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(1)

好塩性酵素の探索と諸性質解析

著者

峯岸 宏明

著者別名

MINEGISHI Hiroaki

雑誌名

工業技術

40

ページ

55-58

発行年

2018

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00009581/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

***技術報告***

好塩性酵素の探索と諸性質解析

Isolation and characterization of halophilic enzymes 峯 岸 宏 明 女

2. 2

寒 天 分 解 酵 素 寒天分解酵素アガラーゼは、その切断部位の結合様式 からαーアガラーゼと

3

・アガラーゼに大別される。 αー アガラーゼはα.1,3結 合を切断し、還元末端側に、 6. アンヒドロー

L

-

ガラクトースを有するアガロオリゴ糖を 生成する。一方、。ーアガラーゼはアガロースの

s

-1

4 結合を加水分解し、還元末端側に

D

-

ガラクトースを有 するネオアガロオリゴ糖を生成する。

0

・アガラーゼに より生産されるネオアガロオリゴ糖は免疫機能活性化、 メラニン生産抑制、静菌作用、腫 療抑制剤、保湿剤、デ ンプン老化防止など医薬化 粧品原料や高機能性食品と しての応用化が模索されている。 1

.はじめに

日本独自の発酵食品である味噌、 醤油、 漬物などは塩 を多量に含んでおり、非好塩菌による腐敗を防ぐと共に、 耐塩菌や好塩菌による限定分解により独特の風味を醸 し出す。塩は日本独自の発酵産業にとって大変重要で欠 かせないものであり、好塩性微生物、特に市販塩中に多 く存在すると考えられる高度好塩菌は日本人にとって 大変身近な微生物である。高度好塩菌は増殖に2.5 M以 上のNaClを要求する微生物であり、その多くは古細菌 に分類される。高度好塩菌の生産する酵素の多くは耐 熱 性、有機溶媒耐性などの'性質を持つ物が多く、様々な条 件下で利用が期待されている。また、解析例が少ないた め新規配列や新規反応の発見が期待できる。本研究では 市 販 塩か ら 分 離 し た 新 規 好 塩 性 古細 菌 Halococcus 2 . 3 寒 天 分 解 酵 素 生 産 菌 agarilyticus197 A株が生産する超耐熱性好塩性

3

・ア グ、ルコースを構 成 糖とする多糖類を分解する生物は ガラーゼについて報告する。 陸上、海洋問わず広く検出されているのに対し、寒天を 分 解 す る 生物 は稀 少 である。既 知 のア ガ ラ ーゼ は

2.

寒 天 分 解 酵 素

2. 1

寒 天 寒天はテングサやオゴノリ等の紅藻類の細胞壁成 分で あり、ゲノレ櫨過クロマトグラフィ一、 DNA電気泳動に おける分子ふるい、微生物培養のゲ、ノレ化剤などとして幅 広く利用されている。寒天の主成分であるアガロースは 3, 6-アンヒ ドローL-ガラク トースと D-ガラク トースが 交互にα-1,3結合および

s

-1

4結 合して形成された多 糖類である(図 1)。

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A

5

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図1 アガロースの基本構造

Acinetobacter、Agarivorans、A1teromonas、Bacillus、 Cytophaga、Microbulbjfer、Pseudoalteromonas、 Pseudomonas、Salegentibacter、Thalassomonas、 Vibrio、Zobelliaなどの海洋性環境に分布する微生物や 軟体動物、紅藻類から分離されている。 また、微生物に 限るとグラム陰性の細菌に限られており、これまで古細 菌からの分離報告例はなかった。

3.

実験方法

3. 1

ア ガ ラ ー ゼ 生 産 菌 の 分 離 好 塩性アガラーゼ生産菌はJCMNo.169培 地 (NaCl 250.0 g/L,カザミノ酸 0.75g/L,酵母エキス 1.0g/L, クエン酸三ナトリウム 0.3g/L, KCl 2.0 g/L,硫酸マグ ネシウム七水和物 20.0g/L,硫酸鉄(II)四水和物 0.05 g/L, 0.2 mg硫酸マンガン四水和物,寒天 20.0g/L,pH

(3)

好塩性酵素の探索と諸性質解析 Isolationandcharacterization of halophilic enzymes 峯岸宏明 7.2)を使用して分離した。約300種類の市販塩 (天日 塩、岩塩など)を5%食 塩水に溶解したサンプルを培地 に塗布し、 370Cで2ヶ月間培養した。寒天分解活性は 目視による寒天分解斑の確認により行った。陽性と疑わ れた株についてはヨウ素液をかけて寒天を染色し、寒天 の加水分解で生じた還元糖による非染色領域を形成し たものをアガラーゼ生産菌として取得した。

3. 2

アガラーゼ生産薗の分類同定 取得したアガラーゼ生産菌からDNAを抽出し、PCR 法にて増幅した 168rRNA遺伝子の塩基配列解析によ り、近縁種の推定を行った。また、 Orenらによる i Minimal standardsfor the descriptionsofnew taxain theorder HalobacterialesJに従い、各種同定試 験(コロニー形態・細胞形態の観察、最適増殖温度試験、 最適増殖pH試験、最適増殖NaCl濃度試験、嫌気条件 下での生育、硝酸塩・亜硝酸塩還元能の確認、単一炭素 源および複合基質の資化性試験、カタラーゼ・オキシダ ーゼ活性の確認、硫化水素生産能の確認、インドーノレ生 産能の確認、運動性の確認、加水分解能の確認、抗生物 質感受性試験、極性脂質解析)を行った。

3. 3

酵素活性測定と精製 アガラーゼの活性測定は DN8法 (Dinitrosalicylic acid法)による還元糖の定量によって行った。反応液 の組成は緩衝液を含むアガロース基質 的Oμl、酵素液 100 j.tlとし、基本の反応条件は750C、15分とした。反 応後の溶液に 1mlの DN8試 薬を加えて混合して 1000C、5分間の加熱により発色させ、冷却後に4.0ml の蒸留水を加えて希釈し、分光光度計により波長 535 nmの吸収を測定した。 197A株からのアガラーゼ、の精製は下記の方法で、行っ た。197A株を定常期まで培養し、その培養上清を回収 した。得られた培養上清はPhyenyl-TOYOPEARL650 カ ラ ム に よ り 精 製 を 行った。 分 子 量の推 定は 8D8-PAGEおよびゲ、ル櫨過クロマトグラフィーにより {1'った。

4.

実験結果

4. 1

アガラーゼ生産薗の分離・同定結果 市販塩約 300種類を用いてスクリーニングを行った 結果、フィリピン産およびイタリア産の市販塩からそれ ぞれ1株ずつアガラーゼ生産菌を分離できた (図 2)。 分離株62Eおよび197Aの168rRNA遺伝子塩基配列 解析の結果、両株の相同性は100%であり、 同種である こと が 推定 さ れ た。また、 これらは Halococcus saccharolyticusと最も近 縁 で あ り 、 その相向性 は 99.7%で、あった(図3)0DNA-DNAハイブリダイゼー ションを行った結果、両株はHalococcus属全種に対し その相同値が50%以下であったため、 Halococcus属の 新種であることが示唆された。62Eおよび197A株の増 殖最適NaCl濃度は27%であり、 Halococcus属で最も 高かった。また、Halococcus属で唯一アガラーゼ生産 可能で、あり、その他の性状も既知種と異なっており、こ れらの結果から新種Halococcusagarilyticusとして提 唱した。分離した2株のうち、活性の高かった197A株 由来のアガラーゼを研究対象とした。 図2. 197A株のコロニーと寒天分解斑 凶 包4 TlultJ(υn'lI、qt.認d劇 場 倒 的J仁川135117'(、UM Htt9) III1W cdCj拙.'xJl(lHfI'lIlI柑抽.IC.¥t12榊'2'(A蜘 日 刊η /llIlflnl(('削MlUhllrtJ

J

u‘JCお11187縄目t、Iltl6.Bi刷 lIal岬,IlC'lt'.riMIII$I1III11JfUnfJC¥t酬明 " 岬.6).162) 図3.197A株とその近縁種における系統樹 -56

(4)

-好塩性酵素の探索と諸性質解析

Isolation and characterization of halophilic enzymes

峯岸宏明

4. 2

精 製 酵 素Aga-HCの 諸 性 質 基質溶液中の緩衝液を、クエン酸緩衝液、 MES緩 精製酵素 Aga-HCの分解様式を確認した結果、本酵 衝液、リン酸ナトリウム緩衝液 、 グリシルグリシン 素はネオアガロ糖を生成することから

s

-

アガラーゼで 緩衝液、 TABS緩衝液に変え、アガラーゼ活性のpH あ る こ と が わ か っ た ( 図 4)0 Aga-HCの 分 子 量は 依 存 性 を 調べた結果、本酵素はpH6.0最大活性を示 SDS-PAGEおよびゲ、/レj慮過クロマトグラフィーの結果、 し、pH5.5-pH 7.5の範囲で50%以上の活性を維持して 約56kDaと見積もられた(図的。 いた(図7)。 島担際主空 機甥際!l!. 世 段 段U旧4) Ng様叙!l!. -肱現段t(NA6) agilrョ5. 図

4

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A

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の分解様式 Gal. 120 NA4 10

NA6 一、s回 E

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曲 3a崎 20

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GIyrl間.NaOH '1 pH 11 図

7

.

A

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H

C

の最適

p

H

反応最適NaCl濃度およびpHで0・1000Cの範囲で温 度依存性を調べた結果、本酵素は約 700Cで最大活性を 示した(図 8)。また、 800Cで90%、1000Cにおいても 7S W 蝋 10%以上の活性を維持していることが判り、既知のアガ ω

ラーゼの中で最も好熱性に優れていた。 37・・ ・・ 2S 20

.

.

.

.

5

.S

D

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-

P

A

G

E

による推定分子量 NaCl濃度を0-5.0Mに調製した基質溶液を用いて、 アガラーゼ活性のNaCl濃度依存性を調べた結果、本酵 素はNaCl濃度 3.5Mで最大活性を示し、 2.5M以上 NaCl濃度で80%の活性を維持していた(図6)。 uo A M n w 内 M 内 U M E 6 4 ︻ 法 -2 ・22 E E U E 20 O o 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 NaCICon居 間 岡 山 内(M) 図

6

.

A

g

a

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H

C

の最適

N

a

C

I

濃度 120 1曲 回 同 相 互 E E E E E a 20 0 30 40 SO 60 70 曲 90 100 Temper前ure("C) 図

8

.A

g

a

-

H

C

の反応最適温度 また、 800Cで60分間の加熱処理後も活性が低下せず、 950

C

における半減時間は約60分であり、既知アガラー ゼの中で、最も耐熱'性に優れた酵素であった(図 9)。 既知酵素の多くはカルシウムの添加によって熱安定性 が向上する事が知られている。そこで、終濃度 10m M の CaChを添加して 1000Cにおける熱安定性を測定し た結果、カル シウムの添加により耐熱性が向上し、 1000Cで30分加熱した後も約20%の活性を維持するこ とができた(図 10)。

(5)

好塩性酵素の探索と諸性質解析 Isolationand characterizationof halophilic enzymes 峯岸宏明 120 1

80 20 面白 40 主主主

2

E

E

a

120 20 5 10 EDTAcDnce回 目 隠lon(mM) 70 Aga-HCにおける EDTAの影響 図12 Aga-HCの熱安定性 図9

まとめ

5.

アガラ 日本国内で入手可能な市販塩を分離源とし、 ーゼ生産菌をスクリーニングした結果、フィリピン産お よびイタリア産の市販塩からそれぞれ 1株ずつアガラ ーゼ生産菌を分離できた。分離株 197A株の168rRNA • Q,mMCall ・10mM Cal• 12目 100 室 田

5

60 2

3

柑 E 遺伝子塩基配列解析の結果、本株は Halococcus属の新 60 盟 40 3D n"",(mlnl 20 正目 種であり、各種同定試験により Halococcusagarilyticus として提唱するに至った。本株が生産するアガラーゼを Aga-HCの Ca添加時における熱安定性 図10 精製し、その諾性質解析を行った結果、本酵素は

N

aC

I

基質溶液中の金属塩の影響を調べるために、基質中 濃度

3

.4

M

で最大活性を示す好塩性酵素であり、反応 の NaClを KCl、CaC12、LiCl、MgC12・6H20、MgS04・7H20

最適

pH

pH

5.5であった。反応最適塩濃度および

p

H

に変更して活性を発現できるかを調べた結果、 CaCl' で温度依存性を調べた結果、本酵素は約 700

C

で最大活 2H202、MgC

l

z

"

6H20、MgS04'7H20では代替えできなかった。 性を示した。また、800

C

60分間の加熱処理後も活性 一方でKClではNaClと同等の活性が得られ、LiClでは が低下せず、950

C

における半減時間は約60分であり耐 最大の 67%程度の活性が得られた (図 11)。 熱性に優れた酵素で、あった。また、カルシウムの添加に より 1000

C

30分加熱した後も約20%の活性を維持す ることができた。本酵素は既知アガラーゼ中で最も好熱 性、熱安定性に優れた酵素で、あった。本株は古細菌初の アガラーゼ生産菌の報告である。 山山剛凶

A E

-

-120

3

6

0

S

!!40 100 参考文献

目 Minegishi et al.(2015)Halococcusagarilyticus sp. nov., an 4.0 3.5 3.0 1.5 2.0 2.5 SBlt回ntentratkll刈M) 1.0 0.5

agar degrading haloarchaeon isolated from commercial

各種金属塩の影響

図11

salt. IntJ SystEvol Microbiol. 65:1634-1639. キレート剤である EDTAをそれぞれ5、10、20mM

また、

Minegishiet al.(2013)Thermophilic and halophilic

2) 加えて活'性測定を行った結果、本酵素は活性を維持して s-agarase from a halophilicarchaeon Halococcus sp.197 A. Extremophiles. 17:931-939 いたことから、 Aga-HCはその活性に2価陽イオンを必 - 58-(図12)。 要としないことが確認された

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