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AI・IoT を用いた不動産物件の「魅力」情報処理

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Academic year: 2021

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東京大学・山崎研究室では,山崎自身が賃貸物件を 借りるときに実体験した不便・不満をもとに,深層学習 を用いた間取り画像のセマンティックセグメンテーショ ンや類似間取り検索の研究,IoT センサを用いた物件の 住み心地定量化などさまざまな不動産情報処理(Real Estate Tech,ReTech)の研究を行っている.本稿では これまでの取組みのいくつかについて紹介する.

1.は じ め に

不動産の購入,賃貸の契約には常に不安感がつきまと う.不動産は大きな買い物であるし,仮に賃貸であって も引っ越しには大きな労力を必要とするため物件選びに は失敗したくないという心理が働く.しかし,不動産と いうと旧来のアナログな取引のイメージがあり,先端の 情報技術が導入されているとは言い難い.そのため業界 で真面目に働く方には大変失礼な言い方になってしまう が,一消費者の立場からいうと,安心感や納得感が得ら れにくいという問題がある. そこで著者の研究室では,これまで下記のような不動 産情報処理に関する研究を行ってきた. ● 家賃の回帰分析 ● IoTセンサによる物件の住み心地定量化・可視化 ● 直感的な間取り検索 なぜ実業をもたない大学の研究室で不動産の研究を 行っているのかと不思議に思われる読者もいらっしゃる かもしれないが,下記のような背景に基づいている. 1・1 情報工学を取り巻く状況から マ ッ キ ン ゼ ー が 2015 年 12 月 に 発 表 し た 各 業 界 の IT 化の状況*1を見ると,現在話題のフィンテック (FinTech),すなわち金融分野においてはほぼ IT 化が 完了している.一方,不動産業界は GDP シェアや業界 成長率がほかの業界と比べても有望であるにもかかわら ず,あまり IT 化が進んでいないとされている.日本でも, 他業界が規制緩和によりどんどん IT 化が進んでいる状 況(例えば,保険業法の改正に伴って可能になった保険 のネット販売)と比較すると,まだまだ IT 化による業 界改革の余地がありそうである.また,建築業界や医療 分野ほど IT 化が進んでいないわけでもないので,ちょ うど取組みがしやすい分野の一つといえよう. 欧米では,不動産テックはフィンテックの次にくる 有望な分野とされ,投資額がどんどんと伸びている.例 えば米国の例であるが,米投資データサービス会社 CB Insiteによると*2,2012 年には USD$221M に過ぎな かった不動産テック関連投資額(公開されたもののみ) は 2015 年には $1,902M,2016 年には $2,665M と爆発 的な伸びで成長している.このように,不動産テックは いま投資の観点からも最も熱い分野の一つである. 1・2 「魅力工学」の観点から 著者はここ数年「魅力工学」を標榜し,我々が人やサー ビス,ものなどに対して感じる「魅力」を,ビッグマル チメディアデータを用いて解析する研究を行っている. なぜ,どのようにその魅力を感じるのかを深層学習,機 械学習,統計処理,グラフ信号処理などを用いて解析し, 魅力度の予測や要因解析,魅力度をさらに向上させるた めの支援などを行っている. 何(誰)がどれくらい魅力的かはそれを見る人の個人 的な趣味・嗜好によるので,魅力の数値化は難しいと思 われるかもしれない.また,何か(誰か)をもっと魅力 的にする作業は経験とセンスと勘を有したプロの力が必

AI・IoT を用いた不動産物件の

「魅力」情報処理

Attractiveness Computing in Real-Estate Tech

山崎 俊彦

東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻

Toshihiko Yamasaki Department of Information and Communication Engineering, The University of Tokyo. [email protected]

Keywords:

real estate tech, attractiveness computing, artificial intelligence, internet of things. 「不動産と AI」

*1 http://www.mckinsey.com/industries/high-tech/

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要であると思われている.しかし,さまざまな画像・映像, テキスト,投票・アンケート結果,行動データなどがビッ グデータ化している現在,それらを適切に処理・解析す ることで,実は前述のように魅力度の予想,要因解析, 魅力増強支援などを工学的に行うことが可能であるらし いということがわかってきた.これまで婚活 [Shen 17a, Shen 17b, Zang 17a, Zang 17b],プレゼンテーション [福島 16c, Furuta 16, Yamasaki 15, Yamasaki 16],テ レビ・CM [Fukushima 16a, 福島 16b, 山崎 17b],SNS [Yamamoto 16, Yamasaki 17a]などについて研究を行っ てきている. その中で不動産情報処理はこれまでよくわからない ものとされてきた物件の魅力,すなわち価格決定のメカ ニズムや住み心地の定量化などの点で魅力研究の絶好の テーマである. 1・3 著者の実体験から 著者は地方出身であるため,大学進学以来何度も引っ 越しを経験してきた.また,米国での在外研究前後には, 米国と日本それぞれにおいて,実際に不動産屋めぐりを したり物件を見て回ったりすることなく物件を早急に決 めなくてはならないという状況を経験した. 海外であればエージェントに希望を伝えて代わりに物 件を探してもらうというビジネスが成立しているところ もあるが,日本では直接街の不動産屋を訪ねたり知り合 いから紹介してもらったりする以外は基本的にポータル サイトでの検索である.不動産のデータの性質上仕方の ないことであるが,ポータルサイトでの検索は表層的な 諸条件をクエリとして物件を検索する.例えば駅や地域, 家賃,広さ,築年数である.それらの条件により物件数 が絞られたあと物件の詳細情報を確認するわけである が,たいていの場合すぐに気に入った物件が見つかるわ けではないのでトライ & エラーで物件情報を行ったり 来たり,検索条件を変えて同じことの繰返し……となる わけである. この「物件が気に入らない」ことの要因はいろいろあ るだろうが,著者の場合は間取りである.諸条件で物件 を絞り込んでも間取りが気に入らないために何度も検索 を繰り返してしまう.間取りは画像として提示されてい るだけである.「こんな間取りの物件が良い」,「こんな 間取りの物件はあまり気に入らない」といった指定をす るようなサービスは現在のところ提供されていない.希 望を街の不動産屋の営業担当の方に伝えて,営業担当の 方の記憶を頼りに物件を探すしかないのが現状である. また,間取りが気に入ったとしても日当たりや騒音な ど住み心地については未知な部分が多い.不動産で騒音 に関するトラブルは大変多い.住み心地は一般的には営 業担当の方に聞くしか方法がなく,客観的・定量的な指 標が存在しないのが現状である.一方,3 章でご紹介す るが,我々消費者もさまざまな思い込みをしがちで,そ れを打破するためにも客観的・定量的な指標が求められ る. そこで,間取りをクエリとした物件検索や住み心地の 定量化ができれば消費者の安心感・納得感につながると 考えた.以下の章から,それぞれの研究事例について概 要を紹介していく.

2.家 賃 回 帰 分 析

駅や地域を限定して賃貸物件の家賃を回帰予測するこ とで相関係数 0.8 ~ 0.9 程度の高い精度で予測している. 相関は,一般的に 0.8 以上の数値が出れば強い相関があ るといわれるのでかなり精度良く予測ができている. 具体例を図 2 に示す.図 2 は,中野区と港区の物件に ついて家賃の予測とさまざまな項目の寄与度解析を行っ たものである.それぞれの区で高い精度で家賃を予測で きているだけでなく,家賃決定に寄与する項目の寄与度 図 1 マッキンゼーが発表した各業界の IT 化状況. 元記事から画像が消えているため,http://www. lightninglab.co.nz/b2b-startups-this-is-your-roadmap/ より転載 bias dist_hospital dist_supermarket dist_convenience dist_station dist_junior_high dist_elementary age space Predicted 0 0 100k 100k 200k 200k 300k 300k (yen) (yen) Actual Predicted 0 0 1M 1M 2M 2M 3M (yen) (yen) Actual -1 0 1 2 3 4 5 bias dist_hospital dist_supermarket dist_convenience dist_station dist_junior_high dist_elementary age space0 1 2 3 4

Nakano score = 0.83 Minato score = 0.80

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も明らかにできている.例えば,中野区に比べて港区は 駅への距離の重要度が 5 倍程度あり,中野区では駅から 1 m離れるにつき 8 円程度しか家賃は下がらないが,港区 では 40 円程度下がることが示されている.これは,駅 から 100 m 離れたとき家賃が中野区では 800 円程度し か下がらないのに対し,港区では 4,000 円も下がること を意味する.また,中野区では小中学校から離れるほど 家賃は上がるのに対し,港区では逆に下がる.これは, どのような人々が物件を探しているかを大きく反映して いると考えられる.このような解析ができると,例えば 物件が適正な価格(もしくは掘出しモノ価格)であるで あることを客観的に知ることができるであろうし,実際 の家賃と希望家賃に乖離がある場合にはどの条件をどの 程度我慢すれば希望の予算内に収まるかについて指標を 示すことができる. 現在は単純な回帰にとどまっているが,下記に紹介す る IoT センシングや物件探しをしている消費者の行動ロ グに我々の研究室で行っている魅力解析を適用すること でさらに高精度な家賃解析・予測が可能になるだけでな く,不動産仲介業者・大家・消費者に向けて価値ある情 報を提供できると考えている.

3.IoT センサによる物件の住み心地定量化

皆さんは一つの物件内の窓付きの部屋と窓なしの部屋 ではどちらが平均的に温かいと思われるだろうか.また, 線路や幹線道路沿いの物件はどれくらい振動があったり うるさかったりすると思われるであろうか.同じ物件で も最上階は直射日光の影響を受けて他の階の物件より暑 くなるといわれているが,どれくらい暑いだろうか.安 普請のアパートは二つ隣の部屋の人のくしゃみの音が聞 こえるなどという笑い話もあるが,それはどれくらい本 当だろうか. 不動産物件は未知な部分が多いので我々はさまざまな 不安や思い込みをもったり,噂を信じたりしがちである. 客観的・定量的なデータがあれば,そのデータがポジティ ブなものであってもネガティブなものであっても納得し て物件を買ったり借りたりすることができる.また,客 観的・定量的なデータは不動産業者側にもメリットがあ ると考えており,消費者の思い込みで不当に敬遠されて いる物件の価値を見直すことが可能であるし,価格差を 説明する根拠となり得る. 以上のような背景に基づき,安価な IoT デバイスを開 発し,それを不動産物件に設置して空間的・時間的に密 なセンシングを行い,かつそれをリアルタイム・長期的 にクラウド上に蓄積したうえで分析・可視化することの できる技術を研究している [大渕 17].これにより,こ れまでに計測することのできなかった不動産物件の価 値・魅力を定量化・可視化することを可能にすることを 目指している. 具体的には,カメラ,マイク,温湿度,9 軸加速度,照度, 赤外線,紫外線,臭気の各種センサを有したデバイスを 作成し(図 3 参照),不動産物件内に複数設置して例えば 1 週間以上にわたり 24 時間の計測を行うことを想定して いる.そのデータを安価な SIM カードを用いてリアル タイムに長時間インターネット上にあるクラウドサーバ に蓄積する.クラウドサーバに蓄積することで利用者は センサの情報を回収しに回ることなくいつでもセンサの 情報にアクセスできる.それだけでなく,パソコンやス マートフォンを用いて計測データをグラフにしたり他の 物件との比較をしたりするなどの分析・可視化を実現す る.不動産物件での利用を想定した IoT センサ,不動産 の計測に利用できる汎用 IoT センサは市場に多数存在す る [NETATMO パーソナル,オムロン] が,我々の IoT センサの特徴は ● クラウドにリアルタイムに計測データをアップロー ドするのでデータ収集・集約のコストが極小である ● 自由にセンサの種類を増減することができるため設 置場所や用途に応じてカスタマイズが容易である ● プログラムの変更によって計測頻度を柔軟に変更す ることができる ● プログラムによって例えばセンサデータのしきい値 を超えたときにアラートのメールなどを出すことが できる という点にある. 本研究開発によって下記のような物件の価値の定量化 が可能になると期待している.不動産物件の内見は,ほ んの数十分行われるのみであるため,その物件の諸条件 を詳細に知ることは困難である.そのため,内見者は営 業担当の方に質問してさまざまな情報を得ようとする. 例えば,下記のような質問が想定される. ● 日当たりはどの程度か ● 部屋の明るさはどうか ● 最上階や西側の部屋,断熱材の有無,築年数などの 条件による,他の物件との温度差 ● 夜間や土・日曜日の人通りや騒音はどの程度か ● 上下左右の生活音がどの程度響いてくるのか ● 物件特有のにおい(水回り,壁紙のにおいなど)が A4クリアファイル 温度センサ Raspberry Pi(小型LinuxPC) マイク VGAカメラ においセンサ Arduino(マイコン) 加速度+照度 図 3 不動産物件の住み心地計測のための研究開発した IoT センサ

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気にならないか ● (国道・鉄道に面している物件など)振動などの問 題はないか ● 地震が起きたときどの程度揺れる物件か 計測例をいくつか紹介する.図 4 に示したのは東京都 品川区高輪の閑静な住宅街に位置する中古マンション物 件で,1971 年に建設され,つい最近リノベーションさ れた物件である.東向きの 3 F と 10 F の,間取りが全 く同じ物件の各部屋にセンサを設置して測定した.図 4 (b)より,東向きの物件なので午前中日が入って明るく なるものの午後からは 500 lx 程度まで明るさが落ちるこ とがわかる.また,明るさのピーク値は 10 F のほうが 高い.10 F の部屋は日の出とともに日が入り始めるが, 3Fの部屋は,向かいにある建物の影響を受け,日が入 り始める時間は日の出からかなり遅れる.図 4(c)に示 したのは窓付きと窓なしの部屋の室温の変化の様子であ る.断熱対策度合いにもよるが,本物件では窓付きの部 屋は外気温の影響を受けるので冬場は窓なしの部屋より も寒く,また日中と夜間の寒暖差が激しいことがわかる. また,グラフには示せてないが 3 F と 10 F では日中・ 夜間とも平均で 1 ℃ほど温かいこともわかった. 線路沿い・幹線道路沿いの別の物件でも計測を行った. 線路沿い・幹線道路沿いの物件であっても一般的にはほ とんど揺れないことがわかった.また,図 5 に示すとお り,実際に線路側・道路側に直接面している部屋は,一 般に信じられているとおりそれなりの騒音がある.60 dBを超えると一般的に「騒音」といわれ,65 ~ 70 dB で 1 m 先にある掃除機と同じ騒音であるとされている. 鉄道沿いの物件では鉄道が通るとき,瞬間的にうるさく なるので 1 日のうち騒音を感じる時間割合はそんなに多 くないのに対し,首都高速沿いの物件では騒音のピーク 値は低いものの騒音の時間割合は大きい.一方,線路沿 い・幹線道路沿いの建物であってもそれらに面していな い物件ではほとんど騒音がなく,品川の閑静な住宅街と ほぼ同じ騒音レベルである.「線路沿い・幹線道路沿い の物件はうるさい」というのは一部思い込みであること がわかる. 開発した IoT センサは住宅のセンシングにとどまら ず,例えばホテルや病院などの客室の品質評価に有用だ と考えている.また,学校など人が多く集まる場所の環 境センシングにも展開を検討中である.

4.直感的な間取り検索

間取りに関して聞取り調査をしてみると,皆さまざま な要望をもっていることがわかる.例えば,おじいちゃ ん・おばあちゃんと暮らしている家庭ではリビングの隣 に寝室にできるような和室がほしいという声が聞こえて くるし,お子さんのいる家庭からは子供部屋は必ずリビ ングを通ってからでないと外に出られない間取りがほし い(知らない間に遊びに行ったり,誰が遊びに来ている のかわからないという状況を避けたい)という意見もあ る.また,間取りが不動産価格や賃料に影響を及ぼして いるという研究報告もある [花里 05]. 一方,間取りは画像として提示されるのが一般的で, 人間が見て理解するしかない.すなわち,上記のような ことを実現しようとすると間取り画像を並べて見比べる か,営業担当の方の記憶力に頼るしかない.そこで,深 ( a ) ( b ) ( c ) 図 4 IoT センサによる計測結果. (a)計測実験を行った品川区高輪の中古マンション物件, (b)3 F と 10 F の日照時間・照度計測,(c)10 F の物件の 窓付き部屋と窓なし部屋における温度計測 鉄道沿い 高速道路沿い 図 5 IoT センサによる騒音計測結果. 品川区高輪の閑静な住宅地,品川区北品川の線路沿い, 港区南青山にある首都高速沿い

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層学習を用いた類似物件検索(図 6),間取りの自動認 識(図 7)などを手がけている [高田 17].部屋の構造を いかに深層学習に学習させるかがポイントとなるが,類 似検索においては間取りタイプ(2DK,3LDK など)と 特定の部屋の有無(和室,洋室,独立バスなど)の 2 種 類のラベルを与え,マルチタスク学習を行うことで物体 認識用に設計された単純な深層学習器より精度良く検索 することが可能となっている.また,間取りの自動認識 においては,図 7 に示したような大量の正解データをク ラウドソーシングにて作成し,それをもとに学習するこ とでかなり精度高く部屋のセマンティックセグメンテー ションが行えることがわかっている.ここから,部屋の 結線情報を抽出し,グラフ化することで類似物件の検索 は数学的な類似グラフ検索の問題に変換できる. 一方,正しくグラフ化ができたと仮定した場合の研究 も並行して進めている [大原 16].図 8 に示したように, 希望する部屋の広さや間取りを図(グラフ構造)にして 表現することで所望の物件を直感的に検索できる.部屋 の隣接関係だけでなく,部屋の広さなどもキーとして検 索することができる.このようなグラフを例えばブラウ ザ上で一般の消費者に入力してもらうのはかなり敷居が 高いと思われるが,街の不動産屋であらかじめトレーニ ングを積んだ営業担当の方がシステムを使うような利用 シーンが考え得る. またこれを用いて,数件の物件の間取りを表示して ユーザに好き・嫌いの意思表示をしてもらうだけでユー ザが潜在的に好むと思われる間取り物件を提示すること も可能になる(図 9).例えば,スマートフォンアプリと して,好き・嫌いに応じて間取り画像を数枚左右にスラ イドするだけで,好きとされた物件になるべく近く,嫌 いとされた物件になるべく遠い物件を推薦することがで きる.図 6 に示した例では,3LDK の物件を対象に,好 きな物件を 2 件,嫌いな物件を 2 件提示した例である. ここでは,好き・嫌いの情報以外はいっさい与えていな いが,例えば好きな物件ではすべての部屋が洋室である のに対して,嫌いな物件には一部和室が含まれている. このことを自動的にくみ取って,推薦物件には和室のあ る物件はいっさい推薦されていない.また,3 部屋のう ちいくつかは,リビングに直結しておらず廊下を挟んだ 物件が推薦されていることもわかる. これらの検索・推薦技術はこれまでの駅や家賃・距離・ 広さなどを指定する不動産物件検索では実現できない機 能である.もちろん,間取りをクエリとした検索システ ムは旧来の検索システムを置き換えるものではなく補完 関係にある. 一見この研究テーマは魅力と関係なく思われるかもし れない.しかし,これは魅力を定量化するという研究で はなく,ユーザの体験をより魅力的なものにするための ものである. 間取り画像 人手による正解 FCN 図 7 間取り画像に対するセマンティックセグメンテーション例

Query Layout The most similar one 2nd – 4th

図 8 間取りのグラフ表現による類似物件検索

図 9 Yes-No 回答による物件の推薦

類似度 0.9以上

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5.ま  と  め

本稿では,我々が行っている不動産情報処理の研究事 例についていくつかご紹介した.不動産情報処理は,例 えば統計学の分野などでは古くから推定・予測の例題と して取り上げられるほど一般的な問題ではあるが,ビッ グデータ,IoT,機械学習・AI など要素技術やデータ集 めの仕組みが成熟してきたお陰で,不動産に関するさま ざまな研究が可能となりつつある.国内では各種勉強会 や学会における企画セッションなどで不動産業界,学術 界の連携も深まりつつある.一方で,データ・技術の共 有はまだまだ改善の余地があると思われる.NII-IDR に は LIFULL HOME’S データセットという不動産に関す るデータセットが公開されているものの [LIFULL],そ れ以外の貴重なデータは各社に眠ったままである.また, 各社同じような技術を独自に開発しているように感じる 部分もある.国内での限られたマーケット内での競争と いうことではそれでも良いのかもしれないが,不動産 テックとして日本の技術力の底上げを考えたときには一 部は業界をあげてデータや技術の共有,共同開発なども 必要ではないかと考えている. 謝 辞 本研究の一部は科学研究費助成事業(26700008), JST CREST(JPMJCR1686),不動産流通経営協会の 支援を受けて行われている. 研 究 の 一 部 に は LIFULL HOME’S デ ー タ セ ッ ト [LIFULL]を利用している.

◇ 参 考 文 献 ◇

[Fukushima 16a] Fukushima, Y., Yamasaki, T. and Aizawa, K.: Audience ratings prediction of TV dramas based on the cast and their popularity, IEEE BigMM, pp. 279-286(2016) [福島 16b] 福島悠介,山崎俊彦,相澤清晴:文書と音声解析に基 づくプレゼンテーション動画の印象予測,信学論,Vol. J99-D, pp. 699-708(2016) [福島 16c] 福島悠介,山崎俊彦,相澤清晴:放送前の情報のみを用 いたテレビドラマの視聴率予測,映像情報メディア学会誌,Vol. 70,pp. J255-J261(2016)

[Furuta 16] Furuta, R., Fukushima, Y., Yamasaki, T. and Aizawa, K.: Multi-label classification using class relations based on higher- order MRF optimization, BigVision(2016)

[花里 05] 花里俊廣,平野雄介,佐々木誠:首都圏で供給される民 間分譲マンション 100 超住戸の隣接グラフによる分析,日本建 築学会計画系論文集,No. 591, pp. 9-16(2005)

[LIFULL] LIFULL: LIFULL HOME’S データセット,NII-IDR [NETATMO パーソナル ] NETATMO パーソナルウェザーステー ション:https://www.netatmo.com/product/weather/ weatherstation(2017 年 2 月 1 日閲覧) [大渕 17] 大渕友暉,山崎俊彦,相澤清晴,鳥海哲史,林 幹久: IoTセンサを用いたマンション物件計測と快適度評価,第 31 回 人工知能学会全国大会(2017) [大原 16] 大原康平,山崎俊彦,相澤清晴:間取りや広さをクエ リとする直感的な不動産検索システム,情処第 78 回全国大会 (2016) [オムロン] オムロン環境センサ:http://www.omron.co.jp/ ecb/products/sensor/special/environmentsensor/ (2017 年 3 月 5 日閲覧)

[Shen 17a] Shen, S., Furuta, R., Yamasaki, T. and Aizawa, K.: Fooling neural networks in face attractiveness evaluation: Adversarial examples with high attractiveness score but low subjective score, IEEE BigMM, pp. 66-69(2017)

[Shen 17b] Shen, S., Yamasaki, T., Aizawa, K. and Sugahara, T.: Data-driven geometric face image smilization featuring moving least square based deformation, BigMM-ACM, pp. 220-225(2017)

[高田 17] 高田祐樹,井上直人,山崎俊彦,相澤清晴:深層特徴量 を用いた類似間取り図検索,人工知能学会全国大会(2017) [Yamamoto 16] Yamamoto, M., Yamasaki, T. and Aizawa, K.:

Service annotation and profiling by review analysis, IEEE

BigMM, pp. 264-265(2016)

[Yamasaki 15] Yamasaki, T., Fukushima, Y., Furuta, R., Sun, L., Aizawa, K. and Bollegala, D.: Prediction of user ratings of oral presentations using label relations, ACMMM-ASM, pp. 33-38 (2015)

[Yamasaki 16] Yamasaki, T., Fukushima, Y., Furuta, R. and Aizawa, K.: Prediction of user ratings of oral presentations using label relations, BigMM-ACM, pp. 462-465(2016) [Yamasaki 17a] Yamasaki, T., Hu, J., Sano, S. and Aizawa,

K.: FolkPopularityRank: Predicting and enhancing social popularity using text tags in social networks, IJCAI(2017) [山崎 17b] 山崎俊彦:「魅力」を AI で測る,テレビ CM 約 1 万本

で検証,日経ビッグデータ 2017 年 5 月号(2017)

[Zang 17a] Zang, X., Yamasaki, T., Aizawa, K., Nakamoto, T., Kuwabara, E., Egami, S. and Fuchida, Y.: How competitive are you? - Analysis of people’s attractiveness in an online dating system, IEEE ICME(2017)

[Zang 17b] Zang, X., Yamasaki, T., Aizawa, K., Nakamoto, T., Kuwabara, E., Egami, S. and Fuchida, Y.: You will succeed or not? - Matching prediction in a marriage consulting service,

IEEE BigMM, pp. 109-116(2017)

2017年 5 月 24 日 受理

著 者 紹 介

図 2 回帰による家賃予測
図 8 間取りのグラフ表現による類似物件検索

参照

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