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アフリカ -- 紛争地域から (フォトエッセイ)

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Academic year: 2021

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アフリカ -- 紛争地域から (フォトエッセイ)

著者

大崎 敦司

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

185

ページ

36-39

発行年

2011-02

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004315

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平和をはばむ力/スーダン西部ダルフール地方で今も戦闘を続ける最強の反政府武装勢力「正義と平等運動」(JEM)の兵士たち。アフリカ系住民を、スーダン政府の 支援を受けるアラブ系武装民兵の虐殺と迫害から自衛するとの名目で戦闘を激化させた=ダルフールで ⒸAtsushi Osaki アジ研ワールド・トレンド No.185 (2011. 2)

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アフリカ

―紛争地域から

写真 ・ 文

大 崎 敦 司

Atsushi Osaki

■ フォトエッセイ ■

  二〇一一年のアフリカは、コートジボワール大統領 選後の政治紛争と、南部スーダンの分離独立への住民 投票、チュニジアとエジプトでの政変のニュースと共 に幕を開けた。アフリカ諸国の独立ラッシュから半世 紀。大きなポテンシャルを抱えた 「希望の大陸」 では、 政治や民族、宗教を巡る紛争やテロが日常化し、見え にくくなる「不可視化」が進行している。 ●経済発展の裏で進む"揺らぎ"   二〇〇九年春まで七カ月間、タンザニアで国連の広 報番組制作の仕事をした。年五%超の経済成長に沸く インド洋岸の経済首都ダルエスサラームや、僻地の農 村で困窮する人々にインタビューをして回った。印象 に残ったのが、都市に一極集中する豊かさと、内陸の 農村部との経済格差の拡大。汚職で首相や閣僚、現職 の 国 会 議 員 ら が 辞 任・ 逮 捕 さ れ る 事 件 が 相 次 ぐ な か、 多くの人々が口にした腐敗した政治への怒りだった。   南 部 の 同 国 政 府 の 出 先 機 関 に 着 任 後 す ぐ 、 キ ク ウ ェ テ 大 統 領 が 南 部 視 察 に 訪 れ た 。 大 統 領 が 乗 る 車 は 、 住 民 か ら 激 し い 投 石 を 受 け た 。 事 件 を 見 た 大 学 教 授 は「 貧 し い 南 部 の 住 民 が 最 高 指 導 者 に 直 接 抗 議 し た 。 経 済 発 展 から取 り 残 さ れた 人 々 は不 満 を 強 め て い る 」 と 分 析 し た 。 大 統 領 は 昨 年 一 一 月 に 再 選 さ れ た が 、 支 持 率 は 大 き く 低 下 し た 。 今 年 一 月 に は ア ル ー シ ャ で 野 党 の 政 治 集 会 を 政 府 が 弾 圧 し 、 警 察 の 発 砲 で 死 者 が 出 た 。 隣 国 ケ ニ ア の よ う な 憲 法 改 正を 求 め る 声 が 、 野 党 や 人 権 団 体 、 ム ス リ ム の 組 織 を 中 心 に 急 拡 大 し て い る 。   職 場 の ム ス リ ム の 同 僚 ら と モ ス ク で 金 曜 礼 拝 を 覗 き、インド洋岸のダルエスや南東部の街で宗教指導者 が貧困や政府・外国企業批判の説教をしていると聞い た。学校教師は、アメリカ中心のグローバル経済と外 国企業、 その下で搾取に走るタンザニア人富裕層が 「貧 困 の 元 凶 だ 」 と 断 じ た。 「 イ ス ラ ー ム の 信 仰 を 実 践 す る人々が、格差の無い公正な社会を実現する、政教一 致的な新政府の樹立を望む」とも語った。ダルエスの ダウンタウンのカリアコー市場では、ザンジバル島な ど住民の殆どがムスリムの地域が 「必ず分離独立する」

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独裁者の脱出/リベリアの首都の空港で、亡命するテーラー大統領を 見送る市民たち。「あなたを愛しているけど、出て行って!」と解放 と自由への歓喜の歌を唄い踊った 子ども兵士の出撃/リベリアの首都モンロビア近郊に侵攻した反政府武装勢力も、 政府軍も、多数の少年兵や少女兵を動員していた。多くは小中学生の幼さだった 「よそ者は出て行け!」/コートジボワール のアビジャンで、反政府勢力との戦いと「外 国人」排斥を呼びかける、バグボ大統領支持 派の排外デモ ⒸAtsushi Osaki ⒸAtsushi Osaki と語り、ソマリアの反政府勢力や国際テロ組織「アル カイダ」 を 「イスラーム国家建設へ聖戦を戦っている」 と擁護する若者にも出会った。   タンザニアはケニアと共に、一九九八年にアメリカ 大使館への同時爆破テロが起きた国だ。翌年にナイロ ビで、黒く焼け焦げ、窓ガラスが落ちたアメリカ大使 館の廃墟を見た衝撃は忘れられない。二〇〇二年末に はインド洋岸のモンバサで、イスラエル人観光客が宿 泊中のホテルへの自爆攻撃と、国際空港を離陸したイ スラエル旅客機への地対空ミサイル発射の同時テロも 現場取材した。   アフリカ大陸は今も、アメリカ主導の世界的な「対 テロ戦争」の最前線だ。アメリカは二〇〇八年秋、テ ロ組織の掃討作戦を行う「アフリカ軍」を新設。ジブ チを拠点に、紅海対岸のイエメンやソマリア、東・西 アフリカ諸国への軍事介入を強めている。タンザニア の専門家は地元紙の評論で、 「アルカイダ」 や「タリバー ン」を名乗る武装勢力が近年活動を活発化させている モーリタニアやマリ、ニジェール、ナイジェリアなど に「アメリカが逆にテロを拡散させている」と警鐘を 鳴らしていた。   ア フ リ カ 各 国 で 戦 争 や テ ロ が 見 え に く く な り、 「 常 在化」が進んでいる。政治権力の争奪や民族・宗教の 境界線で続発する紛争。点として噴出するテロ。テロ 組織と容疑者の追跡と拘束。首都では人々が一見、 「平 和」と安定、 経済発展を享受しているように見えるが、 彼 ら は 国 内 や 隣 国 で 続 い て い る 同 胞 の 殺 害 や 暴 力 に、 あまり関心が無いかのようだ。 ●「純化」 と「分離」 が拡大する懸念   各国でムスリムが急増し、貧富の格差是正と「世直 し」を求める声が、イスラームの厳格な戒律や社会正 義の実現を目指す信仰復興運動と結びつき、世俗的な 価 値 観 や 既 存 の 政 治 体 制 と 衝 突 を 引 き 起 こ し て い る。 国 境 を 越 え た グ ロ ー バ ル 化 に 抵 抗 感 を 覚 え る 人 々 は、 欧 米 が 押 し 付 け る 政 治 の「 民 主 化 」 や 市 場 原 理 主 義、 物質主義に反発し、異なる価値観や宗教・民族を排除 し、 共通の生き方や信仰、 アイデンティティを持つ人々

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国際テロの脅威/ イスラエル人観光 客虐殺を狙う国際 テロ組織「アルカ イダ」の自爆テロ で破壊されたケニ ア・モンバサの観 光地の「パラダイ ス・ホテル」。犠牲 者の大半は地元ギ リヤマ族の踊り子 の女性たちだった 赦す。赦される。/94年のルワンダ虐殺後10年。首都キガリ郊外 の村の教会で、刑期を終えて出所した加害者の若者たち(左の列) を受け入れようと、和解の握手を求める犠牲者の遺族(右) 「未来を見る!」/コンゴ東部で反政府勢力 に家族を皆殺しにされ、生きのびるために 14歳で武装勢力に参加。兵士に強姦され、 できた子を産んだ17歳の女性。「未来のため に愛し、育てると決めた」と語った=ゴマで ⒸAtsushi Osaki ⒸAtsushi Osaki ⒸAtsushi Osaki アジ研ワールド・トレンド No.185 (2011. 2)

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が集まって「純化」と「分離」を 目指す逆流も起きている。   コートジボワールの紛争再燃の 報に、二〇〇二〜〇四年の現地取 材の記憶が、 胸の痛みと共に蘇る。 アフリカ五三カ国が統合へ歴史的 一歩を記した 「アフリカ連合」 (A U)が誕生して、まだ二カ月しか 経っていない時、西アフリカの経 済の中心だった国が真っ二つに分 裂してしまったのだ。   南 部 の 経 済 首 都 ア ビ ジ ャ ン で、 バグボ大統領支持派の街頭デモを 見 た。 国 旗 を 振 り、 「 テ ロ リ ス ト と 戦 え!   外 国 人 を 追 い 出 せ!」 と叫ぶシュプレヒコール。政府系 の テ レ ビ も 新 聞 も「 コ ー ト ジ ボ ワール人のアイデンティティ」 「愛 国 」 と い う 意 味 の『 イ ボ ワ リ テ 』 という言葉を連呼していた。北隣 のブルキナファソやマリからの移 民労働者やムスリムが、 市民や軍 ・   その後、イラク戦争とフセイン政権の崩壊 を現地取材してアフリカに戻ると、 今度は 「リ ベリア危機」が起き、テーラー政権の崩壊と 大統領の亡命を目撃した。   南部スーダンがアフリカ五四番目の新国家 として分離独立する動きに、私は希望と同時 に、不安も感じている。二〇〇四年夏の取材 時、ジュバはまだ北部の政府軍が支配。南部 の人々は「暫定首都」と自称していた町ルン ベックに小さな 「国立銀行」 や 「最高裁判所」 を作って新政府設立の準備をし、迫害と戦争 がなくなる未来への希望を熱く語った。   私はその直前に、西部のダルフール地方で 紛争を取材したばかりだった。宗教紛争が続 くナイジェリア中部やコンゴ東部の紛争地も 警察の暴力で命を奪われていた。   南北の境界線に向かう途中、現地の通訳が 「 北 部 出 身 者 」 と し て 受 け て き た 差 別 と、 自 らの「民族の歴史」を語り始めた。親類がブ ルキナやマリに住み、自分の肌を「南の人々 の黒い肌と違う。 体の細さも目の形も」 と語っ た。進学時、出身地と部族名で合格を取り消 されたという。   「 植 民 地 支 配 の 前、 北 部 の 王 国 で、 人 々 は イスラームの信仰を守り、 遊牧と交易を営み、 未開だった南部より豊かだった。フランス人 が南部に経済拠点を築き、南の人々が権力と 富を独占し、北の人々を差別するようになっ た 」。 北 部 を 制 圧 し た 反 政 府 勢 力 と、 今 回 の 大統領選に立候補したムスリムのワタラ元首 相への共感、北部の「分離独立」への期待も 漏らした。

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飢えに耐えかねて/「世 界最悪の人道危機」と呼 ばれる紛争が続くダル フール地方からすぐの チャドの国境地帯で、緊 急人道支援の食糧配給を 待てずに、落ちた豆を頬 張る難民の子どもたち 54番目の独立国へ/南 部スーダンの独立へ「新 政府軍」の訓練に励む ス ー ダ ン 人 民 解 放 軍 (SPLA)の兵士たち。南 北間で未確定の国境線や 資源配分を巡り、今も紛 争は続く=ルンベックで 戦争の真っ最中に/2001年1月、コンゴの首都キンシャサでのアフリカ杯サッカー大会。周 辺10ヵ国が参戦し「第一次アフリカ世界大戦」と呼ばれた内戦で300万人以上の犠牲者が出 る中、政府閣僚が観戦に勢揃いし、満員の大群衆は熱狂した。「戦争と日常」の異常な共存。 この翌日、キンシャサでローラン・カビラ大統領(現大統領の父)が暗殺された ⒸAtsushi Osaki ⒸAtsushi Osaki ⒸAtsushi Osaki おおさき あつし/ジャーナリスト・ 津田塾大学講師(平和学・紛争研究) 慶應義塾大学法学部で小田英郎教授からアフリカ政治・紛争を学ぶ。 在学中、白人政権のアパルトヘイト下の南アフリカ、独立時のナミビア などを取材旅行。1990年に朝日新聞社に入社。外報部のアフリカ担当 記者、アフリカ・中東特派員(ナイロビ支局長)としてアフリカ諸国の紛 争やイラク戦争、パレスチナ・イスラエル紛争などを現地取材。国際協 力機構(JICA)の派遣で国連の専門機関「国際労働機関」(ILO)とタン ザニア政府のためのテレビ番組制作プロジェクトに従事。21年間でアフ リカ33カ国を歩き、2001年から写真展や講演会などで映像でアフリカを 伝えるNGO「Sangenjaya Magnum for Africa」(SAMAFA)も主宰。

歩いた。スーダンの分裂を、他の国の人々が 「 手 本 」 と し、 国 の 姿 の 見 直 し や 国 境 線 の 書 き変え、分離独立を目指す政治・宗教運動や 武力紛争が拡大するのではないかと、今、複 雑な思いで見守っている。北部は「非アフリ カ化」の純化路線とイスラーム国家化を推進 し、ダルフール地方の紛争解決や、ナイジェ リアなど宗教的「境界」を抱える他のアフリ カ諸国に大きな影響を与えるだろう。   タンザニアでは二〇〇九年、アルーシャで 国連の 「ルワンダ国際戦犯法廷」 も取材した。 フ ツ 族、 ツ チ 族 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 捨 て、 「ルワンダ人」 「国民」という新しい帰属意識 で心を埋めようと国をあげて呻吟しているル ワンダ。そして肌の色も違う多民族が平和共 存 を 模 索 す る 南 ア フ リ カ の よ う に、 「 和 解 と 再統合」を目指す動きもある。   欧州の植民地宗主国が一方的に引いた国境 線。矛盾だらけの「枠」のなかで民族や宗教 対立を融和させ、異なる価値観や経済格差へ の不満を抑え、人々の「統合」を維持しよう とするのか。無理につなぎ留めようとはせず に、 バラバラになっていく動きに任せるのか。 それを選択するのは、アフリカの人々だ。   だが、 対立と暴力で罪もない人々が殺され、 安定と発展の果実が摘み取られ、負のスパイ ラルに陥る未来は、もう見たくない。戦争や テロで真っ先に犠牲になるのは、子どもや女 性たちなど罪もない、弱い人々だからだ。

参照

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