• 検索結果がありません。

第2章 必修教科等の研究 04 理科 科学的な思考力・判断力・表現力を高める理科学習の展開 : 課題の解決方法を自ら見いだし,観察・実験に取り組む,思考する理科学習

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第2章 必修教科等の研究 04 理科 科学的な思考力・判断力・表現力を高める理科学習の展開 : 課題の解決方法を自ら見いだし,観察・実験に取り組む,思考する理科学習"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

理科  

4 理科

 

科学的な思考力・判断力・表現力を高める理科学習の展開

 -課題の解決方法を自ら見いだし,観察・実験に取り組む,思考する理科学習- 多田 尚平             1.はじめに  授業者の「それでは始めましょう。」のかけ声で,子ど もたちは活き活きと楽しそうに実験に取り組む。子どもは 概して実験や観察が好きである。目新しい実験器具に 目を輝かせている姿もよく見られる。授業者はその様子 を見て,「実験や観察にこれだけ楽しく前向きに取り組 んでいるのだから,きっと内容や結果を理解し,考察に も取り組めるだろう」と思う。ところが,子どもたちの実態 を見ると,結果を表などにまとめるのに必死になり,結果 が意味するところを考察することができないことが多い。 実験は楽しくても,その後の考察は楽しくないというの が,子どもたちの思いだろうと推察される。 㻌 現行の学習指導要領 には,中学校理科の目標に 「自然の事物・現象に進んでかかわり,目的意識をもっ て観察,実験などを行い,(以下略)」とある。ここで言わ れる「目的意識」とは,「何を明らかにするために観察・ 実験をするのか」ということであり,観察・実験をすること そのものが目的ではないということを表わしている。この 点について前述の子どもの姿を振り返るにつけ,これま で授業で行ってきた観察・実験が,子どもたちにとって は,目的意識を持って取り組むものになっていなかった のではないかという考えが出てくる。観察や実験をする ことそのものが目的にならないようにするために,授業 者は目的を見いださせたり,結果の予想をさせたりす る。それでもなかなか,子どもに目的意識を持たせた観 察・実験をさせられないできたのではないだろうか。 㻌 科学史をひもとくと,中学校の理科で扱う諸々の法則 でも,過去の科学者達が試行錯誤して観察や実験を行 い見つけ出してきていることがよく分かる。ガリレオ・ガリ レイが良い例である。質量の大きな物体と質量の小さな 物体を同時に落下させたとき,質量の大きい物体の方 が先に落下するか,同時に落下するかの課題に対し て,科学的に実験し,説明した。斜めのレールの上で球 を転がして,運動の様子を調べたという。ガリレオは,課 題に対して,仮説を立て,実験を計画して実行して立証 し,科学的な知見を得た。ガリレオが行った実験は,紛 れもなく,課題を明らかにするという明確な目的があっ た。他の科学者も同様である。彼らは何か分からない課 題に対し,仮説を立て,実証するための実験や観察の 方法を検討し,実験や観察を行って,得られた結果を 元に仮説に照らして考察し,そこからまた新しい課題を 見いだして来た。ここでは,この一連の作業を「科学の 方法」と呼ぶことにする。 㻌 理科の授業においても,この「科学の方法」を応用し, 課題を解決するためにはどんな観察・実験をするべきか 計画し,結果を予想して実験を行うことで,理解が深ま るのではないかと考えるに至った。  2.研究仮説 ○観察・実験を生徒自身が計画することで,観察・実験 への意欲が高まり,結果から考察する力が高まるであろ う。 ○生徒自身で実験を計画し,考察することを繰り返すこ とで,科学的な思考力・判断力・表現力が高まるであろ う。  本論の要旨  今日まで,科学者は自然の理解のために,その時々の未解決課題を独自の観察・実験を行うことで解決 し,様々な法則を見いだしてきた。その営みは,科学的な思考・判断の連続である。科学者は,課題に対 して仮説を立て,仮説を立証するための観察・実験の方法を考え,結果を予想し,観察・実験を行い,結 果から言えることを考察する。そして,仮説を立て直したり,新たな課題を見出したりする。これを何度 も繰り返すのが科学の手法である。この点について実際の授業を振り返ると,観察・実験の結果を考察す る場面と,観察・実験の方法を計画する場面とで費やす時間に大きな差があるという反省点が見えてきた。  本研究では,学習課題に対して,生徒自身に,既習の経験を活用しながら,解決につながる観察・実験 の方法を立案させ,その方法が妥当であるのか,皆で検証する場面を授業に盛り込むことを試みた。観察 ・実験の方法を考えさせる場面を設けることで,観察・実験に対して強い動機付けができ,結果の考察に スムーズに進むことができた。 キーワード  科学的な思考力・判断力・表現力,観察・実験の方法の計画,科学の方法 — 52 —

(2)

理科   3.研究方法 (1)概要  図1に「科学の方法」を理科の授業に当てはめた 概念図を示す。初めに学習課題から始まる。ここで, 子どもたちに実験させるときに,「何を明らかにし たいのか」をはっきりさせる。次に,仮説を立てさ せる。そして,仮説を実証するための観察・実験の 方法を計画し,それで良いか検討させる。続いて, 結果の予想を経て,観察・実験を行う。得られた結 果を仮説に照らして,考察し,次の課題へ結びつけ ていく。この一連の流れを子どもたちに身につけさ せることを目指す。             ① 学習課題の設定と仮説  これまでの授業と同じく,「科学の方法」を応用 する授業でも,学習課題の設定は大変重要である。 なぜなら,学習への動機付けと観察・実験への動機 付けの根幹をなすからである。そのために,学習課 題は,子どもたちが観察・実験をしたくなるような ものであるべきだし,ある程度の見通しが持てて, 仮説を立てられるようなものであるべきである。  課題に対して,過去の経験や既習内容をもとに仮 説を立てさせるときには,子どもの自由な発想を大 切にしたい。しかし,支離滅裂な仮説や検証不能(中 学校レベルで検証しづらいものも含む)な仮説が出 ないように注意を払う必要がある。学習課題を設定 する時にある程度仮説が限定されるものの方が,そ の後の学習に有益であると言える。立てた仮説を学 級で発表させ,説明させる。  ② 方法の検討と結果の予想  仮説を明らかにするために,観察・実験の方法を 子どもたちに計画させる。このとき,それぞれのア イデアを発表させて,その方法で本当に仮説を検証 することができるのか,検討させたい。授業者はあ らかじめ,複数の方法で実験できるように準備をし ておく必要がある。子どもたちの発想は十人十色で あるから,観察・実験のアイデアも子どもたちの人 数分出てくることになりかねないが,実際の授業で それら全てに対応することは不可能であるから,ア イデアを交流させるなかで,いくつかの方法に絞り 込む作業が必要である。  方法が決定したら,仮説に戻って,「もし,仮説 が正しいとすればどんな結果が得られるはずなの か」という観点から,結果の予想をさせる。例えば, 「発生する気体は二酸化炭素であろう」という仮説 であった場合,予想は「二酸化炭素であるなら,石 灰水が白くにごる」というものになる。いわば,「望 ましい結果」を予想するということである。同時に, 仮説が誤っているとすればどんな結果になるのかに ついても確認しておく必要がある。  この観察・実験方法の検討と結果の予想を,十分 に時間をかけて行うことで,観察・実験の持つ意味 が子どもたちの中で大きくなると考える。  ③考察  仮説と結果の予想に照らして,観察・実験の結果 から言えることを考察する。事前に仮説と予想を十 分に練っているので,的をしぼった考察をさせるこ とができる。同時に,まだ観察・実験によって明ら かになっていないことが,次の学習課題につながっ ていくので,行った観察・実験で明らかになったこ とと,明らかになっていないことを整理することも 必要である。  (2)対象とする単元  表に中学校3年生の学習内容を中単元で示す。こ れらの中から,本研究の対象とする単元を第1分野 とし,各大単元の最後の方に計画されている実験を, 「科学の方法」を用いて子どもたちに学習させるこ とにした。第1分野の方が,既習の実験方法を活か すことができると考えたからである。  「運動とエネルギー」の単元からは,動滑車と定 滑車の違いについて検討させて,仕事の原理を見つ け出させることをねらった。  「化学変化とイオン」の単元からは,電気分解と 電流について検討させて,電解質水溶液に電流が流 れるとはどういうことかを探らせることをねらっ た。  「地球の明るい未来のために」の単元からは,放 射線について,線源からの距離と放射線量の減少の 関係を探らせて,距離による減衰を理解させること をねらった。   図1「科学の方法」を授業に当てはめる — 53 —

(3)

理科                     4.授業実践事例  電解質水溶液に電流が流れるとはどういうことな のかを探る時間を設け,「科学の方法」を応用した 授業を行った。  この時間までに,子どもたちは,水溶液には電解 質水溶液と非電解質水溶液があること,電解質水溶 液には電流が流れること,陽イオンと陰イオンがあ ること,電気分解の時に陽極と陰極で違う反応が起 こっていることを学習している。これらを踏まえて, 電解質水溶液に電流が流れるとはどういうことかを 説明するきっかけになる授業を目指した。  授業の目標は次の通りである。 1 電解質水溶液に電流が流れる仕組みを予想し, それを確かめる実験を行う。 2 実験結果から,電解質水溶液に電流が流れる仕 組みを見出す。               授業の流れは次の通りである。                                         電解質水溶液に電流が流れるのは,電極で,電子 がやりとりされるためであり,導線に電流が流れる ように,電子が水溶液中を泳いでいくのではない。 水溶液中を陽イオンと陰イオンが移動し,電極で電 子を渡したり受け取ったりすることで,電流が流れ ていると見なすことができる。本時の時点では,子 どもたちはイオンについて,ほとんど学習していな い。水溶液中に「イオン」という粒があるという知 表 中学校3年生の理科の学習内容 力のはたらき 物体の運動 仕事とエネルギー 生物の成長とふえ方 遺伝の規則性と遺伝子 自然界のつり合い 水溶液とイオン 酸・アルカリとイオン 天体の1日の動き 天体の1年の動き 太陽と月 太陽系と銀河系 自然環境と人間のかかわり くらしを支える科学技術 大切なエネルギー資源  学習内容・活動 導 入 1.前時に行った塩化銅水溶液の電気分解を振り 返る。 ○陽極と陰極でできる物質が違ったことを確認 する。 ○電流が流れている時の,電極と電極の間に注目 する。 展 開 2.本時の課題を知る。 電極と電極の間に電流は流れているだろうか。 3.課題に対する答えを予想する。 ○実験の方法と注目すべき点を逆ピラミッド図に整理す る。 ○自分の考えをノートに書く。 予想される考え ・電極と電極の間に別の電極を差し込んで,豆電球が光 るか確かめる。 ・電流計を使って,電流を測る。 4.意見を交流する。 ○考えたことを黒板にかく。 ○実験の方法と注目すべき点を発表する。 5.塩化銅水溶液を電気分解する実験を行う。そのとき 自分たちで考えた方法で,電極の間に電流が流れて いるのか確かめる。(図2) 6.実験結果をまとめる。  電極の間には電流が流れていなかった。 7.塩化銅水溶液の電気分解を正しく説明できる仮 説を立てる。  8.仮説を発表する。 ま と め 9.本時のまとめをする。 電極と電極の間には電流が流れていない。 図2 電極の間には電流が流れているか調 べる子どもたち — 54 —

(4)

理科   識があるのみである。当然,電流と聞いて,子ども たちが思い浮かべるのは,2年生時に学習した導線 を流れる電子や放電管や空中を飛ぶ電子である。「水 溶液中でも,目には見えないが,きっと電子が電極 の間を飛んでいる」と説明づける。そんな子どもた ちに,「電極と電極の間に電流は流れているだろう か」という課題を出した。そして,自分なりに仮説 を立てさせ,その仮説を検証する実験を計画させた。            どんな実験を行って,何に注目して実験を進める べきなのか計画させるために,太田による考察 < チ ャート を参考にして思考ツールを考案して用いた (図3)。視点を定めて実験に取り組ませることを 意図して,逆ピラミッド図を応用した。  子どもたちの仮説の一例を図4に示す。                  電極と電極の間に電流が流れているのかを確かめ る実験(図5)として,間に豆電球を入れてみると いうアイデアと,間に電流計を挿入してみるという アイデアが挙がった。そこで,班毎に実験道具を用 意し,計画した実験を行った。  実験をしてみると,電流計の針はわずかに振れる が(数 P$ から十数 P$),豆電球を光らせるほどの 電流は検出されない。しかし,回路全体の電流を測          定してみると,数十 P$ の電流が流れていることが分 かる。ここで,子どもたちの思考はゆさぶりを受け て,「何が違うのか」という課題意識が自然に生ま れてきて,議論を始めた。「科学の方法」の2巡目 の始まりである。そこで,電解質水溶液に電流が流 れるとはどういうことか,子どもなりに仮説を立て させ,次時へつないだ。  新しい仮説を立てさせるにあたり,「電流とは何 であったか。」,「電極で起こっていることは何で あったか。」,「その他実験を通して気付いたこと は何か。」の3点を整理させるように < チャートを 応用した思考ツールも用いた(図6)。           この授業実践は本校研究協議会において行った。 授業後の分科会の中では,次のような意見が寄せら れた。 ○どうやって電流が流れるのかを子どもたちが一生 懸命考えている姿が印象的だった。 ○思考ツールが先細りになっているのはなぜか。 ○逆ピラミッドの形はわかりやすい。 ○課題に対して子どもたちがどういう操作をして, どうなったらそれが確かめられるのかを,子ども たちがイメージできていないように感じた。絵に 表わすようにさせるなどすると良かった。 ○生徒が実験するときの諸々の条件を統一すること が必要でなかったか。感覚的な実験になっていた。 条件をそろえることができればある程度結果も集 約されて生徒が混乱せずにすんだのではないか。 生徒で考えるようにすると,興味が分散してしま い,まとめるのが難しいと感じた。 ○思考ツールを使い慣れていない子どもがいた。 図3 思考ツール(逆ピラミッド型) 図4 記入された思考ツールの例 図5 回路の概念図 図6 新しい仮説を立てる思考ツール — 55 —

(5)

理科   ○仮説の根拠をはっきり確認する必要があると感じ た。  5.アンケートより  3年生の授業において,「科学の方法」を用いて 観察・実験をする授業を適宜組み込んだ。3年生の 学習の最後に,アンケートを実施した。対象は3年 生  名に実施した。  実験が好きかどうか質問したところ,%の子ど もが「そう思う」と答え,「ややそう思う」と答え た子どもを合わせると,%にのぼった。やはり, 多くの子どもが実験を好きだと感じていることが確 認できた(図7)。観察についても同様に尋ねたと ころ,「そう思う」と答える子どもの割合が %に 減るものの,「ややそう思う」と答える子どもを合 わせると,%の子どもが観察を好きだと答えてい る。            観察・実験をした後の考察は,苦手ではないと思 うか尋ねた。その結果,「あまりそう思わない」「そ う思わない」と回答する子どもが合わせて %であ った。観察・実験の後の考察に対して肯定的な子ど もと否定的な子どもが半数ずつであることが分かっ た。観察・実験への考察に課題があることが明らか になった(図8)。            次に自分で仮説を立てて方法を計画し,観察・実 験を行うことで,観察・実験に対する意欲や面白み, また,取り組む丁寧さについて,尋ねた。その結果, 自分で仮説を立てて方法を計画して行う実験に対す る思いは肯定的な意見を持つ子どもが %を少し 超えるにとどまった。このことから,自分で仮説を 立てて方法を計画して観察・実験を行うことは,単 純に子どもの意欲をかき立てるとは言い切れないこ とが分かった。この原因として,考えられるのは次 の点である。仮説を立てることや,実験の方法を計 画することは,ある程度の熟練を要する作業である。 1,2年生時には,仮説を立てたり実験方法を計画 したりする時間はあまり取れていなかった。そのた め,子どもたちにとって仮説を立てたり,実験方法 を計画したりすることは不慣れな作業であったとい う点である。  一方,自分で仮説を立てて方法を計画し,観察・ 実験を行うことの効果的な点について尋ねたとこ ろ,次のような結果が得られた(図9,)。                          自分で仮説を立てて,検証する方法を計画して観 察・実験をすることで,観察・実験の目的がはっき りすることが明らかになった。また,目的がはっき りするため,考察しやすくなることが分かった。他 にも,観察・実験の結果が指し示す意味が分かりや すくなると回答した子どもは,「そう思う」「やや そう思う」を合わせて %にのぼった。  アンケートの結果より,自分で仮説を立てて観察 ・実験の方法を計画し,観察・実験をして考察する 28 44 17 11 0% 20% 40% 60% 80% 100% そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 62 23 11 4 0% 20% 40% 60% 80% 100% そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 図7 実験が好きだと思うか。 図8 観察・実験の後の考察は苦手ではない 図9 自分で仮説を立てると,観察・実験の 目的がはっきりするか。 図  自分で仮説を立て方法を考えて観察 ・実験をすると,考察しやすい。 15 34.5 34.5 16 0% 20% 40% 60% 80% 100% そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 30 41 18 11 0% 20% 40% 60% 80% 100% そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない — 56 —

(6)

理科   授業の進め方は子どもたちにとって,初めは抵抗感 を感じるかもしれないが,続けていくと,観察・実 験に意味を持たせ,結果を考察するという科学的な 思考力・判断力・表現力を高めることができること が見えてきた。  6.検証授業  「科学の方法」を応用した授業を行ったことによ って,自分たちで課題の解決をする力が身についた か検証するために,教科書にない課題を設定して, 検証授業を行った。  炭酸ナトリウム水溶液を電気分解して,各極で発 生する物質を調べる実験を,子どもたちに計画させ, 実施させた。子どもたちは,2年生時に熱分解の学 習で炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムについて 学んでいる。授業の導入で,炭酸ナトリウムの性質 (炭酸水素ナトリウムに比べて,水に溶けやすくア ルカリ性が強い)について確認した。次に,炭酸ナ トリウムが水溶液中で電離する様子を確認して,「炭 酸ナトリウム水溶液を電気分解すると各極で何が発 生するだろう」という課題を与えた。         子どもたちの仮説は,電離式から推察して,陰極 からナトリウムが発生する,とするものが多数を占 め,少数が,水素が発生するとした。陽極からは, 二酸化炭素が発生する,とする説と,酸素が発生す るという説に分かれた。また,ある学級では,沈殿 として炭酸水素ナトリウムが発生するのではないか との仮説を立てる班があった。  班ごとに,仮説を  つに集約して,実験を計画さ せた。水素,酸素,二酸化炭素は子どもたちにとっ てなじみのある気体で,調べ方もよく分かっている ので,計画に戸惑うことはなかった。  実際に電気分解を行った。この時間まで,何度も 電気分解の実験は行ってきているが,自分たちだけ で計画したのは初めてであったため,電気分解装置 の変化を熱心に見つめる姿が多く見られた。 図    陰極からも陽極からも気体が発生し,この気体が 何かを各班で調べだした。そして,子どもたちは, 自分達自身で,陰極からは水素,陽極からは酸素が 発生したことが確認できた。さらに,時間の最後に は,この水素と酸素がいったいどこからやってきた のかを推察することができた。新しい課題を自ら見 いだし,探究する姿を見ることができた。          7.今後の課題  科学的な思考力・判断力・表現力を身につけさせ るために,「科学の方法」を応用した授業を計画し た。観察・実験を受動的に行うのではなく,能動的 に取り組む姿勢が高まったように感じられる。本研 究では,子どもたちの興味・関心を高める点には課題 が見られたけれども,「科学の方法」を取り入れた 方式で観察・実験を行い続けることで,子どもたち が,「科学の方法」を身につけ,課題に対して自ら 仮説を立て,観察・実験の方法を立案し,実行して 考察することができるようになるという見通しがも てた。本研究で,「科学の方法」を使った授業は, 子どもたちに,観察・実験に目的意識を持って取り 組ませるのに有効であることが分かった。「科学の 方法」を身につけさせるには,数年かかると予測さ れるので,今後も継続してこのやり方を続けていき たいと考えている。  8.参考文献  文部科学省 中学校学習指導要領解説 理科編  太田 聡()科学的思考力・表現力を高める 理科学習の展開 -「化学変化と物質の質量」・ 「生態系における分解者のはたらき」の実践より - 滋賀大学教育学部附属中学校研究紀要第  集 SS 図  検証授業の板書(途中) 図  電気分解装置を見つめる子どもたち — 57 —

参照

関連したドキュメント

 履修できる科目は、所属学部で開講する、教育職員免許状取得のために必要な『教科及び

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

本研究科は、本学の基本理念のもとに高度な言語コミュニケーション能力を備え、建学

本研究科は、本学の基本理念のもとに高度な言語コミュニケーション能力を備え、建学

本研究科は、本学の基本理念のもとに高度な言語コミュニケーション能力を備え、建学

社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課