• 検索結果がありません。

青年期後期における女性性の発達(II) : 異性性と母性準備性の構造について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "青年期後期における女性性の発達(II) : 異性性と母性準備性の構造について"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 青年期後期における女性性の発達(II) : 異性性と母性準備性の構造に ついて. Author(s). 青木, まり; 松井, 豊. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 39(1): 85-94. Issue Date. 1988-10. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5084. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 青年期後期における女性性の発達1 1. -- 異性性と母性準備性の構造について --. 青. 木. ま. り◎松. 井. 豊. 1 . 問題 本研究は, 青年期後期の女子における女性性の発達の様相を明らかにすることを目的とする, 前 報告 (松井り青木, 1 988) でも述べたよう に, 本研究では女性性を3つの側面に分けて捉え, それ らの相互の関連と発達的変化を縦断的手法でとらえようとするものである, 青年期は第2次性徴を迎え, それ以前の児童期とは異なる成人としての新たな役割を受容してゆ. く時期である, この時期のもっとも大きな発達課題として挙げられているのは, そうした身体的性 的成熟に伴う新しい性役割の取得であろう, 自らの性役割観と社会から求められる性役割との間に はズレが存在するのが常だが, 男子青年に比べ女子青年は特にこのずれが大きいこと が指摘されて 975など) いる (大浦, 1 , 一方 「女性性」 は元来, 態度や興味がどの程度自身の生物的性に適合した態度や興味から逸脱し ているか, という性度を測定する概念として用いられてきた (例えば M M P1, 1943). こ う した 性度を測定するにはどのような態度o行動が 「男性的」 あるいは 「女性的」 なのかという基準がな ければならないが, そうした基準は往々にしてその人間の属する社会や文化により異なる. 従 って 女性性を扱っ た研究は 「どんな特徴o行動が女性に求められるのか」 という性役割認知を取り上げ. るものが多い, これらの研究から, 一般 に女性に求められる性役割は社会的望ましさと必ずしも一 致せず, 女性の価値意識と周囲からの役割期待との間には大きな矛盾が存在すること が明らか に 978など) なっている(柏木, 1967 . しかしこうした役割を女子青年がどのような形で受容 , 伊藤, 1 していくのかという発達プロセスについて検討した実証的研究は少ない,. ところで同じ女性に求められる役割であっ ても, 母性的存在としての特性o役割は評価 が高い, しかし一般に 「母性」 というと自己犠牲や自己主張の抑制といった側面を多く含むものと受け取ら. 983 ) ため, 社会的評価は高くとも必ずしも青年にとって受容しやすいものでは れている (千石, 1 ないと考えられる, 実際に子供を持っている女性を対象とした研究では, ①妊娠o分娩e育児 の受. 81 ) け止め方 は夫との関係の良さと関連すること(大日向, 19 , ②子供のいる母親の場合も生活全体 86 ) などが指摘 の満足感や充実感 が子供への感情に深く関わっていること (青木も岩男り松井, 19. されているが, まだ妊娠していない未婚女性について, 母性的役割を含めた性役割受容の構造や発 達を取り上げた研究はほとんどない, そこで本研究では 「女性性」 として, 対異性としての側面 (ここでは 「異性性」 と呼ぶことにす 「 る) , および子供を産む事のできる性であるという側面 ( 母性準備性」 と呼ぶ) の2つの概念を取 り上げ, 青年期後期における女性の意識の構造とその発達的変化を縦断的手法で検討することを目. 的とする, 具体的にはこれらの側面がどのように関連しあっ ているか, さらに年齢的変化と共に ど 988 ) では, 青年の意識の中の成人に満 う変容してゆくかを明らかにする. 前報告 (松井o青木, 1 85.

(3) . 青 木 ま り・松1 井. 豊. たない 「子 ども」 としての部分及 び親 に対する 「子」 としての側面を取り上 げ, 「子ども性」 と概念 化し, その構造の解明と尺度構成を行っ たが, 本報告では 「異性性」 と 「母性準備性」 と名付けた 2つの側面について構造の解明と尺度構成を行う,. 2, 研究の デザイ ン 本研究では以上に述べてきた問題意識から, まず各々の側面について測定する質問項目尺度を作 成し, その後, 作成された尺度を用いて女子青年の女性性発達を縦断的に捉えることを目的とする. 行われた一連の調査 についての一覧を表1に示す, すでに前報告 (松井o青木, 1 988 ) で, 第1及 び第2調査 については報告したので, 本研究では女性性と して設定した3側面 のうち, 対異性的存 在としてのあり方 (以下 「異性性」 と表記する) についての側面 (第3調査) , 及び将来母親となる ことに関連する側面 (「母性準備性」) についての調査 (第4調査) 結果を報告する,. 3, 第3調査 { 1 ) 目的 第3調査は, 自由記述をもとに異性性を測定するための質問項目群を作成して調査を実施し, 本 研究で概念を設定した 「異性性」 の構造を実証的に検討することを目的とする, 具体的には 「異性. 性」 として設定した概念の基本的な構造 (因子) を探る. また第5調査 (本調査) において使用す る異性性測定尺度を作成し, 信頼性及 び併存検査妥当性を検討す る, 表1 本研究で実施される調査の一覧 名 称. 第. 1. 調査. 第2調 第3調 第4調 第5調 第6調. 査 査 査 査 査. .. 内. 容. 子ども性・異性性の自由記述 子ども性に関する予備調査 異性性に関する予備調査 母性準備性に関する予備調査. 初年度本調査. 第2年度本調査. 主な目的 子ども性・異性性に関する意識の探索 子ども性の質問項目尺度の作成 異性性の質問項目尺度の作成 母性準備性の質問項目尺度の作成 3つの側面の相互関連の把握 3つの側面の発達的変化の把握. 信頼性は折半法を用いる, 併存検査として は伊藤 ( 1978 ) のM‐H‐Fスケールの中からFemi i i t n n y を 表 す10項 目 (F‐ス ケ ー ル) お よ び 山 口 (1985) で 用 い ら れ た Feminini ty‐mother (Fm)o Femi i i t n n ‐woman(Fw) 項目について, それぞれの形容詞 (文章) がどの程度自分にあてはまる y かを評定させる,. ( 2 ) 方法. ①質問紙の構成 質問紙は異性性を測定す る項目群, およ び伊藤 ( 1978 ) のF-スケール, 山口 ( 198 5 ),のFmoFw 項目, フェイスシートから成る, 異性性を測定する項目群 は表2に示す64項目である, これらは第 1調査 (松井o青木, 1988を参照) で得られた一連の自由記述と, これまでに行われた性役割や女. 性性に関する研究の中で用いられた項目, さらに数名の女子大学生り女子大学院生の意見を参考に. 86.

(4) . 1 青年期後期における女性性の発達1. して著者らが新規に作成した, 内容は表2に示すとおり異 性に対する恋愛対象としての意識, 性役 割及び異性(男性)との相違点についての意識, 性行動に関する意識の3つの領域にわかれている, これらの項目は各質問 が回答者にどの程度当て はまるかを尋ねる形式で問われ, 回答は 「よくあて はま る」 か ら 「全 く あ て はま ら な い」 ま で の 5 件 法 が用 い られ て い る.. 1 985 ) のFm9Fw項目についても, 異性性の項目と同様に 1 97 8) のF-スケール及 び山口 ( 伊藤 ( 各々の項目内容が回答者自身にどの程度当てはまるかを5件法で尋ねた, これらの尺度は元論文で. は女性役割概念に対する評価や期待を測定するために用いられている が, ここでは回答者の自己意 識をたずねるものとした. この回答には 「自分はどのく らい一般 に女性的 (Fmで は母性的) とされ. ている特性を有 しているか」 という自己認知 が反 映される, 従って本研究で作成した異性性尺度に とって併存検査となり得ると判断されたため, この調査において用いることとした, なおFm項目の 「子 どもを産んだことのある」 等) は除外 中で, 明らかに本研究の被験者には当てはま らないもの ( した,. フ ェイスシートは年齢や父母の学歴等 を尋ねている,. ②被験者. 96名. 東京都内にある私立女子短期大学2年の心理学入門コース受講生1. ③実施方法 986年7月4日, 講義時間中に集合 形式で実施された. 調査は1 ( 3 ) 結果. ①異性性の構造. 異性性を測定する項目群への回答は 「全くあてはま らない」 に0点, 「あまりあてはまらない」 に. 1 点, 「どち ら で も な い」 に 2 点, 「少 しあ て はま る」 に 3 点, 「よ く あ て はま る」 に4 点 を 与 えて 得. 点化し,各領域に含まれる項目群 ご と,明確 な構造が得られるまで項目. 表2 第3調査における異性性を. 測定する項目群の構成. を差 し 替 えて, 繰 り 返 し 因 子 分 析 を. 側. 行 な っ た. そ の 結 果, 表 30405. る こ と が 明 ら か に な っ た, そ こ で こ. 雛あ安寧餅 穿 型度合. れらの項目の主成分分析を行 な た結果を表3 0・4 0 5に示す,. しての意識を表す全17項 目 から抜. 番号. 果 で あ る, 第 1 主 成 分 の 固 有 値 は 2,57 , 寄 与 率 は28.6% で あ っ た. 各. 1 ・ 3 4. ら.682で あ っ た,. 雛耀潔 の農繁雪辱. 驚. 19項 目 か ら 抜 粋 さ れ た10項 目 の 主 成 分 分 析 の 結 果 で あ る, 第 1 主 成 分. き. 表3 異性に対する関心。欲求に関する頃日の 主成分分析の結果 (恋愛への関心尺度). 粋された9項目の主成分分析の結. 項 目 の 構 造 係 数 の 絶 対 値 は.290か. 16 19 12. 異性 に対する関 心。欲求 性の受容 性役割 についての意識. に示 す 項 目 群 が 単 因 子 構 造 を 有 す. 表3 は異性に対する恋愛対 象と. 項目数. 面. 6 7. 9 9 10. 1 4 15. 項. 目 日. をっい意識することがある 男性の視線をつい意識することがある 男 性 か ら魅力 的だ と 思 わ れ たい 男性から魅力的だと思われたい 恋 愛 に はあま り興 味 が ない 恋愛にはあまり興味がない い つ も男 性 か ら愛さ れて い たい とっ き あ っ ても, おも しろく ない 男 性 とつ. ひとりの男性から愛されるより, たくさん も 難 癖かれたい ロ マ ンチ ッ ク な恋 を した い. たくさんの男性から愛されていたい 男性の友人が多い. 構造係数 旭糸 49 8 . ,620 2 -.6 1 .682 -.549. ,粥. ,369. 3 2 6 , 29 0 . 87.

(5) . 青 木 ま り・松 井. 豊. の固有値は3.8 9 ,寄与率は38,9%で. あっ た.各項目の構造係数の絶対値 は,482か ら.739と 高 い, な お こ の 分 析 の 結 果 か ら, 異 性 と の 考 え方 や 態 度・行 動 の 相 違 点 を 意 識 す る の は,. 伝統的性役割 に関する意識と独立. であることが示唆されたため,以降 は伝 統 的 性 役 割 に対 す る 意 識 の み. を変 数 と して 取 り 上 げる こ と に し た,. ・. 表5 は 性 行 動 に 関 す る 意 識 を 表 す全21項 目 から抜粋された 8 項 日. 表4 性役割意識に関する頃日の主成分分析の結果 (「女 らしさ」 の受容尺度). 番号 1 8 1 9. 項. 目. 女に生まれてょかったと思う 女ょり男の方がいいと思う. 人から女らしさを求め. 23 2 6. 女らしくするょぅに心がけている 今度生まれ変わってもまた女に生まれたい. 3 2 33 36. 嘉 繁ら. 感%. 女 ら しく して い る こ と は苦痛 だ 人 か ら女 ら しい と 思 わ れた い. 男は男らしく, 女は女らしくするのが良いと思う 男らしさ・女らしさにこだわるのは良くない 女性 が女 ら しく なく て も 別 に かま わ ない と 思 う. の主成 分分析の結果である.第1主. 成 分 の 固 有 値 は3.87 , 寄与率は. 表3 から 5 に 示 さ れ た 項 目 の 得 点 を そ れ ぞ れ 加 算 し, 尺 度 得 点 を 算. 出 し た. そ の 際 構 造 係 数 が負 で あ っ た項 目 は方 向 を逆 転 さ せ て加 算 し た, 項 目 の 内 容 に し た が っ て, 以 下. -.. 28 ,6 63 7 .. -,704 .739. 64 1 . -. 56 3 -.521. 表5 性の受容に関する項目の主成分分析の結果. 48.4%であ っ た.各項目の構造係数. い 墨嚢麗 鼓 壷競 業畠雇 ‐. 構造係数 64 6 , -. 4 82. 2 1. 28 29・. ・. 番号. ( 性への積極的関与尺度 ) 項 ,. 6 7. 性的な内容の本や雑誌は嫌いだ. 69 70 7 3. 女と生まれたからにはセックスを楽しみたい 性的なことは考えたくない 性的な衝動にかきたてられることがある. 8 7. セックス は楽しいものだと思う. 68. 76. 2 8. 性 に興 味 があ る. 男 性 か らセ ッ ク ス を 求 め ら れる の はい やだ. お互いの 魔 確かめあ ≧ 鯵. 表3 に示 した項目群 によ る尺度得 スが必要だと思う 点を「恋愛 への関心」 ,表4から尺度 「 得点を 「『女らしさ』 の受容」 , 表5からの尺度得点を 性 への積極的関与」 と呼ぶ.. 構造係数 -. 9 60 -.753. 20 ,8 -, 37 7 6 96 . -.608. 41 .7. 繊. 恋愛 への関心得点は計 算上は0点から36点まで分布するが, 有効回答者188名の最低点は14点, 最. 高 は35点, 平均25.9点, 標準偏差4.3であった, この得点 は高いほど恋愛 への関心 が強 いことを示す. ものである, 尺度得点と尺度内の各項目との相関係数はすべて絶対値が.39以上であり 0.1%水準 , で有意であ っ た, また折半法による信頼性係数 はr=.5 0で, 0,1%水準で有意であっ た, 『女らしさ』の受容得点は計算上は0点から4 0点まで分布する. 有効回答者193名の最低点は7点, 最高 は36点, 平均25. 0点, 標準偏差5,7であっ た. この得点は高いほど伝統的性役割受容意 識 が強い ことを表す, 尺度得点と尺度内の各項目との相関係数の絶対値 は1項目 ( 33番:男らしさ o 女らし さ に こ だ わ る の は良 く な い)が,.30で あ っ た の を 除 く と す べ て,52以 上 で あ り 全 項 日 に お い て0.1% ,. 水準で有意であっ た, また折半法による信頼性係数 はr =.50で あ っ た (P <0,001). 性 への積極的関与得点 は計算上は0点から32点まで分布するが, 有効回答者1 93名の最低点3点,. 最高は3 1点 で あ っ た, ま た 平 均 は17,9点, 標準偏差は5.4であ っ た. この得点は高いほど性行動 に対. しての意識が許容的 であることを表す.尺度得点と尺度内の各項目との相関係数はす べ て,60以上の 絶対値を示し, 0,1%水準で有意であっ た. 折半法 による信頼性係数はr=,75と高い(P ) 001 , ,<0, と れら3尺度間の相関係数を算出したとこ ろ 表6に示すよう に弱い相関が得られた , .. 88.

(6) . 1 青年期後期における女性性の発達1. 表6 3尺度間の相関係数 「女 らしさ」 の受容. 性への積極 的 関与 *** ,31 (187) ** .21 (192). *** .26 (187). 恋愛への関心 「女 ら し さ」 の 受 容. **: P < 01 .. ***: P < 001 .. 0 内 は有 効 人 数. 表7 併存検査との相関係数 F- ス ケール 恋愛への関心 「女 ら し さ」 の 受 容 性 へ の積 極的 関与. *** .27. Fw 項 目 ** .20. Fm 項 目 * .14. ) ( 185. (186). (185 ). (190). ) (191. 189 ) (. ) (190. (191). (189 ). *** ,39 *** ,28. *: P < 05 ,. **: P < 01 ,. *** .37 *** .29 ***: P < 001 ,. *** .29 .07. ()内は有効人数. ③併存検査との関連. F而スケールおよ びFmoFw項目への回答について, 前述した異性性項目同様 「全くあてはまらな い」 (0点) から 「よくあてはまる」 (4 点) までそれぞれ得点化し, 各尺度に含まれるすべての項 目得点を加算 して尺度得点とした, この尺度得点と異性性の3尺度との相関係数を表7に示す, 恋愛への関心尺度およ び性 への積極的関与尺度は, F-スケール及びFw項目得点とは有意ではあ るが弱い相関 しか得られなかっ た. またFm項目得点とは無相関であった. 「女らしさ」 の受容尺度 はF‐スケールおよ びFw項目得点と,,40弱の相関 を示 し, さらにFm項目得点とも弱いな が ら有為 な相関を示した.. ( 4 ) 考察. 第3調査では, 異性性として設 定した3側面について尺度 を構成し, その信頼性o妥当性を検討 した, まず異性に対する恋愛対象としての意識を表す項目群の因子分析の結果, 表3に示すような 1因子構造 が得られた, これらはいずれも恋愛行動や恋愛イメー ジへの憧れを示す内 容であり,「恋 愛への関心」 を表す主成分と解釈された. そこでこれら9項目を加算して合成得点とし, 折半法に よる信頼性と尺度の 内部一貫性 について検討したが, 十分な信頼性を有することが確認された. 併 存検査との関連で は, 社会から女性に期 待される特性を備えているという意識を持つ者ほどこの尺 度得点 が高 い傾向 が認められたが, 母性的な特徴を意識 しているか否かとは関連がなかっ た. 性役割に関する項目群は表4の10項目に集約され尺 度化された. 項目の内 容から, この尺度はい わゆる社会から期待される「女らしさ」を受容する意識を表すと解釈された. 検討の結果, 信頼性o 内部一貫性とも十分高いこと が認められた, また従来の女性役割期待を表す各尺度と有意 な相関が 得られ, 本尺度の妥当性 が確認された, さらに, 母性的な特性を表すFm項目の得点と弱い ながら有 意な相関が得られたが, このことは一般的な 「女らしさ」 イメージの中に, 他者を慈しむよ うな母 親的側面 が存在することを示唆するものであろう, 性行動に関する意識は, 表5に示すような8項目による1因子構 造が得られたので, これらの項. 89.

(7) . 青 木 ま. り・松.井. 豊. 目得点を加算して尺度とした. 項目の内容から, この尺度は性行動を受容するか拒否するかを表 す 「性への積極的関与」 と命名された 前2尺度同様折半法等によ る検討が行われ 高い信頼性及び , , 内部一 貫性を有することが確認された, 併存検査との関連では「恋愛 への関心」尺度と同じく F- , スケール及 びFw項目得点と有意な相関が得 られ,社会から期待される女性的特性を有していると自 己評価する者は, 性行動を受容的 に認知していることが明らかとなった. 逆 に言 えば社会から期待. される女性的特性を有しない (あるい は有すること を認めない) 者 は 性行動を拒否す る傾向があ , ると解釈される, 作成した3尺度関 の相関は有意ではあるが弱いものであ った(表6) . このことから, これら3尺 度 はそれぞれ共通した 部分を持つものの異なっ た側面を捉えていると考えられる. 併存検査との関. 連では3尺度が共通して社会から期待される女性的特性と関わっ ているものの その関係の様相 は , 個々に異なることが示さ れ, 3尺度を別個に捉えよ うとした本研究の立場 の妥当性 を表すものと考 えられよう.. 4 . 第4調査 ( 1 ) 目的 第4調査は, 母性準備性を測定するための質問項目群を操成して調査を実施し 第5調査 (本調 , 査) に使用する母性準備性測定尺度 を作成することを目的とする, また作成した尺度の信頼性及び 尺度の構造について検討する.. ( 2 ) 方法 ① 質 問紙 の構 成. 質問紙は母性準備性を測定する項 目群,乳幼児と の接触 経験, 結婚と職業についての考え方か ら成る. 母性準備性 を測定する項目群は表8 に示す31項目である.これらは先 行研究(青木, 19 84 ) で得られた乳幼児を 持つ母親への面. 接記録と,これまで に行われた母性や育児意識に関する研 究の中で用いられた項 目(大日向, 19 82など) 等を参考に. して第1著者が新規に作成した.内容は i 表8に示すとおり. 表8. 第4調査 にお ける母性準備性. を測定する項目群の構成. 側. 面. 乳幼児への好意感情 乳幼児への拒否感情. 乳幼 児への興味・関心. 項目数 6 2 4. …----…----……---…… 育児労働に対する積極性 6. 離 粥 鱈 葛 抵抗感. 2. 乳幼児への好意感情, 拒否感情, 興味o関心 (以上乳幼児 観) 及び育児労働に対する積極的と抵抗感, 育児労働 の考え方 (以上育児労働観) の6つの領域 に わかれている. これらの項目は各質 問 が回答者にどの程度当てはま るかを尋ねる形式で問われ 回 , 答については乳幼児 に対する意識o感情を問う項目は4件法, その他の項目は5件法が用 いられた . 乳幼児と の接触経験は, 中学卒業以降乳幼児のおむつかえo食事などの世話 あやしたり一緒 に , 遊んだ経験があるかどうかをたずねた.. 結婚と職業 については, 女性の生き方として①就業しない, ②結婚退職 ③出産退職 ④出産退 , , 職後, 再就職, ⑤就業継続, の5つの選択肢のうちどれが最も望ま しいかを尋ねた ,. ②被験者. 東京都内にある私立女子短期大学2年の心理学入門コース受験生194名,. ③実施方法 90.

(8) . 1 青年期後期における女性性の発達1. 986年4月23日, 講義時間中に集合形式で実施された. 調査は1 ( ) 結果 3. ①母性準備性の構造. 4件の各回答には0~3点, 5件法の回答には0~ 4点を与えて得点化し, 各領域に含まれる項 目群 ごとに, 明確な構造が得られるまで入力項目を差し替えて繰り返し因子分析を行っ た. その結 果 表 9 ol oに示す項目 が単因子構造を有することが明らかになった. そこでこれらの頃日の主成 ,. 分分析を行っ た結果を表9 010に示 す, 表9は乳幼児に対する好意感情o拒否感情e興味, 関心を表す全12項目から抜粋された9項目の 31 主成分分析の結果である, 第1主成分の固有値は5, , 寄与率は59,0%であった, 各項目の構造係. 数の絶対値はすべて.65以上であっ た,. 衷9 乳幼児に対する感情に関する項目の主成分分析の結果 (乳幼児への好意感情尺度) 番号 1-1 1-2 1-4 1-6 1‐7 1-8 1-9 1‐10 1‐11. 項. 目. あなたは赤 ちゃ んが好きです か 赤ち ゃ んを見ると 「かわし・いな」 と思いますか 赤ち ゃ んのこと について 知 りたいと思し・ますか 赤ち ゃ んに関心がありますか 赤ち ゃ んと 一緒 に遊 ぶことが好 きですか 赤ち ゃ んを見るとあや したり笑い かけたりしますか 赤ち ゃ んを抱いてみたい と思いま すか 赤ちゃ んの世話 をすること が好きですか 赤 ちゃ んに興味がありますか. 構造係数 ,793 .738 .738 .801 .778 ,657 ,709 .820 ,859. 5項目の主成分分析の結 表10は育児労 働に対する積極性と抵抗感を表す全19項目から抜粋された1 造係数の絶対値はす %であ た 各項目の構 35 果である, 第1主成分の固有値は5, っ . , 寄与率は35.7 べ て.40以 上 で あ る.. 0 育児労働への意識に関する項目の主成分分析の結果 表1 (育児への積極性尺度) 番号 2-1 2-2 2-3 2-5 2-6 2-7 2-8 2-9 2‐10 2-14 2-15 2-16 2-17 2-18 2-19. 項. 目. 育児 はす ばらしい仕事だと思う 育児を している間 に, 世の中の動きから取り残されて しまうと思う 育児 によ っ て自分自身もまた 成長 できると思う 育児 は楽 しいと思う 育児をしていると, 子供の こと ばかりで視 野 が狭く なると思う 育児は女性の生き がいだと思う 育児 はつ らい仕事だと思う 育児を していると, 自分の好き なこと ができ ないと思う 育児 はつま らない仕事だと思う 将来, 育児 をするの が楽 しみだ 将来, 自分 が育児をするなんて考 えたこともない 育児 をしている母親 はかがやいて見 える 育児をしている母親 は疲れてみす ぼ らしく 見える 自分も育児をやっ てみたいと思う 自分 は育児をすること には自信 がない. 構造係数 .479 -.527 .596 ,591 -.408 .474 -.445 -.502 -.699 .847 -,681 .631 -,617 .820 -.422 91.

(9) . 青 木 ま り・松 井. ②母性準備性の尺度構成と信頼性 表9010に示された項 目の得点をそれぞれ加算し 尺度得点 を算出した その際異性性の尺度と , , 同様, 構造係数が負 であった項目は方向を逆 転させて加 算した 項目の内容 にしたが て 以下表 っ , , 9に示 した項目群による尺度得点 を「乳幼児 への好意感情」 表10からの尺度得点を「育児 への積極 , 性」 と呼ぶ. 乳幼児 への好意感情得点 は計算上 は0点から27点ま で分布する 有効回答者187名の最低点 は1 , 点, 最高は2 7点, 平均2 1.8点, 標準偏差4,6であっ た, この得点は高 いほど乳幼児に対し好意的 であ ることを示すも のである, 尺度得点と尺度 内の各項日と の相関係数 はすべて絶対値が 66以上であ . り, 0.1%水準 で有意であった, また折半法 による信頼性係数はr= 84(P<0001 . . ) であっ た. 育児 への積極性得点は計算上は0点か ら60点まで分布する 有効回答者1 66名の最低点は4点, 最 , 高 は60点, 平均39.1点, 標準偏差9.2であっ た. この得点は高いほど育児労働 に対して積極的で 抵 , 抗感が少ないこ とを表す. 尺度得点と尺度内 の各項目との相関係数 の絶対値はすべて 43以上であ . り, 全項目 において0,1%水準 で有意であっ た. また折半法 による信頼性係数はr= 75(P< 001 . . ) であっ た, これら2 尺度間の相関係数 を算出したところ r= 61(P< 001 ) の相関が得られた , . , , 表1 1 母性準備性尺度得点と乳幼児との接触経験との関連 人数. (N) 接触なし 遊んだ経験あり 世話した経験あり F. 31 75 御. 値. 乳幼児 への好意感情. 平均得点 (SD). 23.2(3.9) 21.7 ( 4.5) 19.0 (5.1). 37.8(9.6) 38.0(8,5 ) 41.3(9.6 ). 10.98. 有意水準. 育 児 への積極性. 平均得点 (SD). P <,001. 2,59 P <,10. 表1 2 母性準備性尺度得点と職業 (結婚)観との関連. 結婚退職 がよい 出産退職 がよ い. 出産退職後再就職 就業 継続 がよ い F. 人数 (N). 乳幼児への好意感情 平均得点 (SD). 育児 への積極性 平均得点 (SD). 31 29 9 7 10. 21.6(4.3) 22.1 (6,1 ) 21.9(4.4 ) 21.1 ( ) 3.9. 39.9(8.9) 38.1(7.7) 40.0 (8,9) 30.9(12.9). 値. 有意水準. 0.16 P >. 10. 3.30 P <.05. ③母性準備性の2尺 度と他の変数との関連 算出した2尺度 各々 について, 乳幼児と の接触経験及 び職業 (結婚) 観との関連を調べるため- 元配置の分散 分析を行ったところ, 表11・12に示すような結果が得られた , 乳幼児への好意感情得 点は実際に乳幼児と接触した経験 により大きく異なり 接触がなかっ た者 , よりあっ た者の方が高く, また同 じ接触経験でもただ あやしたり遊んだだ けの者よりも世話をした ことのある者 の方 が高いという結果が得られた, しかし職業 (結婚) 観による差は認められなかっ た,. 育児 への積極性得点では逆 に, 接触経験 による差 は見られない が 職業 (結婚) 観で大きく意識 , が異なることが示された. 結婚退職・出産退 職o出産退職後再就職 (以降 「再就職 と略記) を望 」 92.

(10) . 1 青年期後期における女性性の発達1. ましいとする3群間には有意な得 点差は見られない が, これら3群と就業継続を望ましいとする群 の間には5%水準で有意差が見られた. 就業継続群は他の3群より育児労働に対 して強い抵抗感を 持つことが示された.. ( 4 ) 考察. 母性準備性と して2つの側面を設 定し, 各側面 ごと に項目群の因子分析を行った結果, 表9 010 に示すように双方とも1因子構造に集約さ れた. 調査以前に設定された分類基準からみると, 乳幼 児観の側面では 「乳幼児への拒否感情」 が同一因子に負荷しなかっ た. そこで 「拒否感情」 2項目 0項目の回答 が尺度得点として加算された, この乳幼児への好意感情得点は主成分分析, 尺 を除く1 度に項目と尺度得点との相関, 折半法による検討のいずれ においても高い内部一貫性が示され, 信 頼性が確認された. また因子分析の結 果から, 乳幼児に対する肯定的感情は, 否定的感情 (拒否感 や嫌悪感 など) とは性質の異なるものであること が示唆される, 育児労働についての側面では 「育児労働の考え方」 が同一因子に負荷しなかった, これは他の項 「 目が育児労働を肯定的にとらえる か否定的に捉えるかという内容であるのに対し,この側面には 育 児は誰でもするのが当り前」 など, 育児を担う主体を離れた漠然とした質問が配されていたため, 内容的に一致しなかったものと考えられる, この側面を除く15項目を加算して育児への積極性得点 を算出 した, この尺度得点も 「乳幼児への好意感情」 尺度同様, 高い内部一貫性が示され, 信頼性 が確認された, これら両尺度は, 相関係数をとる と.61と高い値を示しており, 共通した側面を有 していると考え られる. しかし他の変数 (乳幼児との接触経験及 び職業 (結婚) 観) とは全く異なった関係が見ら れ, これら2つの尺度を独立してとらえようとした本研究の立場の妥当性を示唆している.. 5, 要約 青年期後期における女性性の発達を捉えるため, 異性性およ び母性準備性尺度の作成を試みた, 異性性として異性に対する恋愛対象としての意識, 性役割に関する意識, 生行動に関する意識の3 つの領域を設定し, 項目を作成して検討した. 母性準備性と しては乳幼児に対する意識e感情と育 児労働に対する意識o感情の2つの領域を設定し, 同様に検討を行 った, その結果いずれの尺度も 信頼性 が確認され, また併存検査や他の変数との関連分析から, これらの尺度を一括するのではな く別個に扱う本研究の基本的考 え方 が妥当であることが示された. 今後 はこれらの尺度を用いて女 子青年に調査を行い, その発達の様相を解明してゆく ことが課題である,. 引 用 文 献 4 1才児の母親における養育行動と母性・育児意識との関連について 東京都立大学修士論文 (未公 98 青木まり 1 98 6 母性意識からみた母親の特徴 --ライフ・ステージ, 自己評価, 充実感と 青木まり・松井 豊・岩男寿美子 1 の 関係 か ら --. 心理 学 研 究, 57 , 207一213. 9 78 性役割の評価に関する研究 教育心理学研究, 26 伊藤裕子 1 ,. 1-11 93.

(11) . 青. 木. ま. り・ 松. 井. 大浦容子 1 975 青年の性役割認知 日本教育心理学会第17回総会発表論文集 78-27 9 , 2 大日向雅美 1 981 母性発達と妊娠に対する心理的構えとの関連性について 周産期医学 vo 47- ,11 , l .10 , No , 1 153. 大日向雅美 1 982 母性意識の発達変容について --母親の教育歴・就労形態・年齢別の分析-- 日本教育心理学 会第24回総会発表論文集, 2 98一299. 柏木恵子 1 96 7 青年期における性役割の認知 教育心理学研究 15 1 93而202 , , 松井 豊・青木まり 19 88 青年期後期における女性性の発達1 --子ども性の構造について-- 東京都立立川短 大 紀要, 21 ,. 35一40. Minnesota Mu l iphas i t l i ty lnventory (M MP工) 1943 Un c Per sona iver i ty of Minnesota log i s I ca , the Psycho Corporat ion . New York. 千石. 保 19 8 3 日本の母 永野重史・依田 明(編) 母と子の出会い 新曜社 山口素子 19 86 男性性・女性性の2側面についての検討 心理学研究 56 215一2 21 , ,. 付. 記. 1). 本研究の実施にあたり, 東横学園女 子短期大学女性文化研究所の研究助成を受けた ここ に . 記して謝意を表 したい,. 2). 本稿 の一部は, 1987年日本教育心理学会第29回総会において 「女子青年 における女性性の発 達の様相( 1 ) 枠組と尺度構成」 およ び 「同( 2 ) 乳児 の表情の評定による母性準備性の検討」 と 題して発表されている.. 青木まり (本学助手・札幌分校) 松井 豊 (東京都立立川短期大学講師). 94.

(12)

参照

関連したドキュメント

また自分で育てようとした母親達にとっても、女性が働く職場が限られていた当時の

層の積年の思いがここに表出しているようにも思われる︒日本の東アジア大国コンサート構想は︑

彼らの九十パーセントが日本で生まれ育った二世三世であるということである︒このように長期間にわたって外国に

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

したがいまして、私の主たる仕事させていただいているときのお客様というのは、ここの足

なお、教員を放課後児童支援員として扱うことについては、本年4月1日 より、改正された放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準(平