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諸艶大鑑の版下

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Kobe Shoin Women’s University Repository

Title 諸艶大鑑の版下

Block Copies of "Shoen Okagami"

Author(s) 金井 寅之助(Toranosuke Kanai)

Citation 研究紀要(SHOIN REVIEW),第 9 号:115-134

Issue Date 1968

Resource Type Bulletin Paper / 紀要論文

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一 四 十 一 年 の 十 二 月 頃 で あ っ た か 、 畏 友 の 神 戸 大 学 の 島 田 勇 雄 教 授 か ら 、 ﹁ 諸 艶 大 鑑 ﹂ は 巻 二 ま で と 巻 三 以 後 と で は 版 下 の 筆 者 が 違 ふ の で は な い か 、 で な け れ ば 、 仮 名 遣 ひ の 上 か ら 説 明 し か ね る と こ ろ が あ る 、 と 愚 見 を 求 め ら れ た 。 実 は 、 そ の こ と は 、 天 理 図 書 館 昭 和 四 十 年 四 月 刊 ﹁ 西 鶴 ﹂ 印 刷 中 に 、 筆 蹟 の 上 か ら 気 づ き 、 編 輯 部 に 訂 正 方 依 頼 し た の で あ っ た が 、 す で に 印 刷 進 行 中 で 間 に あ は な か っ た の で あ る 。 増 補 版 に も 、 見 過 さ れ て し ま っ た 。 そ の こ と は 、 島 田 教 授 の ﹁ 西 鶴 本 の か な つ か い 三 ) 人 行 四 段 活 用 動 詞 連 用 形 の 表 記 に つ い て (承 前 ) l ﹂ (糊 細 計 昨 辮 廟 讃 姪 文 ) に も 附 記 さ れ て ゐ る 。 詳 細 の 発 表 を 求 め ら れ る こ と 頻 り な の で 、 こ こ に 、 版 下 か ら 眺 め た 諸 艶 大 鑑 の 若 干 の 問 題 に 触 れ る こ と に す る 。 一115一 諸 艶 大 鑑 の 斐 の 版 下 に つ い て は 、 早 く 水 谷 不 倒 氏 は ﹁ 西 葉 ﹂ ( 大 正 九 年 刊 ) に お い 垂 者 不 明 と さ れ 、 滝 田 貞 治 氏 は ﹁ 西 鶴 の 書 誌 学 的 研 究 ﹂ ( 昭 和 十 六 年 刊 ) に お い て 西 鶴 筆 と さ れ て ゐ る . 以 来 詳 し い 調 査 を 経 な い ξ で 最 近 に 至 っ た も の の や う で あ る 。 上 述 の 如 く 、 諸 艶 大 鑑 の 版 下 を 西 鶴 と す る こ と に 疑 問 を 感 じ た の は 図 録 ﹁ 西 鶴 ﹂ 解 説 の 校 了 に な っ た 頃 で あ っ た 。 慌 て

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て調 査 し た と ころ、 巻 一 巻 二は 西 鶴 筆 、 巻 三以 下 は別 筆 、 と は っ き り 区別 で き る の であ る 。 が 、 す で に印 刷 の間 に あ は な か っ た 。 な ぜ そ れ が今 ま で気 づ かれ な か っ た ので あ ら う か。 原 因 は、 著 者在 世中 に出 版 さ れ た書 物 の版 下 が 二筆 に 分 れ る な ど と い ふ こ とが ・ 一 般 に考 へ ら れ て ゐな か っ た から であ る . 男 色 大 鑑 の版下 が 二筆 (昭和 三 十七 年十月刊ビ プ リアニ 十 三 号、拙 稿 ﹁ 西 鶴置土 産 の 版下﹂) 、 新 可 笑 記

が三

(粥

儲 堰 記 ) から 成る こ と の 見過され て来 た のも そ のた め であ った。 し か も 諸 艶 大 鑑 は 、殊 に冒 頭 のあ た り は ﹁ 西 鶴 諸 国 は な し ﹂ ほ ど は っ き り と 西鶴 の筆癖 が 出 て ゐ な い のであ る 。 水 谷 不 倒 氏 は 、 恐 ら く、 あま り 西 鶴ら し から ぬ 冒 頭 ( 第 一 図 ) と、 巻 三 以 下 (第 二 図) と に 惹 か れ て、 版 下 筆 者 不 明 と せら れ た こと であ らう 。 滝 田氏 は、 巻 一 巻 二 の 中 でも 、 特 に ﹁ 西 鶴諸 国 は な し ﹂ 風 の、 西 鶴 の 特 徴 のよ く出 た部 分 (第三図) に 惹 か れ 一116一

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て 、 西 鶴 筆 と せ ら れ た の で あ ら う 。 こ の 両 者 の見 解 が 統 一 で き れ ば よ か った の で あ る 。 し か し 単 に 結 論 を 示 す に と ど ま ら ず に 、 若 干 の 説 明 が 必 要 のや う で あ る 。 試 み に、 巻 三 臨三 ) と 巻 三 臨 二 ) と・ 琵 較 さ れ た い。 そ の刷 り 票 ら 来 る 感 じ の異 る こと は驚 く ぼ か り で あ る 。 も と よ り 同 じ筆 者 でも 、 時 に よ り 異 っ た書 体 に な る こ と は ある 。 西 鶴 で い へ ば 、 版 下 や 短 冊 色 紙 を 書 く時 と、 書翰 を書 く時 と の 違 ひな ど で あ る 。 現 に 、 うち や孫 四宛 西 鶴 書 翰 は 、 そ の 出 現 当時 、 写 し では な いか と 疑 は れ た 位 で あ る ( 野 間光辰氏著﹁西 鶴新孜﹂) .し か し同 百 的 によ って書 く場 合、 た と へ ば 本 文 版 下 の 如 き 、 年 齢 に よ っ て 若干 の変 化 は あ る に し て も 、 殆 ど 同 じや う な 詐 体 に な る 筈 で あ る。 同 じ 一 部 の審 の本 交 版 下 に お いて は 、 猶 更 の こと で あ る 。 諸艶 大 鑑 の巻 二ま でと 巻 三以 下 と を 二筆 とす る こ と に つい て、 し かし 若 干 の反論 が あ る かも 知 れ な い。 巻 三以 下 に お い ても 西鶴 と よ く 似 た 筆 一117一

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癖 の 字 があ る で は な いか と 。 た と へば、 第 二図 中 の ﹁ き ﹂ ﹁ ぬ﹂ の如 く に 。 な る ほ ど 、 そ れ は似 て ゐろ 。 版 下 書 き は 、 作 者 と 同 じ 筆 癖 の 若 干 の字 を 書 く ことも あ る 上 に 、 稿 本 の筆 癖 を お のつ と 模 倣 し やす い のであ る 。 同 じや う な 筆 癖 の字 が い く つ あ って、 何 回 繰 返 さ れ て ゐ る と 統計 を取 っ て み た と こ ろ で、 そ れ だ け で は 、 同 一 筆者 であ る こと を 証 明 す る こと に は な ら な い。 嘗 て 、室 町 頃 の写 本 で あ らう と 丁 を繰 っ て ゆく と、 終 り に近 づ い て、 そ れ が 近 世 中 期 の写 本 で あ る ことが 分 っ た こと が あ る。 初 め のあ たり は 原 本 に 忠実 に模 倣 し て書 い てゐ た の であ る が、 途 中 から そ れ を や め た ので あ る 。 是 な ど 極 端 な 例 で あ る が、 版 下 書 き は 、 あ る点 ま で、 稿 本 に似 た 字 を 書 く こと を認 識 し てゐ な け れ ば な ら な い。 す な はち 、 古 文 献 の筆 者 を 鑑定 す る に は、 単 に 、 若 干 の筆癖 だ け で は決 定 でき な いし 、 写 本 而 ・ 刷 り 面 の 全 体 の感 じ だ け で も 決定 でき な いと いふ こと で あ る 。 両者 に働 か せる 鑑 定 者 の勘 に 、 あ る程 度 ま で頼 ら な け れ ば な ら な い こと に な る。 そ 一118一

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の こと に 馴 れ な い 人 を納 得 さ せる こと は な か な か む つ か し い。 偽 筆 の 場 合 はな ほさ ら で あ る 。 し か し 、 諸艶 大鑑 の 場 合 、 たま たま 、 大 変 恰好 な 判別 の 手 が かり が ある 。 変 態 仮 名 ﹁ 乃 ﹂ で あ る。 諸 艶 大 鑑 の巻 一 巻 二 は も と より 、 他 の 西 鶴 自 筆 版 下 や 自 筆 のも のに は、 大体 第 三図 中 の如 く 書 かれ てゐ る が 、 諸 艶 大 鑑 の巻 三 以下 に は、 殆 ど 第 二 図 第 五行 の如 く 書 か れ て ゐ る。 こ の ﹁ 乃﹂ が 巻 三以 下 の筆 者 の著 し い 特 徴 な のであ る 。 更 に ﹁ 年 ﹂ が あ る。 西鶴 自 筆 と 認 め ら れ る 巻 一 巻 二 にお い ては 、 第 一 図 第 五行 や第 三図 第 八行 に 見 ら れ る 西鶴諸国はな し巻一本文冒頭 第 四図 女 く す べ て 第 三 圭 里 の ﹁ 一 ﹂ が 最 も 長 く 、 第 五 壷 の ﹁ 一 ﹂ が そ の次 に 長 い 。 巻 三 以 下 に お い て は 、 若 干 の 差 異 は あ る け れ ど も 、 第 二 図 第 六 行 に 見 ら れ る 如 く 、 す べ て 、 第 五 叢 の ﹁ ↓ ﹂ が 最 も 長 い 。 字 形 が 全 く 変 っ て ゐ る 。 是 は 非 常 に は っ き り と し た 、 巻 一 巻 二 と 巻 三 以 下 と の 、 版 下 の違 ひ で あ る 。 右 の 二 点 だ け で も 、 巻 一 巻 二 の 版 一119一

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下 と 巻 三 以下 の 版 下 と の異 筆 であ る こと の 証 明 の手 が かり にな る であ ら う 。 し かし 前 者 の西 鶴 筆 であ る こと を 認 め る に は、 な ほ若 干 の躊 躇 を 感 ぜ ら れ る か も 知 れ な い。 第 一 図 の 如 き 、 字 体 が あ ま り にも 直 線 的 で硬 く 、 西 鴫 独特 の 艶 冶 の 趣 が な さ す ぎ る ので あ る。 が 、第 ↓ 図 と第 三図 と を 蛇 べ て、 仮 名 の ﹁ の﹂ ﹁ 乃﹂ ﹁ ぬ ﹂ 漢 字 の ﹁ 年 ﹂ など を 比 較 し 、 更 に 巻 一 巻 二を 眺 め て、 刷 り 面 金 体 の 感 じ を掴 ま れる な ら ば 、 巻 ↓ と巻 二 は同 一 筆 者 であ る こと を 承 認 さ れる であ ら う 。 そ し て 自 筆 の 短 冊 色 紙 類 と 比 較 さ れ る な ら ば 、 それ が 西 鶴 筆 で あ る こ と を納 得 さ れ る であ ら う 。 な ほ 一つの 疑 問 があ る かも 知 れ な い。 ﹁ 年﹂ は、 第 一 図 や 第 三図 の 如 購 き 字 形 の も のは、 他 の西 鶴 の皐 や を 版 下類 に・ 殆 ど 見 か け な いか ら で あ 鑑 鍬 る 。 諸 艶 大 鑑 以 前 に圭 、 か れ た 天和 三 諸 年 序 の ﹁ 精 進鰭 ﹂ や、 以後 に書 か れ た ﹁ 西鶴 諸 国 ぱな し﹂ を は じ め 遺 稿 の 小 説類 にも 、 第 四図 第 十 行 の如 図 五 く、 第 五壷 の ﹁一 ﹂ が 最 も 長 く 書 か 第 れ て ゐる 。 し か し 巻 一 巻 二 の ﹁ 年 ﹂ は 一 一120一

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一 時 の筆癖 と考 へ る べき であ らう 。 筆 癖 は 、 時 に は 、 か く 恣 意 的 な 変 化 を 見 せる 。 筆 蹟 の鑑定 は、 単 に 一 字 や 二字 の筆癖 だ け で は決 定 でき な い の であ る 。 巻 一 巻 二 の西 鶴 版 下 を 否 定 す る こと は でき な い。 それ に し ても 、 巻 一 ノ 一 の本文 は、 特 に初 め のあ た り は、 西鶴 諸 国 は な し や近 代 艶 隠 者 の版 下 な ど と 随分 異 ってゐ る の は 何 故 であ ら う か 。 こ の部 分 だ け を 眺 め た な ら ば、 西 鶴 筆 版 下 とす る こ と に疑 問 を 持 つ のは当 然 であ ら う 。 私 は 、 そ れ ー を 、 草 子 の版下 を書 き な れ ず 、 草 子 の 版 下 と し て の書 風 の 態 度 が 定 ま っ て ゐ な か っ た た め と 見 た い ので あ る。 諸 艶 大 鑑 は 西 鶴 に と っ て初 め て 試 み た草 子 の版 下 だ っ た ので あ る。 し たが って巻 一 の途 中 か ら巻 二 へと 進 む に つ れ て、 後 の西 鶴 の版 下 の風 が、 かな り は っ き り と 出 て来 る ので あ る 。 さ て目 次 の丁 は 、 巻 一 ( 第 五 図 ) 巻 二は、 内 題 の ﹁ 諸 艶 大 鑑 ﹂ の四 字 を除 い て、 全 部 西 鶴 自 筆 と 見 た い 。 或 は、 内 題 ﹁ 好 色 二代 男 諸艶 大 鑑巻 一一121一

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一 ( 二 ) ﹂全 部 を別 筆 と せら れ る 見 方 が あ る かも 知 れ な い 。 そ の 時 は、 巻 一 の四丁 表 四行 目 の ﹁ 二 代 男 ﹂ と比 較 し 更 に巻 三 の 内 題 と を 比 較 さ れ た い。 ﹁ 二 代 男 ﹂ が 別 筆 でな く 西鶴 筆 で あ る こと を 承 認 さ れ る で あ ら う 。 西 鶴 は 、内 題 が 二 つ 拉 ぶ 時 、 初 め に来 る も のは上 部 の 枠 に 接 し て 書 き始 め る 。 西 鶴諸 国 はな し (第 六 図) の如 く に 。 そ れ に 反 し て、 巻 三 以 下 は 、 ﹁ 好 色 二 代 男 ﹂ の五字 は上 の枠 から やや 下 げ て 書 き始 め ら れ てをり 、筆 癖 も 巻 一 巻 二と 異 な る。 とも に 、 そ の傍 証 と な る で あ ら う 。 巻 数 を 示す ﹁ 巻 一 ﹂ ﹁ 巻 二﹂ も 、 巻 一 巻 二で は ﹁ 西 鶴諸 国は な し ﹂ と 同 じ く 、 二行 目 の ﹁ 諸 艶 大 鑑﹂ の 真 下 に書 か れ てゐ る が 、 巻 三 以下 (第 七 図) では 、 第 一 行 ﹁ 好 色 二 代 男 ﹂ と 第 二行 ﹁ 諸艶 大 鑑 ﹂ と の 中 間 の真 下 に 、 書 か れ て ゐる も の が 多 く 、 筆癖 も 異 る。 こ れま た ﹁ 好 色 二 代 男﹂ や ﹁ 巻 一 ﹂ ﹁ 巻 二﹂ な ど が 西 鶴 自 筆 であ る こと の傍証 と な る であ らう 。 す な は ち 、巻 一 巻 二 の 内 題 の う ち ﹁ 諸 艶 大 鑑﹂ の四字 のみ は 西鶴 筆 でな く 、巻 三 以下 の 版 下 と 同 筆 と 一122一

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見 て よ い 。 刊 記 の 全 部 も ま た 、 巻 三 以 下 の 版 下 と 同 筆 で あ る 。 巻 三 以 下 の 目 次 や 本 文 と 字 形 が 異 っ て ゐ る や う で あ る が 、 大 き な 字 で 改 ま っ て 書 か れ て ゐ る か ら で あ り 、 そ の 一 々 の 文 字 を 巻 三 以 下 の 本 文 と 照 合 す れ ば 、 筆 癖 の 相 似 が 発 見 さ れ る で あ ら う 。 仮 名 の コ 早 ﹂ ﹁ き ﹂ 漢 字 の ﹁ 也 ﹂ ﹁ 八 ﹂ な ど 似 た も の が 多 出 す る 。 た だ 仮 名 ﹁ 乃 ﹂ だ け は 若 干 異 る が 、 是 も 巻 六 の 五 丁 裏 ] 行 な ど に 見 え て 、 な く は な い 。 題 籏 は ど ち ら と も 決 し か ね る が 、 巻 三 以 下 と 同 筆 と 見 る べ き で あ ら う か 。 以 上 を 概 括 す れ ば 次 の 如 く な る 。 題 籏 目 次 の 丁 本 文 刊 記 巻 三 以 下 と 同 筆 か 。 巻 一 巻 二 は ﹁ 諸 艶 大 鑑 ﹂ の 四 字 の み 他 筆 (巻 三 以 下 と 同 筆 ) 。 巻 三 以 下 は 本 文 と 同 筆 。 巻 一 巻 二 は 西 鶴 筆 。 巻 三 以 下 は 別 筆 。 俳 書 ﹁ 五 徳 ﹂ や ﹁ 仙 垂 大 矢 数 ﹂ と や や 似 る 。 巻 三 以 下 の 本 文 と 同 筆 。 一123一 西 鶴 は 好 色 二 代 男 の 巻 一 巻 二 の 版 下 を 自 筆 で 清 書 を し な が ら 、 な ぜ 巻 三 以 下 を 別 筆 に し な け れ ば な ら な か っ た の で あ ら 、h ノ か 。 好 色 一 代 男 は 、 名 も 知 れ な い 書 騨 、 恐 ら く は 素 人 で あ る 如 き 荒 砥 屋 孫 兵 衛 可 心 に よ っ て 出 版 せ ら れ た 。 有 名 な 書 離 が 、

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内 容 の や や 高 等 に 過 ぎ る の を 嫌 っ た た め で あ ら う か 。 さ う で は あ る ま い 。 書 舜 に 原 稿 を 見 せ る ま で に 纒 ま っ た 体 裁 に は な っ て ゐ な か っ た 筈 で あ る 。 恐 ら く 、 多 く の 原 稿 を 整 理 し な が ら 、 版 下 書 き に 、 出 来 る に し た が っ て 送 っ た こ と と 思 は れ る 。 年 立 の 錯 誤 、 世 之 介 の 性 格 の 不 統 ] 1 世 之 介 の 一 代 記 の 体 裁 は 単 に 見 せ か け の 枠 に 過 ぎ ず 、 男 性 の 好 色 に お け る 情 趣 の さ ま ざ ま を 描 く こ と が そ の 意 図 で あ る に し て も ー が こ れ を 示 す 。 し か し 意 外 の 好 評 を 以 て 迎 へ ら れ た 。 諸 艶 大 鑑 は 、 そ の た め に 、 書 難 池 田 屋 か ら す す め ら れ て 纒 め た 作 品 と 見 ら れ て ゐ る 、 し か る に 、 こ れ も ま た 、 一 旦 書 き あ げ た 後 に 、 註 1 巻 首 一 篇 と 巻 尾 一 篇 半 が 新 た に 書 き 足 さ れ ( 或 は 書 き 改 め ら れ ) 、 版 下 は 二 筆 に 分 れ 、 書 名 は 版 下 を 清 書 し た 後 に 更 に 改 め ら れ て ゐ る 。 巻 首 巻 尾 の 篇 が 、 好 色 一 代 男 の 続 篇 で あ る と 見 せ か け る た め の 、 書 騨 の 要 請 に よ る 附 加 ( 又 は 書 き 改 め ) で あ る に せ よ 、 そ の 附 加 さ れ た 部 分 と 本 来 の 部 分 と は 甚 だ し く 異 質 で あ る 。 附 加 さ れ た 部 分 は 、 二 代 男 世 伝 の 一 代 記 風 記 述 で あ り 、 本 来 の 部 分 は 、 遊 里 説 話 集 で あ る 。 す な は ち 、 好 色 二 代 男 風 の 部 分 と 諸 艶 大 鑑 風 の 部 分 と は ﹁ 好 色 一 代 男 ﹂ ほ ど に も 統 一 さ れ て ゐ な い の で あ る 。 最 初 の 書 名 が 何 で あ っ た か 分 ら な い が 、 巻 首 巻 尾 の 篇 を 附 加 し た 後 に ﹁ 好 色 二 代 男 何 々 ﹂ と し 、 更 に ﹁ 何 々 ﹂ を ﹁ 諸 艶 大 鑑 ﹂ と 改 め て ゐ る 。 し か も 、 自 筆 版 下 の 部 分 に も 傭 筆 の 版 下 の 部 分 に も 、 誤 字 脱 字 衙 註 2 字 が 少 な く な い 。 初 め て 正 式 の 書 舜 か ら 出 版 す る に し て は 整 は な さ す ぎ る や う で あ る 。 好 色 一 代 男 に お い て も 、 諸 艶 大 鑑 に お い て も 、 そ の 出 版 に 当 っ て の 、 西 鶴 の 慌 し さ を 思 は ざ る を 得 な い 。 西 鶴 は な ぜ そ の や う な 慌 し い 状 態 に あ っ た の で あ ら う か 。 嘗 て 野 間 光 辰 氏 は 、 ﹁ 俳 譜 太 平 記 ﹂ を 取 り あ げ て 、 延 宝 三 年 頃 よ り の 宗 因 門 下 の 跡 目 継 承 に つ い て 、 西 鶴 、 惟 中 、 旨 恕 高 政 な ど の 間 に 葛 藤 が あ り 、 延 宝 八 年 五 月 四 千 旬 独 吟 ま で の 西 鶴 の 矢 数 俳 階 興 行 は 、 宗 因 の 跡 目 を つ ぐ た め の 実 績 を 示 す 目 的 を も 持 . て ゐ た こ と を 明 ら か に せ ら れ た (国 語 と 国 文 学 昭 和 二 十 四 年 十 一 月 号 ﹁俳 譜 太 平 記 ﹂ ) 。 西 饅 、 寛 文 七 年 二 + 六 歳 の 夏 、 伏 見 か ら の 下 一124-一

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り の 夜 船 で ﹁ 郭 公 独 吟 百 韻 ﹂ を 試 み 、 大 阪 に 着 く ま で に 巻 き 終 っ て 、 そ の 速 度 を 誇 る こ と が あ っ た 。 三 十 四 歳 の 延 宝 三 年 四 月 八 日 に は 、 二 十 五 歳 で 死 ん だ 妻 の 初 七 日 に 、 追 善 の ﹁ 俳 階 独 吟 一 日 千 句 ﹂ を 興 行 し て ゐ る 。 涙 の 乾 か ぬ 初 七 日 に 。 自 覚 せ ら れ た 速 吟 の 特 技 が 、 た ま た ま あ ま り ふ さ は し く な い 機 会 を 捉 へ た と 見 る べ き で あ ら う が 、 同 時 に 跡 目 へ の 示 威 の 気 持 が な か っ た と は 言 へ ま い 。 こ の 後 速 吟 の ﹁ 天 下 一 ﹂ の 記 録 争 い が 益 々 激 し く な っ て 行 く 。 ﹁ 古 風 当 風 中 土 日 、 上 手 は 上 手 下 手 は 下 手 ・ い つ れ を 是 と 弁 へ ず ・ 好 い 華 し て 遊 ぷ に し か 隊 夢 幻 の 戯 言 也 ﹂ ( 洞 瀧 丸 ) と い ふ 宗 因 に と . て は 、 そ れ は 煩 は し い こ と で あ っ た で あ ら う 。 延 宝 五 年 五 月 、 西 鶴 が 千 六 百 句 独 吟 興 行 を 成 就 し た 後 、 批 点 を 乞 う た 時 、 宗 因 は ﹁ か か る 大 な る 事 に は ﹂ と 辞 退 し た と い ふ ・ し か し そ れ を 盆 描 と 誇 ら し げ に 吹 聴 す る の が 西 鶴 で あ っ た ( 仙 台 大 矢 数 賊 ) 。 延 宝 六 年 月 松 軒 紀 子 の 千 八 百 句 、 同 七 年 大 淀 三 千 風 の 三 千 旬 に よ っ て 記 録 を 破 ら れ る と 、 西 鶴 は ひ た す ら そ の 特 技 を す す め ざ る を 得 な い 情 勢 に 立 ち い た っ た や う で あ る 。 苦 心 の 末 、 同 八 年 二 月 二 十 九 日 当 世 の 俳 譜 の 迷 夢 か ら 脱 す る 方 法 を 悟 っ た と い ふ ( 魏 蹴 ) . か く て 同 年 五 月 四 千 句 独 吟 を 興 璽 ヲ る . 宗 因 も ま た 巻 篁 の 第 三 に ﹁ 郭 公 八 わ り 芒 の 名 を あ げ て ﹂ の 句 を 与 へ て ゐ る 。 前 句 ば 保 友 の ﹁ 百 六 十 ま い 五 月 雨 の 空 ﹂ で あ る 。 ﹁ 八 わ り ま し ﹂ は 人 一 倍 滴 癒 の 強 い こ と を い ふ や う で あ る 。 郭 公 は 五 月 雨 に 、 八 わ り は 百 六 十 枚 に つ く 。 威 勢 よ く 鳴 き つ づ け る 郭 公 の や う に 、 元 気 よ く 四 千 句 を 詠 み つ づ け る の 意 で あ ら う が 、 若 干 の 皮 肉 が 感 ぜ ら れ ぬ で も な い 。 西 鶴 は も と よ り 是 を 皮 肉 と は 取 ら ず 、 賞 美 の 句 と し て 得 意 さ う に 知 人 に 知 ら せ て ゐ る ( 下 里 勘 州 宛 書 翰 ) . 跡 目 へ の 執 念 が さ う さ せ た の で も あ ら う か . 宗 因 は 、 同 年 ﹁ な ん に も は や 楊 梅 の 実 む か し ・ ﹂ の 句 を 詠 み 、 そ の 後 は あ ま り 俳 詣 を 口 に し な か っ た と い ふ 。 そ し て 翌 々 天 和 二 年 三 月 二 十 八 臼 に 七 十 八 歳 で 投 し た 。 西 鶴 の 宗 因 の 跡 目 を ね ら っ て の 示 威 は 、 矢 数 俳 詰 だ け に は と ど ま ら な い や う で あ る 。 天 和 二 年 正 月 に は ﹁ 難 波 色 紙 百 人 一 句 ﹂ を 、 同 年 四 月 に は ﹁ 三 ケ 津 ﹂ と ﹁ 高 名 集 ﹂ と を 、 西 鶴 の 参 垂 の も と に 刊 行 し て ゐ る 。 と も に 一 人 一 句 集 で あ り 、 一125一

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﹁ 三 ヶ 津 ﹂ は 句 意 を 絵 に し 、 他 は 肖 像 入 り で あ る 。 し か も 三 者 と も に 西 鶴 を 巻 軸 と す る 。 延 宝 元 年 刊 ﹁ 歌 仙 大 坂 俳 諸 師 ﹂ が 宗 因 一 派 の 示 威 で あ っ た や う に 、 こ れ ら も 西 鶴 の 示 威 と 見 て 差 支 へ な い や う で あ る 。 宗 因 の 死 の 直 前 の 企 書 で あ る こ と も 意 味 あ り げ で あ る 。 西 鶴 は 延 宝 八 年 の 四 千 句 興 行 以 来 は 、 そ れ 以 前 と 較 べ て 、 俳 譜 の 活 動 は 非 常 に 少 な く な っ て ゐ る や う で あ る 。 す で に 次 の 二 万 三 千 五 百 句 独 吟 の 準 備 期 間 に は い っ て ゐ た の で は な い で あ ら う か 。 西 鶴 は ﹁ 涼 み 床 に 枕 を 傾 け 、 さ し 鯖 を 売 こ ろ よ 戦 は や 元 日 の 発 句 を お も ひ よ る 人 、 是 俳 譜 の わ づ ら ひ 也 ﹂ ( 西 鶴 大 矢 数 践 ) と い ひ 、 孕 み 句 を 嫌 ふ 。 し か し 矢 数 俳 譜 と な れ ば 事 情 は 異 る 。 ﹁ 俳 譜 大 句 数 ﹂ の 序 に 西 鶴 は い ふ 。 ﹁ 釜 の 前 堂 前 各 別 の 違 ひ 、 我 っ ね ノ \ 片 吟 し 、 詠 草 書 に し て 三 千 六 百 句 迄 す る 事 あ り 。 是 は か さ ね て 取 あ く へ き 物 に も あ ら す 。 殊 に 諸 人 の 中 に 出 、 独 吟 に 句 の 取 ま は し 五 百 句 な る へ き 人 は 、 や う く 弐 百 と 心 得 給 ふ へ し ﹂ と 。 こ の 計 算 に よ る と 二 万 三 千 五 百 句 で は 、 ざ っ と 六 万 句 ほ ど 詠 め る 準 備 を し て お か ね ば な ら ぬ 。 大 句 数 の 時 の 如 く 、 一 句 一 句 に 手 の 込 ん だ 面 白 さ を 求 め な い に し て も 、 詠 む べ き 素 材 を 集 め る の が 大 変 な 仕 事 で あ ら う 。 こ こ に 、 あ ら ゆ る 種 類 の 説 話 蒐 集 の 心 要 が 生 れ る 。 後 年 の 、 好 色 物 、 武 家 物 、 町 人 物 、 雑 話 物 、 地 誌 な ど の 雑 多 な 作 品 は 、 こ の 時 に 胚 胎 し た と 見 て よ い の で は な い か 。 で な け れ ば 短 い 年 月 に あ れ ほ ど の 多 作 は で き な い で あ ら う 。 ﹁ 西 鶴 の 名 残 の 友 ﹂ の 刊 記 に い ふ ﹁ 西 鶴 一 生 涯 の あ ら ゆ る 書 を つ ら ね 出 す 覚 書 ﹂ だ と い ふ ﹁ 筆 藏 ﹂ は 、 こ れ ら の 一 部 で は な い で あ ら う か 。 そ し て 、 矢 数 俳 階 か ら 小 説 へ の 、 従 来 信 ぜ ら れ た 図 式 も 、 小 説 の 原 形 質 的 な も の か ら 矢 数 俳 譜 へ 、 と 逆 の 図 式 に す る 方 が 納 得 し 易 い と 思 ふ が 、 い か が で あ ら う か 。 詳 し く は 後 の 機 会 に 考 へ た い 。 四 千 句 独 吟 興 行 は 、 右 に よ れ ば 、 一 万 句 の 準 備 を し な け れ ば な ら な く な る 。 そ の 前 の 二 月 二 十 九 日 に 、 ﹁ 四 十 句 五 十 句 は 遊 女 の 噂 、 歌 舞 妓 芝 居 の 風 情 、 残 る 四 十 句 は 博 変 わ ざ 、 喰 物 等 、 抜 脱 ・ こ ・ ろ 行 の 付 か た と て 其 座 に 一 人 も 聞 え ず 、 我 一126一

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計 う な づ き て 一 句 く に 講 釈 、 大 笑 ひ よ り 外 な し ﹂ と い ふ 当 世 の 俳 譜 の 幣 風 か ら い か に 脱 す る か を 悟 っ た と い ふ の も 、 一 句 の 手 の 込 ん だ 面 白 さ を 捨 て る 以 外 に 、 右 の よ う な 理 解 を も 、 実 践 は 別 と し て 、 あ る 程 度 含 め て ゐ る の で は な い か 。 宗 因 は 天 和 二 年 三 月 二 十 八 日 七 十 八 歳 で 残 し た 。 西 鶴 の 次 の 大 矢 数 俳 譜 の 準 備 の 終 ら な い う ち に 。 跡 目 の 問 題 は 混 沌 と し て ゐ る 。 次 の 機 会 は 、 追 善 供 養 を 誰 が す る か で あ る 。 西 鶴 は 、 そ れ ま で に 何 ら か の 手 を 打 た ね ば な ら ぬ と 思 っ た こ と で あ ら う 。 俳 譜 が 間 に あ は な け れ ば 、 草 子 は ど う で あ ら う か 。 世 人 を 驚 倒 せ し め る も の で さ へ あ れ ば よ い 。 仮 名 草 子 の 恋 物 語 は 、 貞 門 の 俳 譜 と 同 じ や う に 、 古 風 な 型 に は ま っ た 場 面 を 古 風 な 概 念 的 な 表 現 で 描 く だ け で あ っ た 。 対 象 に 密 接 し て 拝 情 す る こ と に 馴 れ て ゐ る 談 林 の 俳 請 師 で あ る 西 鶴 に と っ て ば 、 新 た な 耕 作 者 を 待 っ 荒 野 の 感 じ が し た こ と で あ ら う 。 男 性 の 好 色 の 情 趣 の さ ま ざ ま を 、 好 色 を 肯 定 す る 立 場 か ら 、 堂 々 と 描 写 し た の が 、 彼 の 浮 世 草 子 の 処 女 作 で あ っ た 。 書 名 も セ ン セ ー シ ョ ナ ル な も の で な け れ ば な ら ぬ 。 好 色 一 代 男 。 こ れ 以 上 好 色 讃 美 の 書 名 が あ ら う と も 思 へ ぬ 。 挿 画 も 、 情 趣 的 な も の を 自 筆 で 画 く 。 宗 因 の 一 周 忌 ま で に 、 で き る だ け 多 く の 人 に 読 ま れ る や う に 早 く 出 さ ね ば な ら ぬ 。 草 子 類 の 刊 行 の 多 い 正 月 を 待 っ て ゐ て は 遅 す ぎ る 。 好 色 一 代 男 の 慌 し い 出 版 事 情 を 、 ひ と ま つ 、 こ ん な 風 に 推 測 し て お き た い 。 そ し て 予 想 通 り に 、 好 色 一 代 男 は 、 世 人 か ら 大 歓 迎 を う け て セ ン セ ー シ ョ ン を 捲 き 起 し た 。 西 鶴 は 天 和 三 年 三 月 二 十 七 日 、 自 分 こ そ 宗 因 の 跡 目 を つ ぐ と い ふ 充 分 の 自 信 を 持 っ て 、 自 ら 施 主 と な っ て 一 周 忌 法 要 を 営 み 、 追 善 俳 譜 を も 興 行 し た 。 し か し 百 韻 に 参 加 し た も の は 殆 ど 門 下 の 末 輩 ば か り で あ っ た 。 跡 目 を つ ぐ こ と を 承 認 し て も ら へ な か っ た わ け で あ る 。 好 色 一 代 男 の 好 評 は 、 書 騨 を そ の ま ま に し て お か な い 。 問 も な く 好 色 物 の 第 二 作 を 求 め て 来 る 。 断 り き れ ず に 、 小 説 の 原 形 質 的 な も の と で も い ふ べ き 、 遊 里 の 説 話 集 、 随 筆 集 、 諸 分 集 を 適 当 に 編 纂 し て 一 書 に ま と め る 。 書 扉 は ﹁ 好 色 一 代 一127一

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男 ﹂ の 続 篇 の 体 裁 に し て ほ し い と い ふ 。 巻 首 に 一 篇 、 巻 尾 に 一 篇 半 を 書 き 改 め て 、 世 之 介 の 遺 子 、 二 代 男 世 伝 の 聞 書 と い う 体 裁 に し 、 書 名 を ﹁ 好 色 二 代 男 諸 艶 大 鑑 ﹂ と す る 。 刊 記 に ﹁ 右 全 部 八 冊 、 世 の 慰 草 を 何 か な と 尋 ね て 、 忍 ふ 草 靡 き 草 皆 恋 草 、 是 を 集 め 令 開 板 者 也 ﹂ と い ふ 。 書 卑 の 強 制 に よ っ て ﹁ 好 色 二 代 男 ﹂ と 書 名 を つ け た も の の 、 好 色 一 代 男 と ち が っ て 、 一 代 記 風 に な っ て ゐ な い こ と に 対 す る 弁 解 な の で あ る 。 忍 ふ 草 、 靡 き 草 、 皆 恋 草 は 、 ま だ 出 版 さ れ て ゐ な い 、 矢 数 俳 階 の た め の 小 説 の 原 形 質 的 な も の で あ ら う か 。 好 色 一 代 男 や 好 色 二 代 男 が 、 特 に 俳 譜 的 文 章 で あ り 、 俳 譜 的 構 成 で あ る の は 、 も と も と 矢 数 俳 階 の た め に 集 め ら れ た 説 話 や 随 筆 で あ る 上 に 、 矢 数 俳 諾 興 行 の 準 備 の さ な か に あ っ た か ら で あ る 。 初 期 の 作

(紹

西 鶴 は 正 月 頃 に は 、 好 色 二 代 男 の 原 稿 の 整 理 に か か っ て ゐ た こ と で あ ら う 。 挿 画 も 自 身 で 書 い た 。 こ れ は 経 済 的 な 必 要 に 迫 ら れ て ゐ た た め か も 知 れ ぬ 。 巻 一 巻 二 の 版 下 を 清 書 し た 。 し か し 、 好 色 一 代 男 ほ ど 説 話 の 興 昧 は な い 。 畢 寛 そ の 遊 里 説 話 の 二 番 煎 じ に す ぎ ぬ 。 こ の 夏 の 、 あ ま り 暑 く な ら な い う ち に 予 定 し て ゐ る 大 矢 数 興 行 こ そ 、 ] 世 一 代 の 晴 の 場 で あ る 。 二 万 何 千 と い ふ 句 の 独 吟 は 全 俳 人 を 驚 倒 さ せ る で あ ら う 。 宗 因 の 跡 目 を 納 得 し て 貰 へ な く と も 、 そ れ だ け の 実 力 の あ る こ と だ け で も 示 し て お か ね ば な ら な い 。 そ の 日 の 追 々 と さ し せ ま る に つ れ て 、 西 鶴 は 、 好 色 二 代 男 の 版 下 の 筆 を 執 れ な く な っ て し ま っ た 。 好 色 二 代 男 執 筆 の 際 の 西 鶴 の 事 情 を 右 の 如 く 想 像 し た い の で あ る が 、 あ ま り に 思 い つ き に 過 ぎ る で あ ら う か 。 一128一 註 1 好 色 二 代 男 は 、 巻 首 巻 尾 の 各 一 篇 は 後 か ら の 追 加 で あ る と い は れ て ゐ る 。 そ れ を 、 次 の 如 き 理 由 に よ る 。 巻 尾 の 一 篇 で な く 、 一 篇 半 を 追 加 と す る の は 、

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巻 八 ノ 四 ﹁ 有 ま で 美 人 執 行 ﹂ は 前 半 と 後 半 と に 分 れ る 。 前 半 は 、 小 船 町 の 津 田 と い ふ 男 が 、 吉 原 の 吉 野 と 逢 ひ そ め る 諸 分 話 で あ る 。 後 半 の 内 容 は か う で あ る 。 あ る 男 が 、 太 夫 と い ふ 太 夫 を 見 つ く し た が 、 ど こ か に 映 点 が あ る 。 或 は 素 人 女 に ほ ん た う の 美 人 が ゐ る か も 知 れ ぬ 。 さ う い ふ 女 を 見 つ け て 、 色 町 遊 び を や め よ う と 、 気 の あ ふ 友 人 と 共 に 諸 国 を め ぐ つ た が 、 是 は と 思 ふ 美 人 も な く 、 北 海 道 ま か ぶ ろ で 渡 っ て 行 く 。 臼 善 光 寺 で 、 新 町 の 禿 金 作 に 逢 ふ 。 金 作 は 、 寛 文 六 年 十 二 月 八 日 の 新 町 の 火 事 の 夜 、 天 狗 に つ か ま れ 、 こ こ ま で 連 れ て 来 ら れ て 、 そ の 弄 び 物 と な っ て ゐ る と い ふ 。 自 分 の 見 付 け 出 し た 美 人 の 書 付 だ と 、 金 作 は 畳 紙 を 渡 し て 、 杉 の 梢 を 飛 び 越 え て 見 え な く な る 。 書 付 に は 、 江 戸 の 花 紫 、 京 の 金 太 夫 、 大 阪 の 総 角 、 そ の 他 の 三 都 の 太 夫 が 書 き の せ て あ っ た 。 男 は 、 女 郎 よ り 美 人 は ゐ な い の だ と 惜 っ て 、 再 び 揚 屋 で 遊 び は じ め た と い ふ 。 前 半 と 後 半 と は 、 全 く 性 質 の 異 る 話 で 、 単 に 勉 ぺ て 置 い た に す ぎ な い 。 後 半 に は 男 の 名 を 出 さ ず 、 前 半 の 津 田 と い う 男 で あ る か の 如 け ん ひ な く 思 は せ 、 章 題 も ﹁ 有 ま で 美 人 執 行 ﹂ と 後 半 の 話 に も と つ い て 付 け る 。 更 に 、 冒 頭 も ﹁ 山 樫 に し て 海 荒 く 。 ま し て や 美 女 。 鄙 に ば あ ら す と い へ り ﹂ と 始 め て 、 後 半 に 結 び つ け よ う と す る 。 ま と ま っ た 一 篇 と 思 は せ よ う と す る の で あ る 。 し か し こ れ を 一 篇 の 説 話 と 見 る な ら ば 拙 劣 見 る に た へ ぬ と い ふ こ と に な る で あ ら う 。 が 、 西 鶴 の 意 図 は 、 後 半 を こ の 一 篇 の 一 部 と 見 さ せ な が ら 、 次 の 終 篇 と も 結 び つ け よ う と す る の で あ る 。 俳 譜 の 一 句 が 前 句 後 句 に 結 び つ く や う に 。 終 篇 は 二 代 男 世 伝 の こ と で 、 冒 頭 は 次 の 如 く 始 ま る 。 し た い 事 し て 二 十 年 の 夢 。 春 は 花 秋 は 月 。 気 付 は 人 参 。 女 良 く る い は 銀 の 浮 世 。 本 朝 の 色 所 。 の こ ら ず 遊 廻 し て 今 愛 に 。 難 波 の 色 町 。 夜 見 世 の 風 景 。 又 く ら べ て 似 た と い ふ べ き 所 も な し 。 巻 首 の 冒 頭 に だ け 出 て 、 ま た 巻 尾 の 一 篇 に だ け 世 伝 を 出 す の は 、 あ ま り に 唐 突 し す ぎ る の で 、 ひ と つ 前 の 篇 の 後 半 の 人 物 を も 世 伝 ら し く 思 は せ て 、 唐 突 さ を 柔 ら げ よ う と す る の で あ る 。 こ れ も ま た ひ と つ の 俳 譜 的 構 成 と い ふ べ き か 。 し か し 俳 譜 と 小 説 と は 異 な る 。 一 篇 と し て の 拙 劣 さ を 免 れ る こ と は で き な い 。 西 鶴 の 苦 心 は わ か る が 、 こ こ に も 制 作 に あ た っ て の 慌 し さ を 見 て よ い で あ ら う 。 巻 尾 一 篇 と せ ず 一 篇 半 と す る の は 右 の 事 情 に よ る 。 一129-一 註 2 西 鶴 版 下 の 巻 一 巻 二 の 中 で 、 特 に 注 意 す べ き 誤 に 次 の 如 き も の が あ る 。 あ つ は れ ば れ ニ ノ 三 オ 天 晴 伝 兵 へ で ん (伝 )

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こ が し こ が し こ ニ ノ 十 四 オ 小 質 き (賢 ) ら か つ き ひ か ん つ く ニ ノ ニ 十 三 ウ 近 付 彼 岸 (付 ) す ぐ す ぐ 同 右 百 に も 勝 れ と も ( 過 ) 右 は 定 本 西 鶴 全 集 の 頭 註 に も 掲 出 さ れ て ゐ る 。 正 し く は 郭 弧 の 中 の 如 く あ る べ き で あ る 。 右 の 誤 に よ っ て 、 振 仮 名 は 版 下 の 清 書 の 時 に 付 け ら れ た も の の あ る こ と が わ か る で あ ら う 。 更 に 次 の 如 き も の も あ る 。 一 ノ 八 ウ 其 か た ひ き い に ニ ノ 八 オ 引 出 し ﹁ 其 か た ﹂ は 原 稿 に は ﹁ 其 方 ﹂ と あ っ た 筈 で あ る 。 版 下 を 書 く 時 、 ﹁ そ な た ﹂ と 読 む べ き こ と を 忘 れ て ﹁ 其 か た ﹂ と 書 い て し ま っ た の で あ る 。 ﹁ 弗 戯 し ﹂ も 鏡 台 の ﹁ 抽 出 ﹂ の こ と で 、 ﹁ ひ き だ し ﹂ と 振 仮 名 す べ き も の を 、 動 詞 風 に 書 い て し ま っ た の で あ る 。 こ れ ら は 、 版 下 の 筆 者 の 西 鶴 で な い こ と の 根 拠 に 使 は れ さ う で あ る が 、 版 下 の 西 鶴 で あ る こ と は 筆 蹟 の 上 か ら 動 か な い 。 版 下 を 書 く 時 、 西 鶴 が 、 い か に 無 雑 作 で あ り 、 慌 し く し て ゐ た か を 知 る 材 料 に な る で あ ら う 。 一130一 三 諸 艶 大 鑑 の 挿 画 は 、 水 谷 不 倒 氏 が ﹁ 西 鶴 本 ﹂ で 西 鶴 版 下 と さ れ て 以 来 、 大 体 承 認 さ れ て 来 て ゐ た 。 最 近 に な っ て 小 池 藤 五 郎 氏 は 、 他 の 西 鶴 本 の 挿 画 と 共 に 西 鶴 筆 版 下 と す る こ と に 、 そ の 画 讃 物 と 比 較 し て 、 素 人 絵 と し て 巧 み す ぎ る と 若 干 の 疑 問 を 提 出 さ れ た (昭 和 四 十 一 年 刊 同 氏 著 ﹁新 資 料 に よ る 西 鶴 の 研 究 ﹂ ) 。 私 も 好 色 一 代 男 の 挿 画 を 、 画 と し て 出 来 す ぎ て ゐ る ゆ ゑ に 、 西 鶴 版 下 と す る こ と に 疑 問 を 持 た な い こ と は な か っ た 。 し か し ま だ 西 鶴 筆 を 否 定 す る 程 の た し か な 根 拠 を 見 出 せ な い ま ま に 、 水 谷 氏 の 説 に し た が っ て 来 た の で あ る 。 こ の 点 は な ほ 今 後 の 検 討 が 必 要 で あ ら う 。

(18)

好 色 一 代 男 と諸 艶 大鑑 と では 、 そ の挿 画 は 、 一 見 筆 者 を 異 にす る か に見 え る 。 構 図 が 、 諸 艶 大 鑑 の 方 が 散 漫 な 感 じ が す る 。 し か し、 前 者 は 半 丁 で あ り、 後 者 は見 開 き であ る た め に 、 素 人 と し ては 大 き な 画 面 で は構 成 しに く いた め で あ ら う か 。 一つ 一つ 人物 に つい て見 れ ば 、 と も に 幼 稚 な と ころ が あ る 。 嘗 て好 色 一 代 男 の挿 画 に つい て、 そ の視点 の移動 が少 な か らず 、 そ の極 端 な 例 と し て巻 ニ ノ五 ﹁ 旅 のでき 心 ﹂ の挿

画を

げた

.

(魏

の移 動 に つい て、 諸艶 大 鑑 にも 同 じ よう な も のが 少 な く な い。 そ の著 し い例 と し て、巻 四 ノ ニ ﹁ 縁 の菰 取 は 今 日﹂ の 挿 面 (第 八 図) を 見 ら れ た い。縁 側 は 右 側 か ら 見 ら れ 、 内 部 の座 敷 は 左 側 か ら 見 ら れ、 上 の 縁 は 正 面 か ら 見 ら れ 、 し か も 不 思 議 な 統 一 を保 っ て ゐ る のであ る 。 透 視 法 の誤 は 当 時 の画 に は 多 く 見 ら れ るけ れ ど も 、 これ ほ ど 極 端 な も のは 見 か け な いと ころ で あ る。 職 業 的 な 絵 師 に は 恐 ら く でき な い こと であ ら う 。 一131一

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諸 艶 大 鑑 の巻 一 ノ 一 一 親 の貞 は界 ぬ初 夢 ﹂ 、 同 二 ﹁ 誓 紙 は 異 見 の種﹂ 、 同 三 ﹁ 詰 り肴 に は戎 大 黒 ﹂ 、 巻 八 ノ 五 ﹁ 大 往 生 は 女色 の毫 ﹂ の挿 画 の中 に は 、 西 鶴筆 の説 明 書 き が 施 さ れ て ゐ る。 巻 一 ノニ の挿 画 ( 第九図) を 見 ら れ た い。 そ のほ か巻 ニ ノ ニ ﹁ 津 浪 は 一 度 の濡 ﹂ 巻 三 ノ 三 コ 言 聞身 の 行 衛 ﹂ な ど の暖 簾 や 看 板 の字 も 西 鶴 筆 のやう であ る。 好 色 一 代 男 の挿 画 に あ る看 板 な ど の字 も 西 鶴 筆 と 見 て よ いの で はな い か。 是 は 西 鶴 の 特 徴 ド旗 く出 てゐ な ρ の で、 析 走 ま で き な い け れ ど も 。 し か し 、 そ れ が 直 ち に 、 両 者 の 挿 画 が 西 鶴 筆 で あ る と い ふ 根 拠 に は 、 も と よ り な ら な い、 略 画 の 下 絵 を 与 へ て 絵 師 に 書 か せ 、 出 来 上 った も の に 自 筆 で 書 き 入 れ る こ と が で き る 。 た だ 、 西 鶴 筆 で な い と 断 定 で き る 根 拠 の 見 つか ら ぬ 場 合 に 、 西 鶴 筆 で あ る こ と の 若 干 の 傍 証 に し た い 誘 惑 を 感 ず る の で あ る 。 醤 一ノ 三 の 輩 面 ﹁ の 説 羽 こ よ ﹁ 、b セ ま の 八 ﹁ と ﹁ の あ き 一 と が あ る 。 郭 の 夜 食 の 光 景 で 、 遊 女 野 秋 が 飯 を 盛 る と こ ろ を 、 一132一

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二 階 か ら 見 ら れ る の が 恥 し い と い ふ の で 傘 で 隠 し て や り な が ら 、 ﹁ そ れ 下 か ら 大 事 な と こ ろ が 出 た ﹂ と 、 篇 中 で も 而 白 い 会 話 の あ る 場 面 で あ る が 、 太 文 中 に は 野 秋 は 出 る が 野 秋 の 相 手 の 男 の 名 前 は 出 な い 。 ま た 巻 一 ノ ニ の 挿 画 は 、 揚 屋 の 夜 の 光 景 で 、 初 会 の 諸 分 を 述 べ る 部 分 に 当 る で あ ら う か 。 挿 画 に は 、 ﹁ や ま と ﹂ ﹁ き ぬ が え ﹂ ﹁ ゑ ち ぜ ん ﹂ の 遊 女 の 名 が 書 入 れ ら れ る 。 が 、 本 文 中 に そ れ ら の 遊 女 は 出 て 来 な い 。 す な は ち 、 諸 艶 大 鑑 の 挿 画 は 、 原 稿 に よ っ て 絵 師 が 自 由 に 画 題 を 選 ん で 書 い た の で は な い 。 作 者 西 鶴 が 、 略 画 の 下 書 を 与 へ て 、 絵 師 に 書 か せ 、 説 明 の み 自 身 で 書 い た か 、 西 鶴 自 身 で 挿 画 全 部 を 書 い た か 、 の ど ち ら か で あ る 。 が 、 い ま そ れ を 決 定 す る だ け の 準 備 は な い 。 そ れ に し て も 、 本 文 に 出 て 来 な い 人 物 の 名 前 を 何 故 書 入 れ た の で あ ら う か 。 巻 八 ノ 五 の 挿 画 に も 多 く の 遊 女 の 名 前 を 書 入 れ て ゐ る 。 諸 艶 大 鑑 が 、 そ の 名 の 示 す 如 く 、 多 く の 遊 女 に つ い て の 説 話 を 集 め た も の で あ る こ と を 挿 画 に お い て も 特 に 示 さ う と い ふ の で あ ら う か 。 と も あ れ 、 全 巻 の う ち 四 篇 の み の 挿 面 が 説 明 を 持 ち 、 他 は 忘 れ ら れ て ゐ る な ど 、 こ こ に も 、 出 版 に 際 し て の 慌 し さ を 見 て よ い や う で あ る 。 一133一 四 諸 艶 大 鑑 の 版 下 は 、 そ の 本 文 に し ろ 挿 画 に し ろ 、 甚 だ 慌 し い 状 況 の 下 に 書 か れ て ゐ る こ と ば 、 明 ら か に な っ た こ と と 思 ふ 。 そ れ は 、 宗 因 の 跡 目 の 争 ひ に 関 は り の あ る 二 万 三 千 五 百 句 の 大 矢 数 興 行 の 準 備 の た め の 慌 し さ で は な か っ た か と 思 ふ 。 し か し こ れ は 、 そ の 後 間 も な く 出 た 、 自 筆 版 下 の ﹁ 俳 諾 女 歌 仙 ﹂ や ﹁ 西 鶴 諸 国 は な し ﹂ の ゆ っ た り と し た 、 い か に も 楽 し げ な 著 作 と の 対 比 に お い て 触 発 さ れ た 、 ま だ 一 つ の 思 ひ つ き か ら 遠 く を 出 て ゐ な い 。 詳 し く は 、 別 の 機 会 を 得 た い 。

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附 記 一 つ い で な が ら 、 コ 目 玉 鉾 ﹂ は 序 の み 乙 類 筆 で あ る が 、 天 理 図 書 館 刊 ﹁ 西 鶴 ﹂ の 解 説 に は 、 そ の 項 が 落 ち た や う で あ る 。 附 記 二 島 田 勇 雄 氏 も 、 諸 艶 大 鑑 の 版 下 に つ い て ﹁ 西 鶴 本 の か な つ か い ﹂ (神 戸 大 学 文 学 会 刊 ﹁ 研 究 ﹂ 第 三 十 五 . 三 十 七 . 三 十 九 号 所 載 ) の 続 稿 に 書 か れ る さ う で あ る 。 御 参 照 を い た だ け れ ば 幸 で あ る 。 附 記 三 挿 画 は 天 理 図 書 館 所 蔵 本 に よ っ た 。 写 真 掲 載 に つ き 高 配 を い た サ い た 富 永 牧 太 先 生 ・ 木 村 三 四 吾 氏 . 写 真 部 の 方 々 に 謝 意 を 表 す る 。 追 記 本 穫 正 中 ( 昭 和 四 十 三 年 十 二 月 ) 、 附 記 二 に 述 べ た 島 罠 の ﹁ 西 蘂 の 蒙 つ か い ( 四 ) 詣 艶 大 鑑 に つ い 下 ﹂ 掲 載 の ﹁ 研 究 ﹂ 第 四 + 号 、 及 び 同 氏 の ﹁ 西 鶴 本 の か な つ か い ー カ 行 ガ 行 動 詞 の イ 音 便 を 中 心 に ー ﹂ 掲 載 の ﹁近 代 語 研 究 第 二 集 ﹂ (近 代 語 学 会 編 ) が 刊 行 せ ら れ た 。 奥 附 は 共 に 昭 和 四 十 三 年 一 月 と あ る が 、 実 ば 一 月 早 く 出 刊 せ ら れ た こ と に な る 。 特 に 前 者 に は 、 諸 艶 大 鑑 の 巻 二 ま で と 巻 三 以 下 と 、 及 び 近 代 艶 隠 者 と に つ い て 、 版 本 の 仮 名 や 若 干 の 漢 字 の 字 体 表 を 掲 げ て 、 詳 細 に 解 説 を 加 へ ら れ 、 巻 二 ま で と 巻 三 以 下 と を 別 筆 と し 、 共 に 西 鶴 版 下 な ら ず と さ れ て ゐ る 。 し か し 、 巻 二 ま で の 字 体 表 を 見 て も 、 若 干 字 体 に 変 っ た も の が あ る に せ よ 、 大 部 分 は 、 後 の 西 鶴 筆 に 近 い 。 そ の 変 っ た 字 体 は 、 小 説 の 版 下 に 書 き な れ な い か ら で あ り 、 途 中 か ら 後 の 西 鶴 の 筆 跡 に 近 づ い て ゐ る こ と は 、 こ の 小 論 に 述 べ た と こ ろ で あ る 。 巻 二 ま で を 西 鶴 版 下 と す る 私 見 を 改 め る に 及 ば な い と 思 ふ 。 巻 二 ま で を 西 鶴 版 下 と し て も 、 氏 の ﹁ 西 鶴 木 の か な つ か い ﹂ の 根 本 の 主 旨 に は 、 影 響 は な い 筈 で あ る 。 掲 出 の ﹁ 逢 い ﹂ ﹁ 遣 ひ ﹂ な ど 特 徴 的 な 仮 名 遣 ひ で は 、 む し ろ 巻 一 ・ 二 が 西 鶴 版 下 で あ る こ と の 傍 誼 に も な り う る と 思 ふ 。 巻 一 ・ 二 が 西 鶴 版 下 な ら ず と さ れ る こ と に は 同 じ え な い け れ ど も 、 西 鶴 本 の 仮 名 遣 ひ の 実 態 を 明 ら か に せ ら れ た こ と に 対 し て 謝 意 と 敬 意 と を 表 す る 。 一134-'

参照

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