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食行動異常を示す者における怒り反すうが摂食量に及ぼす影響――生活支障度の差異の観点から――

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-48 216

-食行動異常を示す者における怒り反すうが摂食量に及ぼす影響

――生活支障度の差異の観点から――

○岡田 奈那美1)、深澤 克二1)、石川 美希2)、田中 佑樹1,3)、嶋田 洋徳4) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )独立行政法人地域医療機能推進機構埼玉メディカルセンター、 3 )日本学術振 興会特別研究員、 4 )早稲田大学人間科学学術院 【問題と目的】 感情に応じて食べる情動的摂食や,食べることを制 御できない感覚を伴う過剰な食事摂取などの食行動異 常は,摂食障害のリスクファクターとなることが示唆 されている(e.g., Gianini, et al., 2013)。この食 行動異常を引き起こす要因としては,特に「怒り感情」 と の 関 連 が 強 い こ と が 指 摘 さ れ て お り(e.g., Abbate-Daga et al., 2005),これを背景として,摂 食障害に高い治療効果を示す強化認知行動療法では 「情動の問題」が大きく標準プロトコルの中に扱われ ている(切池,2010)。しかしながら,怒り感情の程 度のみでは食行動異常を必ずしも予測しないことも報 告されており(Aruguete et al., 2012),「反すう」 という思考スタイルと怒りなどのネガティブ感情の組 み合わせによって,食行動異常が引き起こされること が示唆されている(Kubiak et al., 2008)。すなわ ち,食行動に影響を及ぼすとされる怒りを反すうする ことによって,怒り感情に長く曝された場合に,食物 への希求を抑制できなくなり,過食行動といった食行 動異常が生起する可能性が予測される。しかしなが ら,このような生起メカニズムに関して実証的な検討 は十分に行われていない現状にある。 なお,摂食障害のハイリスク群とみなされた食行動 異常を示す者のうち,10年後に摂食障害をきたした者 は 3 %のみであることから(Heatherton et al., 1997),摂食障害のハイリスク群と臨床群との間には 何らかの差異が存在する可能性が考えられる。この差 異を検討するにあたって,臨床群の治療において行動 面の障害だけでなく生活機能の側面にも着目すること が重要視されている(小林ら,2010)ことに鑑みると, 摂食障害のハイリスク群を扱ったアナログ研究におい ても,生活支障度を考慮する必要があると考えられ る。したがって,本研究においては,生活支障度を個 人差として考慮に入れて,怒り反すうが摂食量に及ぼ す影響を検討することを目的とした。 【方 法】 実験参加者 首都圏の大学の学生21名(男性 6 名,女 性15名,平均年齢23.1±1.8歳)を対象に実験を実施 した。 測度 ( a )摂食障害の症状の重症度:摂食障害評価 質問票(EDE- Q ;切池,2010),( b )摂食障害によっ て引き起こされる二次的な生活支障度:臨床障害評価 (CIA;切池,2010),( c )現在の気分:Lievaart et al.(2017)を基にして 4 項目を追加した日本語版 PANAS(佐藤・安田,2001),( d )怒りエピソード: Lievaart et al.(2017)を基にして本研究で作成し た怒り喚起エピソード記録用紙,( e )情動調整課題 操作チェック:Lievaart et al.(2017)を基にして 本研究で作成した怒りエピソード回想アンケート, ( f )摂食抑制反応の認知的指標:Go/NoGo課題におけ るNoGo試行の正答率,( g )摂食量:ひと口サイズの クッキーを食した個数,( h )実験における自身の摂 食量に関する主観評定のVisual Analogue Scale(VAS; 田邉,2017),( i )空腹感に関するVAS(田邉,2017), ( j )食に関する困難感に関するVAS(田邉,2017)を 用いた。 手続き 実験は 2 日間にわたって実施された。 1 日目 および 2 日目においては,全ての実験参加者に対し ( c )への回答を求めた後,怒り喚起課題として( d ) への回答を求めた。次に,実験参加者に対して情動調 整課題を実施した。情動調整課題は「怒り反すう課 題」および比較対象として設定した「ディストラク ション課題」の 2 種類であり,日ごとにカウンターバ ランスをとって実施した。課題実施後に,( c )およ び,( e )への回答を求めた。続いて,( f )の測定お よび( g )を実施した。なお,( g )の前においては ( i )への回答,( g )実施後においては( i ),( h ) への回答を求めた。 2 日目においては,上記に加え ( a ),( b )および( j )への回答を求めた。 倫理的配慮 早稲田大学「人を対象とする研究に関す る倫理審査委員会」の承認を得た(承認番号2017-038)。 【結 果】 摂食障害の症状の重症度を測定するEDE- Q の行動指 標がいずれも数値 0 である者を適応群, 1 以上の者の うち,摂食障害によって引き起こされる二次的な生活 支障度を測定するCIA得点が平均+0.5SD以上である者 を生活支障群,それ以外の者を食行動異常群とした。 次に,怒り反すうが摂食抑制反応の認知的指標に及 ぼす影響を検討するため,Go/NoGo 課題におけるNoGo 課題のパフォーマンス得点を従属変数,群と情動調整 課題を独立変数とした分散分析を行った。その結果,

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-48 217 -群の主効果と情動調整課題の主効果および交互作用は いずれも有意でなかった。 続いて,怒り反すうが摂食量に及ぼす影響を検討す るために,食行動の行動的指標として測定した摂食量 を従属変数,群と情動調整課題を独立変数とした分散 分析を行った(Figure 1)。その結果, 情動調整課題 の主効果が有意傾向(F (1, 18) = 4.27,p < .10) であり,すべての群においてディストラクション課題 時よりも怒り反すう課題時で摂食量が増加する傾向に あることが示された。以上のことから,怒り感情が生 起した際に反すうをすることによって,食行動異常が 引き起こされる可能性があることが示唆された。な お,交互作用は有意でなかったことから,生活支障度 の差異にかかわらず,一様に怒り反すうが摂食行動に 影響を及ぼす傾向があることが示された。 【考 察】 本研究の目的は,生活支障度を個人差として考慮に 入れて,怒り反すうが摂食量に及ぼす影響を検討する ことであった。本研究の結果から,当初の想定とは異 なり,生活支障度の差異にかかわらず,怒り反すうを 行った者とそうでない者のどちらにおいても,摂食抑 制反応の認知的指標に差は見られないことが示され た。一方で,摂食量に関しても想定とは異なり,生活 支障度の差異にかかわらず,怒り反すうを行った者は そうでない者と比較して,摂食量を増加させる傾向が あることが示された。以上から,怒り反すうは,摂食 抑制に関する認知的な処理の程度には影響を及ぼさな い一方,直接的に食物を食べるという行動へとつなが りやすい特徴を反映している可能性があると考えられ る。このことについて,怒り反すうによって認知処理 容量が圧迫されることから,食物に対して何らかの認 知的反応が生じる前に自動的に反応してしまうと理解 できる可能性がある。 また,生活支障度の差異によって摂食量に差が見ら れなかったことに関しては,本研究の摂食課題におい て使用したひと口サイズのクッキーの個数という物理 的な特徴が,結果として実験参加者の摂取量の自己抑 制基準としてはたらき,本来検討したかった生活支障 度の影響性を反映できなかった可能性が考えられる。 したがって今後の研究においては,実験参加者が一 定の摂食量の自己抑制基準を設定できないような食物 の提供の仕方をすることによって生活支障度の差異を 反映し,本研究の目的を再検討する必要があると考え られる。

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