C A N C E R 9 (2000), p. 1 - 3 1
飼育クルマ工ビにみられた眼と眼柄の異常再生
豊 田幸調 ・ 本 尾 洋 著者らは種苗生産後,長期間飼育していたクル マエピの限と眼柄に奇形のある個体を見つけた. クルマエピ科の奇形については,スベスベエピ属 のParapenaeopsis sかlifera で天然個体から眼の欠 損した個体や尾節が 2 又にわかれた個体が報告され (Kulkarni et al., 1980 ; Aravindaksha & Pillai,
1990),養殖されていたクルマエビ属の Penaeus vannamet からは雌雄同体の個体が報告されてい
る (Farfante & Robertson, 1992).
クルマエビの奇形については,天然から採集さ れたものの中に,奇形のある尾節を有する個体が 報告されているが( 岡本, 1994) ,限や限柄の奇 形に閲して,著者の知る範囲では記載が見当たら ないので,以下に今回得た襟本の概要を紹介する. 観察結果と考察 1 . 眼柄から“触角" が再生し た奇形 京都府宮津市 にある種苗生産施設において,平 成10年 4 月17 日に採卵 し,その後種苗生産 された クルマエピ (体長約50mm) 600匹を同年 7 月22 日 か ら270 リァトル水槽20基に 30個体ずつ収容し , 長期間飼育していた( 水温約220 C). そして ,平 成10年12月には眼の欠損した 1 個体を確認した. 平成11年 2 月17 日( 飼育開始から 7 ヶ月日 ) に右 側眼の欠如したこの個体の眼柄から“触角" が再 生し ているのを見つけた (図1 ) . その時点での 体長は124 .7mm で,それまでの脱皮回数は脱皮殻 および体長か らおよそ11 回 と判断された .その後, 平成 11年11 月22 日まで飼育を続け,その問 4 回の 脱皮があ ったが,異常再生はそのままであ った. この時の大きさは 体長151.6mm,体重39 .9 9 で雄 であ った.
Koji T O YO T A and Hiroshi M O TO H: Abnorm alities of eyes in rearing Kuruma prawn, Marsupe仰 仰s Ja知
叫tcu S 図1 異形再生し た雄ク ルマ工ビの右側眼柄 再生部分 眼柄部分 トー一ー- - - 1 l m m 図2 “触角" の拡大 異常再生された“触角" は白色に黒色の縞模様 を呈 し,その形状は円筒状で長さは7.2mm,太 さ は基部で0 .62mm ,先端部で0.03聞で、あ った(図 2 ). この“触角" には基部から大きい節が2 つ,その 後に小 さい節が34 あり,その小 さい節の限柄側か ら10節には岡)1毛が左右に 1 - 2 本ずつ生えてい た. “触角" は半円を描くように 湾 曲 し,あたか も眼を形成しているかのようであ った. この異常 触角は,正常な第 l 触角のように振れることはな
2 飼育クルマエビにみられた眼と限柄の異常・再生 く,眼柄部に固定されていた . 正常な第1 触角に
は3 節の柄部と 2 本の鞭部から成 って いるが,こ の異常触角はその形状か ら第1触角に酷似 してい
て,M a y n a rd (1965), M ay n ard & C ohen (1965),
M ellon, et al. (1989) が指摘して いる ように外鞭 の相同器官が再生したものと推定される . 一方,著者らは体長50mmのクルマエピ8 0匹を眼 柄切除して“触角" が誘起 されるかどうかを調べ た. 即ち,このうち4 0匹は左の眼柄を切除し,残 りの4 0匹は右の 眼柄 を切除して 1 トン水槽に収 容し ,水温20 - 2 50 Cで,平成11年10月から翌年1 月までの3 ヶ月間,体長約90mmまで飼育した . し かし,単に眼柄を切除しただ けではいずれの個体 にも再生異常はみられなかった . エビ類の異形再生hetero m o rphos isについては 天然から 採集されたイセエピ(Yosii,193 1 ; 倉 田, 1970 ; 武田 ・安原, 199 1) でもみら れ, アメ リカ
イ セ エ ピ Panulirus argus (M ay nard, 1965 ,
M ay nard & C o h e n, 1965 ; Ig l巴sia. E.D . & P erez ,
R.B.. 1984 ) やアメ リカザリ ガニProcambarus clar.
kii (M ell o n, et al., 1989 ; N a katani. et al., 1992)
では実験的に異形再生を生じさせている . 異常再 生を起こす要因として武田 ・安原 (1991 ) は,エ ピやヤドカリ類で眼柄基部の神経節音11が傷めつけ られる ことを 挙 げている. 今 回のクルマエピの奇 形についても ,単に切除しただけでは異常な再生 が見ら れないこ とから,この標本については飼育 期間中の取 り扱いによって眼柄が切断され,切断 後脱皮した直後の殻の柔らかい時に何 らかの原因 で
IR
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柄の基部神経節までが傷つけら れ異形再生が 生じたのではないかと考えられる. しかし ,その 再生の条件 については切断された時のエピの大き さや 切断部位によ って影響されるものと 思われ る. なお,この個体の異常再生部位以外はすべて 正常と判断された .2.
眼の中に 白色域のある奇形 この奇形は同じ飼育中の1pcにみられた . 見つ けた平成11年2月17日,こ の雄の体長は123mmで, 右限のやや前方に縦に白く模様が入っていた( 閃 3) . 正常な眼では黒色素が存在している 個眼 が 多数集まって複眼を構成す るが, 白色域は光沢の 図3 白色域のあるクルマエビの右側眼球 図4 眼球部分にある白色域の鉱大 ある 白色でその部分に は個眼がなく“平板状" で あ っ た (図4) . このような眼球異常の報告は著 者らの知 る限りでは見当たらない. 種前生産およびその後の中間育成の期間中に は,通常かなり高密度で飼育することから,仕分 け ・水槽がえなどでエピに物理 ・生理的な影響を 与えやすい。 この眼の白 色域は恐らく飼育中に受 けた物理 ・生理的な影響が原因で眼に傷ができ て,個限が欠損した跡と思われ る. この個体も異 常な眼球部以外はすべて正常と判断された . 参考文献A rav indakshan. M . & Pillai. S. K.. 1990. A penaeid
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( 豊田幸詞: 株式会社関西総合環境センタ一