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K 2 X = 4 MWG(f), X P 2 F, υ 0 : X P 2 2,, {f λ : X λ P 1 } λ Λ NS(X λ ), (υ 0 ) λ : X λ P 2 ( 1) X 6, f λ K X + F, f ( 1), n, n 1 (cf [10]) X, f : X

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Academic year: 2021

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(1)

種数

2

の有理超楕円曲面と

E

8

フレーム

北川真也

1

主結果と背景

切断をもつ有理楕円曲面のモーデル・ヴェイユ群並びに格子の構造は, ルート 格子 E8 をフレームとして, 小木曽・塩田 [6] により特異ファイバーに沿って詳し く分類されている. 特にモーデル・ヴェイユ群が自明な場合は, 可約な特異ファイ バーが II 型のみとなる. II 型の特異ファイバーの双対グラフは, E8 のディン キン図形をグラフとして含んでいる. 本稿の主定理として, 有理曲面の種数 2 曲線束に対しても, フレーム格子を決 定する. その一部については E8 をフレームとして, 有理楕円曲面に帰着させて, モーデル・ヴェイユ群並びに格子の構造を明らかにできる. 特にモーデル・ヴェ イユ群が自明な場合に, 可約な特異ファイバーの双対グラフを分類する. ゆくゆ くは種数 2 の場合も [14] のように, 分類の成果を特異点の変形理論へ応用してみ たい. 以下, X/C は非特異有理曲面で, f : X → P1 は相対極小な種数 2 の超楕円 曲線束とする. 特にファイバーは全て連結である. 命題 3 より, f は少なくと も一つは切断を持ち, それを零切断 (O) とよぶ. また, f の切断は X の曲線と みなす. ネロン・セヴェリ群 NS(X) において, すべてのファイバーの既約成分 全部と (O) が生成する部分群を T とおく. それらへ交点形式の (−1) 倍で内積 をいれて, ネロン・セヴェリ格子 NS(X)−, 自明格子 T− とよぶ. このとき塩田 [15] によるモーデル・ヴェイユ格子の基本定理が成り立つ: モーデル・ヴェイユ群 MWG(f ) は NS(X)/T に同型, 狭義モーデル・ヴェイユ格子 MWL(f)0 は直交補 格子 (T−) ⊂ NS(X)− に同型, モーデル・ヴェイユ格子 MWL(f ) は MWL(f )0 の双対格子に同型である. 以上を受けて, フレーム格子を次のように定義する: 定義. {fλ : Xλ → P1}λ∈Λ は NS(Xλ) が互いに同型な族とする. ある λ0 ∈ Λ が存在して, 上の同一視で任意の λ ∈ Λ に対して Tλ0 ⊂ T λ− が成り立つとき, MWL(fλ0) を, 族 {fλ}λ∈Λ のフレーム格子とよぶ.

(2)

KX2 = −4 かつ MWG(f) が自明な場合を除くと, X は P2 への双有理射をも つ. F の像がなるべく低次の平面曲線となるように, 双有理射 υ0 : X → P2 を 選ぶことにする. このとき有理曲面の種数 2 曲線束が, 対応する平面曲線のペン シルで五つの族に分かれる. 更に, 族 {fλ : Xλ → P1}λ∈Λ の各 NS(Xλ) 間へは, 0)λ : Xλ → P2 で縮約される (−1) 曲線及び直線の X への全引き戻しを基底に とって同型を与える. すると定理 6 の通り, 自然に fλ の一般ファイバーが同一視 できる. KX + F はネフなので, f の自己交点数は (−1) 以下である. 尚, 自己交点数が n なる切断を, n 切断と呼ぶことにする. 定理 1 (cf. [10]). X は非特異有理曲面で, f : X → P1 は相対極小な種数 2 の超 楕円曲線束とする. f : X → P1 は以下の (1)–(5) の何れかに属する. 更に, 各族 のフレーム格子は階数 4 − 2KX2 の正定値ユニモジュラ整格子であって, 適当な 基底による拡大ディンキン図形は以下の通りである: (1) KX2 = −4 なる族: l l l l l l l l l l l 3l (2) KX2 = −3 なる族: l 1l l l l l l l l l (3) KX2 = −2 かつ f が (−1) 切断をもたない族: l l l 1l l l l 1l (4) KX2 = −2 かつ f が (−1) 切断をもつ族: l l l l l l l l (5) KX2 = −1 なる族 : l 1l l 1l l 1l ここで, 各基底に円が対応して, 円内の数字は自己内積を表す. ただし自己内積が 2 の場合は省かれる. また二つの基底の内積が (−k) のときに, 対応する二つの円 を k 本の直線で結ぶ. 定理 1 の (1) については齋藤・榊原 [13] 及びヴィエト [5] 等の先行研究があっ た. 特に, 齋藤 [12] では特異点の変形理論への応用も意識しながら, MWG(f ) が 自明な場合の例を, 定義式と共に挙げていた.

(3)

命題 2 ([8]). X は KX2 = −4 なる非特異有理曲面で, f : X → P1 は相対極小な 種数 2 曲線束とする. このとき MWG(f ) が自明ならば, f は双対グラフが図 1 となる特異ファイバーを持つ, かつそのときに限る. l l l l l l l l l l l l 3l 5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 6 2 図 1. 格子の基底を取り替える事で, 拡大ディンキン図形は変わり得る. しかし, 定 理 1 の (1) の拡大ディンキン図形は, 図 1 のグラフの一部分となっているので, うまく基底が取れていると思いたい. 定理 1 の他の拡大ディンキン図形について も, 同じ族で MWG(f ) が自明となる f の特異ファイバーの双対グラフの一部に 含まれ得る.

2

準備

ツェンの定理から, 線織曲面はいつも切断を持つことが知られている. [1] にあ る其の証明を模倣して, 次のことが分かる. 命題 3. 幾何種数が 0 なる非特異複素射影曲面の種数 2 曲線束は必ず切断を持つ. 証明. X を幾何種数が 0 なる非特異複素射影曲面とし, B を非特異射影曲線, そして f : X → B は相対極小な代数曲線束で, 一般ファイバー F は種数が 2 の曲線とする. X の幾何種数が 0 なので, NS(X) と H2(X, Z) は同一視する. {D.F ∈ Z | D ∈ H2(X, Z)} は Z のイデアルであるので, 整数 n ≥ 1 を以っ て nZ の形に書ける. 更に H2(X, Z) 上の Z 準同型写像 D 7→ (1/n)(D.F ) に 着目する. このときポアンカレ双対定理から, 任意の D ∈ H2(X, Z) に対して D.F0 = (1/n)(D.F ) をみたす F0 ∈ H2(X, Z) が存在する. したがって F は nF0 と数値的に同値となる. 特に n2F02 = F2 = 0 から F02 = 0 である事に注意する. ここで種数公式から nF0.KX = F.KX+F2 = 2 を得る上に, F0.KX = F0.(KX+F0) は偶数である. したがって n = 1 でなければならない. よって D0.F = 1 をみた す D0 ∈ H2(X, Z) が存在する. 更に, 次数が十分に大きい B の因子 L に対して, 有効因子 E ∈ |D0+ f∗L| がとれる. このとき E の既約成分として, C.F = 1 な る曲線 C が存在する.

(4)

以降では X を C 上の非特異有理曲面とし, f : X → P1 は相対極小な種数 2 曲線束とする. したがって命題 3 より f はいつも切断を持っている. さて, 次は f の一般ファイバー F に着目する. 0 → OX(KX) → OX(KX+F ) → OF(KF) → 0 から H0(X, KX + F ) ' H0(F, KF) を得る. 従って |KX + F | はペ ンシルを成し, 固定成分 Z は f の水平方向には現れない. 更に種数 2 曲線束の 顕著な成果 [3] を, 有理曲面の場合に制限して紹介する. 尚, ねじれとなる因子が 無いので, 有理曲面の二重被覆は分岐因子から一意に定まる. 有理二重被覆 f × Φ|KX+F −Z| : X 99K W \ := P1 × P1 ' P(f ∗OX(KX/P1)) の分 岐因子を B\ とおく. W\ の第一成分への射影のファイバーを Γ, 第二成分への射 影のファイバーを ∆0 で表す. B\ の三重点が, もし (k − 1) 位の無限近傍点も三 重点であるが, k 位の無限近傍点達は高々二重点となるとき, もとの B\ の三重点 を k 位の三重点と呼ぶ. つまり, 一位の三重点を中心とする W\ のブローアップ で, B\ の狭義逆像は例外因子上に三重点をもたない. 命題 4. k は 1 以上の整数とする. B\ の特異点は, W\ の各ファイバー毎に類別 すると, 次の六種類の何れかである: (0) 一位の三重点と高々二重点しかもたない. (Ik) B\ が Γ を含んで, B\− Γ が異なる二点で三重点をもつ. ただし, 三重点は (2k − 1) または (2k) 位である. (IIk) B\ は Γ を含まず, B\ が異なる二点で三重点をもつ. ただし, 三重点は (2k) または (2k + 1) 位である. (IIIk) B\が Γ を含んで, B\−Γ が Γ と一点で六重に交わる (4k−2) または (4k−1) 位の三重点をもつ. (IVk) B\ は Γ を含まず, B\ が Γ と一点で六重に交わる (4k) または (4k + 1) 位 の三重点をもつ. (V) B\ が Γ を含んで, B\− Γ が Γ と一点で六重に交わる四重点をもつ. ただ し四重点を中心とするブローアップで B\− Γ の狭義逆像は, Γ のそれ上で 二重点をもつ. 定義. f のファイバーの f × Φ|KX+F −Z| による像 Γ 上で B \ の特異点が命題 4 の

ようになるとき, 対応して f のファイバーを (Ik), (IIk), (IIIk), (IVk), (V) 型の特

異ファイバーと呼ぶ. ただし, 上の五つの型を除く f の特異ファイバーは, 便宜 上, (0) 型の特異ファイバーと呼ぶ.

(5)

例えば, 結節点を一個だけ持つ f の既約な特異ファイバーの像 Γ は, 結節点に 対応する Γ の点で B\ と二重に接するが, その接点は B\ の非特異点である. し かし, これも (0) 型と呼ぶことにする. 定理 5. (∗) 型の特異ファイバーの本数を #{∗} とおく. このとき次が成り立つ: B\ ∼ 6∆ 0+ (ε + KX2+ 6)Γ, ε = X k (#{Ik} + #{IIIk}) + #{V} KX2+ 4 =#{V} +X k

((2k − 1)(#{Ik} + #{IIIk}) + 2k(#{IIk} + #{IVk})). (2.1)

等式 (2.1) を受けて Hf := KX2+ 4 は (全) 堀川指数と呼ばれる. さて, (∗) 型

の特異ファイバー 1 本の既約成分の最小数については次の通りである : (V) (Ik) (IIIk) (IIk) (IVk)

4 2k 2k + 1 2k + 1 2k + 2 ネター公式よりピカール数 ρ(X) は (10 − KX2) に等しいから, 以上とモーデル・ ヴェイユ格子の基本定理を合わせて, rkMWL(f ) = ρ(X) − 2 −X t∈P1 (f−1(t) の既約成分の数 − 1) ≤ 12 − 2Hf が成り立つ. π\ : X\ → W\ は B\ に沿って分岐する有限二重被覆とする. eπ : eX → fW をそ の標準解消から得られる有限二重被覆とする. B\ の特異点を中心とする 2Hfのブローアップの合成 σ\ : W[→ W\ で, B[ に沿って分岐する W[ の有限二重被 覆 X[ が, 高々有理二重点しかもたないように出来る. 実は双有理射 σ : fW → W\ が σ[: fW → W[ と σ\ に分解するとしてよい. このとき Φ|Γ |◦ σ ◦ eπ : eX → P1 は, 丁度 Hf 本の互いに交わらない (−1) 曲線 eel をファイバーに含む, 種数 2 曲線束 である. その相対極小モデルとして f : X → P1 が再構成される. eel を縮約する ブローダウンの合成を ϕ : eX → X で表す. B\ の (Ik), (IIIk) 及び (V) 型の特異 点を成す ε 本の W\ のファイバーの σ による狭義逆像を, 更に eπ で引き戻すと, e X 上の ε 本の二重の (−1) 曲線となる. この ε 本の (−1) 曲線の和を E とおく. このとき (σ[◦ eπ)∗(−KW[) ∼ ϕ∗(2KX − (KX2)F ), (σ ◦ eπ)∗ 0 ∼ ϕ∗(KX + F − Z) − E

(6)

かつ (σ ◦ eπ)∗Γ ∼ ϕF である. さて, 切断をもつ有理楕円曲面は, 平面三次曲線のペンシルを基点解消して得ら れる. 楕円曲線束は反標準写像に他ならない. 種数が 2 の場合は, KX2 = −4 か つ MWG(f ) が自明なときに限り, X から P2 への双有理射が存在しない (cf. [8]). 定理 6 (cf. [8], [9]). X は非特異有理曲面で, f : X → P1 は相対極小な種数 2 曲線束とする. ただし, KX2 = −4 ならば MWG(f) が非自明と仮定する. このと き適当な双有理射 υ0 : X → P2 が存在して, f の一般ファイバー F を次の何れか 1 つに線型同値となるように出来る : (1) 4` − 2e1 13 X i=2 ei (KX2 = −4 の場合), (2) 6` − 2 8 X i=1 ei 12 X i=9 ei (KX2 = −3 の場合), (3) 7` − 3e1− 2 11 X i=2 ei (KX2 = −2 の場合), (4) 9` − 3 8 X i=1 ei − 2e9− 2e10− e11 (KX2 = −2 の場合), (5) 13` − 5e1− 4 10 X i=2 ei (KX2 = −1 の場合). ここで ` = υ∗0OP2(1) かつ ei は υ0 で縮約される (−1) 曲線の X への全引き戻し である. 特に f が (−1) 切断を持つならば (1), (2) または (4) であり, かつ其の時に限 る. また, 任意の双有理射 υ0 : X → (P2)0 に対して deg υ0(F ) ≤ deg υ0(F ) が成り 立つ. 証明の概略. 対 (X, F ) の #-極小モデル (cf. [2], [4]) に着目して, f のスロープ不 等式 (cf. [7]) を利用しながら数値的に候補を絞り込む. すると KX2 = −1 の場合 に限っては, (5) の他にも一つだけ可能性が生き残る. しかし, 補題 8 の証明と同 様に [3] を用いて, その非存在性が示される. 一般には, 定理 6 の υ0 は一意に定まらない. しかし (2) の e9, e10, e11, e12 及び (4) の e11 は, υ0 の選び方にも依らずして, 一意に決まる (cf. [11, §1]).

(7)

3

証明の概略

3.1

K

X2

= −2

かつ

f

(−1)

切断をもつ場合

X は KX2 = −2 なる非特異有理曲面で, f : X → P1 は (−1) 切断をもつ相対 極小な種数 2 曲線束, υ0 : X → P2 は定理 6 の双有理射で, ei は υ0 で縮約され る (−1) 曲線の X への引き戻しとする. (X, F ) の簡約化の定義から, e11 は f の (−1) 切断として一意的に定まる (cf. [11, §1]). また, 便宜上, υ0(ej) が υ0(ei) の 無限近傍点であるならば, i < j となるように番号付けされているとしてよい. 補題 7. 上述の記号と設定を保持する. 更に υ10 : X → X10 は e11 を縮約, υ9 : X → X9 は e11 と e10 を縮約する双有理射とおく. F の υi による像を Fi表す. このとき X9 上の υ10(e9) を除く任意の (−1) 曲線 C9 に対して, C9.F9 ≥ 3 である. また, υ0(e10) が υ0(e9) の無限近傍点である場合は υ11(e10) だけを除き, 無限近傍点の場合は υ11(e9) も除いた X10 上の任意の (−1) 曲線 C10 に対しても C10.F10≥ 3 が成り立つ. 証明. υ0(e10) が υ0(e9) の無限近傍点であると仮定する. X10 上の υ11(e10) を除 く任意の (−1) 曲線 C10 に対して, υ11(e9− e10).C10 ≥ 0 かつ υ11(e10).C10≥ 0 で ある. だから C10.F10= C10.(−3KX10+ υ11(e9− e10) + 2υ11(e10)) ≥ 3 が成り立つ. 他の場合も全く同様の議論で示される. 以上から, 如何様に定理 6 の υ0 を選んでも, e11 に引き続いて必ず縮約される (−1) 曲線として, e10 と e9 も一意に定まる. 実は e10 と e9 は, e11 と交わらない 事が次のようにして分かる. 尚, 定理 5 の後で設定した記号を使う. 補題 8. 有理二重被覆 f × Φ|KX+F −Z| : X 99K W \ := P1 × P1 の分岐因子を B\ とおく. B\ は極小切断 ∆[0] を丁度一本だけ, 既約曲線として含む. 特に B\ は (IIIk) 型, (IVk) 型及び (V) 型の特異点を持たない. 更に次が成り立つ. (I) B\ が (I 1) 型の特異点を, W\ のファイバー Γ[1] 上と Γ[2] 上で持つ場合は, 各 ファイバーの ∆[0] 上では無い方の三重点 Pi を通る極小切断を ∆[i], i = 1, 2 とおく. このとき ∆[1] 及び ∆[2] の σ ◦ eπ による狭義逆像は, 定理 6 の e9 及 び e10 の ϕ に全引き戻しである. (II) B\ が W\ のあるファイバー上で, (II 1) 型の特異点を持つ場合は, ∆[0] 上で は無い方の三重点 P3 を通る極小切断を ∆[∞] で表す. 更に P3 を中心にブ ローアップする事で生じる例外因子の, W\ への狭義引き戻しを (E3− E4)

(8)

とする. このとき ∆ の σ ◦ eπ による狭義逆像は, 定理 6 の e10 の ϕ による 全引き戻しであり, (E3− E4) の σ ◦ eπ による狭義逆像は, 定理 6 の (e9− e10) の ϕ による全引き戻しである. 証明. f の唯一の (−1) 切断 e11 の eX への狭義引き戻し ce11 も非特異かつ既約な 有理曲線である. 射影公式から (σ ◦ eπ)∗ec11.Γ = e11.F = 1 である. よって σ ◦ eπ は c e11 上で双有理射である. だから, (σ ◦ eπ)∗ec11 も既約かつ被約となる. また, e11 は f のファイバーに含まれないので, 再び射影公式から (σ ◦ eπ)∗ec11.∆0 = e11.(KX + F ) − e11.Z − ce11.E ≤ e11.(2KX + 2F ) = 0. したがって 0 または 1 なる miを伴って (σ[◦eπ)∗ec11 ∼ (σ\)∆0 P4 i=1miEi となる. 一方, (σ[◦ eπ)∗ec11.(−KW[) = e11.(2KX+ 2F ) = 0 であるから, #{mi|mi = 1} = 2 である. ここでもし (σ ◦ eπ)∗ec11が B\ の成分に含まれないならば (σ[◦ eπ)∗ec11.(B[− P l(σ[◦ eπ)∗eel) = −2 となり, これは矛盾である. 残りの主張は [3] に沿った二重 被覆の基本計算から直ちに従う. 定理 9. X は KX2 = −2 なる非特異有理曲面で, f : X → P1 は (−1) 切断 e11 を もつ相対極小な種数 2 曲線束とする. f が (II1) 型の特異ファイバーを持つとき は, F と二点で交わる唯一の (−1) 曲線を e10 とおき, e10 と一点で交わる (II1) 型 の特異ファイバーの唯一の既約成分を (e9− e10) で表す. f が (II1) 型の特異ファ イバーを持たないときは, F と二点で交わる二本の (−1) 曲線をそれぞれ e9, e10 とおく. このとき | − KX+ e9+ e10| は基点を持たないペンシルであり, 付随する 有理射像 Φ|−KX+e9+e10| は楕円曲線束である. その相対極小モデルを ² : S → P 1 で表せば, MWG(f ) ' MWG(²) かつ MWL(f) ' MWL(²). (3.2) 逆に, 切断をもつ任意の極小有理楕円曲面 ² : S → P1 に対して, 定理 6 の (4) と (3.2) をみたし, (I1) 型の特異ファイバーを二本持つ曲線束 f : X → P1 が構成 できる. 証明. f が (II1) 型の特異ファイバーを持つ場合も同様の議論で主張が示せるの で, (II1) 型の特異ファイバーを持たないと仮定する. このとき補題 8 から, f は (I1) 型の特異ファイバーを二本持つ. 補題 8 の記号を用いる. ∆[0] と Γ[1] 及び Γ[2] の交点をそれぞれ P01 及び P02 とおく. このとき σ\ : W[→ W\ は四点 P01, P02, P1, P2 を中心とするブローアップである. 添え字を揃えて, 各点に対応する

(9)

W\ 上の (−1) 曲線をそれぞれ E

01, E02, E1, E2 とおく. Γ[i], i = 1, 2 の σ\ による

狭義逆像を cΓ[i] で表す. ∆[i], i = 1, 2 の σ\ による狭義逆像 d∆[i] は W\ 上の (−1)

曲線である. それら二本の (−1) 曲線を縮約すると, cΓ[i] の像はまた, 互いに交わ らない二本の (−1) 曲線である. そこで更に, それら二本の (−1) 曲線も縮約して, 四回のブローダウンの合成 ς : W[ → W ' Σ2 := P(OP1⊕ OP1(2)) を得る. B[ς による像を B で表す. B の特異点は B[ のそれに一致する事に注意する. W の B に沿った有限二重被覆と標準解消の合成を $ : S → W とする. S は, X から e9 と e10を縮約した曲面に他ならない. 二回のブローダウンの合成を ν2 : X → S で表す. このとき W のファイバー Γ がなすペンシルの ν2◦ $ による引き戻し が | − KX + e9+ e10| に他ならない. したがって | − KX + e9+ e10| は楕円曲線束 を誘導して, S の反標準写像 ² が相対極小モデルである. さて, ∆[0] の σ\ による狭義引き戻し d∆[0] の ς による像は W の極小切断 ∆0 であり, Ei, i = 1, 2 の ς による像は W のファイバー Γi である. cΓ[i] が ς によっ て縮約された点をそれぞれ Qi, i = 1, 2 で表す. ς∗E3 は Q1 で B と横断的に交 わり, Q2 で B と接する, 自己交点数 2 なる W の切断である. 同じく, ς∗E4 は Q2 で B と横断的に交わり, Q1 で B と接する, 自己交点数 2 なる W の切断で ある. (Γ1+ ς∗E3) と (Γ2+ ς∗E4) を除く ς∗(σ\)∗|Γ| の元は Q1 と Q2 で B と接す る, 自己交点数 4 なる W の切断である. 更にそれらは全て ∆0 と横断的に交わ る. よって, $∗ς∗Ei, i = 3, 4 の ν2 による狭義逆像を除いた, f のファイバーの内 で e11 と交わらない既約成分の ν2 による像は, B の特異点を解消する際に生じ る例外因子の S への引き戻しから得られる. したがって ² の自明格子を T²−表せば T /(Ze9⊕ Ze10) = T² が成り立つ. ここで $∗ς∗E1, $∗ς∗E3, $∗ς∗E2 及び $∗ς ∗E4 の ν2 による狭義逆像をそれぞれ Θ1,0, Θ1,1, Θ2,0 及び Θ2,1 で表す事にす る. このとき e9 = 2Θ1,0− Θ2,1+ 2e11, e10= 2Θ2,0− Θ1,1+ 2e11 が成り立つ. したがって実は T = T² ⊕ Ze9 ⊕ Ze10 である. よって, NS(X) = NS(S) ⊕ Ze9⊕ Ze10 及び [15, 定理 1 と 9] から (3.2) が従う. 逆に, 切断 (O)² を持つ任意の極小有理楕円曲面 ² : S → P1 をとる. | − 2KS+ 2(O)²| は基点が無く, 付随する有理写像は, (O)² を P3 の一点 v0 につぶし, S か ら v0 を頂点とする二次曲線上の錐体への二重被覆を与える. 錐体を v0 でブロー アップして得られる曲面 W は Σ2 に他ならない. Σ2 の極小切断を ∆0, ファイ バーを Γ で表す. S は Σ2 の, 4∆0+ 6Γ に線型同値な被約因子 B に沿って分岐 する有限二重被覆の後に, 特異点を標準解消して復元される. 有限二重被覆と特

(10)

No. MWL(²) MWG(²)tor 42 A⊕6 1 A∗⊕21 (Z/2Z)⊕2 57 D4⊕ A⊕31 A∗1 (Z/2Z)⊕2 60 A⊕32 ⊕ A1 h1/6i Z/3Z 71 D6⊕ A⊕21 0 (Z/2Z)⊕2 73 D⊕2 4 0 (Z/2Z)⊕2 74 (A3⊕ A1)⊕2 0 Z/4Z ⊕ Z/2Z 表 1. 異点の標準解消の合成を $ で表す. また, ² : S → P1 は |Γ | が引き起こす自然な 射影 Σ2 → P1 の $ による引き戻しで得られる. B 上の十分一般の二点 Q1, Q2 をとる. Qi, i = 1, 2 が通る Σ2 のファイバー を Γi で表す. Q1 で B と横断的に交わり, Q2 で B と二重に接する, ∆0+ 2Γ に 線型同値な Σ2 の切断を C3 で表す. 同じく, Q2 で B と横断的に交わり, Q1 で B と二重に接する, ∆0+ 2Γ に線型同値な Σ2 の切断を C4 で表す. (Γ1+ C3) と 2 + C4) が生成する Σ2 上のペンシルを Λ とおく. Λ の一般元は Q1 及び Q2 で B と二重に接する. Qi, i = 1, 2 の $ による引き戻しを Ri とする. $∗Λ の一 般元は R1 及び R2 で単純二重点をもち, 他では非特異な算術種数 4 の既約曲線 である. ν2 : X → S を R1 と R2 を中心とするブローアップとする. したがって KX2 = −2 である. このとき実は, $∗Λ の基点が ν2 によって解消されて, 相対極 小な種数 2 曲線束 f を定める. また, ∆0 の X への引き戻しが f の (−1) 切断を 定めて, (Γ1+ C3) と (Γ2+ C4) のそれらが f の (I1) 型の特異ファイバーを成す. 構成方法から (3.2) も従う. 系 10. f : X → P1 及び ² : S → P1 は定理 9 の通りとする. 更に f は (II1) 型 の特異ファイバーを持つと仮定する. また, MWG(²) のねじれを MWG(²)tor で 表す. このとき, T² と MWL(²) 及び MWG(²)tor の組み合わせについて, 通し番 号を [6, 主定理] に揃えて, 表 1 に挙げた六種類の組み合わせに限っては起こり得 ない. 証明の概略. ² : S → P1 は切断 (O)² を持つ極小有理楕円曲面とする. | − 2KX + (O)²| から定まる二重被覆 S → Σ2 の分岐因子を B とおく. T² と MWL(²) 及 び MWG(²)tor の組み合わせが, 表 1 に挙げた六種類に該当するとき, かつそのと きに限って, B は Σ2 の極小切断 ∆0 と, ∆0 + 2Γ に線型同値な Σ2 の切断三つ

(11)

の和に分かれる. さて, 実は f が (II1) 型の特異ファイバーを持つ場合も, (I1) 型 の特異ファイバーを二本持つ場合と同様にして, f : X → P1 は B に沿って分岐 する Σ2 の有限二重被覆から構成される. このとき, 定理 3.2 の記号を流用して, ς∗(σ\)∗|Γ| の一般元は ∆0+ 3Γ に線型同値であり, B のある非特異点で四重に接 する. しかし (∆0+ 3Γ ).(∆0+ 2Γ ) = 2 である. また, B − ∆0 が三つの切断へ 分かれないときに, (II1) 型の特異ファイバーを持つ f を構成するのは難しくな い. 定理 9 を MWG(f ) が自明な場合に適用して, 次を得る. 系 11. f : X → P1 は定理 1 の (4) に属する曲線束とする. 更に MWG(f ) は自 明と仮定する. このとき f の可約なファイバーの双対グラフは図 2–7 の六種類 が起こり, かつ其の六種類に限る. ただし “ jf” は算術種数が 1 の既約曲線を表 す. また, 連結なグラフ内で最左端の元に対応する成分が f の唯一の切断 (O) と 交わる. l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l 4 l l l l l l l l 5 1 4 7 10 8 6 4 2 図 2. l ±° ²¯ 1 1 l 1 l ±° ²¯ 1 1 l 4 l l l l l l l l 5 1 4 7 10 8 6 4 2 図 3. l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 2 1 l l l l l l l l 3 2 3 4 5 6 4 2 図 4.

3.2

K

X2

= −3

の場合

本節を通して, X は KX2 = −3 なる非特異有理曲面で, f : X → P1 は相対極小 な種数 2 曲線束とする. 等式 (2.1) より, f は (0) 型を除く特異ファイバーを唯一

(12)

l ±° ²¯ 1 1 l 1 l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 2 1 l l l l l l l l 3 2 3 4 5 6 4 2 図 5. l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l ±° ²¯ 1 1 l 3 1 l l l l l l l l 3 2 3 4 5 6 4 2 図 6. 本しか持たず, それは (I1) 型か (III1) 型, または (V) 型である. 定理 6 の双有理 射 υ0 : X → P2 をとる. 更に ei を υ0 で縮約される (−1) 曲線の X への引き戻し とする. このとき補題 8 及び定理 9 と同様にして, | − KX + e12+ e11+ e10+ e9| は基点を一つ有する楕円曲線のペンシルである事が分かる. その基点を解消した 後に相対極小モデルをとって, 極小有理楕円曲面 ² : S → P1 を得る. ペンシルの 基点に対応する ² の切断を (O)² とおく. | − 2KS+ 2(O)²| から定まる二重被覆 を $ : S → Σ2, その分岐因子を B とする. このとき |F | は Σ2 上で次のような |∆0+ 2Γ | の部分ペンシル Λ を成す: (3.2.A) f が (I1) 型の特異ファイバーを持つ場合. (I1) 型の特異ファイバーの像 は, Σ2 の異なる二本のファイバー Γ0 及び Γ1 と ∆0 から成る. Γ0 及び Γ1 上で Λ の一般元は互いに交わって, 二つの基点を成す. ただし, その交点は B の特異点では無い. (3.2.B) f が (III1) 型の特異ファイバーを持つ場合. (III1) 型の特異ファイバー の像は, Σ2 の二重のファイバー 2Γ0 と ∆0 から成る. Γ0 上の B と異なる 一点で Λ の一般元は互いに接する. (3.2.C) f が (V) 型の特異ファイバーを持つ場合. (V) 型の特異ファイバーの像 は, Σ2 の二重のファイバー 2Γ0 と ∆0 から成る. Γ0 上にある B の非特異 点において, B とは異なる接方向で Λ の一般元は互いに接する. 特に (V) l ±° ²¯ 1 1 l 3l 1 l l l l l l l l 3 2 3 4 5 6 4 2 1 図 7.

(13)

型の特異ファイバーの像を除く全ての元が, Γ0 上で B と少なくとも 1 点で 横断的に交わる. このとき適当に添え字を割り振って, (O) = e12 かつ, $∗Γ0 の X への狭義引き戻 しが −KX+ e9+ e10 に線型同値となる. また, (I1) 型の特異ファイバーを持つ一 般の f : X → P1 については T = ZF ⊕ Z(O) ⊕ Z(−KX + e9+ e10) が成り立つ. よって [15, 定理 9] から定理 1 の (2) が従う. 定理 9 と同様なので証明は省くが, 更に進んで (3.2.C) から次が成り立つ: 定理 12. X は KX2 = −3 なる非特異有理曲面で, f : X → P1 は (V) 型の特異 ファイバーをもつ相対極小な種数 2 曲線束とする. ペンシル |KX + F | の基点を 解消して得られる極小有理楕円曲面を ² : S → P1 で表す. このとき MWG(f ) ' MWG(²) かつ MWL(f) ' MWL(²). (3.3) 逆に, 切断を持つ任意の極小有理楕円曲面 ² : S → P1 に対して, 定理 6 の (2) と (3.3) をみたし, (V) 型の特異ファイバーを持つ曲線束 f : X → P1 が構成で きる. 一方, (3.2.A) 及び (3.2.B) から, (I1) 型か (III1) 型の特異ファイバーを有す る f は, 切断を二本以上持つ. したがって定理 12 の系として, MWG(f ) が自明 な場合は, 次のように定義式を書き下せる. 系 13. P1× P1 の第一成分の座標を t, 第二成分の座標を x とする. (α, β, γ, δ) ∈ (C4\ {γ = 0}) \ {α2− 4β = βδ + γ = 0} に対して tx(x5+ γt3+ βt2x + αtx(x − δt)2− δtx2(3x2− 3δtx + δ2t2)) = 0 (3.4) が定義する被約因子のザリスキ閉包に沿って分岐する, P1× P1 の有限二重被覆 によって得られる正規曲面を, 更に特異点の標準解消を施して得られる曲面を eX で表す. P1× P1 の第一射影から誘導される eX の種数 2 曲線束の相対極小モデル を f : X → P1 とおく. このとき X は KX2 = −3 なる有理曲面で, MWG(f) は 自明である. f は t = 0 上で (V) 型の特異ファイバーを持ち, t = ∞ 上で (0) 型

(14)

δ 6= 0 δ = 0 β 6= 0 図 8 図 10 β = 0 図 9 図 11 表 2. l l l 1 1 2 l ±° ²¯ 1 2 l ±° ²¯ 2 1 l l l l l l l l 3 2 3 4 5 6 4 2 図 8. l l l 3l 1 2 3 2 l ±° ²¯ 2 1 l l l l l l l l 3 2 3 4 5 6 4 2 図 9. l l l 1 1 2 l ±° ²¯ 1 2 l 4 l l l l l l l l 5 1 4 7 10 8 6 4 2 図 10. l l l 3l 1 2 3 2 l 4 l l l l l l l l 5 1 4 7 10 8 6 4 2 図 11.

(15)

の特異ファイバーを持つ. f の他のファイバーは既約で, 二本の可約な特異ファイ バーの双対グラフは表 2 に従って図 8, 図 9, 図 10, 図 11 の何れかとなる. 更に β 6= 0 のとき, 可約ファイバーの算術種数が一なる既約成分は, α2− 4β 6= 0 ならば楕円曲線, つまり幾何種数も一だが, α2− 4β = 0 ならば結節点をもつ. ま た, β = 0 のとき, 可約ファイバーに含まれる (−3) 曲線と, 二点で交わる (−2) 曲 線は, α 6= 0 ならば異なる二点で交わり, α = 0 ならば接する. 逆に, 相対極小な種数 2 曲線束 f : X → P1を持ち, MWG(f ) が自明かつ KX2 = −3 なる非特異有理曲面 X に対して, 有理二重被覆 f × Φ|KX+F | : X → P 1× P1 分岐因子の定義式は, 第一, 第二成分毎の適当な座標の一次変換によって式 (3.4) となる. 証明の概略. X は KX2 = −3 なる非特異有理曲面で, f : X → P1 は相対極小な 種数 2 曲線束とする. 更に MWG(f ) は自明とする. 有理二重被覆 f × Φ|KX+F | : X 99K W\ := P1 × P1 の分岐因子を B\ とおく. P1 × P1 の第一成分の座標を t, 第二成分の座標を x とする. また, P1 × P1 の第一成分への射影のファイバーを Γt, 第二成分へのそれを ∆x で表す. 系 13 の直上に記した事から, f は t = 0 上 で (V) 型の特異ファイバーを持つと仮定して良い. 更に B\ は (0, 0) で五重点を 持つと仮定する. B\− Γ0 は (0, 0) で四重点を持つが, (B\− Γ0).∆0 = 3 ゆえ B\ は ∆0 を成分に含む. ここで議論を大幅に省くが, 定理 9 から, B\− ∆0− Γ0 は既約となる. 更に, 適 当な座標の一次変換によって, (∞, ∞) で B\− ∆0− Γ0 は x5 + t3 = 0 の原点と 局所同型な尖点をもつ. 以上の条件から分岐因子の定義式 (3.4) を得る.

3.3

f

(−1)

切断を持たない場合

f : X → P1 が定理 6 あるいは定理 1 の (1), (2) または (4) の場合は f の (−1) 切断が, 定理 6 にある X から P2 への双有理射 υ0 で最初に縮約される (−1) 曲線 として明確に, 特に NS(X) の基底の一つとして認識できる. しかし f : X → P1 が (3) または (5) の場合には, 命題 3 で切断の存在が保証されているものの, f の切断に関しては自己交点数が高々(−2) 以下になる事くらいしか分からない. 特 に f の切断が定理 6 の双有理射 υ0 と, どのように関わるのかが分からないので, NS(X) = Z` ⊕LiZei で切断を描写するのは困難である. そこで MWG(f ) 及び MWL(f ) を, 今まで通り [15, 定理 1 及び 9] を用いて計算できるように, 次の補 題を準備する. 補題 14. D1 及び D2 は F との交点数が 1 となる X の因子とする. NS(X) に

(16)

おいて, すべてのファイバーの既約成分全部と Di が生成する部分加群を Ti とお く. このとき NS(X)/T1 と NS(X)/T2 は群として同型, また, (T1) ⊂ NS(X)− と (T2)⊥⊂ NS(X)− は格子として同型である. 証明. Li = (Ti−) ⊂ NS(X)−, i = 1, 2 とおく. Z 加群の準同型 α : L1 → L2 を, 任意の H1 ∈ L1 に対して α(H1) = H1− (D1.H1)F で定める. 同じく β : L2 → L1 を β(H2) = H2− (D2.H2)F とすれば, β ◦ α と α ◦ β はそれぞれ, L1 と L2 の恒 等写像である. また, 明らかに α と β の双方共に交点数を保っているので, L1 と L2 は NS(X)− の部分格子として同型である. さて, すべてのファイバーの既約成分全部が生成する NS(X) の部分加群を V とおく. 従って特に Ti = ZDi ⊕ V である. 更に bTi = (Ti ⊗ Q) ∩ NS(X) 及び b V = (V ⊗ Q) ∩ NS(X) とおく. このとき実は NS(X)/Ti のねじれ部分が V で決 まる. つまり bTi/Ti ' bV /V が成り立つ. 最後に, NS(X) がユニモジュラである事 から, 群としての同型 NS(X)/T1 ' ³ b T1/T1 ´ ⊕ L∗ 1 ' ³ b T2/T2 ´ ⊕ L∗ 2 ' NS(X)/T2 が従う. さて, f が定理 1 の (3) に属する場合も他と同様に, 定理 6 の e11 と e10 を適 当に選びさえすれば, 二重被覆 Φ|−KX+e10+e11|× Φ|F +2KX| : X → P1× P1 の観察 から, いつも e10− e11, −KX + e11, ∈ T となる事が分かる. また, f が定理 1 の (3) に属しながら, (−2) 切断 (O) を有して, T = ZF ⊕ Z(O) ⊕ Z(e10− e11) ⊕ Z(−KX + e11) をみたす例がある. よって [15, 定理 9] から定理 1 の (3) が従う. 例 15. P1 × P1 の第一成分の座標を t, 第二成分の座標を x とする. また, pr1 : P1× P1 → P1 で第一成分への射影を表す. x5+ tx4+ tx3+ t2x + t3 = 0 が定義する因子のザリスキ閉包を A とおく. 同じく x + t = 0 が定義する pr1 の切断を C とする. pr1 による t = 0, ∞ のファイバーをそれぞれ Γ[0], Γ[∞] で表 す. ここで, B\ = A + C + Γ[0]+ Γ[∞] とおけば, B\ は Γ[0] 上と Γ[∞] 上で (V) 型 の特異点を持つ. B\ で分岐する P1 × P1 の有限二重被覆によって得られる正規 曲面を, 更に特異点の標準解消を施して得られる曲面を eX で表す. pr1 から誘導

(17)

される eX の種数 2 曲線束の相対極小モデルを f : X → P1 とおく. このとき X は KX2 = −2 なる有理曲面で, MWG(f) は自明である. f の唯一の切断 (O) は (O)2 = −2 であり, C の eX への狭義引き戻しが 2(O) の全引き戻しである. f は t = 0, ∞ 上で (V) 型の特異ファイバーを持ち, その双対グラフは図 12 の通りで ある. また, f の他のファイバーは既約である. l l l 1 1 2 l l l ±° ²¯ 1 2 2 2 l l l 1 1 2 l l l ±° ²¯ 1 2 2 2 図 12. f が定理 1 の (5) に属する場合も他とおおむね同様である. 線織構造 Φ|F +4KX|: X → P1 に注意しながら, 定理 6 の e 10 と e9 及び e8 を適当に選ぶと, | − KX + e10+ e9+ e8| はネットを成し, P2 の二重被覆を得る. このとき |F | に対応する P2 上のペンシルは, 一般元が二重点を六つ持つ五次曲線で, 基点も複雑になるが, 代 わりに f の可約な特異ファイバーの既約成分が観察しやすくなる. その結果, f が如何なる可約ファイバーを持とうとも, e8− e9, e9 − e10, −2KX + e10∈ T を得 る. また, f が定理 1 の (5) に属しながら, (−2) 切断 (O) を有して,

T = ZF ⊕ Z(O) ⊕ Z(e8− e9) ⊕ Z(e9− e10) ⊕ Z(−2KX + e10)

をみたす例も構成できる. よって [15, 定理 9] から定理 1 の (5) が従う. 命題 16. X は KX2 = −3 なる非特異有理曲面で, f : X → P1 は (V) 型の特異 ファイバーを三本持つ種数 2 曲線束とする. このとき f は他に可約なファイバー を持たず, MWG(f ) は自明で, f の唯一の切断の自己交点数は −2 である. 更に f を一般に選ぶと, 三本の (V) 型の特異ファイバーの双対グラフは図 13 の通り である. l l l 1 1 2 l ±° ²¯ 1 2 l l l 1 1 2 l ±° ²¯ 1 2 l l l 1 1 2 l ±° ²¯ 1 2 図 13. 現時点では上に挙げた有理曲面の, (V) 型の特異ファイバーを三本持つ種数 2 曲線束の他に, f : X → P1 が定理 1 の (5) に属して, MWG(f ) が自明となる例 を知らない.

(18)

参考文献

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参照

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