• 検索結果がありません。

Microsoft Word - 12.doc

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Microsoft Word - 12.doc"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 研 究 結 果 報 告 書 財団法人 長野県学校科学教育奨励基金 平成22年1月22日 理事長 田幸 淳男 様 学校名 下伊那郡天龍村立天龍中学校 学校長名 中島 千明 1 研究テーマ 放射線の性質と利用および、身のまわりの放射線の自然放射線や放射能鉱物の放射線量について 2 研究グループ 下伊那郡天龍村立天龍中学校 2学年 全生徒 男子6名 女子5名 計11名 3 指導者 教諭 結解 武宏 4 研究を進めていくにあたって 本校は天龍川を眼前に、四方を山に囲まれ、校舎・校庭の周辺には棕櫚の木が立ち並ぶ温暖で自然豊かな学校である。 本校がある天龍村は近年、少子高齢化が急速に進み、昨年度高齢化率は50%を越え、長野県市町村別でも最高となった。 本校学校教育目標に「天龍村をこよなく愛する生徒の育成」が掲げられている。これからの天龍村の将来を担う生徒たち に天龍村の豊かな自然環境を通して科学教育に関する調査研究活動を行わせたい。また、本校近くに中部電力の平岡ダム があり、生徒たちは社会見学や職場体験実習によって生活に役立つ電気エネルギーをつくりだす水力発電について学び、 有効なエネルギー資源の利用についても興味関心を持ち始めていた。そこで学習指導要領改訂を受けて新学習指導要領中 学校理科第1分野の「科学技術と人間」の単元では、エネルギー資源の利用や科学技術の発展と人間生活とのかかわりに ついて認識を深め、自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察し判断する態度を養うことがねらい とされ、エネルギー資源について人間は、水力、火力、原子力などからエネルギーを得ていることを知るとともに、エネ ルギーの有効な利用が大切であることを認識すること。また、放射線の性質と利用にも触れることとされている。指導者 は文部科学省主催の原子力・放射線体験セミナーを(独)原子力機構高崎量子研究所で受講した経験や、中部原子力懇談 会主催のエネルギー環境研究会に参加したことから、これからの未来を担う生徒たちに放射線について正しい知識と理解 を育て、有効な放射線利用について学ばせていきたいと考えた。 5 研究の動機 昨年度、中学1年次の理科「大地の変化」の学習で生徒たちは天龍川には様々な種類の岩石が見られ、深成岩の花崗岩 には放射能鉱物が含まれていることに興味を示した。そして、新学習指導要領では放射線の性質と利用についての学習が 実施される。放射能・放射線について生徒たちにイメージを聞いたところ「危ない、怖い」との考えが多かったが、放射 線は私たちの身のまわりに存在し、有効利用されていることなどを知るうちに興味関心がさらに深まり、クラス全体とし て放射線について学びながら、まずは自宅内、校舎内外や河川、食品等から放出される自然放射線量や、天然の放射能鉱 物標本と天龍村の岩石を比較して、それらの放射線量を測定していくこととした。そして、私たちは医療、産業等で放射 線や放射能の様々な性質を有効利用していることを学びながら、放射線の性質についても調査研究活動を行う。さらに、 手軽に放射線を観察できる簡易霧箱の実験を行いながら、調査研究活動を進めていくこととした。 6 研究の目標 放射線とはどのようなものか正しい知識と理解を持ち、身のまわりの自然放射線や天然放射能鉱物標本や主に花崗岩の 放射線量を明らかにする。さらに、放射線の物質による透過や反射、距離による減衰を科学的に研究活動から放射線の性 質を知ることを通して、様々な分野で放射線は有効利用されていることを学び、放射能・放射線について科学的な見方や 考え方を養う。

(2)

2 7 研究の方法 ①放射線を知るために「偉人たちとの授業」~放射線を知る~のDVDを見て放射線、放射能、放射性物質について理解 を深める。 ②測定機器と測定方法について基本操作を習得する。 ③自宅内のγ線放射線量を測定する。 ④天龍中学校の校舎内のγ線放射線量を測定する。 ⑤天龍中学校の校舎外、学校敷地内のγ線放射線量を測定する。 ⑥校舎内外、学校敷地内の天龍中学校γ線放射線分布マップをつくる。 ⑦夏の健全育成行事「親子理科体験学習」で和知野川キャンプ場でのγ線放射線量を測定する。 ⑧いろいろな食品に含まれるβ線放射線量を測定する。 ⑨放射線の種類と、放射線の物質による通りやすさや反射、距離による強さの違いについて測定する。 ⑩空気中に含まれている放射性物質の放射線量を測定する。 ⑪長野県を縦断し、県内最南端天龍村から県庁所在地長野市善光寺までの大地によるγ線放射線量を測定する。 ⑫天龍村十方峡トンネル内部のγ線放射線量を測定する。 ⑬天然の放射能鉱物標本と天龍村の岩石(主に花崗岩)を比較して、それらの放射線量を測定する。 ⑭実際に目に見えない放射線を中型および簡易霧箱で観察する。 ⑮放射線の有効利用、医療、農業、工業分野への応用について調査研究活動をする。 8 研究内容の概要 ①放射線を知るために「偉人たちとの授業」~放射線を知る~のDVDを見て放射線、放射能、放射性物質について理解 を深める。 放射線についての基礎知識を学習するとともに、放射線の性質や利用の正しい理解を促すために、これからの調査研究 活動の導入として視聴した。レントゲン、マリー・キュリー、チャールズ・ウィルソンなど歴史上の偉人たちが「放射線 の出前授業」を行い、放射線に対する疑問点を取り上げ、放射線の計測や観察などを通して、放射線を身近に感じていく ことができた。 【結果と考察】 ・放射線には「自然放射線」と「人工放射線」がある。 自然放射線とは宇宙、大地、大気、食品から出されている放射 線であり、人工放射線とは医療(レントゲン撮影など)、原子力発電所から出される放射線。 ・人は年間平均2.4ミリシーベルトの自然放射線を受け、長野県に住んでいれば平均1.0ミリシーベルトを誰でも受 けている。 ・人は年間平均2.3ミリシーベルトの人工放射線を受け、胃のバリウム検査では0.6ミリシーベルト、肺の検査で0. 05ミリシーベルト受けている。 ・原子力発電所周辺をはかるくんで測定してみると約0.050マイクロシーベルト(1マイクロシーベルトは1000 分の1ミリシーベルト)であり、非常に少ない。年間でも0.05ミリシーベルトと基準が決まっていて、原子力発電所 周辺は安全であることがわかった。 ・学校敷地内をはかるくんで測定してみると約0.055マイクロシーベルトと学校と原子力発電所では放射線量には差 はないことがわかった。 ・原子力発電所ではウラン原子の核分裂によって熱を取りだすときに放射線が放出される。この放射線を発電所外へ漏ら さないように、厳重にウランは金属によって密封され、水や厚いコンクリートによって施設内は閉ざされている。 ・放射線はもので止めることができるとわかった。放射線の中でもα線は紙一枚で、β線はアルミニウムなど薄い金属で、 γ線やX線は厚い鉛板や鉄板で、中性子は水やコンクリートで止めることができる。

(3)

3 ・人体への影響は放射線を受ける量でかわることがわかった。約3000ミリシーベルト~5000ミリシーベルト受け ると生命に関わる。広島や長崎の原子爆弾でこのくらいの放射線量を一度に被爆したことになる。 ・放射線は怖がることなく、受ける量とその人体への影響を理解することが大切である。 ・放射線は私たちにとって、身のまわりで様々な用途(医療、工業、農業分野)で有効利用されていることが分かった。 ②測定機器と測定方法について基本操作を習得する。 【測定機器】 放射線測定には財団法人放射線計測協会(放射線測定器の貸し出しは文部科学 省の委託事業である)から借りた「はかるくんDX-300」および「はかるく んⅡ」を用いた。 「はかるくんDX-300」:ガンマ(γ)線のみを測定。 単位はマイクロシーベルト毎時(μSV/h) 「はかるくんⅡ」:ガンマ(γ)線とベータ(β)線を両方測定。 単位はγ線マイクロシーベルト毎時(μSV/h)、 β線カウント毎分(cpm) γ線、β線切り替えボタンで測定できる。 放射線を測るしくみは、放射線があたると光を発する(蛍光作用:光を電気信号に変える)ことによって測定している。 【γ線の性質と測定方法】 ・波長が非常に短い電磁波である。透過力はもっとも強く、数cmくらいの金属板も通り抜ける。 ・その場所の放射線の強さを知るときに測定する。 ・車内では助手席に置いて、徒歩では手に持って移動しながら測定する。 ・上向きのまま測定機器の+印でγ線が測定できる。 【β線の性質と測定方法】 ・高速の電子で、負の電荷をもつ。透過力はγ線より弱く、数cmくらいの金属板で止めることができる。 ・物質固有の放射線を知るときに測定する。 ・食品、鉱物などは、平らな面に上から測定機器(β線検出窓)をかぶせて測定した. ・粉末、粒状のものは、サンプル瓶に入れて、その上から機器をかぶせて測定した。 【測定結果の数値表記のしかた】 ・γ線:移動しながら測定するので、バックグラウンド値をとりにくい。測定場所の測定値をそのまま表記した. 単位はμSv/h (マイクロシーベルト毎時)で、その場所に1時間いた場合に受ける放射線量。 ・β線:試料標本の測定値を表記した。いずれも1 分間5回測定し、5回の平均値を算出した。バックグラウンド値も取 った。単位はcpm (シーピーエム)で、1分間に検出器で数えた放射線数。 ③自宅内のγ線放射線量を測定する。 放射線についての基礎知識は学習してきたが、実際に私たちが住んでいるところにも放射線は存在するのだろうか、ま た、存在するのであればどのくらいの量の放射線が存在しているのか、調査場所としてクラス全員の自宅内の玄関、居間、 トイレ、洗面所、台所、風呂をはかるくんⅡで測定。各場所で1分間5回測定し、5回の平均値を算出した。単位はマイ クロシーベルト毎時(μSV/h)。次ページに結果を以下に示した。

(4)

4 測定場所 生徒1 生徒2 生徒3 生徒4 生徒5 生徒6 生徒7 生徒8 生徒9 生徒10 生徒11 玄関 0.062 0.062 0.071 0.06 0.079 0.041 0.044 0.055 0.057 0.07 0.060 居間 0.054 0.038 0.053 0.061 0.068 0.048 0.04 0.044 0.043 0.055 0.050 トイレ 0.064 0.057 0.072 0.07 0.066 0.055 0.041 0.053 0.059 0.071 0.061 洗面所 0.043 0.033 0.082 0.069 0.06 0.057 0.044 0.053 0.061 0.084 0.059 台所 0.059 0.034 0.063 0.052 0.056 0.056 0.04 0.05 0.049 0.047 0.051 浴室 0.041 0.043 0.077 0.078 0.065 0.069 0.026 0.068 0.069 0.057 0.059 単位(μSV/h) 【結果と考察】 自宅内で放射線が測定されない場所はなく、また、その放射線量も場所によって様々であった。放射線は人工的に発生 させなくても、自然に存在していることがあらためてわかった。それぞれの場所によって様々な値が出たが、ある生徒は、 玄関は高い値を示したが、玄関近くの居間は低い値を示したので、玄関の空間の狭さや玄関の床の石やコンクリートが関 係しているのではないかと考えた。その理由として放射線は閉ざされたところで壁に反射しながら存在していること、玄 関の床の石やコンクリートから放射線が放出されていることが考えられると述べていた。 さらに、同じ玄関や風呂等で の放射線量を比較したところ測定値に差が見られた理由として、玄関や風呂の床・壁のタイルや石の量、種類の違いが放 射線量に関係しているのではないかと考える生徒がいた。自宅内での放射線量を測定することにより、身のまわりに存在 する放射線に目を背けることなく、放射線について正しく理解していこうとする姿がこれからの私たちにとって大切なこ とであり、新しい発見につながると考える。さらに中学校校舎内外での放射線量はどうかという疑問が生じ、クラス全員 で同じ校舎内外の様々な場所を測定することとした。 ④天龍中学校の校舎内のγ線放射線量を測定する。 校舎内の1階、2階、3階の各教室と廊下やトイレ、職員玄関や生徒昇降口などをはかるくんDX-300で測定。各 場所で1分間5回測定し、5回の平均値を算出した。単位はマイクロシーベルト毎時(μSV/h)。結果を以下に示した。

(5)

5 【結果と考察】 ・3階廊下より2階廊下、2階廊下より1階廊下の方が放射線量は多かった。これは、1階廊下の方がコンクリートで四 方を囲まれている割合が多いからと考えた。コンクリート内の石が関係していると考えられる。 ・コンクリートからは放射線の中でも主にγ線が放出されていることが資料からわかった。 ・職員玄関と生徒昇降口が1階の中でも高い値になった。これは、床の岩石(みかげ石)が放射線を出していると考えら れる。みかげ石は花崗岩であり、ウランやカリウムなどの自然放射性物質が多く含まれていることが資料などから調べる と分かった。 ・普通教室では放射線量が低かった。階段付近や廊下、部屋が狭く、教材教具や設備のある教室は放射線量が高い。校舎 の1階ほど放射線量が高く、高い階ほど低い傾向がわかった。さらに、各教室によって放射線量の数値が違うことがわか った。これは、地表からの距離や換気状況、器具や設備の影響によるものと考えた。 ・2階、3階の階段がその階の中でも多くの放射線量が計測されたが、階段はコンクリートでできており、四方がコンク リートで囲まれていることも放射線量が多くなった原因と考えられる。 このように、生徒たちは測定データを収集することは、その分布の傾向がわかり、おもしろさを実感していった。次に、 学校の校舎外、学校の敷地内の放射線量を計測し、天龍中学校の放射線量を調査研究していった。

(6)

6 ⑤天龍中学校の校舎外、学校敷地内のγ線放射線量を測定する。 校舎外の周辺、校庭、プール、天龍川などをはかるくんDX-300で測定。各場所で1分間5回測定し、5回の平均 値を算出した。単位はマイクロシーベルト毎時(μSV/h)。結果を以下に示した。 【結果と考察】 ・校歌碑が高い値を示した。校歌碑が黒みかげ石(花崗岩)からできていて多くの放射線を出していると考えられる。 ・池の周りでも高い値が出た。これは、池の周辺の石垣の岩石から放射線が出ていると考えられる。 ・池の周辺には岩石があるが、池の水によって埋まっているものもある。池の水面上は値が少ない。これは、池の水が岩 石から出ている放射線を遮っていることが考えられる。 ・天龍川の岩石も高かった。岩石の種類(主に花崗岩)によっても比較していきたい。 ・学校校舎外でも自然に存在している自然放射線の測定を行った。校庭の西側より東側のほうの放射線量が多かった。そ の理由として、校庭東側には石垣があり、岩石からの放射線が原因として挙げられる。 ・校門の放射線量は多いと予想していたが、校歌碑よりも低い値を示した。校歌碑の下の砂利石も校歌碑と同程度の放射 線量が測定された。 ・職員玄関前や池周辺には石垣があるので、石垣の岩石からの放射線量が影響していると考えられる。 ⑥校舎内外、学校敷地内の天龍中学校γ線放射線分布マップをつくる。 ・校舎内外、学校敷地内の放射線をはかるくんで測定した結果をわかりやすくまとめるように、天龍中学校γ線放射線分 布マップを作成した。以下に分布マップを示す。赤枠の測定値が校舎外、青枠の測定値が校舎内とした。 ・一人で測定する場所は10カ所程度であたったが、クラス全員が測定したことで100カ所以上の場所を測定すること ができた。

(7)

7 天龍中学校校舎内外のγ線放射線量分布マップ ⑦夏の健全育成行事「親子理科体験学習」で和知野川キャンプ場でのγ線放射線量を測定する。 親子で天龍村を流れる和知野川の河原、キャンプ場周辺をはかるくんDX-300で測定。各場所で1分間5回測定し、 5回の平均値を算出した。単位はマイクロシーベルト毎時(μSV/h)。結果を以下に示した。 【結果と考察】 ・花崗岩とわかる岩石は0.1以上でどれも値が高かった。 ・河原の石、焼き肉で使った炭の周りの石など、キャンプ周辺の石は比較的にどれも高い値を示した。 ・川の水面は0.06と値が低い。炭そのものは0.08程度であった。 ・キャンプ場の草地の上は0.08程度であった。また、砂は0.1以上と高かった。 ・日陰(0.065)は日なた(0.066)と値があまり変わらなかった。 ・樹木(0.088)と枯れた木(0.089)でも値はあまり変わらなかった。

(8)

8 ・和知野川キャンプ場の砂も放射線量が多いことがわかった。砂は鉱物(結晶状の粒)であり、1年生の時の大地の変化 の学習でも岩石は鉱物のあつまりであることを学習した。このことから岩石の違いによっても放射線量は異なると思う。 ・天龍村史上巻の「地形と地質」によると天龍村の花崗岩は「神原花崗岩」、「天竜峡花崗岩」、「生田花崗岩」、「門島花崗 岩」に分けられる。神原花崗岩は天龍村内の国道418号線沿い浄心の滝で見られる。また、生田花崗岩は和知野川沿い で見られ、鉱物である石英があめ色になっていて、鉱物が風化してバラバラになるのが特徴。この風化したバラバラの鉱 物が砂であると考えた。だから砂の放射線量が多いことがわかった。 ・花崗岩を川の中に入れて測定してみると、測定値が下がることから、放射線は水によって遮ることができることがわか った。また、距離を遠ざけるほど測定値も下がることもわかった。このことから、放射線の物質による通りやすさや反射、 距離によっても強さは違ってくると考える。 ⑧いろいろな食品に含まれるβ線放射線量を測定する。 食品(乾物を中心)をはかるくんⅡで測定。1分間5回測定し、5回の平均値を算出した。食品のβ線を測定。単位は カウント毎分(cpm)。結果を以下に示した。 【結果と考察】 ・乾燥した食べ物は水分が少なく、乾燥重量として測定できる。また、食品に塩化カリウム(カリウムを含む)が含まれ ている量が多いほど放射線量も多い。主に乾物、海産物を中心に測定した。 ・特定保健用食塩(低ナトリウム塩)は高血圧症の方のための食塩である。通常の食卓塩(主に塩化ナトリウム)より塩 化カリウムの割合が多い。そのため放射線量が多いこととなった。 ・真昆布のほうが日高昆布より値が高くなったのは、昆布の表面に付着している白い物質が真昆布のほうが多く、この白 い物質に塩化カリウムが多く含まれている。昆布の成分にも違いがあるのではないかと考えた。

(9)

9 ・乾燥海産物でもひじきにはカリウムが多く含まれていることがわかった。 ・放射線量が多いと言われているがん治療の温泉療法で有名な秋田県玉川温泉の湯ノ花を測定したところ120もあった。 ・食品に含まれている塩化カリウムの割合が多いと放射線量も大きくなることがわかった。 ⑨放射線の種類と、放射線の物質による通りやすさや反射、距離による強さの違いについて測定する。 【物質によるβ線放射線数の測定】 ○測定試料検討について ・マントルの芯 キャンプの際の灯りに使用されるランタン。このランタンに使用するマントルの芯は市販されていて、その芯には放射 性物質である「酸化ナトリウム」が含まれている(放射性物質を含まないマントルの芯もあった)。この酸化ナトリウム にはα、β、γのそれぞれの放射線が放出されている。 ・船底塗料(添加剤) 船の底にフジツボなどの貝類や海草が付着するのを防ぐために塗料に添加する材料。この添加剤には、トリウム(Th232) を含んでいるものがある。このトリウム系列から出る放射線はイオンをつくり(電離作用)、微生物や海草を寄せ付けない。 ・低ナトリウム塩 一般に「塩」というと塩化ナトリウムを指すが、高血圧の方のために、塩分を控える目的で塩化ナトリウムの代わりと して、塩化カリウムが使われる。測定試料として使った低ナトリウム塩は、100g あたり塩化カリウムが 26.3g、塩化ナト リウムが 48g 入っているものを使用した。 ・湯ノ花 ラドン温泉の一つである秋田県玉川温泉の湯ノ花(温泉成分が固まったもの)を使用した。湯ノ花には、トリウム系列、 ウラン系列などの放射性物質が含まれている。 ・カリ肥料 植物を育てるためには肥料が必要である。「窒素、リン酸、カリウム」は肥料の3大要素とも言われ、特にカリウムは 根の成長を助ける。放射線はそのカリウムの中にあるカリウム(K40)から出ている。 ・花崗岩(御影石) お墓の石や建材(記念碑、玄関、敷石、台所の天板のなど)によく利用されている。トリウム系列、ウラン系列、カリ ウム(K40)など様々な放射性物質が含まれている。 物質によるβ線放射線数をはかるくんⅡで測定。1分間5回測定し、5回の平均値を算出した。単位はカウント毎分 (cpm) 結果を以下に示した。

(10)

10 【結果と考察】 物質によるβ線放射線数を測定したところ、船底試料、マントルの芯が高い 値を示した。放射線の物質による通りやすさ(遮蔽)や反射、距離による強 さの違いについて測定するために、放射線源として船底塗料(粉末状)をサ ンプル瓶に入れたものを使用することにした。 【放射線源からの距離によるβ線放射線数の強さ】 距離によるβ線放射線数の強度をはかるくんⅡで測定。放射線源からの距 離を遠ざけていき、それぞれの距離で1分間5回測定し、5回の平均値を算 出した。単位はカウント毎分(cpm)。結果を以下に示した。 【結果と考察】 距離によるβ線放射線数の強さを測定したところ、放射線の強さは放射線源から離れれば離れるほど弱まっていくこと が分かった。15cm離れただけで、密着して測定した場合のほぼ10分の1の値になることがわかった。放射線の強さは線源 からの距離の2乗に反比例していく。放射線の源から100メートル離れると1メートルのところにいる時に比べて、放 射線の影響は1万分の1になる。放射線が明らかに自然放射線よりも高いレベルで存在している場所(放射線施設など) での作業において、作業者の放射線被ばく量を少しでも少なくするために、距離をおいて作業していることがわかった。 また、放射線源を動かす必要があるときは「はさみ」などの道具を使って被ばくを減らしていることがわかった。 【放射線源からの放射線を物質によって遮へいしたときのβ線放射線数の強さ】 線源からの放射線を物質によって遮へいしたときのβ線放射線数の強度をはかるくんⅡで測定。距離を 5cm、10cm と線 源から離して、それぞれの厚さの鉛板、アクリル板、ステンレス板、アルミニウム板で遮へいし、1分間5回測定し、5 回の平均値を算出した。単位はカウント毎分(cpm)。結果を以下に示した。

(11)

11 【結果と考察】 線源からの放射線を物質によって遮へいしたときのβ線放射線数の強度を測定したところ、鉛板>ステンレス板>アル ミニウム板>アクリル板の順で放射線を遮る力が大きかった。物質の素材によって放射線の遮へい力が違うことがわかっ た。遮へいの厚さは 5mm までは厚さが増せば増すほど放射線を遮る力がどんどんと大きくなったが、5mm 以上では放射線 を遮る力が緩やかになっていった。物質の厚さが増せば放射線の遮へい力が大きくなることがわかった。また、線源から の距離を 5cm で行った場合は物質の違いによって放射線の遮へい力に有意な差が見られたが、線源からの距離が 10cm で は厚さ 5mm 以上では放射線の遮へい力に大きな影響があまり見られなかった。 【放射線源からの距離と遮へいによるβ線放射線数の強さ】 線源からの距離と物質による遮へいをしたときのβ線放射線数の強度をはかるくんⅡで測定。距離を 5cm から 30cm ま で線源から離して、鉛板、アクリル板、ステンレス板、アルミニウム板(厚さ 5mm と 10mm)で遮へいし、1分間5回測定 し 、 5 回 の 平 均 値 を 算 出 し た 結 果 を 以 下 に 示 し た 。 単 位 は カ ウ ン ト 毎 分 ( cpm )

(12)

12 【結果と考察】 線源からの距離と物質による遮へいをしたときのβ線放射線数の強度を測定したところ、線源からの距離が遠ざかるほ ど明らかに放射線量がどの遮へい物質で遮蔽しても少なくなることがわかった。特に鉛板は線源からの距離に反比例する 結果が顕著であった。鉛板は放射線を遮へいするのに有効な手段である。レントゲンを撮るときに身体に重いものを装着 するが、それは鉛でできていることがわかった。例えば歯科で歯のレントゲンを取るときには放射線を歯だけに照射すれ ばよいので、他の身体の部分は鉛によって遮へいして放射線を受けないようにしているということがわかった。 このように、遮へいの方法は放射線の種類に依存することがわかった。調べてみるとα線は空気中を数センチしか飛べ ず、うすい紙で止められる。β線は高速で飛ぶがアルミニウムなどの薄い金属板で止められる。γ線やX線はテレビや携 帯電話の電波と同じ仲間で、鉛や厚い鉄の板で止められる。中性子線は鉄の板は通り抜けてしまうが、水やコンクリート で遮へいされることがわかった。放射線の種類によって、どんな物質を通り抜けられるのかが違うことが理解できた。 放射線から身を守る基本は「さえぎり、距離、時間」の3原則がある。放射線を正しく使用し、放射線による被ばく量 を低減させることが大切なことがわかった。放射線の種類と、放射線の物質による通りやすさや距離による強さの違いに ついて調査研究できた。 ⑩空気中に含まれている放射性物質の放射線量を測定する。 集じん用フィルター(ろ紙)などを通して大量の空気を吸引し、フィルターの表 面に付着した細かい塵を集めることとした。財団法人放射線計測協会よりダストサ ンプラー(集じん機)を借りた。ダストサンプラーを2年教室、理科室、倉庫内(薬 品庫)にそれぞれ置き、3時間吸引させて塵をフィルターに捕集した。捕集後はか るくんⅡの検出器の放射線入射窓にフィルターを近づけて測定した。1分間5回測 定 し 、 5 回 の 平 均 値 を 算 出 し た 。 単 位 は カ ウ ン ト 毎 分 ( cpm ) 。

(13)

13 【結果と考察】 倉庫(薬品庫)が最も多くの放射線物質を測定することができた。倉庫はコンクリートで囲まれた部屋であり、また、 人の出入りも薬品を取りに行く以外になく、閉ざされた場所であることが原因である。ダストサンプラーでろ紙に集塵さ せると、ろ紙に付着した自然の放射性物質(コンクリートの壁材に含まれたトリウムから室内に放出されたラドンの壊変 生成物)の放射線が測定されるためであることがわかった。また、空気中には放射能をもつ気体であるラドンやトロンが 微量に含まれている。理科室も438cpm と高い値となったのは、理科室もコンクリートの壁材で囲まれていて、授業以 外に人の出入りが少ないことが原因として考えられる。それに比べて2年教室は毎時間人の出入りが多く、換気もされて いるので低い値が示されたものと思われる。また、各場所のろ紙を1時間後に再度、放射線数を測定したところ、50cpm 以下となった。このことはラドンの壊変生成物は半減期が1分程度であり、1時間もすればほぼバックグラウンド値に近 づいてしまうことがわかった。このろ紙を小さく切って、霧箱や他の測定用の線源とすることも可能である。 ⑪長野県を縦断し、県内最南端天龍村から県庁所在地長野市善光寺までの大地によるγ線放射線量を測定する。 長野県最南端の地、下伊那郡天龍村から長野市善光寺までの大地によるγ線放射線量(地上1m、車中で移動しながら 測定)をはかるくんⅡで測定した。単位はマイクロシーベルト毎時(μSV/h)。結果を以下に示した。 【結果と考察】 天龍村役場から和知野川河口(天龍村北部)までは相対的に高い値を示した。これは天龍村史上巻の天龍村地域の地質 概略図によると天龍川流域で県道1号飯田富山佐久間線沿いは花崗岩類が見られ、花崗岩にはウランやトリウム、カリウ ム-40などの多くの種類の放射性物質が含まれていることに起因すると考えられる。また、断崖上の大蛇パークあたり

(14)

14 の岩壁は全面的に新期の花崗岩が露出しているために県道1号線でも最も高い値を示した。天龍村を出てから阿南町に入 り、大下條小学校での測定は低い値を示した。これは阿南町は第三紀層が広く分布しており、泥岩・砂岩・礫岩・凝灰岩・ 火山砕屑物に放射性物質が少ないことに原因があると考えられる。また、高速道路でのトンネル内ではどこも放射線強度 が高い値を示した。これは、トンネル内がコンクリートで造られていることで、コンクリートに含まれる岩石からの放射 線量が多いこと、閉ざされた空間であり、放射線が反射して測定器に飛び込んでくることが考えられる。また、トンネル が花崗岩の山を貫いて造られたことも原因として考えられる可能性もある。長野市善光寺での測定が市街地でも値が高い 傾向になったのは、善光寺の石畳の敷石が花崗岩でできているためと思い調査したところ、敷石は善光寺の西裏手にある 郷路(ごうろ)山で採れた火山岩の一種、安山岩(表面には角閃石と輝石の細かな黒い鉱物が見られる)であることがわか った。そして長野市郊外より市街地の方が高い値を示していったことは、市街地ではコンクリートで造られた建造物が多 く、そこに含まれる岩石からの放射線量が多いことが原因と考えられる。 ⑫天龍村の十方峡トンネル内部のγ線放射線量を測定する。 高速道路でのトンネル内の放射線量が高かったので、天龍村の十方峡トンネル内部のγ線放射線量(地上1m、徒歩で 移動しながら測定)を測定した。単位はマイクロシーベルト毎時(μSV/h)。結果を以下に示した。 【結果と考察】 トンネル内のγ線放射線量を50mごとに測定した。トンネルに入った直後に放射線量は上がった。トンネル内は大き な変動は無く、出ると放射線量は下がった。トンネル中央部で最高値を示すと考えていたが、このような結果を得ること ができた。コンクリートは放射線を遮へいすることを放射線の物質による遮へいで分かったが、コンクリート自身も放射 線を放出している。閉ざされた空間では放射線の反射があり、測定器で検出される放射線量の増加にも影響を与えている と考えた。 ⑬天然の放射能鉱物標本と天龍村の岩石(主に花崗岩)を比較して、それらの放射線量を測定する。 天然の放射能鉱物標本のβ線放射線数ならびにγ線放射線量をはかるくんⅡで測定。1分間5回測定し、5回の平均値 を算出した。単位はβ線の場合はカウント毎分(cpm)、γ線の場合はマイクロシーベルト毎時(μSV/h)。 結果を以下に示した。 ○測定試料について ・ユークセン石:ウラン及びトリウムを含む。 ・褐レン石:花崗岩ペグマタイト中にしばしば含まれる。セリウムを含む緑レン 石の一種。 ・ベタフォ石:花崗岩ペグマタイト中に産す。 ・タンタル石:ペグマタイト中に見いだされる。 ・北投石:台湾の北投温泉で発見された放射性温泉の沈殿物。重晶石と類質同像。 秋田県玉川温泉産出。

(15)

15 【結果と考察】 天然の放射能鉱物標本のβ線放射線数ならびにγ線放射線量を測定したところ、β線、γ線ともユークセン石>ベタフ ォ石>褐レン石>タンタル石>北投石の順で高い値を示した。特にユークセン石はβ線 3840cpm、γ線 2.435μSv/h と高 い値を示した。これらの放射能鉱物は、ウラン(U)やトリウム(Th)を成分として多く含んでいる。ウランやトリウムの ような放射性元素と呼ばれる元素が壊れて(放射性崩壊)別の元素に変わるときに放射線を出す。この崩壊は時間に応じ て一定の割合で起こる。よって、成因に大きな違いがなく、各花崗岩中の放射性鉱物の含有量が同じならば、放射線量が 小さいほど古い年代にできた花崗岩であることが調査できることや、各花崗岩体中に含まれる放射性鉱物を特定するため に薄片標本を作製し、岩石顕微鏡で放射性鉱物を同定するという報告もされている。 天龍村の花崗岩は「神原花崗岩」、「天竜峡花崗岩」、「生田花崗岩」、「門島花崗岩」に分けられる。神原花崗岩は国道4 18号線沿い浄心の滝で見られ、γ線放射線量は0.102μSv/h であった。また、生田花崗岩は和知野川沿いで見られ、 0.113μSv/h であった。神原花崗岩の年代測定はモナザイトやジルコンによるチャイム法で約9500万年前、生田 花崗岩は8500万年前と推定されている。このことから、形成年代が古い神原花崗岩のほうが、生田花崗岩より放射線 量が小さい結果となったと考えている。

(16)

16 ⑭実際に目に見えない放射線を中型または簡易霧箱で観察する。 (1)中型霧箱での観察 【実験準備】 ・中型霧箱(中に黒紙、エタノールをしみこませるスポンジが備わっている) ・エタノール ・大型ライト ・粉末ドライアイス 【実験方法】 ①ガラス板をとり、スポンジにまんべんなくエタノールをしみこませる。 ②ガラス板を閉じ、ドライアイス上に霧箱を乗せる。 ③ライトで容器内を観察する。(自然放射線の観察の場合) ④マントルをシリンジに入れ、シリンジの中の空気(ラドンガス)を注入して観察する。(ラドンガスからの放射線観察) 【結果と考察】 ①自然放射線の観察 部屋を暗くし、ライトを点灯して、ガラス容器内を照らすと自然放 射線の飛跡が見られる。これは建物のコンクリートや地中に微量に含 まれているウランやトリウムがラドンとなって室内に漂い、それが霧 箱内にあり、放射線を出している。 よく見えて太い線の飛跡がα線、細かく縮れた髪の毛のように見え る飛跡がβ線である。普段見ることができない放射線の飛跡を見るこ とで、常に私たちは放射性物質を含んだ空気を吸っていきていること が分かる。あまり、飛跡が確認されない場合は、塩ビパイプをタオル などでこすって静電気を起こして、ガラス板上を数回移動させると、 ガラス容器内のイオンを除去し、鮮明な飛跡が見られる。 ②ラドンガスからの放射線の観察 キャンプなどで用いるランタン、その芯にあたるマントルはごく微 量のトリウムが含浸してある。そのマントルをシリンジに入れ、シリ ンジ内の空気(ラドンガス)を注入して観察すると、非常に多くの飛 跡が見られる。角度や方向でさまざまであるが、V字型の飛跡が見ら れる。これはラドン220がα線を出してポロニウム216になり、 すぐにα崩壊をして鉛212になる様子を観察していることになる。 ポロニウムの半減期は0.145秒と非常に短いので、1カ所から2 本のα線が飛び出ているように感じる。また、ラドンの半減期は55. 6秒であり、1分後にははじめに見られた本数より半分の飛跡が見ら れた。 (2)簡易霧箱での観察 【実験準備】 ・プラスチックシャーレ1個 ・黒紙(プラスチックシャーレに入るように丸く切っておく) ・エタノール ・隙間テープ(スポンジつき) ・線源(ユークセン石)

(17)

17 ・小型ライト ・固形ドライアイス 【実験方法】 ①シャーレのフタをとり、黒紙、隙間テープの順にいれる。 ②隙間テープのスポンジ上面全周にエタノールを滴下する。 ③線源を黒紙の中心に置き、フタをする。 ④シャーレをドライアイスの上に乗せる。 ⑤ライトで線源の周囲を照らす。(シャーレ側面の隙間テ ープの切れている部分から照らすと見やすい) ⑥部屋を暗くして、放射線の飛跡を観察する。シャーレ上 面が曇ってきたら、ガーゼで曇りを取る。 【結果と考察】 ・プラスチック容器のフタをして、しばらくするとユークセン石からα線の飛跡が見られる。これ以外にもウラン鉱でも 放射線の飛跡が確認されることがわかった。ユークセン石は半永久的に放射線を出し続けている。 ・放射線が飛んだ跡が白い線のようになって見えた。飛行機雲みたいだ。スッと線がいくつも見られる。 ・マントルから放射線が出ているのが見られるなんて凄い。とても幻想的で放射線にみとれてしまった。 ・糸のように太く短いものが飛跡している。不規則に線源から飛んでいる。白い線は四方八方に飛んでいる。 ・白い線は短かったり、長かったりする。飛行機雲もこのようなしくみでできることがわかった。 蒸発した気体(蒸気)が冷却されると飽和状態よりさらに気体(蒸気)が多く存在する過飽和状態になる。過飽和状態 の気体は、わずかな刺激で液体(霧状)になり、微細な浮遊塵を核として視認できるほどの液滴に成長する。これがジェ ット機の通過後に見られる飛行機雲である。この原理を用いて放射線の通過した跡を観察するのが霧箱である。α線やβ 線など電荷をもつ放射線は、電離作用により空気中の酸素や窒素の分子や原子をイオン化させる。過飽和状態の空間でイ オン化の状態が生じたとき、このイオンを微少な核として気体分子が集まり、目に見えるような水滴状粒子にまで成長す る。この水滴はα線やβ線の通過した跡にできるので、これらの放射線の飛跡に沿って細い線のように見える。この霧箱 は、ウィルソン(英国)が発明し、1927年にノーベル物理学賞を受賞している。 9 研究のまとめと今後の問題 実際に生徒とともに研究を進めていくと、生徒自身の放射線に対する考え方が大きく変容していく姿が顕著に見ること ができた。ある生徒は「放射線ってはじめは怖いイメージばかりあったが、今は放射線をうまく利用して生活や医療、様々 な分野で有効利用できるようにした人類はすごいと思う。良くも悪くもするのは人間だ」と感想を残した。また、ある生 徒は放射線なんて目で見えると思わなかった。目で見られない放射線を見られたことで、これからの理科の授業でも見方 を変えて実験をしていきたいと意欲を見せた。こうした主体的な生徒たちの取り組みが、今まで知らなかったことを自分 たちの力で発見した楽しさも加わり、多くの生徒に放射線に対する興味関心を高めることができたと考えている。このよ うな研究をしたことにより生徒たちに理科の楽しさや科学の不思議さなどを体得させていきたい。また、放射線教材の有 効な授業への活用の仕方はどうすればよいかさらに検討し、指導者自身の放射線に関する指導力も研修を積み重ねて向上 させていきたい。本研究から手軽に放射線を調べられることができ、そこから見いだされた新たな発見や事実に触れるこ とから生まれる興味関心を生徒たちに引き出すことができた。さらに調査活動として、天龍村の花崗岩「神原花崗岩」、「天 竜峡花崗岩」、「生田花崗岩」、「門島花崗岩」の露頭の位置を多く確認し、採取した花崗岩について放射線量を測定する。 その後、報告されている推定年代と放射線量の比較を行っていきたいと考えている。現在、生徒たちは身のまわりの医療 や食品、工業分野での放射線利用についてレポートを作成している。また、放射線のような目に見えない線(紫外線など) や赤外線、可視光線などいろいろな電磁波についても興味関心を抱いているのでさらにそのような分野でも調査研究活動 をしていきたいと考えている。

(18)

18 10 謝辞 本研究推進にあたり、財団法人 長野県学校科学教育奨励基金には奨励金を交付いただいたり、放射線利用振興協会に は測定器具など様々な支援を頂いたりして、本研究活動ができましたことをこの場をかりて深謝いたします。有り難うご ざいました。 11 生徒たちの放射線学習を通しての感想 ・放射線のことを何も知らずに始めたこの研究ですが、実際に自宅や学校にも存在しているなんて思わなかった。 ・食品に放射性物質が含まれていて、特に昆布のような海藻類に多いことがわかった。海藻には海水中のカリウムのよ うな放射性物質が吸着されて、濃縮していくので放射線が検出される。放射性物質を食べて体内に取り入れているこ とは知らなかった。 ・放射線と聞いて、なんだか恐ろしくて危ないというイメージでしたが、実際に放射線を測定してみると、とても私た ちにとって放射線は日常生活で有効利用されていることに気づいた。レントゲンなどは放射線が使われていることが 今までわかっていましたが、物質の厚さを正確に計測したり、ジャガイモに放射線を照射させて芽を出さないように していたりする。工業や食品の分野でも放射線が使われていたりする。 ・放射線について正しい知識を身につけていくことが必要と感じました。興味がなかったのが実験をやっていくうちに 段々と興味が出てきました。 ・クラスみんなで実験をしていくことは楽しいです。実験データをそろえていくことは大変でしたが、しっかりと表や 図を使ってまとめていくと調査した結果からわかってくることがいっぱいあった。 ・放射線を見られるなんて思いもしなかった。飛行機雲のようなものでしたが、とてもきれいでした。放射線が飛んで いる線や方向などバラバラでしたが、確かに放射線を目で見ることができて嬉しかったです。 ・花崗岩には放射線を出す鉱物が含まれていることがわかったので、どの鉱物が放射線をいっぱい出しているのかさら に知りたくなった。 12 参考文献 ・天龍村史 上巻 下巻 ・伊那谷自然史論集7:9-14,2006 伊那谷の各花崗岩に含まれる放射性鉱物と自然放射線の特徴 ・放射線・放射能の基礎 学校における放射線に関する学習指導の手引き NPO法人放射線教育フォーラム ・中学校学習指導要領解説 理科編 平成20年9月 ・原子力体験セミナー 霧箱による放射線飛跡の観察 (財)放射線利用振興協会

参照

関連したドキュメント

子炉施設保安規定(以下「保安規定」という。)又は「原子炉等規制法」第

※:図中の実線は、文献 “Estimation of the Inventory of the Radioactive Wastes in Fukushima Daiichi NPS with a Radionuclide Transport Model in the Contaminated Water”,

3月 4月 5月

特定原子力施設内の放射性廃棄物について想定されるリスクとしては,汚染水等の放射性液体廃

粒子状物質 ダスト放射線モニタ 希ガス ガス放射線モニタ 常時 2号炉原子炉建屋. 排気設備出口 粒子状物質 ダスト放射線モニタ 常時

粒子状物質 ダスト放射線モニタ 希ガス ガス放射線モニタ 常時 2号炉原子炉建屋. 排気設備出口 粒子状物質 ダスト放射線モニタ 常時

滞留水に起因する気体状の放射性物質の環境への放出低減のため地下開口部を閉

に1回 ※3 外部放射線に係る線量当量 放射線防護GM 1週間に 1 回 空気中の放射性物質濃度 放射線防護GM 1週間に 1 回 表面汚染密度 放射線防護GM 1週間に