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特集 ロシアビジネスセミナー 2016 ロシア経済の展望と極東をめぐる新経済政策 - 日本 北海道の対応を探る- 去る 5 月 17 日に 北海道大学百年記念会館において NPO 法人ロシア極東研 北海道大学スラブ ユーラシア研究センター 公益社団法人北海道国際交流 研究総合センター (HIECC)

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ボストーク26号

(NPO法人ロシア極東研機関誌)

Association for Inter-Regional Study Between Hokkaido-Russian Far East

VOL.26:特集:「ロシアビジネスセミナー2016報告」 2016年7月10日発行 発行者 NPO法人ロシア極東研(創設1986年 会報創刊=89.5.15)季刊 事務局 〒064-0804 札幌市中央区南4条西27丁目1番22-401号(佐々木方)ロシア極東研     Tel;011-561-0258 :メールアド:mysasaki@jcom.home.ne.jp  振込先口座   北洋銀行円山公園支店314-4059804 名義:ロシア極東研(普通預金)   ゆうちょ銀行:記号19080 番号27943611   トクヒ)ロシアキョクトウケン(通常預金)   郵便振替:02730-9-39064 極東研   ホームページ:http://www.ne.jp/asahi/kyokutouken/sono2/ 特   集

 ロシアビジネスセミナー2016報告

 ………  2頁

『ロシア経済の展望と極東をめぐる新経済政策』

-日本・北海道の対応を探る-

基調報告Ⅰ

 2015年のロシア経済と2016年の展望

………  2頁 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授 田た畑ばた 伸しん一いち郎ろう 基調講演Ⅱ

 ロシアの新たな極東政策

 ………  4頁 ロシアNIS貿易会経済研究所次長 齋さい藤とう 大だい輔すけ

円卓会議

 ………  6頁 寄 稿 1

 日ロ関係打開の最大の機会到来

 ………  7頁 日露経済交流コンサルタント/日ロ交流協会副会長 朝あさ妻づま 幸ゆき雄お 寄 稿 2

 日露関係の前進を期待する

 ……… 10頁 日露エコノミックスセンター株式会社代表取締役 矢や島じま 隆たか志し 新 企 画 案

 本誌へのロシア時事ニュースとその翻訳の掲載について

…… 13頁 当会理事/FECマネジメント代表取締役 丹たん治じ 宏ひろ剛たけ コ ラ ム

人物紹介《自己・他己紹介》

 ……… 15頁

活気あるカムチャツカを訪ねて

有限会社ファルコンジャパン取締役社長 杉すぎ山やま 基もとえ さん

テーマ別ニュース月録(2016年4月~6月)

Ⅰ.ロシア国内政治 ……… 16頁 , Ⅱ.ロシア経済・社会 ……… 16頁 Ⅲ.ロシアの外交・国際関係 ……… 21頁 , Ⅳ.極東・サハリン・千島 ……… 24頁 Ⅴ.日ロ経済・社会関係 ……… 36頁 , Ⅵ.北方領土問題 ……… 38頁 Ⅶ.北東アジア・中国・その他 ………… 38頁

(2)

特集

ロシアビジネスセミナー2016

『ロシア経済の展望と極東をめぐる新経済政策』

-日本・北海道の対応を探る-

去る5月17日に、北海道大学百年記念会館において、NPO法人ロシア極東研、北海道 大学スラブ・ユーラシア研究センター、公益社団法人北海道国際交流・研究総合センター (HIECC)の三者の主催、在札幌ロシア連邦総領事館、北海道、札幌市、札幌国際プラザ、 北海道新聞社、札幌商工会議所、北海道銀行、北洋銀行、北海道ロシアビジネス未来の会 の後援により、「ロシアビジネスセミナー2016」が開催された。セミナーに先立ち在札幌 ロシア連邦ファブリーチニコフ総領事のメッセージが紹介された。総合司会を丹治宏剛北 海道ロシアビジネス未来の会会長が担当した。 セミナーでは、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター長の田畑伸一郎教授とロシ アNIS貿易会経済研究所の齋藤大輔次長の二人の講演が行われ、ひきつづき北海道国際交 流・研究総合センター高田喜博上席研究員を進行役として円卓会議がおこなわれた。円卓 会議では、在札幌ロシア連邦総領事館のアルトゥホーフ・ユーリー領事とロシア極東研の 望月喜市理事の二人のコメントをうけ、パネリスト相互間およびフロアーをまじえた活発 な質疑が繰り広げられた。本稿は編集部の責任で取りまとめた要約である。なお、セミナ ーの詳細は、本会ホームページ(http://www.ne.jo/asahi/kyokutuken/sono2)に掲載さ れている。 《問い合わせ先 小柳 貢〈koyanagi@ksfnet.co.jp〉》

基調講演Ⅰ

2015年のロシア経済と2016年の展望

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授 

ばた

しん

いち

ろう はじめに 2015年のロシア経済は、マイナス成長、ルーブル安、高インフレが生じて経済危機と言 われる一方、貿易赤字の増大、資本流出増加、対外債務増大、国債発行増大は生じていない。 以下に、油価下落の影響や経済制裁の影響に触れながら2016年のロシア経済を展望する。 油価下落の影響 ロシアの輸出は石油が約3割を占め、石油製品と天然ガスを合わせ6割を超える。し たがって、ロシアの輸出は石油の価格によって変動している。輸出は2008年まで伸び、 2009年に急落してその後上昇したものの、2015年には2009年よりも大きく下がっている (図1)。

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  ロシアの経済成長モデルの変化 ロシアの経済成長モデルは、 2008年リーマンショックまで 年率約7%の成長を続けていた 際は、油価の高騰と好調な家計 消費に依存する高成長モデルが 機能していた。かつての日本や 近年の中国のような投資主導で はなかった。ルーブルの実質レ ートの上昇を伴っていた。しか しながら、2013年以降は、価が 低下する状況で、家計消費が経 済成長を主導しなくなり、ルーブルの実質レートが低下する状況になった(図2、図3)。 ロシアの経常収支とその内訳 貿易収支、サービス収支、所得収支の合計として計算される経常収支は、2014年、2015 年と増えている。貿易収支は減ったものの、サービス収支と所得収支の赤字も減ったこと から、結果的に経常収支の黒字が増えている。貿易収支や経常収支をみる限りでは、ロシ ア経済は特に悪いわけではなく、底堅さも感じられる(図4)。 ただし、2013年以降、石油・ガスのレント収入が減り、国家予算の税収も減り、家計の 需要がものすごく落ち込んでいるのが現状である。 オランダ病から輸入代替へ 高成長モデルの時期には、ルーブル高で製造業の製品輸入が増加して製造業が衰退する というオランダ病が生じた。現在は、経済全体が落ち込んでいるが、ごくわずか部門でし

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かないが、ルーブル安で輸入が減少して製造業が発展するという、輸入代替が生じている。 現状では、この輸入代替のところしか明るい材料はないのではないかと思われる(図5)。 経済制裁の影響 ロシアへの直接投資は2015年にほとんどなくなり、逆に資金流出が増えている。このこ とは、経済制裁の影響を示していると思われる(図6)。 2016年の経済の展望 経済成長は油価次第であり、輸入代替が進むかどうかも油価次第である。中長期的には 輸入代替に基づく新しい成長モデルに移行できると思われるが、今後の政策、外国からの 投資、経済制裁の影響により左右される。

基調講演Ⅱ

ロシアの新たな極東政策

ロシアNIS貿易会経済研究所次長 

さい

とう

 大

だい

すけ はじめに ロシアが2013年以降、ウクライナ・クリミヤ問題、西側の制裁や油価下落による経済の 苦境をかかえ、財政事情も極めて厳しい状況にあるなかで、唯一驚くべきスピードで進ん でいるのが極東政策である。その中心が、2012年のAPEC後に打ち出された新型特区とウ ラジオストク自由港である。 新型特区12カ所 新型特区は12カ所指定され、その中に日揮が出資しているハバロフスクのJGCエヴァー グリーンがあり、温室栽培を行っている。このほか、ナデジェヂンスキーのペットボトル

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を製造するEvroplast、アムールスカヤのセメント工場S Technologyが注目される。入居 企業は50社であるが、具体的に活動しているのは6社のみであり、その他は計画段階であ る(図1)。 ウラジオストク自由港 ウラジオストク自由港は、 2015年10月に施行されたばか りであり、入居企業は20社で ある。空港や港湾で最大8日 間の査証取得が1月から導入 される予定であったが、まだ 実施されていない。先進的な 教育を行う機関、先進的な医 療技術を持っている病院は特 区内のエリアに限って進出できるが、法律の改正が必要とされている(図2)。 自由港の進出企業 ウラジオストク自由港は、 昨年10月に法律ができたばか りであり、制度設計と入居企 業の選定を同時並行で行った ため、入居にそぐわない企業 もみられる。この中では、「ア ヴィアポリス ヤンコフスキ ー」が注目される。同社は、 レンタルオフィス、レンタル 工場を整備して外国企業にレンタルするものであり、すでに倉庫が整備されたことが報道 されている(表1)。

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優遇税制と規制緩和 新型特区と自由港の優遇制度はほとんど同じであり、自由港でインフラ整備支援がない ことだけが異なっている(表2)。規制緩和については、大胆な方策が事細かく明示され ているものの、その実効性が疑問視されている(表3)。しかしながら、ロシア側はこの ことに真剣に対応する意欲を示している。 ロシア極東へのアプローチ ロシア極東へのアプローチにつ いては、3つ考えられる。一つ目 はソ連時代からある石油など原材 料の安定的な確保であり、二つ目 は、消費マーケットへのアプロー チである。極東の人口は620万人 であり、消費マーケットとしては 大きくはないが、スモールビジネ スを展開する中小商社にとっては 魅力的である。三つ目は、新型特 区や自由港に外国企業を誘致するものである。農業、食、水産加工、養殖などが日本にチ ャンスがあると思われる。いずれにしても、ロシアが何を求め、何を必要としているのか という視点と、それがビジネスベースに乗るのかということが重要になってくる(図3)。

円卓会議

円卓会議では、はじめにアルトゥホーフ・ユーリー領事と望月喜一会員からコメントが あり、高田喜博進行役のもとでパネリスト間の質疑および、フロアーを交えた活発な討論 がなされた。ユーリー領事は、西側の経済制裁による悪影響があるが、半面、ロシア側に ビジネスチャンスをもたらす面があることに、もう一点、プーチン大統領が極東を重視す る優先度についてコメントした。望月会員は、石油・ガスの輸出減という場合、数量では 減っていない面があることや、最近おこなわれた日ロ貿易産業対話における論点などをま じえ様々な角度からコメントした。 以下にフロアーを含めた円卓会議での発言をいくつか紹介する。

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○新型特区とロシアビジネスのチャンスについて 新型特区への入居条件は大きなハードルにはならない。ビジネス投資環境を改善するた めには課題もあるが、ロシアも本気で投資環境改善に取り組んでいる(齋藤次長)。 ロシア経済に関する新聞等の報道は厳しく、ロシアビジネスについて否定的であるが、 実際に自分で現場をみて分析することが重要である。ルーブル安で輸出は厳しいが、例え ば、ロシアのソバの輸入は、最近急増しており、これまで発掘できなかったものを見直す 絶好のチャンスがきている(日露経済交流コンサルタント、朝妻幸雄会員)。 ○ロシア経済の成長モデルの変化について 東京の企業と北海道の企業には大きな温度差がある。東京の企業は、ルーブル安や2015 年の構造変化以降の見通しができないことが不安材料となり、ロシアへの関心がかなり低 下している(日露エコノミックセンター社長、矢島隆志会員)。 以前の経済成長は油価の上昇による成長モデルであったが、今後は油価があまり上がら ない中での成長モデルを想定するしかない状況になっている。現在のロシアの経済成長の 可能性というものが、成長率は油価次第という従来モデルからどのように脱却しうるのか いう課題に尽きるとすれば、輸入代替でやっていくしかないのではないか(田畑教授)。 ○安倍首相の8項目の提案について 5月6日の安倍首相とプーチン大統領との会談で日本側から8項目が提案されている が、その内容については、今後具体化していくことが課題になっている。9月2~3日に ウラジオストクで東方経済フォーラムの開催が予定されており、安倍首相とプーチン大統 領の首脳会談によりその進展が期待されている(齋藤次長)。 ○ロシアでの農業ビジネスについて ロシア極東の農業は、大規模農地での粗放的な栽培のため単位面積当たりの収量が極め て低い。また、日本の種の使用許認可の取得に時間がかかること、収穫までに時間がかか ることから、中長期的な視点での取組が必要である(齋藤次長)。また、極東の土地無償 供与「極東1ヘクタール」については、5年後の結果をみなければならない(ユーリー領事)。 注:本セミナーの報告と円卓会議の詳細は、本会ホームページにアップされている。

寄稿1

日ロ関係打開の最大の機会到来

日露経済交流コンサルタント/日ロ交流協会副会長 

あさ

づま

ゆき

お 今年の後半は日露両国の関係にとって格別重要な時期となる。両国の長い外交関係の歴 史の中には多くの出来事があった。プチャーチン提督来訪以降の大きな節目となる二国間 の事柄だけを拾って見ても、日露和親条約(修好通商条約)による正式な国交開始以降、 樺太千島交換条約、日露戦争、ポーツマス条約、大津事件、シベリア出兵、日ソ中立条約 と続き、第二次大戦後は日ソ共同宣言によってやっと国交回復達成という変遷をたどって きた。 双方の真剣なやり取りが密度を高めてきたのはソ連が崩壊してからといえよう。しかも

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その外交交渉のすべてが北方領土問題を解決して平和条約を締結することを目指す流れに 集約されてきたと言っても過言ではない。平和条約が締結されない限り両国はいつまで経 っても終戦時の関係を引きずり、あるべき正常な関係に入れないためだ。本来理想的な相 互補完の経済関係を作り出せる環境にありながら、いまだに実現できていないのは残念な ことだ。 これまでに機会は幾度も訪れた。クラスノヤルスク会談、川奈会談、イルクーツク会談・・・ しかしいずれの場合にも話し合いが大詰めに至らないまま先送りにされてきた。その結果、 経済関係は政治に足を引っ張られていまも足踏み状態のままである。そうした中で双方の 熱意だけはその都度確認されてきたのは多少の救いではある。 かくの如く両者は同床異夢のまま時は流れてきた。北方領土問題を両国間の小異という ことは出来ないが、その近視眼的な解決方法にこだわるあまり、平和条約締結という大同 の流れに乗れなかったのは事実である。 すでに多くの識者が指摘しているように日露間の平和条約締結は単に北方領土の解決だ けを意味しない。直接・間接に日本経済に大きなメリットをもたらすだけでなく、ひいて は東アジアと世界の安定に貢献する潜在性をも持つ。 翻って現在進行している日露間の交渉は後世、両国間の歴史の中でどのように位置づけ られることになるだろうか。私は安倍総理・プーチン大統領の時代は長い歴史の小さな一 コマであったとしても、その後の変化をもたらした端緒として刻み込まれることになると 確信している。 安倍総理は2012年末に政権復帰すると、殆ど間を置かず翌年4月には訪露してプーチン 大統領と会談して関係構築に着手した。その後も首脳同士の直接交渉を重ねてきた。本年 5月6日のソチでの会談は丁度10回目を数えた。過去にこれほど両国の首脳同士が密度の 高い接触をしてきたことがあっただろうか。 回数もさることながら殆ど毎回の会談で安倍総理によるプーチン大統領の日本招待とそ の実現がのぼらないことはなかった。しかし最初の招待からすでに三年を過ぎた今も大統 領の訪日は実現していない。プーチン氏は毎回招待に謝意を述べて訪日に前向きな姿勢を 示してきたにも関わらず、である。毎年秋口になる頃に雲行きが怪しくなり、結局は見送 られるというパターンが続いてきた。見送られる理由は殆ど日本側によるものであった。 厳密に言えば対露制裁を含めて日本がアメリカの意向を重視したからであったと言える。 大統領が来日すれば直ちに領土問題が解決して平和条約が締結されるわけではないが、 両国関係が膠着状態から脱出する突破口になることは間違いない。年内に9月のウラジオ ストックで開催される東方経済フォーラムを含めて更に数回もの接触の機会が見込まれて いる。 安倍総理の真剣な改善意欲はすでにプーチン大統領に十分に伝わっている。更に踏み込 むことができるかどうかは日本自身の姿勢に負うところが大きいと言っても過言ではな い。これまでのようにアメリカの意向次第という自立性を欠いた対ロシア外交の流れは断 ち切らなければならない。 その意味でいま日本が自力でロシア外交を展開するための好環境が訪れている。アメリ カは11月の大統領選挙に向けて国内変革の不安を抱えている。中東のみならず他の国々へ 介入する余裕は縮小している。任期満了を目前にして指導力の低下を指摘されているオバ マ大統領だけでなく、新たに誕生する大統領が誰であっても、当面は日露関係に効果的に 干渉する余裕はあまりない。 日本はこれまでプーチン大統領を招待しては、やっぱり今年は来ないで、という恥ずか

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しい対応を繰り返してきたが、それもこの辺で終わりにすべき時期にきている。 ところで今回のソチでの両首脳会談では二人だけの会談の時間が35分間持たれた。話し 合われた中身の詳細は明らかにされていない。通訳はロシア側からしか出ていない。外部 と隔絶された二人だけの環境の中で、両国にとって真に重要な課題について本心で話し合 ったであろうことは容易に推察できる。 会談では極めて限られた時間ながら、目前に控えた伊勢志摩サミットについて、大統領 の年内訪日の実現の可能性について、(新たなアプローチによる)領土問題の解決方法に ついては勿論、更には日米間の間合いの取り方等についても触れられたかもしれない。 ソチでの両者の表舞台での話し合い内容は、安倍首相から領土問題について新たなアプ ローチを提案し、更に経済分野での協力対象として8項目が提示され合意されたことが報 道された。 しかしその中身は新鮮味に欠ける。これらは2013年の4月に両国首脳が初会合を持った 際に協力の方向性を打ち上げて以来、場所を変え、時を変えて継ぎ足し、繰り返されてき た提案されてきた項目の後なぞりである。勿論両国の利害が一致する重要な課題の集大成 ということもできる。そこに異論はないが、敢えて新鮮味に欠ける同じ項目を発表すると いうことは、今回のソチ会談では他に発表すべき重要な内容がなかったと言えば辛口に過 ぎるだろうか。実は首脳会談の本当に重要な部分は35分の二人だけの会談の中にあった。 内容は機微に触れるものであり発表しないことになっている。それは領土問題、平和条 約締結の解決方法や時期についてのお互いの意思確認であり、またプーチン大統領の訪日 時期についての意見交換であったであろうことは想像に難くない。その中で経済協力8項 目は平場で確認されたものだが、本当に重要な部分をそらすために会談の成果として発表 されたものであろう。 私は6月に行われたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムに参加した。ここでは昨 年に次いで日ロ経済協力についてのラウンドテーブルが開催されたが、昨年の第一回のラ ウンドテーブルに比べると迫力に欠けた感がある。両国の次の首脳会談が合意されている 本年9月の東方経済フォーラムにおいて両国の官民の盛り上がりがそちらに向いているよ うに思われる。 ところで注目すべきことだが、過去の両国間の歴史の中で、今ほど双方に指導力のある リーダーが揃って安定政権を維持したことはなかった。その首脳同士が個人的な信頼関係 を築くことができたことは、将来の両国関係の基盤を構築するための千載一遇の機会が到 来したと見なければならない。仮にもこの好機を漫然とやり過ごして無用に時を刻み続け るなら、日本は従来通り政治的・経済的利益を失い続けることになる。その規模は後にな ればなるほど大きい。その間ロシアによる北方領土の実効支配はより加速されるであろう。 日本の経済協力が得られなければロシアは困るだろうからじらしておけばいいという言辞 を未だに弄する日本人も居る。確かにロシアはシベリアや極東において日本からの経済協 力が得られなければ不満足であろう。しかしその場合は不十分ながら従来通り中国と韓国 と粛々とやっていくだけである。その結果は明らかである。日本との経済関係は停滞した ままであり、不毛な隣国同士の関係が続くだけである。その際、どちらにとって失う国益 はといえば決してロシアではなく日本であることを銘記すべきである。 ロシアの最近の経済指標を見ると、制裁による下落傾向も底を打った感がある。プーチ ン大統領は5月25日の経済最高会議において、「我国経済は落ち着きを取り戻した。これ からは本格的な経済改革に着手する」と発言している。欧米による制裁は遠からず終止符

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を打つことになり、ロシア経済は安定から回復軌道に乗る可能性が高い。 いま安倍首相とプーチン大領領による政治的関係の距離感の短縮に加えて、ロシア経済 の回復基調が始まることは我国のビジネス界に再スタートを切るための恰好な機会と環境 を提供することになるが、日本のビジネス界はこうした流れをしっかり見据えて、今後の ロシアとの経済交流強化のための下拵えを始めるべきであろう。 今年は1956の日ソ共同宣言によって両国の外交関係が再開されてから60年の節目の年 にあたる。両国の膠着関係を打開するべき時にきている。 繰り返しになるが今年後半の機会を使うかどうかは日本にかかっている。 《問い合わせ先 朝妻 幸雄〈y.asazuma@gmail.com〉》

寄稿2

日露関係の前進を期待する

日露エコノミックスセンター株式会社代表取締役 

じま

たか

日本とロシアの大きな溝は埋められるか 日露平和条約の締結を推進していくことが重要であるということについて異論はないの であろうが、その前提条件(北方四島の帰属等)については国内でも様々な意見や考え方 があり、これがまとまっていくのは容易ではない。加えて日本とロシアの間でもその前提 の考え方に大きな差異があり、その溝は容易に埋まりそうにない状況である。この問題に ついては日露関係の専門家が100人集まれば100の意見があり、各々自分の主張の正しさを 譲ることはなく、このような意見や考え方をグルーピングしてまとめることも問題解決の 進展に何ら寄与しないと思われる。 しかし、日露平和条約の下で日露間の自由な交流を進めていくことは、相互に大きな共 通利益があり、それは長期的に生成され、波及的にさらに大きな効果をもたらすものであ る。現在このような機会が高まってきていることは重要で、将来へ向けて大きな変化の時 期が迫ってきていることは今までにないほどである。 問題解決のためには政治的判断が重要で、日露両国のトップがお互いに信頼関係を構築 し、大局的な見地から将来を見て決断することで事態は打開できよう。歴史上もこうした 大英断はいくつもあり、私たちのまわりにも新しい時代への幕開けを期待する声は大きく なってきている。 日露平和条約は日本経済に何をもたらすか 1951年のサンフランシスコ講和条約に調印しなかった旧ソ連=ロシア(現ロシアが旧ソ 連の対外関係を公的に継承している)との間には、1993年の日ロ東京宣言、1998年のモ スクワ宣言、2000年のプーチン大統領訪日時の1956年の日ソ共同宣言を有効と認めた大 統領の発言、2003年の日露行動計画と、両国の関係を改善し、交流を促進する合意文書 および発言が交わされてきた。しかしながらロシアのラブロフ外相は最近日本との平和条 約交渉について、「領土問題の解決と同義ではない」と述べ、北方領土問題の解決を条約 締結の前提とする日本政府の立場を否定する見解を明らかにし、平和条約がない状態でも

(11)

両国間の経済活動が発展しているとの見方を示し、平和条約締結によって両国の経済関係 が一層発展するとの日本側の主張を牽制している。安倍首相とプーチン大統領との首脳会 談では、プーチン大統領が「10年にわたって停滞していた平和条約の交渉を再開すること で合意」すると述べ、安倍首相も「協議を行い、そしてその都度また首脳間で議論し、さ らにまた指示を出すというそういう交渉を加速化させていく枠組みが決定したことは極め て有意義だ」と両首脳とも前向きな考え方を述べていると報道されている。 こうして積み重ねによって日露平和条約の締結へ至ることになれば、日本にとってはエ ネルギー輸入を多様化する機会を含め、日露間の経済関係の発展に勢いを与えるものとな り、露中間においてもロシアが過度に中国との関係を緊密にする必要がなくなる。ロシア 側にとっても日露間のより緊密な関係によって、両国間の貿易と経済協力の改善につなが る可能性がある。 日露間の経済交流を阻むものは何か 日本とロシアの両国民は、それぞれどのような感触をもっているのであろうか。日本人 とロシア人の間には、様々な感情の相違があると言われている。政府広報室による世論調 査(平成23年10月調査)[注1]によれば、日本人でロシアに親しみを感じるかどうか聞 いたところ、「親しみを感じる」とする者の割合が22.5%、「親しみを感じない」とする者 の割合が74.8%となっているが、経年的には親しみを感じる割合は増加している。また日 本とロシアの関係については、全体として良好だと思うか聞いたところ、「良好だと思う」 とする者の割合が30.4%、「良好だと思わない」とする者の割合が64.6%となっているが、 同じく過去から見れば良好だと思う人の割合が増加している。 また平成17年8月に日本が行ったロシアにおける対日世論調査(外務省)[注2]では、 37%の者が日本は好きと回答し、日本が嫌いと回答した者(3%)を大幅に上回り、32% の者が日本を信頼できると回答している。ただ日本が好きと回答した者は、前回の45%か ら低下し、日本に関心を有するとした回答が48%から40%に低下し、全く関心がないと した回答が27%から40%に増加している。ロシアでは日本と対照的に、日本への関心度が 低下している。日露関係については、89%が重要であると認識し、63%が現在の関係を 良好であると評価している。 また2015年に経団連が行ったモスクワの日本企業182社のアンケート調査[注3]によ ると、ロシアビジネスには肯定的な評価が多く(77.4%)、「広大な国土」「天然ガス、石油、 鉱物、森林などの豊富な資源」「市場規模が大きい」「隣国であることの地理的有利性」「1億 4千万人という人口とその購買力」「平均的な教育水準の高さ」等がその理由となっている。 さらにロシアビジネスの拡大・強化を目指す企業も多く(35.4%)、具体的に「現地拠点 の設立・拡大」「工場の新設・更新による生産能力の増強」「取扱品目の拡大」「新ブランド導 入」「新事業創出」「既存取引先との連携強化」「物流部門の新設」「広域市場をカバーするため 営業部を拡大」「アフターサービスの拡充」「原価低減」「危機対応力強化」「ロシア語人材の継 続的育成」「ロシア行政機関での人脈強化」等があげられている。 このように日本ではロシアへの関心が低いもののやや上昇傾向にあり、反対にロシアは 日本への関心度合いが高いもののその割合は低下傾向にある。両国民は意識的には近づい てきており、新たな日露関係を願う素地は形成されつつあると考えられる。時期的にみて も状況は受け入れやすくなっていると考えられる。

(12)

いま私たちはどのように行動すべきなのか 日露関係の前進をもたらす基盤が形成されてきている今日、国内では数少ないロシアと の多面的な交流を推進しているNPO法人極東研には今後のロシアとの関係を前進してい くために、さらなる活動を進める役割があるものと考えられる。 第一には日本側のロシアに対する理解を深めるために、ロシアの情報をもっと一般市民 に伝えていく役割がある。日本人がもっとロシア人を、ロシアという国を知るようになれ ば相互理解の基盤は一層強固になり、“日露関係打開の最大の機会が到来”しても、それ を受け入れる世論形成に積極的な役割を果たすことができる。 第二に今後のいっそうの発言力を強化するために、ロシアの様々な機関(地方政府、中 央政府)との関係を築く役割がある。ロシアは政府や行政の力が強く、こことのパイプが 無ければ“ロシア経済の回復基調が始まる恰好な機会と環境の提供”に、何の役割も果た すことができない。特に極東ロシアと様々なコネクションを築いていくことは、極東研に とって重要であると考えられる 第三に積極的な提言を行い、世論形成に貢献していくこと役割がある。“両国の外交関 係が再開されてから60年の節目の年にあたる。両国の膠着関係を打開するべき時にきて いる”と考えられるこのときに、NPO法人極東研の存在が日露関係打開の中で役割を持 てるように、もっと前進していく必要があろう。 注1「外交に関する世論調査」内閣府大臣官房政府広報室 平成25年9月26日~10月6日 注2「ロシアにおける対日世論調査」外務省 2004年9月9-29日 注3 「ロシアのビジネス環境等に関するアンケート」日本経済団体連合会 日本ロシア経済委員会 2015年9月17日 《問い合わせ先 矢島 隆志〈yajima@nichiro-e.com〉》

編集部より

 NPO法人ロシア極東研理事会は昨年秋より、ボストーク誌面の改善のありかたについて検討 を始めています。本誌紙面の改善については読者各位の意見・要望をふまえ、進めていきたく存 じています。  具体的な紙面改善案には、本誌巻末の「月録ニュース」にかわり、「ロシア語時事ニュース」 を掲載したいという一案もあります。紙面内容の検討以外に、B5サイズからA4サイズの変更 する提言も寄せられています。  今回は、紙面改善に関する具体的な提案者のひとりである丹治宏剛会員に「丹治案」のイメー ジを提示してもらいましました。本年度いっぱいかけて、紙面改善のありかたについて検討しく 予定です。読者各位のご意見、ご要望をお知らせ下さい。

新企画案の素描 = イメージの紹介

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新企画案

本誌へのロシア時事ニュースとその翻訳の掲載について

日露エコノミックスセンター株式会社代表取締役 

じま

たか

し 当会理事/FECマネジメント代表取締役 

たん

ひろ

たけ  本誌の新企画として、当会がピックアッ プしたロシア時事ニュースとその日本語訳 を掲載していくことを検討中です。  これは、札幌商工会議所で行われている 講義『ロシア時事ニュースを読みながらロ シア語を学ぼう』で使用している教材から の抜粋で、毎週最新の情報をロシアのネッ トニュースから選んでピックアップしてい るものです。  ロシア極東のみならず、全ロシアを対象 に、会員の皆様にとって興味深い内容の記 事とその翻訳を掲載していく企画です。 ●本企画について、会員の皆様からのご意見、ご要望などをお待ちしています。●

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NPO法人ロシア極東研共催講座

『ロシア時事ニュースを読みながらロシア語を学ぼう』

*一回単位でのご参加も可能です。 曜   日 毎週水曜日(平成29年3月末まで開催中) 時   間 19時10分から20時まで 場   所 札幌市中央区北1条西2丁目 北海道経済センタービル7階       札幌商工会議所 第5会議室 問い合せ先 当会理事 丹治宏剛       Eメール:hiro.tanji@fec-jpn.com       電話:080-3405-4028       ウェブサイト:http://fec.hp-ez.com/study

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C O L U M N

C O L U M N

会員の《自己・他己紹介》

活気あるカムチャツカを訪ねて

有限会社ファルコンジャパン取締役社長 すぎやま 基もとえ さん 6年ぶりのペトロパブロフスク・カムチャツキー 初めてカムチャツカに行けたのが1992年の春でした。往時はまだウラジオストクと並んでロシア人 はもとより外国人の入境を厳しく制限していたのですが、私は、たまたまサハリンで邂逅した当時のカ ムチャツカ観光公団総裁とのウオトカの席での約束が実現したのがきっかけで、若い頃からの念願だっ たカムチャツカと行き来する仕事を積極的に企画するようになっていきました。その後に観光が自由化 されたことにより日本からの観光客がチャーター便やクルーズ船で訪れるようになりました。 この24年間で街はかなりの移ろいをみせていますが、6年ぶりに見るカムチャツカはモノクロから カラフルな街へと色彩かに美しく変わっています。 現在のカムチャツカ地方の人口は約37万人で、主都のペトロパブロフスク・カムチャツキーは約17 万人、空港の所在地で隣街のエリゾウは約7万人と極めて近いエリアに人口が集中していることがよく わかります。 また観光の目的にも代表される世界自然遺産の登録を受けた山々の雄姿が、旅行者を歓迎してくれま す。私たち日本人にとっては富士山クラスの山々が一望できるこの風景に驚かされます。 またペトロパブロフスク・カムチャツキーから南 部へ車で約1時間走るとパラトゥンカという温泉地 帯があり、ここ数年前に新築された温泉付き小型リ ゾートホテルや大規模プールができて、地元市民や 外国人観光客にも広く利用されています。市内に戻 れば、かつての青空市場が同居している商業施設内 で、地元で獲れるキングサーモンやシルバーサーモ ン、各種イクラ、極めつけはタラバガニなどが安い 現地価格で売られています。魚は燻製もあるのでお 土産としても持ち帰ることもできます。 カムチャツカでの最新情報 丁度、私が日本を出発したころに「北大山岳部現役隊がカムチャツカの登山に成功し帰国」という報 道記事があり、かつて二十数年前に彼らのOBと現役生とのチーㇺが半島最高峰の活火山を踏破した際 のことを思い出しました。 実は今回ウラジオストクのホテルでも翌日の国内線でもご一緒した日本人三名の方々は、結局ペトロ パブルフスク・カムチャツキーでもホテルが同じで、朝食時に言葉を交わしたところ、昨年12月末に 日本の援助で完成したウスチ・カムチャツカの風力発電システムの技術者のみなさんでした。 新エネルギー産業技術総合開発機構の取り組みが、今後もロシアの寒冷地に対応した風力発電実証事 業として注目を集めているようです。 北極海航路の先端基地としての注目を集めているこの港湾は、国も地方政府も最重要課題として開発 整備に取り組んでいることが、現地でも特別な話題になっています。港湾工事は年内の完成を目指して いて、対象エリアにある商業港周辺は高い塀で囲み、セキュリティを確保しています。 私の今回の訪問目的は、日本を代表するラグジュアリー客船「飛鳥Ⅱ」就航25周年アニバーサリー 日本一周クルーズの現地オペレーションの仕事でした。 入港当日は、現地でもこのクルーズの船客が街を散策する姿に注目が集まっていました。 7月中旬からは、カムチャツカの夏の本格的な観光シーズンが始まります。 成田空港からは、週2便の直行チャーター便が就航しますが、それ以外ウラジオストクかハバロフス ク経由でしかアクセス手段がないので、そのためにまだまだ希少価値が残っていると言えるのかも知れ ません。 〈問合せ先 杉山 基〈sugiyamenko@falconjapan.co.jp〉〉

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テーマ別ニュース月禄(2016年4月~6月)

ニュースは、紙幅の関係で縮約しています。全文は会員専用ホーム・ページに掲載しま した。

Ⅰ.ロシアの国内政治

露野党指導者に女性と密会報道 反プーチン派打撃(M150404)(要約)ロシアのテレビ NTVは1日、反プーチン派の野党連合を率いるミハイル・カシヤノフ元首相(58)が、 側近の女性と密会している様子を撮影したビデオを報道番組の中で報じた。反プーチン派 にとって大きな打撃となりそうだ。 プーチン大統領直属の「親衛隊」創設 民主活動抑圧か(D160406)(要約)プーチン大 統領は5日、テロ対策や秩序維持を担う「国家親衛隊」を創設する大統領令に署名。内務 省部隊を基に各治安部隊を統合した大統領直属の特殊部隊となり、隊長は閣僚級で大統領 に直接報告する権限を持つ。プーチン政権は、ウクライナやジョージアで起きた市民革命 がロシアに及ぶことに強い警戒感を抱いており、国家親衛隊は大統領の意を受けてこうし た動きの芽を摘む役割を負っているとみられる。 〈18歳が問う 危機の民主主義・ちきゅう白書〉ロシア・モスクワ 反政権の野党勢力  スリンコさん 無関心でいられない(D160504)(要約)4月、モスクワの中心部から外 れた一角にある広場で、プーチン政権によるウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入 や、徴兵制に反対するプラカードを掲げる若者の中に、今年18歳の大学生ユーリー・スリ ンコさんの姿。集まったのは野党「ヤブロコ」の青年組織。人通りの多い場所での活動を 市当局に申請したが、許可が下りず、14カ所目でようやく認められた。そこでも警官がそ ばで目を光らせ、声を上げて主張を訴えることもできない。「この数年、ロシアは自由に 声を上げることがますます難しくなった。でも若い僕たちが国の将来に無関心ではいられ ない」。 露下院で初の予備選 政権与党 政策論争なし(M160522)(要約)5年に一度のロシア 下院選(9月18日)に伴い、与党・統一ロシアが今年から予備選挙方式を導入した。国内 各地で候補者の討論会を開いており、22日に党員による投票で最終的な立候補者を決め る。予備選挙はロシア語で「プライメリーズ」で、英語の「プライマリー」にちなんだ造 語。討論会をのぞくと、激しい政策論争は全く見られなかった。

Ⅱ.ロシアの経済・社会

租税回避地使い金融取引 プーチン氏周辺、総額2,200億円(D&Y160404&05)(要約)プ ーチン大統領周辺の人物らがタックスヘイブン(租税回避地)の企業を使って巨額融資を 受けるなど、総額約20億㌦(約2,200億円)の金融取引をしていたことが3日、「国際調査 報道ジャーナリスト連合」が入手した内部文書で判明した。文書からは、アイスランドの グンロイグソン首相やサッカー界のメッシ選手、香港の俳優ジャッキー・チェンさんら各 国の指導者や著名人が、税率がゼロか極めて低い租税回避地を利用している実態も浮上。 日本の警備大手セコムの創業者らの租税回避地での法人設立も分かった。  報道によると、プーチン氏の親友でチェロ奏者のセルゲイ・ラルドゥーギン氏らが関与 するタックスヘイブン拠点の複数の会社などに、大量の資金が流入していた。資金の規模 は20億ドルに上るという。英紙ガーディアンは、「プーチン大統領の名前は直接出てこな

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いが、彼の支援なしには不可能だ」と指摘している。資料には、ウクライナのポロシェン コ大統領やサウジアラビアのサルマン国王ら指導者12人のほか、キャメロン英首相の亡父 など指導者に近い人物61人に関する情報も含まれているという。また、習国家主席の義兄 など中国共産党の新旧指導部8人の親族の名前も登場する。 ノーベル賞作家、チェルノブイリ事故を語る(N160411)チェルノブイリ原子力発電所 に近い旧ソ連・ベラルーシの作家スベトラーナ・アレクシエービッチ氏(67)は事故の被 害証言をまとめた労作「チェルノブイリの祈り」などで知られ、2015年にノーベル文学賞 を受賞した。同氏に現地社会の意識変化や原子力エネルギーの展望について聞いた(イン タビュー内容は省略)。 ロ露紙幹部ら3人辞任 パナマ文書 政権癒着報道に圧力か(M160514)(要約)パナマ 文書で、政権と財界に癒着を報じたロシアのメディアグループRBKの編集部門幹部3人 が13日、辞任した。ロイター通信はプーチン政権からの圧力があったとの見方を報じた。 RBKは政権の統制から外れた数少ないメディアの一つとみられていただけに、波紋が広 がりそうだ。 ロシアでオウム施設を一斉捜索 連邦捜査委(D160405)(要約)ロ連邦捜査委員会は5日、 モスクワとサンクトペテルブルクで「オウム真理教」関連の施設を一斉に家宅捜索したと 発表。ロシア内務省によると、捜索先はモスクワ11カ所、サンクトペテルブルク14所。書 類やコンピューターなどを押収した。捜査筋は約10人をサンクトペテルブルクで拘束した と明らかにしたが、詳細は不明。 ロシア、高速炉25年に商業化 再処理のプルトニウム利用(D160422)(要約)ロシアが 使用済み核燃料を再処理して抽出したプルトニウムを燃やす「高速炉」の商業化を2025 年に目指す方針であることが分かった。国営原子力企業ロスアトムの中国・日本国際ネッ トワークのセルゲイ・デミン副代表によると、ウラル地方ベロヤルスク原発にある高速炉 の実証炉「BN800」が昨年12月に電力供給を始め、今年2月に初期テストが全て終わった。 年内にフル出力で発電する一方、これを発展させた高速炉の開発を進め、25年の商業化を 目指す。ロスアトムは、同社が輸出した原発から使用済み核燃料を引き取ることを海外の 顧客に提案している。環境保護団体は「実証炉以降の高速炉の開発が順調に進まない場合、 利用の見通しがないプルトニウムが増えることになる」と批判している。デミン氏は「高 速炉技術で日本と協力する用意がある。原発の廃炉や放射性廃棄物の処分、東電福島第1 原発の汚染水からトリチウムを分離する技術の開発でも協力を進めたい」と述べた。  チェルノブイリ事故30年特集記事(上「故郷の村 森になった」)、(中「溶けた燃料  石棺ごと封印」)、(下「健康被害『事故全体で見る』」)記事は省略(A16024/160435/160626)。 チェルノブイリ燃料貯蔵に拠出 G7中心に百億円追加を表明(D160426)(要約)30年前 に起きたチェルノブイリ原発4号機の爆発事故を巡り、G7を中心とした十数カ国やEU、 EBRDは25日、ウクライナのキエフで会合を開き、稼働を停止した1~3号機の核燃料の 中間貯蔵施設整備に計約8,740万€(約110億円)を拠出すると表明した。日本の拠出分は 約350€万。中間貯蔵施設は現在、事故原発を中心とする半径30㌔圏の立ち入り制限区域 に建設中。為替変動などにより全体費用が3億€から4億€規模に膨らみ、資金不足に陥 っていた。1~3号機は2000年までに順次稼働を止めたが、核燃料の処理が課題となっ ていた。角茂樹駐ウクライナ大使は「今後50~100年の安全確保にめどが立った」と指摘。 「チェルノブイリ事故という原子力安全分野の世界的な問題でG7が指導力を発揮できた」 と強調した。 チェルノブイリ事故 廃炉 終わり見えず「石棺」老朽化進む(N160426)記事は省略。

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チェルノブイリ原発事故30年 悲劇伝える「廃虚ツアー」が解禁(D160426)(要約)政 府の許可を得て同原発周辺を巡る有料観光ツアーが近年、解禁された。事故前、原発関係 者ら約5万人が暮らしたプリピャチは、観覧車や飛び込み台付きプールまであり、物不足 の旧ソ連時代に「夢の街」と言われた町。今は木や雑草が生い茂り、野生のキツネやウマ が生息。大半の建物は内部もぼろぼろに壊れている。事故後、立ち入り禁止区域内で盗難 が相次ぎ、「放射性物質に汚染された家具が盗まれないよう、政府がわざと壊したケース もあるという。料金は約12時間で約90㌦(約9,700円)。事故を起こした4号機以外の原発 施設内を見学できる2日間以上のツアーもある。ウクライナ政府は2011年に同原発の観光 ツアーを解禁。短期滞在なら人体に悪影響はないと判断し、一定の審査の上で許可してい る。現在は約15の民間業者がツアーを企画。15年は約1万5千人の観光客が訪れ、半分以 上が外国人だった。ツアーに対しては、被災者から「悲劇を金もうけに使っている」との 批判や、観光客が増え安全対策を徹底できるか疑問視する声もある。 〈ノーベル文学賞アレクシエービッチ氏に聞く〉(D160426)(要約)チェルノブイリ原発事 故で最大の被害を受けた隣国ベラルーシ共和国の作家で、昨年ノーベル文学賞を受賞した S.アレクシエービッチ氏は、「科学技術が進んでも原発事故はまた起こり得る」と、福 島第1原発事故を念頭に警告した。ベラルーシは事故で放出された放射性物質の約6割が 降下したとされ、国土の13%が今も汚染されている。汚染地域には人口の1割超の約110 万人が住んでいる。「政権はチェルノブイリという言葉を使うのを事実上禁止している。 事故を克服するのではなく、風化させて無かったことにしようとしている。一方で、私の 本は、国内で出版できないが、ロシアから持ち込まれ少しずつでも読まれている。この流 れは止めることはできない」。2003年に講演で日本を訪れた時、日本の原発関係者から「チ ェルノブイリ事故は旧ソ連の人が怠惰だったから起きた。技術大国の日本ではあり得ない」 と言われた。その8年後に福島第1原発事故が起きた。「二つの事故で分かったのは、科 学技術が進んでいても、真摯な態度で管理していても原発事故は起こり得るということ。 むしろ技術が進むほど、大きな事故につながるのではないか。 チェルノブイリ 重い教訓を生かさねば(D160427)(要約)1986年4月26日に起きたチ ェルノブイリ事故から30年。現地では、放射能漏れを防ぐ巨大な覆いを新たにかける工事 が進むが、問題の溶け落ちた核燃料をいつ、どんな方法で取り出すかは未定。廃炉の道筋 は見えない。福島第1原発とチェルノブイリでは型式が異なり、チェルノブイリは試験運 転中の爆発だったのに対し、福島は東日本大震災の津波による電源喪失が直接の原因とさ れる。同列に扱えないが、事故の深刻度はいずれも最悪のレベル7。各国の支援で建設中 の覆いは、ステンレス製で100年持つという。汚染物質は欧州に拡散し、隣接するベラル ーシやロシアでも人の住めない地域が広がった。被災者は300万人超とも。事故処理では 数十人が急性放射線障害で犠牲になった。世界保健機関の下部組織による06年の調査は、 事故に起因するがん死者を約9千人と推計。被ばくによる周辺住民の健康被害が広がり、 なかでも小児甲状腺がんが多発した。福島原発事故後の県の甲状腺がんの検査では、事故 時に18歳以下だった県民の100人以上が、がんかその疑いがあると診断された。福島原発 事故は収束のめどが立っておらず、詳細な事故原因もいまだに明らかにされていない。そ れなのに、政府は世界最高水準と強調する新規制基準のもと、原発の再稼働を進めている。 今回の熊本地震も含め、日本は地震の多発国だ。事故があったら取り返しがつかない原発 に依存し続けてよいのか。脱原発に向けた国民的議論が求められる。 ベラルーシ 進む原発依存 チェルノブイリ事故30年 国土2割汚染 不安今も 最新 原子炉を導入(M160427)(要約)ベラルーシのオストロベツ郊外では、2013年から同国

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初の原発建設工事が続く。ロシアと合意を結び、「第3世代プラス」と位置付けられる最 新型原子炉の導入を決めた。1号機は18年、2号機は20年に完成予定。「ベラルーシには エネルギー資源がほとんどない。電力供給の95%をロシア産天然ガスによる火力発電に頼 り、多角化が必要」。エネルギー省のミハジュク次官は、こう力説する。 〈論説委員室から〉30年前からの重い警鐘 西田浩雅(D160502)(要約)旧ソ連時代のウ クライナで1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故から30年。被災者は300万人 超とも。がんによる死者数はWHO推計で9千人。残された放射性物質の最終処理のめど は立たず、約2,600㎢が居住禁止区域のまま。京大原子炉実験所は2月、ウクライナ政府 が2011年にまとめた報告の日本語訳の全訳を公開。それによると、チェルノブイリ事故に よる同国の経済損失は1,984億㌦。現在のレートで約22兆円。この金額には、今後の廃炉 に向けた負担や放射能汚染の回復に要する経費、さらには被災者の健康被害による損失も 含まれていない。健康への影響については、被ばくした親から生まれた子供のうち慢性疾 患を持つ割合が、1992年の21%から2008年には78%まで増加したとの数字を公表。福島 県では、事故当時18歳以下だった子供たちを対象とした検査で、これまでに100人以上か ら甲状腺がんとその疑い例が見つかっている。最近報道されたロシア政府の11年の報告書 は、国境を接するロシアの被災地域で、小児甲状腺がんの症例が事故の翌年には既に「著 しく増加」していたと指摘。内部被ばく線量が、従来目安とされた数値より低い地域でも 発症が増加したとしている。ひとたび原発事故が起きれば、数字では計りきれない重荷が 残される。どんなに安全管理の水準を上げても、どこかに想定外の危険が潜む。リスクを 避けるには、原発依存から脱却するしかない。警鐘を重く受け止めたい。 ロシア、初ロケット打ち上げ延期 極東アムール州の新基地(D160427)(要約)ロシア がアムール州に新設したボストーチヌイ宇宙基地からのロケット初打ち上げが、27日の発 射予定時刻の直前に延期された。新基地はソ連崩壊後、年1億1,500万㌦(約124億円)を 支払って長期借用するカザフスタンのバイコヌール宇宙基地に代わる自前の主力基地とな る。ロシアはバイコヌールも当面併用。新基地はソ連時代の大陸間弾道ミサイル基地の跡 地を活用し2010年着工。15年中の初打ち上げを目指したが、大規模な資金横領や建設作業 員への賃金未払いなど問題発覚が相次ぎ、工事が遅れていた。 ロシア、新基地から初のロケット 宇宙大国の威信かけ(D&Y160428&29)(要約)ロ国 営の宇宙開発企業ロスコスモスは28日、初のロケット打ち上げを行った。27日は電気系 統のトラブルがあり、原因究明と修理のため24時間延期された。打ち上げ予定のソユーズ ロケットは人工衛星3基を搭載し、今後は月探査機や有人宇宙船の打ち上げも計画している。 北方領土ヒグマはサケ多食 白い体色と関連?(D160506)(要約)白い体色のヒグマが 生息する北方領土・択捉島では、北海道に比べてヒグマがより多くのサケを食べているこ とが分かったとの研究成果を、総合地球環境学研究所の松林順・研究推進支援員らが6日、 発表。松林氏は「白いヒグマが存在する要因はサケだけでは説明できないが、解明に向け た手掛かりになる可能性がある」と指摘している。松林氏らと北海道大の研究チームは、 1920~45年に採取され、北海道大学植物園・博物館に所蔵されている択捉島のヒグマ23 頭の頭骨の元素を分析し、栄養としてサケをどの程度食べたかを推測。その結果、北海道 東部ではヒグマの食物に占めるサケの割合は8.2%だったが、択捉島では27.3%に上った。 ロシアが対独戦勝71年式典 愛国鼓舞し結束訴え(D160509)(要約)モスクワ赤の広場 で9日、第二次大戦勝利を祝う対独戦勝記念日の式典が開催。プーチン大統領は「結束と 祖国への献身こそがわれわれの力、自信、尊厳だ」と演説。ウクライナ危機などで欧米と 対立する中、愛国心を鼓舞し国民の団結を訴えた。大統領はナチス・ドイツから欧州を解

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放した功績を誇示。テロの脅威に対処するために「ロシアは非同盟に基づく国際安全保障 体制を築く用意がある」と述べ、欧州や中東、アジア各国と同盟関係を築く米国をけん制した。 プーチン氏愛国心鼓舞 対独戦勝式典 欧米批判は封印(D&Y160510)(要約)経済の停 滞が続く中、愛国心を鼓舞する狙いだ。記念式典は各地で開かれた。サハリン州では、ユ ジノサハリンスクで軍事車両約20台、兵士約千人が軍事パレードを行った。択捉島、国後 島、色丹島でも記念式典が開かれ、大勢の島民が祝った。プーチン大統領は「テロリズム は地球規模の脅威であり、我々はこれに勝利しなければならない。ロシアは他の国々と力 を合わせ、ブロックに分かれない安全保障システムを作る用意がある」などと演説し、テ ロとの戦いでの協力を米欧に呼びかけた。 ソチ 金、ロ4選手の薬物隠蔽告白 米CBS番組で関係者(D160509)(要約)ロ陸上界 の組織的ドーピングを告発した女子中距離のステパノワ選手の夫で、同国の反ドーピング 機関職員だったビタリー氏が米CBSテレビのドキュメンタリー番組で、ソチ冬季五輪の検 査所元所長から聞いた話として、少なくとも4人のロシア選手が禁止薬物を使用しながら 金メダルを獲得し、同検査所が隠蔽したことを明らかにした。ロシア人コーチの勧めで5 年以上にわたって禁止薬物を使用したというステパノワ選手は摘発の恐れなく禁止薬物を 摂取できる立場だったことを明らかにした。 モスクワ、墓地で銃撃戦3人死亡 縄張り争いか、20人以上負傷(D160515)(要約)モ スクワ南西部の墓地で14日、民族集団の間で銃撃戦が起き3人死亡、20人以上が負傷した。 墓地関連ビジネスをめぐる縄張り争いとみられている。争いは、北カフカス地域の民族と、 ウズベキスタンやタジキスタンからの不法移民の集団間で起きたとみられている。銃や金 属棒を手にした約200人が参加。警察が鎮圧に乗り出し、およそ90人を拘束したという。 ロシア南部で銃撃戦、6人死亡 イスラム国が警官殺害の声明(D160515)(要約)ダゲ スタン共和国で14日、警察とイスラム過激派の銃撃戦が起き、警官2人と過激派4人が死 亡した。「イスラム国」は警官を殺害したとの声明を出した。 ロシア、音楽祭優勝歌手に反発 ウクライナ代表の先住民族(D&Y160516)(要約)スウ ェーデンで14日に決勝が行われた欧州最大級の音楽祭「ユーロビジョン」で、ウクライナ 代表クリミア・タタール人歌手ジャマラさんが優勝。これに対し、ロシアで「政治的な決 定だ」と猛反発が起きている。ジャマラさんは「1944年」という曲で、旧ソ連指導者スタ ーリンによってクリミアから移住を強制された先住民族タタール人の悲哀を歌った。ロシ アによる2014年の一方的なクリミア編入に抵抗したタタール人の現在の苦境も連想させ る内容。ウクライナのポロシェンコ大統領は「彼女の歌を通じ、全国民の声が世界に届い た。真実は常に勝利する」と称賛。一方、ロ上院国際問題委員会コサチョフ委員長は「政 治介入がコンテストの公正さを打ち負かした」と反発。ロシアのメディアも、ロシア代表 が人気投票では首位だったと強調し、審判員の選考に偏りがあったとの批判を展開した。 審査のやり直しを求める署名運動がインターネット上で展開され、35万人以上が賛同して いる。プーチン政権によるクリミア編入を、祖先であるタタール人の苦難と重ね合わせて 批判した、とロシア国内で受け止められている。 カザフ各地で反政府デモ 不況で不満、政権が鎮圧(D160522)(要約)カザフスタンの 主要各都市で21日、反政府デモが行われた。治安部隊は数十人を拘束、政権は主要都市の 広場などを封鎖し、事実上集会を禁止した。主力輸出品である原油価格下落のあおりを受 け、昨年は通貨テンゲが45%下がり、市民の不満が噴出。1991年の独立以来支配するナザ ルバエフ大統領に反発する野党の呼び掛けで最近デモが頻発し、政権は神経をとがらせ強 権的な手法を強めている。

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タジキスタン大統領、終身可能に 国民投票で承認(D160523)(要約)タジキスタンの 中央選管委は23日、現職ラフモン大統領に無制限に立候補できる権利を与える憲法改正是 非を問う国民投票が94.5%賛成との暫定結果を発表。投票率は92%とする。1992年から支 配するラフモン氏が終身大統領になる可能があり、一層の独裁化が進みそうだ。改正案に は大統領選の被選挙権を35歳から30歳に引き下げることも含まれ、2020年の次回選挙で ラフモン氏の長男が出馬できる。宗教に基づく政党を禁止することも盛り込まれており、 野党「イスラム復興党」などは非合法団体になる。ただ国民投票の投票用紙には「憲法改 正に賛成か反対か」とだけ書かれ、投票者は「はい」か「いいえ」を選んだ。憲法改正案 の項目は全部で40以上あり、内容を把握せずに投票している人も少なからずいた。 プーチン政権に打撃 ロシア陸上リオ出場不可(D160619)(要約)ドーピング疑惑でロ シア陸上チームがリオ五輪に参加できなくなるのは、スポーツを国威発揚に利用してきた 政権にとって大打撃だ。プーチン政権が狙うEUとの関係改善にも影を落としそうだ。疑 惑表面化して以降、一貫して組織的な関与を否定。個々の選手やトレーナーの問題で、陸 上チーム全体に処分を科さないよう求めてきた。有力紙の独立新聞は、陸上チームの五輪 参加禁止について「ロシアへの打撃は制裁より大きい」との専門家の論評を伝えた。 ロシア2選手がCAS提訴 五輪参加禁止の撤回求める(D160619)(要約)ロシアの競歩 2選手が、同国の組織的なドーピング問題を巡り、代表チームとしてリオデジャネイロ五 輪の参加を禁じた国際陸連の処分撤回を求め、スポーツ仲裁裁判所CASに提訴したと明 らかにした。IOCは国際陸連の決議を支持する意向を表明。

Ⅲ.ロシアの外交・国際関係

アゼルバイジャン軍とアルメニア系組織交戦 ロシアは停戦求める(D160402)(要約) アゼルバイジャン西部のナゴルノカラバフ自治州で2日、アゼルバイジャン軍とアルメニ ア系の武装組織が交戦し、十数人が死亡、多数が負傷。プーチン大統領は、勢力圏と見な す旧ソ連圏で地域紛争が再燃する事態を懸念、双方に武力行使の即時停止を求めた。 先見えぬ米露関係 トレーニン所長(カーネギー国際平和財団モスクワセンター) (M160403)(要約)ケリー国務長官とラブロフ外相がシリア和平で協力姿勢を見せ、米露 が関係改善に向かう期待があるが間違いだ。プーチン大統領は、核安保サミットへの参加 を拒んだ。核問題は米露が対等な立場で協議すべきで、一招待者との位置づけは受け入れ ないからだ。来年政権が交代しても関係改善はない。最有力候補のクリントン氏はオバマ 政権の対露政策が甘かったと批判、より強硬な態度に出る可能性が高い。トランプ氏が理 性的なロシア観を持っているとも思えない。今機能している唯一の対話チャンネルはケリ ー氏とラブロフ氏との関係だ。ロシアも院選を控える。プーチン政権以来初めて、経済が 後退する中での厳しい選挙になる。プーチンが難局を乗り切るために中央アジアやアフガ ニスタンに介入する可能性もある。そうなれば米露関係はさらに悪化するだろう。 米駆逐艦にロ軍機が異常接近 バルト海、「危険」と非難(D160414) 最高会議議長 新首相の承認 ウクライナ(M160415)(要約)ウクライナ最高会議は14日、 連立与党会派が新首相候補として擁立したウォロディミル・グロイスマン同会議議長(38) を賛成多数で承認した。グロイスマン氏はポロシェンコ大統領の側近とされ、14年にヤツ ェニュク内閣地域開発相を務めた後、最高会議議長に就任した。 「露軍人」実刑判決 ウクライナ裁判所(M160419)(要約)ウクライナの裁判所は18日、 同国東部で昨年5月に「偵察活動中のロシア軍情報要員」としてウクライナ政府軍に拘束 されたロシア人男性2人にいずれもテロ行為などの罪で禁固14年を言い渡した。

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仏、プーチン氏招待 対露強硬策 結束に乱れ(M160420)(要約)フランスのエロー外 相は19日、ロシアでプーチン大統領と会談し、オランド大統領が10月にプーチン氏をフラ ンスに招待したことを明らかにした。ロシア側は承諾したとみられる。G7では、イタリ アが昨年以降、ロシアとの関係を強化。安倍首相も5月に訪露を計画。こうした諸国と対 露強硬策を維持押したい米国との足並みの乱れが表面化しつつある。 NATOと露が2年ぶり理事会(M160421)(要約)NATOとロシアは20日、「NATOロシア 理事会」の大使級会合をブリュッセルで開いた。約2年ぶりの再開。対話継続の必要性で は一致したものの、緊張緩和への道は険しい。 シリアでロシア軍増強の動き 米、一時停戦に逆行と懸念(D160422)(要約)ローズ米 大統領副補佐官は21日、内戦下のシリア北部でロシア軍が軍備増強を進めているとして、 一時停戦を脅かす「否定的な動き」と懸念を表明、ロシアが支援するアサド政権による停 戦違反が横行していると非難した。 ウクライナ 原発人材不足 露のクリミア編入で打撃(Y160426)(要約)ウクライナは2 年前、ロシアにクリミアを奪われた際、原子力の技術者を育てる拠点大学を接収された。 クリミア先住民「過激派」に指定 露側裁判所(M160428)(要約)クリミア半島で26日、 露政府支配下の地元裁判所は先住民族クリミア・タタール人の民族組織「メジュリス」を 過激は団体に指定し、活動禁止を命じた。メジュリス指導部は編入反対の立場を貫き、ロ シアにとって「目障りな存在」だった。 対ロ抑止強化で一致 米と北欧5カ国(D160514)(要約)オバマ米大統領は13日、北欧 5カ国首脳と会談。 露、米MD運用に対抗へ 新型ミサイル常駐も(M160515)(要約)米軍が12日にルーマニ アで運用を開始し、13日にはポーランドでも同タイプの迎撃ミサイル施設の建設に着手し た。これに対し、プーチン大統領は13日、「(米露の)軍事バランスを保持するため、あら ゆる手段をとる」と述べるなど、強く反発している。米露の対立がさらに深まりそうだ。 EU・露が首脳会談 プーチン氏 制裁解除狙いか(Y&M160617)(要約)プーチン大統領 は16日、サンクトペテルブルクを訪問したEUのユンカー欧州委員長と会談した。EUトッ プの訪露は2014年3月にロシアがクリミアを編入して以来、初めて。EUの対露制裁の解 除を狙うプーチン氏にとって、ユンカー氏との会談はEU切り崩しへの弾みとなる。 ウクライナ情勢を協議 4か国首脳が電話会談(Y160525)(要約)ロシア、ドイツ、フラ ンス、ウクライナ4か国の首脳は24日、電話会談し、親露派集団が支配を続けるウクライ ナ東部情勢の安定化に向けて協議した。露大統領府の発表によると、プーチン大統領は、 政治的な解決の必要性を強調し、ウクライナ政府と親露派の直接協議が「安定化にとって 最重要だ」と指摘。昨年2月の停戦合意に基づく東部での地方選挙に関し、ロシア側の提 案を示した。これに対し、ウクライナ大統領府によると、ポロシェンコ大統領は、「ロシ アは占領した地域から軍部隊を撤退させるべきだ」などと要求した。 ロシア、ASEANと首脳会議 東方戦略は道半ば(D160521)(要約)ソチで開かれた ASEANとロシアの首脳会議の最終日の討議が20日行われ、経済や安全保障、文化を含む 包括的な協力方針を盛り込んだ「ソチ宣言」を採択。両者の協力強化をアピールする内容 だが、関係は依然限定的で、ロシアの「アジア重視戦略」が実を結ぶには時間がかかりそ うだ。プーチン大統領は閉幕後「長期的なパートナーシップを築くことで一致した」と強 調。新たな安保体制構築でもASEANと協力すると述べ、従来の中国頼りのアジア政策を 多様化させたい考えをにじませた。ソチ宣言は「アジア太平洋地域の平和、安全、安定の 促進に向けロシアの役割を歓迎する」とうたった。南シナ海で実効支配を進める中国を念

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