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(1)

誤 りがちDNA修

復の分子機構-大腸菌のUmuD, UmuC, RecA, DNA

複製酵素と紫外線誘発突然変異-分 子 生 物 学 の 進 歩 に より, 癌 や 遺 伝 的 疾 患 が 遺伝 子 の 変 異 に 基 づ く病 気 であ る こ と が明 らか に な りつ つ あ る。 しか し, こ う した 遺 伝 子 の 変 異 (点 突 然 変 異 や 欠 失 突 然 変 異) が ど の よ うな 機 構 に よ り生 ず るの か は, 意 外 な ほ ど解 明 さ れ て い な い 。 そ れ は 単 に高 等 生 物 に お い て不 明 な だ けで な く, 大 腸 菌 で 起 こ る突 然 変 異 誘 発 の し くみ に も大 き な謎 が 残 さ れ て い る。 本 稿 で は, 突 然 変 異 誘 発 の メ カニ ズ ム に 関 して 最 も研 究 が 進 ん で い る, 大 腸 菌 の 紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 の 分 子 機 構 に つ い て, umuDC 遺 伝 子 の 構 造 と機 能 を 中 心 に 研 究 の 現 状 を 紹 介 す る。 は じめ に わ れ わ れ の身 の まわ りには 遺 伝 子DNAに 損 傷 を与 え る 因子 が多 数 存 在 して い る。 紫 外 線 やX線 な ど放 射 線 の ほ か, わ れ わ れ が 日常 接 して い る大 気 や 食 品 中 に も, 生物 の遺 伝 物 質 に損 傷 を 与 え 変 異 を 起 こす 物 質 (環 境変 異原) が 多 数 含 まれ て い る。また, わ れ わ れ の細 胞 内 で は, 酸 素代 謝 の 過 程 で 生 ず る 活 性 酸 素 が た え ず DNAに 損傷 を与 え て い る^<*1>。生 物 は こ う した 状 況 下 で そ の遺 伝 物質 を正 確 に複 製 し, 次 世 代, 次 細 胞 に誤 りな く遺 伝 情 報 を伝 え ねば な らな い。 こ のた め 生 物 は遺 伝 子 DNAを 防 御 し, 複 製 の エ ラー を低 減 す るた め に, さ ま ざま な シス テ ム (組換 え修 復, 除 去 修 復, ミス ・マ ッチ 修 復, DNA複 製酵 素 の 校 正機 能 な ど) を 工 夫 して い る^<2)>。 しか し, こ う した変 異 を防 ぐシ ス テ ム の容 量 を越 え て 遺 伝 子 に 損 傷 が起 こる と, 突 然 変 異 や 細 胞 死 が起 こる。 本 稿 で 取 り あ げ る 大 腸 菌 の 「誤 りが ちDNA修 復 系 (error-prone repair system)」 は, こ う した 際 に変 異 の 誘 発 を 促 進 す る シス テ ム で あ り, 大 腸 菌 の umuD, umu C遺 伝 子産 物 は RecA 蛋 白 質 と と もに, この系 に お い て 必 須 な 役 割 を果 た して い る^<3)>。 紫 外 線 や メチ ル メタ ンスル ホ ン酸 (MMS), 4-ニ トロ キ ノ リン1-オ キ シ ド (4NQO) な ど の変 異 原 がDNA に 作 用 す る と, 修 飾 塩 基 が形 成 されDNA複 製 が 阻害 さ れ る。 しか し, こ の よ うなDNA上 の 損 傷 が, た だ ち に 突 然 変 異 に 結 び つ くわ け で は な い。 こ う したDNA損 傷 は, DNA複 製 酵 素, UmuD, UmuC, RecA な どが 関 与 す る処 理 過 程 (damage processing) を経 て初 め て 突 然 変 異 に固 定 され る の で あ り, も し, これ ら生体 側 の 因 子 が 不 活 性 化 して いれ ば, 細 胞 死 は起 き て も突 然変 異 は 起 こ らな い^<*2>。実 際, umuD, umuC あ るい は recA 遺 伝 子 に欠 損 を もつ 大 腸 菌 は, 紫 外 線 や変 異原 物 質 に 曝 露 され て も 突 然 変 異 を 起 こさ な い 。 大 腸菌 の 「誤 りが ち DNA修 復 系」 を特 徴 づ け る第1の 点 は, UmuD, Umu C, RecA な ど生 体 側 の 因子 が, DNA損 傷 と と も に, 変 異 の誘 発 に必 須 な役 割 を演 じて い る とい う点 で あ る^<4)>。 大 腸 菌 の 「誤 りが ちDNA修 復 系」 の 第2の 特 徴 は, 突 然 変 異 の誘 発 に 必須 な 生 体側 の 因 子 がDNA損 傷 に よ り, 誘 導 (induction) さ れ る とい う点 で あ る^<4,5)>。DNA に損 傷 が 起 こ る と, 多 く の場 合DNA複 製 が 阻 害 され る が, umuD, umuC, recA 遺 伝 子 は い ず れ も こ う した 際 に発 現 が誘 導 され るSOS遺 伝 子 群^<*3>の一員 で あ る 。 し た が って, こ の大 腸 菌 の 「誤 りが ちDNA修 復 系」 は

Takekiko Nohmi, 国 立 衛 生 試 験 所 変 異 遺 伝 部 (〒158 東 京 都 世 田 谷 区 上 用 賀 1-18-1) [Division of Genetics and Mutagenesis,

National Institute of Hygienic Sciences, Kamiyouga, Setagaya-ku, Tokyo 158, Japan]

The Molecular Mechanism of UV-induced Mutagenesis in Escherichia coli

Key word【UmuD】 【UmuC】 【RecA】 【DNAポ リ メ ラ ー ゼ 】

1911

(2)

46 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 36 No. 12 (1990)

“ SOS修 復 (SOS repair)” あ る い は “誘 導 型DNA修 復 系 (inducible DNA repair system)” とも よばれ て い

る。SOS遺 伝 子 群 の発 現 の 要 とな る活 性 型 RecA (Rec A^*) に よ る LexA お よ び フ ァー ジ ・リプ レ ッサ ー の開 裂 機 構 に関 して は, 小 川 らに よる優 れ た 総 説 が あ る の で 参 照 され た い^<6)>。大 腸 菌 が 「誤 りが ちDNA修 復 系 」 を 保 有 す る 生 物 学 的 意 味 は 明確 で は な い が, 現 在 の とこ ろ, 進 化 的 視 点 か ら新 しい環 境 に適 応 し うる変 異 体 をつ くるた め に存 在 して い る もの と考 え られ て い る^<7,8)>。 以 下, 大 腸 菌 の 「誤 りが ちDNA修 復 系 」 に お け る UmuD, UmuC, RecA 蛋 白質 な らび にDNA複 製 酵 素 の 役 割 に つ い て研 究 の現 状 を紹 介 す る。

I

. umu

遺 伝 子 の 発 見 とそ の 発 現 調 節

大 腸 菌 の umu 変 異 は, 1970年 代 後 半 に大 阪大 学 の加 藤 らに よ り見 いだ され た^<9)>。彼 らは約3万 個 の大 腸 菌 変 異 株 の な か か ら, 紫 外 線 や4NQOに 曝 露 され て も突 然 変 異 を 起 こ さな い変 異 株 を選 抜 し, マ ッ ピン グに よ りこ れ らの 変 異 株 を umuA, umuB, umuC の3種 に 分 類 し た。mumA, umuB は そ の染 色 体 上 の位 置 か ら lexA お よび recA の 変 異 と推 定 され た が, umuC は 大 腸 菌 染 色 体 上26分 付 近 に 存 在 し, 新 しい 遺 伝 子 と考 え られ た。 umuC 変 異 は, 大 腸 菌 を紫 外線 照 射 した 際 に観 察 され る 細 胞 の フ ィ ラ メ ン ト化 や プ ロ フ ァ ー ジの誘 発 に は 影 響 を 与 えず, 紫 外 線 や4NQOに よ る 突 然 変 異 の 誘 発 を 特 異 的 に抑 え る こ とか ら, 塩基 対 置 換 型 突 然変 異 (base changetype mutation) の誘 発 に必 須 な役 割 を 果 た す も の と推 測 され た 。 そ の後, umuC 遺 伝 子 は, 大 阪 大 学 の品 川 の グル ー プ, マ サ チ ュー セ ッ ツ工 科 大 学 の Walker の グル ー プに よ りそ れ ぞれ 独 立 に ク ロー ニ ン グされ, そ の構 造 な らび に発 現 調 節 の機 構 が 明 らか に され た^<10∼13)>。そ の結 果 に よ れ ば, mumC 遺 伝 子 は1つ の 遺 伝 子 で は な く, 分 子量 15,064の 蛋 白質 を コー ドす る umuD 遺 伝 子 と, 分 子量 47,681の 蛋 白質 を コ ー ドす る umuC 遺 伝 子 か らな る1 つ の オ ペ ロ ンで あ り, 転 写 は umuD か ら umuC に 向か っ て進 む (図1)。 さ ら に, umuD, umuC 遺 伝 子 の塩 基 配 列 決 定 な らび に遺 伝 学 的 ・生 化 学 的 研 究 に よ り, umu DCオ ペ ロ ンの発 現 は, 通 常 は リプ レ ッサ ーで あ る Lex A蛋 白質 が umuDC オペ ロ ンの プ ロモ ー ター部 位 に結 合 す る こ とに よ り厳 し く抑 制 され てい るが, DNA上 に 損 傷 が 起 こ る と活 性 化 され た RecA 蛋 白質 (RecA^*)^<*4> に よ り LexA の 開 裂 が ひ き起 こさ れ, umuDC オ ペ ロ ン の 発 現 が 起 こ る こ とが 明 らか に さ れ た。

II. RecA に 依 存 し た UmuD の 開 裂 と そ の 生 理 的 意 義 ク ロ ー ニ ン グ さ れ た umuD, umuC 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 を も と に, こ れ ら の 蛋 白 質 と ア ミ ノ酸 配 列 上 の 相 同 性 を も つ 蛋 白 質 が コ ン ピ ュ ー タ に よ り 検 索 さ れ た 。 そ の 結 果, 意 外 に も UmuD は リ プ レ ッ サ ー で あ る LexA や フ ァ ー ジ (λ, P22, 434, φ80) の リ プ レ ッサ ー と 相 同 性 *1 内 在 性 の オ キ シ ダ ン トに よるDNA損 傷 は, 1日1細 胞 あ た り, ラ ッ トで10^5, ヒ トで10^4と 推 定 され て い る^<1)>。 *2 ヒ ドロキ シル ア ミンや メ チ ル化 剤 な どに よっ て 起 こ る大 腸 菌 の塩 基 対 置 換 型 突 然 変 異 に は, UmuD, UmuC は 関 与 しない 。 ヒ ドロキ シル ア ミン処 理 に よ り生 成 す る ウラ シ ル や, メチ ル 化 剤 処 理 に よ り生 成 す るO^6-メ チ ル グ ア ニ ンは, DNA複 製 を 阻 害 す る こ と な く, 塩 基 の誤 った 対 合 形 成 (mispairing) に よ り突 然 変 異 を 誘 発す る。

*3 DNA損 傷 に 伴 い発 現 が 誘 導 され る遺 伝 子 群 。 通 常, これ ら遺 伝 子 の 発 現 は, LexA 蛋 白質 に よ り抑 制 され て い る が, DNAに

損 傷 が 起 こ る と活 性 化 され た RecA (RecA^*) に よ り LexA 蛋 白質 が 開 裂 し, これ ら遺 伝 子 の 発 現 が 飛 躍 的 に 高 ま る。 これ ま

で, 少 な くと も17以 上 の大 腸 菌 遺 伝 子 が RecA, LexA 蛋 白質 に よ り発 現 を調 節 され て い る こ とが 明 ら か に され て い る^<3,6)>。

この よ うなSOS遺 伝 子 の産 物 は 除 去 修 復 (uvrA, uvrB, uvrD), 組 換 え(recA, ruvAB, recN, recQ), 光 回 復 (phr),

突 然 変 異 (umuDC), 細 胞 分 裂 の阻 害 (sfiA) な どに 関 連 して い る。LexA に よ り発 現 を 調 節 され て い るSOS遺 伝 子 は い ず

れ もそ の プ ロモ ー タ ー部 位 に LexA 蛋 白質 との 結 合 に関 与 す る 共 通 の配 列 (SOSボ ッ クス : taCTGTata-a-aCAGta) を も

ち, そ れ ぞ れ が 異 な った LexA との 解 離 定 数 (Kd) を 有 して い る 。 す な わ ち, あ る種 のSOS遺 伝 子 群 (た と えは recA,lexA

, uvrB) は 比 較 的 大 きなK_d値 を も ち, DNA損 傷が な い状 態 で もあ る程 度 恒 常 的 に 発 現 して い る。 しか し, 別 のSOS

遺伝 子 (た とえ ば umuDC) は 比 較 的K_d値 が 小 さ く, DNA損 傷 が な い状 態 で は そ の 発 現 が 厳 し く抑 制 され, DNA損 傷 の

度 合 い が 強 くな って か ら初 め て 発 現 が 起 こ る。 こ う した 各遺 伝 子 のSOSボ ッ クス と LexA 蛋 白質 と の結 合 の 強 さが, SOS

遺 伝 子 の 発 現 を “微 調 整” して い る もの と考 え られ て い る。DNA損 傷 が組 換 え修 復 や 除 去 修 復 に よ り細 胞 内 か ら除 去 され る

と, 活 性 型 の RecA^* は 不 活 性 型 の RecA へ 戻 り, そ の 結 果, 細 胞 内 の LexA 濃 度 が 高 ま り, SOS遺 伝 子 群 は 再 び 発 現 を

停 止 す る。 こ の際 も, LexA と各 遺 伝 子 のSOSボ ッ クス との親 和 性 に 基 づ き, K_d値 の 小 さな もの か ら順 次, 発 現 が 抑 制 さ

れ る も の と考 え られ る。

*4 ATPお よび1本 鎖DNAと 結 合 した RecA 蛋 白 質 。 細 胞 内 で は RecA 蛋 白 質 はATPと 結 合 して い る と考 え られ て い る。

DNA複 製 の 停 止, DNA損 傷 に 伴 い1本 鎖DNAが 細 胞 内 に 生成 す る と, RecA は RecA^* へ 転 換 し, リプ レ ッサ ーや UmuD

の 開 裂 を 促 進 す る。

1912

(3)

誤 りがちDNA修 復 の分子機構 47 を も つ こ と が 明 らか に な っ た (図2)^<12,14∼16)>。こ れ ら の リ プ レ ッ サ ー は LexA と 同 様 に, 活 性 型 の RecA^* に よ り開 裂 さ れ る こ と が 知 られ て い る 。 興 味 深 い こ と に, UmuD は LexA や フ ァ ー ジ ・ リ プ レ ッ サ ー の 開 裂 部 位 で あ る Ala-Gly (φ80の 場 合 に は Cys-Gly) に 対 応 す る 位 置 に Cys^<24>-Gly^<25>をも ち, 相 同 性 は 開 裂 部 位 に 対 応 す る 位 置 か ら 始 ま っ て お り, これ よ りN末 端 側 に は 顕 著 な ホ モ ロ ジ ー は 見 い だ さ れ な か っ た。 これ ら の 事 実 か ら, UmuD は LexA や フ ァ ー ジ ・ リ プ レ ッ サ ー と 同 様 に, 活 性 型 の RecA^* に よ り Cys^<24>-Gly^<25>間で 開 裂 さ れ る こ と が 予 想 さ れ た^<12)>。 こ の 仮 説 は, 抗 UmuD 抗 体 を 用 い た ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ法 に よ る 分 析 (in vivo 実 験), 精 製 し た UmuD を 精 製 し た RecA と と も に 試 験 管 内 で 反 応 さ せ, そ の 産 物 を 分 析 す る こ と (in vitro 実 験) に よ り証 明 さ れ た^<17,18)>。精 製 した UmuD と LexA を 同 時 に

RecA と反 応 さ せ る と, LexA が UmuD よ り も早 く開

裂 さ れ る こ と^<18)>, ま た, UmuD の 開 裂 部 位 が Cys^<24> と Gly^<25> の 間 で あ る こ と が 証 明 さ れ て い る^<19)>。さ ら に, UmuD の Met^1 か ら Gln^<23> ま で を コー ドした遺 伝 子, な らび に Gly^<25> か らC末 端 まで を コ ー ドした 遺 伝 子 (こ れ らは UmuD の Cys^<24>-Gly^<25> 部 位 で の 開裂 後 に 生ず る N末 端側 ポ リペ プチ ドな ら び にC末 端 側 ポ リペ プ チ ドに ほ ぼ対 応 して い る) が 遺 伝 子 工学 的 手 法 に よ り作 製 され た^<20)>。これ ら遺 伝 子 を コー ドした プ ラス ミ ドを umuD^-株 に 導 入 し, そ の紫 外 線 に対 す る突 然 変 異誘 発 能 (UV mutability) を 調 べ る実 験 か ら, (1)UmuD の 開裂 は不 活 化反 応 で は な い こ と, (2)開裂 後 に生 ず るN末 端 側 ポ リペ プチ ドは 紫 外 線 突 然 変 異 の誘 発 を促 進 す る こ とが で き な い こ とが 明 らか に され た (図3a)。

recA 430株 は, RecA の ミス セ ンス変 異株 (RecA の Gly^<204>が Ser に 置 換 して い る) で 組 換 え活 性 を示 し, φ80の リプ レ ッサ ーは 正 常 に 開 裂 させ る こ とが で き る が, λフ ァー ジのcIリ プ レ ッサ ー は 開裂 す る こ とが で

きず, LexA の 開 裂 速 度 も 遅 い (表1)^<16,21∼24)>。lexA (Def) recA 430株 は recA 430の 誘 導 株 で, リプ レ ッサ ー で あ る LexA の遺 伝 子 が 不 活 性 化 して い るた め, umu D Cを 含 むSOS遺 伝 子 が 恒 常 的 に 発 現 して い る。 そ し

図1. UmuD, UmuC の 発 現 調 節 機 構 と RecA, LexA の 役 割

大 腸 菌 の umuD, umuC 遺 伝 子 はオ ペ ロ ンを 形 成 して い る。UmuD, UmuC 蛋 白 質 の 発 現 は, 通 常

は LexA に よ り抑 制 され て い るが, 大 腸 菌 の 染 色 体 に 損 傷 が 起 こ る と, 活 性 化 され た RecA (RecA^*)

に よ り LexA が 開 裂 し, UmuD, UmuC が 発 現 す る。UmuD は さ ら に RecA^* に よ り開 裂 され,

N末 端 か ら24個 分 の ア ミノ 酸 を 失 っ た UmuD' に 活 性 化 され る。RecA は, (1)LexA の開 裂, (2)

UmuD の活 性 化 の ほ か に, 紫外 線 突 然 変 異 の 誘 発 に 必 須 な “第3の 役 割” を 果 た して い る もの と考 え

られ て い る。

1913

(4)

48 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 36 No. 12 (1991)

て, lexA (Def) recA 430株 は, 紫 外 線 照 射 を 受 け て も 突

然 変 異 を 起 こ す こ とが で き な い UV nonmutable な 株 で

あ り, こ の こ と は UmuD を コ ー ド し た プ ラ ス ミ ドを 導

入 し て も 変 わ ら な い (図3b)。 し か し, こ の 株 に UmuD

の 開 裂 後 に 生 ず るC末 端 側 ポ リペ プ チ ド (UmuD') を コ

ー ド した プ ラ ス ミ ドを 導 入 す る と, そ のUV mutability

が 回 復 し た^<20)>。こ の 結 果 か ら, (1)lexA (Def) 名recA 430株

がUV nonmutable で あ る 原 因 は UmuD を 開 裂 さ せ る

こ とが で き な い た め で あ る こ と, (2)UmuD の 開 裂 は UmuD' を 生 ず る 活 性 化 反 応 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 RecA 430蛋 白質 が UmuD を 開 裂 で きな い こ とは, 前 述 した in vivo, in vitro 実 験 に お いて 確 認 され てい る^<17,18)>。 UmuD は大 腸 菌 の突 然 変 異 誘 発 に お い て, UmuD' を 生 ず る前 駆 体 と して の 役 割 を 果 た して い る だ け で は な い 。UmuD, UmuD' は そ れ ぞ れ が ホ モ2量 体 を 形成 す るが, こ の うち UmuD' の ホ モ2量 体 が 突 然 変 異 の誘 発 を 促 進 す る因 子 と考 え られ て い る^<19,25)>。しか し, UmuD' は UmuD が共 存す る場 合 に は優 先 的 に UmuD とヘ テ ロ2量 体 を 形 成 す る こ とが in vitro で 明 らか に され て

図2. UmuD とそ の関 連 蛋 白質 (MucA, ImpA, UmuDsT, SamA), LexA, λ フ ァ ー ジ ・ リプ レ

ッサ ー の ア ミ ノ酸 配 列 の比 較

開 裂 反 応 に 重 要 な 役 割 を 果 た す と考 え られ る Ser 残 基, Lys 残 基, そ して 開 裂 部位 に は星 印 (*) をつ け た 。

1914

(5)

誤 りが ちDNA修 復の分子機構 49 い る^<25)>。SOSシグナ ル^<*5>が減 少 し, UmuD' に 対 す る UmuD の相 対 的 濃 度 が 高 くな って きた 際 に は, こ う し た UmuD-UmuD' ヘ テ ロ2量 体 が 細 胞 内 にお い て も形 成 さ れ るも の と思わ れ る。 した が って,「誤 りが ちDNA 修復 系」 が そ の機 能 を終 息 させ る際 に, UmuD は活 性 型 の UmuD' と積 極 的 に ヘ テ ロ2量 体 を つ く り, 細 胞 の 突 然 変 異 誘 発 能 を急 速 に低 下 させ る 阻害 剤 (dominant inhibitor) と して働 い て い る の では な い か と考 え られ て い る^<25)>。 III. UmuD の 開 裂 機 構 図2に 示 す よ う に UmuD は LexA や フ ァ ー ジ ・ リ プ レ ッ サ ー と ア ミ ノ 酸 配 列 上 の 相 同 性 を 示 す 。 ア リ ゾナ 大 学 の Little は, LexA 蛋 白 質 お よ び λ フ ァ ー ジ の リ プ レ ッ サ ー を ア ル カ リ条 件 下 で イ ン キ ュ ベ ー トす る と, RecA が 存 在 し な く と も LexA の 開 裂 が 起 こ り, そ の 開 裂 部 位 は 活 性 型 の RecA^* に よ る 開 裂 と 同 一 の Ala^<84> と Gly^<85> の間 で あ る こ と を 見 い だ した^<26)>。こ の こ と か ら Little ら は, 活 性 型 RecA^* に よ る LexA の 開 裂 は, 通 常 の 蛋 白 質 分 解 酵 素 反 応 と は 異 な る LexA 自 身 の 一 種 の 自 己 分 解 反 応 と 考 え, 活 性 型 RecA^* は こ の 自 己 分 解 反 応 を 促 進 す る 因 子 (positive effector) と考 え た 。 そ して, こ の 自 己 分 解 反 応 の 触 媒 残

基 と し て LexA 分 子 内 の Ser^<119> と Lys^<156>

の 役 割 を 強 調 し た^<27)>。

UmuD は LexA の Ser^<119>, Lys^<156> に

対 応 す る 位 置 に Ser^<60>, Lys^<97> を も っ て い

る 。 こ の こ と か ら, UmuD も LexA と

同様 の 機 構 に より 開 裂 す る こ とが 予 想 され た^<20)>。そ こ で, Ser^<60> お よび Lys^<97> を部 位 特 異 的 突 然 変 異 法 に よ り Ala に替 えた 変 異 umuD 遺 伝 子 が作 製 され た。抗 UmuD 抗 体 を用 いた 実 験 に よ り, Ser^<60>, Lys^<97> を Ala に替 え た変 異 UmuD で は, RecA^* に よ る開 裂 は 検 出 され な い こ とが 明 らか に され た^<25)>。この 結 果 か ら, UmuD の場 合

図3. UmuD あ るい は UmuD の 開 裂 後 に 生 ず る ポ リペ プ チ ドを コー ドした

マ ル チ コ ピ ー ・プ ラス ミ ドを もつ 大 腸 菌 の 紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 頻 度

(a) で用 い た宿 主 は 大 腸 菌AB 1157 umuD 44株 で あ り, (b) で用 い た 宿主

は 大 腸 菌 lexA 71 : : Tn5 recA 430株 であ る。 ○印 は UmuD を コー ドした

pGW 2020プ ラ ス ミ ドを もつ 株, ■ 印 は UmuD の開 裂 後 に 生 ず るN末 端 側 ポ リペ プ チ ドを コー ドした pGW 2119プ ラス ミ ドを もつ 株, △印 は 開 裂 後 に 生 ず るC末 端 側 ポ リペ プ チ ドを コー ドした pGW 2122プ ラス ミ ドを もつ 株, □印 は pGW 2020プ ラ ス ミ ドを も った 大 腸 菌 lexA 71 : : Tn5 recA^+ 株 の突 然 変 異 頻 度 を 示 して い る。 表1. recA 変 異 株 の 各 種 リプ レ ッサ ーお よび UmuD に 対 す る開 裂 活 性^<6,16,21,29)>

*5 DNA複 製の停止やDNA損 傷に伴い生成す る1本 鎖DNAが, SOSシ グナルと考 えられてい る。

1915

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蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 36 No. 12 (1991) も Ser^<60>, Lys^<97> が そ の 開裂 反 応 に お い て大 き な役 割 を果 た して い る こ とが 示 唆 され た 。 す な わ ち, 脱 プ ロ トン化 した Lys^<97> がSer^<60>からプ ロ トンを引 き抜 き, 活 性 化 さ れ た Ser^<60> が 自己 分 子 (UmuD) 内 の開 裂 部 位 に求 核 攻 撃 を 行 な い, そ の結 果, UmuD が 開 裂 す る も の と考 え られ る (図4)。UmuD も アル カ リ条 件 下 に お く と 自己 分 解 反 応 を起 こす こ とが報 告 され て い る^<18)>。ま た, Lys^<97> の 脱 プ ロ トン化 の機 構 と して, 隣 接 した Lys^<98> の役 割 が 示 唆 され て い る^<28)>。

IV.

突 然 変 異 誘 発 に お い て RecA

が 果 た

す 第3の 役 割

これ ま で述 べ て きた よ うに RecA は, (1)LexA を 開 裂 さ せ る こ とに よ り umuDC 遺 伝 子 の 発 現 を 飛 躍 的 に 高 め, (2)UmuD を開 裂 さ せ る こ とに よ り 活性 型 ポ リペ プ チ ド UmuD' を 生 成 させ る。で は, 大 腸 菌 の紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 にお け る RecA の役 割 は この2つ だ け な の で あ ろ うか? こ の 問 い に 答 え る た め, 大 腸菌 の lexA (Def) ⊿recA 株 (こ の株 は recA が 欠失 して い る ほ か,

lexA が 不 活 性 化 して い るた め, umuDC が 恒 常的 に発 現 し て お り, か つ こ の 株 はUV nonmutable で あ る) に UmuD' を コ ー ド した プ ラ ス ミ ドを 導 入 し, そ のUV mutability を 調 べ る 実 験 が 行 な わ れ た^<20)>。そ の 結 果, こ の 大 腸 菌 はUV nonmutable で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ の こ と は, た と え 活 性 型 の UmuD' が 恒 常 的 に 発 現 して い た と して も, RecA の 何 ら か の 関 与 が な い と, 大 腸 菌 は 紫 外 線 照 射 を 受 け て も 突 然 変 異 を 起 こす こ と が で き な い こ と を 示 唆 し て い る 。 換 言 す れ ば, こ の 結 果 は, 大 腸 菌 の 紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 に お い て, (1)LexA の 開 裂, (2)UmuD の 活 性 化 の ほ か に, RecA が “第3の 役 割” を 果 た して い る こ と を 示 唆 し て い る。RecA が 第3 の 役 割 を 果 た す こ と は, 以 下 に 示 す2つ の 報 告 に よ りさ ら に 明 確 に な っ て い る 。

そ の 第1は, 新 し い recA の 変 異 株 recA 1730のUV

mutability に 関 す る 報 告 で あ る^<29)>。recA 1730は RecA

の Ser^<117> が Phe に 置 換 した 変 異 で, lexA (Def) の 条 件

下 で は 組 換 え 活 性 を 示 し, λ フ ァ ー ジ の リ プ レ ッサ ー は

開 裂 さ せ る こ と が で き る が, LexA は 開 裂 さ せ る こ と が

で き な い (表1)。lexA (Def) recA 1730株 はUV non

mutableで あ る が, そ の mutability は, 前 述 し た lexA

(Def) recA 430株 と は 異 な り, 活 性 型 の UmuD' を コ ー

ド し た プ ラ ス ミ ドを 導 入 し て も 回 復 し な い 。 す な わ ち,

こ の 株 で は, (1)リ プ レ ッ サ ー で あ る LexA の 遺 伝 子 が 不

活 性 化 し, (2)UmuD が す で に 活 性 型 の UmuD' に な っ

て い て もUV nonmutable で あ り, こ の 点 で lexA (Def)

⊿recA 株 と類 似 し て い る 。 し か し, ⊿recA 株 で は, 紫 外

線 の 強 い 致 死 作 用 の た め 突 然 変 異 体 が 検 出 で き ず, 見 か

け 上UV nonmutable に な っ て い る 可 能 性 を 否 定 す る こ

と が で き な か っ た 。 これ に 対 し, lexA (Def) recA 1730株

は 組 換 え 活 性 を 示 し, 紫 外 線 の 致 死 作 用 に 対 し て 抵 抗 性 を 示 す 。 した が っ て, こ の 株 に UmuD' を コー ド し た プ ラ ス ミ ドを 導 入 して もUV nonmutable で あ る の は, RecA 1730が “ 第3の 役 割” を 欠 い て い る た め で あ る と 考 え る こ と が で き る 。 大 腸 菌 の 突 然 変 異 誘 発 に お け る RecA の “ 第3の 役 割” を 支 持 す る 第2の 報 告 は, lexA (Def) 株 の ミ ュ ー テ ー タ ー 活 性 に 関 す る も の で あ る^<30)> 。 す な わ ち UmuD'

(と UmuC) を コ ー ド した プ ラ ス ミ ドを も つ lexA (Def)

株 の 自 然 突 然 変 異 頻 度 (ミ ュ ー テ ー タ ー 活 性) は, recA の 変 異 に 依 存 し て い る こ と が 報 告 さ れ た 。 一例 を あ げ れ ば, UmuD'-UmuC を コ ー ド し た プ ラ ス ミ ドを も つ lex A (Def) 株 の 自 然 突 然 変 異 頻 度 は, そ の 株 が も つ recA の 変 異 に よ り 大 き く 異 な り, recA 441≫ 野 生 型 recA recA 430の 順 と な る。 こ う し た 結 果 は, (1)LexA が 不 活 図4. 予 想 され る UmuD 蛋 白質 の開 裂機 構 脱 プ ロ トン化 した Lys^<97>のε ア ミノ基 が Ser^<60>の水 酸 基 を 活 性 化 し, 活 性 化 され た Ser^<60> の水 酸 基 が 開 裂 部位 の カ ル ボニ ル 炭 素 へ 求 核 攻 撃 を か け る。 そ の後, Cys^<24> と Ser^<60> と の 間 の 一 時 的 な結 合 が 加 水 分 解 され, UmuD は2分 子 (N 末 端 側 ポ リペ プ チ ドとC末 端 側 ポ リペ プ チ ド) に 開 裂す る。 1916

(7)

誤 りがちDNA修 復の分子機構 51 化 し, (2)UmuD が す で に活 性 化 して いた と して も, ミ ュー テ ータ ー活 性 が発 現 す る た め に は さ らに RecA の 何 らか の 関 与 が 必要 で あ る こ とを示 唆 して い る。 で は RecA の果 た す “第3の 役割” とは具 体 的 に どの よ うな もの な の で あ ろ うか? RecA 蛋 白質 は 紫 外線 照 射 され て い な いDNAよ りも, 照 射 され た2本 鎖DNA に効 率 よ く結 合 す る こ とが 報 告 され てい る^<31)>。また, 紫 外 線 に よ っ て生 ず る損 傷 の うち, シ ク ロブ タ ン2量 体 よ りも, (6-4) 光 産 物 に よ り効 率 的 に結 合 す る^<32)>。そ して, 紫 外 線 照 射 され たDNAへ の結 合 の効 率 は RecA の変 異 に よ り 異 な り, RecA 441>RecA>RecA 430の 順 で あ る^<31)>。RecAある い は活 性 型 の RecA^* を結 合 した ア ガ ロー ス カ ラム を用 いた 実 験 か ら, UmuC は RecA あ る い は RecA^* と結 合 す る こ とが 報 告 され て い る^<33)>。 UmuD' は直 接 は RecA あ るい は RecA^* に結 合 しな い が, UmuC が あ る場 合 に は, UmuC を介 して結 合 す る。 こ う した 結 果 か ら, (1)RecA 蛋 白 質 がDNA上 の 損 傷 部 位 な い しは そ の近 傍 の1本 鎖DNA部 分 に 結 合 し, UmuD', UmuC 蛋 白質 を損 傷 部 位 へ 導 くこ とが RecA の “第3の 役 割” で は な い か と考 え られ て い る^<30,34)>。し か し, こ のほ か に, (2)RecA がDNA複 製 酵 素 の εサ ブ ユ ニ ッ トと相 互 作 用 し, そ の 校 正機 能 を 抑 制 す る とい う 可 能 性 (こ の可 能 性 は, 精 製 した εサ ブ ユ ニ ッ トと Rec A蛋 白質 との in vitro 実 験 の結 果 に基 づ い て い る)^<35,36)> や, (3)活性 型 の RecA^* が LexA 以 外 の リプ レ ッサ ーを 開 裂 させ, 突 然 変 異 誘 発 に 必 須 な 未 知 の 蛋 白質 の 発 現 を 促 進 す る とい う可 能 性 も考 え られ る。 突 然 変 異 誘 発 に 関 与 す る RecA の “第3の 役 割” は, 今後 に 残 され た 興 味 あ る課 題 で あ る。 V. UmuD, UmuC の 生 化 学 的 機 能 umuD , umuC 遺 伝 子 を そ れ ぞ れ 発 現 ベ ク タ ー に連 結 す る こ とに よ り大 量 に 蛋 白質 を 発 現 させ る 系 が確 立 さ れ, UmuD, UmuC とも精 製 した 蛋 白質 が 得 られ て い る (た だ し, UmuC につ い て は変 性 され た 状 態 で精 製 され て い る)^<18,19,25)>。こ うした精 製 蛋 白質 と, これ らに対 す る 抗 体 を 用 い た 研究 か ら, 大 腸 菌 の細 胞 内 にお い て UmuC は UmuD' と複合 体 を形 成 して い る も の と考 え られ て い る^<19,33)>。前 述 した よ うに, UmuD' は in vitro に お い て ホ モ2量 体 を 形成 す る こ と か ら, UmuD は 活 性型 の RecA^* に よ り UmuD' に 活 性化 さ れ て か らホ モ2量 体 を 形 成 し, こ の2量 体 が UmuC と複 合体 を形 成 す る も の と予 想 さ れ る (図1)^<19,25)>。換 言 す れ ば, UmuD, UmuC の 生化 学 的 機 能 と は, こ の UmuD'-UmuD' UmuC の3者 複 合 体 の 機 能 とい うこ とにな る のか も し れ な い 。 また 上 記 の よ うに, UmuC は カ ラム上 に 固定 さ れ た RecA お よび 活 性 型 の RecA^* に結 合 す る^<33)>。した が って, DNA損 傷 部 位 あ る い はそ の近 傍 で, UmuD'-UmuC 複 合 体 は UmuC を 介 して RecA あ る い は 活 性 型 の RecA^* と複 合 体 を形 成 して い る可 能 性 が あ る^<30,34)>。

UmuD, UmuC の生 化 学 的 機 能 はDNA複 製 酵 素 の 働 き を修 飾 す る も の と予 想 され て い る が, そ の 具 体 的 な 内容 は い ま だ不 明 で あ る。 現 在, UmuD, UmuC の 機 能 に関 して 提 唱 され て い る 代 表 的 モ デ ル を 以 下 に 紹 介 す る。 これ ら の モ デル は, 相 互 に 排 除 しあ う も の では な く, む しろ相 互 に補 完 しあ うも の と考 え た ほ うが 適 切 で あ ろ う。 1. UmuD, UmuC は バ イ パ ス 過 程 に 関 与 す る^<37,38)> サ セ ッ クス大 学 の Bridges と Woodgate は, 除 去 修 復 能 を欠 損 した大 腸 菌 の umuC^- あ る い は umuD^- 株 に 紫 外 線 照 射 を行 な い, 数 時 間 培 養 して か ら白色 光 を照 射 す る と, UV nonmutable であ った umuC^- (あ る い は umuD^-) 株 が 突然 変 異 を 起 こす よ うに な る こ とを見 い だ した 。誘 発 され る突 然 変 異 の 頻 度 は, 紫 外 線 を照 射 し て か ら 白色 光 を 照 射 す る ま で の間 に行 な う培 養 時 間 に 応 じて 増 加 した 。 彼 らは, こ の実 験 を “delayed photore versalexperiment” と よび, 大 腸 菌 の紫 外 線 突 然 変 異 誘 発 の 過 程 を, (1)誤 った ヌ ク レオ チ ドの取 込 み (misin corporation)と, (2)そ の 後 の 延 長 反 応 (バ イ パ ス) の2段 階 に分 け て考 え る こ とを提 唱 した (図5A)。 す な わ ち, umu DC に欠 損 を もつ 大 腸 菌 で は, (1)の誤 った 取 込 み は 起 こ る が, (2)のバ イ パ スが 進 ま な い。 しか し, 白色 光 を 照 射 し光 回 復 酵 素 の作 用 に よ り ピ リ ミジ ン2量 体 を 単 量 体 に戻 してや る とバ イ パ ス が起 こる よ うに な り, 突 然 変 異 体 が 出現 す る も の と考 え た。 した が って, UmuD, UmuC は誤 った取 込 み で は な く, バ イ パ ス 過 程 に 関 与 す る も の と予 測 した 。 また, 誤 った 取 込 み に はDNA複 製 酵 素 の ほ か に RecA が 関 与 す る もの と考 え た。 事 実, 異 な った recA 変 異 を有 す る大 腸 菌 を 用 いて, “delayed photoreversal experiment” を行 な うと, recA の変 異 に 応 じて 得 られ る 突 然 変 異 頻 度 が 異 な る (recA 441>rec

A+>recA 430)。 しか し, そ の 後 の 実 験 で, “delayed

photoreversal experiment” で は ⊿recA 株 で も recA 441株 とほ ぼ 同 じ レベ ル で 突 然 変 異 が 起 こ る こ とが 明 ら か に な り, 通 常 の 紫 外 線 で起 こ る突 然 変 異 の モ デ ル とな り うるか 疑 問 の 点 もあ る。 しか し, こ の モ デル は 現在 で

1917

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52 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 36 No. 12 (1991)

も UmuD, UmuC の機 能 を 考 え る うえ で 大 きな 影 響 を 与 え て い る。

2. UmuD, UmuC はDNA複 製 酵 素 の プ ロ セ ッ シ

ビ チ ィを 増 大 さ せ る^<39,40)>

Walker ら は, UmuD お よ び UmuC の ア ミ ノ 酸 配 列

がT4フ ァ ー ジ のDNA複 製 酵 素 の ア ク セ サ リ ー蛋 白

質 で あ るGP45, GP62/GP44と 部 分 的 に 類 似 して い る

こ と か ら, UmuD お よ び UmuC は 大 腸 菌 のDNA複

製 酵 素 の ア ク セ サ リ ー 蛋 白 質 で は な い か と 考 え た 。GP 62/GP44複 合 体 は1本 鎖DNAに 依 存 した ATPase 活 性 を 示 し, GP45は これ と相 互 作 用 し て, そ の ATPase 活 性 を 高 め る こ と が 知 ら れ て い る^<41)>。そ し てGP45, GP62/GP44の 複 合 体 は, T4フ ァ ー ジ のDNA複 合 酵 素 の プ ロ セ ッ シ ビ テ ィ (複 製 酵 素 がDNA鎖 に 結 合 し た の ち, 一 度 に ど れ く ら い の ヌ ク レオ チ ドを 合 成 で き る か と い う指 数) を 高 め る 。 こ れ へ の 類 推 か ら, UmuD, UmuC も 大 腸 菌 のDNA複 製 酵 素 の プ ロ セ ッ シ ビ テ ィ を 高 め, 誤 っ た ヌ ク レオ チ ドを 挿 入 し た の ち, 通 常 は DNA鎖 か ら はず れ て しま う損 傷 部 位 を越 え て, 複 製 を 続 け る こ とが で き る よ うに す る もの と考 え た (図5B)。 3. UmuD, UmuC は 複 製 の 再 開 に 関 与 す る^<41)> イ ス ラエ ル の ワイ ズマ ン研 究所 の Livnah らは, in vitro でDNAポ リメ ラ ー ゼIIIホロ酵 素 を用 い, 損 傷 を も ったDNAの 複 製 を 行 な い, 複 製 酵 素 がDNA損 傷 部 位 でDNA鎖 か らは ず れ る こ とを 観 察 した 。 この こ と か ら, 彼 らは UmuD, UmuC は この はず れ た複 製 酵 素 が 再 びDNA鎖 に結 合 して複 製 を再 開 し, 結 局, 突 然 変 異 を 起 こ しな が ら損傷 部 位 を 越 え て複 製 を行 な うの に 関 与 して い る もの と推 定 した (図5C)。

今 後 は, 精 製 した UmuD', UmuC, RecA, DNA複 製 酵 素 の 標 品 を用 いた 再 構 成 実 験 に よ り, これ らモ デル の 妥 当 性 が検 討 され る. も の と思わ れ る。 しか し一 方 で, 熱 ショ ッ ク 蛋白質 の GroE が大腸菌 の 紫 外線突 然変異 誘 発 や ワイ グル 回 復^<*6>に関与 して い る とい う 報 告 も あ り^<43,44)>, 生 化 学 実 験 の一 方 で, 遺 伝 学 的 手 法 を用 い突 然 図5. UmuD, UmuC 蛋 白 質 の 機 能 に 関 して提 出 され て い る モ デ ル

(A) Bridges と Woodgate に よ り提 案 され た モ デ ル。UmuD, UmuC は, 誤 った ヌ ク レオ チ ドの 取 込 み の 段 階 で は な く,

そ の 後 の 延 長 反 応 (バ イパ ス) に 関 与 す る。(B) Walker ら に よ り提 案 され た モ デ ル。UmuD, UmuC はDNA複 製 酵 素

の プ コセ ッ シビ テ ィを 高 め, 通 常 はDNA複 製 酵 素 が鋳 型DNAか らは ず れ て し ま う損 傷 部 位 で も, これ を 乗 り越 え 複 製 を

進 め る こ とが で き る よ うに す る。(C) Livneh ら に よ っ て提 案 され た モ デ ル。UmuD, UmuC は 鋳 型DNAか ら は ず れ た

DNA複 製 酵 素 に 作 用 し, 再 度, 鋳 型DNAへ 複 製酵 素 を結 合 させ, 最 終 的 には 損 傷 部 位 を 越 え てDNA複 製 を 進 め る こ と

が で き る よ うに す る。

*6 紫 外線照射 した λフ ァージを大勝菌 に感 染させ 生存率を調べる際に, あ らか じめ大腸菌を紫外線照射 してお くと, 紫外線の照射 量 に応じてファー ジの生存率が高くな る現象。また, ファージの突然 変異頻度 も, 紫外 線照射した大腸菌に感染 させたほ うが 高 くなる (ワイ グル突 然変異)。

1918

(9)

誤 りがちDNA修 復 の分子機構 53

変 異 誘 発 に 必 要 な 遺 伝 子 (産 物) を 同 定 し, そ の相 互 の 関 連 を 明 らか に す る こ とが 今 後 も重 要 であ る と考 え る。

VI.

DNA複

製酵 素 と紫 外 線 誘 発 突 然 変 異

上 記 の よ うに, 大 腸 菌 の 紫 外 線 突 然 変 異 の 誘 発 には UmuD, UmuC, RecA 蛋 白質 が 重 要 な 役 割 を 演 ず る。 そ して, これ ら蛋 白質 の作 用 は基 本 的 にDNA複 製 酵 素 の働 き を修 飾 す る も の と予 想 され てい る。 大 腸 菌 に は3 種 類 のDNA複 製 酵 素 (DANポ リ メラ ー ゼI, II, III) が 存 在 す る (表2)。 で は, ど のDNA複 製 酵 素 が, 大 腸 菌 の紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 にお い て重 要 な 役 割 を 演 じてい る の で あ ろ うか 。 そ れ ぞ れ のDNA複 製 酵 素 に つ い て, 紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 と の関 連 で現 在 の知 見 を紹 介 す る。

1. DNAポ リメ ラ ー ゼI

DNAポ リメ ラー ゼIは1956年 に Kornberg に よ り 発 見 され た 最 初 のDNA複 製 酵 素 で あ り, 当 初 は大 腸 菌 の染 色 体DNA複 製 を に な って い る もの と考 え られ た 。

しか し, そ の後, DNAポ リメ ラ ーゼIの 活 性 を 失 った 大 腸 菌 の変 異 株 が 単 離 され, 後 述 す るDNAポ リメ ラ ー ゼII, IIIの発 見 へ とつ な が った^<46)>。今 日で はDNAポ リ メ ラー ゼIの 生 理 的 意 義 は, DNA修 復 (除 去 修 復 の際 の修 復DNA合 成) や 岡 崎 フ ラ グ メ ン トの プ ライ マ ー RNAの 除 去 に あ る こ とが 明 らか に され て い る^<45,47)>。 DNAポ リメラ ー ゼIは 分 子 量 約11万 の1本 の ポ リペ プ チ ドか ら な り, DNAポ リメ ラ ー ゼII, III とは 異 な り, 3'→5'エ キ ソ ヌ ク レア ーゼ 活 性 の ほ か に, 5'→3'エ キ ソ ヌ ク レア ーゼ 活 性 を 示 す 。

カ リフ ォル ニ ア大 学 の Lackey ら は, 大 腸 菌 を ナ リジ キ シル 酸 で処 理 し, SOS反 応 を 誘 発 させ る と, 彼 らが Po1I^* とよぶ 低 分 子 量 のDNAポ リメ ラー ゼIが 検 出 さ れ る よ うに な る こ とを報 告 した^<48,49)>。Po1I^*はポ リメ ラ ー ゼIに 対 す る 抗 体 に反 応 し, N-エ チルマ レイ ミドで は 阻 害 され な い とい う点 で は, DNAポ リメ ラ ーゼIと 共 通 の 性 質 を 示 した が, DNA複 製 の 誤 りの頻 度 が ポ リ メ ラ ー ゼIよ りも高 か っ た。 この た め, Po1I^*が 大 腸菌 の紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 に 関与 して い る可 能 性 が 示 唆 され た 。 しか し, そ の 後, polA 遺 伝 子 を完 全 に 欠 失 した大 腸 菌 (⊿polA) が 作 製 さ れ, そ のUV mutability が野 生 型 株 と同程 度 で あ る こ とが 明 らか に され た^<50)>。この た め 現 在 では, 大 腸 菌 の紫 外 線 誘 発 突 然変 異 に, DNAポ

リメ ラ ー ゼI, そ して Po1I^* は必 須 な 役割 を 果 た して い な い もの と考 え られ て い る。

2. DNAポ リメ ラ ー ゼII

DNAポ リ メ ラー ゼIIの 研 究 は, DNAポ リメ ラー ゼ Iや 後 述 す るDNAポ リメ ラ ー ゼIIIに比 べ て遅 れ, 現在 で もそ の生 理 的 意 義 は 明確 で は な い 。 しか し最 近, DNA ポ リメ ラ ー ゼIIの 遺 伝 子 が ク ロー ニ ン グさ れ, DNAポ リメ ラ ーゼIIは 分 子 量 約9万 の蛋 白質 で あ る こ とが 明 ら か に され た^<51∼53)>。興 味 深 い こ とにDNAポ リメ ラー ゼ IIの ア ミノ酸 配 列 は, 他の 大 腸 菌 のDNAポ リメ ラ ーゼ よ りも哺 乳 類 細 胞 の もつDNAポ リメ ラー ゼ α と, よ り 高 い 類 似 性 を も つ^<53,54)>。さ らに, DNAポ リメ ラ ーゼII を コ ー ドす る polB 遺 伝 子 は dinA 遺 伝 子 (damage inducible gene : DNA損 傷 の際 に誘 導 さ れ る遺 伝 子 で, dinA につ い ては 大 腸 菌 染 色 体2分 付 近 に 存 在 して い る こ とが 知 られ て い るだ け で, そ の機 能 は 不 明 で あ っ た) と 同一 であ る こ とが 明 らか に され た^<52,53)>。ク ロー ニ ン グ され た polB (=dinA) 遺 伝 子 の プ ロモ ー タ ー領 域 に は, LexA リプ レ ッサ ー が 結 合 す るSOSボ ッ クス が 存 在 す る。DNAポ リメ ラ ーゼIIの 部 分 精 製 標 品 は, DNA ポ リメ ラ ー ゼIIIホロ酵 素 で は合 成 反 応 が停 止 して しま う 損 傷 部 位 (脱 塩 基 損 傷 部 位) に対 合 す る 位 置 に も ヌ ク レ オチ ドを挿 入 し, か つ 合 成 反 応 を続 け る こ とが で きる と い う^<55)>。こ のた め, DNAポ リメ ラー ゼIIが 紫 外線 突 然 変 異 の誘 発 に関 与 して い る の で は な い か と考 え られ た。 しか し, dinA 変 異 株 のUV mutability は野 生 型株 と同 程 度 で あ り, ま た polB 遺 伝 子 を 欠 失 さ せ た 大 腸 菌 (⊿polB) も polB^+ と 同程 度 のUV mutability を示 す^<56)>。 こ のた め, DNAポ リメ ラ ーゼIIも, 大 腸 菌 の紫 外 線 突 然 変 異 の誘 発 に は 必 須 な 役 割 を果 た して い な い もの と考 え られ る。 しか し, polB はSOS遺 伝 子 の ひ とつ で あ る こ とか ら, DNAポ リメ ラ ー ゼIIが 他 の変 異 原 に よ り誘 発 され る突 然 変 異 に 関 与 して い る可 能 性 が考 え られ る。 DNAポ リメ ラ ーゼIIの 突 然 変 異 誘 発 に果 た す 役 割 に つ い て は, 今 後 さ らに 検 討 す る必 要 が あ ろ う。 表2. 大 腸 菌 の3種 類 のDNAポ リメ ラー ゼ^<45)> 1919

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54 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 36 No. 12 (1991)

3. DNAポ リ メラ ー ゼIII

DNAポ リメ ラ ー ゼIIIは, DNAポ リメ ラー ゼI, II とは 異 な り, 10種 類 以 上 の サ ブユ ニ ッ トか らな る分 子量 約90万 の 巨大 な複 合 体 で あ り, 大 腸 菌 の染 色 体DNA の 複 製 を に な って い る^<57)>。こ れ らサ ブユ ニ ッ トの う ち dnaE (=polC) 遺 伝 子 に コー ドされ た α サ ブ ユ ニ ッ ト がDNA複 製 反 応 を 行 な い, dnaQ 遺 伝 子 に コー ドされ た εサ ブ ユ ニ ッ トが3'→5'エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ活 性 を 示 し, 校 正 機 能 を果 た して い る。 αサ ブユ ニ ッ トを 含 む Pol IIIコ ア酵 素 の プ ロセッ シ ビテ ィは 低 い が, これ が 他 のサ ブ ユ ニ ッ トと複合 体 (Pol IIIホ ロ酵 素) を形 成 す る こ と に よ り, 飛 躍 的 に高 い プ ロセ ッシ ビテ ィを示 す よ うに な る (表3)。Pol IIIホ ロ酵 素 はサ ブユ ニ ッ ト組 成 の 異 な る非 対 称 な2量 体 か ら構 成 され, そ れ ぞ れ が リー デ ィ ン グ鎖の 合 成 と ラギ ン グ鎖 の合 成 に関 与 して い る も の と考 え られ て い る^<58)>。 Bridges は, dnaE 遺 伝 子 が温 度 感 受 性 に な った 除 去 修 復 能 欠 損 大 腸 菌 株 を用 い, 紫 外 線 照 射 後 の イ ンキ ュベ ー シ ョ ンを34℃ (許 容温 度) で行 な う と, 短時間 (1∼ 1.5時 間) の うち に 突 然変 異 が 固定 され, そ め後 に 白色 光 を 照 射 して も 突 然変 異頻 度 は 減 少 しな い が, 紫 外 線 照 射 後 の イ ンキ ュベ ー シ ョン を43℃ (非 許 容温 度) で 1∼1.5時 間 行 な う と, 突 然 変 異 の固 定 は起て らず, そ の 後 に 白色 光 を照 射 す る と突 然 変 異 頻 度 が顕 著 に減 少 す る こ とを示 し, 紫 外 線 突 然 変 異 の 誘 発 にDNAポ リメ ラ ーゼIIIの αサ ブユ ニ ッ トが 関与 して い る こ とを 示 唆 し た^<59)>。 一 方, ベ イ テ ー医 科 大 学 の Mosesl ら は pcbA 1変 を もつ 大 腸 菌 を用 い て, 紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 へ のDNA ポ リメ ラー ゼIIIの関与 を示 した^<60)>。す なわ ち, 彼 ら の用 い た大 腸 菌 もDNAポ リ メ ラー ゼIIIが高 温 感 受 性 に な っ て い る が, そ の ほか に pcdA 1変 異 を も って い る 。 通 常 のDNAポ リメ ラー ゼIIIの温 度 感 受 性 株 と は 異 な り, pcbA 1を 同 時 に も つ 株 のDNA複 製 は, 43℃ で は DNAポ リメ ラー ゼIに 依 存 して起 こ る よ うにな る。 彼 らは 染 色 体DNAの 複 製 がDNAポ リメ ラ ーゼIに 依 存 して起 こ る この よ うな 条件 下 で, 紫 外 線 に よる突 然 変 異 が誘 発 さ れ るか否 か を調 べ た。 そ の結 果, このDNA ポ リメ ラ ーゼIIIの温 度 感 受性 変 異 と pcbA 1変 異 を もつ 株 で は, DNA損 傷 に 伴 う recA 遺 伝 子 の 発 現 (SOS 誘 発) や遺 伝 的 組換 え は正 常 に起 こ る も の の, 43℃ で

は紫 外線 に よ る変 異 は誘 発 され な い こ とが 明 らか に な っ た。Bridges ら, そ して Moses らの 報 告 か ら, 大 腸 菌 の紫 外 線 突 然 変 異誘 発 に はDNAポ リ メラ ー ゼIIIが関 与 して い る も の と考 え られ て い る。

VII. umuDC 関 連 遺 伝 子 群 : umuDC フ ァ ミ リー umu DC 遺 伝 子 は大 腸 菌 染 色 体 上 の遺 伝 子 で あ るが, これ に類 似 した構 造 と機 能 を もつ 遺 伝 子 が プ ラ ス ミ ド, ま た Salmonella typhimurium の染 色 体 上 か ら ク ロー ニ ン グされ, 塩 基 配列 が決 定 され て い る。 これ ま で に大 腸 菌 の umuDC 遺 伝 子 以 外 に4種 類 の 関 連 遺 伝 子 が 単 離 され, そ の性 質 が 詳 し く調 べ られ て い る (表4)。 1. mucAB 遺 伝 子 mucAB 遺 伝 子 は pKM 101プ ラ ス ミ ドか ら ク ロ ー ニ

ン グ さ れ た umuDC 類 似 遺 伝 子 で, mucA, mucB は そ

れ ぞ れ 分 子 量16,371と46,362の 蛋 白 質 を コ ー ド し て お り, 大 腸 菌 の umuDC と ヌ ク レ オ チ ド レ ベ ル で 約52 表3. DNAポ リ メ ラ ー ゼIIIの サ ブ ユ ニ ッ ト組 成 と そ の プ ロ セ ッ シ ビ テ ィ^<57,58)> 表4. umuDC 関 連 遺 伝 子 群

1920

(11)

誤 りがちDNA修 復 の分子機構 55

%の 相 同性 を 示 す (表4)^<12,16)>。mucAB 遺 伝 子 の 発 現 は RecA と LexA に よ り 調 節 され て い る。pKIM 101 プ ラス ミ ドはR46と よば れ るN不 和合 性 群 (incompa tibility)に 属 す る接 合 型 プ ラス ミ ドの欠 失 変 異 体 と して 単離 され, そ の後, エ ー ムス テ ス トの 指 標 菌体 で あ る S. ty7phimurium TA株 に組 み 込 まれ, 宿 主 菌 の 変 異 原 に 対 す る感 受 性 の 増 大 に 貢 献 して い る^<62,63)>。mucABは, (1)大 腸 菌, S. typhimurium の 自然 突 然 変 異 頻 度 を 高 め, (2)変 異 原 物 質 に 対 す る大 腸菌, S. typhimurium の muta bilityを umuDC よ りも高 め る こ とが 知 られ て い る。 と くに ア フ ラ トキ シ ンB_1に よる 大 腸 菌, S. typhimurium の 突 然 変 異 は, mucAB 遺 伝 子 が 存 在 す る場 合 には 起 こ る が, umuDC 遺 伝 子 が 存在 して い て も起 こ らな い^<64)>。 MucA 蛋 白質 は UmuD の 開 裂 部 位 で あ る Cys^<24> と Gly^<25> に対 応 す る 位 置 に Ala^<25> と Gly^<26> を も っ て い る (図2参 照)^<12)>。抗 MucA 抗 体 を 用 いた 実 験 に よ り, MucA も UmuD と同 様 に活 性 型 の RecA^* に よ り開 裂

され る こ とが 明 らか に され た^<65)>。ま た, 開 裂 後 に生 ず る C末 端 側 ポ リペ プ チ ドだ け で紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 を促 進 し う る こ とが報 告 され て い る^<65)>。しか し, MucA の場 合 に は, (1)recA 430変 異 株 で は 開 裂 が 起 こ らな い に もか か わ らず, mucAB 遺 伝子 を もつ プ ラ ス ミ ドを導 入 す る

と recA 430株 のUV mutability が 回復 す る こ と^<66)>, (2) mucA の変 異 体 で開 裂 部 位 が Thr^<25>-Gly^<26> に な った も の は 開 裂 さ れ な い に もか かわ らず, 野 生 型 mucA と同程 度 に 紫 外線 誘 発 突 然変 異 を促 進 で き る こ とか ら, 開 裂 さ れ て い な い MucA 蛋 白質 自身 も突 然 変 異 誘 発 を促 進 で き る もの と考 え られ て い る^<65)>。な お, UmuD の場 合 も Ser^<60>, Lys^<97. を Ala に置 換 した 変 異 体 では RecA^* に依 存 した 開 裂 は検 出 され な い が, これ らの変 異体 で も紫 外 線 突 然 変 異 を促 進 す る能 力 は野 生型 UmuD の10∼20 %程 度 保 持 さ れ て い る。 このた め 開 裂 され て い な い

U muD も, 弱 い な が ら紫 外 線 突 然 変 異 を促 進 で き る も の と考 え られ て い る^<20)>。

mucAB は S. typhimurium だ け でな く haemophiluisinfluenzae , 枯 草 菌, 酵 母 に導 入 され, そ れ ぞ れ の 突然 変 異誘 発 能 に 及 ぼ す影 響 が検 討 され て い る^<67∼69)>。国立 が ん セ ン タ ーの 田 ノ岡 の グル ー プは mucA 遺 伝 子 を 哺乳 類 細 胞 (Balb 3T3) 内 で発 現 さ せ る と, 細 胞 の形 質 転 換 が 起 こ る こ とを報 告 して い る^<70)>。興 味 深 い こ とに, 細 胞 の 形 質 転 換 は 可逆 的 で, 細 胞 内 で の mucA の発 現 を 止 め る と, 細胞 は 正常 細 胞 へ戻 る。 R46プ ラス ミ ドか ら pKM 101プ ラス ミ ドを単 離 し た Mortelmans らは, 天 然 由来 の接 合型 プ ラ ス ミ ド33 種 に つ い て, そ の 突 然 変 異 を 促 進 す る能 力 を調 べ, pKM 101プ ラス ミ ドよ りも高 い能 力 を もつ もの は 見 い だ せ な か った と報 告 して い る^<71)>。 2. inpAB 遺 伝 子

impAB 遺 伝 子 (I group mutation and protection)

は, I不 和 合 性 群 に 属 す るTP110プ ラ ス ミ ドか ら リバ

プ ー ル 大 学 の Strike ら に よ り単 離 さ れ た umuDC 様 遺

伝 子 で, impA は 分 子 量16,201の 蛋 白 質 を コ ー ド し,

impB は 分 子 量47,731の 蛋 白 質 を コ ー ド し て い る (表

4)^<72,73)>。impAB 遺 伝 子 も umuDC, mucAB と 同 様 に

オ ペ ロ ン を 形 成 し て お り, そ の 発 現 は LexA に よ り抑 制

さ れ て い る 。ImpA 蛋 白 質 が UmuD の よ うに 活 性 型の

RecA^* に よ り開 裂 さ れ る こ と を 示 す 報 告 は 今 の と こ ろ

な い が, ImpA も UmUD の 開 裂 部 位 (Cys^<24> と Gly^<25>)

に 対 応 す る 位 置 に Ala^<28>と Gly^<29> を も っ て い る ほ か,

UmuD の Ser^<60> や Lys^<97> に 対 応 す る 位 置 に Ser^<64>と

Lys^<101>を も つ (図2参 照)。 し た が っ て, UmuD や

MucA と 同 様 に ImpA も Ala^<28> と Gly^<29> の間 で 開 裂 さ

れ る も の と予 想 さ れ る 。impAB が umuDC, mucAB と

異 な る 最 も大 き な 点 は, impAB が impC と よ ば れ る 第 3の 遺 伝 子 と と も に オ ペ ロ ン を 形 成 し て い る 点 で あ る 。 impC は 分 子 量9,491の 蛋 白 質 を コ ー ド し て お り, imp C→A→Bの 順 で 転 写 が 進 む (し た が っ て impCAB オ ペ ロ ン と よ ぶ べ き か も し れ な い)。 た だ し, impC は 紫 外 線 突 然 変 異 誘 発 に は 関 与 し て い な い こ とが 示 さ れ て い る 。 3. umuAS_<ST> S. typhimurium は 大 腸 菌 と 同 じ グ ラ ム 陰 性 菌 に 属 し, 染 色 体 上 の 遺 伝 子 配 列 も 一 部 を 除 き, き わ め て 類 似 し て い る 。 ま た, pKM 101プ ラ ス ミ ドを 組 み 込 ん だ S. typhimuriumは 環 境 変 異 原 の 検 出 に 用 い る エ ー ム ス テ ス トの 指 標 菌 株 と し て 汎 用 さ れ て い る 。 しか し, pKM 101 プ ラ ス ミ ドを も た な い S. typhimurium は, 大 腸 菌 に 比 べ 紫 外 線 や 変 異 原 物 質 (MMS, 4NQO, AF-2, ア フ ラ トキ シ ンB_1) に 対 す る mutability が 低 い^<63)>。mucAB を も つ pKM 101プ ラ ス ミ ドや, umuDC 遺 伝 子 を ク ロ ー ニ ン グ し た プ ラ ス ミ ドを 導 入 す る と, S. typhimurium の mutability が 増 大 す る こ とか ら, S. typhimurium で は umuDC の 機 能 に 欠 損 が あ る も の と 考 え ら れ て い た^<74)>。 ア メ リ カ の Eisenstadt の グル ー プ と英 国 の Sedgwick の グル ー プ は そ れ ぞ れ 独 立 に, 大 腸 菌 の umuDC 遺 伝 子 を プ ロ ー ブ に し て, S. typhimurium LT-2か ら遺 伝 子 ク 1921

(12)

56 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 36 No. 12 (1991) ロー ニ ン グを 行 な い, S. typhimurium の umuDC 遺 伝 子 (umuDC_<ST>) を単 離 した^<70∼78)>。umuDC_<ST>も大 腸 菌 の umuDC と同 様 に オ ペ ロ ンを 形成 し, umuDC_<ST>と 大 腸 菌 の umuDC の塩 基 配 列 は約70%の 相 同性 を示 す (表4)。 大 腸 菌 の umuDC は染 色 体 上 の26分 付 近 に存 在 す るが, umuDC_<ST>は S. typhimurium の 染 色 体 上 35.9∼40分 付 近 に存 在 す る [これ は S. typhimurium と 大 腸 菌 の 遺 伝 子 の順 序 が, 染 色 体 上25分 か ら35分 に か け て 逆 転 (inversion) して い るた め と 思 わ れ る]。 umu DC_<ST> を もつ マ ル チ コ ピー ・プ ラ ス ミ ドは 大 腸 菌 の umuD^-, umuC^- を相 補 し, これ ら umuDC 株 の 紫 外 線 突 然 変 異 誘 発 能 を上 昇 させ る (ただ し, そ の回 復 度 は 大 腸 菌 の umuDC を もつ プ ラ ス ミ ドを導 入 した 際 の30∼ 40%程 度 で あ る)。 した が っ て, S. typhimurium の umu DC は 欠 失 して い るわ け で は な く, そ の突 然 変 異 を 促 進 させ る能 力 が大 腸 菌 の umuDC よ りも 低 い と い う こ とが で き る だ ろ う。umuDC_<ST> の解 析 は後 述 す る S. typhimurium の も うひ とつ の umuDC 様 遺 伝 子 (sam A B) と と もに, 現 在 も継 続 して 進 め られ て い る。

4. samAB

筆 者 ら は ア メ リ カ, 英 国 の グ ル ー プ と は 独 立 に, 大 腸

菌 の umuC^- 株 のUV mutability を 回 復 さ せ る 遺 伝 子

を S. typhimurium TA 1538の 遺 伝 子 ラ イ ブ ラ リ ー か ら 単 離 した^<79)>。こ の 遺 伝 子 は 分 子 量15,523と47,726の 蛋 白 質 を コ ー ド し, そ の 塩 基 配 列 は 大 腸 菌 の umuDC と 約60%の 相 同 性 を 示 した (表4)。 筆 者 ら はsalmonella の mutability に 関 す る 遺 伝 子 と い う意 味 か ら, こ の 遺 伝 子 を samAB と命 名 した 。 SamA, SamB 遺 伝 子 は オ ペ ロ ンを 構 成 し, そ の プロ モ ー タ ー 領 域 に はSOSボ ッ ク ス が 見 い だ さ れ た 。samAB は S. typhimurium LT2か ら単 離 さ れ た umuDCST と 塩 基 配 列 レ ベ ル で 約40%異 な っ て お り, こ れ ま で に ク ロ ー ニ ン グ さ れ た umuDC 様 遺 伝 子 の な か で は, impAB 遺 伝 子 と も っ と も 高 い 相 同 性 を 示 し た (66%の 相 同 性)。 サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン法 に よ り, (1)S. typhimurium LT2, TA1538株 は い ず れ も samAB と umu DC_<ST> の 両 方 を も っ て い る こ と, (2)samAB は S. typhimurium の ク リ プ テ ィ ッ ク ・プ ラ ス ミ ド上 に 存 在 す る こ と を 明 ら か に した (図6)。 こ の ク リ プ テ ィ ッ ク ・ プ ラ ス ミ ドはLT2系 のS. typhimurium に 広 く 存 在 し, か つ 脱 落 し に く い こ と か ら, samAB 遺 伝 子 はLT2, TA1538株 だ け で は な く, 他 の エ ー ム ス テ ス トの 試 験 菌 株 中 に も 存 在 す る も の と 考 え ら れ る 。S. typhimurium に 存 在 す る2種 類 の umuDC 様 遺 伝 子 (umuDC_<ST>, SamAB) が 相 互 に ど の よ うに作 用 しあ っ てい る のか (独 立 に働 くのか, あ る い は相 乗 的 あ る い は拮 抗 的 に働 くの か) は興 味 あ る 問題 で あ る。umuDC フ ァ ミ リー の研 究 は, umuDC 遺 伝 子 の起 源 を考 え る うえ で興 味 深 い^<80)>。 お わ りに 本 稿 は, 1986年 か ら1988年 ま で マサ チ ュ ー セ ッ ツ工 科 大 学 の Walker 教 授 の研 究 室 で行 な った 仕 事 を 中 心 に, 帰 国後, 国 立衛 生試 験 所 で行 な った サ ル モ ネ ラの samAB 遺 伝 子 に関 す る研 究 も含 め, 紫 外 線 誘 発 突 然 変 異 に 関与 す る UmuD, UmuC, RecA, DNA複 製 酵 素 に つ い て の知 見 を ま とめ た もの で あ る。 この分 野

に お け る今後 の 課題 と して は, (1)突然変 異誘 発 に お い て RecA が果 た す “第3の 役割” の解 明, (2)in vitro 再 構 成 系 を用 い た UmuD, UmuC の 生化 学 的 機 能 の解 明, と くにDNA複 製 酵 素 と の相 互 作 用 に つ い て の 研 究, (3) umu D, umuC 遺 伝 子 の 生物 学 的起 源 の 解 明, と くに umu DC 遺 伝 子 の 生物 学 的普 遍性 ・多様 性 に 関す る研 究 が あ げ られ よ う。 本 稿 で は 「紫外 線 に よる突 然 変 異 の誘 発 」 とい う点 に 絞 って論 を進 め た た め, プ ロ フ ァー ジ の 誘 発 や 細 胞分 裂 の 阻害 と い った, 他 のSOS反 応 や,

UmuD, UmuC が 関係 す る他 の 生物 現 象 [cold sensiti vityの 誘 発^<81)>, DNA合 成 の再 ス ター ト=induced re plisomereactivation (IRR)^<82)>] につ い て は ふ れ なか っ た 。 本 稿 では, UmuD, UmuC に 依 存 した 突 然 変 異誘 発 の 図6. Salmonella typhimurium LT2と そ の 誘 導 株 が もつ ク リプ テ ィ ッ ク ・プ ラ ス ミ ド (pYQ100) の 制 限 酵 素 地 図 と samAB 遺 伝 子 の位 置

H : Hind III, S : Sal I, E : Eco RI。 制 限酵 素地 図 は 帝 京 大 学 医 学 部, 村 山琮 明 博 士 に よ り決 定 され た 。

1922

(13)

誤 りが ちDNA修 復の分子機構 57

系 を 「誤 りが ちDNA修 復 系 」 あ るい は「SOS修 復 系」 と よんだ 。 しか し, UmuD, UmuC, RecA の 役割 は お 一そ ら くDNA複 製 酵 素 の 忠 実 度 (fidelity) あ るい は プ ロ セ ッシ ビテ ィを修 飾 す る もの と 予 想 され る。 した が っ て, この系 は 「誤 りが ちDNA複 製 系 」あ るい は「SOS 複 製 系 」 と よぶ のが 適 切 な のか も しれ な い 。 紫 外 線 に よ って誘 発 され る塩 基 対 置 換 型 の突 然 変 異 とは, 大 腸 菌 が 示 す “緊 急 時 のDNA複 製” の結 果 と見 な す こ とも で き よ う。大 腸菌 の 紫外 線 突 然 変 異 誘 発 機 構 の研 究 は, 大 腸 菌 のDNA複 製 そ してDNA複 製 酵 素 の研 究 に新 しい 局 面 を もた らす か も しれ な い。

UmuD, UmuC に対 応 す る蛋 白質 が, 大 腸 菌, S. typhimurium 以 外 の 微 生物, そ して真 核 生物 に も 存 在 す る か 否 か は 興 味 あ る 問 題 で あ る^<83)>。これ ま で に 酵 母 の REV1遺 伝子 が コー ドす る分 子 量 約11万 の 蛋 白質 が, UmuC と部 分 的 に ア ミノ酸 配 列上 の 相 同 性 を もつ こ と が 報 告 され て い る^<84)>。酵 母 のREV1変 異 株 は 野 生 型 株 よ りもUV mutability が 減少 して い る。 紫 外 線 を は じ め, 大 腸 菌, S. typhimurium に 変 異 を 誘 発 す る変 異 原 の 多 くは, ヒ トを 含 む高 等 生 物 に対 して も変 異 を 誘 発 す る こ とか ら, 何 らか の共 通 な メカ ニ ズ ムが 働 い て い る も の と考 え られ る。本 稿 で 紹 介 した 大 腸 菌 や S. typhimurium な ど, 微 生 物 を 用 い て進 め られ て い る変 異 誘 発 の メカ ニ ズ ム に関 す る研 究 が, 高 等 生物 で起 こる突 然変 異誘 発 の メ カ ニ ズ ム解 明の “導 きの 糸” とな る こ とを 希 望 して い る 。 マサチ ューセ ッツ工科大学の G. C. Walker 教 授, 共同研究 者 であ ったJ. R. Battista 博 士 (現, ル イジアナ州立大学), 太 田敏博博士 (現, 残留農薬研究所), また貴重な研究論文, 研 究 データを提供 して くだ さった国立がんセ ンター 田 ノ岡 宏部 長, 大阪大学理学部 小川英行教授, 大阪大学微生物病研究所 品川 日出夫助教授, 九 州大学医学部 真木寿治博士, そ して本誌 に投稿す る ことを勧 めて くれた国立衛生試験所細胞バ ンクの水 沢博室長, 論文 を批評 して くれ た渡辺雅彦修士, 山田雅巳博士, 論文 の作製 を手伝 って くれた松井恵子 さんに感謝いた します。

(文献 番号を太 字にしたものは特 に重要 であることを示す)

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