• 検索結果がありません。

中世恋愛歌謡の写本断片「ブタペスト・フラグメント」と「鷹の歌」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中世恋愛歌謡の写本断片「ブタペスト・フラグメント」と「鷹の歌」"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

中世恋愛歌謡の写本断片「ブタペスト・フラグメン

ト」と「鷹の歌」

著者

松村 國隆

雑誌名

研究論集

92

ページ

141-152

発行年

2010-09

URL

http://doi.org/10.18956/00006150

(2)

中世恋愛歌謡の写本断片

「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 と 「鷹 の 歌 」

要 旨 前 世 紀 の80年 代 、90年 代 、 そ して 今世 紀 に 入 って か ら も、 中 世 文 学 の 写 本 断 片 の発 見 が続 い て い る。 現 在 の とこ ろ これ らの 問 に特 別 な 関連 性 は 認 め られ な い もの の 、 いず れ も ドナ ウ 河 流域 な い しは そ の 近 辺 で 発 見 され た とい う事 実 を 、 単 な る 偶 然 と して 看 過 す る こ とは で きな い。 本 研 究 ノ ー トの 目的 は 、 これ らの写 本 断 片 の な か で も と くに 中 世 文 学 研 究 者 の 注 目を集 め た 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 発 見 の経 緯 とそ の 内 実 を 紹 介 す る と ともに 、 そ こ に記 され た キ ュー レン ベ ル クの 騎 十 の 「鷹 の 歌 」 とマネ ッセ写 本 な らび に 詞 華 集 『ミンネ ザ ン グの 春 』 に収 め られ た テ ク ス トとの 異 同 を確 認 し、 中世 恋 愛 歌 謡 の研 究史 上 、 この 写 本 断 片 が いか な る意 義 を有 す る の か を 検 証 す る こ とに あ る。 キ ー ワ ー ド:「 ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」、 キ ュ ー レ ン ベ ル ク の 騎 士 、 マ ネ ッ セ 写 本 、 「鷹 の 歌 」、 『ミン ネ ザ ン グ の 春 』

1は

じめ に

中 世 文 学 作 品 の か な りの テ クス トは 断 片 の 形 で 保 存 され て い る。 今 日で も多 くの 場 合 、 研 究

者 た ち が 共 同研 究 の 形 で これ らを 探 索 して お り、 こ うした 作 業 の過 程 で 発 見 され た 断 片 は 文 学

史的 に 見て きわ め て 重 要 もの が 少 な くな い 。 た とえば 、 ブ リタニ ア の トマ の 作 と伝 え られ て い

る宮 廷叙 事 詩rト

リス タ ン物 語 』 の 断 片 が 発 見 され 、 大 きな 話 題 を 呼 ん だ 。 トマ のrト

リス タ

ン物 語 』 は 、 も とも と断 片 の 形 で 遺 され た テ クス トで あ る。 そ して この 作 品 が 断 片 の形 で 伝 承

され て きた とい う事 情 か ら、 決 定 的 な 箇所 で ゴ ッ トフ リー トの 作 品 と比較 す る こ とが これ ま で

叶 わ な か った 。 とこ ろが 、 幸 い な こ とに 、 つ い に 前 世 紀 の 終 わ りに イ ギ リス の カ ー ライ ル で 発

見 され た 鍵 とな る一 節 の 断 片 が 公 に され 、 この 断 片 は ゴ ッ トフ リー トの 才 能 が い か に 卓 越 した

もの で あ る か を 瞬 時 に 明 らか に した。1)ある い は ま た 、 この と ころ ドナ ウ河 流 域 で 中世 文 学 の

写 本 断 片 の発 見 が 続 い て い るが 、 これ ら も ま た僥 倖 以 外 の 何 もの で も なか った ♂)し か しな が

ら、 い ま だ 発 見 され て い な い テ クス トが 存 在 す る可 能 性 も忘 れ て は な らな い 。

(3)

歌 謡 の 世 界 で は 、 前 世 紀 の80年 代 の 初 め に ロサ ンジ ェル ス で 中 世 の 写 本 断 片 が 巻物 の形 で 発

見 され た 。 そ れ まで この よ うな 恋 愛 歌 謡 の 巻 物 の 存 在 に 関 す るか ぎ り、 推 測 の 域 を 出 る こ とは

な か っ た♂)こ こ に紹 介 す る 「ブ ダペ ス ト ・フ ラ グメ ン ト」 は、 ま さに そ う した状 況 下 の80年

代 の 半 ば に 発 見 され た もの で あ った 。 これ は 未 完 成 の 歌 謡 写 本 の 一 部 で は あ った が 、 中 高 ドイ

ツ語 で 書 か れ た 歌 謡 に 関 す る従 来 の伝 承 に 修 正 を 加 え るほ どの 大 きな 発 見 で あ った と言 わ れ て

い る。 そ れ は、 現 在 ブ ダペ ス トの セ ーチ ェ ーニ ィ ・ハ ン ガ リー 国立 図書 館 に所 蔵 され て い る3

枚 の 羊 皮 紙 写 本 で 、1985年4月

、 こ この 図 書 館 に 勤 務 す るア ン ドラ ーシ ュ ・ヴ ィス ケ レテ ィに

ょ って 発 見 され た 。4)

2「

ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 と 「鷹 狩 り」

ま ず は 、 発 見 さ れ た 貴 重 な 写 本 断 片 「ブ ダ ヘ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 の 形 状 か ら 始 め よ う。 羊 皮 紙 の 縦 が214mm、 横 が139∼153mmで 、 これ は 小 型 写 本 に 属 す る 。 周 辺 部 に 紙 魚 に 喰 わ れ た 痕 跡 の ほ か 、 右 側 の 上 下 の 隅 に は 鋏 を 入 れ た 跡 も 認 め ら れ る 。 そ の こ とか ら し て 、 完 全 な 保 存 状 態 の も の と は 言 い が た い 。 そ れ ぞ れ の 「裏(verso,vで 表 す)」 の 右 下 に は 、 こ の 写 本 の 番 号 で あ るrCod.Germ.(=CodexGermanensis)92」 が 加 筆 さ れ て い る 。 筆 写 さ れ た 文 字 に 基 づ く推 定 に よ れ ば 、 こ の 写 本 は1300年 頃 に 司 教 座 都 市 の レ ー ゲ ン ス ブ ル ク 、 あ る い は バ イ エ ル ン も し くは そ の 南 東 部 に あ た る オ ー ス ト リア の ドナ ウ 河 流 域 で 制 作 さ れ た で あ ろ う と推 定 さ れ て い る 。5) と こ ろ で 、 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 で 注 目 す べ き こ と は 、 こ の 写 本 断 片 に テ ク ス トだ け で な く、 「表(recto,「 で 表 す)」 に 絵 が 添 え ら れ て い る 点 で あ る 。 発 見 さ れ た3枚 の 羊 皮 紙 の う ち1枚 目 の 「表 」 に は 婦 人 と 語 り 合 う キ ュ ー レ ン ベ ル ク の 騎 士(Derherrevon Chvrenberch)が 、 つ づ い て2枚 目 の 「表 」 に は 鷹 を 操 る レ ー ゲ ン ス ブ ル ク 城 伯(Der BurgrauevonRegenspurch)が 、 そ し て3枚 目の 「表 」 に は 婦 人 と語 ら う ロ ー テ ン ブ ル ク 城 代(DervogtvonRotenburch)が 描 か れ て い る 。 し か し 、 一 見 し て 分 か る よ う に 、 そ れ ら は い ず れ も 完 成 さ れ た も の で は な い 。 す で に 色 は 施 さ れ て い る も の の 、 い ま だ 下 絵 の 域 を 出 て い な い 。6) と くに 第2の 図 像 に 注 目 し て み よ う。 こ こ で は レ ー ゲ ン ス ブ ル ク 城 伯 が 鷹 匠 と し て 描 か れ て お り、 文 化 史 的 に き わ め て 重 要 か つ 興 味 深 い 図 に な っ て い る 。 甲 冑 が 輪 郭 だ け に 留 ま っ て い る こ とか ら 、 描 か れ た 紋 章 と 甲 冑 の 完 成 度 は け っ し て 高 くな い 。 馬 上 の 騎 士 は 左 手 で 手 綱 を 引 き 締 め 、 手 袋(エ ガ ケ)を は め た 右 手 に 鷹 を 止 ま ら せ て い る 。 上 着 はVネ ッ ク で 袖 は 縞 模 様 の 生 地 が 用 い ら れ 、 こ こ か ら 当 時 の 流 行 を あ る 程 度 ま で 窺 い 知 る こ とが で き る 。 両 肩 を 被 うマ ン ト 風 の も の は 両 腕 の あ た りで 緩 や か に 膨 ら み 、 自 在 な 腕 の 動 き を 可 能 に し て い る 。 こ の マ ン ト風

(4)

の も の は さ ら に 大 腿 部 を も 被 い 、 そ こ か ら ま っ す ぐ下 に 垂 れ て い る 。 鞍 は 馬 上 試 合 用 で 、 「鷹 狩 り」 用 と して 必 ず し も 相 応 しい も の とは 言 え な い 。 鐙 を しか と捉 え た 脚 は 、 留 金 の 付 い た 乗 馬 用 の 長 靴 に 納 ま っ て い る 。 立 派 な 鼠 や 尻 尾 、 頑 丈 な 蹄 鉄 、 さ ら に 胸 を 被 う幅 広 の 帯 は 、 い ず れ も じ つ に 的 確 に 描 か れ て い る 。 典 型 と し て 抽 象 化 さ れ た 樹 木 や 岩 山 とお ぼ し き 背 景 に 比 し て 、 馬 は か な り リア ル に 描 か れ て い る 。 騎 士 に 随 行 す る2匹 の 猟 犬 は そ れ 自 体 と し て は 的 確 に 捉 え ら れ て は い る も の の 、 全 体 の な か で や や バ ラ ン ス を 欠 き 、 あ た か も 愛 玩 用 の 子 犬 の よ うに さ え 見 え る 。 他 方 、 猟 犬 た ち が ダ ッ ク ス フ ン トで あ る こ とは 間 違 い な い 。7)(①) で は 、3枚 の 羊 皮 紙 の 「裏 」 は ど う な っ て い る の か 。1枚 目 に は9つ の 歌 節 が 収 め ら れ て お り、 い ず れ も キ ュ ー レ ン ベ ル ク の 騎 士 の 歌 で あ る(MF7,1-9,12)。2枚 目 に は7つ の 歌 節 が 収 め ら れ て い る が 、 そ れ ら はB写 本(WeingartnerLiederhandschrift)お よ びC写 本(Gro£e Heidelbergerbzw.ManessischeLiederhandschrift)で は リ ー デ ン ブ ル ク 城 代 の 歌 と な っ て い る(MFl8,1-19,36)。 こ れ ら は い ず れ も 、C写 本 で は レ ー ゲ ン ス ブ ル ク 城 伯 の 歌 と は 明 確 に 区 別 さ れ て い る 。 ま た3枚 目に は5つ の 歌 節 が 収 め ら れ お り、 第1歌 節 か ら 第4歌 節 ま で が 、 B写 本 で は フ リ ー ド リ ヒ ・フ ォ ン ・ハ ウ ゼ ン の 歌(MF109,9-35,150,10-18)と して 、C写 本 で は ラ イ ン マ ル ・デ ァ ・ア ル テ の 歌 と して 扱 わ れ て い る 。 ま た 第5歌 節 は 、A写 本(Kleine HeidelbergerLiederhandschrift)お よ びC写 本 で は ル ー ドル フ ・フ ォ ン ・ロ ー テ ン ブ ル ク の 第1歌 の 導 入 節 に な っ て い る 。(②) ①'佃oε 嘩贈 ・叩 醇 巾 ・1高・ ロ

贈奪

, ●

一』"、'

1

1', …'私 ㌦.乎r. '加'噌 」'川'」1・5=【'【"ε,' 艦3圃".εr画1ε イ」∫∫「'1'ε 儲'ε ・」 '・,'fεlr "」 ・' 一" ` '1ε'`"ε ゴ」7"叩 鰐'叩唱ε '町'r'ε'rfl筐'{εlf、 」Tε 一」" r摺 ε'['幽ε∫'紳7r噛'ε 【",1

暫 ,.、 碑岬 ・曽一 舘 」 一 占

唄 . . .'岬 蝉. ● ● ● 咽 εh帥 御1騨 胃㎏r、i1叱 .舳 「 憎 邑祀 ㎞ 幡 セ 郁lr輔 闇 黙 轄 朧 講 灘 肝 哩側 藍ε'. .":' 一卿 ・争 ・也 一 伽'帽 ■■L■ 凸h」 ■ 加 剛'イ"畑ε ・r'坤躍'7ε1 嗣町'叩 ε,硅 で助'叫lr・曲"rε'ε1佃'∫ 話,`田,fε ε り, '3A'」"i、 、'τε 再.'漏 ・"ε ε'ε 砧L'ε'岬 匠'1.' 萄

(5)

こ こで は、 「

鷹 の 歌 」 の 前 提 とな って い る 「鷹狩 り」 につ い て も少 し触 れ て お こ う。 す で に

中 世 ヨ ー ロ ッパ に お い て 、 狩 猟 は 宮 廷 社 会 の 娯 楽 の うち で も と くに 愛 好 され た もの で あ り、 そ

の な か で も 「鷹 狩 り」 は も っ とも高 貴 な 遊 び として 親 し まれ て い た 。 強 靭 さや 勇 敢 さの 点 で 他

の 鳥 の 追 随 を 許 さな い が ゆ えに 、 鷹 は 王 で あ る こ との 象 徴 と見 られ て い た し、 そ の 鷹 を 調 教 し

て 狩 猟 に 供 す る こ とは 、 単 な る娯 楽 で あ るに と どま らず 、 自己 陶 冶 とい う宮 廷 社 会 の騎 士 道 の

理 念 に も適 って い た 。 とい うの も、 自 由 に空 を 舞 う野 生 の 鷹 を 人 間 が 意 の ま まに す る こ と自体

が 、 当 時 の 宮 廷 人 の 心 を 魅 了 した 。 もち ろん狩 猟 に 関 して は 数 々の 形 態 が あ った が 、 「

鷹 狩 り」

以 上 に 洗 練 され た 遊 芸 は ほ か に な か った 。

そ の 由来 は 古 く、 地 中 海 沿 岸 の イス ラム 世 界 に ま で 遡 る。 中 世 ヨ ー ロ ッパ で は 、 神 聖 ロ ーマ

皇 帝 フ リー ド リヒニ 世(ll94-1250年

在 位1212-50年)のr鷹

の 書 』(Deartevenandicum

avibus)が

広 く世 に 知 られ て い た 。 彼 は ドイ ツか ら遠 く離 れ た シ チ リア 島 に 居 を構 え 、地 中 海

を 舞 台 に イス ラム 世 界 との 交 流 を 積 極 的 に 進 め た 、 当 時 として は 異 色 の 皇 帝 で あ った 。彼 が ル

ネ サ ンス 的 人物 の さ きが け と言 わ れ る所 以 で あ る。12世 紀 か ら13世 紀 に か け て 、 シチ リア 島 の

パ レル モ は イベ リア 半 島 の トレ ド と とも に、 ギ リシア 語 や ア ラ ビア 語 の 典籍 を ラテ ン語 に 翻 訳

す る作 業 の 一 大 拠 点 で あ った 。 皇 帝 フ リー ド リヒニ 世 は 進 取 の 気 性 とこ うした 地 の 利 を 活 か し、

ア ラ ビ ア語 で記 され た 鷹 に 関 す る書 を参 考 に して 、 「

鷹 の 書 』 を著 した の で あ っ た。 この 労 作

の成 立 にあ た って、 トレ ドか らパ レル モ に や って 来 た ミヒ ャエ ル ・ス コ トゥスの 助 力 は大 きか っ

た 。 こ の学 者 は 、 当 時 ア ラ ビ ア語 で記 され た イ ブ ン ・ル シ ェ ド(ラ テ ン名 ア ヴ ェロ エ ス)の

ア リス トテ レス 注 解 書 の 訳 者 として 著 名 で あ った 。8/

3テ

ク ス トの 提 示

以 上 で紹 介 した 歌 謡 の な か か ら、 と くに1枚

目の 「裏 」(B1.1v)に

記 され た キ ュ ー レン ベ

ル クの騎 士 の 作 と して 知 られ て い る 「

鷹 の 歌」 の 一 部 を採 り上 げ 、マ ネ ッセ写 本 お よび モ ーザ ー

/テ ル フ ォ ー レン編 の 詞 華 集 「ミン ネ ザ ン グ の 春 』 に収 め られ た テ ク ス ト との 比 較 を試 み る。

歌 の い くつ か の 箇所 で 羊 皮 紙 の 厳 の た め に読 み辛 くな って い る(テ

クス ト中 の[]の

部 分 が

そ れ に あ た る)。

Der herre von Chvrenberch (Budapester Fragment Bl. 1°)

[I]ch zoch mir eine v[alc]hen mer danne ein iar als ich in

do getroute als ich in mir wolte han vnd ich im sin ge

videre mit golde wol bewant do hub er sich hohe vnd floch

(6)

er fu[r]t an sinen beinen guldin riemen ouch was

im sin gevidere rot guldin got sol si nimmer gescheiden

di lieb recht ein ander sin [...] 9)

この テ クス トに 句 読 点 を つ け て1節4行

に 再 構 成 し、 訳 文 を 施 す と、 以 下 の よ うに な る。

[I]ch zoch mir eine v[alc]hen mer danne ein iar

als ich in / do getroute als ich in mir wolte han.

vnd ich im sin ge / videre mit golde wol bewant.

do hüh er sich hohe vnd floch / in andriv lant.

[S]it sach ich den valchen schone fliegen /

er fu[r]t an sinen beinen guldin riemen.

ouch was / im sin gevidere rot guldin.

got sol si nimmer gescheiden / di lieb recht ein ander sin.10'

わ た しは 一 年 以 上 も鷹 を 育 て て きま した 。

わ た しは 自分 の 思 い 通 りに 鷹 を 可 愛 が りま した 。

鷹 の 羽 に 金 色 の 飾 りを つ け た の で す が 、

鷹 は 空 高 く舞 い 上 が り、 異 国 へ 飛 び 去 りま した 。

そ の 後 わ た しは そ の 鷹 が み ご とに空 を 飛 ん で い るの を 見 ま した 。

鷹 は 脚 に 金 色 に 光 る革 紐 を つ け て い ま した 。

また 鷹 の 羽 も純 金 色 に 輝 い て い ま した 。

ど うか 神様 が 引 ぎ離 され ま せ ん よ うに 、 お 互 い に 心 か ら愛 し合 って い る者 た ち を 。

次 に 、 マ ネ ッ セ 写 本 お よ び モ ー ザ ー/テ ル フ ォ ー レ ン 編 の 『ミ ン ネ ザ ン グ の 春 』 に 収 め ら れ た 同 じ 箇 所 を 掲 げ る 。

Der von Kurenberg (8 / 9 C)

Ich zoch mir ein valken mere danne ein iar.

do ich in gezamete als ich in wolte han.

vn ich im sin gevidere mit golde wol bewant

(7)

er hvb sich vf vil hohe vn flog in anderiv lant.

Sit sach ich den valken schon fliege.

er furte an sinem füsse sidine rieme.

vn wc im sin gevidere alrot guldin.

got sende si zesamene die gelieb we11e gerne sin.11'

Der von Kurenberg

(MF 8,33 / 9,5)

`Ich zoch mir einen valken

mere danne ein jar .

do ich in gezamete,

als ich in wolte han,

und ich im sin gevidere

mit golde wol bewant,

er huop sich uf vil hehe

und vlouc in anderiu lant.

Sit sach ich den valken

schone vliegen,

er vuorte an sinem vuoze

sidine riemen,

und was im sin gevidere

alrot guldin.

got sende si zesamene,

die gelieb wellen gerne sin!' 12

4テ ク ス ト間 の 異 同(1)getrouteとgezamete マ ネ ッセ 写 本 とrミ ン ネ ザ ン グ の 春 』 の テ ク ス ト との 間 に は 、 ほ とん ど異 な る 箇 所 は 認 め ら れ な い が 、 こ れ ら の 写 本 お よ び テ ク ス ト と 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 との 間 に は 異 な る表 現 が 散 見 さ れ る 。 た だ し 、 歌 の 内 容 全 体 に 決 定 的 な 影 響 を 及 ぼ す ほ どの 異 同 は な い 。 そ れ で も 敢 え て 異 な る 点 を 挙 げ る な ら 、 次 の3点 に な る だ ろ う。 そ の ひ と つ は 、 第1節2行 目前 半 で 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 で はgetrouteと あ る の が 、 マ ネ ッ セ 写 本 お よ びrミ ン ネ ザ ン グ の 春 』 で はgezameteに な っ て い る 点 で あ る 。 後 者 の gezameteはgezamen飼 い 慣 ら す 」(弱 変 化 、 他 動 詞)の 過 去 形 で あ り 、gezamenはzamen にge一 の つ い た 完 了 相 動 詞 で あ る 。 歌 の 流 れ か ら す れ ば 、 こ の 動 詞 が こ こ に 用 い ら れ て い る 必 然 性 を わ れ わ れ は 十 分 に 理 解 す る こ とが で き る 。 婦 人 が 歌 っ て い る こ れ ら の 節 で は 、 愛 す る 男 性 が 「鷹 狩 り」 の 鷹 に 見 立 て ら れ て い る 。 十 分 な 、 い な 十 分 す ぎ る 愛 情 を も っ て 育 て 、 手 な づ け て き た 鷹 は 、 本 来 な ら ば 、 飼 い 主 の 思 い 通 りに 獲 物 を 捕 え て くれ る 。 そ の 意 味 で 、 こ の 語 は 「鷹 狩 り」 の 本 質 の 一 端 を よ く表 し て い る 。 他 方 、 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 に 見 ら れ

(8)

が ま ず 思 い 当 た る 。 一 般 的 な 用 例 と し て こ の 語 は3格 を 要 求 し て 「(あ る 人 を)信 頼 す る 」 あ る い は 「(あ る 事 を)当 て に す る 」 を 意 味 す る か 、 あ る い は2格 を 要 求 して 「(あ る 人 な い しは あ る 事 を)信 じ る 」 を 意 味 す る か の い ず れ か で あ り、 と き に は3格 と2格 を と も に 要 求 す る 例 も あ る 。 し か し な が ら 、 こ こ の 文 の よ うに 、4格 を 要 求 す る 他 動 詞 の 用 例 は 見 当 た ら な い 。13) こ の 点 に 関 し て 、 ペ ー タ ー ・ケ ル ン は い くつ か の 興 味 深 い 知 見 を 披 露 し て い る 。 つ ま り彼 は こ の 語 に2つ の 解 釈 を 提 示 した 。 そ の ひ と つ は 、 こ の 語 が 「鷹 狩 り」 の 専 門 用 語 「罠(わ な)」 を 意 味 す る 中 高 ドイ ツ 語dr血,drauch,dreuch,truch,tru,trau,treuがgetrouteと 関 連 し て お り、 「鷹 の 脚 に 紐 を 結 え る 、 縛 め る 、 束 縛 す る 」 を 意 味 す る 動 詞driuhen,dr血hen,d面wen にge一 が つ い た 完 了 相 動 詞 で あ る と い うの だ 。 し か し ま た 、 こ の キ ュ ー レ ン ベ ル ク の 騎 士 が 歌 っ た 「鷹 狩 り」 の 歌 が 愛 の 歌 で も あ る こ とか ら 、 中 高 ド イ ツ 語 で よ く用 い られ るtriuten/truten (「懇 ろ に す る 、 愛 撫 す る 」)の 完 了 相 動 詞 を 想 定 す る こ と も で き る と い う。 つ ま り、getroute はgetriuten/getrutenの 過 去 形getrouteteの 縮 約 さ れ た 形 と い う こ と に な る 。14)婦 人 が 若 い 騎 士 に 心 傾 け る 、 あ る い は 彼 と懇 ろ に な る の は 、 こ こ の 文 脈 か ら す れ ば け っ し て 不 自 然 で は な く、 む し ろ 的 を 射 た 解 釈 とい うべ き だ ろ う。 鷹 匠 が 鷹 を 一 人 前 に 訓 育 す る 苦 労 は 並 大 抵 の も の で は な い し 、 そ の 苦 労 の 後 に 結 ば れ た 両 者 の 親 密 な 関 係 は 尋 常 で は な い 。 そ れ だ け に 、 自 由 を 求 め て 鷹 が 異 国 に 飛 翔 し て し ま う とい う一 大 事 が も た ら す 悲 し み の 深 さ は 、 そ れ を 聞 く者 の 心 に 伝 わ っ て く る 。 論 者 が 以 前 に こ の 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 を 扱 っ た と き に 後 者 の 解 釈 に 従 っ た の は 、 これ が 愛 の 喪 失 の 歌 で あ っ た か ら に 他 な ら な い 。15)とは い え 、 前 者 の 「鷹 狩 り」 の 専 門 用 語 か ら 導 き 出 さ れ た 解 釈 も 捨 て が た く、 解 釈 の 可 能 性 を 広 げ た 点 で は 意 味 が あ る 。 5テ ク ス ト間 の 異 同(2)gevideremitgoldewolbewantお よ びriemen い ま ひ とつ は 鷹 そ の も の に ま つ わ る 表 現 の 異 同 で あ る 。 第1節 の3行 目 「羽 根 に 金 色 の 飾 り を 付 け て お い た(gevideremitgoldewolbewant)」 お よ び 第2節2行 目 の 鷹 の 脚 に 付 け ら れ た 「革 紐(riemen)」 が 問 題 と な る 。 ま ず 、 前 者 の 「羽 根 に 金 色 の 飾 りを 付 け る 」 とい う表 現 は 、 上 掲 の テ ク ス トの い ず れ に お い て も 同 じ 語 が 用 い ら れ て い る 。 さ ら に 、 第1節 の こ の 表 現 が 、 第2節 に お い て 少 し形 を 変 え て 、 singevidere[al]r6tguldinと し て 再 び 登 場 し て い る(細 部 に つ い て 言 え ば 、 マ ネ ッ セ 写 本 お よ びrミ ン ネ ザ ン グ の 春 』 の テ ク ス トで は 、 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 に は な い 強 調 のal が 付 い て い る)。 た だ し 、 第1節 と第2節 と で は 、 必 ず し も 同 じ状 況 を 歌 っ て い る わ け で は な い 。 第1節 で は 、 婦 人 が 自 分 の 鷹 の 羽 根 に 金 色 の 飾 りを 付 け て お い た の は 、 お そ ら く婦 人 の 鷹 に 寄 せ る 愛 情 の 表 現 で あ り、 他 の 鷹 と区 別 す る た め で も あ っ た の だ ろ う。 そ れ に 対 し て 、 第2 節 で は 以 下 の よ う に 理 解 す る こ とが で ぎ る だ ろ う。 す な わ ち 、 婦 人 の 手 を 離 れ た 鷹 が 大 空 を 舞 っ

(9)

て い る 。 そ の 勇 姿 を 表 現 し よ う とす る と き 、 誰 し も ま ず 拡 げ た そ の 翼 の 方 に 目 が 向 か う。 も し も 空 が 晴 れ わ た っ て い れ ば 、 鷹 の 両 の 翼 は 太 陽 の 光 を 受 け て ま ば ゆ い ば か りに 輝 い て い る で あ ろ う。 そ れ は 、 か つ て 婦 人 が こ の 鷹 に 付 け て お い た 金 色 の 飾 り に ほ か な ら な い 。16)これ ら の 修 飾 句(migoldeあ る い は[al]rotguldin)は 、 そ の 翼 を 輝 か せ な が ら飛 翔 す る 鷹 の 勇 姿 を じ つ に み ご とに 表 し て い る 。 か く も短 い 語 で も っ て 、 か く も み ご とに 、 鷹 の 飛 翔 を 表 す 術 は ほ か に な い の で は な い か 。 後 者 の 「革 紐 」 に つ い て は 「鷹 狩 り」 の 専 門 用 語 か ら 始 め る の が い い 。 こ れ は 、 長 さ 約20cm、 幅1,5cmの2本 の 「投 げ 紐 」 の こ と で 、 「脚 革(Geschah)」 と 「脚 輪(Drahle)」 と 「大 緒 (Langfesse1)」 か ら成 り立 っ て い る 。 こ の 「脚 革 」 は 鷹 の 脚 に 直 に 結 わ え られ る も の で 、 一 且 結 わ え ら れ る と外 さ れ る こ とは な い 。 こ れ が 鷹 の 両 脚 に 結 わ え ら れ 、 そ れ に は 「脚 輪 」 と呼 ば れ る 楕 円 形 の 金 属 性 の も の が つ い て い る 。 さ ら に 、 そ の 末 端 に は 「大 緒 」 が つ い て い る 。'7)し た が っ て 、 第2節 で 出 て く る 「革 紐 」 は 、 第1節 で 異 国 に 逃 げ た と き に 鷹 が つ け て い た も の と 同 一 で あ る と考 え ら れ る 。 第2節 の2行 目 後 半 で は 「金 色 の 革 紐 」(「 ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」)と し て 、 あ る い は 「絹 の 革 紐 」(マ ネ ッ セ 写 本 お よ び 『ミ ン ネ ザ ン グ の 春 』)と し て 登 場 し て い る が 、 お そ ら く前 者 で は 金 糸 織 の 絹 が 巻 か れ て い た こ とに な り、 後 者 で は 絹 布 そ の も の が 巻 か れ て い た こ とに な る 。 た だ し 、 第1節 の 第3行 で 同 じ 表 現 が 用 い ら れ て い る と こ ろ か ら 、 結 局 の と こ ろ 両 者 は 同 じ も の で あ ろ う。 そ の 装 飾 に 関 し て 異 な る 表 現 が な さ れ て い る も の の 、 そ の 本 体 は あ くま で も 「革 紐 」 で あ り、 「金 の 革 紐 」 と 「絹 の 革 紐 」 との 問 に 意 味 の 相 違 は な い と見 る べ き で あ ろ う。'8)む し ろ 注 目 し な け れ ば な ら な い の は 、 飼 い 主 は 「革 紐 」1本 で 自 分 の 鷹 で あ る か ど う か を 見 分 け る こ とが で き る 点 で あ る 。 そ の 意 味 に お い て 、 「金(golt)」 あ る い は 「金 の(guldin)」 と い う表 現 は 、 こ れ ら2節 か ら な る 歌 の 鍵 と な る 語 と し て 十 分 に 機 能 し て い る と言 え る だ ろ う。

6テ

ク ス ト間 の 異 同(3)第2節

最 終 行

そ して 最 後 に 第2節 最 終 行 の 解 釈 が 問 題 とな る 。 こ の 最 終 行 の 異 同 を わ れ わ れ は どの よ うに 理 解 す べ き で あ ろ うか 。 両 者 の 問 で そ の 表 現 が か な りず れ て い る た め 、 そ れ ぞ れ の 解 釈 が い さ さ か 気 に な る 。 鷹 が そ の 性 格 上 、 自 由 を 求 め て 飛 翔 す る こ とは 誰 し も 認 め る と こ ろ で あ る 。 も と も と、 飼 い 主 で あ る 婦 人 の も とを 離 れ て 飛 翔 す る 鷹 は 、 こ の キ ュ ー レ ン ベ ル ク の 騎 士 の 歌 だ け で な く、 デ ィ ー トマ ル ・フ ォ ン ・ア イ ス トの 作 と し て 伝 え ら れ て い る 歌 に も 登 場 し て お り、 す で に 人 口 に 胸 表 し た モ チ ー フ と な っ て い る 。19)しか し、 そ の 鷹 に 対 して 飼 い 主 が ど の よ うな 態 度 を と る か は 、 そ れ ぞ れ の 歌 人 に よ っ て 、 さ ら に は 同 じ 歌 人 の 歌 謡 に よ っ て 異 な る 。 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 の 第2節 の 最 終 行 で はgotsolsinimmergescheiden/dilieb

(10)

rechteinandersin(「 ど うか 神 様 が ほ ん と う に 愛 し 合 っ て い る者 た ち を 引 き離 さ れ ま せ ん よ う に 」)と あ る の に 対 し て 、 『ミ ンネ ザ ン グ の 春 』 で はgotsendesizesamenediegeliebwellen gernesin(「 ど うか 神 様 が 愛 し合 お う とす る 者 た ち を 一 緒 に し て く だ さ る よ う に 」)と な っ て い る 。 後 者 の 「鷹 の 歌 」 に つ い て は 、 戦 後 の か な り早 い 時 期 に ベ ー タ ー ・ヴ ァ ブ ネ フ ス キ ー が 次 の よ う な 見 解 を 提 示 し た 。20)婦 人 は 鷹 を 永 年 に わ た り手 塩 に か け て 育 て 、 そ の 翼 を 金 色 に 飾 り立 て て き た が 、 鷹 は 彼 女 の 意 志 に 反 し て 自 由 を 求 め て 飛 び 去 っ て し ま っ た 。 そ の の ち 彼 女 は こ の 鷹 が み ご とに 空 を 飛 ん で い る の を 見 た 。 し か し 鷹 は も は や 彼 女 の そ ば に 戻 りた くな い こ と を 意 識 し つ つ 、 悠 然 と飛 翔 す る 鷹 の 後 を 目で 追 うほ か に な す 術 は な か っ た 。 し か し 同 時 に 、 彼 女 は 自 分 自 身 が お 互 い に 愛 し 合 お う とす る 者 た ち の ひ と りで は な い こ と も 自 覚 し て い た 、 と。 す な わ ち 、 マ ネ ッ セ 写 本 や 『ミ ン ネ ザ ン グ の 春 』 の テ ク ス ト(C写 本)で は 諦 め の 境 地 が 歌 わ れ て い る 、 そ し て 「愛 す る 者 た ち 」 の な か に 、 自 分 自 身 は 入 っ て い な い 悲 し み と諦 め が 語 ら れ て い る とい うの だ 。 さ ら に 、 ヴ ォ ル ス ト ブ ロ ッ ク は マ ネ ッ セ 写 本 や 『ミ ン ネ ザ ン グ の 春 』 で は こ の ヴ ァプ ネ フ ス キ ー の 見 解 を 踏 襲 し な が ら も 、 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 に は そ の よ う な 諦 め の 境 地 は ま っ た くな く、 こ こ に は 初 期 ドナ ウ 河 流 域 の ミ ン ネ ザ ン グ の 特 徴 で あ る 婦 人 の 強 く希 求 す る 態 度 が 認 め ら れ る 、 と理 解 し て い る 。 そ し て 最 終 的 に は 、 マ ネ ッ セ 写 本 や 『ミ ン ネ ザ ン グ の 春 』 で は 諦 念 と い う 内 省 の 段 階 に 移 行 し て お り 、 「驚 く べ く 革 新 的 で あ る 」2')と述 べ て い る 。 これ に 対 して ペ ー タ ー ・ケ ル ン は 、 ヴ ァ プ ネ フ ス キ ー も ヴ ォル ス トブ ロ ッ ク も い さ さ か 過 剰 解 釈 に 陥 っ て い る の で は な い か と疑 問 を 呈 して い る 。 す な わ ち 、 恋 人 と一 緒 に い る こ とが 叶 わ な い が ゆ え に 、 ま た 恋 人 が 自 ら の 意 志 で 婦 人 の も とを 去 り、 彼 に は 戻 る 意 志 が な い とい うだ け で 、 彼 女 が 思 い 焦 が れ る 態 度 か ら 諦 め る 態 度 に 急 変 す る とい うの は 正 し い 理 解 な の か 、 と。22)これ を 要 す る に 、 い ず れ の 版 で も 表 現 の 異 同 を 超 え て 、 婦 人 は 鷹 に 見 立 て ら れ た 若 い 騎 士 へ の 思 い を け っ し て 諦 め て は い な い 。 彼 女 は ま ま な ら な い 恋 の 現 実 を 十 分 承 知 の う え で 、 い つ の 日か ふ た た び と も に 暮 ら せ る こ とを 期 待 し て い る 。 つ ま り、 こ の 最 終 行 で 婦 人 は 「愛 す る 者 た ち 」 の な か に 自 ら も 含 ま れ る こ とを 意 識 し て い る 、 とケ ル ン は 理 解 し て い る 。 キ ュ ー レ ン ベ ル ク の 「鷹 の 歌 」 の 解 釈 に つ い て は 永 年 ヴ ァ プ ネ フ ス キ ー の 見 解 が 定 着 し て い た が 、 ケ ル ン の 見 解 は 新 た な 一 石 を 投 じた と言 え る の で は な い か 。23)

7お

わ り に

ハ イ デ ル ベ ル ク 大 学 教 授フ リ ッ ツ ・ペ ー タ ー ・ク ナ ッ プ が 「ドナ ウ 河 流 域 の 恋 愛 歌 謡 は ヨ ー ロ ッ パ 精 神 史 の も っ と も 驚 くべ き、 も っ と も 理 解 し が た い 現 象 の ひ とつ で あ る 」2⇔と 述 べ て い る よ うに 、1200年 前 後 の ドナ ウ 河 流 域 に お け る 文 学 事 情 に は 不 明 な 点 が 多 々 あ る が 、 後 世 に 遺 し た 成 果 は じ つ に 豊 穣 で あ る 。 今 回 採 り上 げ た 「ブ ダ ペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 も 、 そ の こ とを

(11)

裏 づ け る発 見で あ った 。 わ ず か3枚 の 写 本 断 片 に は 、 マ ネ ッセ 写 本 と、 そ れ を 底 本 に した 詞 華

集 『ミンネ ザ ング の春』 に登 場 す る3人 の歌 人の複 数 の歌 謡 が記 され て いた 。 ライ ンマル ・デ ァ ・

ア ル テ や ヴ ァル タ ー ・フ ォ ン ・デ ァ ・フ ォ ーゲ ル ヴ ァ イデ が 活 躍 した 時 代 よ り少 し前 の 時 代 に 、

す で に ドナ ウ 河 流 域 で は 、 「鷹 の 歌 」 に代 表 され るキ ュ ー レン ベ ル クの 騎 士 をは じめ とす る歌

人た ち が 独 自の 世 界 を 築 い て い た の で あ る。 この 写 本 断 片 は 、 そ れ か ら さ らに1世 紀 以 上 を経

て な お 恋 愛 歌 謡 の 別 の 詞 華 集 が 編 纂 され て い た で あ ろ うこ とを 推 測 させ る発 見 で もあ った 。 し

た が って 「ブ ダペ ス ト ・フ ラ グ メ ン ト」 の 発 見 は 、 ドナ ウ河 流 域 の 歌 謡 成 立 の 謎 を 必 ず し も解

明す る もの で は な か った が 、 そ の 謎 を 深 め る よ りは む し ろそ の 全 体 像 を 把握 す る うえで 、 さ ら

に は13世 紀 以 降 これ らの 歌 謡 が どの よ うに伝 搬 して い った の か を 究 明 す る うえで 、 重 要 な 手 掛

か りの ひ とつ を わ れ わ れ に 提 供 して くれ た の で は な い だ ろ うか 。

1 ) Vgl. Joachim Heinzle: Der Fund von Zwettl. Was wirklich in den Fragmenten steht. In: Frankfurter

Allgemeine Zeitung. Nr. 90 vom 16.4.2003. S. 40; Derselbe: Neues zu den Nibelungen? Was wirklich

in dem "Sensationsfund" aus dem Kloster Zwettl steht. In: Deutsche Philologie des Mittelalters (2003),

S. 33.

2)ま ず 、1985年4月 、 セ ー チ ェ ー ニ ィ ・ハ ン ガ リ ー 国 立 図 書 館 の ヴ ィ ス ケ レ テ ィ は 、 未 完 成 の 中 世 歌 謡 写 本 の 断 片 、す な わ ち3枚 分 の 羊 皮 紙 写 本 を 発 見 し 、 図 書 館 に 保 管 す る こ と に 成 功 し た(Budapester Fragment,Sz6ch6nyi-Nationalbibliothek,Germ.92)。 続 い て 、1998年 、 ウ ィ ー ン 大 学 の ク リス テ ィ ー ネ ・グ ラ ス ナ ー が ド ナ ウ 河 畔 の メ ル ク 修 道 院 付 属 図 書 館 で 中 世 関 係 の 典 籍 を 調 査 し 目録 を 作 成 し て い た と き に 、 た ま た まrニ ー ベ ル ン ゲ ン の 歌 』 の 写 木 の 一 部 を 細 か く裁 断 し て 別 の 書 物 の 補 強 の た め に 再 利 用 し て い た 反 故 羊 皮 紙 を 発 見 し た(Melk,Stiftsbibliothek,Fragm.germ.6)。 さ ら に 、 今 世 紀 に 入 っ て か ら も2003什4月 、下 部 オ ー ス ト リ ア の ツ ヴ ェ ッ ト ゥ ル 修 道 院 付 属 図 書 館 の 司 書 シ ャ ル ロ ッ テ ・ ツ ィ ー グ ラ ー が 、 そ こ で 「ニ ー ベ ル ン ゲ ン 伝 説 」 の 断 片 を 発 見 し た と公 表 し た 。 しか しな が ら 、 多 くの 反 証 か ら 、 そ れ は む し ろrエ ー レ ク と エ ニ ー テ の 物 語 』 の 残 闘 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た(Zwettler

3)

4)

5)

Fragmente).

Vgl. Heinzle, a.a.O., S. 33.

Vgl. Verfasserlexikon der mittelalterlichen Literatur. Begründet von Wolfgang Stammler, fortgeführt

von Karl Langosch. Zweite, völlig neu bearbeitete Auflage. Herausgegeben von Burghart Wachinger,

zusammen mit Gundolf Keil, Kurt Ruh, Werner Schröder und Franz Josef Worstbrock.

Bd. 11:

Nachträge und Korrekturen. Berlin New York (Walter de Gruyter) 2004, Sp. 305.

(12)

6)

7)

8)

9)

10)

11)

12)

13)

14)

) ) ) ) ) ) ) 5 震 U 7 Q O ∩ ヲ ( U l 1 1 1 1 1 2 り 自

22)

23)

Vgl. Verfasserlexikon,

a.a.O., Sp. 306.

Vgl. Lothar Voetz: Überlieferungsformen

mittelhochdeutscher

Lyrik. In: Codex Manesse. Text Bilder

Sachen. Katalog zur Ausstellung vom 12. Juni bis 2. Oktober 1988. Universitätsbibliothek.

Hrsg. von

Elmar Mittler und Winfried Werner. Heidelberg (Edition Braus) 1988. S. 224-274

Vgl. Dorothea Walz: Falkenjagd

— Falkensymbolik.

In: Codex Manesse. Text

Bilder Sachen.

Katalog zur Ausstellung vom 12. Juni bis 2. Oktober 1988. Universitätsbibliothek.

Hrsg. von Elmar

Mittler und Winfried Werner. Heidelberg (Edition Braus) 1988. S. 350-371.

Des Minnesangs Frühling. Unter Benutzung der Ausgaben von Karl Lachmann und Moriz Haupt,

Friedrich Vogt und Carl von Kraus, bearbeitet von Hugo Moser u. Helmut Tervooren. 1. Texte. 38.,

erneut revidierte Auflage. Mit einem Anhang: Das Budapester und Kremsmünsterer

Fragment.

Stuttgart (Hirzel) 1988. S. 461.

Des Minnesangs Frühling, a.a.O., S. 465.

Die große Heidelberger Liederhandschrift.

In getreuem Textabdruck.

Hrsg. von Friedrich Pfaff. 1.

Teil: Textabdruck.

Heidelberg (Carl Winter) 1909. Sp. 176.

Des Minnesangs Frühling, a.a.O., S. 25.

Vgl. Mittelhochdeutsches

Wörterbuch.

Mit Benutzung

des Nachlasses

von Georg Benecke.

Ausgearbeitet

von Wilhelm Müller und Friedrich Zarncke. Bd. III. Bearbeitet von Wilhelm Müller.

Hildesheim (Georg Olms) 1963 (Nachdruck der Ausgabe Leipzig 1861). S. 109f.

Vgl. Peter Kern: Die Kürenberg-Texte

in der Manessischen

Handschrift

und im Budapester

Fragment.

In: Entstehung

und Typen mittelalterlicher

Lyrikhandschriften.

Akten des Grazer

Symposiums 13.-17. Oktober 1999, hrsg. von Anton Schwob und Andräs Vizkelety. Bern 2001, S. 145f.

「人 文 研 究 」大 阪市 立 大 学 文 学 部 紀 要 、第47巻 、第10分 冊 、1995年 、27頁 参 照 。

Vgl. Peter Wapnewski: Des Kürenbergers Falkenlied. In: Euphorion 53 (1959), S. 1-19.

Vgl. Walz, a.a.O., S. 356f.

Vgl. Wapnewski, a.a.O., S. 7ff.

Vgl. Des Minnesangs Frühling, a.a.O., S. 59.

Vgl. Wapnewski, a.a.O., S. 11ff.

Franz Josef Worstbrock:

Der Überlieferungsrang

der Budapester

Minnesang-Fragmente.

Zur

Historizität mittelalterlicher Textvarianz. In: Wolfram-Studien XV 1998, S. 142.

Peter Kern, a.a.O., S. 147f.

す で に、 ラ イザ ー や シ ュヴ ァ イ ク レは ヴ ァプ ネ ヴ ス キ ーの 解 釈 を修 正 す る 見 解 を 提 示 して い た が 、ケ

ル ン は そ の 総 括 を 試 み た と言 え る。Vgl. Irmgard Reiser: Falkenmotive in der deutschen Lyrik und

verwandten

Gattungen vom 12. bis 16. Jahrhundert.

Diss. Würzburg

1963. S. 137-150; Günter

Schweikle: Die mittelhochdeutsche

Lyrik. Bd. 1, Stuttgart (Reclam) 1977. S. 368-372.

(13)

24) Fritz Peter Knapp: Die Literatur des Fruh- und Hochmittelalters in den Bistumern Passau, Salzburg,

Brixen und Trient von den Anfangen bis zum Jahre 1273. In: Geschichte der Literatur in Osterreich

von den Anfängen bis zur Gegenwart. Bd. 1, hrsg. von Herbert Zeman. Graz 1994. S. 247.

参照

関連したドキュメント

Furthermore, we will investigate unbounded conditional-expectations in case that ᏹ and ᏺ are generalized von Neumann algebras which are unbounded generalization of von Neumann

Furthermore, we will investigate unbounded conditional-expectations in case that ᏹ and ᏺ are generalized von Neumann algebras which are unbounded generalization of von Neumann

Taking into account the patterns xx and xyx is enough to correctly compute DX(n, n − 2), but to compute G (n−2) n,t an additional pattern has to be considered: a pattern xyzx

(( 3ff.; Gaede, Durchbruch ohne Dammbruch—Rechtssichere Neuvermessung der Grenzen strafloser Sterbehilfe, NJW 20 (0, S?. 292 (ff.; Von der passive Sterbehilfe zum

Dies gilt nicht von Zahlungen, die auch 2 ) Die Geschäftsführer sind der Gesellschaft zum Ersatz von Zahlungen verpflichtet, die nach Eintritt der

—Der Adressbuchschwindel und das Phänomen einer „ Täuschung trotz Behauptung der Wahrheit.

)から我が国に移入されたものといえる。 von Gierke, Das deutsche Genossenschaftsrecht,

Yamanaka, Einige Bemerkungen zum Verhältnis von Eigentums- und Vermögensdelikten anhand der Entscheidungen in der japanischen Judikatur, Zeitschrift für