時間的接続表現「うちに」の意味特徴
著者
田中 美和子
雑誌名
研究論集
巻
75
ページ
155-168
発行年
2002-02
URL
http://doi.org/10.18956/00006347
時 間 的接 続 表 現 「うちに 」 の意 味特 徴*
田
中 美和子
0.は じめ に 本 稿 の 目的 は 、 時 間 的表 現 ウチ ニiの 持 つ 意 味 を ア イ ダ ニ と比 較 しなが ら明 らか に す る こ と で あ る。 ウチ ニ と アイ ダ ニは 、 ど ち ら も幅 のあ る期 間 を 提 示 す る時 間 的 接 続 表 現 で あ る。 次 の ウ チ ニ が 用 い られ た 文(以 下 、 ウチ ニ文)を 見 られ た い。 これ は、 アイ ダ ニ が 用 い られ た 文 (以下 、 アイ ダ ニ文)に 言 い 換 え る こ とが 可 能 で あ る。 (1)あ た た か い うち に(あ い だ に)、 食 べ て み て(吉 本 ば な な 『キ ッチン 』) こ の言 い 換 え は 、 次 の よ うに 否 定 文 を ウチ ニに 先 行 させ て み て も容 認 可 能 で あ る。 (2)知 らな い うち に(あ い だ に)夢 中 に な った これ ら は どち ら も容 認 され る もの の 、 ど こか 意 味 が異 な って い る よ うに 思わ れ る。 「鉄 は 熱 い うちに 打 て 」 とい うウチ ニ文 を 「鉄 は 熱 い あ い だ に 打 て 」 と アイ ダ ニ文 に 言 い 換 え て も文 法 的 に は 何 の問 題 も無 い 。 しか し、 慣 習 的 に は 「鉄 は 熱 い うちに 打 て 」 と言 う方 が 普 通 で あ る。 また 、 「若 い うち に勉 強 せ よ」 とい う ウチ ニ文 を 「若 い あ い だ に勉 強 せ よ」 とア イ ダ ニ文 に 言 い 換 え て も文 法 的 に は 何 の問 題 も ない が 、 これ も慣 習 的 に は 「若 い うちに 勉 強 せ よ」 と言 う方 が 自然 で あ ろ う。 しか しなが ら、 ウチ ニを アイ ダ ニ と言 い 換 え て も容 認 され る例 ば か りで は ない 。 次 の ウチ ニ 文 は アイ ダ ニ文 と言 い 換 え る とす わ りが 悪 くな り容 認 され ない 。 (3)近 い うち に(*あ い だ に)北 海 道 を 旅 行 す る予 定 で す こ の言 い 換 え は 、 否 定 文 が 先 行 して も 同様 に 容 認 され ない 。 (4)暗 くな らな い うち に(*あ い だ に)帰 って きな さい これ ら の例 で 容 認 度 に 差 が 生 まれ る こ とか ら、 ウチ ニ と アイ ダ ニに は や は り意 味 的 な違 い が あ る こ とは 明 らか に な った 。 渡 辺(1995)で は 、 「わ が こ と ・ひ と ご とii」とい う概 念 を 用 い て 、 時 間把 握 に は 話 者 が 時 間 の流 れ を 「自分1に 関 わ る流 れ(わ が こ と)」 と見 る の か 、 そ れ と も 「自分 か ら離 れ た 流 れ(ひ と ご と)」 とみ る の か の 違 い が あ る と述 べ て い る拉。 本 稿 で は こ の概 念 を ウチ ニ とア イ ダ ニに 適 用 し、 ウチ ニは 「自分 に 関 わ る流 れ 」 と して 時 間 を 把 握 す る主 体 的意 義vを 持 つ接 続 表 現 で あ る の に 対 し、 アイ ダ ニは、 「自分 か ら離 れ た 流 れ 」 と して 時 間 を 把 握 す る接 続 表 現 で あ る と主 張 す る切。 第 一 節 で 先 行 研 究 を 検 討 して 問 題 点 を 提 示 す る。 第 二 節 で は 、 ウチ ニ と アイ ダ ニは そ れ ぞ れ 「内(う ち)」 と 「間(あ い だ)」 とい う空 間 表 現 か ら時 間 表 現 へ の メ タ フ ァー的 写 像 で あ る と 考 え る立 場 か ら、 そ れ ぞ れ のイ メ ー ジ スキ ー マを 提 案 す る。 次 に ウチ ニ文 を モ デル 化 し、 そ の 語 彙 的 制 約 、 評 価 的 条 件 、 構 文 的 構 造 を 検 討 し、 ウチ ニ の持 つ 対 象 的 意 義 と主 体 的 意 義 を 説 明 す る。 また 、 アイ ダ ニに も 同様 の分 析 を 行 う。 第 三 節 で 、 ウチ ニは 主 体 的 意 義 と対 象 的 意 義 を 併 せ 持 つ のに 対 し、 アイ ダ ニは 対 象 的 意 義 のみ を 持 つ 時 間 的 接 続 表 現 で あ る と結 論 付 け る。 1.先 行 研 究 の 問 題 点 1.1.時 間 的 境 界 先 行 研 究 に は 、 「時 間 的 境 界 は 不 定 」 とす る 説 と、 「時 間 的 境 界 は 明 確 」 と す る 説 の 二 つ が 存 在 す る 。 本 節 で は 、 両 方 を 紹 介 す る 。 1.1.1.時 間 的 境 界 は 不 定 と す る 説(Alfonso1966;久 野1973) ま ず 最 初 に 、 ウ チ ニ の 「時 間 的 境 界 は 不 定 」 と す る 先 行 研 究 を 紹 介 す る 。 Alfonso(1966)は 、 ウ チ と ア イ ダ を 比 較 し た 。 次 に 引 用 す る よ う に 、 ウ チ は 、 空 間 の 概 念 "thespacewithin"が 時 間 に 適 用 さ れ 、 始 ま り も 終 わ り も 境 界 線 は 不 定 で あ る と 述 べ て い る 。 一 方、 ア イ ダ は 空 間 の概 念"thespacebetween"カ ミ時 間 に 適 応 さ れ 、 始 ま り と 終 わ りに 確 定 し た 境 界 線 を 持 つ と し て い る 。 す な わ ち 、Alfonso(1966)は 、 ウ チ は 「時 間 的 境 界 は 不 定 」 で あ る の に 対 し、 ア イ ダ ニ は 「時 間 的 境 界 は 明 確 」 だ と 考 え て い た 。 "O newayofdifferencebetweenUCHIandAIDSZ,thatthelatters"薦 θsα 刀θη determinateintervalwhoseb.初 π初 απ4θ π4αzθ61θ α吻4θ 魏4肋 θ脚sthe formersignifiesanintervalwithundefinedboundaries"(Alfonso.1966:601,下 線 筆 者) と こ ろ が 、Alfonso(1966)は 、 ウ チ も ア イ ダ も英 語 に な る とwhileと い う同 じ接 続 詞 に パ ラ フ レ ー ズ して し ま い 、 こ れ ら の 違 い は 結 局 は 無 視 さ れ て い る 。 一 方、 久 野(1973)は ウ チ ニ を マ エ ニ と 比 較 し、 ウ チ ニ は 「線 的 な 期 間 を 指 し、 始 点 も 終 点 も 不 定 で あ る 」 と して 、 マ エ ニ は 「点 的 で 始 点 も 終 点 も 明 ら か で あ る 」 と 述 べ て い る 。 す な わ ち 、 ウ チ ニ は 「時 間 的 境 界 は 不 定 」 の に 対 し、 マ エ ニ は 「時 間 的 境 界 は 明 確 」 と 考 え て い た 。 例 え ば 、 「暗 く な ら な い う ち に 帰 っ て く る の で す よ 」 が 容 認 さ れ る の は 、 何 時 何 分 に 暗 く な る か 予
め わ か って い ない と きで あ り、 い つ 暗 くな る のか 前 も って 知 って い る と 「暗 くな る まえ に 帰 っ て くる ので す よ」 と言 うと して い る。 久 野(1973)に よ る 明確 な 「時 間 的 境 界 」 とは 、 具 体 的 に 「何 時 何 分 」 や 「何 月 何 日」 とい う時 刻 や 日付 な ど の客 観 的 な知 識 を 指 す 。 ウチ ニを 用 い る場 合 は 、 こ の よ うな時 間 的 了 解 が 話 し手 と聞 き手 に ない た め に 「緊 迫 感 」 が 生 まれ る表 現 だ と し た 。 1.1.2.時 間 的 境 界 は 明 確 と す る 説(松 中2001a,b) 次 は 、 逆 に ウ チ ニ は 「時 間 的 境 界 は 明 確 」 と す る 先 行 研 究 を 紹 介 す る 。 松 中(2001a)は ウ チ ニ 、 そ し て 松 中(2001b)は ウ チ ニ と ア イ ダ ニ に つ い て 論 じ て い る 。 松 中(2001a)は 、Lakoff(1990)の"EventStructureMetaphor:Statesareboundedregionin space"を 引 用 し て 、 状 態 とは 囲 ま れ た 空 間 で あ る の で 境 界 線 を 持 ち 、 空 間 を 表 す ウ チ が 時 間 に 用 い ら れ る と そ の 時 間 は 境 界 線 を 持 つ の だ と 述 べ て い る 。 そ して 、 ウ チ ニ は あ る 時 間 の 範 囲 の 中(Sl)に も う一 つ の 時 間 の 範 囲 あ る い は 時 点(S2)を 内 包 す る と い う 図 式 で あ る と い う分 析 を 踏 ま え て 、 次 の よ うな ス キ ー マ で 図 示 し た 。 ま た 、 松 中(2001b)は 、 ウ チ ニ は 「時 間 的 境 界 線 は 明 確 」 で あ る の に 対 し、 ア イ ダ ニ は 「時 間 的 境 界 線 が 薄 い(不 定)」 と述 べ て い る 。 図1「 う ち 」 の ス キ ー マ(松 中2001b)
t一
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レ
図2「 あ い だ 」 の ス キ ー マ(松 中2001b)x:startingpoint,y:endpoint t Xr y ま た 、 次 の 例 を 見 ら れ た い 。 (5)*祖 父 が 死 ん で い る うち に そ の 遺 産 を 親 族 で 分 配 し た 。(松 中2001a)こ の 場 合 、 「祖 父 が 死 ん で い る 」 と い う時 間 は 終 了 点 が な い 。 し た が っ て 、 こ の 「祖 父 」 が 将 来 生 き 返 る と い う文 脈 で も な い 限 り、Slに 時 間 的 境 界 が な い た め 例 文(5)は 容 認 され な い 、 と して い る 。 松 中(2001a)で は ア イ ダ ニ に 対 す る 議 論 は な され て い な い 。 1.1.3.ま と め 以 上 、 ウチ ニが 提 示 す る時 間 が 「時 間 的 境 界 線 は 明確 」 とす る説 と、 「時 間的 境 界 線 は不 定 」 とす る説 の両 方 を 検 討 した 。 ウチ ニが 提 示 す る時 間 の境 界 線 は 明確 な のだ ろ うか 、 言 い 換 え れ ば 、 そ の始 ま りと終 わ りは 明確 な のだ ろ うか 、 そ れ と も不 明確 な のだ ろ うか 。 まず 、 ウチ ニが 提 示 す る 「時 間 的 境 界 は 明確 」 とす る説 を 考 え て み た い 。 松 中(2001a)で は 「*祖父 が 死 ん で い る うちに 」 は 「死 ん で い る」 とい う事 態 が 明確 な境 界 を 持 た な い た め ウチ ニで は 容 認 され な い と して い た。 た しか に 、 「死 ん で い る」 とい う終 止 線 を 想 定 す る こ とは 死 後 に 復 活 す る文 脈 が ない 限 り無 理 で あ る。 しか し、 時 間 的 な終 結 点 を 持 た な い 「死 ん で い る 」 とい う事 態 は 、 松 中(2001b)が 明確 な境 界 を 持 た な い 時 間 表 現 と して い る ア イ ダ ニを 用 い て も次 の様 に 非 文 に な る。 (6)*祖 父 が 死 ん で い るあ い だ に そ の 遺 産 を 親 族 で 分 配 した 。(松 中2001a) した が って 、 例文(5)が 容 認 され な い こ とは 単 に ウチ ニ の持 つ 時 間 的 境 界 線 が 明確 で あ る こ と の証 明に は な ら ない 。 さ らに 、 ウチ ニが 逆 に 明確 な境 界 線 を 持 た ない 時 間 を 示 す 例 も存 在 す る。 例 え ば 、 「時 が た つ うち にvi」 とい う表 現 で あ る。 「時 が た つ 」 とは 終 点 が 特 定 され な い 不 明確 な時 間 で あ る。 も しウチ ニが 明確 な時 間 的 境 界 線 を 持 つ 接 続 表 現 で あ る な らば 、 こ の表 現 は 容 認 され ない は ず で あ る。 した が って 、 ウチ ニは 明確 な時 間 的 境 界 線 を 持 ち、 アイ ダ ニは 明確 な 時 間 的 境 界 線 を 持 た ない とす る議 論 は 認 め る こ とが で き ない 。 次 は、 ウチ ニ が提 示 す る 時 間 が 「時 間 的 境 界 線 は 不 定 」 とす るAlfonso(1966)そ して 久 野 (1973)の 説 を 考 え て み よ う。 先 に 挙 げ た 例 「時 が た つ うちに 」 の よ うに 、 ウチ ニは 明確 な境 界 線 を 持 た ない 時 間 を 提 示 す る こ とが で き る。 しか し、 ウチ ニが 提 示 す る時 間 が 「時 間 的 境 界 は 明確 」 で あ る 例 もあ る。 久 野(1973)に よれ ば 、 「時 間 的 境 界 線 は 不 定 」 とは、 具 体 的 な 時 刻 や 日付 を 持 た ない とい うこ とで あ る。 しか し、 次 の例 を 見 られ た い 。 (7)4時 間 目は2時40分 か らな の です が 、授 業 が始 ま らな い うち に 、 ち ょっ と急 い で 図 書 館 へ 行 って 本 を 返 して き ます 。 例 文(7)で 、 試 み に ウチ ニが 提 示 す る期 間 の 終 点 を 言 語 的 に 明示 して み た が 、 この文 は 容 認 可 能 で あ る。 また 、 次 の例 も見 られ た い 。 (8)4時 間 目は何 時 か ら始 ま るの で した っけ。 まだ しば ら くは 時 間 が あ るで し ょ うか ら、 授 業 が 始 ま ら ない うちに 、 ち ょっ と急 い で 図 書 館 へ 行 って 本 を 返 して き ます ね 。 例 文(8)で 、 ウチ ニ が 提 示 す る期 間 の終 点 を 不 明 確 に してみ た が 、 文 の 容 認 度 に は変 わ りは な
い 。 こ の こ とか ら、 ウチ ニ と アイ ダ ニ の指 し示 す 時 間 の具 体 的 な時 刻 や 日付 が 現 実 世 界 に お い て 具 体 的 に 話 し手 と聞 き手 の間 で 了 解 され て い るか ど うか は 、 これ ら の語 の本 質 的 な意 味 の違 い とは 関 わ りの ない 事 柄 で は ない か と思 わ れ る。 ウチ ニに お い て 本 質 的 な のは 時 間 的 境 界 が 特 定 され て い るか ど うか で は な く、 境 界 の存 在 が 想 定 され て い るか ど うか で あ る。 しか も、 時 間 的 境 界 線 の開 始 線 と終 止 線 は 区 別 して 論 じる必 要 が あ る。 なぜ な ら、 ウチ ニ文 で 明確 で ない の は 開 始 線 の方 で あ って 終 止 線 は そ の存 在 が 明 らか に 想 定 され て い る と思 わ れ るか らで あ る。 1.2.因 果 関 係(浅 野1975;國 廣1978) 浅 野(1975)は 、 「Pウ チ ニQ」 で は 、 事 象PとQの 間 に 「因 果 関 係 」 が あ る と 主 張 し た 。 し か し な が ら 國 廣(1975)は 、 因 果 関 係 を 含 ま な い 例 を 提 出 して こ れ を 否 定 した 。 浅 野(1975:53)は 、 「Pの 時 間 の 経 過 ・進 行 がQの 発 生 ・成 立 の 要 因 に な っ て い る 。 す な わ ち 、 PとQの あ い だ に は 、 何 ら か の 意 味 で 因 果 関 係 が あ る 」 場 合 に ウ チ ニ が 用 い ら れ る と し て 、 ウ チ ニ 文 を 次 の よ うに 類 型 化 した 。 以 下(9)一(12)の 用 例 は 浅 野(1975)か ら 引 用 し た も の で あ る 。 (9)1.並 行 型 一 行 為 的 因 果 関 係 話 し て い る う ち に 、 だ ん だ ん 落 ち 着 い て き た 。 (10)2.並 行 型 一 時 間 的 因 果 関 係 話 し込 ん で い る う ち に 、 暗 く な っ て き た 。 (ll)3.遮 断 型 一 行 為 的 因 果 関 係 髪 を 洗 っ て い る う ち に 、 シ ャ ソ プ ー が 目 に 入 っ た 。 (12)4.遮 断 型 一 時 間 的 因 果 関 係 そ ん な 話 を し て い る う ち に 、 主 人 が 帰 っ て き た 。 しか し、 國 廣(1978)は 、 浅 野(1975)が 「時 間 的 因 果 関 係v血」 の 設 定 す る な ど 「因 果 関 係 」 を 幅 広 く解 釈 して 用 い て い る と批 判 し、 「因 果 関 係 」 は 事 象PとQか ら の 文 脈 的 含 意 か ら く る も の で あ り ウ チ ニ の 語 彙 的 意 味 で は な い と 述 べ 、 次 の(13)(14)の 「因 果 関 係 」 の な い ウ チ ニ 文 を あ げ て 反 証 した 。 (13)着 い て1時 間 も し な い うち に 暗 く な っ て き た(1時 間 も経 た な い 事 は 暗 く な る 事 の 原 因 で は あ りえ な い わ け で あ る) (14)知 ら な い う ち に 雨 が 降 っ て き た(天 候 の 変 化 を 知 ら な い 事 が 雨 が 降 る 事 の 原 因 で は あ り得 な い わ け で あ る) こ れ ら の 例 か ら わ か る よ うに 「因 果 関 係 」 は ウ チ ニ 文 に 必 ず 見 ら れ る 訳 で は な い 。 次 の 例 も 見 ら れ た い 。 (15)寝 て い る うち に 宅 配 が 来 た 寝 て い る 事 が 原 因 と な っ て 宅 配 が く る こ と は あ る だ ろ うか 。 そ ん な こ と は あ り得 な い だ ろ う。
した が っ て 、 「因 果 関 係 」 は 語 用 論 的 含 意 す な わ ち 推 意 で あ る と 言 う こ と が で き る 。 推 意 か ら 生 ま れ た 「因 果 関 係 」 はGricel995(1989)カ ミ指 摘 した よ うに 、 発 話 の あ と で 否 認 す る こ と が 可 能 で あ る 。 (16)そ ん な 話 を し て い る うち に 、 夫 が 帰 っ て き た 。 しか し 、 こ れ ら 二 つ の 出 来 事 に 因 果 関 係 は な い 。 一 方 、 因 果 関 係 を 表 す 接 続 表 現 カ ラを 用 い る と(16)の よ うな ス ム ー ズ なキ ャ ソ セル は で き な く な るix。 例 文(17)は 容 認 さ れ な い 。 (17)?そ ん な 話 を し て い る か ら 、 夫 が 帰 っ て き た 。 しか し 、 こ れ ら 二 つ の 出 来 事 に 因 果 関 係 は な い 。 (16)の ウ チ ニ 文 が 容 認 さ れ る の は 、 ウ チ ニ で つ な が れ た 二 事 象 間 の 因 果 関 係 が 否 認 す る 余 地 を 残 した 推 意 で あ っ た か ら で あ ろ う。 一 方 、(17)の カ ラ 文 で は 、 カ ラ と い う因 果 関 係 を 語 彙 的 意 味 と して 持 つ 接 続 表 現 が 用 い ら れ て い る た め 、 直 後 に そ れ を 否 認 し よ う と して も 矛 盾 が 生 ま れ て し ま う。 「因 果 関 係 」 は 、 ウ チ ニ の 語 彙 的 意 味 で は な く推 意 な の で あ る 。 1.3.新 し い 事 態 へ の 展 開P→ ∼P(浅 野1975;國 廣1978;森 田1980;寺 村1993;渡 辺1995) 本 節 で は 、 浅 野(1975)、 國 廣(1978)、 森 田(1980)、 寺 村(1993)、 渡 辺(1995)の 主 張 の 共 通 点 を 「新 しい 事 態 へ の 展 開P→ ∼P」 と して 検 討 す る つ も りで あ る 。 浅 野(1975)は 、 ウ チ ニ文 で 「PがQの 出 現 に よ っ て 終 わ り新 し い 事 態 が 始 ま る 」 と述 べ て い る 。 (18)板 き れ に つ か ま っ て 浮 き つ 沈 み つ し て い る うち に 漁 船 が 通 りか か っ た 。 (浅 野1975:59) こ の ウ チ ニ文 で 、PがQの 出 現 に よ っ て 終 わ り 「漁 船 に 助 け ら れ た 」 と い う展 開 が 予 想 さ れ る と 述 べ て い る が 、 次 の よ う に 、 後 続 文 に よ っ てPがQの 出 現 に よ っ て 新 しい 事 態 が 始 ま ら な い 読 み を 可 能 に す る こ と が で き る 。 (19)板 きれ に つ か ま っ て 浮 き つ 沈 み つ し て い る う ち に 漁 船 が 通 りか か っ た 。 大 声 で 叫 ん だ が 気 づ い て も ら え ず 、 私 た ち は 海 に 浮 か ん だ ま ま 夜 を 明 か し た 。 ウ チ ニ が 用 い ら れ て い る か ら と い っ て 、 新 しい 事 態 が 始 ま る 場 合 ば か りだ と は 限 ら な い と い う こ と に な る 。 一 方 、 ア イ ダ ニ は 「PがQの 出 現 に よ っ て 終 わ り新 し い 事 態 が 展 開 す る と き に は 用 い な い 」 と 浅 野 は 述 べ て い る 。 しか し、 次 の よ うに ア イ ダ ニ文 で もPがQの 出 現 に よ っ て 終 わ り新 しい 事 態 が 展 開 す る 場 合 も あ る 。 (20)流 し の 中 を ひ っ か き ま わ し て い る あ い だ に 、 右 手 の 中 指 の 先 を ガ ラ ス の か け ら で 切 っ て し ま っ た 。 私 は し ば ら く指 の 腹 か ら血 が あ ふ れ で て 、 そ れ が ウ ィ ス キ ー の ラ ベ ル の 上 に ぽ た ぽ た と落 ち る 様 子 を 眺 め て い た 。
(村 上 春 樹 『世 界 の 終 わ り と ハ ー ドボ イ ル ド ワ ソ ダ ー ラ ソ ド』) こ の ア イ ダ ニ文 で はPがQの 出 現 に よ っ て 終 わ り新 し い 事 態 が 展 開 し て い る 。 流 し の 中 を ひ っ か き ま わ して 捜 し物 を して い た 「私 」 は ガ ラ ス の か け ら で 指 先 を 切 っ た こ と に よ っ て 、 捜 し物 を や め 、 指 か ら 血 が 出 る 様 子 を 観 察 し て い る の で あ る 。 した が っ て 、 「P→ ∼P」 と い う展 開 が あ る か ど うか は 、 ウ チ ニ お よ び ア イ ダ ニ の 語 彙 的 意 味 と 直 接 的 な 関 係 が あ る と は 言 え な い 。 こ の ほ か 、「対 比 」(國 廣1978)・ 「状 況 変 化 の 含 み 」(森 田1980)・ 「対 立 的 な 状 態 」(寺 村1993)・ 「や が てPで は な く な る だ ろ う、 そ の 前 に 」(渡 辺1995)な ど 、 さ ま ざ ま な 説 明 が 試 み ら れ て い る が 、 そ の 共 通 す る と こ ろ は 次 の よ う な 想 定 で あ る 。 (21)「Pウ チ ニQ」 に お い て 、Pの 先 に 成 立 す る ∼Pに お い て 、Qの 成 立 が 不 可 能 ま た 困 難 が 伴 う こ の 仮 説 を 検 討 し て み よ う。 ま ず 第 一 に 、 先 ほ ど(18)の 例 で 述 べ た よ う に 、 ま ず(21)で 「Pの 先 に 成 立 す る ∼P」 と さ れ て い る が 、 ∼Pは 必 ず 成 立 す る と は 限 ら な い 。 さ ら に 、 以 下 で 、 ∼P が 成 立 す る 場 合 に お い て もQの 成 立 が 「不 可 能 」 で あ っ た り 「困 難 が 伴 う」 状 況 で あ る か ど う か に つ い て 検 討 す る 。 次 の 例 を 見 ら れ た い 。 (22)若 い うち に 苦 労 し た ほ うが 良 い 例 文(22)で 「若 い ウ チ ニ 苦 労 す る 」 と い う命 題 は 、 確 か に 若 く な い 状 態[∼P]で 苦 労 す る[Q の 成 立]の は 、 時 に 「不 可 能 」 で あ る し又 「困 難 が 伴 う」 状 況 で あ る と い え る の で 、(21)の 想 定 は 成 立 す る 。 しか し、 次 の 例 は ど うだ ろ うか 。 (23)若 い うち に 死 ん だ こ の 例 で は 、 若 く な い 状 態[∼P]で 死 ぬ[Qの 成 立]の は 、 「不 可 能 」 で も 「困 難 が 伴 う」 わ け で も な い 。 した が っ て 、(21)で な さ れ た 想 定 は 不 十 分 で あ る 。 こ こ ま で 、 先 行 研 究 で 分 析 さ れ た ウ チ ニ の 意 味 が こ と ご と く適 切 で は な い こ と を 説 明 して き た 。 で は 、 ウ チ ニ に は ど の よ う な 意 味 が あ る の だ ろ うか 。 こ れ に 関 して 、 次 の 二 節 で 詳 し く取 り扱 っ て い く こ と に す る 。 2.時 間 的 接 続 「Pう ち にQ」 の 意 味 2.1.空 間 か ら 時 間 へ:「 うち(内)」 と 「う ち に 」 の ス キ ー マ ウ チ ニ の 「う ち(内)」 と は 、 も と も と空 間 を 指 す 言 葉 で あ る 。 本 節 で は 、 語 の 意 味 が ス キ ー マ(図 式)と して 概 念 化 さ れ る と 認 知 言 語 学 的 に 考 え 、 こ れ を ス キ ー マ で 表 す こ と を 試 み る 。 ま ず 、 図3ウ チ(渡 辺1995:25) 渡 辺(1995:25)で は 次 の よ うな ス キ ー マ が 描 か れ て い る 。
∴
そ して 、 こ の 内側 へ と 向い た 力 を 「求 心 性 」 と よび 、 求 心 性 のた め に 境 界 線 が よ り意 識 され る と説 明 して い る。 本 稿 で は 、 こ の境 界 線 が 強 く意 識 され る とい う渡 辺 の主 張 を 、 中 心 に 話 し手 の視 点 を 置 い て 境 界 へ と 向か うメ ソ タル パ ス(破 線 矢 印)を 用 い て 話 し手 の意 識 を 表 した 。 図4「 うち(内)」(空 間)
○
Vi視 点 空 間 は 三 次 元 で あ る 。 空 間 表 現 「うち(内)」 は 、 視 点 を そ の 中 心 に 置 い て 、 「うち 」 と 「そ と」 を 転 換 す る 境 界 線 を 強 く意 識 して メ ソ タ ル パ ス を 送 っ て い る 。 話 し手 の 「視 点 」 が 中 側 に あ る こ と か ら 、 話 し手 が 自 分 に 関 わ る 空 間 と して 「う ち 」 を と ら え て い る 様 子 を 表 して い る 。 こ れ は 渡 辺(1991)の い う 「主 体 的 意 義 」 を 持 つ 空 間 で あ る 。 「うち(内)」 は 「そ と(外)」 に 対 し、 自 分 の 縄 張 りで あ る 空 間 を 指 す 。 時 間 は 空 間 の メ タ フ ァ ー で あ る(Lakoffl987;1990)。 空 間 表 現 で あ る 「う ち(内)」 が 時 間 表 現 に メ タ フ ァ ー 的 写 像 さ れ る と 考 え 次 の よ うに 時 間 表 現 の ウ チ ニ の ス キ ー マ 化 を 試 み た 。 本 稿 で は 、 ウ チ よ り も 接 続 表 現 と して よ り一 般 的 な ウ チ ニ を 取 り上 げ る 。 図5「 うち に」(時 間 表 現) V レ掘
渡 辺(1995)で は 、 時 間 表 現 の ウチ ニ も 「求 心 性 」 を 受 け 継 い で い るた め 、 時 の流 れ と逆 に な る 境 界 線 が よ り強 く意 識 に 上 る と して い る。 こ の こ とを 終 点 の境 界 線 を 太 く して 表 した 。 また 、 Moore(2000)が 指 摘 して い る よ うに 時 は一 方 向 に流 れ 、 人 は 未 来 に 向 か う傾 向が 強 い と思 わ れる。 空 間 表 現 と 同様 、 内側 に 視 点 を お い た 話 し手 は 未 来 に あ る終 点 を 強 く意 識 して い る。 そ の こ とを 視 点(V)か ら メ ソタ ル パ ス(破 線 の 矢 印)を 終 点 の境 界 線 へ 送 る こ とに よ って表 した 。 人 は 前 面 に しか 視 線 を 送 る こ とが で き ない と想 定 し、 開 始 点 に は メ ソ タル パ スは 送 れ ない も の とす る。 した が って 、 こ の よ うな場 合 ウチ ニが 提 示 す る時 間 は 、 最 終 時 だ け が プ ロフ ァイ ル さ れ る。 時 間 表 現 の ウチ ニは 、 話 し手 の 視 点(V)が 提 示 され る時 間 の 内側 に 入 る こ とに よ り、 話 し手 が 時 間 を 「自分 に 関 わ る流 れ 」 と して 捉 え て い る こ とを 表 して い る。 また 、 未 来 に 向 か って メ ソ タル パ ス を送 って い る の で 、Pだ け で は な く∼Pの 状 況 が(借 景 の如 く)視 野 に 入 る 。 した が って 、 プ ロ フ ァイ ル され た 境 界 線 の 内側 だ け を視 野 に 入 れ 「Pの うち に 」 とい う表 現 も可 能 で あ り、 また ま だ 起 こ って い な い ∼Pの 存 在 を 引 き 合 い に 出 して 「∼Pに な らな い うちに 」 とい う表 現 も可 能 で あ る。 「Pの うち に 」 も 「∼Pの うち に」 も、 境 界 線 に 注 目 して い る こ とに は 変 わ りは ない 。 しか し、 そ れ が 現 実 世 界 で 何 時 何 分 で あ るか とい う客 観 的 な知 識 は 関 係 が ない だ ろ う。 次 に 、 時 間 的表 現 の アイ ダ ニの ス キ ーマ も検 討 して み た い 。 「あ い だ に 」 とい う表 現 も、 空 間 表 現 か ら の メ タ フ ァー的 写 像 で あ る と考 え られ る。 また 、 「AとBの アイ ダ ニ」 また 「一 時 と 二 時 の ア イ ダ ニ」 とい う表 現 か ら も類 推 で き る よ うに 、 「あ い だ に 」 とい う時 間 表 現 で は 、 そ の始 ま りと終 わ りは 次 で 図 示 した よ うに 話 者 に よ って 客 観 的 に 捉 え られ る。 次 の図 を 見 られ た い 。 図6「 あいだに」(時間表現)
掘
.7 、 ・ 鞠亀,○
アイ ダ ニ とい う時 間 的 接 続 表 現 の場 合 は、 「PとQの ア イ ダ ニ」 とい う表 現 が 可 能 で あ る こ とか ら 明 らか な よ うに 、 開 始 点 と終 点 の双 方 に メ ソ タル パ スを 送 ら な くて は な ら ない 。 した が って 、 話 し手 の 「視 点 」(V)は 時 間 の外 側 に 位 置 して お り時 の流 れ を 「自分 か ら離 れ た 流 れ 」 と し て 捉 え て い る と考 え る。 「*PとQの ウチ ニ」 とい う表 現 が 容 認 で きな い こ とか ら、 や は り、 ウ チ ニは ど ち らか 一 方 だ け に しか メ ソ タル パ スを 送 れ ない こ とが わ か る。これ ら図5と 図6か ら、 なぜ 「近 い ウチ ニ/遠 か らぬ ウチ ニ」 が 言 え て 「*近い ア イ ダ ニ/* 遠 か らぬ ア イ ダ ニ」 が 言 え な い の か 、 また なぜ 「長 い ア イ ダ ニ/短 い あ い だ に 」 が 言 え て 「* 長 い ウチ ニ/*短 い ウチ ニ」 が 言 え な い のか が説 明 で き る。 図5に あ る よ うに、 ウチ ニで は 話 し手 の視 点 が 時 間 の中 側 に 位 置 して 未 来 を 見 つ め て い る。 この よ うな場 合 、時 間 的 境 界(終 点) に 対 して 遠 近 を 測 る こ とは で きて も長 短 を 測 る こ とは で き まい 。 これ に 対 して 、 図6に あ る よ うに 、 アイ ダ ニで は 話 し手 の視 点 が 時 間 の外 側 に 位 置 して い る ので 、 外 側 か ら見 て 時 間 が 長 い のか 短 い のか 、 そ の長 短 を 測 る こ とが で き る。 次 節 で は 、 ウチ ニ文 を モ デル 化 し、 ウチ ニ の持 つ 主 体 的 意 義 を 説 明す る。 2.2.ウ チ ニ の 分 析 ウチ ニ の スキ ー マ(図5)は 、 次 の三 つ の ウチ ニ文 の モ デル に 類 型 化 され る と考 え る こ とが で き る。 ウチ ニは 話 し手 の主 体 的 意 義 が 込 め られ る表 現 で あ る とす で に 述 べ た が 、 ど の よ うな 気 持 ちが 込 め られ る のか 検 討 して み よ う。 ①(ま だ)Pう ちにQな ん て。 これ は、 少 な くと もPの 期 間 が 終 了 す る ま で は 非Qで あ る こ とが普 通 で あ る の に、 とい う気 持 ちが 込 め られ る。 そ の気 持 ちは 、 一 言 で い うな ら 〈驚 き〉 で あ る。 (24)ま だ 若 い うち に 死 ぬ な ん て 。 年 を 取 って か ら死 ぬ のが 普 通 で あ る のに 、 若 く して 死 ん だ とい う事 実 に 対 して 、 まず 〈驚 き〉 の気 持 、 そ れ か ら こ の場 合 残 念 な気 持 ちや 悲 運 を 嘆 く気 持 ち も 同時 に 表 現 され て い る。 (25)ま だ 髪 を あ ら って い る うち に 友 だ ち が 来 た 。(来 た な ん て)(浅 野1975) (26)何 頁 も読 まな い うち に 、 信 夫 の 心 は た ち まち この 小 説 の 中 に 引 き込 まれ て 行 った 。 (引 き込 まれ た な ん て)(三 浦 綾 子r塩 狩 峠 』) (27)実 は まだ 青 い うち に 全 部 落 ち た 。(落 ち た な ん て)(井 伏 鱒 二 『黒 い雨 』) これ らに も、 「一な ん て」 と言 い換 え られ る こ とか ら、 予 想 外 の こ とが起 こ った とい う 〈驚 き〉 の気 持 ちが 現 れ て い る と言 え る。 ②P(な い)う ちにQし た方 が よい。 これ に は 、Pで あ る 期 間 を 終 了 して しま う とQで き な くな る、 と い う場 合 や 、Qす る こ とが 困 難 に な った り不 適 当 に な った りす る場 合 が 含 まれ る。 (28)暗 くな らな い うち に 、 帰 って きな さい 。(帰 って きた方 が よい) (29)先 生 が 来 な い うち に 、 遊 ぽ うよ。(遊 ん だ方 が よい) Pで あ る期 間 が 終 了 す る と出 来 な い とい う気 持 ちが あ る た め 、 モ デ ル② はPが 終 わ った後 を 肯 定 的 に捉 え、 それ を 前 提 に してPで あ る期 間 を否 定 形 で 「一な い うち に」 と表 現 とす る こ とが
多 い と 思 わ れ る 。 した が っ て 、 そ の よ う な 場 合 は 、 「一 な い う ち にQし た 方 が よ い 」 と な る 。 ③Pう ち に(自 然 に)Qに な る 。 期 間Pが 終 了 す る 時 点 を 心 に 思 い 浮 か べ 、 そ の 時 点 に はQが 増 し て い る こ とを 表 す 。 ま た 、 何 ら か の 変 化 が 〈思 い が け ず 〉 起 こ っ た と い う 〈驚 き 〉 の 気 持 ち が 込 め ら れ る 。 (30)ポ ス タ ー を 眺 め て い る うち に 六 時 に な っ た 。 (村 上 春 樹 『世 界 の 終 わ り と ハ ー ドボ イ ル ド ワ ソ ダ ー ラ ソ ド』) (31)十 八 歳 の 年 の 僕 に と っ て 最 高 の 書 物 は ジ ョ ソ ・ア ッ プ ダ イ ク のrケ ソ タ ウ ロ ス 』 だ っ た が 何 度 か 読 み か え す う ち に そ れ は 少 し ず つ 最 初 の 輝 き を 失 っ て 、 フ ィ ッ ツ ジ ェ ラ ル ドの 『グ レ ー ト ・ギ ャ ッ ビ イ 』 に ベ ス ト.ワ ソ の 地 位 を ゆ ず りわ た す こ と に な っ た 。(村 上 春 樹 『ノ ル ウ ェ イ の 森 』) (32)話 し 込 ん で い る うち に 、 す っ か り暗 くな っ た 。(浅 野1975) 以 上 、 ウチ ニ文 は 三 つ の タイ プに 大 別 され る。 これ らに 共 通 す る ウチ ニ の中 心 的 意 味 と して つ ぎ の も のが 挙 げ られ る。 (33)Pウ チ ニQ: ウチ ニ とはPで あ る期 間 が 終 わ った 後 も視 野 に 入 れ 、 そ の終 了 点 を 心 に 描 く表 現 で あ る。 した が って 、 「*年末 まで の うち に 大掃 除 を しよ う」 が 容 認 され な い の は 、 「年 末 ま で」 とい う 表 現 はPで あ る期 間 が 終 わ った 後(年 末 が 終 わ った 後)が 切 り取 られ た 表 現 だ か らで あ る。 2.3.ア イダ ニ の 分 析 ウ チ ニ と比 較 す る と、 ア イ ダ ニは そ の期 間Pの あ い だ にQが 成 立 す る こ とを 述 べ て い るだ け で あ り、 対 象 的 意 義 しか 持 た ない 。 ほ とん ど の ウチ ニ文 は アイ ダ ニ文 と言 い 換 え る事 が で き る が 、 中 に は 言 い 換 え ので き ない 文 が あ る。 (34)9時 か ら5時 の あ い だ に 駅 で 待 って い て 下 さい 。 これ は ウチ ニ文 で は 言 い 換 え られ ない 。 そ れ は 、 ウチ ニは 時 間 の終 了 点 しか 心 に 思 い 浮 か べ ら れ ない のに 対 し、 アイ ダ ニは 開 始 点 と終 了 点 の両 方 を 視 野 に 入 れ る こ とが で き るか らで あ る。 (35)(今 か ら)年 末 まで の あ い だ に 大 掃 除 を し よ う。 これ も ウチ ニ文 で は 言 い 換 え られ ない 。 それ は、 ア イ ダ ニはPで あ る時 間 が終 了 した後 は 視 野 に 入 れ ない 時 間 表 現 だ か らで あ る。 (36)探 検 の あ い だ に 調 査 す る これ も ウチ ニ文 で は 言 い 換 え られ ない 。 そ れ は 、 調 査 は 思 い が け ず 自然 に 達 成 す る も ので は な
く意 図 して行 う行 為 で あ りそ のPで あ る期 間 に調 査 を し終 え な け れ ば 二 度 と出来 な い と言 う特 殊 な文 脈 で も無 い 限 り ウチ ニの使 用 は 適 切 で は な い。(モ デ ル② 「探 検 して い る うち に 調 査 し た 方 が よい(探 検 を 終 え て帰 国 して し ま う と調 査 で きな くな る)」 とい う異 な った ニ ュ ア ソ ス を 含 ん で しま う。) 以 上 、 ア イ ダニ の 場 合 は 事 象Pの 始 ま りと終 わ りを 客 観 的 に と ら えた 時 間的 表 現 で あ る こ と を 見 た 。 ア イ ダ ニは 単 に 期 間Pの 中 で、 何 か が起 こ る、 あ るい は 完 結 す る、 ま た終 わ らず に 続 く、 とい うこ とを 述 べ て い る。 3.結 語 複 文 に は 、 無 限 に あ る 出来 事 の中 か ら選 ば れ た 二 つ の 出来 事 が 一 つ の文 の中 に 組 み 合 わ され て い る。 した が って 、 事 象PとQの あ い だ に は何 らか の 関 係 を 話 者 自身 が 見 出 して い るは ず で あ る。 時 間 的 接 続 に お い て は 、 そ れ は 基 本 的 に は 時 間 的 関 係 で あ るは ず だ が 、 ウチ ニ とい う時 間 的 接 続 表 現 に 関 して は 、 主 体 的 意 義 が 関 与 す る こ とを スキ ー マ(図 式)と 三 つ の モ デル に 類 型 化 す る こ とに よ って 説 明 した 。 これ に 対 し、 アイ ダ ニは 、 対 象 的 意 義 を 持 つ 時 間 的 接 続 表 現 で あ る。 話 者 は 、 時 間 を こ の よ うに 「自分 に 関 わ る流 れ 」 また 「自分 か ら離 れ た 流 れ 」 と、 主 観 的 に も客 観 的 に も捉 え る こ とが で き る。 ウチ ニは 、 純 粋 に 時 の流 れ だ け を 記 録 す るだ け の接 続 表 現 で は な く、 終 了 点 を 心 に 思 い 浮 か べ そ れ に 対 す る心 的 な 〈驚 き〉 や 〈思 い が け な さ〉 を 表 す 。 これ に 対 しア イ ダニ は 、 終 了 点 を 心 の 中 に 思 い 浮 か べ る こ と もな く、 した が って 、 時 間Qが 終 わ った 後 の こ とは 話 し手 の視 野 に 入 ら ない 。 幅 のあ る時 間 を 提 示 す る これ ら二 つ の時 間 的 接 続 表 現 は こ の よ うに 用 法 ・機 能 を 分 担 して お り、 微 妙 な意 味 の違 い は そ の結 果 生 まれ る ので あ る。 注 *本 稿 は 日本 語 用 論 学 会 第 三 回大 会 ワー ク シ ョッ プ発 表(2002年12月2日 、於 神 戸市 外 国語 大 学)の 内 容 を 修 正 した もの で あ る。 i)本 稿 で は よ り一 般 的 な 時 間 的 接 続 表 現 に 焦 点 を 絞 り、 「ウチ 」 で は な く 「ウチ ニ」 とい う表 現 を分 析 の 対 象 とす る。 ii)渡 辺(1991:1)に は、 「わ が こ と」 とは 「話 し手 自身 の こ と」、 「ひ と ご と」 とは 「話 し手 に 関 わ りな く 成 立 す る こ と」 とい う解 説 が あ る。 iii)こ こで い う 「自分 」 とは 話 し手 の こ とで あ る。 iv)渡 辺(1991)は 助 動 詞 な どの 副 用 語 類 を 「わ が こ と ・ひ と ご と」 とい う観 点 か ら分 析 して い る。 v)渡 辺(1997;124-46)は 、 「主 体 的 意 義 」 は 話 し手 の領 域 に属 す る意 味 で あ る と し、 これ に 対 して 「対 象
的 意 義 」 を 述 べ ら れ る 対 象 の 領 域 に 属 す る 意 味 と し た 。 そ し て 意 味 と い う も の は こ れ ら 二 つ の 意 義 に ま た が っ て い る と 述 べ て い る 。 vi)渡 辺(1995:26)は 、 時 間 表 現 の ウ チ に 関 し 、 そ の 主 体 的 意 義 は 「傾 向 と い う に と ど ま り、 時 間 用 法 へ の 展 開 は 明 確 な 尾 を 引 か な い 」 と 結 論 付 け て し ま っ て い る が 、 本 稿 は こ れ を 修 正 し て 、 ウ チ ニ の 持 つ 主 体 的 意 義 は 時 間 用 法 へ も 明 確iに つ な が っ て い る と 論 じて い る 。 vi)"*Ihopemyhusbandwillbecomelesshardonmewhiletheyearsgob;"は 「時 が た つ うち に 」 と い う 意 味 で は"whiletheyearsgoby"で は な く、"astheyearsgoby"と 言 うべ き な の で 間 違 い で あ る 。 Whileの 典 型 的 な 使 い 方 は 「何 か が 起 こ っ て い る(あ る 状 況 が 成 立 し て い る)あ い だ に 」 と い う も の だ が 、 こ れ に は 「長 さ 」 と 「終 点 」 が 必 要 で あ る 。 こ の 「終 点 」 が な い た め"whiletheyearsgoby" は 不 適 切 だ し 、 「長 さ 」 が な い の で"*HeburstoutwhileIopenedthedoor."は 不 適 切 で あ る 。 正 し く は"whenIopenedthedoor"と な る 。(TheEnglishTeacher'sMagazineApril(2000:75)を 参 照) vi)國 廣(1978:161-2)も こ の 「時 間 的 因 果 関 係 」 と い う概 念 は 成 立 し な い と 述 べ て い る 。 ix)も と も と ノ デ に 因 果 関 係 と い う 意 味 が あ る た め 、loo%キ ャ ン セ ル さ れ る こ と は な い 。 こ の 文 は 非 容 認 と な る か 、 あ る い は 容 認 さ れ た 場 合 も 因 果 関 係 が 部 分 的 に キ ャ ン セ ル さ れ る に と ど ま る だ ろ う。 《参考文献》 浅 野 百 合 子.1975.『 「う ち に 」 「あ い だ に 」 「ま に 」 を め ぐ っ て 』 『日本 語 教 育 』voL27,53-62. Alfonso,A.1966.ノapaneseLanguagePatternsαS〃 π6'鰯α1・4ρカ%oα論.Vol.1.SophiaUniversity.
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1997(1996)『 日 本 語 概 説 』 岩 波 書 店. .2001.『 さ す が!日 本 語 』 ち く ま 新 書