的 に 関 心 を向 け ら れ て こ な か った 。 環 境 省 が2003年

に行

っ た 意 識 調 査 に よ れ ば,ア メ リ カで は ス ク リ ー ニ ン グ だ け で な く株 主 行 動,エ ンゲ ー ジ メ ン ト,

コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 が 積 極 的 に行 わ れ て い るが,日

本 で は普 及 して い な い との 結 果 が 出 さ れ て い

る16)。

歴 史 的 な経 緯 を考 え れ ば,日

本 で は,株 主 行 動 や コ ミュ ニ テ ィ投 資 が 主 に 小 規 模 な 市 民 運 動

組 織 や 協 同組 合 金 融 機 関 に よ っ て,大 企 業 と対 抗 す る形 で 続 い て きた(そ

の た め 国 内 で 大 きな

力 を持 ち え て い な い)の

に対 し,ス ク リー ニ ン グは 市 民 運 動 の 系 譜 と 関係 の 薄 い と こ ろで,企

業 主 導 で 始 め られ た こ とが,背

景 と な っ て い る の で は な い か 。

と りわ け コ ミュ ニ テ ィ投 資 は,最 近 で こ そ 少 しず つ 注 目 さ れ て き て い る が17),SRI全

体 の 中

で も"別 物"と

して 扱 わ れ,議 論 の 対 象 か ら除 か れ る 傾 向 に あ っ た と考 え られ る 。

コ ミュ ニ テ ィ投 資 がSRIの 議 論 の 対 象 か ら除 か れ,機

関 投 資 家 の 関 心 も薄 い傾 向 に あ っ た理

由 と して,次

の3点 が 考 え られ る。

① 「投 資 」(investment)の 意 味 が や や 異 な る

(8)

同 じ「

投 資 」と い っ て も,ス

ク リー ニ ン グ や 株主 行 動 で 意 味 す る投 資 は金 融 投 資,す

な わ ち企

業 の株 式(equity)や

債 権(debt)な

ど の 有 価 証 券 を購 入 す る こ と を意 味 す る が,コ

ミュ ニ テ

ィ投 資 の 場 合 は,公 共 投 資,す

な わ ち地 域 住 民 の 生 活 に 密 着 した社 会 資 本 を整 備 した り,地 域

住 民 の 活 動 を支 援 した り,地 域 の 住 民 や 企 業 に資 金 を積 極 的 に融 通 す る こ と を意 味 す る こ とが

多 い 。公 共 投 資 の場 合 は,特

定 の 投 資 家 に収 益 が 帰 属 す るの で は な く,現 在 及 び 将 来 の 世 代 に

帰 属 す る点 で,有 価 証 券 に よる 投 資 と は異 な る。 無 論,地

域 経 済 が 活 性 化 す る こ と に よ り,企

業 自 身 も 間接 的 に利 益 を得 る こ とは あ り うる 。 ま た,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 の 場 合 は,株 式 の購 入

と い う よ り も住 民 組 織 や 非 営 利 組 織 へ の 寄 付,個

人 住 宅 や 小 規 模 零 細 企 業 へ の 低 利 融 資(マ

ク ロ ク レジ ッ ト)な ど,多 様 な 形 態 を と り う る。 した が って,こ

れ ら の公 共 投 資(特

に寄 付 活

動)を

金 融 投 資 と は 区 別 して,社 会 貢 献 活 動(communityinvolvementと

もい う)と み な す 場

合 もあ る18)。

本 論 文 で 「コ ミュ ニ テ ィ投 資 」 とい う場 合,社

会 貢 献 的 な意 味 合 い の 強 い,コ

ミュ ニ テ ィへ

の 純 粋 な寄 付 活 動 とは 区 別 し,一 定 の ビ ジ ネ ス と して成 り立 ち うる 活 動 とい う意 味 で,コ

ミ ュ

ニ テ ィ に立 地 す る小 規 模 零 細 企 業 お よ び個 人 に対 す る投 融 資 を指 す 。 融 資 を受 け た 企 業 や個 人

は返 済 の,出

資 の場 合 は配 当 金 支 払 い の 義 務 を負 う点 が,寄 付 と異 な る。

また,一

般 的 に コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 は,経 済 的 に貧 困 で 問 題 を抱 え た地 域 の 再 生 だ と捉 え られ

る傾 向 に あ るが,自

然 環 境 に 配 慮 した 事 業 や フェ ア トレ ー ド事 業 な ど も含 め て捉 え る19)。

② コ ミュ ニ テ ィ投 資 は ハ イ リス ク で あ る

一 般 にSRI(ス

ク リー ニ ン グ)の 対 象 と な る の は 株 式 を上 場 して い る大 企 業 で あ り

,投 資 家

に と っ て も,大 企 業 に とっ て も,SRIは

リス ク管 理 に役 立 つ と一 般 に 認 識 され て い る。 す な わ

ちSRIで 高 い評 価 を得 る 企 業 は経 営 が しっ か り して い る か ら不 祥 事 を起 こ す 確 率 が 低 く,持 続

性 が あ り,長 期 的 な利 益 を 期 待 し う る とみ な され る。

しか し,コ

ミ ュニ テ ィ投 資 が 主 に フ ィー ル ドと して い る地 域 は 経 済 が 停 滞 し,貧 困層 が 多 く

住 ん で い る な ど,問 題 を多 く抱 え て い る。 また 主 な 融 資 対 象 は経 営 の 安 定 した大 企 業 で は な く,

個 人 や 小 規 模 零 細 企 業 が 主 で あ り,融 資 の リ ス ク が 相 対 的 に 高 い20)。 そ の 上,金

額 的 に も大

企 業 へ の投 資 に 比 べ れ ば ご くわ ず か な た め,ス

ケ ー ル ・メ リ ッ トの 享 受 は 期 待 で き な い 。

他 方 で,た

と え ば年 金 基 金 な どの 機 関 投 資 家 は,受 託 者 責 任 を課 せ られ て い る。 資 金 運 用 の

担 当 者 が た とえ 個 人 的 に,コ

ミ ュ ニ テ ィ投 資 の もつ 社 会 的意 義 に理 解 を示 した と して も,プ ル

ー デ ン トマ ン ・ル ー ル に 反 した 投 資 決 定 を行 うこ と は許 され て い な い 。 ス ク リー ニ ン グが 受 託

者 責 任 と の 関 係 で 正 当性 を持 ち え た の は,「 選 択 可 能 な他 の 投 資 と 同 等 の 経 済 的 価 値(リ

ス ク

を勘 案 した 投 資 の 期 待 リ タ ー ン)を 有 す る 限 り」21)にお い て で あ っ た 。 ま た実 際 に,Domini

(9)

コ ミュ ニテ ィ投 資 と非 営利 組織 の役 割 一

269 400SocialIndex(DSI)22)な ど がS&P500に 比 較 し て 高 い リ タ ー ン を 実 現 で き て い る こ と23) が 説 得 力 を 与 え て き た 。 し か し,経 済 的 に リ ス ク が 高 い コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 は,現 時 点 の 法 制 度 で は 受 託 者 責 任 に 反 す る こ と に な り か ね な い24)。

③ 日本 で は コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 と し て の認 識 が あ ま りな く,政 策 ・法 制 度 の裏 づ け もな い

欧米 諸 国 で コ ミュ ニ テ ィ投 資 と呼 ば れ て い る 実 践 が 日本 に皆 無 とい うわ け で は な い 。 後 述 の

よ うに,欧 米 諸 国 の コ ミュ ニ テ ィ投 資 と同 様 の,あ

る い は似 た実 践 は存 在 して きた が,そ

の実

践 の 背 後 に あ る社 会 的 文 脈 が 欧 米 諸 国 と 日本 とで は若 干 異 な っ て い る こ と も手 伝 っ て,「 コ ミ

ュ ニ テ ィ投 資 」と して 認 識 さ れ る こ とが あ ま り なか っ た 。

ま た,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 を促 進 す る政 策,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 の優 遇 税 制 や 支 援 基 金 な ど裏 づ

け とな る法 制 度 が 日本 に は ま だ存 在 しな い 。 む しろ 金 融 行 政 は従 来,金 融 検 査 マ ニ ュ ア ル の適

用 に象 徴 さ れ る よ う に,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 を抑 制 す る 政 策 を採 り続 け て き た 。

こ れ らの 社 会 的 ・法 制 度 的 環 境 が 原 因 と な っ て,日 本 で コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 に注 目 して 論 じる

意 味 が 見 出 しに くか っ た,と い うこ とが 考 え ら れ る 。

以 上3点 にわ た っ て,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 に対 す る 関 心 が 薄 い 理 由 を検 討 して きた が,見

方 を

変 えれ ば,今 後 コ ミ ュニ テ ィ投 資 へ の 関 心 が 高 ま る可 能 性 は充 分 あ り得 る 。

第 一 はCSRの

要 件,ス

ク リー ニ ン グ判 断 基 準 へ の 組 み 込 み で あ る 。 現 時 点 で は,一 般 的 に

ス ク リ ー ニ ン グ の 要 件 に組 み入 れ られ て い る の は コ ミュ ニ テ ィへ の 寄 付 や ボ ラ ンテ ィ ア に よる

支 援 で あ り,広 い 意 味 で の コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 で あ る が,金

融 投 資 の 意 味 合 い は 強 くな い25)。

しか し,寄 付 や ボ ラ ンテ ィ ア な どの 社 会 貢 献 活 動 に は 限 界 が あ り,ビ ジ ネ ス が あ る程 度 成 立 し

な け れ ば,そ れ 以 上 の発 展 は見 込 め な い 。

そ も そ もSRIの ス ク リー ニ ン グ 判 断 基 準 は万 古 普 遍 の もの で は な い 。 人 種 隔 離 政 策 や 児 童 労

働,大

気 汚 染 な ど杜 会 を と りま く多 様 な 問 題 と と も に,ト

リ プ ル ・ボ トム ラ イ ン と して体 系 化

し,内 実 を豊 か に して きた とい え る。 そ れ と 同 時 に,ス

ク リ ー ニ ン グ の判 断 基 準 が発 展 す る基

本 的 な 前 提 と し て,民 度 の 高 ま りが 欠 か せ な い とい う こ とは 指 摘 して お きた い 。 市 民 杜 会 が企

業 社 会 責 任 の最 低 基 準 に つ い て合 意 し,企 業 が 基 準 を満 た す こ と を当 然 の 義 務 と して 認 識 す る

社 会 状 況 が あ っ て初 め て,CSRは

成 り立 ち う る 。 そ の 最 低 基 準 に,CSRやSRIの

ス ク リ ー ニ ン

グの レベ ル も既 定 さ れ る 。

環 境 保 護 団体 や 人 権 擁 護 団体 な どの 要 求 に対 して 企 業 が 応 え る の は,

環 境 保 護 団 体 や 非 営 利 組 織 が 市 民 社 会 の 広 範 な世 論 を背 に負 っ て い る と い う代 表 性 が あ る か ら

と考 え られ る。 した が っ て,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 へ の社 会 の 関 心 が 高 まれ ば,将 来 的 に コ ミュニ

テ ィ投 資 が ス ク リー ニ ング の 基 準 に 含 ま れ る こ と も充 分 あ り得 る。

(10)

実 際,SRI推

進 団 体 で あ る社 会 投 資 フ ォー ラ ム(SocialInvestmentForum)は,ス

ク リー ニ

ン グや 株 主 行 動 だ け に と ど ま らず,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 に も注 目 し,積 極 的 に推 進 して い る(現

時 点 で は,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 を ス ク リ ー ニ ン グ基 準 に 組 み 込 ん で は い な い)26)。

第 二 は 法 制 度 的 環 境 の整 備 で あ る 。 ア メ リカや イ ギ リ ス な ど に お い て コ ミュ ニ テ ィ投 資 が 発

展 を見 せ て い る 背 景 に は,後 述 の よ う に,投 資 を促 進 す る積 極 的 な政 策 が 政 府 に よ っ て 進 め ら

れ,法

律 ・制 度 が 整 備 さ れ た こ と が 挙 げ られ る27)。 市 場 原 理 に 任 せ き り に して お い た の で は

投 資 が 進 ま な い 貧 困 地 域 や 自然 エ ネ ル ギ ー な ど は,税 制 優 遇 や 特 別 の 基 金 を設 け た り,再 保 険

の 仕 組 み を 整 え た り,企 業 活 動 に何 ら か の 制 限 を 加 え た りす る な どの 法 制 度 的 介 入 を 通 して,

投 資 を促 進 す る こ とが 有 効 で あ る 。

第 三 は コ ミュ ニ テ ィ投 資 が 単 な る 社 会 貢 献 や慈 善 事 業(→

コス ト要 因)で

は な く,ビ ジ ネ ス

チ ャ ン ス(→ 収 益 要 因)に

な り う る と の 見 方 が 広 が れ ば,社 会 的 圧 力 や 法 制 度 的 な後 押 しが あ

ま りな くて も,企 業 が 自発 的 に コ ミュ ニ テ ィ投 資 に積 極 的 な 姿 勢 を示 す こ と に な ろ う。SRI自

体,単

な る外 圧 で は な く結 果 的 に企 業 自身 の 利 益 に つ なが る とい う確 信 が ば ね に な っ て,多

の企 業 が 注 目 す る と こ ろ と な っ た 。 要 は,コ

ミュ ニ テ ィへ の投 資 に どれ ほ ど ビ ジ ネ ス と して の

潜 在 的 可 能 性 を見 出 す か にか か って い る わ け だが,他

方 で は 前 述 の よ う に コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 は

まだ ハ イ リ ス クだ とみ な さ れ て い る た め,リ

ス ク を どれ だ け 低 減 で き る かが,潜

在 的 可 能 性 を

高 め る こ と に つ な が る と考 え られ る。

加 え て,投

資 対 象 と な る社 会 的企 業(SocialEnterprises;SE)や

社 会 的 協 同組 合 が 経 済 復 興

だ け で な く雇 用 拡 大 や 福 祉 の面 か ら も注 目 され,ヨ

ー ロ ッパ 諸 国 で 成 長 を続 け て い る 。 日本 に

お い て も地 域 経 済 の 活 性 化 と して コ ミュ ニ テ ィ ・ビ ジ ネ ス が 注 目 を 集 め て い るが,他

方 で 社 会

的 企 業 や コ ミ ュニ テ ィ ・ビ ジ ネ ス,非 営 利 組 織 に と っ て,資 金 調 達 が 事 業 拡 大 に は不 可 欠 の 難

題 で あ り,そ の 面 か ら も コ ミュ ニ テ ィ投 資 の重 要 性 は 大 きい 。

コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 を 論 じ る 際 に 不 可 欠 の 存 在 が コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 金 融 機 関(Community DevelopmentFinancialInstitution:CDFI)で あ る 。 大 企 業 や 商 業 銀 行 が 直 接 零 細 な コ ミ ュ ニ テ ィ の 企 業 や 個 人 に 投 融 資 で き な い 場 合,CDFIは 両 者 の 間 に 入 っ て 資 金 の 円 滑 な 流 れ を 促 進 す る か ら で あ る 。 DominiはCDFIを,従 来 の 銀 行 や 金 融 機 関 か ら は 充 分 に 融 資 を 受 け ら れ な い コ ミ ュ ニ テ ィ を 中 心 に 融 資 す る 専 門 の 金 融 機 関 で あ る と 定 義 し,CDFIに は,コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 銀 行 (communitydevelopmentbank)や ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン(creditunionま た はcommunity developmentcreditunion:CDCU),貸 付 基 金(loanfunds),ベ ン チ ャ ー ・キ ャ ピ タ ル (venturecapitalfundsま た はcommunitydevelopmentventurecapitalfunds),零 細 企 業 融 資

(11)

コ ミュニ テ ィ投 資 と非 営利 組織 の役 割 一

271

(microenterpriseloanfunds)が

含 ま れ る とい う28)。主 な融 資 先 は 非 営 利 組 織,社

会 的 企 業,

協 同 組 合,コ

ミュ ニ テ ィ ・ロ ー ン ・フ ァ ン ド,個 人(住 宅 取 得)な

どで,既 存 の 金 融 機 関 か ら

は 融 資 され ない 低 所 得 層 の住 民 や 零 細 企 業,非

営 利 組 織 の 経 済 的 自立 を図 り,地 域 経 済 全 体 を

活性 化 す る こ と を 目的 と して い る。

CDFIsの

種 類 も融 資先 も多 様 で あ る が,あ

え て 大 き く二 つ の 流 れ に分 け る と,地 域 住 民個 人

に対 して住 宅 の 取 得 ・改 修,債

務 の返 済 ・貯 蓄 を促 進 す る こ と を主 な 目的 とす る 小 規 模 な ク レ

ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン と,社 会 的 企 業 や 非 営 利 組 織 に対 して 起 業 や 事 業 の 存 続 拡 大 を促 進 す る こ と

を主 な 目 的 とす る,比 較 的規 模 の 大 きい 開発 銀 行 や貸 付 基 金,ベ

ンチ ャー ・キ ャ ピ タ ル等 に 大

別 で き る 。 こ の 中 間 と して,個

人/家 族 経 営 に よ る 自営 業 へ の 支 援 が あ る 。 ク レジ ッ ト ・ユ ニ

オ ン は1930∼1940年

代 以 降 国 際 的 な 運 動 に よ りマ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス と して 普 及 し,現 在 で

は ア メ リ カ や イ ギ リス,カ

ナ ダ な ど の 先 進 国 ば か りで な く,バ ン グ ラデ シ ュ や イ ン ドネ シ ア,

フ ィ リ ピ ン,ボ

リ ビ アな ど,資 金 が 地 域 に 回 ら な い市 場 移 行 国 に お い て マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ンス

を行 う 金 融 機 関 が 誕 生 して い る29)。 他 方,ク

レジ ッ ト ・ユ ニ オ ンの 系 譜 とは 別 に,コ

ミュ ニ

テ ィ の 企 業 や 非 営 利 組 織 へ の 融 資 に よ り地 域 経 済 の 活 性 化 を 図 る コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 機 関 が

1990年 代 以 降 欧 米 を 中 心 と して 登 場 して お り,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 の 新 た な 局 面 を迎 え つ つ あ

る と考 え ら れ る 。

次 節 以 降 で は,ア メ リ カ,イ ギ リス,日 本 に お け る コ ミュ ニ テ ィ投 資 の 歴 史 的 発 展,法 制 度,

現 状,特

徴 的 な 事 例 を整 理 し,特 徴 を 明 らか に した い 。

(2)ア メ リ カ の コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 ① 歴 史 的 発 展 ア メ リ カ の コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 の 源 流 は 遠 く19世 紀 に 遡 る と も い わ れ る30)が,今 日 に 直 接 つ な が る コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 の 歴 史 は1960年 代 後 半 に 遡 る31)。1964年 の ジ ョ ン ソ ン 政 権 誕 生 以 降, 「貧 困 と の 戦 争 」政 策 で 連 邦 政 府 は 経 済 機 会 法(EconomicOpportunityActof1964)の 成 立 を は じ め,コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 に 本 腰 を い れ た32)。 連 邦 政 府 は コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 に 対 し て 積 極 的 に 補 助 金 を 支 給 し て き た 。 こ の コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 は,貧 困 地 区 に 設 置 し た コ ミ ュ ニ テ ィ ア ク シ ョ ン機 関 を 拠 点 と し て 社 会 サ ー ビ ス を 提 供 す る プ ロ グ ラ ム で あ り,民 間 の コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 法 人(Community DevelopmentCorporation;CDC)が 主 な 役 割 を 果 た し て き た 。 ま た,1960年 代 後 半 以 降,公 民 権 運 動 の 高 ま り に 応 え る か た ち で,コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 金 融 機 関CDFI(CommunityDevelopmentFinancialInstitution)の 設 立 が 本 格 的 に 始 ま っ た 。 住 宅 ・コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 法 が 成 立 し た1974年 以 降 は,イ ニ シ ア テ ィ ブ が 連 邦 政 府 か ら地 方 政 府

(12)

へ と 移 管 さ れ,地 方 政 府 の 裁 量 に よ っ て コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 が 進 め ら れ る よ う に な っ た 。 こ れ と 前 後 し て,1973年 に はMiltonDavieら に よ っ て 初 の コ ミ.ユニ テ ィ 開 発 専 門 の 金 融 機 関 で あ る 南 シ ョ ア 銀 行(SouthShoreBank;後 に シ ョ ア 銀 行ShoreBankと 改 称)が シ カ ゴ 市 に 設 立 さ れ,住 民 の 利 益 を 最 優 先 に し た 経 営 で 荒 廃 し た 地 域 を よ み が え ら せ る と と も に 銀 行 自体 の 経 営 も 業 績 を 伸 ば し,見 事 に 成 功 を 収 め た33)。Dominiに よ れ ば,こ ん に ち で も コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 組 織 に 親 近 感 を も ち,シ ョ ア 銀 行 の よ う な 金 融 機 関 に 投 資 し て い るSRI投 資 家 が い る と い う34)。 さ ら に1977年 に は 地 域 再 投 資 法(CommunityReinvestmentAct=CRA)が 成 立 し,地 域 へ の 責 任(低 所 得 地 域 へ の 融 資 や マ イ ノ リ テ ィ か らの 役 員 登 用 な ど)を 果 た さ な い 金 融 機 関 に は 支 店 開 設,合 併,買 収 な ど を 認 め な い と い う規 制 が 課 さ れ た 。 1980年 代 初 頭 以 降,「 小 さ な 政 府 」を ス ロ ー ガ ン に 掲 げ る レ ー ガ ン 政 権 の 誕 生 に よ り,コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 や 住 宅 政 策 の 予 算:は 大 幅 に 削 減 さ れ,CDCは 資 金 源 を 政 府 か ら 民 間 中 心 に 切 り 替 え ざ る を 得 な くな っ た 。CDCは 非 営 利 組 織(501(c)(3)団 体)と し て 非 課 税 の 特 典 を 持 ち,銀 行 ・財 団 か ら借 り た 資 金 や 政 府 機 関 か ら調 達 し た 補 助 金 を 地 域 の 事 業 者 に 融 資 す る こ と で,利 益 を 確 保 す る よ う に な っ た 。 だ が,一 方 で は レ ー ガ ン 政 権 の 下 で 進 め ら れ た 金 融 の 規 制 緩 和 に よ り 金 融 機 関 の 競 争 が 激 化 し,多 く の コ ミ ュ ニ テ ィ 金 融 機 関 が 破 綻 に 追 い 込 ま れ た 。 そ の た め,多 くの コ ミ ュ ニ テ ィ 金 融 機 関 が 消 滅 し,資 金 が コ ミ ュ ニ テ ィ に 還 元 さ れ ず に 大 規 模 な 商 業 銀 行 ・ユ ー ロ 市 場 に 集 中 す る な ど 深 刻 さ を増 した35)。 コ ミ ュ ニ テ ィ 金 融 の 破 綻 に 対 す る 政 策 の 一 つ が,ブ ッ シ ュ 政 権 に よ っ て1989年 に 行 わ れ た CRAの 規 制 強 化 で あ り,マ イ ノ リ テ ィ な ど 中 低 所 得 層 へ の 融 資 対 応 に 関 す る 報 告 書 を 公 開 す る よ う 求 め た 。 さ ら に ク リ ン ト ン 政 権 はCRAの 評 価 項 目 に,投 資 と サ ー ビ ス も 加 え る な ど 規 制 を さ ら に 強 化 し た 。 コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 は1990年 代 以 降 大 き な 成 長 を 見 せ た 。 も う 一 つ の 政 策 は,ク リ ン ト ン 政 権 に よ る リ ー グ ル 地 域 開 発 規 制 改 善 法(Riegle CommunityDevelopmentandRegulatoryImprovementActof1994:RCDRIA,通 称CDFI法, 1994年9月 成 立)と,CDFI法 に 基 づ き 設 置 さ れ た 地 域 開 発 金 融 機 関 基 金(Community DevelopmentFinancialInstitutionsFund;CDFIフ ァ ン ド)で あ り,CDFIフ ァ ン ドに よ っ て 年 間 数 千 万 円 ドル 規 模 で の コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 銀 行 な どCDFIへ の 助 成 が 始 ま っ た 。 ク リ ン ト ン 大 統 領 は か ね て よ りCDFIを 介 し た 住 民 主 導 に よ る 地 域 開 発 を 高 く評 価 し,政 策 の 柱 に す え る 意 向 を 表 明 し て い た と い う36)。 こ の フ ァ ン ド設 立 を 画 期 と し て ア メ リ カ のCDFIの 飛 躍 的 な 成 長 が 見 ら れ た37)。

② 法 制 度

A)CDFIフ

ァ ン ド

(13)

コ ミュニ テ ィ投 資 と非営利 組 織 の役割 一

273 CDFI法 は 従 来 あ っ た コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 関 連 の6つ の 法 律 を 統 合 し た も の で,低 所 得 層 の コ ミ ュ ニ テ ィ が 資 本 や 預 金 に ア ク セ ス す る 機 会 を 拡 充 す る と と も に,CDFIに 対 し て 連 邦 政 府 が 支 援 す る こ と を 定 め て い る 。 加 え て,CDFI基 金 の3分 の1を,銀 行 や 貯 蓄 金 融 機 関,CDFIに コ ミ ュ ニ テ ィ 融 資 し た り,CDFIに 投 資 し た り す る こ と を 奨 励 す る こ と に 充 て る 。 具 体 的 な 方 法 と し て,CDFIフ ァ ン ド を 完 全 な 国 営 事 業 と し て 創 設 し,CDFIに 対 す る 財 政 的 ・技 術 的 な 支 援 を 通 し て,CDFIの 増 加 ・普 及 を 図 る と さ れ て い る 。CDFIは フ ァ ン ドの 資 金(4年 間 で3 億8200万 ドル の 連 邦 政 府 予 算)を 得 て 低 所 得 者 用 住 宅 供 給,コ ミ ュ ニ テ ィ 施 設,地 域 商 業 振 興 な ど の 小 規 模 事 業,基 本 的 な 金 融 サ ー ビ ス 事 業 に 融 資 を 行 う 。CDFIフ ァ ン ド を 通 し て 資 金 を コ ミ ュ ニ テ ィ に 流 し込 む こ と が 法 制 度 の 要 点 だ が,本 来 の 目 的 は 単 に 政 府 の 資 金 を 流 し込 む こ と で は な く,こ れ を 呼 び 水 と し て 民 間 のCDFIの 力 量 形 成 と ネ ッ トワ ー ク 化 に 置 か れ て い る 38)。2004年9月 末 現 在 で,フ ァ ン ド創 設 以 来 全 米176の コ ミ ュ ニ テ ィ 組 織 に 対 し て 既 に 57,843,468ド ル が 供 給 さ れ,現 在68組 織 に 対 し て 約4665万 ドル が 供 給 さ れ て い る39)。 現 在 特 に 力 を 入 れ て い る の が 先 住 民 族(NativeIndians,NativeAmericans)コ ミ ュ ニ テ ィ に 対 す る 融 資40)で あ り,こ れ ま で に849万 ドル を 供 給 し た 。 B)免 税 制 度NMTC 2000年12月,連 邦 議 会 で 成 立 し た コ ミ ュ ニ テ ィ 再 開 発 免 税 法(CommunityRenewalTax ReliefAct)の 一 部 分 と し て 設 け ら れ た 免 税 制 度(TheNewMarketsTaxCreditprogram: NMTC)は,低 所 得 層 の 地 域(都 市 部 ・農 村 部 と も に)に お け る 不 動 産 取 引 や ベ ン チ ャ ー ・ビ ジ ネ ス へ の 投 資 を 促 進 す る こ ど で,低 所 得 層 の 地 域 で の 資 金 不 足 を 補 う こ と を 目 的 と し て い る 。 2001∼2007年 ま で の7年 間 に150億 ドル の 資 本 投 資 が 免 税 対 象 と な る た め 一 般 の 金 融 市 場 に 比 し て2∼3%安 く調 達 可 能 に な る と い う41)。 NMTCは,国 営 のCDFIフ ァ ン ドに よ っ て 管 理 運 営 さ れ,米 国 財 務 省 内 に 事 務 所 が 置 か れ て い る 。7年 間 の う ち 前 半 の3年 間 は 投 資 総 額 の5%相 当 額 を,CDEを 通 じ て 投 資 者 に 毎 年 還 元 さ れ,後 半 の4年 間 は 投 資 総 額 の6%相 当 額 を 毎 年 還 元 さ れ る 仕 組 み に な っ て い る42)。 投 資 者 は7年 間 の 事 業 が 完 了 す る ま で,投 資 し た 資 本 を 引 き 上 げ る こ と は で き な い 。 2002年 に 第1回 の 募 集(firstround)が 行 わ れ,345の コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 組 織(Community DevelopmentEntities;CDE)が 総 額25億 ドル 分 の 免 税 額 を 割 り当 て ら れ た(平 均1事 業 あ た り 3800万 ドル,最 低50万 ドル か ら最 高1。7億 ドル の 幅)。2004年5月 に は 第2回 の 割 り当 て と し て 35億 ドル 分 が62のCDEに 分 配 さ れ た43)。CDFIフ ァ ン ド に 申 請 す る に は,CDEと し て 米 国 内 の 組 織 で あ る こ と,低 所 得 の コ ミ ュ ニ テ ィ や 個 人 を 対 象 と す る こ と な ど の 条 件 を 満 た さ な け れ ば な ら な い と さ れ て い る 。

(14)

③ コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 の 現 状 フ ァ ン ドや 免 税 な ど の 法 制 度 に 支 え ら れ る 形 で,CDFI資 金 が 低 所 得 層 の 地 域 に 供 給 さ れ る シ ス テ ム が 近 年 発 達 ・定 着 し て き た 。CDFIの 数 も 現 在600を 超 え る ま で に な っ た44)。 CDFICoalition45)が442のCDFIを 対 象 に 行 っ た2002年 度 調 査 に よ れ ば,主 に 以 下 の よ う な デ ー タ が 得 ら れ た ・442組 織 の 総 資 産 は102億 ドル ・7800の 企 業 に 融 資 し,34000の 雇 用 を 支 え た 。 ・経 済 困 窮 者 の 抵 当4100件 を 帳 消 し に し た。 ま た4800人 にpaydayloan46)を 提 供 し た ・貧 困 地 域 に お け る500以 上 の コ ミ ュ ニ テ ィ 施 設 を建 設 ま た は 改 修 し た ・充 分 に 融 資 を 受 け ら れ な い 人 々 や コ ミ ュ ニ テ ィ に26億 ド ル の 資 金 を 融 資 し た47) 442のCDFIの う ち,組 織 数 の 最 も 多 い の が ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン(239),次 に 貸 付 資 金 (165),少 な い の は ベ ン チ ャ ー ・キ ャ ピ タ ル ・フ ァ ン ド(21)と 銀 行(17)で あ る 。 し か し, 資 産 規 模 で 大 き い の は 銀 行(平 均2.1億 ドル)で,CDFI全 体 の35%を 占 め る 。 ク レ ジ ッ ト ・ ユ ニ オ ン と 貸 付 基 金 は ,平 均 の 資 産 残 高 が そ れ ぞ れ1292万 ド ル,2031万 ドル と 小 さ い が, CDFI全 体 で は そ れ ぞ れ31%,34%を 占 め て い る 。 し た が っ て,銀 行 と ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン, 貸 付 基 金 が ほ ぼ3分 の1ず つ シ ェ ア を 持 っ て い る と 見 て よ い48)。 上 記 調 査 結 果 に よ れ ば 融 資 実 績 は 好 調 で,2002年 度 に は 貸 し倒 れ 率 が0.7%(金 融 機 関 全 体 の0.97%を 下 回 る)と,比 較 的 低 い49)。 融 資 先 の 種 別 を 見 る と,金 額 ベ ー ス で は 住 宅 が 融 資 全 体 の60%と 最 も 多 く,企 業 が18%, 個 人 が12%,コ ミ ュ ニ テ ィ サ ー ビ ス が6%と,個 人 向 け 融 資 が か な り の 割 合 を 占 め る 。 CDFIの 組 合 で あ る 全 国 コ ミ ュ ニ テ ィ 資 本 協 会(NationalCommunityCapitalAssociation; NCCA)に よ れ ば,1993年 に はCDFI1団 体 平 均180万 ド ル の 融 資 実 績 だ っ た の が,10年 後 の 2002年 末 に は 平 均2800万 ドル と,15倍 以 上 に 伸 び た50)。 他 方,社 会 投 資 フ ォ ー ラ ム(US1』SIF)が2003年 に 行 っ た 調 査 に よ れ ば,CDFIの 総 資 産 は 140億 ドル 。2001年 か ら2年 間 で 資 産 が84%も 増 加 し た と い う51)。 な お,コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 の 急 増 に 対 し て 懸 念 す る 向 き も あ り52),単 に 金 額 が 増 え れ ば そ れ で よ い と い う単 純 な 見 方 に は 立 て な い こ と が 分 か る 。 (3)イ ギ リ ス の コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 ① 歴 史 的 発 展 イ ギ リ ス の コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 の 源 流 は1964年,イ ギ リ ス 最 初 の ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン設 立 と 言 わ れ て い る53)。 ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン は そ の 後,1979年 に 成 立 し た ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ

(15)

コ ミュニ テ ィ投 資 と非営利 組織 の役割 一

275 ン 法 の 下 で 今 日 に 至 っ て い る 騒)が,今 日 の 本 格 的 なCDFIの 発 展 に 直 接 つ な が る 動 き は1997 年 の 労 働 党 ブ レ ア 政 権 の 誕 生 以 降 で,ま だ 日 が 浅 い 。1990年 代 初 頭 以 降,イ ギ リ ス 国 内 で の 貧 富 格 差 は 拡 大 し,貧 し い 地 域 は 社 会 福 祉 や 企 業 の 寄 付 に 依 存 す る 傾 向 に あ っ た が,貧 しい 地 域 の 経 済 的 自 立 を か え っ て 阻 む 荒 廃 の 悪 循 環 に 陥 っ た 。 こ う し た 状 況 に 対 し て 貧 し い 地 域 に 資 金 を 調 達 す る た め に 生 ま れ た の がCDFIsで あ っ た 。 ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン が 以 前 よ り,政 府 か ら の 手 厚 い 支 援 を 受 け て き た の に対 し,そ の 他 の CDFIは 法 制 度 的 な 位 置 づ け を 与 え ら れ な い ま ま で,存 在 が 政 府 に よ っ て 黙 認(benignneglect) さ れ る 傾 向 に あ っ た55)。 政 府 は1998年 以 降,ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン の み に と ど ま ら ず,よ り 広 くCDFI全 体 を 強 力 に 支 援 す る 政 策 を 打 ち 出 す こ と に な る 。1998年,政 府 部 内 の 社 会 的 排 除 局 が,社 会 的 排 除 に 関 す る 政 策 を 検 討 し た 結 果,貧 困 地 域 の 企 業 を 支 援 す る 組 織 を 政 府 が 支 援 す る 政 策 が 欠 如 して い る こ と を 見 出 し た 。 そ の 結 果,中 小 企 業 局(SmallBusinessService;SBS)が 貧 困 地 域 の 企 業 を 支 援 す るCDFIsを 奨 励 し,ま た フ ェ ニ ッ ク ス ・フ ァ ン ド(PhoenixFund)を1999年 に 設 立' す る こ と と な っ た の で あ る 。 だ が,基 金 の プ ロ グ ラ ム の う ち い くつ か は,イ ン グ ラ ン ド だ け に 領 域 を 限 定 し て い た た め,ス コ ッ ト ラ ン ド政 府 は 独 自 の 政 策 と し て,SocialInvestment Scotlandを 通 し て ス コ ッ トラ ン ド 内 の 社 会 的 企 業 へ の 資 金 調 達 を 図 る と と も に,新 た なCDFIs の 設 立 も 支 援 す る こ と と し た56)。 2000年10月,政 府 部 内 の 社 会 投 資 タ ス ク フ ォ ー ス(SocialInvestmentTaskForce:SITF)が 勧 告"EnterprisingCommunities:WealthBeyondWelfare"を 大 蔵 大 臣 に 提 出 し た57)。 こ の 勧 告 に は,① 免 税 制 度(CITR),② ベ ン チ ャ ー 基 金,③ 融 資 不 十 分 な 地 域 へ の 投 資 に 関 す る 銀 行 の 情 報 公 開,④ 公 益 信 託 ・財 団 に よ る コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 投 資 に 対 し て 裁 量 権 の 拡 大,⑤CDFIs お よ びCDFIs推 進 組 織 へ の 支 援,の5項 目 が 盛 り込 ま れ た 。 こ の 勧 告 の 大 部 分 が 実 行 に 移 さ れ, 勧 告 は イ ギ リ ス の コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 に 大 き な 画 期 を も た ら し た 。 こ の う ち ⑤ に 関 し て は,CDFIsの 推 進 組 織 と し て コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 金 融 協 会(Community DevelopmentF三nanceAssociation;cdfa)が,UKSIFの 支 援 を 受 け て1年 間 の 準 備 期 間 を 経 て 2002年4月 に 設 立 さ れ た 。 こ の 勧 告 がCDFIs推 進 組 織 設 立 を 取 りい れ た の は,ア メ リ カ で の 経 験 を 参 考 に し た と い わ れ て い る58)。 CDFIsの 法 的 地 位 が 改 善 を み た の も こ の 時 期 で あ っ た 。 従 来,CDFIsは 営 利 と 非 営 利 の 境 界 線 上 に あ る と み な さ れ て き た が,チ ャ リ テ ィ 委 員 会 は2000年12月,「 コ ミ ュ ニ テ ィ の 力 量 形 成 」を チ ャ リ テ ィ の 目 的 条 項 と し て 新 た に 加 え る こ と を 宣 言,2001年 末 ま で に チ ャ リ テ ィ と し てCDFIsを 認 め る ガ イ ド ラ イ ン を 設 け る こ と を 決 め た 。 こ れ に よ っ て,CDFIsは 一 定 の 条 件 さ え ク リ ア す れ ば チ ャ リ テ ィ と し て の 地 位 を確 保 で き る こ と と な っ た59)。

(16)

② 法 制 度 A)フ ェ ニ ッ ク ス ・フ ァ ン ド フ ェ ニ ッ ク ス ・フ ァ ン ド(PhoenixFund)は,貿 易 産 業 相 に よ っ て1999年11月 に 設 立 さ れ た 基 金 で あ る 。 こ の 基 金 は,貧 困 な 地 域,少 数 民 族 や 女 性 と い っ た,事 業 へ の 支 援 や 融 資 を 受 け に く い 人 々 に 対 し て 融 資 の 機 会 を 提 供 す る こ と を 目 的 と し,あ わ せ て 社 会 的 企 業(social enterprises)の 創 設 ・発 展 を も促 進 す る 。 た だ し,社 会 的 企 業 が 直 接 融 資 を 受 け る の で は な く, CDFIsな ど の 専 門 イ ン タ ー ミ デ ィ ア リ を 通 し て と い う こ と に な る 。 CDFIsへ の 融 資 プ ロ グ ラ ム(SupportforCommunityDevelopmentFinanceInstitutions/ ChallengeFund)は,基 金 の 数 あ る プ ロ グ ラ ム の ひ と つ で60),1999年 か ら2003年 ま で(第1 ∼2期)に ,4QのCDFIsに 対 し 約2000万 ポ ン ドの 資 金 を 供 給 し た61)。SBSは2003年3月 に 第3 期(2003-2006)の 募 集 を 始 め た 。 現 在,CDFIsの 収 入 の な か で,フ ェ ニ ッ ク ス ・ フ ァ ン ドか ら の 資 金 が 占 め る 割 合 は30%を 占 め,最 大 の 収 入 源 と な っ て い る と と も に,CDFIsセ ク タ ー の 急 成 長 を 経 済 的 に 支 え て き た62)。 だ が フ ェ ニ ッ ク ス ・フ ァ ン ド は2006年 を も っ て 終 了 の 予 定 で あ り,2007年 以 降 最 大 の 収 入 源 を 失 う こ と に な るCDFIsは,将 来 へ の 危 機 感 を 募 らせ て い る63)。 B)免 税 制 度CITR 免 税 制 度(TheCommunityInvestmentTaxRelief(AccreditationofCommunity DevelopmentFinanceInstitutions)Regulations200;CITR)は,2002年 の 金 融 法(theFinance Act)に 盛 り込 ま れ,2003年1月 に 発 効 し た 制 度 で あ り,SBSに よ っ て 認 定 さ れ たCDFIs餌)に 対 し て 個 人 投 資 家 ま た は 機 関 投 資 家 が 投 資65)し,CDFIsが そ れ で 得 た 資 金 を 貧 困 地 域 の 企 業 に 投 資 す る こ と を 奨 励 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 具 体 的 に は 投 資 家 の 納 税 義 務(所 得 税 ・法 人 税)を 減 免 す る も の で,投 資 額 の5%に 相 当 す る 額 ま で の 減 税 を,5年 間 に わ た り認 め る(=し た が っ て,5年 間 全 体 で は 投 資 額 の25%に あ た る 減 税 と な る)こ と に よ っ て 投 資 を 呼 び 込 も う と し て い る 。 投 資 家 に と っ て は 減 税 の メ リ ッ ト を 享 受 し,CDFIsは,5%以 上 の 高 率 で 投 資 を 募 る こ と が で き る と い う メ リ ッ ト を 享 受 で き る 。 CITRは,投 資 家 に と っ て 好 条 件 を 提 示 し て い る た め,一 般 に 歓 迎 さ れ て い る 。 ま た こ う し た 制 度 の 効 果 も あ っ て,商 業 銀 行 に 比 べ てCDFIsは 高 い 成 長 率 を 誇 っ て い る 。 し か し,他 方 で は 投 資 家 に と っ て 制 度 が 難 解 で あ る と い う批 判 や,コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 促 進 政 策 と し て 効 果 が 期 待 で き る の か と い う 疑 問 も 出 さ れ て お り,CITRを め ぐ っ て は 賛 否 両 論 が 続 い て い る と い わ れ て い る66)。

(17)

コ ミュ ニテ ィ投資 と非 営利 組織 の 役割 一

277

C)単

一 振 興 予 算:SRB

イ ギ リス の地 域 再 生 政 策 の主 な事 業 は 単 一 振 興 予 算(SingleRegenerationBudget:SRB)で

あ る。SRBは

衰 退 ・荒 廃 した地 域 を改 善 し,生 活 の 質 を高 め る こ と を 目的 と し,地 方 政 府 とボ

ラ ン タ リ ー組 織

自治 組 織 な どが パ ー トナ ー シ ップ を組 ん で 行 う事 業 に対 して補 助 金 を支 給 す

る政 策 で あ る67)。 事 業 の 対 象 は 教 育 ・職 業 訓 練,住

宅 の 改 善,少

数 民 族 の 利 益 擁 護,安

全 性

の 向上 な ど で,CDFIsと

目的 で 重 な る部 分 が 多 い。SRBも

社 会 投 資 とい う広 い 意 味 で は コ ミ ュ

ニ テ ィ投 資 に含 まれ る 。 しか し,SRBは

融 資 で は な く補 助 金 で あ る こ と,CDFIsは

地 域 の 企 業

の 育 成 を 目指 して い る こ と を考 え る と,基 本 的 に ア プ ロ ー チ は 異 な る 。

③ 現 状 と 課 題 イ ギ リ ス 国 内 のCDFIsの 数(ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン を 除 く68))は,正 確 に は 把 握 さ れ て い な い が,60∼70程 度 存 在 し て い る と 推 計 さ れ て い る 。 そ の う ち,CDFIsの 全 国 組 織 で あ る cdfaに 加 盟 し て い るCDFIsは51組 織 に の ぼ る(2004年9月 現 在)69)。 CDFIsは,前 述 の 政 策 ・法 制 度 に 支 え ら れ て,近 年 急 速 に そ の 数 を 増 や し て き た70)。cdfa の 調 査 に よ れ ば,調 査 対 象CDFIs36組 織 の う ち,設 立 さ れ た ば か り の 組 織 が17%,設 立 後2 年 未 満 の 組 織 が36%で 全 体 の 過 半 数 を 占 め る の に 対 し,10年 以 上 経 過 し て い る も の は14%に と ど ま る 。 36組 織 の 調 査 の 結 果,以 下 の よ う な デ ー タ が 得 ら れ た71)。 ・融 資 は4,292件,総 額 約1億 ポ ン ド 資 産 総 額 は2.2億 ポ ン ド ・主 な 融 資 先 は 社 会 的 企 業,個 人 融 資 ・事 業 向 け 融 資 で は 建 物 の 購 入 ・改 修,人 件 費,設 備 投 資,つ な ぎ 融 資 な ど に使 わ れ る ・個 人 向 け 融 資 で は 緊 急 時,住 宅 改 修,負 債 の 借 り換 え,職 探 し の 費 用 な ど に 使 わ れ る ・融 資 額 は3,000∼60,000ポ ン ド程 度 の 幅 で,事 業 向 け 融 資 は 平 均 で4,000ポ ン ド程 度,小 企 業 は2万 ポ ン ド,社 会 的 企 業 は5万 ポ ン ド,個 人 は2,000ポ ン ドが 平 均 値 。 ・融 資 先 の ポ ー ト フ ォ リ オ を 見 る と,融 資 総 額 の 社 会 的 企 業 が55%と 過 半 を 占 め,次 に 零 細 企 業17%,中 企 業16%,小 企 業9%と 続 き,個 人 住 宅 は0.16%と ご く わ ず か 。 CDFIの 資 産 規 模 を み る と,中 規 模(50∼100万 ポ ン ド)が 全 体 の3分 の1を 占 め る が,零 細 (10万 ポ ン ド未 満)や,大 規 模(500万 ポ ン ド以 上)も1割 程 度 存 在 す る 。 歴 史 の 長 い 組 織 の ほ う が 比 較 的 大 規 模 で,成 長 が 速 い と い う傾 向 に あ っ た 。 イ ギ リ ス のCDFIsの 課 題 は,ま ず 認 知 度 の 低 さ で あ る 。 コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 の 需 要 は 高 い が,

(18)

設 立 か ら 日が 浅 い 組織 が 多 く,ま だ 社 会 の 中 で 市 民 権 を得 て い る と は言 え な い状 態 な の で,大

き な ギ ャ ッ プ が存 在 して い る 。 こ の ギ ャ ップ を埋 め る た め に社 会 に 対 す る 普 及 啓 発 活 動 が 求 め

ら れ る72)。

次 に,リ

ス ク の 大 き さ で あ る。 貧 困 地 域 や 少 数 民 族 な ど経 済 的 に 不 利 な 人 々 に対 して 融 資 す

る こ とか ら,担 保 価値 の 確 保 と い う点 で は確 か に ハ イ リス ク で あ る 。 そ の上,ア

メ リ カの よ う

に 再 保 険 制 度 が まだ整 っ て い な い 。

した が っ て 民 間 の資 本 を呼 び 込 む前 提 条 件 と して,い

か に融 資 の リス ク を減 らす か が 課 題 と

な っ て くる 。CDFIsは,コ

ミュ ニ テ ィ単 位 で の共 同保 証 や,バ

ング ラデ シ ュ の グ ラ ミ ンバ ン ク

の よ う に起 業 す る 数名 単 位 の 共 同 保 証 に して,仲 間 同 士 の 圧 力(peerpressure)を

利 用 し,不

良 債 権 化 を避 け て い る 。 経 済 的 に不 利 な,貧

しい人 々 を対 象 に した融 資 で あ る こ とか ら,資 産

や 収 入 の 担 保 価 値 はあ ま り期 待 で き な い 。CDFIsは

融 資 の 際 に,債 務 者 の 資 産 ・収 入 の多 寡 だ

け で は な く事 業(プ

ロ ジ ェ ク ト)の 内容 ・安 定 性 を重 視 して い る と い う。 現 在 貸 し倒 れ率(ロ

ス 率)は12%だ

が,こ

れ で は ま だ リス クが 高 く,民 間 の 投 資 を呼 び込 む に は不 十 分 な の で ,

債 務 者 に対 して企 業 経 営 や 融 資 に 関 す る ア ドバ イ ス をす る な ど,キ

ャパ シテ ィ ・ビル デ ィ ン グ

を行 う必 要 が あ る。 ま た,CDFIsの

融 資 担 当 者 も専 門 性 を 高 め る こ とが 強 く求 め られ て い る。

CDFIsの

キ ャ パ シテ ィ ・ビル デ ィ ン グ を進 め る こ とが,cdfaに 求 め ら れ る 役 割 の 一 つ で あ り,

cdfaは 個 別 のCDFIに

対 して トレー ニ ン グ を行 っ た り,先 進 的 な 実 践 例(BestPractice)を

介 した り,ニ ュ ー ス レ ター や 書 籍 の 出 版 で情 報提 供 した り,会 員 同 士 の交 流 に努 め た り,さ ら

に は ア メ リ カ ・シ カ ゴへ の ツ ア ー を企 画 す る な ど,会 員 のCDFIsに

対 して さ ま ざ ま な サ ー ビ

ス を提 供 し て い る73)。

cdfaの 側 は,政 府 の 補 助 金 が 注 ぎ こ まれ て い る 「ソ フ トロ ー ン ・フ ァ ン ド」(緩 や か な条 件

の 融 資,軟

貨 借 款,長

期 低 利 貸 付 の 意)とCDFIsは

異 な り,ソ フ トロ ー ンは 融 資 の 焦 げ 付 き

も多 くCDFIsよ

り もパ フ ォー マ ンス が 低 い と主 張 して,一 線 を画 して い る74)。

④ 事 例 CDFIは コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 金 融 機 関 の 総 称 で あ っ て,そ の 実 態 は 極 め て 多 様 で あ る 。 イ ギ リ ス 全 土 を 活 動 エ リ ア に し て い る 比 較 的 大 規 模 な 組 織 も あ れ ば,一 つ の 地 域(た と え ば ロ ン ド ン) だ け に 限 定 し て い る 組 織 も あ る 。 営 利 企 業 も あ れ ば,非 営 利 組 織 も あ り,ま た 政 府 系 に 近 い 組 織 も あ る 。 こ こ で は2つ の 事 例 を 挙 げ る に と どめ た い 。 o麗Londonは,大 ロ ン ド ン 開 発 公 社(GreaterLondonEnterprise:GLE)75)の 一 部 門 と し て 設 立 さ れ たCDFIで,企 業 経 営 支 援 と コ ミ ュ ニ テ ィ 形 成 支 援 を 幅 広 く手 が け て い る 。 企 業 経 営 支 援 と し て は,融 資,経 営 上 の 助 言 ・指 導,黒 人 ・マ イ ノ リ テ ィ の 事 業 支 援 な ど を 行 う。

(19)

コ ミュニ テ ィ投資 と非営利 組織 の役割 一

279

コ ミュ ニ テ ィ形 成 支 援 と して は,若 者 へ の 教 育,学

校 と企 業 の連 携

職 業 訓 練,CSR活

動 へ

の 支 援 な ど を行 っ て い る 。2002年 に は6000人 以 上 の事 業 主 を支 援 し,200の

新 し く生 ま れた 企

業 に100万 ポ ン ド以 上 を融 資 し,不 利 益 を こ うむ っ て い る ロ ン ドン市 民300人 以 上 に 職 を与 え

た 。2002年 度 の 貸 付 基 金 は170万 ポ ン ドに達 し,片 親 の 家 庭 や 難 民,女

性,黒

人 ・少 数 民 族 な

ど に よる 事 業 に融 資 した76)。

(4)欧 米 の コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 こ れ ま で ア メ リ カ,イ ギ リ ス に お け る コ ミ ュ ニ テ ィ 投 資 の 歴 史 的 経 過 と 政 策 ・法 制 度,現 状 と 課 題 を 概 観 し て き た 。イ ギ リ ス 以 外 の ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 に 目 を 転 じ れ ば,イ タ リ ア の 倫 理 銀 行, オ ラ ン ダ の ト リ オ ドス 銀 行 な ど,コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 を 担 う ソ ー シ ャ ル バ ン ク77)の 事 例 は 少 な く な い 。 国 際 的 に は,ソ ー シ ャ ル バ ン ク の 国 際 ネ ッ トワ ー ク 組 織(lnternationalAssociationof InvestorsintheSocia}Economy:INAISE;本 部 ベ ル ギ ー)が1989年 に 設 立 さ れ,ヨ ー ロ ッパ を 中 心 と す る19力 国41組 織 が 加 盟 し て い る78)。 こ こ に 加 盟 し て い る 金 融 機 関 は 銀 行 の ほ か,協 同 組 合 金 融 機 関,非 営 利 組 織,財 団,ベ ン チ ャ ー ・キ ャ ピ タ ル ・フ ァ ン ド な ど で,主 に 非 営 利 ・協 同 セ ク タ ー に よ っ て 構 成 さ れ て い る と い え る 。 こ れ ら の 非 営 利 組 織 協 同 組 倉 金 融 機 関 は,政 府 と コ ミ ュ ニ テ ィ の 住 民,非 営 利 組 織 企 業, 投 資 家 な ど多 様 な 主 体 間 の 橋 渡 し と し て 中 心 的 な 役 割 を 果 た し て き た 。 ま た,資 金 仲 介 に と ど ま ら ず,衰 退 し た コ ミ ュ ニ テ ィ に 密 着 し な が ら,住 民 の 要 求 に 応 え る か た ち で コ ミ ュ ニ テ ィ再 生 を 図 っ て き た 点 で,商 業 銀 行 と 決 定 的 に 異 な っ て い る 。 住 民 の 生 活 ・事 業 に 密 着 し な が ら コ ミ ュ ニ テ ィ の 再 生 を 図 り,地 域 経 済 の 自 律 的 な 発 展 を 支 え て き た こ と は,起 業(start・up)時 や 事 業 拡 大 時 な ど に 経 営 ノ ウ ハ ウ を 提 供 し た り,学 校 と の 連 携 を 図 っ た り,若 者 に 対 す る 職 業 訓 練 や 雇 用 促 進 の 啓 発 活 動 を 行 っ た り す る 点 に 顕 著 に 現 れ て い る 。 ご く小 規 模 な ク レ ジ ッ ト ・ユ ニ オ ン は ア メ リ カ ・イ ギ リ ス と も に 数 十 年 の 長 い 歴 史 を 持 っ て い る が,CDFIと い う コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 専 門 の 金 融 機 関 は,生 ま れ て か ら ま だ 日 が 浅 く,課 題 も 多 い 。 ア メ リ カ や イ ギ リ ス で 見 ら れ る コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 の 現 状 と 課 題 は,日 本 の 今 後 に 対 し て 豊 か な 示 唆 を 与 え て い る と い え よ う 。

(5)日 本 の コ ミ ュニ テ ィ投 資

そ もそ も 日本 で は コ ミュ ニ テ ィ投 資 とい う用 語 自体 な じみ が 薄 く,ど の 活 動 を も っ て コ.ミュ

ニ テ ィ投 資 と称 す る か は,ま だ 確 立 され て い な い と考 え ら れ る 。 ま して,日 本 に お け る コ ミュ

ニ テ ィ投 資 の 市 場 が何 億 円 か とい っ た 統 計 も,コ

ミュ ニ テ ィ投 資 を促 進 す る政 策 ・法 制 度 も存

在 しな い 。 本 節 で は,欧 米 で 行 わ れ て い る コ ミ ュ ニ テ ィ投 資 に 相 当 す る と思 わ れ る活 動 をい く

参照

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