植物遺伝子集積地としての沖縄諸島の利用
評議員上里健次
この十数年間のガーデニングブームは,とどまることを知らない広がりを見せている.短期間に発育
周期を終える花壇用植物が主流で,春季,秋季の開花に合わせて,それぞれ多種類多量の苗が多くの園
芸店に並んで売りさばかれている.四季それぞれに花と緑に恵まれている沖縄でも,かなりの人々が苗
から育てて花を咲かせることに興味を持ち,実践していることのあかしである.
たとえ立派な花が咲かなくても,自分のものとして自分で育てるその過程が重要で,気持ちの充足に
つながり,日常生活にゆとりと潤いがもてることが何よりの利点である.ガーデニングで植物を育てる
要領を修得した後に,出来ることなら多くの人々が,それぞれの立場でできるだけ多くの異なった特殊
植物に関心をもち,世界の珍しい植物,資源植物,有用花卉植物の収集に個人レベルで当たることが出
来ればと考える.もちろんそれらを統括し,情報の収集,提供,指導助言に当たる機関としての植物研
究所の設置は,当然必要である.
総じて花壇用花卉は種子繁殖性で,種苗会社で開発育成される各品種群の種子からスタートすること
が多く,これらの会社の研究開発に負うところが大きい.しかし一方で栄養繁殖性の花卉類,有用植物
類も多く,これらの植物に対しては原種,園芸品種を問わず,気象環境の適域下における継代植栽が最
良の方法である.沖縄ではかなり以前から,多種類の熱帯性花卉花木,有用植物が公園,庭園に植栽さ
れて維持されている.近年はとくに花の目立つ種類を街路樹に植栽し,また市町村や民間の公園にシン
ボルとして利用することも多く,それぞれの植物種類ごとの開花期には,熱帯諸国の景観形成となって
いる.
中にはハウス内の栽培を余儀なくされるものもあるが,世界各地に産する多種類の植物のほとんどの
ものは,沖縄では露地植栽が可能である.これほどに多くの植物が-つの小島で維持できるということ
は,台風,干ばつの常襲地,冬期の低温,日照不足等のマイナス面の影響はそれほど大きくないといえ
る.総じて,年間を通して温暖な亜熱帯海洋性気候下の沖縄は,寒冷地の植物,極端な乾燥地の植物を
除くあらゆる植物にとって適地域である.
さらに大陸から隔離された島喚なので種の維持に都合がよく,病害虫のコントロールも比較的容易で
ある.沖縄は農地が少なく人口密度の高い島ということになっているが,その中南部においてさえも遊
休地は多い.この中南部の遊休地,北部地域,周辺離島,先島の島々を,世界中の花卉植物の生きた標
本育成地として,使い分けて植栽地に利用できないだろうか.そうすれば利用価値の高い遺伝子プール
の集積地として認識され,広く国内外の有用花卉植物の研究,利用,普及に貢献でき,同時に沖縄を強
烈に世界にアピールできるのではないでしょうか.